Spernerの定理

同義語:Sperner's theorem

概要

Spernerの定理(Sperner's theorem)とは、$n$ 元集合の部分集合の族で、どの 2 つの相異なる元も一方が他方に含まれないもの(Sperner 族、冪集合の反鎖)の元の個数は $\binom{n}{\lfloor n/2\rfloor}$ 以下である、という定理である。等号が成り立つのは、族が $\lfloor n/2\rfloor$ 元部分集合の全体か $\lceil n/2\rceil$ 元部分集合の全体であるときに限る。証明は、族の元 $A$ を通る極大鎖の割合 $\binom{n}{|A|}^{-1}$ の和が $1$ 以下であるという LYM 不等式による。冪集合を対称な鎖に分けることでも示され、極値集合論の出発点となる定理である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 半順序集合, 冪集合, 二項係数, 鎖(順序集合)

Sperner の定理(Sperner's theorem)とは、$n$ 元集合 $[n]=\{1,2,\dots,n\}$ の部分集合の族 $\mathcal F$ で、どの 2 つの相異なる元も包含関係にない(一方が他方に含まれない)ものについて、
$$ |\mathcal F|\le\binom{n}{\lfloor n/2\rfloor} $$
が成り立つという定理である(Sperner、1928 年。Sta13 Corollary 4.8、p. 53)。ちょうど $\lfloor n/2\rfloor$ 個の元をもつ部分集合をすべて集めた族が等号を与えるので、この上界は最良である。さらに等号が成り立つのは、$\mathcal F$ が $\lfloor n/2\rfloor$ 元部分集合の全体か $\lceil n/2\rceil$ 元部分集合の全体であるときに限る。
冪集合 $2^{[n]}$ を包含関係で 半順序集合 とみると、上の族は 反鎖 にほかならない。したがって Sperner の定理は「$2^{[n]}$ の反鎖の元の個数の最大値(幅)は $\binom{n}{\lfloor n/2\rfloor}$ である」と言い換えられる。有限集合の部分集合の族の大きさを条件のもとで最大化する分野(極値集合論)の出発点となる定理である。
この記事では、上の族 $\mathcal F$ についてのより強い LYM 不等式
$$ \sum_{A\in\mathcal F}\binom{n}{|A|}^{-1}\le1 $$
を極大鎖の数え上げで証明し、そこから Sperner の定理と等号の場合を導く。さらに、$2^{[n]}$ を対称な鎖に分ける構成によるもう 1 つの証明を与える。なお、単体の分割の色塗りについての Sperner の補題(Brouwerの不動点定理 の記事の補題「Spernerの補題」)は別の主張である。

定義

以下、$n\ge0$ を整数とし、$[n]:=\{1,2,\dots,n\}$($[0]=\emptyset$)とおく。$2^{[n]}$ は $[n]$ の部分集合全体を包含関係 $\subset$ で順序づけた半順序集合を表す。$0\le k\le n$ について、$k$ 元部分集合の全体を
$$ \binom{[n]}{k}:=\{A\subset[n]\mid|A|=k\} $$
と書き、$2^{[n]}$ の 第 $k$ 層 と呼ぶ。第 $k$ 層の元の個数は 二項係数 $\binom nk$ である。

Sperner 族

$[n]$ の部分集合の族 $\mathcal F\subset2^{[n]}$ が Sperner 族(Sperner family)であるとは、相異なる $A,B\in\mathcal F$ について $A\not\subset B$ が成り立つことをいう。これは $\mathcal F$ が半順序集合 $2^{[n]}$ の反鎖であることと同じである。

同じ層の相異なる 2 元は包含関係にない(含まれるなら元の個数が等しいので一致する)ので、各層 $\binom{[n]}{k}$ は Sperner 族である。
鎖(順序集合) の記事のとおり、$2^{[n]}$ の部分集合で、どの 2 元も包含関係で比較できるものを 鎖 という。それ以上元を加えると鎖でなくなる鎖を 極大鎖 という。$2^{[n]}$ の極大鎖は $\emptyset=C_0\subsetneq C_1\subsetneq\cdots\subsetneq C_n=[n]$($|C_i|=i$)の形の鎖であり、$[n]$ の元の並べ方と一対一に対応して、全部で $n!$ 本ある(鎖(順序集合) の系「冪集合の極大鎖と並べ方」)。$C_i\setminus C_{i-1}$ の元を $i$ 番目に置く並べ方が対応する。

直感

$n=4$ では、2 元部分集合 $\{1,2\},\{1,3\},\dots,\{3,4\}$ の 6 個が Sperner 族をなす。7 個の Sperner 族は作れない、というのが定理の主張である。
層 $\binom{[n]}{k}$ の大きさは $k=\lfloor n/2\rfloor$ で最大になる。層をまたいで部分集合を選ぶと得をするように思えるが、小さい集合を 1 つ選ぶと、それを含む大きな集合を多数あきらめることになる。この損得を正確に測るのが極大鎖の数え上げである。$k$ 元集合 $A$ を通る極大鎖は $k!(n-k)!$ 本あり、全極大鎖に占める割合は $\binom nk^{-1}$ である。Sperner 族の元を通る極大鎖の集合は互いに交わらないので、割合の和は $1$ を超えない。これが LYM 不等式であり、層の中央の元ほど「通る極大鎖が少なく、安い」ことを表している。

LYM 不等式

1 つの集合を通る極大鎖の本数

$A\subset[n]$、$|A|=k$ とする。$A$ を含む $2^{[n]}$ の極大鎖はちょうど $k!\,(n-k)!$ 本ある。

極大鎖 $C_0\subsetneq\cdots\subsetneq C_n$ が $A$ を含むなら、層の数から $C_k=A$ である。そのような極大鎖は、$\emptyset=C_0\subsetneq\cdots\subsetneq C_k=A$ と $A=C_k\subsetneq\cdots\subsetneq C_n=[n]$ の組で決まる。前半は $A$ の元を 1 つずつ加える順序、すなわち $A$ の元の並べ方で決まり $k!$ 通り、後半は $[n]\setminus A$ の元の並べ方で決まり $(n-k)!$ 通りである。$\square$

LYM 不等式

$\mathcal F\subset2^{[n]}$ を Sperner 族とする。このとき
$$ \sum_{A\in\mathcal F}\binom{n}{|A|}^{-1}\le1 $$
が成り立つ。さらに等号が成り立つことと、$2^{[n]}$ のすべての極大鎖が $\mathcal F$ の元をちょうど 1 つ含むことは同値である。

$A\in\mathcal F$ について、$A$ を含む極大鎖の集合を $\mathcal C_A$ とする。$A\neq B$ が $\mathcal F$ に属するとき、$\mathcal C_A\cap\mathcal C_B=\emptyset$ である。実際、1 本の極大鎖が $A$ と $B$ をともに含めば、鎖の 2 元は比較できるので $A\subset B$ か $B\subset A$ となり、$\mathcal F$ が Sperner 族であることに反する。極大鎖は全部で $n!$ 本なので、lem-sperner-chains-through により
$$ \sum_{A\in\mathcal F}|A|!\,(n-|A|)!=\sum_{A\in\mathcal F}|\mathcal C_A|=\Bigl|\bigcup_{A\in\mathcal F}\mathcal C_A\Bigr|\le n! $$
である。両辺を $n!$ で割れば、$|A|!\,(n-|A|)!/n!=\binom n{|A|}^{-1}$ だから不等式を得る。等号は $\bigcup_{A\in\mathcal F}\mathcal C_A$ が極大鎖の全体であるとき、すなわちすべての極大鎖が $\mathcal F$ の元を含むときに限る。各極大鎖が含む $\mathcal F$ の元は、上の議論により高々 1 つである。$\square$

Sperner の定理

二項係数の単峰性

$n\ge0$、$m:=\lfloor n/2\rfloor$ とする。$0\le k\le n$ について $\binom nk\le\binom nm$ であり、等号が成り立つのは $k=\lfloor n/2\rfloor$ または $k=\lceil n/2\rceil$ のときに限る。

$0\le k< n$ について
$$ \binom{n}{k+1}\Big/\binom nk=\frac{n-k}{k+1} $$
であり、これは $k<(n-1)/2$(すなわち $k+1\le\lfloor n/2\rfloor$)なら $1$ より大きく、$k=(n-1)/2$ なら $1$、$k>(n-1)/2$(すなわち $k\ge\lceil n/2\rceil$)なら $1$ より小さい。したがって
$$ \binom n0< \binom n1< \cdots< \binom n{\lfloor n/2\rfloor},\qquad\binom n{\lceil n/2\rceil}>\binom n{\lceil n/2\rceil+1}>\cdots>\binom nn $$
であり、$n$ が奇数なら $\binom n{\lfloor n/2\rfloor}=\binom n{\lceil n/2\rceil}$ である。最大値は $k=\lfloor n/2\rfloor,\lceil n/2\rceil$ でだけとられ、その値は $\binom nm$ である($\binom{n}{\lceil n/2\rceil}=\binom{n}{n-\lceil n/2\rceil}=\binom nm$)。$\square$

Sperner の定理

$n\ge0$ とし、$\mathcal F\subset2^{[n]}$ を Sperner 族とする。このとき
$$ |\mathcal F|\le\binom{n}{\lfloor n/2\rfloor} $$
が成り立つ。等号が成り立つのは、$\mathcal F=\binom{[n]}{\lfloor n/2\rfloor}$ または $\mathcal F=\binom{[n]}{\lceil n/2\rceil}$ のときに限る。とくに $n$ が偶数なら、元の個数が最大の Sperner 族は中央の層 $\binom{[n]}{n/2}$ ただ 1 つである。

$m:=\lfloor n/2\rfloor$ とおく。lem-sperner-unimodal により各 $A\in\mathcal F$ について $\binom n{|A|}^{-1}\ge\binom nm^{-1}$ なので、thm-sperner-lym から
$$ |\mathcal F|\binom nm^{-1}\le\sum_{A\in\mathcal F}\binom n{|A|}^{-1}\le1 $$
となり、不等式を得る。層 $\binom{[n]}{m}$ と $\binom{[n]}{\lceil n/2\rceil}$ は大きさ $\binom nm$ の Sperner 族なので等号を与える。
逆に $|\mathcal F|=\binom nm$ とする。上の 2 つの不等号はともに等号になる。1 つ目の等号と lem-sperner-unimodal から、$\mathcal F$ の元はすべて第 $\lfloor n/2\rfloor$ 層か第 $\lceil n/2\rceil$ 層に属する。2 つ目の等号と thm-sperner-lym から、すべての極大鎖は $\mathcal F$ の元をちょうど 1 つ含む。
$n$ が偶数なら、$\mathcal F\subset\binom{[n]}{m}$ で大きさが等しいので $\mathcal F=\binom{[n]}{m}$ である。
$n=2m+1$ が奇数のとき、$\mathcal F\subset\binom{[n]}{m}\cup\binom{[n]}{m+1}$ である。$\mathcal F$ が第 $m$ 層の元を含まなければ、$\mathcal F\subset\binom{[n]}{m+1}$ で大きさが等しいので $\mathcal F=\binom{[n]}{m+1}$ である。$\mathcal F$ が第 $m$ 層の元 $A$ を含むとする。
$\mathcal F$ の第 $m$ 層の部分は「1 元の入れ替え」で閉じている:$A\in\mathcal F$、$|A|=m$ とし、$A'$ を $|A'|=m$、$|A\cap A'|=m-1$ を満たす集合とする($A$ の元を 1 つ別の元に入れ替えたもの)。$B:=A\cup A'$ は $m+1$ 元集合で、$A\subsetneq B$ だから $B\notin\mathcal F$ である。$A'\subsetneq B$ なので、$A'$ と $B$ をともに含む極大鎖がある。その極大鎖の第 $m$ 層・第 $m+1$ 層の元は $A'$ と $B$ だけであり、$\mathcal F$ の元はこの 2 層にしかないので、この極大鎖が含む $\mathcal F$ の元は $A'$ か $B$ である。$B\notin\mathcal F$ だから $A'\in\mathcal F$ である。
任意の $m$ 元集合 $D$ は、$A$ から出発して $A\setminus D$ の元を 1 つずつ $D\setminus A$ の元に入れ替えることで、$|A\setminus D|$ 回の入れ替えで得られる。各段で上の性質を使えば $D\in\mathcal F$ である。よって $\binom{[n]}{m}\subset\mathcal F$ であり、大きさが等しいので $\mathcal F=\binom{[n]}{m}$ である。$\square$

不等式の部分のこの証明は Lubell による(Sta13 pp. 53–54、第 4 章の注 p. 56。KT17 Theorem 6.27、pp. 127–128 も同じ数え上げで証明している)。等号の場合の上の議論は、LYM 不等式の等号条件(すべての極大鎖が $\mathcal F$ にちょうど 1 回出会う)から直接に導いたものである。

対称鎖分解による証明

Sperner の定理は、$2^{[n]}$ を少数の鎖に分けることでも証明できる。鎖と反鎖は高々 1 元しか共有しないので、$2^{[n]}$ が $N$ 本の鎖の交わらない和集合なら、どの Sperner 族も $N$ 個以下の元しかもたない。

対称鎖分解

$2^{[n]}$ の鎖 $A_i\subsetneq A_{i+1}\subsetneq\cdots\subsetneq A_{n-i}$ で、$|A_j|=j$($i\le j\le n-i$)を満たすものを 対称鎖 という。第 $i$ 層から始まり、第 $n-i$ 層で終わり、途中の層を 1 つも飛ばさない鎖である。$2^{[n]}$ を互いに交わらない対称鎖の和集合に分けることを 対称鎖分解(symmetric chain decomposition)という。

対称鎖分解の存在

すべての $n\ge0$ について、$2^{[n]}$ は対称鎖分解をもつ。どの対称鎖分解も、ちょうど $\binom{n}{\lfloor n/2\rfloor}$ 本の鎖からなる。

存在を $n$ についての帰納法で示す。$n=0$ では $2^{[0]}=\{\emptyset\}$ で、1 元の鎖 $\emptyset$ は第 $0$ 層から第 $0$ 層までの対称鎖である。
$n\ge1$ とし、$2^{[n-1]}$ の対称鎖分解があるとする。その各鎖 $A_i\subsetneq\cdots\subsetneq A_{n-1-i}$ から、$2^{[n]}$ の次の 2 本の鎖を作る(2 本目は元の鎖が 2 元以上のときだけ作る)。
$$ A_i\subsetneq A_{i+1}\subsetneq\cdots\subsetneq A_{n-1-i}\subsetneq A_{n-1-i}\cup\{n\}, $$
$$ A_i\cup\{n\}\subsetneq A_{i+1}\cup\{n\}\subsetneq\cdots\subsetneq A_{n-2-i}\cup\{n\}. $$
1 本目は第 $i$ 層から第 $n-i$ 層まで、2 本目は第 $i+1$ 層から第 $n-1-i$ 層まで、層を飛ばさずに進むので、どちらも $2^{[n]}$ の対称鎖である。$2^{[n]}$ の元 $X$ は、$n\notin X$ なら $X\in2^{[n-1]}$ がただ 1 本の元の鎖に属し、作った 1 本目の鎖にだけ現れる。$n\in X$ なら $X\setminus\{n\}$ がただ 1 本の元の鎖に属し、それがその鎖の最後の元なら 1 本目の鎖の最後に、そうでなければ 2 本目の鎖にだけ現れる。よって作った鎖たちは $2^{[n]}$ の対称鎖分解である。
本数について:対称鎖が第 $i$ 層から第 $n-i$ 層まで進むとき、$i\le n-i$ だから $i\le\lfloor n/2\rfloor\le n-i$ であり、鎖は第 $\lfloor n/2\rfloor$ 層の元をちょうど 1 つ含む。逆に第 $\lfloor n/2\rfloor$ 層の各元はちょうど 1 本の鎖に属する。よって鎖の本数は $\binom n{\lfloor n/2\rfloor}$ である。$\square$

対称鎖分解の各鎖は Sperner 族の元を高々 1 つしか含まないので、$|\mathcal F|\le\binom n{\lfloor n/2\rfloor}$ が再び得られる。対称鎖分解は、Dilworthの定理(有限半順序集合の幅は全体を覆う鎖の最小本数に等しい)が $2^{[n]}$ について主張する鎖による分割を、具体的に与えている。対称鎖分解の考え方は Sta13 p. 55 にある。

例と反例

小さい $n$ での最大の Sperner 族
  1. $n=3$ では $\binom31=\binom32=3$ である。最大の Sperner 族は $\{\{1\},\{2\},\{3\}\}$ と $\{\{1,2\},\{1,3\},\{2,3\}\}$ の 2 つで、thm-sperner-main の等号の場合の 2 通りが両方とも現れる。
  2. $n=4$ では最大の大きさは $\binom42=6$ で、最大の Sperner 族は第 $2$ 層だけである。対称鎖分解の一例は、prf-sperner-scd の構成をたどって
    $\emptyset\subset\{1\}\subset\{1,2\}\subset\{1,2,3\}\subset\{1,2,3,4\}$、
    $\{2\}\subset\{2,3\}\subset\{2,3,4\}$、
    $\{3\}\subset\{1,3\}\subset\{1,3,4\}$、
    $\{2,4\}$、$\{4\}\subset\{1,4\}\subset\{1,2,4\}$、$\{3,4\}$
    の 6 本である(各鎖は第 $2$ 層の元をちょうど 1 つ含む)。
  3. LYM 不等式の和は $\mathcal F$ が層をまたぐと $1$ より小さくなりうる。$n=3$、$\mathcal F=\{\{1\},\{2,3\}\}$ では $\binom31^{-1}+\binom32^{-1}=2/3<1$ である。実際、並べ方 $(2,1,3)$ に対応する極大鎖 $\emptyset\subset\{2\}\subset\{1,2\}\subset[3]$ は $\mathcal F$ の元を含まない。
反例:極大な Sperner 族は最大とは限らない

$n=4$ で $\mathcal F=\{\{1\},\{2,3\},\{2,4\},\{3,4\}\}$ とする。これは Sperner 族である。$1$ を含む 2 元以上の集合は $\{1\}$ を含み、$1$ を含まない集合のうち $\emptyset$ と 1 元集合は $\mathcal F$ のどれかの 2 元集合に含まれ、$\{2,3,4\}$ は $\{2,3\}$ を含むので、どの集合を加えても Sperner 族でなくなる。すなわち $\mathcal F$ は包含について極大であるが、大きさは $4<6$ である。この例は「それ以上元を加えられない Sperner 族は最大である」という含意を破る。

次の表は、各行で仮定を 1 つだけ外したときに結論が成り立たなくなる例である。

外す条件反例成り立たなくなること
どの 2 元も包含関係にないこと$n=2$、$\mathcal F=\{\{1\},\{2\},\{1,2\}\}$(3 元の鎖は含まない)$\lvert\mathcal F\rvert\le\binom21=2$
台集合が有限であること自然数全体 $\mathbb N$ の 1 元部分集合の全体Sperner 族の大きさに有限の上界があること
$n$ が偶数であること$n=3$ の 2 つの層最大の Sperner 族がただ 1 つであること
順序集合が $2^{[n]}$ であること下の 6 元の半順序集合 $P$反鎖の最大の大きさが層の最大の大きさに等しいこと
反例の確かめ

1 行目の族は $\{1\}\subset\{1,2\}$ を含むので Sperner 族ではないが、3 元の鎖は含まない。2 行目の族は無限個の元からなり、どの 2 元も包含関係にない。3 行目は ex-sperner-small の 1 である。
4 行目:元 $a,b,c,x,y,z$ からなり、順序関係が $a< x$、$b< x$、$c< y$、$c< z$ だけ(と反射律)である半順序集合 $P$ を考える。極小元 $a,b,c$ の層と極大元 $x,y,z$ の層に分かれ、どの極大鎖も 2 元からなるので、$2^{[n]}$ と同じく層に分かれた半順序集合であり、層の大きさはどちらも $3$ である。しかし $\{a,b,y,z\}$ は大きさ $4$ の反鎖である($a,b$ はどちらも $y,z$ より小さくない)。したがって「反鎖の大きさは層の大きさの最大値以下である」という性質は、層に分かれた一般の有限半順序集合では成り立たない。この性質は Sperner 性と呼ばれ(Sta13 Definition 4.2、p. 48)、Sperner の定理は $2^{[n]}$ が Sperner 性をもつことを主張している。

補足

  • 一般化:Sperner 性をもつ半順序集合は $2^{[n]}$ 以外にもある。たとえば、$[n]$ の置換群の部分群 $G$ による $2^{[n]}$ の軌道の集合に自然な順序を入れたもの(Sta13 Theorem 5.8)や、$m\times n$ の長方形に収まる Young 図形の集合(同 Corollary 6.10)は Sperner 性をもつ。証明には線形代数を使う。この記事では証明しない。
  • 鎖の数え上げと確率:LYM 不等式の証明は、$[n]$ の元の並べ方を一様に無作為に選んだとき、それに対応する極大鎖が $\mathcal F$ の元を通る確率を 2 通りに計算したものと読める。$A$ を通る確率は $\binom n{|A|}^{-1}$ で、通る事象は $A\in\mathcal F$ ごとに互いに排反である。
  • 歴史:定理は Sperner の 1928 年の論文による(Sta13 第 4 章の注、p. 56)。

関連項目

参考文献

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