Hopf不変量(Hopf invariant)とは、$n\ge2$ について写像 $f\colon S^{2n-1}\to S^n$ で $S^n$ に $2n$ 胞体を貼った空間 $C_f$ を作り、$n$ 次と $2n$ 次のコホモロジーの生成元 $a,b$ の間の関係 $a^2=H(f)b$ で定める整数 $H(f)$ である。ホモトピー類だけで決まり、準同型 $\pi_{2n-1}(S^n)\to\mathbb Z$ を与え、$n$ が奇数なら $0$ になる。$n$ が偶数なら Whitehead 積 $[\iota_n,\iota_n]$ の Hopf 不変量は $\pm2$ で、$\pi_{2n-1}(S^n)$ は無限巡回群を直和因子にもつ。値 $\pm1$ の写像があるのは $n=2,4,8$ のときに限る。
Hopf 不変量(Hopf invariant)は、$n\ge2$ について連続写像 $f\colon S^{2n-1}\to S^n$ に整数 $H(f)$ を対応させる不変量である。$S^n$ に $f$ で $2n$ 次元の胞体を貼った空間 $C_f$ のコホモロジーは、正の次数では次数 $n$ と $2n$ にだけ無限巡回群をもち、$n$ 次の生成元の平方が $2n$ 次の生成元の何倍かを $H(f)$ と定める。コホモロジー群だけを見ると $C_f$ はどの $f$ でも同じであり、カップ積がはじめて写像を区別する。
Hopf 不変量はホモトピー類だけで決まり、準同型 $H\colon\pi_{2n-1}(S^n)\to\mathbb Z$ を与える。$n$ が奇数なら $H$ はいつも $0$ であるが、$n$ が偶数なら、積空間 $S^n\times S^n$ の最上の胞体の貼り付け写像を折りたたみ写像で $S^n$ へ送った写像(Whitehead 積 $[\iota_n,\iota_n]$)の Hopf 不変量が $\pm2$ になる。このことから、$n$ が偶数なら $\pi_{2n-1}(S^n)$ は無限巡回群を直和因子にもつ。値 $\pm1$ をとる写像があるのは $n=2,4,8$ のときに限り、そこでは Hopf 写像 $S^3\to S^2$、$S^7\to S^4$、$S^{15}\to S^8$ が例を与える(Hopf不変量1の定理)。この記事では符号の規約を 1 つ固定して、基本性質、準同型であること、値 $\pm2$ の計算、直和因子の定理、球面の積写像から作る Hopf 構成の値を証明する。
以下 $n\ge2$ とし、コホモロジーの係数は $\mathbb Z$ とする。$S^m\subset\mathbb R^{m+1}$ は単位球面、$D^m$ は閉単位円板である。生成元 $u\in H^n(S^n)$ と $\tau\in H^{2n}(D^{2n},S^{2n-1})$ を 1 つずつ固定する。連続写像 $f\colon S^{2n-1}\to S^n$ について、$C_f:=S^n\cup_fD^{2n}$ を $D^{2n}$ の境界の点 $s$ を $f(s)$ と同一視した空間(写像錐(位相))とし、$\Phi_f\colon D^{2n}\to C_f$ を胞体の特性写像とする。$C_f$ は次元 $0,n,2n$ に 1 つずつ胞体をもつ CW 複体で、$(C_f,S^n)$ は CW 対である。
$\Phi_f$ は同相写像 $D^{2n}/S^{2n-1}\to C_f/S^n$ を誘導する。CW 対 $(X,A)$ について $H^k(X,A)\cong\widetilde H^k(X/A)$ が自然に成り立つので(Hat02 p. 202)、3 が成り立ち、$H^k(C_f,S^n)\cong\widetilde H^k(S^{2n})$ は $k=2n$ で $\mathbb Z$、それ以外で $0$ である。対 $(C_f,S^n)$ の完全列で、$n\ge2$ から $n< n+1< 2n$ なので $H^n(C_f,S^n)=H^{n+1}(C_f,S^n)=0$ となり 1 が従う。$2n-1>n$ なので $H^{2n-1}(S^n)=H^{2n}(S^n)=0$ となり 2 が従う。$\square$
$a_f\in H^n(C_f)$ を $S^n$ への制限が $u$ になるただ 1 つの類とし、$b_f:=j(\beta_f)$ とする。ここで $\beta_f\in H^{2n}(C_f,S^n)$ は $\Phi_f^*\beta_f=\tau$ をみたすただ 1 つの類である(hi-lem-cone)。$H^{2n}(C_f)=\mathbb Zb_f$ なので、ある整数 $H(f)$ によって
$$
a_f\smile a_f=H(f)\,b_f
$$
と書ける。$H(f)$ を $f$ の Hopf 不変量という。
$u$ を $-u$ に替えても $a_f\smile a_f$ は変わらない。$\tau$ を $-\tau$ に替えると、すべての $f$ の $H(f)$ が一斉に符号を変える。コホモロジー環 の定義「Hopf 不変量の定義」は $b_f$ を任意の生成元にとるので符号を除いて決まる値であり、ここでは $\tau$ を固定して符号まで決めている(Hat02 p. 427 と同じ規約)。符号を一斉に決めておかないと、次の節の加法性は意味をもたない。
$m\ge2$ とし、$F\colon(D^m,S^{m-1})\to(D^m,S^{m-1})$ を対の連続写像とする。$F|_{S^{m-1}}$ の写像度を $d$ とすると、$F^*$ は $H^m(D^m,S^{m-1})$ の上で $d$ 倍である。
$\widetilde H^*(D^m)=0$ なので、対の完全列の連結準同型 $\delta\colon H^{m-1}(S^{m-1})\to H^m(D^m,S^{m-1})$ は同型であり($m-1\ge1$)、対の写像について自然である。$H^{m-1}(S^{m-1})\cong\operatorname{Hom}(H_{m-1}(S^{m-1}),\mathbb Z)$ なので $F|_{S^{m-1}}$ はその上で $d$ 倍であり(写像度)、$\delta$ で移して主張を得る。$\square$
$f,g\colon S^{2n-1}\to S^n$ とし、連続写像 $T\colon C_f\to C_g$ が $T(S^n)\subset S^n$ をみたすとする。対の写像 $R\colon(D^{2n},S^{2n-1})\to(D^{2n},S^{2n-1})$ があって、各 $z\in D^{2n}$ で $T(\Phi_f(z))=\Phi_g(R(z))$ であるか、両辺がともに $S^n$ に属するとする。$\ell:=\deg(T|_{S^n})$、$k:=\deg(R|_{S^{2n-1}})$ とおくと、$T^*a_g=\ell\,a_f$、$T^*b_g=k\,b_f$ であり、
$$
k\,H(g)=\ell^2H(f)
$$
が成り立つ。
要点:$S^n$ の上の写像度から $a_g$ の引き戻しが、$2n$ 胞体の上の写像度から $b_g$ の引き戻しが決まり、カップ積の自然性で両辺を比べる。
$T^*a_g$ の $S^n$ への制限は $(T|_{S^n})^*u=\ell\,u$ なので、hi-lem-cone の 1 により $T^*a_g=\ell\,a_f$ である。$p\colon C_g\to C_g/S^n$ を商写像とすると、仮定から $p\circ T\circ\Phi_f=p\circ\Phi_g\circ R$ は対 $(D^{2n},S^{2n-1})\to(C_g/S^n,\ast)$ の同じ写像である。$H^{2n}(C_g,S^n)$ の元は $p^*\gamma$ の形に書けるので(Hat02 p. 202)、$\Phi_f^*T^*\beta_g=R^*\Phi_g^*\beta_g=R^*\tau=k\,\tau$(hi-lem-disk)であり、$T^*\beta_g=k\,\beta_f$、$j$ の自然性から $T^*b_g=k\,b_f$ である。最後に
$$H(g)\,k\,b_f=T^*(a_g\smile a_g)=(\ell\,a_f)\smile(\ell\,a_f)=\ell^2H(f)\,b_f$$
であり、$b_f$ は無限巡回群 $H^{2n}(C_f)$ の生成元なので係数を比べればよい。$\square$
$f\colon S^{2n-1}\to S^n$ とする。
要点:2 と 3 はカップ積の性質から、1・4・5 は hi-lem-maps の $T$ と $R$ を具体的に作って出る。1 では胞体の半分でホモトピーをたどり、4 では $g$ の錐、5 では $e$ と胞体の恒等写像を使う。
$D^{2n}$ の点を $rs$($0\le r\le1$、$s\in S^{2n-1}$)と書く。各場合に hi-lem-maps の $T$ と $R$ を作る。$T$ は $S^n$ の上の写像と $D^{2n}$ の上の写像を、境界の同一視と両立するように与えれば、商空間の性質で連続になる。
1:$F\colon S^{2n-1}\times[0,1]\to S^n$ を $F_0=f$、$F_1=g$ のホモトピーとする。$T\colon C_f\to C_g$ を $S^n$ の上で恒等写像、$T(\Phi_f(rs)):=\Phi_g(2rs)$($r\le1/2$)、$:=F(s,2-2r)$($r\ge1/2$)で定める。$r=1/2$ では $\Phi_g(s)=g(s)=F(s,1)$、$r=1$ では $F(s,0)=f(s)$ で、どちらも両立する。$R(rs):=\min(2r,1)s$ とおくと $r\ge1/2$ で両辺は $S^n$ に属する。$\ell=k=1$ なので $H(g)=H(f)$ である。
2:$a_f$ の次数 $n$ は奇数なので、カップ積の次数付き可換性により $a_f\smile a_f=-a_f\smile a_f$ である。$H^{2n}(C_f)\cong\mathbb Z$ は捩れをもたないので $a_f\smile a_f=0$ である(コホモロジー環 の定理「奇数次元での消滅」)。
3:$f$ の値を $p_0$ とすると、$S^n$ の上で恒等写像、$\Phi_f(D^{2n})$ を $p_0$ に送る写像はレトラクション $\varrho\colon C_f\to S^n$ である。$a_f=\varrho^*u$ なので $a_f\smile a_f=\varrho^*(u\smile u)=0$ である($H^{2n}(S^n)=0$)。
4:$T\colon C_{f\circ g}\to C_f$ を $S^n$ の上で恒等写像、$T(\Phi_{f\circ g}(rs)):=\Phi_f(r\,g(s))$ で定める。$r=1$ で $\Phi_f(g(s))=f(g(s))$ なので両立する。$R(rs):=r\,g(s)$ とすれば $\ell=1$、$k=d$ であり、$d\,H(f)=H(f\circ g)$ である。
5:$T\colon C_f\to C_{e\circ f}$ を $S^n$ の上で $e$、$T(\Phi_f(z)):=\Phi_{e\circ f}(z)$ で定める。境界では $e(f(s))=\Phi_{e\circ f}(s)$ で両立する。$R=\mathrm{id}$ とすれば $\ell=d$、$k=1$ であり、$H(e\circ f)=d^2H(f)$ である。$\square$
4 で $g$ を $S^{2n-1}$ の鏡映(写像度 $-1$)にとると $H(f\circ g)=-H(f)$ となり、5 で $e$ を $S^n$ の鏡映にとると値は変わらない。
$n\ge2$ なので $2n-1\ge3$ であり、$\pi_{2n-1}(S^n)$ はアーベル群である。和は次のように表せる(Hat02 p. 341)。基点 $s_0$ を赤道 $E_0:=S^{2n-1}\cap\{x_{2n}=0\}$ の上にとり、$c\colon S^{2n-1}\to S^{2n-1}\vee S^{2n-1}$ を $E_0$ を 1 点につぶす写像とする。上半球と下半球がそれぞれ 1 つの球面になり、$c$ に続けて一方の球面を基点につぶした 2 つの写像 $c_1,c_2\colon S^{2n-1}\to S^{2n-1}$ の写像度がともに $1$ になるように同一視を選ぶ。このとき、$s_0$ を $S^n$ の基点に送る写像 $f,g$ について $[f]+[g]=[(f\vee g)\circ c]$ である。
$n\ge2$ とする。$[f]\mapsto H(f)$ は矛盾なく定まり、群準同型
$$
H\colon\pi_{2n-1}(S^n)\to\mathbb Z
$$
を与える。すなわち $H(f+g)=H(f)+H(g)$ である。
矛盾なく定まることは hi-prop-basic の 1 による。$f+g:=(f\vee g)\circ c$ とする。$S^n$ に $f$ と $g$ で 2 つの $2n$ 胞体を貼った空間を $C_{f\vee g}:=S^n\cup_fD_1\cup_gD_2$ とし($D_1,D_2$ は $D^{2n}$ の写し)、特性写像を $\Phi_1,\Phi_2$ とする。
つぶす写像。 $D^{2n}$ の赤道の円板 $E:=D^{2n}\cap\{x_{2n}=0\}$ は、$D^{2n}$ を上半分 $B_+$ と下半分 $B_-$ に分ける。$B_+$ は境界が $S_+\cup E$($S_+$ は上半球)の閉球体なので、$S_+$ の上で $c_1$、$E$ の上で基点をとる境界の写像 $\partial B_+\to S^{2n-1}$($c_1$ は $\partial S_+=E_0$ を基点に送るので連続)を、$B_+$ の内部の 1 点から錐状に延ばして、写像 $Q_+\colon B_+\to D_1$ が得られる。$Q_-\colon B_-\to D_2$ も同じく $c_2$ から作る。$E$ の上では両方とも基点なので、$Q:=Q_+\cup Q_-\colon D^{2n}\to D_1\vee D_2$ は連続であり、境界の上で $c$ に一致する。
そこで $q\colon C_{f+g}\to C_{f\vee g}$ を、$S^n$ の上で恒等写像、$q(\Phi_{f+g}(z)):=(\Phi_1\cup\Phi_2)(Q(z))$ で定める。$s\in S^{2n-1}$ では $(\Phi_1\cup\Phi_2)(c(s))=(f\vee g)(c(s))=(f+g)(s)$ なので両立し、$q$ は連続である。
コホモロジーの計算。 $C_{f\vee g}/S^n\cong S^{2n}\vee S^{2n}$ なので、hi-prf-cone と同じ議論で、$H^n(C_{f\vee g})\to H^n(S^n)$ は同型、$H^{2n}(C_{f\vee g})\cong H^{2n}(C_{f\vee g},S^n)$ は、$(\Phi_1^*,\Phi_2^*)$ で $(\tau,0)$、$(0,\tau)$ に写る相対類から来る 2 つの類 $b_1,b_2$ を基底とする自由アーベル群である。$a\in H^n(C_{f\vee g})$ を $S^n$ への制限が $u$ になる類とする。包含 $i_f\colon C_f\to C_{f\vee g}$ は $a\mapsto a_f$、$b_1\mapsto b_f$、$b_2\mapsto0$ と送り、$i_g$ も同様なので、両方に制限して係数を読むと
$$
a\smile a=H(f)\,b_1+H(g)\,b_2
$$
である。$q$ は $S^n$ の上で恒等写像なので $q^*a=a_{f+g}$ である。$\chi_1\colon(D_1\vee D_2,S_1\vee S_2)\to(D_1,S_1)$ を $D_2$ を基点に送る写像とすると、$b_1$ を定める相対類の $\Phi_1\cup\Phi_2$ による引き戻しは $\chi_1^*\tau$ であり、$\chi_1\circ Q\colon(D^{2n},S^{2n-1})\to(D^{2n},S^{2n-1})$ の境界への制限は $c_1$ である。$c_1$ の写像度は $1$ なので、hi-lem-disk により $Q^*\chi_1^*\tau=\tau$、すなわち $q^*b_1=b_{f+g}$ である。同様に $q^*b_2=b_{f+g}$ である。よって
$$
a_{f+g}\smile a_{f+g}=q^*(a\smile a)=\bigl(H(f)+H(g)\bigr)\,b_{f+g}
$$
であり、$H(f+g)=H(f)+H(g)$ である。$\square$
この証明は、$C_{f+g}$ の $2n$ 胞体の赤道の円板をつぶすと、$2n$ 胞体が 2 つの胞体に分かれ、それぞれの上で Hopf 不変量が読めることを使っている(Hat02 Proposition 4B.1, p. 428)。
Whitehead積 の定義「Whitehead 積」の記号を使う。$S^n\times S^n$ は一点和 $S^n\vee S^n$ に特性写像 $\Phi:=q_n\times q_n\colon D^n\times D^n\to S^n\times S^n$ の $2n$ 胞体を貼った CW 複体であり、その貼り付け写像が $\omega_{n,n}=\Phi\circ\rho^{-1}\colon S^{2n-1}\to S^n\vee S^n$ である。折りたたみ写像 $\nabla\colon S^n\vee S^n\to S^n$ との合成 $w_n:=\nabla\circ\omega_{n,n}$ が Whitehead 積 $[\iota_n,\iota_n]\in\pi_{2n-1}(S^n)$ を代表する。
$n\ge2$ とする。$\tau$ と $u$ の取り方だけで決まる符号 $\varepsilon\in\{\pm1\}$ があって、$H(w_n)=\varepsilon\bigl(1+(-1)^n\bigr)$ である。とくに $n$ が偶数なら $H([\iota_n,\iota_n])=\pm2$ である。
要点:$S^n\times S^n$ から $C_{w_n}$ への写像 $F$ を、一点和の上では折りたたみ、胞体の上では恒等写像として作ると、$a_{w_n}$ は $a_1+a_2$ に、$b_{w_n}$ は $\pm a_1\smile a_2$ に引き戻される。$(a_1+a_2)^2=(1+(-1)^n)a_1\smile a_2$ である。
$z\in D^n\times D^n$($z\ne0$)について $\mu(z):=\max(|x|,|y|)$($z=(x,y)$)とおき、$\lambda(z):=\mu(z)z/|z|$、$\lambda(0):=0$ とする。$\lambda\colon D^n\times D^n\to D^{2n}$ は同相写像で、境界の上で $\rho$ に一致する。$F\colon S^n\times S^n\to C_{w_n}$ を、$S^n\vee S^n$ の上で $\nabla$、$F(\Phi(z)):=\Phi_{w_n}(\lambda(z))$ で定める。$z\in\partial(D^n\times D^n)$ では $\Phi_{w_n}(\rho(z))=w_n(\rho(z))=\nabla(\Phi(z))$ なので両立し、$F$ は連続である。
$a_i:=\mathrm{pr}_i^*u$($i=1,2$)とおく。Künneth の定理により $H^*(S^n\times S^n)\cong H^*(S^n)\otimes H^*(S^n)$ は環として同型で、$H^n$ は $a_1,a_2$ を基底とし、$H^{2n}$ は $a_1\smile a_2$ で生成される無限巡回群である(Hat02 Theorem 3.15, p. 216)。$F^*a_{w_n}$ の $S^n\vee S^n$ への制限は $\nabla^*u$、すなわち両方の因子で $u$ なので、$F^*a_{w_n}=a_1+a_2$ である($H^n(S^n\times S^n)\to H^n(S^n\vee S^n)$ は同型)。一方 $F$ は対 $(S^n\times S^n,S^n\vee S^n)\to(C_{w_n},S^n)$ の写像で $F\circ\Phi=\Phi_{w_n}\circ\lambda$ なので、$\Phi^*F^*\beta_{w_n}=\lambda^*\tau$ は $H^{2n}(D^n\times D^n,\partial)$ の生成元である。$\Phi^*\colon H^{2n}(S^n\times S^n,S^n\vee S^n)\to H^{2n}(D^n\times D^n,\partial)$ と $H^{2n}(S^n\times S^n,S^n\vee S^n)\to H^{2n}(S^n\times S^n)$ はともに同型なので(hi-lem-cone の証明と同じ)、$F^*b_{w_n}$ は生成元であり、$F^*b_{w_n}=\varepsilon\,a_1\smile a_2$($\varepsilon=\pm1$)と書ける。$\varepsilon$ は $\tau$、$\lambda$、$u$ の向きだけで決まる。$a_i\smile a_i=\mathrm{pr}_i^*(u\smile u)=0$ と $a_2\smile a_1=(-1)^{n\cdot n}a_1\smile a_2$ から
$$H(w_n)\,\varepsilon\,a_1\smile a_2=F^*(a_{w_n}\smile a_{w_n})=(a_1+a_2)\smile(a_1+a_2)=\bigl(1+(-1)^n\bigr)\,a_1\smile a_2$$
であり、$\varepsilon^2=1$ から主張が従う。$\square$
Whitehead積 の定理「恒等写像の Whitehead 積」の 2 と James簡約積 の系「付着写像の例」の 2 は、同じ値を James 簡約積 $J_2(S^n)$ のコホモロジー環から読んでいる。上の証明は積空間 $S^n\times S^n$ のカップ積だけで済む。
$n\ge2$ を偶数とする。
1:hi-thm-additive により像は $\mathbb Z$ の部分群であり、hi-prop-product により $\pm2$ を含む。$2$ を含む $\mathbb Z$ の部分群は $\mathbb Z$ と $2\mathbb Z$ だけである。
2:$h:=H/d$ は整数値の準同型 $\pi_{2n-1}(S^n)\to\mathbb Z$ で $h(\alpha_0)=1$ をみたす。$\alpha-h(\alpha)\alpha_0$ は $h$ で $0$ に写るので $\ker h=\ker H$ に属し、写像 $\alpha\mapsto(\alpha-h(\alpha)\alpha_0,h(\alpha))$ は準同型である。$(\gamma,m)\mapsto\gamma+m\alpha_0$ が逆写像であることは、$h(\gamma+m\alpha_0)=m$($\gamma\in\ker H$)から確かめられる。$m\alpha_0$($m\ne0$)は $h$ の値が $m\ne0$ なので $0$ でなく、$\pi_{2n-1}(S^n)$ は無限群である。
3:$n=2,4,8$ では、$\mathbb{CP}^2$、四元数射影平面、八元数射影平面の最上の胞体の貼り付け写像の Hopf 不変量が $\pm1$ であり(コホモロジー環 の例「Hopf 不変量の計算」の 2・3)、hi-prop-basic の 4 で符号を合わせれば値 $1$ がとれる。それ以外の偶数 $n$ では、Hopf 不変量が奇数の写像はない(Adams の定理。Hopf不変量1の定理 の定理「Hopf 不変量 1 の定理」)。$\square$
$n$ が偶数のとき、$\pi_{2n-1}(S^n)$ は $\mathbb Z$ と有限群の直和である(Serre。球面のホモトピー群 の定理「Serreの有限性定理(球面の場合)」)。hi-thm-summand はその無限の部分を Hopf 不変量が検出することを示している。
球面の上の 2 変数の写像から Hopf 不変量の計算できる写像を作る構成である。$n\ge2$ とし、$\psi\colon S^{n-1}\times[-1,1]\to S^n$、$\psi(v,t):=\bigl(\sqrt{1-t^2}\,v,\ t\bigr)$ とおく($S^{n-1}$ の非被約懸垂としての $S^n$ の表示)。下半球を $D_-:=\{t\le0\}$、上半球を $D_+:=\{t\ge0\}$ とする。
連続写像 $\varphi\colon S^{n-1}\times S^{n-1}\to S^{n-1}$ について、点 $y_0,x_0\in S^{n-1}$ を固定したときの $x\mapsto\varphi(x,y_0)$ の写像度 $d_1$ と $y\mapsto\varphi(x_0,y)$ の写像度 $d_2$ の組 $(d_1,d_2)$ を $\varphi$ の双次数という($S^{n-1}$ は弧状連結なので $x_0,y_0$ によらない)。$\partial(D^n\times D^n)=(D^n\times S^{n-1})\cup(S^{n-1}\times D^n)$ の上の写像 $J'(\varphi)$ を
$$
J'(\varphi)(rx,y):=\psi\bigl(\varphi(x,y),\,r-1\bigr),\qquad J'(\varphi)(x,ry):=\psi\bigl(\varphi(x,y),\,1-r\bigr)
$$
($x,y\in S^{n-1}$、$0\le r\le1$)で定め、$J(\varphi):=J'(\varphi)\circ\rho^{-1}\colon S^{2n-1}\to S^n$ を $\varphi$ の Hopf 構成という。
$r=0$ では値が極 $\psi(\cdot,\mp1)$ で $x$(または $y$)によらず、2 つの式は $S^{n-1}\times S^{n-1}$($r=1$)の上でともに $\psi(\varphi(x,y),0)$ になるので、$J'(\varphi)$ は連続である。第 1 の面は $D_-$ に、第 2 の面は $D_+$ に写る。
$\varphi$ の双次数を $(d_1,d_2)$ とすると、$\varphi$ によらない符号 $\varepsilon'\in\{\pm1\}$ があって
$$
H\bigl(J(\varphi)\bigr)=\varepsilon'\,d_1d_2
$$
である。
要点:$C_{J(\varphi)}$ の $n$ 次の生成元を、$D_+$ を法とする類と $D_-$ を法とする類に持ち上げると、平方は相対カップ積になる。$2n$ 胞体の上に引き戻すと、2 つの類はそれぞれ第 1 因子と第 2 因子の方向の類で、係数が $\varphi$ の 2 つの制限の写像度になる。
$X:=C_{J(\varphi)}$ の $2n$ 胞体の特性写像を $\lambda$ を通して $\widehat\Phi\colon D^n\times D^n\to X$ と書く($\widehat\Phi$ は境界の上で $J'(\varphi)$)。$S^n$ に、赤道 $S^{n-1}$(0 胞体と $(n-1)$ 胞体)を部分複体とし $D_+,D_-$ の内部を 2 つの $n$ 胞体とする CW 構造を入れると、$J(\varphi)$ の値は $(2n-1)$ 骨格 $S^n$ に入るので $X$ は CW 複体で、$D_+,D_-$ は部分複体である。部分複体の対について相対カップ積 $H^k(X,A)\times H^\ell(X,B)\to H^{k+\ell}(X,A\cup B)$ があり、余鎖の段階で定義されるので、$\widehat\Phi(S^{n-1}\times D^n)\subset D_+$、$\widehat\Phi(D^n\times S^{n-1})\subset D_-$ をみたす $\widehat\Phi$ と両立する(Hat02 p. 209)。
$D_\pm$ は可縮で $n-1\ge1$ なので、$H^n(X,D_\pm)\to H^n(X)$ は同型である。$a:=a_{J(\varphi)}$ の持ち上げを $x_\pm\in H^n(X,D_\pm)$ とすると、$a\smile a$ は $x_+\smile x_-\in H^{2n}(X,S^n)$ の像であり、$\widehat\Phi^*\colon H^{2n}(X,S^n)\to H^{2n}(D^n\times D^n,\partial)$ は同型である(hi-lem-cone)。$\theta\in H^n(D^n,S^{n-1})$ を生成元とする。相対 Künneth の定理(Hat02 Theorem 3.18, p. 218)により、$H^n(D^n\times D^n,S^{n-1}\times D^n)$ は $\mathrm{pr}_1^*\theta$ で生成される無限巡回群、$H^{2n}(D^n\times D^n,\partial)$ は $\theta\times\theta=\mathrm{pr}_1^*\theta\smile\mathrm{pr}_2^*\theta$ で生成される無限巡回群である。
$\widehat\Phi^*x_+=m_1\,\mathrm{pr}_1^*\theta$ と書き、$m_1$ を $i_1(v):=(v,y_0)$ で引き戻して求める。$\widehat\Phi(i_1(rx))=\psi(\varphi(x,y_0),r-1)$ なので、$\widehat\Phi\circ i_1$ は $\kappa\circ\mathrm{C}\varphi_1$ と分解する。ここで $\varphi_1:=\varphi(\cdot,y_0)$、$\mathrm{C}\varphi_1(rx):=r\varphi_1(x)$ は対 $(D^n,S^{n-1})$ の写像、$\kappa(rx):=\psi(x,r-1)$ は対の同相写像 $(D^n,S^{n-1})\to(D_-,\partial D_-)$ である。$x_+$ を $(D_-,\partial D_-)\to(S^n,D_+)\to(X,D_+)$ で引き戻した類は $H^n(D_-,\partial D_-)$ の生成元であり($H^n(X,D_+)\to H^n(S^n,D_+)$ は hi-lem-cone の 1 により同型、$H^n(S^n,D_+)\to H^n(D_-,\partial D_-)$ は切除による同型)、$\kappa$ で引き戻すと $\varepsilon_1\theta$($\varepsilon_1=\pm1$ は $u$ と $\kappa$ だけで決まる)になる。hi-lem-disk により $\mathrm{C}\varphi_1^*$ は $d_1$ 倍なので $m_1=\varepsilon_1d_1$ である。同様に $\widehat\Phi^*x_-=\varepsilon_2d_2\,\mathrm{pr}_2^*\theta$ である。よって
$$\widehat\Phi^*(x_+\smile x_-)=\varepsilon_1\varepsilon_2d_1d_2\,(\theta\times\theta)$$
であり、$\theta\times\theta$ と $\widehat\Phi^*\beta_{J(\varphi)}$ はともに生成元なので、$\varphi$ によらない符号を除いて $H(J(\varphi))=d_1d_2$ となる。$\square$
1:$x\mapsto x^p$ の写像度は $p$ である(写像度 の命題「円周の冪写像の写像度」)。生成元であることは hi-ex-groups の 1 による。2:hi-prop-basic の 2 と hi-thm-construction による。H 空間の積は、単位元を固定した 2 つの制限が恒等写像とホモトピックなので双次数 $(1,1)$ をもつ。3:同じく双次数 $(1,1)$ の Hopf 構成をとり、hi-thm-summand の 3 を使う。$\square$
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $n\ge2$ | $n=1$、写像度 $2$ の $f\colon S^1\to S^1$ | $H^n(C_f)$、$H^{2n}(C_f)$ が無限巡回群で $H(f)$ が定まる |
| $n$ が偶数 | $n=3$、$\pi_5(S^3)\cong\mathbb Z/2$ | $\pi_{2n-1}(S^n)$ が $\mathbb Z$ を直和因子にもつ |
| 係数が $\mathbb Z$ | $n$ 偶数、$\mathbb Z/2$ 係数での $[\iota_n,\iota_n]$ | 平方の係数が無限位数の元を検出する |
| 双次数が $(\pm1,\pm1)$ | $\varphi(x,y)=x$(双次数 $(1,0)$) | Hopf 構成の Hopf 不変量が $\pm1$ |
1 行目:$C_f=S^1\cup_2D^2$ は実射影平面で、胞体の余鎖複体 $\mathbb Z\xrightarrow{0}\mathbb Z\xrightarrow{2}\mathbb Z$ から $H^1(C_f)=0$、$H^2(C_f)\cong\mathbb Z/2$ である。$a_f$ も $b_f$ も存在しない。
2 行目:$\pi_5(S^3)\cong\mathbb Z/2$ は Hat02 p. 339 の表による。有限群は $\mathbb Z$ を直和因子にもたない。
3 行目:$\mathbb Z/2$ 係数で同じ定義をすると、$C_f$ の整数係数のコホモロジーは捩れをもたないので生成元の像 $\bar a,\bar b$ が $\bar a^2=\overline{H(f)}\,\bar b$ をみたし、$[\iota_n,\iota_n]$ では $\overline{\pm2}=0$ である。一方 $H([\iota_n,\iota_n])=\pm2\ne0$ なので、hi-thm-additive により $[\iota_n,\iota_n]$ は無限位数をもつ。
4 行目:$\varphi(x,y)=x$ は $d_2=0$ なので、hi-thm-construction により $H(J(\varphi))=0$ である。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する