因果構造の連続性

 常に t は下半連続、t+ は上半連続、I± は内側連続であるが、t± は連続とは限らないし、I± も外側連続とは限らいない。
後者も成り立つなら、因果構造自体がある意味で連続であると言える。
ここでは因果構造が連続であるということの意味をはっきりさせ、いつくかの特徴づけを与える。

体積関数と I± の連続性

t± が連続であることと I± が外側連続であることは同値である。

I が外側連続であるとする。
t を測度 μ に関する過去体積関するとする。
任意の点 pM に対して、KMI(p)μ(MI(p))ε<μ(K) となるコンパクト集合 K を取ると、外側連続性より p の近傍 U があり、点列 {pn}U, pnp に対して、KMI(pn) となる。
よって t(pn)<μ(M)μ(K)<t(p)+ε であるから上半連続である。
t は常に下半連続であるから連続である。

逆に t が連続、従って上半連続であるとする。(途中)

I± が外側連続であるとき、I±M から M の冪集合への写像と見ても連続である。
従ってこのとき、単に I± が連続であるということがある。
t± が連続であったとしてもtime functionになるとは限らない。

因果構造の連続性に関してもう一つ同値な特徴づけがある。
それが以下の反射律である。

反射律

時空 (M,g) が点 qM において過去反射的(past reflecting) (resp. 未来反射的(future reflecting)) であるとは、次の同値な3つの条件を満たすときを言う。

  1. I+(p)I+(q)  I(p)I(q) (resp. I(p)I(q)  I+(p)I+(q))

  2. qI+(p)  pI(q) (resp. qI(p)  pI+(q))

  3. qI+(p)  pI(q) (resp. qI(p)  pI+(q))

さらに任意の点が過去反射的 (resp. 未来反射的) であるとき、時空 (M,g) は過去反射的 (resp. 未来反射的) であるという。
過去反射的かつ未来反射的であるとき、時空 (M,g) は反射的であるという。

上の3つの条件が同値であることの証明

(1)(2)

I+(q)I+(p)qI+(p)I(p)I(q)pI(q) を示せばよい。
I+(q)I+(p) とする。
点列 {qn}I+(q), qnq を考えると、qI+(p) である。
逆に、qI+(p)=J+(p) とする。
qI+(q) に対して q,q を結ぶ時間的曲線を αとする。
q の小さい近傍を U とし、q¯αUI+(q) を任意に選ぶ。
点列 {qn}I(q¯)Uqnq かつ qnI+(p) となるものが存在する(qI+(p) より)。
このとき p<<qn<<q¯<<q であるから I+(q)I+(p) である。
よって I+(q)I+(p)qI+(p) となる。
I(p)I(q)pI(q) も同様である。

(2)(3)

qI+(p) ならば、qI+(p) かつ qI+(p) である。
(3)を仮定しているから、pI(q) かつ pI(q) となり pI(q) である。

(3)(2)

qI+(p) ならば、qI+(p) または qI+(p) である。
(2)を仮定しているから、pI(q) または pI(q) となり pI(p) である。

反射律に関して次が成り立つ。

I± の連続性と反射律との同値性

時空 (M,g) において、I (resp. I+) が(外側)連続であることと、過去反射的 (resp. 未来反射的) であることは同値である。

I が外側連続であるとする。
特に qM において I は外側連続であるとする。
qI+(p) かつ pI(q) となる pM が存在すると仮定して矛盾を導く。
pI(q)I の外側連続性により、q の適当な近傍 V があり、任意の qV に対して、pI(q) とできる。
しかし qI+(p) であるから、qVpI(q) となるものが存在して矛盾する。

逆に、過去反射的であるとする。
I が外側連続でないとして矛盾を導く。
I が外側連続でないから、コンパクト集合 KpMKI(p)= かつ 点列 pnpKI(pn) となるものが存在するようなものがある。
点列 rnKI(pn) を任意に選び、必要なら部分列を取ることで rnrK とする。
任意の sI(r) に対して、n が十分大きいとき pnI+(s) であるから、pI+(s) である。
過去反射律より sI(p) であり、従って I(r)I(p) である。
よって rI(r)I(p) であるが、rK であるから、KI(p)= に矛盾する。

この反射律による特徴付けはしばしば有効である。

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