付値(valuation)とは、体 $K$ から順序群 $\Gamma$ に $\infty$ を加えた集合への写像 $v$ で、$v(x)=\infty$ が $x=0$ に限り、$v(xy)=v(x)+v(y)$ と $v(x+y)\ge\min\{v(x),v(y)\}$ を満たすもののことで、加法付値ともいい、$p$ 進付値や零点の位数が代表例である。値が実数のときは $|x|=c^{-v(x)}$ が強三角不等式を満たす非アルキメデス的な絶対値(乗法付値)になり、数論ではこの絶対値を付値と呼ぶことも多い。絶対値が非アルキメデス的であることは整数の像が有界であることと同値であり、二つの絶対値が同じ位相を定めるのは一方が他方の正の冪のときに限る。有理関数体 $k(t)$ の $k$ 上自明な付値は、既約多項式ごとの位数と無限遠での位数で尽くされる。
付値 とは、体の元に「どれだけ割り切れるか」「どれだけ小さいか」を表す量を対応させる写像である。代表例は有理数 $x$ を素数 $p$ で何回割り切れるかを数える p進付値 $v_p$ と、有理関数の点 $a$ での零点の位数(零点の位数)であり、どちらも積を和に変え($v(xy)=v(x)+v(y)$)、和については $v(x+y)\ge\min\{v(x),v(y)\}$ を満たす。値を指数関数で大きさに直した $|x|=c^{-v(x)}$ は、通常の絶対値よりも強い三角不等式 $|x+y|\le\max\{|x|,|y|\}$ を満たす 絶対値 になる。
文献では、和の形で書く 加法付値(値は順序群に入る)と、積の形で書く 乗法付値(実数に値をとる絶対値)の両方が「付値」と呼ばれる。この記事では両方を定義し、その関係を整理したうえで、絶対値が非アルキメデス的であるための判定法と、二つの絶対値が同じ位相を定めるための判定法を証明し、最後に有理関数体 $k(t)$ の $k$ 上自明な付値をすべて決定する。付値と付値環の対応、離散付値の構造は、それぞれ 付値環 と 離散付値環 の記事で扱う。
アーベル群 $\Gamma$(演算を $+$ で書く)と、$\Gamma$ 上の全順序 $\le$ の組で、$a\le b$ ならば任意の $c$ について $a+c\le b+c$ を満たすものを 順序群(全順序アーベル群)という。$\Gamma$ のどの元よりも大きい記号 $\infty$ を付け加え、$\gamma+\infty=\infty+\gamma=\infty+\infty=\infty$ と約束する。
整数の加法群 $\mathbb{Z}$、実数の加法群 $\mathbb{R}$ とその部分群は通常の大小で順序群である。$\mathbb{Z}^2$ に辞書式順序を入れたものも順序群であり、これは $\mathbb{R}$ のどの部分群とも順序群として同型でない(ex-valuation-higher-rank)。
体 $K$ の 付値(valuation)、または 加法付値(additive valuation)とは、順序群 $\Gamma$ への写像 $v\colon K\to\Gamma\cup\{\infty\}$ で、次の 3 条件を満たすものをいう。
これは 付値環 の記事の定義「体の付値」と同じものである。付値 $v$ について
$$
R_v=\{x\in K\mid v(x)\ge0\},\qquad \mathfrak{m}_v=\{x\in K\mid v(x)>0\}
$$
をそれぞれ $v$ の 付値環、付値イデアル といい、$\kappa(v)=R_v/\mathfrak{m}_v$ を 剰余体 という。$R_v$ は $K$ の付値環であり、$\mathfrak{m}_v$ はその唯一の極大イデアルである。逆に $K$ の付値環からは、値群が単元群による商 $K^\times/R^\times$ である付値が作られる(付値環 の記事の命題「付値と付値環の対応」)。
二つの付値 $v,v'$ は、付値環が等しい($R_v=R_{v'}$)とき 同値 であるという。これは、順序を保つ群の同型 $\varphi\colon v(K^\times)\to v'(K^\times)$ で $v'=\varphi\circ v$ となるものがあることと同値である。実際、そのような $\varphi$ があれば $v'(x)\ge0\iff v(x)\ge0$ である。逆に $R_v=R_{v'}=R$ なら、同じ命題の 3 により、$v$ と $v'$ はどちらも $K^\times/R^\times$ を経由して値群との順序同型を与えるので、それらを合成して $\varphi$ が得られる。
値群が $\mathbb{Z}$ と順序群として同型な付値を 離散付値 といい、値群がちょうど $\mathbb{Z}$ であるものを 正規化された 離散付値という。離散付値の付値環が離散付値環である(同記事の定義「体の離散付値」は正規化された離散付値を扱っている)。
体 $K$ の 絶対値(absolute value)、または 乗法付値(multiplicative valuation)とは、写像 $|\cdot|\colon K\to\mathbb{R}_{\ge0}$ で、次を満たすものをいう。
$|1|=|1|^2$ と $|1|\neq0$ から $|1|=1$、$|-1|^2=1$ から $|-1|=1$、$x\neq0$ なら $|x^{-1}|=|x|^{-1}$ である。有理数体 $\mathbb{Q}$ の通常の絶対値 $|\cdot|_\infty$ はアルキメデス的であり、$p$ 進絶対値 $|x|_p=p^{-v_p(x)}$ は非アルキメデス的である(p進付値 の記事の定義「有理数の $p$ 進付値と $p$ 進絶対値」)。強三角不等式の距離としての帰結は 超距離空間 と 三角不等式 の記事の命題「強三角不等式の帰結」にある。
「付値」という語は文献によって指すものが異なる。
| この記事の呼び方 | 写像の形 | 主な条件 | 文献での呼び方の例 |
|---|---|---|---|
| 付値(加法付値) | $v\colon K\to\Gamma\cup\{\infty\}$ | $v(x+y)\ge\min\{v(x),v(y)\}$ | additive valuation(Mat86 §10, p. 75) |
| 実数値の付値 | $v\colon K\to\mathbb{R}\cup\{\infty\}$ | 同上 | exponential valuation(Neu99 Chapter II, §3, p. 120) |
| 絶対値(乗法付値) | $\lvert\cdot\rvert\colon K\to\mathbb{R}_{\ge0}$ | $\lvert x+y\rvert\le\lvert x\rvert+\lvert y\rvert$ | valuation(Neu99 Chapter II, (3.1), p. 116) |
数論の文献で「付値」と書いて絶対値を指すことが多いのは、この最後の流儀による。値群を乗法的に書き、不等号の向きを逆にして $|x+y|\le\max\{|x|,|y|\}$ の形で加法付値を書く流儀もあり、内容は加法付値と同じである。
$p$ 進付値 $v_p(x)$ は「$x$ が $p$ で何回割り切れるか」を数える。$p$ で多く割り切れる数を「小さい」とみなすと、$p$ 進絶対値 $|x|_p=p^{-v_p(x)}$ が得られる。この見方では $p^n$ は $n$ が大きいほど $0$ に近い。強三角不等式は「$p^n$ で割り切れる二つの数の和も $p^n$ で割り切れる」ことの言い換えであり、和をとっても大きさが増えない。
関数についても同じ見方ができる。有理関数 $f$ の点 $a$ での位数 $\operatorname{ord}_a(f)$ は「$f$ が $(t-a)$ で何回割り切れるか」であり、位数が大きいほど $f$ は $a$ の近くで速く $0$ に近づく。付値の公理は、零点の位数が積で足し合わされ、和では小さい方の位数以上になるという事実を抽象したものである。
二つの付値の値が異なるときは、和の付値は小さい方にちょうど一致する(prop-valuation-basic)。これは「大きいものと小さいものを足すと大きいものになる」という、通常の絶対値でも近似的に成り立つ直感が、非アルキメデス的な世界では等式として成り立つことを意味する。
$k$ を体、$\alpha>0$ を無理数とし、$0$ でない $f=\sum c_{nm}X^nY^m\in k[X,Y]$ について
$$
v(f)=\min\{\,n+m\alpha\mid c_{nm}\neq0\,\}
$$
とおく。$\alpha$ が無理数なので、$(n,m)\mapsto n+m\alpha$ は $\mathbb{N}^2$ 上で単射であり、最小値をとる単項式は一つに定まる。$v$ は $v(f/g)=v(f)-v(g)$ によって $k(X,Y)$ の付値に延び、値群は $\mathbb{Z}+\mathbb{Z}\alpha$ である(Mat86 §10, Exercise 10.11, p. 78)。この値群は $\mathbb{R}$ の中で稠密であり、$v$ は離散付値でない実数値の付値である。
$v(fg)=v(f)+v(g)$ を確かめる。$f,g$ で最小値をとる単項式をそれぞれ $X^{n_0}Y^{m_0}$、$X^{n_1}Y^{m_1}$ とする。$fg$ の単項式は、$f$ の単項式と $g$ の単項式の積から生じ、その値 $n+m\alpha$ は二つの値の和なので $v(f)+v(g)$ 以上である。等号は両方が最小値をとるとき、すなわち $X^{n_0+n_1}Y^{m_0+m_1}$ だけで起こり、この単項式の係数は二つの係数の積で $0$ でない。よって $v(fg)=v(f)+v(g)$ である。和についての不等式は、$f+g$ の単項式が $f$ か $g$ の単項式であることから従う。$k(X,Y)$ への延長が分数の表し方によらないことは積の等式から従い、二つの分数を共通の分母 $d$ で $a/d$、$b/d$ と書けば $v(a/d+b/d)=v(a+b)-v(d)\ge\min\{v(a),v(b)\}-v(d)$ なので、条件 3 も分数に対して成り立つ。
$\mathbb{Z}^2$ に辞書式順序を入れ、$k(X,Y)$ の付値 $v$ を、多項式に対して現れる単項式 $X^aY^b$ の指数 $(a,b)$ の辞書式順序での最小値と定めると、値群が $\mathbb{Z}^2$ の付値が得られる(付値環 の記事の例「値群が2段の付値環」)。
この値群は $\mathbb{R}$ のどの部分群とも順序群として同型でない。順序を保つ単射な準同型 $\psi\colon\mathbb{Z}^2\to\mathbb{R}$ があったとすると、$a=\psi(1,0)$、$b=\psi(0,1)$ はどちらも正である($(1,0),(0,1)>(0,0)$)。すべての $n\ge1$ について $n(0,1)=(0,n)<(1,0)$ なので $nb< a$ となるが、$b>0$ なので $n$ を大きくとるとこれは成り立たない。
順序群が $\mathbb{R}$ のある部分群と順序群として同型になるのは、任意の $a>0$ と $b$ について $na>b$ となる自然数 $n$ があるとき(アルキメデス的なとき)に限る(Mat86 Theorem 10.6, p. 76。この記事では証明しない)。ex-valuation-higher-rank の値群はアルキメデス的でない。
付値 $v$ について、$v(1)=v(-1)=0$、$v(-x)=v(x)$、$x\neq0$ なら $v(x^{-1})=-v(x)$ が成り立つ(付値環 の記事の命題「付値と付値環の対応」の証明の冒頭)。
$v$ を体 $K$ の付値とする。
1:$v(x)< v(y)$ としてよい。$v(x+y)\ge v(x)$ である。もし $v(x+y)>v(x)$ なら、$x=(x+y)+(-y)$ と $v(-y)=v(y)$ から $v(x)\ge\min\{v(x+y),v(y)\}>v(x)$ となり矛盾する。よって $v(x+y)=v(x)$ である。
2:最小値をとる添字が $i$ だけだとすると、付値の条件 3 を繰り返し使って $v\bigl(\sum_{j\neq i}x_j\bigr)\ge\min_{j\neq i}v(x_j)>v(x_i)$ となり、$x_i=-\sum_{j\neq i}x_j$ の両辺の付値が一致しない(すべての $x_j$ が $0$ のときは最小値 $\infty$ をすべての添字がとるので主張は成り立つ)。
2 は「付値の等しくない項の和は $0$ にならない」ことを言っており、多項式の根の付値を調べるときの基本の道具になる(Newton 多角形の考え方)。
$K$ を体とする。
1:$|x|=0\iff v(x)=\infty\iff x=0$ である。$|xy|=c^{-v(x)-v(y)}=|x||y|$ である。$t\mapsto c^{-t}$ は減少関数なので、$v(x+y)\ge\min\{v(x),v(y)\}$ から $|x+y|\le\max\{|x|,|y|\}\le|x|+|y|$ である。
2:$|x|=0\iff x=0$ から条件 1 が、$\log(|x||y|)=\log|x|+\log|y|$ から条件 2 が従う。$-\log$ は減少関数なので、強三角不等式から $v(x+y)\ge\min\{v(x),v(y)\}$ が従う。
3:$(c^s)^{-v(x)}=(c^{-v(x)})^s=c^{-(sv)(x)}$ による。付値環と付値イデアルの記述は、$c^{-t}\le1\iff t\ge0$、$c^{-t}<1\iff t>0$ から従う。
したがって、実数値の付値と非アルキメデス的絶対値は、正の定数倍(冪)の違いを除いて同じものである。ex-valuation-higher-rank の付値は値群が $\mathbb{R}$ に入らないので、この対応で絶対値に移せない。逆にアルキメデス的な絶対値($\mathbb{Q}$ の通常の絶対値など)は加法付値から来ない。
$n\in\mathbb{Z}$ について、$n\cdot1\in K$ を単に $n$ と書く。
体 $K$ の絶対値 $|\cdot|$ について、次は同値である。
1 ⇒ 2:$|0|=0$、$|1|=1$ であり、$n\ge1$ で $|n-1|\le1$ なら $|n|=|(n-1)+1|\le\max\{|n-1|,|1|\}\le1$ である。帰納法により $n\ge0$ で $|n|\le1$ であり、$|-n|=|-1||n|=|n|$ から負の整数でも成り立つ。
2 ⇒ 3:明らかである。
3 ⇒ 1:すべての整数 $n$ について $|n|\le N$ とする。$x,y\in K$ とし、$|x|\ge|y|$ としてよい。$n\ge1$ について、二項定理と三角不等式から
$$
|x+y|^n=\Bigl|\sum_{\nu=0}^n\binom{n}{\nu}x^\nu y^{n-\nu}\Bigr|\le\sum_{\nu=0}^n\Bigl|\binom{n}{\nu}\Bigr|\,|x|^\nu|y|^{n-\nu}\le(n+1)N|x|^n
$$
である(二項係数は整数なので、その絶対値は $N$ 以下である)。$n$ 乗根をとって $|x+y|\le\bigl((n+1)N\bigr)^{1/n}|x|$ となり、$n\to\infty$ で $\bigl((n+1)N\bigr)^{1/n}\to1$ なので、$|x+y|\le|x|=\max\{|x|,|y|\}$ である。
この判定法は Neu99 Chapter II, (3.6)(p. 118)による。三角不等式 の記事でも同じ同値が述べられている。
1:整数の像 $n\cdot1$ は素体 $\mathbb{F}_p$ の $p$ 個の元のどれかなので、$\{|n|\}$ は有限集合で有界である。thm-valuation-nonarchimedean-criterion による。
2:$q$ 個の元からなる有限体の $0$ でない元 $x$ は $x^{q-1}=1$ を満たす(乗法群の位数が $q-1$ であることによる)ので、$|x|^{q-1}=1$、$|x|>0$ から $|x|=1$ である。
$|\cdot|_1,|\cdot|_2$ を体 $K$ の絶対値とし、$|\cdot|_1$ は自明でないとする。次は同値である。
3 ⇒ 1:中心 $a$、半径 $r$ の開球は、$|\cdot|_1$ についての半径 $r$ の開球と $|\cdot|_2$ についての半径 $r^s$ の開球とが一致する。開球の族が同じなので位相も同じである。
1 ⇒ 2:$|x|<1$ であることは、点列 $x^n$ が $0$ に収束することと同値である($|x^n-0|=|x|^n$ であり、$|x|\ge1$ なら $|x|^n\ge1$ で $0$ に近づかない)。点列の収束は位相だけで決まるので、$|\cdot|_1$ について $x^n\to0$ なら $|\cdot|_2$ についても $x^n\to0$ である。
2 ⇒ 3:まず、$|x|_1>1$ なら $|x^{-1}|_1<1$ なので $|x^{-1}|_2<1$、すなわち $|x|_2>1$ である。$|\cdot|_1$ は自明でないので $|z|_1\neq1$ となる $z\neq0$ があり、$z$ か $z^{-1}$ をとって $|y|_1>1$ となる $y$ を固定する。このとき $|y|_2>1$ である。
$0$ でない $x\in K$ について、$|x|_1=|y|_1^{\alpha}$ となる実数 $\alpha$ をとる。有理数 $m/n>\alpha$($n\ge1$)について $|x|_1<|y|_1^{m/n}$、すなわち $|x^n/y^m|_1<1$ なので、2 から $|x^n/y^m|_2<1$、すなわち $|x|_2<|y|_2^{m/n}$ である。有理数 $m/n<\alpha$ については、同様に $|y^m/x^n|_1<1$ から $|x|_2>|y|_2^{m/n}$ である。$m/n$ を上下から $\alpha$ に近づけると $|x|_2=|y|_2^{\alpha}$ となる。したがって
$$
\frac{\log|x|_2}{\log|y|_2}=\alpha=\frac{\log|x|_1}{\log|y|_1}
$$
であり、$s=\log|y|_2/\log|y|_1>0$ とおくと $|x|_2=|x|_1^{\,s}$ である。$x=0$ では両辺が $0$ である。
この定理は Neu99 Chapter II, (3.3)(p. 117)による。同値を冪の関係 3 で定める文献もある(p進数体 の記事の定義「体の絶対値」)が、この定理によりどちらの定義でも同じである。実数値の付値の側で言えば、$v_1$ と $v_2=sv_1$($s>0$)が対応する絶対値の同値にあたる。
$\mathbb{Q}$ の自明でない絶対値は、通常の絶対値 $|\cdot|_\infty$ か、ただ一つの素数 $p$ についての $|\cdot|_p$ のどれかと同値である(Ostrowski の定理)。非アルキメデス的な場合の証明は p進数体 の記事の命題「非アルキメデス的な絶対値の分類」にあり、アルキメデス的な場合を含む全体は Neu99 Chapter II, (3.7)(pp. 119–120)にある。次の節では、有理関数体についての同じ型の分類を証明する。
体 $k$ 上の有理関数体 $K=k(t)$ の付値 $v$ が $k$ 上自明 であるとは、$0$ でない $a\in k$ について $v(a)=0$ となることをいう。
$k$ を体とし、$v$ を $K=k(t)$ の自明でない付値で、$k$ 上自明なものとする。このとき $v$ は、あるモニックな既約多項式 $q\in k[t]$ についての $v_q$ か、$v_\infty$ のどちらかと同値である(ex-valuation-basic-examples の 2・3)。しかも、どの付値と同値であるかはただ一通りに決まる。
場合 1($v(t)\ge0$).$f=\sum a_it^i\in k[t]$ の各項は $v(a_it^i)=v(a_i)+iv(t)\ge0$($a_i\neq0$ のとき)を満たすので、条件 3 により $v(f)\ge0$ である。
$$
\mathfrak{p}=\{f\in k[t]\mid v(f)>0\}
$$
とおく。$\mathfrak{p}$ は和で閉じ(条件 3)、$g\in k[t]$ を掛けても $v(gf)=v(g)+v(f)>0$ なので閉じており、$v(1)=0$ なので $1\notin\mathfrak{p}$ である。$v(fg)=v(f)+v(g)>0$ で $v(f),v(g)\ge0$ なら一方は正なので、$\mathfrak{p}$ は素イデアルである。もし $\mathfrak{p}=0$ なら、$0$ でないすべての多項式の付値が $0$ になり、$v(f/g)=v(f)-v(g)=0$ から $v$ は自明になって仮定に反する。$k[t]$ は単項イデアル整域なので、$\mathfrak{p}=(q)$ となるモニックな既約多項式 $q$ がある。
$\gamma=v(q)>0$ とおく。$0$ でない $f\in k[t]$ を $f=q^mg$($q\nmid g$)と書くと $g\notin\mathfrak{p}$ なので $v(g)=0$、よって $v(f)=m\gamma=v_q(f)\gamma$ である。積の公式から、すべての $x\in K^\times$ で $v(x)=v_q(x)\gamma$ となる。$n\mapsto n\gamma$ は $\mathbb{Z}$ から $v(K^\times)=\mathbb{Z}\gamma$ への順序を保つ同型なので、$v$ は $v_q$ と同値である。
場合 2($v(t)<0$).$s=1/t$ とおくと $K=k(s)$、$v(s)>0$ なので、場合 1 を変数 $s$ について当てはめられる。このとき $s\in\mathfrak{p}$ なので $\mathfrak{p}=(s)$ であり、$v$ は $k(s)$ の $s$ についての付値 $v_s$ と同値である。$0$ でない $f=\sum_{i=0}^da_it^i\in k[t]$($a_d\neq0$)について
$$
f=s^{-d}\bigl(a_d+a_{d-1}s+\cdots+a_0s^d\bigr)
$$
であり、括弧の中は定数項 $a_d\neq0$ をもつので $s$ で割り切れない。よって $v_s(f)=-d=v_\infty(f)$ であり、積の公式から $v_s=v_\infty$ である。
一意性.$q\neq q'$ をモニックな既約多項式とすると $v_q(q)=1>0$、$v_{q'}(q)=0$、$v_\infty(q)=-\deg q<0$ である。同値な付値は順序を保つ同型で移り合うので、元の付値の正負は同値で変わらない。よって $v_q$($q$ は全体を動く)と $v_\infty$ のどの二つも同値でない。
$k$ が代数閉体なら、モニックな既約多項式は $t-a$($a\in k$)に限るので、$k(t)$ の $k$ 上自明な付値は、同値を除いて $k\cup\{\infty\}$、すなわち射影直線の点と一対一に対応する。
$0$ でない多項式 $f$ の既約分解 $f=a\prod_qq^{v_q(f)}$($a\in k^\times$)の次数を比べると $\deg f=\sum_q\deg q\cdot v_q(f)$ であり、$v_\infty(f)=-\deg f$ なので
$$
\sum_q\deg q\cdot v_q(x)+v_\infty(x)=0
$$
が $f$ について、したがって積の公式からすべての $x\in K^\times$ について成り立つ。これは $\mathbb{Q}$ の積公式(p進付値 の記事の定理「積公式」)の類似であり、$\mathbb{P}^1$ 上の主因子の次数が $0$ であることの言い換えである。
素数 $p$ について、$0$ でない $f=\sum a_it^i\in\mathbb{Q}[t]$ に $w(f)=\min_iv_p(a_i)$ を対応させ、$w(f/g)=w(f)-w(g)$ で $\mathbb{Q}(t)$ に延ばしたものは付値である(Gauss 付値)。和の不等式は係数ごとの不等式から従う。積については、$f=p^af_0$、$g=p^bg_0$ と $w(f_0)=w(g_0)=0$ になるように書くと、$f_0,g_0$ の係数は $\mathbb{Z}_{(p)}$ に入り、$\bmod p$ で還元した $\bar f_0,\bar g_0\in\mathbb{F}_p[t]$ は $0$ でない。$\mathbb{F}_p[t]$ は整域なので $\overline{f_0g_0}\neq0$ であり、$w(f_0g_0)=0$、よって $w(fg)=a+b=w(f)+w(g)$ である(延長は ex-valuation-dense と同じ議論による)。
$w(p)=1\neq0$ なので $w$ は $\mathbb{Q}$ 上自明でなく、$w(t)=0$ で、$w$ はどの $v_q$ とも $v_\infty$ とも同値でない(それらはすべて $p$ で値 $0$ をとる)。thm-valuation-rational-function-field の「$k$ 上自明」という仮定は外せない。
各行は、左の定義や命題の条件を一つだけ外したものである。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 付値の条件 3($v(x+y)\ge\min$) | $\mathbb{Q}$ 上の $v(x)=-\log\lvert x\rvert_\infty$ | $\{v\ge0\}=[-1,1]\cap\mathbb{Q}$ が和で閉じず、環にならない |
| 付値の条件 2(積を和に) | $\mathbb{Q}$ 上の $w(x)=\min\{v_p(x),0\}$($x\neq0$)、$w(0)=\infty$ | $w(p)=0$、$w(1/p)=-1$ で $w(x^{-1})=-w(x)$ が崩れる |
| 非アルキメデス性の判定:$\{\lvert n\rvert\}$ が有界 | $\mathbb{Q}$ の通常の絶対値 | $\lvert1+1\rvert=2>\max\{1,1\}$ |
| 絶対値の同値の判定:$\lvert\cdot\rvert_1$ が自明でない | $\lvert\cdot\rvert_1$ が自明、$\lvert\cdot\rvert_2=\lvert\cdot\rvert_p$ | 条件 2 は成り立つが($\lvert x\rvert_1<1$ となるのは $x=0$ だけ)、$\lvert\cdot\rvert_2$ は $\lvert\cdot\rvert_1$ の冪でない |
| 付値と絶対値の対応:値群が $\mathbb{R}$ に入る | 値群が $\mathbb{Z}^2$(辞書式)の付値 | $c^{-v}$ の形の絶対値に移せない |
| 有理関数体の分類:$k$ 上自明 | Gauss 付値 $w$ | $v_q$・$v_\infty$ のどれとも同値でない |
2 行目の $w$ は、$\min\{a,0\}$ が $a$ について単調で、$\min\{\min\{a,b\},0\}=\min\{\min\{a,0\},\min\{b,0\}\}$ であることから条件 3 を満たし、$w(0)=\infty$ と定めたので $w(x)=\infty\iff x=0$ も満たす($x$ か $y$ が $0$ のとき、また $x+y=0$ のときも条件 3 は成り立ち、$0$ を含む積でも条件 2 は成り立つので、破れるのは $0$ でない元どうしの積の条件 2 だけである)。4 行目では、自明な絶対値の位相は離散位相であり、$\lvert\cdot\rvert_p$ の位相とは異なる($p^n\to0$ は $\lvert\cdot\rvert_p$ についてだけ成り立つ)。
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