2点間の距離

同義語:2点間の距離の公式distance between two pointsdistance formula

概要

2点間の距離(distance between two points)とは、座標平面の 2 点 $P(x_1,y_1)$、$Q(x_2,y_2)$ を結ぶ線分の長さで、$PQ=\sqrt{(x_2-x_1)^2+(y_2-y_1)^2}$ と座標で表せる。この公式は座標軸に平行な 2 辺をもつ直角三角形に三平方の定理を使って得られ、座標軸が垂直で単位が等しいことを使う。公式だけから、距離が $0$ になるのは同じ点のときに限ること、三角不等式 $PR\le PQ+QR$、異なる 2 点から等しい距離にある点全体が垂直二等分線という直線になることが導かれる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 座標平面(高校数学), 三平方の定理(高校数学)

高校での出発点:座標の差から長さを求める

座標平面の 2 点 $P(x_1,y_1)$、$Q(x_2,y_2)$ の距離(線分 $PQ$ の長さ)は
$$ PQ=\sqrt{(x_2-x_1)^2+(y_2-y_1)^2} $$
で計算できる。これを 2 点間の距離の公式 という(教科書での扱いの例は Abr21 の §2.1)。$x$ 座標の差と $y$ 座標の差を、それぞれ 2 乗して足し、平方根をとる。まず使い方を見る。

公式で距離を計算する
  1. $P(-1,3)$、$Q(5,-5)$ の距離は、$x$ 座標の差が $5-(-1)=6$、$y$ 座標の差が $-5-3=-8$ なので
    $$ PQ=\sqrt{6^2+(-8)^2}=\sqrt{36+64}=\sqrt{100}=10 $$
    である(図 1)。点 $R(5,3)$ をとると、$PR=6$(横)、$RQ=8$(縦)で、三角形 $PRQ$ は $R$ を直角とする直角三角形である。$6^2+8^2=10^2$ になっている。
  2. $A(2,1)$、$B(4,2)$ の距離は $\sqrt{2^2+1^2}=\sqrt5$ である。差を足した $2+1=3$ は距離ではない。
  3. 原点 $O$ と $C(-3,4)$ の距離は $\sqrt{(-3)^2+4^2}=5$ である。

P(−1, 3)、Q(5, −5) と、直角の頂点 R(5, 3)。横の辺の長さ 6、縦の辺の長さ 8、斜辺 PQ の長さ 10 を見る図 P(−1, 3)、Q(5, −5) と、直角の頂点 R(5, 3)。横の辺の長さ 6、縦の辺の長さ 8、斜辺 PQ の長さ 10 を見る図

同じ横の線の上の 2 点

$A(-2,3)$、$B(4,3)$ は $y$ 座標が等しく、直線 $y=3$ の上にある。この直線の上では $x$ 座標が目盛りになっているので、距離は $|4-(-2)|=6$ である。公式でも $\sqrt{6^2+0^2}=\sqrt{36}=6$ で一致する。$\sqrt{a^2}=|a|$ なので、公式は差が負でも正しい長さを返す。

この記事では、次の問いに答える。

  1. 公式はなぜ正しいのか。2 点が同じ縦の線や横の線の上にあるときも使えるのか。→ thm-dtp-main
  2. 距離がもつ「長さらしい」性質(三角形の 2 辺の和は残りの辺より長い、など)を、公式から確かめられるか。→ prop-dtp-basic、thm-dtp-triangle
  3. 2 点から等しい距離にある点は、どんな図形をつくるか。→ thm-dtp-bisector
  4. 軸が垂直でないときや、軸の単位が違うときも公式は使えるか。→ ex-dtp-oblique、ex-dtp-units
    図形の言葉座標の言葉この記事のボックス
    線分の長さ$\sqrt{(x_2-x_1)^2+(y_2-y_1)^2}$thm-dtp-main
    三角形の 2 辺の和は残りの辺以上平方根の和の不等式thm-dtp-triangle
    垂直二等分線2 乗の差が消えた 1 次方程式thm-dtp-bisector
    円$(x-a)^2+(y-b)^2=r^2$ex-dtp-circle

主定理:2 点間の距離の公式

座標平面の距離の公式

座標平面の 2 点 $P(x_1,y_1)$、$Q(x_2,y_2)$ の距離は
$$ PQ=\sqrt{(x_2-x_1)^2+(y_2-y_1)^2} $$
である。特に、原点 $O$ と $P(x,y)$ の距離は $OP=\sqrt{x^2+y^2}$ である。

座標軸に平行な 2 辺をもつ直角三角形を作る

方針:2 点が同じ縦の線か同じ横の線の上にあるときは、その線を数直線と見て距離を求める。そうでないときは、$P$ を通る横の線と $Q$ を通る縦の線の交点 $R$ をとり、直角三角形 $PRQ$ に三平方の定理を使う。
段 1(同じ縦の線の上にあるとき:$x_1=x_2$)。$P$、$Q$ は直線 $x=x_1$ の上にある。座標平面(高校数学) で見たとおり、この直線の上では $y$ 座標が数直線の座標になっているので、数直線(高校数学) の「2 点の距離と向き」により $PQ=|y_2-y_1|$ である。一方、公式の右辺は $\sqrt{0^2+(y_2-y_1)^2}=\sqrt{(y_2-y_1)^2}=|y_2-y_1|$ で、一致する($\sqrt{t^2}=|t|$ は、$|t|\ge0$ かつ $|t|^2=t^2$ だからである)。
段 2(同じ横の線の上にあるとき:$y_1=y_2$)。段 1 の $x$ と $y$ を入れかえて、$PQ=|x_2-x_1|=\sqrt{(x_2-x_1)^2+0^2}$ である。
段 3(それ以外のとき:$x_1\ne x_2$ かつ $y_1\ne y_2$)。点 $R(x_2,y_1)$ をとる。$P$ と $R$ は $y$ 座標が等しいので直線 $y=y_1$ の上にあり、段 2 から $PR=|x_2-x_1|$ である。$R$ と $Q$ は $x$ 座標が等しいので直線 $x=x_2$ の上にあり、段 1 から $RQ=|y_2-y_1|$ である。直線 $y=y_1$ は $x$ 軸に平行、直線 $x=x_2$ は $y$ 軸に平行で(座標平面(高校数学) の「$x$ 座標が一定の点の集まり」)、$x$ 軸と $y$ 軸は垂直なので、この 2 直線も垂直に交わる。$R$ は $P$、$Q$ のどちらとも異なる($x_1\ne x_2$、$y_1\ne y_2$)ので、三角形 $PRQ$ は $R$ を直角の頂点とする直角三角形である。三平方の定理(高校数学) の「直角三角形の三平方の定理」により
$$ PQ^2=PR^2+RQ^2=|x_2-x_1|^2+|y_2-y_1|^2=(x_2-x_1)^2+(y_2-y_1)^2 $$
で、$PQ>0$ なので両辺の正の平方根をとって公式を得る。
段 4(原点との距離)。$P$ を $O(0,0)$、$Q$ を $P(x,y)$ として公式を使えばよい。$\square$

距離を計算する
  1. $A(1,-2)$、$B(-3,1)$:$AB=\sqrt{(-4)^2+3^2}=\sqrt{25}=5$。
  2. $C(\sqrt2,1)$、$D(0,-1)$:$CD=\sqrt{(-\sqrt2)^2+(-2)^2}=\sqrt{2+4}=\sqrt6$。
  3. $E(a,a)$、$F(-a,-a)$($a>0$):$EF=\sqrt{(-2a)^2+(-2a)^2}=\sqrt{8a^2}=2\sqrt2\,a$。$\sqrt{8a^2}=2\sqrt2\,|a|$ で、$a>0$ を使って絶対値を外した。

公式は差を 2 乗するので、$P$ と $Q$ を入れかえても、差の符号が変わるだけで値は同じである。空間の 2 点についても同じ考え方で $\sqrt{(x_2-x_1)^2+(y_2-y_1)^2+(z_2-z_1)^2}$ となり、それは 空間座標と球面の方程式 の「2 点間の距離」で証明されている。

距離の基本性質

距離の基本性質

座標平面の点 $P$、$Q$ について、

  1. $PQ\ge0$ であり、$PQ=0$ となるのは $P=Q$ のときだけである。
  2. $PQ=QP$。
  3. $P$、$Q$ をどちらも $x$ 軸方向に $p$、$y$ 軸方向に $q$ だけ平行移動した点を $P'$、$Q'$ とすると、$P'Q'=PQ$。
公式の式の形から読む

方針:$P(x_1,y_1)$、$Q(x_2,y_2)$ とし、thm-dtp-main の式で確かめる。
1:平方根は $0$ 以上なので $PQ\ge0$ である。$PQ=0$ なら $(x_2-x_1)^2+(y_2-y_1)^2=0$ で、$0$ 以上の 2 数の和が $0$ なので、どちらも $0$ である。よって $x_1=x_2$、$y_1=y_2$ で、座標平面(高校数学) の「点と実数の組の 1 対 1 対応」により $P=Q$ である。逆に $P=Q$ なら差はどちらも $0$ で、$PQ=0$ である。
2:$(x_1-x_2)^2=(x_2-x_1)^2$、$(y_1-y_2)^2=(y_2-y_1)^2$ なので、$QP$ の式は $PQ$ の式と同じ値である。
3:$P'(x_1+p,y_1+q)$、$Q'(x_2+p,y_2+q)$ なので、座標の差は $(x_2+p)-(x_1+p)=x_2-x_1$、$(y_2+q)-(y_1+q)=y_2-y_1$ で、移動の前と同じである。$\square$

三角形の 2 辺の長さの和は、残りの 1 辺の長さより大きい。このことも、公式だけを使って確かめられる。先に数で見ておく。

寄り道すると遠くなる

$P(0,0)$、$Q(3,4)$、$R(6,0)$ について、$PQ=5$、$QR=\sqrt{3^2+(-4)^2}=5$、$PR=6$ で、$PR=6< 10=PQ+QR$ である。$Q$ を線分 $PR$ の上の点 $(2,0)$ に替えると、$PQ=2$、$QR=4$ で $PQ+QR=6=PR$ となり、等号になる。

座標で示す三角不等式

座標平面のどの 3 点 $P$、$Q$、$R$ についても
$$ PR\le PQ+QR $$
が成り立つ。

2 乗して、差を完全平方にする

方針:座標の差を文字でおき、両辺を 2 乗して比べる。最後は「$($式$)^2\ge0$」に帰着させる。
段 1(文字をおく)。$P(x_1,y_1)$、$Q(x_2,y_2)$、$R(x_3,y_3)$ とし、$a:=x_2-x_1$、$b:=y_2-y_1$、$c:=x_3-x_2$、$d:=y_3-y_2$ とおく。$x_3-x_1=a+c$、$y_3-y_1=b+d$ なので、thm-dtp-main から示すべき式は
$$ \sqrt{(a+c)^2+(b+d)^2}\le\sqrt{a^2+b^2}+\sqrt{c^2+d^2} $$
である。
段 2(2 乗して同値な式に直す)。両辺は $0$ 以上なので、2 乗して比べてよい($0$ 以上の数 $s$、$t$ では、$s\le t$ と $s^2\le t^2$ は同値)。左辺の 2 乗は $a^2+b^2+c^2+d^2+2(ac+bd)$、右辺の 2 乗は $a^2+b^2+c^2+d^2+2\sqrt{(a^2+b^2)(c^2+d^2)}$ である。したがって示すべき式は
$$ ac+bd\le\sqrt{(a^2+b^2)(c^2+d^2)}\qquad(\ast) $$
と同値である。
段 3($ac+bd< 0$ のとき)。右辺は $0$ 以上なので、$(\ast)$ は成り立つ。
段 4($ac+bd\ge0$ のとき)。両辺が $0$ 以上なので、$(\ast)$ は $(ac+bd)^2\le(a^2+b^2)(c^2+d^2)$ と同値である。右辺から左辺を引くと
$$ (a^2c^2+a^2d^2+b^2c^2+b^2d^2)-(a^2c^2+2abcd+b^2d^2)=a^2d^2-2abcd+b^2c^2=(ad-bc)^2\ge0 $$
で、成り立つ。$\square$

段 4 の不等式 $(ac+bd)^2\le(a^2+b^2)(c^2+d^2)$ は、2 つの組についての Cauchy–Schwarzの不等式(高校数学) である。証明をたどると、$PR=PQ+QR$ の等号が成り立つのは $ad=bc$ かつ $ac+bd\ge0$ のときである。$ad=bc$ は $\overrightarrow{PQ}=(a,b)$ と $\overrightarrow{QR}=(c,d)$ が平行(どちらかが $0$ の場合を含む)であること、$ac+bd\ge0$ はそれらが逆向きでないことを表し、図形としては $Q$ が線分 $PR$ の上にあることにあたる(ex-dtp-detour の後半)。

2 点から等しい距離にある点

等距離の点の集まりは直線

異なる 2 点 $A(x_1,y_1)$、$B(x_2,y_2)$ について、$PA=PB$ を満たす点 $P(x,y)$ 全体は、方程式
$$ 2(x_2-x_1)x+2(y_2-y_1)y=x_2^2+y_2^2-x_1^2-y_1^2 $$
の表す直線である。この直線は線分 $AB$ の中点 $M\left(\dfrac{x_1+x_2}2,\dfrac{y_1+y_2}2\right)$ を通り、直線 $AB$ に垂直である(線分 $AB$ の 垂直二等分線)。

距離を 2 乗すると 2 次の項が消える

方針:$PA=PB$ を 2 乗した式に直し、展開すると $x^2$、$y^2$ が両辺で打ち消し合って 1 次の式が残ることを見る。
段 1(2 乗した式に直す)。$PA\ge0$、$PB\ge0$ なので、$PA=PB$ と $PA^2=PB^2$ は同値である。thm-dtp-main により、これは
$$ (x-x_1)^2+(y-y_1)^2=(x-x_2)^2+(y-y_2)^2 $$
である。
段 2(展開する)。左辺は $x^2-2x_1x+x_1^2+y^2-2y_1y+y_1^2$、右辺は $x^2-2x_2x+x_2^2+y^2-2y_2y+y_2^2$ である。両辺から $x^2+y^2$ を引き、移項すると
$$ 2(x_2-x_1)x+2(y_2-y_1)y=x_2^2+y_2^2-x_1^2-y_1^2 $$
となる。各段は同値な変形なので、$PA=PB$ はこの式と同値である。
段 3(直線であること)。$A\ne B$ なので、$x_2-x_1$ と $y_2-y_1$ の少なくとも一方は $0$ でない。$x$、$y$ の係数の少なくとも一方が $0$ でない 1 次方程式の表す図形は直線である(直線の方程式と点と直線の距離 の「直線の一般形」)。さらに、同じ記事の「係数ベクトルは直線に垂直」により、直線の上のどの 2 点 $P$、$P'$ についても、係数の組 $\overrightarrow{AB}=(x_2-x_1,\,y_2-y_1)$ との内積が $\overrightarrow{AB}\cdot\overrightarrow{PP'}=0$ になる(係数の $2$ 倍は向きに影響しない)。つまり直線は $AB$ に垂直である。
段 4(中点を通ること)。線分 $AB$ の中点が $M\left(\dfrac{x_1+x_2}2,\dfrac{y_1+y_2}2\right)$ であることは 内分点・外分点の座標 の「座標平面の内分点・外分点」による。$M$ の座標を代入すると、左辺は $(x_2-x_1)(x_1+x_2)+(y_2-y_1)(y_1+y_2)=x_2^2-x_1^2+y_2^2-y_1^2$ で、右辺に等しい。$\square$

垂直二等分線を求める
  1. $A(1,2)$、$B(5,4)$ の垂直二等分線は、$2\cdot4x+2\cdot2y=25+16-1-4$、つまり $8x+4y=36$、$2x+y=9$ である。中点 $(3,3)$ を代入すると $6+3=9$ で、確かに通る。直線の上の点 $(4,1)$ では $PA=\sqrt{9+1}=\sqrt{10}$、$PB=\sqrt{1+9}=\sqrt{10}$ で等しい。
  2. $a\ne b$ として $P(a,b)$、$Q(b,a)$ の垂直二等分線は、$2(b-a)x+2(a-b)y=b^2+a^2-a^2-b^2=0$ で、$2(b-a)\ne0$ で割ると $x-y=0$、つまり直線 $y=x$ である。したがって $Q(b,a)$ は、直線 $y=x$ について $P(a,b)$ と対称な点である(座標平面(高校数学) の「対称な点の座標」の続き)。

距離の公式の使い方

円を式で表す

点 $C(a,b)$ からの距離が $r$($r>0$)の点 $P(x,y)$ 全体が、中心 $C$、半径 $r$ の円である。$PC=r$ は、両辺が $0$ 以上なので $PC^2=r^2$ と同値で、thm-dtp-main により
$$ (x-a)^2+(y-b)^2=r^2 $$
と書ける。たとえば中心 $(2,-1)$、半径 $3$ の円は $(x-2)^2+(y+1)^2=9$ で、点 $(2,2)$ は $0+9=9$ を満たすので円の上にある。円の方程式の扱いは 円の方程式 で続ける。

三角形の形を調べる

$A(1,1)$、$B(4,5)$、$C(-3,4)$ とする。
$$ AB=\sqrt{3^2+4^2}=5,\qquad AC=\sqrt{(-4)^2+3^2}=5,\qquad BC=\sqrt{(-7)^2+(-1)^2}=\sqrt{50} $$
である。$AB=AC$ なので三角形 $ABC$ は二等辺三角形であり、さらに $AB^2+AC^2=25+25=50=BC^2$ なので、三平方の定理(高校数学) の「三平方の定理の逆」により $\angle A=90^\circ$ である。$ABC$ は $A$ を直角の頂点とする直角二等辺三角形である。

例と反例

公式の証明で使った仮定を外すと、公式は成り立たなくなる。また、公式の形を取り違えた計算もここで確かめる。

外した仮定・取り違え崩れる主張ボックス
2 本の軸が垂直$PQ=\sqrt{(x_2-x_1)^2+(y_2-y_1)^2}$ex-dtp-oblique
2 本の軸の単位が等しい$PQ=\sqrt{(x_2-x_1)^2+(y_2-y_1)^2}$ex-dtp-units
2 乗して足してから平方根をとる距離が座標の差の絶対値の和になると誤るex-dtp-sum
反例:軸が垂直でない斜交座標

$x$ 軸と $y$ 軸の正の向きのなす角を $60^\circ$ にし、単位を等しくとり、点 $P$ の座標を「$P$ を通り $y$ 軸に平行な直線と $x$ 軸の交点の目盛り」と「$P$ を通り $x$ 軸に平行な直線と $y$ 軸の交点の目盛り」の組で定める(斜交座標)。座標 $(1,1)$ の点 $P$ は、$O$、$(1,0)$、$P$、$(0,1)$ がひし形の頂点になる位置にある。$(1,0)$ を $A$ とすると、三角形 $OAP$ で $OA=AP=1$、$\angle OAP=180^\circ-60^\circ=120^\circ$ なので、余弦定理(高校数学) により
$$ OP^2=1^2+1^2-2\cdot1\cdot1\cdot\cos120^\circ=2+1=3,\qquad OP=\sqrt3 $$
である。公式の値 $\sqrt{1^2+1^2}=\sqrt2$ と一致しない。証明の段 3 で「横の線と縦の線が垂直」を使ったところが崩れている。

反例:軸の単位が違うとき

軸は垂直なまま、$x$ 軸の単位を $1\,\mathrm{cm}$、$y$ 軸の単位を $3\,\mathrm{cm}$ にとる。点 $(2,1)$ と原点の実際の距離は、横 $2\,\mathrm{cm}$、縦 $3\,\mathrm{cm}$ の直角三角形の斜辺なので $\sqrt{4+9}=\sqrt{13}\,\mathrm{cm}$ である。公式の値 $\sqrt{2^2+1^2}=\sqrt5$ は、どちらの単位で読んでも実際の長さに合わない。証明の段 1・段 2 で、縦と横の目盛りを同じ単位の長さとして使ったところが崩れている。

反例:差の絶対値を足しても距離にならない

$P(0,0)$、$Q(3,4)$ の距離は $5$ だが、座標の差の絶対値の和は $3+4=7$ である。$7$ は、縦と横の道だけを通って $P$ から $Q$ へ行くときの道のりで、まっすぐ測った長さではない。また $\sqrt{3^2+4^2}=5$ は $\sqrt{3^2}+\sqrt{4^2}=7$ とも違う。平方根は和に分けられない。差の絶対値の和を「距離」と呼ぶ測り方もあり、それは 絶対値と三角不等式 の「平面のマンハッタン距離」で扱う。

大学数学で見る:Euclid 距離と距離の公理

距離の公理と $\mathbb{R}^n$
  1. prop-dtp-basic の 1・2 と thm-dtp-triangle は、大学の数学で「距離」と呼ぶものがもつべき 3 つの条件(距離の公理)である。これらを満たす測り方を備えた集合を 距離空間 という。座標平面は、公式で距離を測ると距離空間になる。
  2. $n$ 個の実数の組 $(x_1,\dots,x_n)$ 全体 $\mathbb{R}^n$ では、$\sqrt{(x_1-y_1)^2+\cdots+(x_n-y_n)^2}$ を距離と定める。これを Euclid 距離 といい、$n=2$ がこの記事の公式、$n=3$ が空間の公式である(Euclid空間)。三角不等式の証明は、段 4 の計算を Cauchy–Schwarzの不等式(高校数学) の $n$ 個の場合に替えれば同じように進む。
  3. ベクトル $\vec v=\overrightarrow{PQ}=(x_2-x_1,\,y_2-y_1)$ を使うと、$PQ=\sqrt{\vec v\cdot\vec v}$ と書ける(ベクトルの内積(高校数学))。距離は内積から作られ、直交や角も内積で測れる。

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関連項目

参考文献

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