二重被覆群

概要

SU(2)はSO(3)の二重被覆群である.

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{T}[0]{\mathrm{T}} \newcommand{x}[0]{\boldsymbol{x}} $$

1.$SO(3)$について

SO(3)

$$ \mathrm{SO}(3):=\{R\text{は$3\times3$の実成分行列}\mid \det R=1, R^{\mathrm{T}}=R^{-1}\} $$

$\T$は転置の意味である.3次元ベクトルの回転として( $\mathbb{R}^3$ への作用として)親しみのある群.特に,$x,y,z$ 軸周りの回転はそれぞれ次のように表される:

$$ \begin{eqnarray} R_1(\theta)= \left(\begin{array}{cc} 1 & 0 & 0 \\ 0 & \cos \theta & -\sin \theta \\ 0 & \sin \theta & \cos \theta \end{array}\right),\\ \end{eqnarray} \quad R_2(\theta) =\left(\begin{matrix} \cos \theta & 0 & \sin \theta \\ 0 & 1 & 0 \\ -\sin \theta & 0 & \cos \theta \end{matrix}\right), \\ \quad R_3(\theta) =\left(\begin{matrix} \cos \theta & -\sin \theta & 0 \\ \sin \theta & \cos \theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{matrix}\right). $$

任意の 元$R\in \mathrm{SO}(3)$ は,$R_1(\theta_1),R_2(\theta_2),R_3(\theta_3)$ の有限個の積で表せる.

任意の$R\in\mathrm{SO}(3)$ は必ず固有値1を持つ.なぜなら,まず,$\ast$を複素共役とし,$\x$$R$の固有値$\lambda$ の固有ベクトルとすると$(\x^\ast)^\T R^\T R\x=|\x|^2$ である一方$(R\x^\ast)^\T R\x=|\lambda|^2|\x|^2$ であるので,$|\lambda|^2=1$,つまり$R$の固有値はみな絶対値$1$の複素数である.そして $R\x=\lambda\x$ ならば$R\x^\ast=\lambda^\ast\x^\ast$ だから,$\mathrm{det}R=1$と合わせると,$R$の3つの固有値は何かある絶対値1の複素数$\lambda$を用いて$1,\lambda,\lambda^\ast$ と書ける.よって3つの固有値のどれかは必ず$1$である.

さて,$R$の固有値 $1$ の固有ベクトル $e^\prime$$\mathbb{R}^3\subset \C^3$ にあることが示せる.これは,固有値 $1,\lambda,\lambda^\ast$ の固有ベクトルをそれぞれ $\boldsymbol{x}_1,\boldsymbol{x}_\lambda,\boldsymbol{x}_{\lambda^\ast}=\x_\lambda^\ast$ とすると,$\x_1^\ast=\x_1$となるからである.3つの基底ベクトルを $(e^\prime_1,e^\prime_2,e^\prime)=(e_1,e_2,e_3)P=P$ と取り直すと,

$$ P^{-1}RP=\left(\begin{array}{cc} \cos \theta & -\sin \theta & 0 \\ \sin \theta & \cos \theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{array}\right)=R_3(\theta) $$

と表せる. 変換行列 $P$ は, $e^{\prime\T}=(P_{13},P_{23},P_{33})$ を満たせば何でも良いので, $x,y,z$ 軸周りの回転で適当に作れば良い(角度を適当に決めれば実際作れる).というわけで 任意の $R\in\mathrm{SO}(3)$$x,y,z$ 軸まわりの有限回の回転として $R=PR_3(\theta)P^{-1}$ と書ける.証明終わり.

2.$SU(2)$について