被覆空間の分類定理

同義語:classification of covering spacesclassification theorem for covering spaces

概要

被覆空間の分類定理(classification of covering spaces)とは、弧状連結・局所弧状連結・半局所単連結な空間 $B$ について、弧状連結な被覆空間 $p\colon(E,e_0)\to(B,b_0)$ に部分群 $p_*\pi_1(E,e_0)$ を対応させると、基点付きの同型類と基本群 $\pi_1(B,b_0)$ の部分群とが一対一に対応するという定理である。基点を忘れると同型類は部分群の共役類に対応し、部分群の包含は被覆の射に、自明な部分群は普遍被覆に対応する。一意性は持ち上げの判定法から、存在は普遍被覆を部分群で割る構成から従い、弧状連結とは限らない被覆の圏は、基本群が右から作用する空でない集合の圏と同値になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 被覆空間, 基本群, 普遍被覆, 被覆変換群, 群の作用

被覆空間の分類定理は、よい底空間 $B$ の被覆空間を、基本群 $\pi_1(B,b_0)$ の部分群という代数的なデータで完全に分類する定理である。$B$ が弧状連結・局所弧状連結・半局所単連結であれば、弧状連結な被覆空間 $p\colon(E,e_0)\to(B,b_0)$ に部分群 $p_*\pi_1(E,e_0)$ を対応させることで、被覆空間の基点付き同型類と $\pi_1(B,b_0)$ の部分群とが一対一に対応する。基点を忘れれば、同型類は部分群の共役類に対応する。部分群の包含は被覆の射に対応し、自明な部分群は普遍被覆に、群全体は恒等写像 $B\to B$ に当たる。
部分群 $p_*\pi_1(E,e_0)$ は「$E$ の中で持ち上げると再びループになるループ」のホモトピー類の全体である。被覆空間がこの情報だけで決まること(一意性)は持ち上げの判定法から、どんな部分群も現れること(存在)は普遍被覆を部分群の作用で割る構成から従う。弧状連結とは限らない被覆まで含めると、被覆の圏は基本群が右から作用する空でない集合の圏と同値になる。

設定と定義

この記事を通じて、$B$ は弧状連結かつ局所弧状連結空間であるとし、基点 $b_0\in B$ を固定して $G:=\pi_1(B,b_0)$ とおく。被覆写像は被覆空間の記事の定義「被覆写像と被覆空間」に従い、全射を仮定する。$B$ が局所弧状連結なので、被覆空間 $E$ も局所弧状連結であり(局所弧状連結空間の記事の系「被覆写像と局所弧状連結性」)、$E$ の弧状連結成分はそれぞれ開かつ閉で、$B$ の上の被覆空間になる(同記事の命題「被覆空間の弧状連結成分」)。

対応する部分群と被覆の射

$B$ 上の二つの被覆 $p_1\colon E_1\to B$、$p_2\colon E_2\to B$ の間の被覆の射とは、連続写像 $f\colon E_1\to E_2$ で $p_2\circ f=p_1$ を満たすものをいう。被覆の射が同相写像であるとき被覆の同型という。$B$ 上の被覆を対象、被覆の射を射とする圏を $\mathsf{Cov}(B)$ と書く。
$$ \xymatrix{ E_1 \ar[rr]^{f} \ar[dr]_{p_1} & & E_2 \ar[dl]^{p_2} \\ & B & } $$
$p(e_0)=b_0$ となる点 $e_0\in E$ を指定した被覆を基点付き被覆 $p\colon(E,e_0)\to(B,b_0)$ といい、基点を保つ被覆の同型を基点付きの同型という。基点付き被覆に対し、部分群
$$ H(E,e_0):=p_*\pi_1(E,e_0)\subset G $$
をその被覆に対応する部分群と呼ぶ。

$f$ が同相写像なら $p_1\circ f^{-1}=p_2$ なので、逆写像も被覆の射である。
次の三つの事実を繰り返し使う。ファイバー $p^{-1}(b_0)$ の点 $e$ と $[\gamma]\in G$ に対し、$e$ を始点とする $\gamma$ の持ち上げの終点を $e\cdot[\gamma]$ と書くと、これは $G$ のファイバーへの右作用(モノドロミー作用)であり、$E$ が弧状連結なら推移的である(被覆変換群の記事の節「モノドロミー作用」)。

  1. $[\gamma]\in H(E,e_0)$ であることと $e_0\cdot[\gamma]=e_0$ であることは同値である。つまり $H(E,e_0)$ は $e_0$ の安定化群である(被覆変換群の記事の補題「持ち上げがループになるループ」)。
  2. $H(E,e_0\cdot g)=g^{-1}H(E,e_0)g$ である(同記事の補題「基点を取り替えたときの部分群」)。
  3. 持ち上げの判定法:$Y$ が弧状連結かつ局所弧状連結で $f\colon(Y,y_0)\to(B,b_0)$ が連続なら、$f$ が $p\colon(E,e_0)\to(B,b_0)$($E$ は弧状連結)に沿って $e_0$ を通る持ち上げをもつことと $f_*\pi_1(Y,y_0)\subset H(E,e_0)$ とは同値であり、持ち上げはあればただ一つである(同記事の補題「持ち上げの判定法」)。
    1 と群の作用の記事の定理「軌道・安定化群定理」から、弧状連結な被覆のファイバーの濃度(シートの数)は指数(群論) $[G:H(E,e_0)]$ に等しい。

主定理

被覆空間の分類

$B$ を弧状連結、局所弧状連結かつ半局所単連結空間とし、$b_0\in B$、$G=\pi_1(B,b_0)$ とする。

  1. 弧状連結な基点付き被覆 $(E,e_0)$ に部分群 $H(E,e_0)$ を対応させる写像は、基点付きの同型類の集合から $G$ の部分群全体の集合への全単射である。
  2. 基点を忘れると、弧状連結な被覆の同型類の集合と、$G$ の部分群の共役類の集合とが一対一に対応する。
  3. 弧状連結な基点付き被覆 $(E_1,e_1)$、$(E_2,e_2)$ について、基点を保つ被覆の射 $(E_1,e_1)\to(E_2,e_2)$ が存在することと $H(E_1,e_1)\subset H(E_2,e_2)$ とは同値である。この射はただ一つで、それ自身が $[H(E_2,e_2):H(E_1,e_1)]$ 重の被覆写像である。
  4. 自明な部分群に対応するのは普遍被覆、$G$ に対応するのは恒等写像 $B\to B$ である。部分群 $H$ に対応する被覆のシートの数は $[G:H]$ である。

1 の写像が基点付きの同型類の上で矛盾なく定まり単射であることは ccl-prop-unique、全射であることは ccl-thm-exist である。2 は ccl-prop-conj と 1 から、3 は ccl-prop-order から従う。4 について、$H(E,e_0)$ が自明であることは、$p_*$ が単射なので(被覆空間の記事の定理「基本群との関係」の 1)$\pi_1(E,e_0)$ が自明であること、すなわち $E$ が単連結であることと同値である。$G$ に対応する被覆はシートが $[G:G]=1$ 枚なので、全単射な被覆写像、したがって連続な全単射の開写像(被覆写像は開写像)であり、同相写像である。シートの数については節「設定と定義」の最後の段落による。$\square$

準備:被覆の射は被覆写像

被覆の射は被覆写像

$E_1$ が空でなく $E_2$ が弧状連結であるとき、被覆の射 $f\colon E_1\to E_2$ は全射であり、それ自身が被覆写像である。

要点:$p_1$ と $p_2$ の両方について均一に被覆される弧状連結な開集合 $W$ をとると、$p_1$ の $W$ 上のシートはどれも、$f$ によって $p_2$ のシートの一枚の上へ同相に写る。そこから $f$ の像が開かつ閉であること、$p_2$ のシートが $f$ について均一に被覆されることが従う。

詳しい証明を開く

各 $b\in B$ について、$p_1$ についても $p_2$ についても均一に被覆される弧状連結な開近傍 $W$ をとる(両方の均一被覆近傍の共通部分の中に、局所弧状連結性により弧状連結な開近傍をとればよい。均一に被覆される開集合の開部分集合はまた均一に被覆される)。$W$ の上のシートは $W$ と同相で弧状連結なので、$p_i^{-1}(W)$ の弧状連結成分にちょうど一致する。$p_1$ のシート $V$ をとると、$f(V)$ は $p_2^{-1}(W)$ の弧状連結な部分集合なので一つのシート $V'$ に含まれ、$p_2|_{V'}\circ f|_V=p_1|_V$ から $f|_V=(p_2|_{V'})^{-1}\circ p_1|_V\colon V\to V'$ は同相写像である。

したがって、$V'$ が $f(E_1)$ と交われば、交点を含む $p_1$ のシート $V$ について $f(V)=V'$ となり $V'\subset f(E_1)$ である。こうして $p_2$ のシート($b$ を動かしたもの全体は $E_2$ を覆う)は $f(E_1)$ に含まれるか $f(E_1)$ と交わらないかのどちらかなので、$f(E_1)$ とその補集合はともに開集合である。$E_2$ は連結で $f(E_1)\neq\emptyset$ なので $f$ は全射である。最後に、$f^{-1}(V')$ は $p_1^{-1}(W)$ に含まれ、$p_1$ の各シートは丸ごと一つの $p_2$ のシートに写るので、$f^{-1}(V')$ は $f(V)=V'$ となる $p_1$ のシート $V$ たちの互いに交わらない和(全射性から空でない)であり、各 $V$ は $f$ により $V'$ の上へ同相に写る。よって $V'$ は $f$ について均一に被覆され、$f$ は被覆写像である。$\square$

一意性

部分群が等しい基点付き被覆

$(E_1,e_1)$、$(E_2,e_2)$ を弧状連結な基点付き被覆とする($B$ の半局所単連結性は仮定しない)。基点付きの同型 $(E_1,e_1)\to(E_2,e_2)$ が存在するための必要十分条件は $H(E_1,e_1)=H(E_2,e_2)$ であり、このとき基点付きの同型はただ一つである。

必要性:$f$ が基点付きの同型なら、$f$ は同相写像なので $f_*\pi_1(E_1,e_1)=\pi_1(E_2,e_2)$ であり、$p_2\circ f=p_1$ から
$$ H(E_1,e_1)=(p_2\circ f)_*\pi_1(E_1,e_1)=p_{2*}f_*\pi_1(E_1,e_1)=p_{2*}\pi_1(E_2,e_2)=H(E_2,e_2) $$
である。
十分性:$E_1$ は弧状連結かつ局所弧状連結であり、$p_{1*}\pi_1(E_1,e_1)=H(E_2,e_2)$ なので、持ち上げの判定法により $p_1$ の $p_2$ に沿った持ち上げ $f\colon E_1\to E_2$ で $f(e_1)=e_2$ となるものがある。$p_2\circ f=p_1$ なので $f$ は被覆の射である。役割を入れ替えて、被覆の射 $g\colon E_2\to E_1$ で $g(e_2)=e_1$ となるものもある。$g\circ f$ と $\mathrm{id}_{E_1}$ はどちらも $p_1$ の $p_1$ に沿った持ち上げで、$e_1$ で一致するので、$E_1$ が連結であることから等しい(被覆空間の記事の定理「持ち上げの一意性」)。同様に $f\circ g=\mathrm{id}_{E_2}$ であり、$f$ は同相写像である。基点を保つ被覆の射はどれも $p_1$ の持ち上げで $e_1$ を $e_2$ に送るので、同じ定理によりただ一つである。$\square$

存在:普遍被覆を部分群で割る

存在の証明には、普遍被覆の記事の定理「普遍被覆の存在」の構成をそのまま使う。$\tilde B$ は $b_0$ から出る道の道のホモトピー類 $[\gamma]$ 全体、$p([\gamma])=\gamma(1)$ であり、同じ証明の段 1〜4 から次が分かる。$B$ の開集合 $U$ で、弧状連結であり、$U$ の中のループがすべて $B$ の中で定値道とホモトピックになるものをよい開集合と呼ぶ。よい開集合の全体 $\mathcal U$ は $B$ の開基であり、$U\in\mathcal U$ と $\gamma(1)\in U$ となる $\gamma$ に対し
$$ U_{[\gamma]}:=\{[\gamma\cdot\eta]\mid\eta\text{ は }U\text{ の中の道で }\eta(0)=\gamma(1)\} $$
は $\tilde B$ の開集合で、(i) $p|_{U_{[\gamma]}}\colon U_{[\gamma]}\to U$ は同相写像、(ii) $[\gamma']\in U_{[\gamma]}$ なら $U_{[\gamma']}=U_{[\gamma]}$、(iii) $p^{-1}(U)$ は $\gamma(1)\in U$ となる $U_{[\gamma]}$ たちの和である。
$[\alpha]\in G$ に対し $\sigma_\alpha([\gamma]):=[\alpha\cdot\gamma]$ とおく(先に $\alpha$ を回ってから $\gamma$ をたどる)。$\sigma_\alpha$ は $U_{[\gamma]}$ を $U_{[\alpha\cdot\gamma]}$ の上へ写し、そこでは $\sigma_\alpha=(p|_{U_{[\alpha\cdot\gamma]}})^{-1}\circ p|_{U_{[\gamma]}}$ なので連続であり、$\sigma_{\bar\alpha}$ が逆写像である。$p\circ\sigma_\alpha=p$、$\sigma_\alpha\circ\sigma_\beta=\sigma_{\alpha\cdot\beta}$ も定義から分かる(普遍被覆の記事の節「基本群の作用と被覆の分類」)。

部分群に対応する被覆の存在

$B$ を弧状連結、局所弧状連結かつ半局所単連結とし、$H\subset G$ を部分群とする。$\tilde B$ を $\{\sigma_h\mid h\in H\}$ の軌道で割った商空間を $E_H$、商写像を $q\colon\tilde B\to E_H$ とし、$p_H\colon E_H\to B$ を $p_H(q(x)):=p(x)$ で定める。このとき $p_H$ は弧状連結な被覆であり、$e_H:=q([c_{b_0}])$($c_{b_0}$ は定値道)について
$$ H(E_H,e_H)=H $$
が成り立つ。さらに、よい開集合はどれも、すべての $H$ について $p_H$ に関して均一に被覆される。

$p\circ\sigma_h=p$ なので $p_H$ は矛盾なく定まり、$p=p_H\circ q$ と商位相の性質から連続であり、$p$ が全射なので全射である。$\tilde B$ の開集合 $W$ について $q^{-1}(q(W))=\bigcup_{h\in H}\sigma_h(W)$ は開集合の和なので、$q$ は開写像である。
$U\in\mathcal U$ と $\gamma(1)\in U$ をとる。$q(x)=q(y)$ なら $p(x)=p(y)$ であり、$p$ は $U_{[\gamma]}$ 上で単射なので、$q|_{U_{[\gamma]}}$ は単射である。連続な単射の開写像なので、$q|_{U_{[\gamma]}}$ は開集合 $q(U_{[\gamma]})$ の上への同相写像であり、$p_H|_{q(U_{[\gamma]})}=p|_{U_{[\gamma]}}\circ(q|_{U_{[\gamma]}})^{-1}$ は $q(U_{[\gamma]})$ から $U$ への同相写像である。
二つの集合 $q(U_{[\gamma]})$、$q(U_{[\gamma']})$ は一致するか交わらない。実際、交われば $x\in U_{[\gamma]}$、$y\in U_{[\gamma']}$ と $h\in H$ で $y=\sigma_h(x)$ となるものがある。$\sigma_h(U_{[\gamma]})=U_{[h\cdot\gamma]}$ は $y$ を含むので (ii) により $U_{[h\cdot\gamma]}=U_{[\gamma']}$ であり、$q\circ\sigma_h=q$ から $q(U_{[\gamma']})=q(\sigma_h(U_{[\gamma]}))=q(U_{[\gamma]})$ である。(iii) と $q$ の全射性から $p_H^{-1}(U)=q(p^{-1}(U))$ は集合 $q(U_{[\gamma]})$ たちの和である。以上により $p_H^{-1}(U)$ は互いに交わらない開集合の和で、各々が $p_H$ により $U$ の上へ同相に写る。$\mathcal U$ は $B$ を覆うので $p_H$ は被覆写像であり、最後の主張も示された。$E_H=q(\tilde B)$ は弧状連結な $\tilde B$ の連続像なので弧状連結である。
部分群を求める。$b_0$ を基点とするループ $\gamma$ について、$\gamma_t(s):=\gamma(ts)$ とおくと $t\mapsto[\gamma_t]$ は $\gamma$ の $p$ に沿った持ち上げで $[c_{b_0}]$ から $[\gamma]$ へ至る(普遍被覆の記事の定理「普遍被覆の存在」の証明の段 5)。$q$ と合成すれば $\gamma$ の $p_H$ に沿った持ち上げで、$e_H$ から $q([\gamma])$ へ至る。よって $e_H\cdot[\gamma]=q([\gamma])$ であり、
$$ e_H\cdot[\gamma]=e_H\iff[\gamma]=\sigma_h([c_{b_0}])=h\ \text{となる}\ h\in H\ \text{がある}\iff[\gamma]\in H $$
である。$e_H$ の安定化群は $H(E_H,e_H)$ なので(節「設定と定義」の事実 1)、$H(E_H,e_H)=H$ である。$\square$

基点を忘れた分類と被覆の射

基点の取り替えと共役

弧状連結な被覆 $E$ について、$e$ が $p^{-1}(b_0)$ を動くとき、部分群 $H(E,e)$ たちは $G$ の一つの共役類をちょうど尽くす。弧状連結な被覆 $E_1$、$E_2$ が(基点を保つとは限らない)被覆の同型をもつための必要十分条件は、$H(E_1,e_1)$ と $H(E_2,e_2)$ が共役であることである。

前半:作用は推移的なので $p^{-1}(b_0)=\{e\cdot g\mid g\in G\}$ であり、節「設定と定義」の事実 2 により $H(E,e\cdot g)=g^{-1}H(E,e)g$ である。$g$ はすべての元を動くので、$H(E,e)$ の共役類全体が現れる。
後半:$f\colon E_1\to E_2$ を被覆の同型とすると、$f(e_1)\in p_2^{-1}(b_0)$ であり、$f$ は $(E_1,e_1)$ から $(E_2,f(e_1))$ への基点付きの同型なので、ccl-prop-unique により $H(E_1,e_1)=H(E_2,f(e_1))$ である。前半によりこれは $H(E_2,e_2)$ と共役である。逆に $H(E_1,e_1)=g^{-1}H(E_2,e_2)g$ なら、前半により $H(E_2,e_2\cdot g)=H(E_1,e_1)$ であり、ccl-prop-unique により $(E_1,e_1)$ と $(E_2,e_2\cdot g)$ は基点付きで同型である。$\square$

部分群の包含と被覆の射

$(E_1,e_1)$、$(E_2,e_2)$ を弧状連結な基点付き被覆とし、$H_i:=H(E_i,e_i)$ とおく。基点を保つ被覆の射 $f\colon(E_1,e_1)\to(E_2,e_2)$ が存在するための必要十分条件は $H_1\subset H_2$ である。このとき $f$ はただ一つで、$[H_2:H_1]$ 重の被覆写像である。

$f$ があれば $H_1=p_{2*}f_*\pi_1(E_1,e_1)\subset p_{2*}\pi_1(E_2,e_2)=H_2$ である。逆に $H_1\subset H_2$ なら、持ち上げの判定法により $p_1$ の $p_2$ に沿った持ち上げ $f$ で $f(e_1)=e_2$ となるものがただ一つあり、これが被覆の射である。ccl-lem-morphism-covering により $f$ は被覆写像である。$E_2$ も弧状連結かつ局所弧状連結なので、被覆 $f\colon E_1\to E_2$ に節「設定と定義」の最後の段落を(底空間を $E_2$ として)当てると、そのシートの数は $[\pi_1(E_2,e_2):f_*\pi_1(E_1,e_1)]$ である。$p_{2*}$ は単射で(被覆空間の記事の定理「基本群との関係」の 1)、$\pi_1(E_2,e_2)$ を $H_2$ に、$f_*\pi_1(E_1,e_1)$ を $H_1$ に同型に写すので、この指数は $[H_2:H_1]$ に等しい。$\square$

とくに普遍被覆は、自明な部分群がどの部分群にも含まれることから、すべての弧状連結な被覆を覆う(普遍被覆の記事の定理「普遍被覆の普遍性」)。

基点を忘れた「覆う」関係

弧状連結な被覆 $E_1$ が $E_2$ を覆う(基点を保つとは限らない被覆の射 $E_1\to E_2$ がある)ことは、ccl-prop-order と ccl-prop-conj により、$H_1$ のある共役が $H_2$ に含まれることと同値である。この関係は反射的かつ推移的だが、互いに覆い合う二つの被覆が同型とは限らない。シートの数が有限なら反対称性は成り立つ。

理由を開く

$gH_1g^{-1}\subset H_2$ かつ $g'H_2g'^{-1}\subset H_1$ なら $[G:H_2]\le[G:H_1]\le[G:H_2]$ であり、指数が有限なら $[H_2:gH_1g^{-1}]=1$、すなわち $H_1$ と $H_2$ は共役である。


無限シートでは成り立たない。$B$ を 3 個の円周のブーケとすると、$G$ は $a,b,c$ を基底とする自由群である(群の表示複体の記事の補題「円周のブーケの基本群」)。$a_i:=b^iab^{-i}$、$c_i:=b^icb^{-i}$ とおき、
$$ H:=\langle a_i,c_i\mid i\ge0\rangle,\qquad K:=\langle a_i\ (i\ge0),\ c_i\ (i\ge1)\rangle $$
とすると $bHb^{-1}\subset K\subset H$ なので、$H$ と $K$ に対応する被覆は互いに覆い合う。しかし $H$ と $K$ は共役でないので、二つの被覆は同型でない。
共役でないことの確かめを開く

$G$ の元を $a^{\pm1},b^{\pm1},c^{\pm1}$ の語で書き、左から読みながら、それまでに現れた $b$ の指数の和を「高さ」と呼ぶ。高さ $i$ で現れる $a^{\pm1}$ に $\pm e^a_i$、$c^{\pm1}$ に $\pm e^c_i$ を割り当て、その和を $\nu(w)\in\bigoplus_{i\in\mathbb Z}(\mathbb Z e^a_i\oplus\mathbb Z e^c_i)$ とおく。隣り合う $xx^{-1}$ の挿入・削除は $\nu$ を変えないので、$\nu$ は $G$ 上で矛盾なく定まる。語の連結から、$b$ の指数の和を $\operatorname{ht}(g)$ と書き、添字を $k$ だけずらす写像を $s_k$ とすると $\nu(gg')=\nu(g)+s_{\operatorname{ht}(g)}\nu(g')$ である。とくに $\nu(gng^{-1})=\nu(g)+s_{\operatorname{ht}(g)}\nu(n)+s_{\operatorname{ht}(g)+\operatorname{ht}(n)}\nu(g^{-1})$ であり、$\operatorname{ht}(n)=0$ のとき第 1 項と第 3 項の和は $\nu(gg^{-1})=0$ なので、$\nu(gng^{-1})=s_{\operatorname{ht}(g)}\nu(n)$ となる。

$\operatorname{ht}=0$ の元からなる部分群 $S$ に対し、$\nu(S)$ の元の $e^a_i$ 成分が $0$ でない最小の $i$ を $m_a(S)$、$e^c_i$ 成分について同様に $m_c(S)$ とおく。$\nu(a_i)=e^a_i$、$\nu(c_i)=e^c_i$ で $\nu$ は高さ $0$ の元の上で準同型なので、$m_a(H)=m_c(H)=0$、$m_a(K)=0$、$m_c(K)=1$ である。$gHg^{-1}$ の元は $gng^{-1}$($n\in H$)なので $m_a(gHg^{-1})=m_c(gHg^{-1})=\operatorname{ht}(g)$ である。$m_a(K)\neq m_c(K)$ なので $K$ は $H$ のどの共役とも等しくない。包含 $bHb^{-1}\subset K\subset H$ は生成元を見れば分かり、$c_0\in H\setminus K$ である。

被覆の圏と基本群が作用する集合

弧状連結とは限らない被覆まで含めると、分類は圏の同値として述べられる。被覆の射 $f\colon E_1\to E_2$ はファイバーをファイバーへ写し、$e\in p_1^{-1}(b_0)$ からの $\gamma$ の持ち上げ $\tilde\gamma$ に対し $f\circ\tilde\gamma$ は $f(e)$ からの持ち上げなので
$$ f(e\cdot[\gamma])=f(e)\cdot[\gamma] $$
が成り立つ。つまり $f$ のファイバーへの制限は右 $G$ 集合の写像(同変写像)である。これにより、ファイバー関手 $\Phi\colon\mathsf{Cov}(B)\to\mathsf{Set}_G$、$\Phi(E):=p^{-1}(b_0)$、$\Phi(f):=f|_{p_1^{-1}(b_0)}$ が定まる。ここで $\mathsf{Set}_G$ は $G$ が右から作用する集合と同変写像の圏である。

被覆の圏と基本群が作用する集合

$B$ を弧状連結、局所弧状連結かつ半局所単連結とする。ファイバー関手 $\Phi$ は、$\mathsf{Cov}(B)$ から、空でない右 $G$ 集合のなす $\mathsf{Set}_G$ の充満部分圏への圏同値である。さらに、$E$ の弧状連結成分は $\Phi(E)$ の軌道と一対一に対応し、とくに $E$ が弧状連結であることと $\Phi(E)$ への作用が推移的であることは同値である。

被覆写像は全射なので $\Phi(E)$ は空でない。
成分と軌道:$E$ の弧状連結成分 $C$ は開かつ閉で、$p|_C$ は $B$ の被覆である(局所弧状連結空間の記事の命題「被覆空間の弧状連結成分」)。とくに $C$ はファイバーと交わる。ファイバーの点 $e,e'$ が同じ成分にあれば、$E$ の中の $e$ から $e'$ への道を $p$ で写したループ $\gamma$ について $e\cdot[\gamma]=e'$ である。逆に $e'=e\cdot[\gamma]$ なら持ち上げた道が $e$ と $e'$ を結ぶ。よって $C\cap p^{-1}(b_0)$ はちょうど一つの軌道である。
忠実:被覆の射 $f,f'\colon E_1\to E_2$ がファイバーの上で一致するとする。$E_1$ の各弧状連結成分 $C$ はファイバーの点 $e$ を含み、$f|_C$ と $f'|_C$ はどちらも $p_1|_C$ の $p_2$ に沿った持ち上げで $e$ で一致するので、$C$ が連結であることから等しい(被覆空間の記事の定理「持ち上げの一意性」)。
充満:同変写像 $\varphi\colon\Phi(E_1)\to\Phi(E_2)$ をとる。$E_1$ の弧状連結成分 $C$ とファイバーの点 $e\in C$ を選び、$\varphi(e)$ を含む $E_2$ の弧状連結成分を $C'$ とする。$e\cdot g=e$ なら $\varphi(e)\cdot g=\varphi(e\cdot g)=\varphi(e)$ なので、節「設定と定義」の事実 1 により
$$ H(C,e)=(e\text{ の安定化群})\subset(\varphi(e)\text{ の安定化群})=H(C',\varphi(e)) $$
である。ccl-prop-order により基点を保つ被覆の射 $f_C\colon(C,e)\to(C',\varphi(e))$ がある。$C$ のファイバーの点はすべて $e\cdot g$ の形で、$f_C(e\cdot g)=f_C(e)\cdot g=\varphi(e)\cdot g=\varphi(e\cdot g)$ である。$E_1$ の弧状連結成分は互いに交わらない開集合なので、$f_C$ たちを貼り合わせた $f\colon E_1\to E_2$ は連続な被覆の射で、$\Phi(f)=\varphi$ である。
本質的全射:空でない右 $G$ 集合 $S$ を軌道に分けて $S=\bigsqcup_jS_j$ とし、$s_j\in S_j$ と安定化群 $H_j$ を選ぶ。ccl-thm-exist の被覆 $(E_{H_j},e_{H_j})$ の非交和 $E:=\bigsqcup_jE_{H_j}$ を考える。よい開集合はすべての $p_{H_j}$ に関して均一に被覆されるので(ccl-thm-exist の最後の主張)、その上のシートを全部集めれば $E\to B$ に関しても均一に被覆され、$E\to B$ は被覆である。$\Phi(E_{H_j})$ は推移的で $e_{H_j}$ の安定化群は $H_j$ なので、$e_{H_j}\cdot g\mapsto s_j\cdot g$ は $\Phi(E_{H_j})$ から $S_j$ への同変な全単射である(群の作用の記事の定理「軌道・安定化群定理」の右作用版。$e_{H_j}\cdot g=e_{H_j}\cdot g'$ と $gg'^{-1}\in H_j$ と $s_j\cdot g=s_j\cdot g'$ は同値)。これらを並べて $\Phi(E)\cong S$ を得る。
充満忠実かつ本質的全射なので、$\Phi$ は圏同値である(圏同値の記事の命題「圏同値の十分条件」)。$\square$

空の被覆と流儀

空集合も被覆と認める流儀では、$\Phi$ は $\mathsf{Set}_G$ 全体との圏同値になる。同型類だけを見れば、$n$ 重被覆の同型類は準同型 $G\to\mathfrak S_n$ の $\mathfrak S_n$ による共役類と一対一に対応する(右作用 $x\cdot g$ には準同型 $g\mapsto(x\mapsto x\cdot g^{-1})$ を対応させる)。

例

円周の被覆

$B=S^1$ では $G=\pi_1(S^1)\cong\mathbb Z$ で、部分群は $n\mathbb Z$($n\ge0$)に限る。$\mathbb Z$ は可換なので共役類は部分群そのものである。$n\ge1$ に対応するのは $n$ 重被覆 $z\mapsto z^n$(被覆空間の記事の例「円周の $n$ 重被覆」。$e_0=1$ からの持ち上げがループになるのは $n$ 回りの倍数のループ)、$n=0$ に対応するのは普遍被覆 $\mathbb R\to S^1$ である。したがって、$S^1$ の弧状連結な被覆はこれらのどれかと同型である。
弧状連結とは限らない $n$ 重被覆は、ccl-thm-category により $n$ 点の集合上の $\mathbb Z$ の作用、すなわち $\mathfrak S_n$ の一つの元の共役類で分類され、共役類は巡回置換の長さの組で決まる。たとえば 3 重被覆は、長さの組 $(3)$、$(2,1)$、$(1,1,1)$ に応じて成分が 1・2・3 個のものの 3 種類である(Hat02 p. 68 の例)。

実射影空間の被覆

$n\ge2$ のとき $G=\pi_1(\mathbb{RP}^n)\cong\mathbb Z/2\mathbb Z$ の部分群は自明な群と全体だけなので、$\mathbb{RP}^n$ の弧状連結な被覆は、普遍被覆 $S^n\to\mathbb{RP}^n$ と恒等写像の 2 種類に限る(被覆変換群の記事の例「球面と実射影空間、円周の $k$ 重被覆」)。

自分自身を2重に覆う被覆

基点を忘れると、弧状連結な被覆が自分自身を同型でない仕方で覆うことがある。$B$ を表示 $\langle t,b\mid tbt^{-1}b^{-2}\rangle$ の表示複体、$v$ をその 0 胞体とし、$G=\pi_1(B,v)$ とする(群の表示複体の記事の例「Baumslag–Solitar 群 BS(1,2)」)。$B$ は CW 複体なので局所可縮で(CW複体の記事の定理「CW 複体は局所可縮」)、分類の仮定を満たす。$H:=\langle b\rangle$ に対応する被覆 $(E,e_0)$ をとり、$c:=t^{-1}bt$ とおく。
要点:$c^2=b$ なので、$H=\langle b\rangle$ は $t^{-1}Ht=\langle c\rangle$ の指数 2 の部分群になり、ccl-prop-order により $E$ は自分自身を 2 重に覆う。

確かめを開く

同じ例の同型 $G\cong\mathbb Z[1/2]\rtimes\mathbb Z$ で $b\mapsto(1,0)$、$c\mapsto(1/2,0)$ なので $c$ は無限位数で、$c^2=t^{-1}b^2t=t^{-1}(tbt^{-1})t=b$ である。よって $H=\langle c^2\rangle$ は $\langle c\rangle=t^{-1}Ht=H(E,e_0\cdot t)$ の指数 $2$ の部分群である。ccl-prop-order により、基点を保つ被覆の射 $f\colon(E,e_0)\to(E,e_0\cdot t)$ があり、$f$ は $E$ から $E$ 自身への 2 重被覆である。とくに $f$ は単射でなく、被覆の同型ではない。

条件を外した反例

外す条件反例成り立たなくなること
底空間の半局所単連結性(ccl-thm-exist)ハワイの耳飾り $\mathbb H$ と自明な部分群部分群に対応する弧状連結な被覆の存在
底空間の局所弧状連結性(ccl-thm-category)ワルシャワ円 $W$ の連結な 2 重被覆と自明な 2 重被覆 $W\sqcup W$ファイバーが同型なら被覆も同型であること
被覆空間の弧状連結性(ccl-thm-main の 1)$S^1\sqcup S^1\to S^1$ と恒等写像 $S^1\to S^1$対応する部分群が等しい基点付き被覆は同型であること
反例の確かめ

要点:1 行目は普遍被覆の非存在、2 行目は連結だが弧状連結でない被覆、3 行目は成分の数の違いによる。

各行の確かめを開く

1 行目:$\mathbb H$ は弧状連結かつ局所弧状連結(局所弧状連結空間の記事の例「ハワイの耳飾りの局所弧状連結性」)だが、半局所単連結でない(半局所単連結空間の記事の命題「Hawaiianイヤリングは半局所単連結でない」)。自明な部分群に対応する弧状連結な被覆 $E$ があれば、$p_*$ は単射なので $\pi_1(E)$ は自明で、$E$ は普遍被覆になる。ところが普遍被覆をもつ空間は半局所単連結である(普遍被覆の記事の命題「普遍被覆が存在するための必要条件」)。

2 行目:$W$ は弧状連結で単連結(局所弧状連結空間の記事の例「ワルシャワ円と持ち上げの判定法」)なので半局所単連結だが、局所弧状連結でない。$W$ には連結だが弧状連結でない 2 重被覆 $\pi\colon E\to W$ がある(普遍被覆の記事の例「反例の確かめ」の 4 行目)。$G$ は自明なので、$E$ と $W\sqcup W$ のファイバーはどちらも自明な作用をもつ 2 点集合で、同型である。しかし $E$ は連結で $W\sqcup W$ は連結でないので、両者は同相でない。圏同値は、像が同型になる二つの対象を同型なものに限るので、$W$ ではファイバー関手は圏同値でない。

3 行目:どちらの被覆も、第 1 成分の点を基点にすれば、対応する部分群は $\pi_1(S^1)$ 全体である(持ち上げは基点を含む成分の中で恒等写像に沿って行われる)。しかしファイバーの点の個数が 2 と 1 で異なるので同型でない。

補足

Galois理論との類似

部分群と被覆の対応、正規部分群と正規被覆の対応、被覆変換群 $N(H)/H$(被覆変換群の記事の定理「被覆変換群と正規化群」)は、Galois理論における部分群と中間体の対応と同じ形をしている(被覆空間の記事の注意「Galois理論との対応」)。ccl-thm-category の形の主張は、連結なスキームの有限エタール被覆の圏と、エタール基本群が連続に作用する有限集合の圏との同値に引き継がれる(エタール基本群の記事の定理「Galois圏の主定理の適用」。この記事では証明しない)。

出典
所在を開く

持ち上げの判定法は Hat02 §1.3 Proposition 1.33(p. 61)、一意性は Proposition 1.37(p. 67)、普遍被覆を部分群で割る存在の構成は Proposition 1.36(p. 66)、分類は Theorem 1.38(pp. 67–68)、ファイバーへの作用による同型類の分類は pp. 68–70 にある。Mun00 では一意性が §79 Theorem 79.2(p. 480)、共役による言い換えが Lemma 79.3(p. 481)と Theorem 79.4(p. 482)、存在が §82 Theorem 82.1(p. 495)である。

関連項目

参考文献

[1]
Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002, §1.3:Proposition 1.33(持ち上げの判定法、p. 61)、Proposition 1.36(部分群に対応する被覆の構成、p. 66)、Proposition 1.37(一意性、p. 67)、Theorem 1.38(分類、pp. 67–68)、ファイバーへの作用による分類(pp. 68–70)
[2]
James R. Munkres, Topology, Prentice Hall, 2000, §79 Theorem 79.2(p. 480)・Lemma 79.3(p. 481)・Theorem 79.4(p. 482)、§82 Theorem 82.1(p. 495)

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