Lucas擬素数

同義語:リュカ擬素数Lucas pseudoprime

概要

Lucas擬素数(Lucas pseudoprime)とは、整数 $P,Q$ と $D=P^2-4Q\ne0$ から作る Lucas 数列 $U_k$ について、$\gcd(n,QD)=1$ を満たす奇数の合成数 $n$ で $U_{n-(D/n)}\equiv0\pmod n$($(D/n)$ は Jacobi 記号)を満たすもののことである。$QD$ を割らない奇素数 $p$ では必ず $U_{p-(D/p)}\equiv0\pmod p$ が成り立ち、Fibonacci 数列 $(P,Q)=(1,-1)$ では $323=17\cdot19$ が最小の Lucas 擬素数である。$2$ の冪を取り出した強 Lucas 擬素数の条件と底 $2$ の強擬素数の条件を組み合わせた Baillie–PSW 判定法は、$2^{64}$ 未満の合成数をすべて正しく判定する。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 擬素数, Lucas数列の関係式, Jacobi記号, 有限体

擬素数 は、Fermat の小定理の合同式 $a^{n-1}\equiv1\pmod n$ を満たしてしまう合成数であった。Fibonacci 数列 $F_0=0,\ F_1=1,\ F_{k+2}=F_{k+1}+F_k$ にも、素数 $p$ について成り立つ似た合同式がある。$p\ne2,5$ が素数なら、$p$ を $5$ で割った余りが $\pm1$ のとき $p\mid F_{p-1}$、$\pm2$ のとき $p\mid F_{p+1}$ である。たとえば $F_6=8$ は $7$ で割り切れず $F_8=21$ が $7$ で割り切れ、$F_{10}=55$ は $11$ で割り切れる。この合同式も合成数で成り立つことがあり、$323=17\cdot19$ は $F_{324}$ を割る。このような合成数を Lucas 擬素数(Lucas pseudoprime)という。
Lucas 擬素数は、一般の Lucas 数列 $U_k(P,Q)$ について同じように定義される。Fermat の条件を満たしてしまう合成数と Lucas の条件を満たしてしまう合成数は性質が違う傾向があり、両者を組み合わせた Baillie–PSW 判定法は、$2^{64}$ 未満のすべての合成数を正しく合成数と判定することが計算で確かめられている(BFW21 §3、p. 6)。
この記事では、素数 $p$ について $U_{p-(D/p)}\equiv0\pmod p$ が成り立つこと(thm-lpsp-prime)を、二次の剰余環 $\mathbb F_p[x]/(x^2-Px+Q)$ の中の Frobenius 写像を使って証明し、Lucas 擬素数と強 Lucas 擬素数を定義して例を調べる。強 Lucas 擬素数の条件を素数が満たすこと(thm-lpsp-strong-prime)と、強い条件が元の条件を含むこと(prop-lpsp-strong-implies)も証明する。

定義

$P,Q$ を整数とし、$D:=P^2-4Q\ne0$ とする。Lucas 数列 $U_k=U_k(P,Q)$、$V_k=V_k(P,Q)$($k\ge0$)を
$$ U_0=0,\ U_1=1,\qquad V_0=2,\ V_1=P,\qquad W_{k+2}=PW_{k+1}-QW_k\quad(W=U,V) $$
で定める(Lucas数列の関係式 の定義「第1種・第2種のLucas数列」と同じ)。$(P,Q)=(1,-1)$ では $U_k=F_k$ は Fibonacci 数、$V_k$ は通常の Lucas 数 $2,1,3,4,7,11,\dots$ であり、$D=5$ である。正の奇数 $n$ について $\left(\frac Dn\right)$ は Jacobi記号 を表す。

素数での Lucas 数列の合同式

$p$ を $QD$ を割らない奇素数とし、$\varepsilon:=\left(\frac Dp\right)$($=\pm1$)とおく。このとき
$$ U_{p-\varepsilon}\equiv0\pmod p,\qquad V_{p-\varepsilon}\equiv2Q^{(1-\varepsilon)/2}\pmod p $$
が成り立つ。

定理の所在と証明の場所

この定理は BFW21 §2.3(p. 4)に合同式 (7)・(8) として述べられている。証明は節「素数での合同式の証明」の prf-lpsp-prime で与える。

$(P,Q)=(1,-1)$ では $D=5$ で、平方剰余の相互法則(Jacobi記号 の命題「Jacobi 記号の基本性質」の 4)により $\left(\frac5p\right)=\left(\frac p5\right)$ なので、冒頭の「余りが $\pm1$ なら $p\mid F_{p-1}$、$\pm2$ なら $p\mid F_{p+1}$」が得られる($\pm1$ は法 $5$ の平方剰余、$\pm2$ は非剰余)。

Lucas擬素数

$n$ を奇数の合成数とし、$\gcd(n,QD)=1$ とする。
$$ U_{n-\left(\frac Dn\right)}\equiv0\pmod n $$
が成り立つとき、$n$ を パラメータ $(P,Q)$ の Lucas 擬素数 という。

$\gcd(n,QD)=1$ なので $\left(\frac Dn\right)=\pm1$ であり、添字 $n\mp1$ は正である。素数判定に使うときは、$\left(\frac Dn\right)=-1$ となるように $D$ を選び、条件 $U_{n+1}\equiv0\pmod n$ を調べることが多い(BFW21 §2.3、p. 4)。

反例:$323$ と $377$

$(P,Q)=(1,-1)$ とする。
$n=323=17\cdot19$:$17\equiv2$、$19\equiv4\pmod5$ なので $\left(\frac5{17}\right)=\left(\frac25\right)=-1$、$\left(\frac5{19}\right)=\left(\frac45\right)=1$ であり、$\left(\frac5{323}\right)=-1$、$n-\left(\frac5n\right)=324$ である。$F_{18}=2584=8\cdot323$ で、$18\mid324$ なので Fibonacci数の整数の性質 の系「Fibonacci 数の割り切れる関係」により $F_{18}\mid F_{324}$、したがって $323\mid F_{324}$ である。$323$ は合成数なので Lucas 擬素数である。
$n=377=13\cdot29$:$\left(\frac5{13}\right)=\left(\frac35\right)=-1$、$\left(\frac5{29}\right)=\left(\frac45\right)=1$ なので $n-\left(\frac5n\right)=378=27\cdot14$ であり、$F_{14}=377$ が $F_{378}$ を割る。
どちらも thm-lpsp-prime の「$U_{n-\varepsilon}\equiv0$ なら $n$ は素数」という逆の含意を破る。一方、$2^{322}\equiv157\pmod{323}$、$2^{376}\equiv94\pmod{377}$ なので、どちらも底 $2$ の擬素数ではない(計算で確かめられる)。$(P,Q)=(1,-1)$ の Lucas 擬素数で $6000$ 未満のものは $323,377,1891,3827,4181,5777$ である(計算で確かめられる)。

素数での合同式の証明

整数係数の多項式環を $x^2-Px+Q$ で割った環 $A:=\mathbb Z[x]/(x^2-Px+Q)$ で考える。$A$ の元は $u+vx$($u,v\in\mathbb Z$)とただ一通りに書ける。$\alpha:=x$、$\beta:=P-x$ とおくと
$$ \alpha+\beta=P,\qquad \alpha\beta=Px-x^2=Q,\qquad(\alpha-\beta)^2=(\alpha+\beta)^2-4\alpha\beta=D $$
である。

環 $A$ での Binet の公式

すべての $k\ge0$ について、$A$ の中で $(\alpha-\beta)U_k=\alpha^k-\beta^k$、$V_k=\alpha^k+\beta^k$ が成り立つ。

同じ漸化式を満たす

$\alpha$ と $\beta$ はどちらも $t^2=Pt-Q$ を満たす。$\alpha$ は定義から、$\beta=P-\alpha$ は $\beta^2-P\beta+Q=(P-\alpha)^2-P(P-\alpha)+Q=\alpha^2-P\alpha+Q=0$ による。よって $s_k:=\alpha^k\pm\beta^k$ は $s_{k+2}=Ps_{k+1}-Qs_k$ を満たす。$k=0,1$ では $\alpha^0-\beta^0=0=(\alpha-\beta)U_0$、$\alpha-\beta=(\alpha-\beta)U_1$、$\alpha^0+\beta^0=2=V_0$、$\alpha+\beta=P=V_1$ である。$(\alpha-\beta)U_k$ と $V_k$ も同じ漸化式を満たすので、帰納法で一致する。$\square$

素数 $p$ について $R:=A/pA=\mathbb F_p[x]/(x^2-Px+Q)$ とおく。$R$ は $1,x$ を基底とする $\mathbb F_p$ 上の 2 次元の環で、整数 $m$ の像が $R$ で $0$ になることと $p\mid m$ は同値である。以下、$\alpha,\beta$ の $R$ での像も同じ記号で書く。

二次の剰余環の中の Frobenius 写像

$p\nmid D$ なので $(\alpha-\beta)^2=D$ は $R$ で可逆であり、$\alpha-\beta$ も可逆である。$p\nmid Q$ なので $\alpha\beta=Q$ も可逆で、$\alpha,\beta$ は可逆である。lem-lpsp-binet により、$\alpha^m=\beta^m$ を示せば $U_m\equiv0\pmod p$ が従う。
$\varepsilon=-1$ の場合:$D$ は法 $p$ の平方剰余でない。$x^2-Px+Q$ が $\mathbb F_p$ に根 $c$ をもつと $(2c-P)^2=D$ となって矛盾するので($p$ は奇数)、この 2 次式は $\mathbb F_p$ 上既約で、$R$ は $p^2$ 個の元からなる体である(有限体)。標数 $p$ の可換環では $(y+z)^p=y^p+z^p$ なので(二項係数 $\binom pj$、$0< j< p$ は $p$ の倍数)、$\phi(y):=y^p$ は $R$ の環準同型で、Fermat の小定理により $\mathbb F_p$ の元を動かさない。$\alpha^2-P\alpha+Q=0$ に $\phi$ を当てると、$\alpha^p$ も $t^2-Pt+Q$ の根である。体 $R$ でこの 2 次式の根は $\alpha,\beta$ だけである。また $y^p=y$ を満たす $y\in R$ は高々 $p$ 個で、$\mathbb F_p$ の $p$ 個の元がすでにそれを満たすので、$\alpha\notin\mathbb F_p$ から $\alpha^p\ne\alpha$ である。よって $\alpha^p=\beta$ であり、同様に $\beta^p=\phi(P-\alpha)=P-\beta=\alpha$ である。したがって
$$ \alpha^{p+1}=\alpha\beta=Q=\beta\alpha=\beta^{p+1} $$
となり、$U_{p+1}\equiv0$、$V_{p+1}=\alpha^{p+1}+\beta^{p+1}\equiv2Q\pmod p$ を得る。
$\varepsilon=1$ の場合:$D\equiv\delta^2\pmod p$($\delta\not\equiv0$)と書け、$a:=(P+\delta)/2$、$b:=(P-\delta)/2$ は $\mathbb F_p$ の相異なる元で、$x^2-Px+Q=(x-a)(x-b)$ である。中国剰余定理により $R\cong\mathbb F_p\times\mathbb F_p$($x\mapsto(a,b)$)であり、この対応で $\alpha\mapsto(a,b)$、$\beta=P-x\mapsto(b,a)$ である。$ab=Q\not\equiv0$ なので $a,b\ne0$ であり、Fermat の小定理により $\alpha^{p-1}\mapsto(1,1)$、$\beta^{p-1}\mapsto(1,1)$ となる。よって $\alpha^{p-1}=\beta^{p-1}=1$ であり、$U_{p-1}\equiv0$、$V_{p-1}\equiv2\pmod p$ を得る。
どちらの場合も、$V$ の値は $2Q^{(1-\varepsilon)/2}$ に一致する。$\square$

thm-lpsp-prime の仮定 $p\nmid Q$ は外せない。$(P,Q)=(1,3)$、$p=3$ では $D=-11\equiv1\pmod3$ なので $\varepsilon=1$ だが、$U_{p-1}=U_2=P=1\not\equiv0\pmod3$ である。証明では $\alpha,\beta$ が可逆であることを Fermat の小定理に使っており、$p\mid Q$ ではそれが崩れる(この例では $x^2-x+3\equiv x(x-1)\pmod3$ で、根の一方が $0$ になる)。

強 Lucas 擬素数

擬素数 の記事の強擬素数と同じく、$n-\left(\frac Dn\right)$ から $2$ の冪を取り出すと条件を強められる。

素数は強い条件を満たす

$p$ を $QD$ を割らない奇素数、$\varepsilon:=\left(\frac Dp\right)$ とし、$p-\varepsilon=2^sd$($d$ は奇数、$s\ge1$)と書く。このとき
$$ U_d\equiv0\pmod p\quad\text{または}\quad V_{2^rd}\equiv0\pmod p\ \ (\text{ある }0\le r< s) $$
が成り立つ。

$\gamma=\alpha/\beta$ の冪を順に見る

prf-lpsp-prime の記号を使い、$R$ の中で $\gamma:=\alpha\beta^{-1}$ とおく。$\alpha-\beta$ と $\beta$ は可逆なので、lem-lpsp-binet により、$U_k\equiv0\pmod p$ は $\alpha^k=\beta^k$、すなわち $\gamma^k=1$ と同値であり、$V_k\equiv0\pmod p$ は $\alpha^k=-\beta^k$、すなわち $\gamma^k=-1$ と同値である。prf-lpsp-prime で $\alpha^{p-\varepsilon}=\beta^{p-\varepsilon}$ を示したので $\gamma^{2^sd}=1$ である。
$c_r:=\gamma^{2^rd}$($0\le r\le s$)とおくと $c_s=1$、$c_{r+1}=c_r^2$ である。$c_0=1$ なら $U_d\equiv0$ である。そうでなければ、$c_r\ne1$ となる最大の $r$($0\le r< s$)をとると $c_r^2=1$ である。$c_r=-1$ を示せば $V_{2^rd}\equiv0$ となって証明が終わる。
$\varepsilon=-1$ のとき $R$ は体なので、$c_r^2=1$ から $c_r=\pm1$、よって $c_r=-1$ である。$\varepsilon=1$ のとき $R\cong\mathbb F_p\times\mathbb F_p$ で $\gamma\mapsto(t,t^{-1})$($t:=a/b$)である。$N:=2^rd$ とすると $c_r\mapsto(t^N,t^{-N})$ で、$t^{2N}=1$ から体 $\mathbb F_p$ の中で $t^N=\pm1$、したがって $t^{-N}=t^N$ である。よって $c_r$ は $(1,1)$ か $(-1,-1)$ であり、$c_r\ne1$ なので $c_r=-1$ である。$\square$

強Lucas擬素数

$n$ を奇数の合成数、$\gcd(n,QD)=1$ とし、$n-\left(\frac Dn\right)=2^sd$($d$ は奇数)と書く。$U_d\equiv0\pmod n$ であるか、ある $0\le r< s$ について $V_{2^rd}\equiv0\pmod n$ であるとき、$n$ を パラメータ $(P,Q)$ の強 Lucas 擬素数 という。

強い条件は元の条件を含む

パラメータ $(P,Q)$ の強 Lucas 擬素数は、同じパラメータの Lucas 擬素数である。

添字を倍にする公式を繰り返す

Lucas数列の関係式 の定理「Lucas数列の基本恒等式」の加法公式で $m=n$ とすると $U_{2m}=U_mV_m$ である。これを $m=d,2d,\dots,2^{s-1}d$ に使って掛け合わせると
$$ U_{2^sd}=U_d\,V_d\,V_{2d}\cdots V_{2^{s-1}d} $$
を得る。右辺の因子のどれかが $n$ で割り切れれば、$U_{n-\left(\frac Dn\right)}=U_{2^sd}$ も $n$ で割り切れる。$\square$

$323$ は強い条件を満たさず、$4181$ は満たす

$(P,Q)=(1,-1)$ とする。$323$ では $324=2^2\cdot81$ で、法 $323$ で $F_{81}\equiv34$、$V_{81}\equiv76$、$V_{162}\equiv287$ なので、どれも $0$ でなく、$323$ は強 Lucas 擬素数でない(計算で確かめられる)。
$4181=37\cdot113$ は $F_{19}$ そのものである。$4181\equiv1\pmod5$ なので $\left(\frac5{4181}\right)=1$、$4180=2^2\cdot1045$ で $d=1045=5\cdot11\cdot19$ である。$19\mid1045$ なので $F_{19}\mid F_{1045}$、すなわち $U_d\equiv0\pmod{4181}$ であり、$4181$ は強 Lucas 擬素数である。$(1,-1)$ の強 Lucas 擬素数で $20000$ 未満のものは $4181,5777,10877,13201,15251$ である(計算で確かめられる)。

Baillie–PSW 判定法

Lucas 擬素数がどれだけ現れるかは $(P,Q)$ の選び方による。素数判定では、$n$ に応じて次のようにパラメータを選ぶ。

Selfridge の方法 A

奇数 $n$ が平方数でないとき、列 $5,-7,9,-11,13,-15,\dots$ の中で $\left(\frac Dn\right)=-1$ となる最初の $D$ をとり、$P:=1$、$Q:=(1-D)/4$ とする。ただし、それより前に $\left(\frac Dn\right)=0$ となる $D$ が現れ、$n\nmid D$ であれば、$\gcd(D,n)$ は $1$ でも $n$ でもない $n$ の約数なので、$n$ を合成数と判定してパラメータを選ばない。

$n$ が平方数なら $\left(\frac Dn\right)$ は $0$ か $1$ にしかならないので、平方数は先に除いておく。$D\equiv1\pmod4$ なので $Q$ は整数で、$P^2-4Q=D$ である。この方法で選んだパラメータの Lucas 擬素数は小さい順に $323,377,1159,1829,3827,5459,5777,9071,9179,10877$、強 Lucas 擬素数は $5459,5777,10877,16109,18971$ から始まる(BFW21 §2.3–2.4、pp. 4–5。同書は $Q=-1$ のとき $P=Q=5$ に替える方法 A* で数え、A と A* で Lucas 擬素数・強 Lucas 擬素数が同じになることを付録 A で示している。上の数は方法 A で計算しても同じになる)。

Baillie–PSW 判定法

R. Baillie と S. S. Wagstaff, Jr. が 1980 年に提案した判定法は、(1) 底 $2$ の強擬素数の条件(擬素数 の定義「Euler–Jacobi 擬素数と強擬素数」)を調べ、(2) 方法 A* でパラメータを選び、(3) 強 Lucas 擬素数の条件を調べ、どちらも通れば「おそらく素数」と判定する(BFW21 §3、p. 6)。底 $2$ の擬素数と方法 A* の Lucas 擬素数は、小さい法での剰余がそれぞれ $+1$ と $-1$ に偏る傾向があり、重なりにくい。Feitsma が計算した $2^{64}$ 未満の底 $2$ の擬素数 $118968378$ 個のどれも方法 A* の Lucas 擬素数でないので、この判定法は $2^{64}$ 未満では誤らない(同 p. 6)。それより大きい範囲でこの判定法をすり抜ける合成数は報告されていない。この記事ではこれらの計算と事実を証明しない。

例と反例

外す条件反例成り立たなくなること
$n$ が素数(thm-lpsp-prime の逆)$n=323$、$(P,Q)=(1,-1)$$U_{n-\left(\frac Dn\right)}\equiv0\pmod n$ なら $n$ は素数
thm-lpsp-prime の $p\nmid Q$$p=3$、$(P,Q)=(1,3)$$U_{p-\varepsilon}\equiv0\pmod p$
Lucas の条件から強い条件へ$n=323$、$(P,Q)=(1,-1)$強 Lucas 擬素数である
パラメータを $\left(\frac Dn\right)=-1$ となるように選ぶこと$n=6601$、$(P,Q)=(1,-1)$ を固定底 $2$ の擬素数かつ Lucas 擬素数である合成数は $2^{64}$ 未満にない
反例の確認

1 行目は ex-lpsp-323、2 行目は prf-lpsp-prime の後の計算、3 行目は ex-lpsp-strong による。4 行目:$6601=7\cdot23\cdot41$ は $6,22,40$ がどれも $6600$ を割るので Carmichael数 であり、底 $2$ の擬素数である。$6601\equiv1\pmod5$ なので $\left(\frac5{6601}\right)=1$ で、$F_{6600}\equiv0\pmod{6601}$ が成り立つ(計算で確かめられる)ので、パラメータ $(1,-1)$ の Lucas 擬素数でもある。方法 A ではこの $n$ に $D=5$ は使われない。$(1,-1)$ を固定したとき、底 $2$ の擬素数でもある Lucas 擬素数は $10^5$ 未満に $6601,13981,30889,68101$ の 4 つある(計算で確かめられる)。

補足

Lucas 擬素数の個数

BFW21 §2.3(p. 4)によれば、Baillie と Wagstaff は 1980 年の論文で Lucas 擬素数が無限に多くあるが素数に比べてまれであることを示した。方法 A* では $10^{15}$ 未満に Lucas 擬素数が $2402549$ 個、強 Lucas 擬素数が $474971$ 個ある(同 pp. 4–5)。BFW21 はさらに、同じ方法でパラメータを選ぶと、thm-lpsp-prime の $V$ の合同式 $V_{n+1}\equiv2Q\pmod n$ を満たす合成数は $10^{15}$ 未満に $5$ 個しかないことを報告している(同 p. 1)。

関連項目

参考文献

[1]
Robert Baillie, Andrew Fiori and Samuel S. Wagstaff, Jr., Strengthening the Baillie-PSW primality test, Mathematics of Computation 90 (2021), pp. 1931–1955, 2021, 頁は arXiv:2006.14425v2(2021 年 6 月 11 日)による。§1 p. 1($V_{n+1}\equiv2Q$ を満たす合成数)、§2.3 p. 4(Lucas 数列、合同式 (7)–(10)、Lucas 擬素数、方法 A と A*、最初の Lucas 擬素数)、§2.4 pp. 4–5(強 Lucas 擬素数)、§3 p. 6(Baillie–PSW 判定法と $2^{64}$ までの確認)

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