Totally Vicious時空

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 ここではTotally Vicious時空の定義を述べ、有名な命題を証明抜きで述べる。Totally Vicious時空の性質についての詳細な議論はTotally Vicious時空を参照されたい。Totally Viciousは直訳で全悪質であり、因果的に性質としては最悪の時空である。因果構造としては閉じたtimelike曲線(CTC)の存在は好まざる性質であるが、CTCが"大量にある"という状況である。

Totally Vicious時空の定義

時空$(M,g)$がTotally Viciousであるとは次の同値な条件のいずれかを満たすことである。
(T1) 任意の$p\in M$に対して、$ I^+(p)\cap I^-(p)=M$
(T2) ある$p_0\in M$に対して、$ I^+(p_0)\cap I^-(p_0)=M$
(T3) 任意の$p\in M$に対して、$p$を通る閉timelike曲線(CTC)が少なくとも一つ存在する。
(T4) 任意の$p,q\in M (p\ne q)$に対して、$p$$q$を結ぶtimelike曲線が少なくとも一つ存在する。
(V1) 任意の$p\in M$に対して、$ J^+(p)\cap J^-(p)=M$
(V2) ある$p_0\in M$に対して、$ J^+(p_0)\cap J^-(p_0)=M$

同値性の証明

(T1)$\Rightarrow$(T2)
自明

(T2)$\Rightarrow$(T1)
任意の$p,q\in M$に対して、$ I^+(p_0)\cap I^-(p_0)=M$であるから、$p_0<< p<< p_0<< q<< p_0$となる。よって$p<< q<< p$となり、$q\in I^+(p)\cap I^-(p)$となる。従って$M\subset I^+(p)\cap I^-(p)$である。

(T1)$\Rightarrow$(T3)
自明

(T3)$\Rightarrow$(T2)
次の簡単な補題が成り立つことが分かる。
補題:$II(p):=I^+(p)\cap I^-(p)$と書くとき、$II(p)\ne\emptyset,II(q)\ne\emptyset$$II(p)\cap II(q)\ne\emptyset$ならば、$II(p)=II(q)$である。

この補題を使うと次のように証明できる。$p\in I^+(p)\cap I^-(p)$であるから、$ M=\bigcup_{p\in M}\{I^+(p)\cap I^-(p)\}$である。補題より$ M$$ I^+(p)\cap I^-(p)$の形をした集合のdisjoint unionであり、Mは連結で$ I^+(p)\cap I^-(p)$はopenなので$ M=I^+(p_0)\cap I^-(p_0)$である。

(T1)$\Rightarrow$(T4)
自明

(T4)$\Rightarrow$(T3)
任意の$ p\in M$に対して、$ I^+(p)\cup I^-(p)=M$または$ M-{p}$となる。$ I^\pm(p)$はopenで、$ M,M-{p}$は連結だから、$ I^+(p)\cap I^-(p)\ne\emptyset$である。よって$ \exists r\in I^+(p)\cap I^-(p)$となる。従って、$ p<< r<< p$、特に$p<< p$である。

(V1)$\Leftrightarrow$(V2)
(T1)$\Leftrightarrow$(T2)と同様

(T1)$\Rightarrow$(V1)
自明

(V1)$\Rightarrow$(T1)
$ r\in I^+(p)$を1つとる。$ \forall q\in J^+(r)$より$ q\in I^+(p)$となる。同様に$ q\in I^-(p)$である。よって$ M=I^+(p)\cap I^-(p)$となる。

$I^\pm(p)$は常に開集合であるが、$J^\pm(p)$は一般には開でも閉でもないため、(T3),(T4)のtimelike曲線をcausal曲線に置き換えた主張(T3)',(T4)'はT.V.を意味しないことに注意が必要である。例えば、$M=\mathbb{R}\times S^1$とし、$\mathbb{R}$の座標を$t$$S^1$の座標を$x$とするとき、計量を$g=-dtdx$で定めた時空$(M,g)$は(T3)',(T4)'を満たすが、T.V.ではない。

その他のtotally vicious時空の性質についてはtotally vicious時空を参照されたい。

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