ある曲線をそれ以上伸ばすことが出来るかどうかはしばしば重要なことである。
例えば有限な長さの曲線がもしそれ以上伸ばせないとすれば、その曲線の“端”には何らかの時空特異点が存在していることになる。
時空特異点は数学的にも物理的にも興味ある対象である。
ここでは曲線の延長可能性、不可能性を正確に定義する。
$\alpha:[0,b)\rightarrow M,\ b\le\infty$ を区分的 $C^1$ 級未来向き因果的曲線とする。
任意の点列 $\{u_i\}\in[0,b),\ u_i\rightarrow b$ に対して、$\alpha(u_i)\rightarrow p\in M$ となる $p\in M$ が存在するとき、$p$ を未来端点(future end point)といい、曲線 $\alpha$ は未来延長可能(future extendible)であるという。
過去端点と過去延長可能も同様に定義する。
また $\alpha:[0,b]\rightarrow M$ は自明な端点 $\alpha(b)$ を持つとし延長可能と定義する。
延長可能でないときは、延長不可能(inextendible)であるという。
直観的に言うと延長可能な曲線は"伸ばす"ことができる。
区分的 $C^1$ 級の未来向き因果的曲線 $\alpha:[0,b)\rightarrow M$ が延長可能であるとする。$\lim_{s\rightarrow p}\alpha(s)=p$ に対して、未来向き因果的ベクトル $v\in T_pM$ を任意に選び、初期位置が $p$ で初期方向が $v$ である区分的 $C^1$ 級の未来向き因果的曲線を $\beta:[0,c)\rightarrow M,\ \beta(0)=p$ とすると、$\tilde{\alpha}:=\alpha\cup\beta$ は必要なら適当にパラメータを取り直すことで、区分的 $C^1$ 級の未来向き因果的曲線となる。
$\tilde{\alpha}$ は $\alpha$ の未来向きの延長となる。