反射的層

同義語:reflexive sheaf

概要

反射的層(reflexive sheaf)とは、整な Noether スキーム $X$ の上の連接層 $\mathcal{F}$ で、二重双対への自然な射 $\mathcal{F}\to\mathcal{F}^{\vee\vee}$ が同型になるものである。$X$ が正規なら、反射的層は捩れがなく、余次元 $2$ 以上の閉集合を除いても切断が変わらない連接層として特徴づけられ、任意の連接層の双対は反射的になる。正規スキームの Weil 因子 $D$ に付随する層 $\mathcal{O}_X(D)$ は階数 $1$ の反射的層で、これにより因子類群 $\operatorname{Cl}(X)$ は階数 $1$ の反射的層の同型類と 1 対 1 に対応する。次元 $2$ 以下の正則スキームでは反射的層は局所自由だが、特異点のある曲面や 3 次元では局所自由とは限らない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 連接層, 双対加群, 正規スキーム, Weil因子

反射的層(reflexive sheaf)は、二重双対と一致する連接層である。有限次元ベクトル空間 $V$ は二重双対 $V^{**}$ と自然に同型だが、環上の加群ではそうとは限らない。たとえば 2 変数多項式環 $k[x,y]$ の極大イデアル $(x,y)$ は、双対をとると $k[x,y]$ に戻り、二重双対は $(x,y)$ でなく $k[x,y]$ 全体になる。二重双対と一致する加群・層は、局所自由層と捩れのある層の中間にあたる。
正規なスキームの上では、反射的層は「余次元 $2$ 以上の閉集合を除いても切断が変わらない捩れのない層」として特徴づけられる。これは正規環の関数が余次元 $2$ の集合を越えて延びるという代数的な Hartogs の現象の、層への一般化である。この性質により、正規スキームの Weil 因子 $D$ に付随する層 $\mathcal{O}_X(D)$ は階数 $1$ の反射的層であり、逆に階数 $1$ の反射的層は Weil 因子の類と 1 対 1 に対応する。Cartier でない Weil 因子は、局所自由でない反射的層を与える。
この記事では、反射的層を定義し、正規スキームでの延長性による特徴づけ、Weil 因子との対応、正則な曲面の上では反射的層が局所自由であることを証明する。

定義

以下、$X$ は整な Noether スキーム、$\eta$ はその生成点、$K=\mathcal{O}_{X,\eta}$ は関数体とする。連接層 $\mathcal{F}$ の 双対 を $\mathcal{F}^\vee:=\mathcal{H}om_{\mathcal{O}_X}(\mathcal{F},\mathcal{O}_X)$ とおく。これは連接層であり、茎について $(\mathcal{F}^\vee)_x=\operatorname{Hom}_{\mathcal{O}_{X,x}}(\mathcal{F}_x,\mathcal{O}_{X,x})$ が成り立つ(Har77 III 命題 6.8, p. 235)。

反射的層

連接層 $\mathcal{F}$ について、局所切断 $s$ に「$\varphi\mapsto\varphi(s)$」を対応させる自然な射
$$ j_{\mathcal{F}}\colon\mathcal{F}\longrightarrow\mathcal{F}^{\vee\vee} $$
が同型であるとき、$\mathcal{F}$ は 反射的 であるという。$\mathcal{F}^{\vee\vee}$ を $\mathcal{F}$ の 反射包 という。

茎の言葉では、$\mathcal{F}$ が反射的であることは、すべての点 $x$ で有限生成 $\mathcal{O}_{X,x}$ 加群 $\mathcal{F}_x$ が反射的(双対加群 の意味で $M\to M^{**}$ が同型)であることと同値である(上の茎の公式による。Stacks Tag 0AY3)。
連接層 $\mathcal{F}$ の局所切断 $s$ は、$0$ でない局所関数 $a$ で $as=0$ となるとき 捩れ元 という。捩れ元が $0$ だけの層を 捩れのない 層という。これはすべての点 $x$ で $\mathcal{F}_x\to\mathcal{F}_\eta$ が単射であることと同値である。

  • 局所自由層は反射的である(自由加群は反射的)。
  • $\mathcal{F}$ の 階数 は $K$ 上のベクトル空間 $\mathcal{F}_\eta$ の次元である。

捩れと二重双対

双対は捩れがない

$\mathcal{F}$ を連接層とする。

  1. $\mathcal{F}^\vee$ は捩れがない。
  2. $j_{\mathcal{F}}$ が単射であることと、$\mathcal{F}$ が捩れのないことは同値である。
  3. $X$ が正規で $\mathcal{F}$ に捩れがなければ、$\dim\mathcal{O}_{X,x}\le1$ となるすべての点 $x$ で $(j_{\mathcal{F}})_x$ は同型である。
茎での計算

茎で調べればよい。$A=\mathcal{O}_{X,x}$(整域)、$M=\mathcal{F}_x$ とする。
1.$\varphi\in M^*$ と $0\ne a\in A$ が $a\varphi=0$ をみたせば、すべての $m$ で $a\varphi(m)=0$、$A$ は整域なので $\varphi(m)=0$ である。
2.$M$ に捩れがないとする。$M\to M\otimes_AK\cong K^r$ は単射で、$M$ の有限個の生成元の分母を払う $0\ne d\in A$ をとると $dM\subset A^r$ である。よって単射 $\iota\colon M\hookrightarrow A^r$ があり、その座標 $\iota_1,\dots,\iota_r$ は $M^*$ の元である。$j(m)=0$ ならすべての $\iota_i(m)=0$ で $m=0$ である。逆に $j$ が単射なら、$M$ は 1 により捩れのない $M^{**}$ の部分加群なので捩れがない。
3.$\dim A=0$ なら $A$ は体で、$M$ は有限次元ベクトル空間なので $M\cong M^{**}$ である。$\dim A=1$ なら、$A$ は 1 次元の正規 Noether 局所環なので離散付値環である(Mat89 定理 11.2, p. 79)。単項イデアル整域上の有限生成で捩れのない加群は自由なので、$M$ は自由で反射的である。$\square$

正規スキームでの特徴づけ

閉集合 $Z\subset U$ が 余次元 $2$ 以上 であるとは、すべての $z\in Z$ で $\dim\mathcal{O}_{X,z}\ge2$ となることをいう。連接層 $\mathcal{F}$ が次をみたすとき、延長性 をもつということにする。

$X$ の任意の開集合 $U$ と、余次元 $2$ 以上の任意の閉集合 $Z\subset U$ について、制限写像 $\mathcal{F}(U)\to\mathcal{F}(U\setminus Z)$ が全単射である。

延長性による特徴づけ

$X$ を整な正規 Noether スキーム、$\mathcal{F}$ を連接層とする。次は同値である。

  1. $\mathcal{F}$ は反射的である。
  2. $\mathcal{F}$ は捩れがなく、延長性をもつ。
    とくに、任意の連接層 $\mathcal{G}$ について $\mathcal{G}^\vee$ は反射的であり、反射包 $\mathcal{F}^{\vee\vee}$ は反射的である。
構造層の延長性から双対の延長性へ

段階 1:$\mathcal{O}_X$ は延長性をもつ。 $Z\subset U$ を余次元 $2$ 以上とする。$Z$ は $U$ の生成点を含まないので $U\setminus Z$ は $U$ で稠密であり、$\mathcal{O}_X$ は整なので制限は単射である。全射を示す。$f\in\mathcal{O}_X(U\setminus Z)\subset K$ とし、$V=\operatorname{Spec}A\subset U$ をアフィン開集合とする。$A$ の高さ $1$ の素イデアル $\mathfrak{p}$ に対応する点は $\dim A_\mathfrak{p}=1$ なので $Z$ に入らず、$f\in A_\mathfrak{p}$ である。正規 Noether 整域では $A=\bigcap_{\operatorname{ht}\mathfrak{p}=1}A_\mathfrak{p}$ なので(Mat89 定理 11.5 (ii), p. 81)、$f\in A$ である。$U$ を覆うアフィン開集合ごとに $f$ は $K$ の同じ元として延び、貼り合って $\mathcal{O}_X(U)$ の元になる。
段階 2:任意の連接層 $\mathcal{G}$ について、$\mathcal{G}^\vee$ は延長性をもつ。 単射:$\varphi\in\mathcal{G}^\vee(U)$ が $U\setminus Z$ で $0$ なら、各局所切断 $s$ について $\varphi(s)$ は稠密な開集合で $0$ になる局所関数なので $0$ である。全射:$\psi\in\operatorname{Hom}(\mathcal{G}|_{U\setminus Z},\mathcal{O}|_{U\setminus Z})$ とする。開集合 $V\subset U$ と $s\in\mathcal{G}(V)$ について、段階 1 を $V$ と $Z\cap V$ に使い、$\psi(s|_{V\setminus Z})\in\mathcal{O}(V\setminus Z)$ の延長を $\varphi_V(s)\in\mathcal{O}(V)$ とする。延長の一意性から $\varphi_V$ は制限と両立し $\mathcal{O}$ 線形であり、$\varphi\in\mathcal{G}^\vee(U)$ で $\varphi|_{U\setminus Z}=\psi$ となるものを定める。
段階 3:1 ⇒ 2。 $\mathcal{F}\cong(\mathcal{F}^\vee)^\vee$ は段階 2 により延長性をもち、lem-rfx-torsion の 1 により捩れがない。
段階 4:2 ⇒ 1。 lem-rfx-torsion の 2 により $j=j_{\mathcal{F}}$ は単射である。余核 $\mathcal{Q}$ は連接層なのでその台 $S$ は閉集合で、lem-rfx-torsion の 3 により $S$ は $\dim\mathcal{O}_{X,x}\le1$ の点を含まない。開集合 $U$ と $s\in\mathcal{F}^{\vee\vee}(U)$ をとり、$Z:=S\cap U$ とおく。$U\setminus Z$ の上で $j$ は同型なので $s|_{U\setminus Z}=j(t)$ となる $t\in\mathcal{F}(U\setminus Z)$ があり、延長性から $t=t'|_{U\setminus Z}$ となる $t'\in\mathcal{F}(U)$ がある。$s-j(t')$ は $U\setminus Z$ で $0$ で、段階 2 により $\mathcal{F}^{\vee\vee}=(\mathcal{F}^\vee)^\vee$ の制限は単射なので $s=j(t')$ である。よって $j$ は各開集合で全単射である。
最後の主張は、段階 2 と lem-rfx-torsion の 1 から $\mathcal{G}^\vee$ が 2 をみたすことによる。$\square$

正規スキームの上の反射的層は、捩れがなく Serre の条件 $(S_2)$ をみたす連接層とも同値であり、余次元 $2$ 以上の閉集合の外で局所自由な層の順像としても特徴づけられる(Stacks Tag 0AY6)。余次元 $2$ 以上の閉集合 $Z$ の外への制限は、$X$ と $X\setminus Z$ の反射的層の圏の同値を与える(同 Tag 0EBJ)。

階数 1 の反射的層と Weil 因子

この節では $X$ を整な正規 Noether スキームとし、記号は Weil因子 にそろえる。素因子 $Y$ の生成点を $\eta_Y$、離散付値環 $\mathcal{O}_{X,Y}=\mathcal{O}_{X,\eta_Y}$ の付値を $\operatorname{ord}_Y$ とする。Weil 因子 $D=\sum n_YY$ に対し
$$ \mathcal{O}_X(D)(U):=\{f\in K^\times\mid(\operatorname{div}(f)+D)|_U\ge0\}\cup\{0\} $$
とおく(Weil因子 の注意「Weil因子に付随する層と有理切断の因子」)。$K$ を定数層とみると、$\mathcal{O}_X(D)$ はその部分 $\mathcal{O}_X$ 加群である。
次の補題により、$K$ の中の反射的な部分層は素因子の生成点での茎だけで決まる。

$K$ の反射的な部分層

$X$ を整な正規 Noether スキーム、$\mathcal{F}\subset K$ を $\mathcal{F}_\eta=K$ となる反射的な部分 $\mathcal{O}_X$ 加群とする。このとき開集合 $U$ について
$$ \mathcal{F}(U)=\{f\in K\mid U\text{ と交わるすべての素因子 }Y\text{ について }f\in\mathcal{F}_{\eta_Y}\} $$
である。とくに、このような $\mathcal{F},\mathcal{F}'$ が各素因子で $\mathcal{F}_{\eta_Y}=\mathcal{F}'_{\eta_Y}$ をみたせば $\mathcal{F}=\mathcal{F}'$ である。

延長性による

$\subset$ は明らかである。$f$ が右辺に入るとする。$f$ がある近傍で $\mathcal{F}$ の切断になる点 $x\in U$($f\in\mathcal{F}_x$ となる点)の集合 $W$ は開集合である。生成点と各 $\eta_Y$($Y\cap U\ne\emptyset$)は $W$ に入り、これらは $\dim\mathcal{O}_{X,x}\le1$ となる $U$ の点のすべてなので、$Z:=U\setminus W$ は余次元 $2$ 以上である。$f$ は $\mathcal{F}(W)$ の元を定め、thm-rfx-hartogs の延長性により $\mathcal{F}(U)$ の元に延びる。延長は $K$ の中で $f$ と一致するので、$f\in\mathcal{F}(U)$ である。$\square$

Weil 因子類群との対応

$X$ を整な正規 Noether スキームとする。

  1. Weil 因子 $D=\sum n_YY$ について、$\mathcal{O}_X(D)$ は階数 $1$ の反射的層であり、各素因子 $Y$ で $\mathcal{O}_X(D)_{\eta_Y}=\{f\in K\mid\operatorname{ord}_Y(f)\ge-n_Y\}$ である。
  2. 階数 $1$ の反射的層はすべて、ある Weil 因子 $D$ について $\mathcal{O}_X(D)$ と同型である。
  3. $\mathcal{O}_X(D)\cong\mathcal{O}_X(D')$ であることと $D\sim D'$ であることは同値である。
    したがって $[D]\mapsto[\mathcal{O}_X(D)]$ は、Weil 因子類群 $\operatorname{Cl}(X)$ から階数 $1$ の反射的層の同型類の集合への全単射である。
茎の比較と延長性

1. 連接性:アフィン開集合 $V=\operatorname{Spec}A$ の上で、$M:=\mathcal{O}_X(D)(V)$ とする。$n_Y>0$ となる素因子は有限個なので、その素イデアルの $0$ でない元の冪の積として、$V$ と交わる $n_Y>0$ のすべての $Y$ で $\operatorname{ord}_Y(g)\ge n_Y$ となる $0\ne g\in A$ がとれる。すると $gM\subset\bigcap_{\operatorname{ht}\mathfrak{p}=1}A_\mathfrak{p}=A$(Mat89 定理 11.5)で、$M\cong gM$ は有限生成である。$0\ne a\in A$ について $\mathcal{O}_X(D)(D(a))=M_a$ である($\supset$ は明らか。$f$ が左辺に入れば、$a$ を含む有限個の素因子での位数の不足を $a^N$ で補って $a^Nf\in M$)。よって $\mathcal{O}_X(D)|_V=\widetilde M$ で、連接層である。
反射性:$\mathcal{O}_X(D)\subset K$ なので捩れがない。延長性を示す。$Z\subset U$ が余次元 $2$ 以上なら、$U$ と交わる素因子 $Y$ の生成点 $\eta_Y$ は $Z$ に入らないので、$U\setminus Z$ と交わる素因子は $U$ と交わる素因子と同じである。$(\operatorname{div}(f)+D)|_U\ge0$ はこれらの $Y$ での位数の条件なので、$\mathcal{O}_X(D)(U\setminus Z)=\mathcal{O}_X(D)(U)$ となる。thm-rfx-hartogs により反射的である。$\eta_Y$ での茎の式は、$\operatorname{ord}_{Y'}(f)\ne0$ または $n_{Y'}\ne0$ となる有限個の素因子 $Y'\ne Y$ を除いた近傍をとれば得られる。$\mathcal{O}_X(D)_\eta=K$ なので階数は $1$ である。
2. $\mathcal{F}$ を階数 $1$ の反射的層とし、同型 $\mathcal{F}_\eta\cong K$ を 1 つ固定する。$\mathcal{F}$ は捩れがないので $\mathcal{F}\to\mathcal{F}_\eta=K$ は単射で、$\mathcal{F}$ を $K$ の部分層とみなせる。各 $Y$ で $\mathcal{F}_{\eta_Y}$ は離散付値環 $\mathcal{O}_{X,Y}$ 上の有限生成で捩れのない階数 $1$ の加群なので、ある整数 $n_Y$ について $\{f\mid\operatorname{ord}_Y(f)\ge-n_Y\}$ に等しい。$n_Y\ne0$ となる $Y$ は有限個である。実際、$X$ を有限個のアフィン開集合 $V$ で覆い、$\mathcal{F}(V)$ の生成元 $g_1,\dots,g_r$ と $0\ne h\in\mathcal{F}(V)$ をとると、$V$ と交わる $Y$ で $-n_Y=\min_i\operatorname{ord}_Y(g_i)$ であり、$n_Y\ne0$ なら、ある $g_i$ が $Y$ に極をもつか、すべての $g_i$ が $Y$ で零点をもち $\operatorname{ord}_Y(h)>0$ となる。そのような $Y$ は有限個である(Weil因子 の補題「位数が零でない素因子の有限性」)。$D:=\sum n_YY$ とおくと、$\mathcal{F}$ と $\mathcal{O}_X(D)$ は 1 により各 $\eta_Y$ で同じ茎をもつ反射的な部分層で、lem-rfx-subsheaf により $\mathcal{F}=\mathcal{O}_X(D)$ である。
3. $D'=D-\operatorname{div}(h)$($h\in K^\times$)なら、$g\mapsto hg$ が $\mathcal{O}_X(D)\cong\mathcal{O}_X(D')$ を与える($\operatorname{div}(hg)+D'=\operatorname{div}(g)+D$)。逆に同型 $\alpha\colon\mathcal{O}_X(D)\to\mathcal{O}_X(D')$ があれば、生成点での $\alpha_\eta\colon K\to K$ は $K$ 線形なので、ある $h\in K^\times$ による掛け算である。$K$ の部分層として $\mathcal{O}_X(D')=h\,\mathcal{O}_X(D)=\mathcal{O}_X(D-\operatorname{div}(h))$ となり、1 の茎の式から係数を比べて $D'=D-\operatorname{div}(h)$ である。$\square$

この全単射のもとで、Weil 因子の和は反射的層のテンソル積の反射包 $(\mathcal{O}_X(D)\otimes\mathcal{O}_X(D'))^{\vee\vee}\cong\mathcal{O}_X(D+D')$ に対応し、$\operatorname{Cl}(X)$ の群構造は階数 $1$ の反射的層の同型類の群構造と一致する(Stacks Tag 0EBL・0EBM。この記事では証明しない)。$\mathcal{O}_X(D)$ が可逆層になることは $D$ が Cartier 因子であることと同値である(Weil因子 の注意「Weil因子に付随する層と有理切断の因子」)。

正則な曲面の上では局所自由

次元 2 以下の正則スキーム

$X$ を次元 $2$ 以下の整な正則 Noether スキームとする。このとき反射的層は局所自由である。

深さと Auslander–Buchsbaum の公式

連接層の茎が自由ならその点の近傍で自由なので(Har77 II 演習 5.7, p. 124)、各点 $x$ で $M:=\mathcal{F}_x$ が自由であることを示せばよい。$A:=\mathcal{O}_{X,x}$ とする。$\dim A\le1$ なら lem-rfx-torsion の 3 の証明のとおり $M$ は自由である。$\dim A=2$ とし、$\mathfrak{m}$ を極大イデアルとする。
$M$ は $N:=M^*$ の双対である。$N$ の表示 $A^a\to A^b\to N\to0$ の双対をとると完全列 $0\to M\to A^b\to A^a$ を得るので、$M\subset A^b$ で、商 $C:=A^b/M$ は $A^a$ に埋め込まれ、捩れがない。正則なパラメータ系 $x,y$ をとる。$A/xA$ は 1 次元の正則局所環(Mat89 定理 14.2, p. 105)なので離散付値環である。$x$ は捩れのない $M$ の正則元である。$m\in M$ が $m=xf$($f\in A^b$)と書ければ、$C$ で $x\bar f=0$、$C$ は捩れがないので $\bar f=0$、$f\in M$ である。よって $M/xM\to(A/xA)^b$ は単射であり、$y$ の像は離散付値環 $A/xA$ の $0$ でない元なので、$(A/xA)^b$ の、したがって $M/xM$ の正則元である。中山の補題から $M/(x,y)M\ne0$ なので、$x,y$ は $M$ 正則列で、$\operatorname{depth}M\ge2$ である。
$A$ は正則なので $M$ の射影次元は有限であり(Mat89 定理 19.2, p. 156)、$\operatorname{depth}A=2$ である(同 定理 17.8, p. 137)。Auslander–Buchsbaum の公式(同 定理 19.1, p. 155。Auslander–Buchsbaumの公式)から $\operatorname{pd}M=\operatorname{depth}A-\operatorname{depth}M\le0$、すなわち $M$ は自由である。$\square$

とくに滑らかな代数曲面の上では反射的層は局所自由で、階数 $1$ の反射的層は可逆層、thm-rfx-weil は $\operatorname{Cl}(X)=\operatorname{Pic}(X)$ を与える。次の反例の表が示すように、正則性も次元の条件も外せない。

例と反例

外す条件反例成り立たなくなること
thm-rfx-regular の正則性2 次錐 $xy=z^2$ の直線 $L$ に付随する $\mathcal{O}_X(L)$反射的層が局所自由であること
thm-rfx-regular の次元 $2$ 以下$\mathbb{A}^3$ 上の $(x,y,z)$ の Koszul 核反射的層が局所自由であること
thm-rfx-hartogs の延長性$\mathbb{A}^2$ の原点のイデアル層 $\mathcal{I}$捩れのない層が反射的であること
2 次錐の上の反射的層

$k$ を体、$X=\operatorname{Spec}k[x,y,z]/(xy-z^2)$、$L=V(x,z)$ とする。$X$ は 2 次元の正規な整スキームで、$L$ は素因子、$\operatorname{Cl}(X)\cong\mathbb{Z}/2$ は $[L]$ で生成される(Weil因子 の例「2次錐の因子類群」)。thm-rfx-weil により $\mathcal{O}_X(L)$ は階数 $1$ の反射的層である。$L$ は Cartier 因子でない(同記事の例「反例:Cartierでない素因子」)ので、$\mathcal{O}_X(L)$ は可逆層でなく、局所自由でない。$X$ は頂点で正則でないので、thm-rfx-regular の仮定のうち正則性だけを外した例である。

3 次元の Koszul 核

$A=k[x,y,z]$、$X=\operatorname{Spec}A$ とし、$\mathcal{F}$ を $\phi\colon\mathcal{O}_X^3\to\mathcal{O}_X$、$(a,b,c)\mapsto ax+by+cz$ の核とする。$\phi$ の双対 $\phi^*\colon\mathcal{O}_X\to\mathcal{O}_X^3$、$1\mapsto(x,y,z)$ の余核を $\mathcal{G}$ とすると、$\operatorname{Hom}(\mathcal{G},\mathcal{O}_X)$ は $\phi^*$ と合成して $0$ になる $\mathcal{O}_X^3\to\mathcal{O}_X$ 全体、すなわち $\ker\phi=\mathcal{F}$ である。よって $\mathcal{F}=\mathcal{G}^\vee$ は thm-rfx-hartogs により反射的で、階数は $2$ である。原点の局所環 $A_\mathfrak{m}$($\mathfrak{m}=(x,y,z)$)で $\mathcal{F}$ の茎が自由なら、$\phi$ の像は $\mathfrak{m}A_\mathfrak{m}$ なので $0\to\mathcal{F}_\mathfrak{m}\to A_\mathfrak{m}^3\to\mathfrak{m}A_\mathfrak{m}\to0$ から $\operatorname{pd}\mathfrak{m}A_\mathfrak{m}\le1$、$\operatorname{pd}k\le2$ となる。ところが Auslander–Buchsbaum の公式から $\operatorname{pd}k=\operatorname{depth}A_\mathfrak{m}-\operatorname{depth}k=3$ であり、矛盾する。よって $\mathcal{F}$ は局所自由でない。$X$ は正則で、外れているのは次元の条件だけである。

原点のイデアル層

$X=\mathbb{A}^2_k=\operatorname{Spec}k[x,y]$、$\mathcal{I}$ を原点 $0$ のイデアル層とする。$\mathcal{I}\subset\mathcal{O}_X$ なので捩れがない。$U=X$、$Z=\{0\}$(余次元 $2$)とすると、$\mathcal{I}$ は $X\setminus\{0\}$ で $\mathcal{O}_X$ と一致し、thm-rfx-hartogs の段階 1 から $\mathcal{I}(X\setminus\{0\})=\mathcal{O}_X(X\setminus\{0\})=k[x,y]$ であるが、$\mathcal{I}(X)=(x,y)\ne k[x,y]$ である。延長性が崩れるので $\mathcal{I}$ は反射的でない。反射包 $\mathcal{I}^{\vee\vee}$ は $K$ の反射的な部分層で、各素因子の生成点で $\mathcal{O}_X$ と同じ茎をもつので、lem-rfx-subsheaf により $\mathcal{I}^{\vee\vee}=\mathcal{O}_X$ である。

関連項目

参考文献

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する