$G$を群とする。 $x,y\in G$に対して
$
[x,y]=xyx^{-1}y^{-1}
$
として、これを$x,y$の交換子という。 交換子全体
$
\{[x,y]|x,y\in G\}
$
で生成される群を$G$の交換子群と呼び$D(G)$と書く。
$G$を群とする。 $G$が可換$\Leftrightarrow$$D(G)=\{e\}$
任意の$x,y\in G$に対して
$
[x,y]=xyx^{-1}y^{-1}=e
$
$G$を群とする。
$
D(G)\lhd G
$
任意の$x,y,z\in G$に対して
$
z[x,y]z^{-1}=zxyx^{-1}y^{-1}z^{-1}=[zxz^{-1},zyz^{-1}]
$
より明らか。
$G$を群とする。 $G/D(G)$は可換群である。
$xD(G),yD(G)\in G/D(G)$に対して
$
xD(G)yD(G)=xD(G)yD(G)y^{-1}D(G)x^{-1}x(G)xD(G)xD(G)=[x,y]D(G)xD(G)yD(G)=xD(G)yD(G)
$
よって$G/D(G)$は可換群。
$G$を群、$N$を正規部分群とする。 $G/N$が可換群$\Leftrightarrow$$N\supset D(G)$
($\Rightarrow$) 任意の$x,y\in G$に対して
$
H=xHyHx^{-1}Hy^{-1}H=[x,y]H
$
なので、$[x,y]\in N$より$N\supset D(G)$ ($\Leftarrow$) $N\supset D(G)$なので自然な全射準同型
$
G/D(G)\ni xD(G)\mapsto xN\in G/N
$
が存在する。 $G/D(G)$は可換なので$G/N$も可換。
$G$を群とする。 $D_0(G)=G,D_1(G)=D(G),D_2(G)=D(D_1(G)),\cdots$とする。
$
G=D_0(G)\supset D_1(G)\supset D_2(G)\supset\cdots
$
という群の列を考えることができる。 この列を交換子群列という。
$G$を群とする。 $G$の交換子群列には以下が成り立つ。 (1)$D_i(G)\rhd D_{i+1}(G)$ (2)$D_i(G)/D_{i+1}(G)$は可換群
$G$を群とする。 ある$n\in\mathbb{N}$が存在して$D_n(G)=\{e\}$となるとき、$G$を可解群という。 可解群ではない群を非可解群という。
可換群は可解である。
$G$が可換群$\Rightarrow$$D(G)=\{e\}$より明らか。
可解群の任意の部分群は可解である。
$G$を可解群、部分群$H$を任意に取る。 $H$の交換子群列を考えると、$i=0,1,2,\cdots$に対して
$
D_i(G)\supset D_i(H)
$
が成り立つ。 $G$は可解群なのである$n\in\mathbb{N}$が存在して$D_n(G)=\{e\}$となるから、$D_n(H)=\{e\}$となる。 よって$H$は可解群。
$G$を群、$N$を正規部分群とする。 $G$が可解群$\Leftrightarrow$$N,G/N$が可解群
($\Rightarrow$) $N$が可解群であることは上記命題から明らか。 $G/N$が可解群であることを示す。 $i=0,1,2,\cdots$に対して
$
D_i(G/N)=D_i(G)N/N
$
が成り立つ。 よって、$G$が可解群であることから$G/N$も可解群。 ($\Leftarrow$) $N,G/N$が可解群なのである$m,n\in\mathbb{N}$が存在して $D_n(N)=\{e\},D_m(G/N)=\{N\}$とできる。
$
D_m(G/N)=D_m(G)N/N=\{N\}
$
なので、$D_m(G)\subset N$。
$
D_{m+n}(G)=D_n(D_m(G))\subset D_n(N)=\{e\}
$
より$G$は可解群。
$n\geq 3$とする。
$
D(S_n)=A_n
$
$n$次対称群$S_n$は$n\leq 4$のときは可解だが、$n\geq5$のときは非可解。
$n\geq 5$とする。 $D(A_n)=A_n$を示す。
$
D(A_n)=\langle\{[\sigma,\tau]|\sigma,\tau\in A_n\}\rangle
$
$
[\sigma,\tau]=\sigma\tau\sigma^{-1}\tau^{-1}\in A_n
$
よって$D(A_n)\subset A_n$。 $1\leq i\leq j\leq k\leq n$を任意に取る。 $n\geq 5$なので$i,j,k$以外に互いに異なる$1\leq l,m,\leq n$が存在する。
$
(ijk)=(ijm)(ikl)(ijm)^{-1}(ikl)^{-1}=[(ijm),(ikl)]
$
が成り立つ。 $A_n$は3文字の置換全体から生成されるので、$[(ijm),(ikl)]\in A_n$となり、$D(A_n)\supset A_n$。 以上より、$D(A_n)= A_n$。 ところで$D(S_n)=A_n$なので、$D(S_n)=D(D(S_n))=D(D(D(S_n)))=\cdots\neq\{e\}$より$S_n(n\geq4)$は非可解群。 $n=1,2$のときは$S_n$が可解群であることは明らか。 $n=3$とする。 $|A_3|=3$で素数なので$A_3$は可換。
$
D(D(S_3))=D(A_3)=\{e\}
$
よって$S_3$は可解群。 $n=4$とする。 クラインの四元群$V$は$A_4$の正規部分群かつ可換群である。 よって、$V$は可解で、
$
$|A_4/V|$=\frac{|A_4|}{|V|}=3
$
なので$A_4/V$も可解。 つまり、$A_4$は可解群である。 $D(S_4)=A_4$なので、$S_4$も可解群であると分かる。 以上より、$S_n$は$n\leq 4$のときは可解だが、$n\geq5$のときは非可解。
$K$を標数0の体とする。 $f\in K[x]$に対して$f$の最小分解体を$L_f$と書くと$L_f/K$はガロア拡大となる。 べき根を添加していく体の列
$
K=L_0\subset L_1\subset\cdots\subset L_r
$
$
L_i=L_{i-1}(\sqrt[n_i]{\alpha_i}),\ alpha_i\in L_{i-1},\ n_i\in\mathbb{N}
$
が存在して、$L_f\subset L_r$がなりたつとき、$f(x)=0$はべき根で解けるという。
$K$を標数0の体、$f\in K[x]$とする。 $f(x)=0$はべき根で解ける$\Leftrightarrow$$Gal(L_f/K)$
$K$を標数0の体とする。 $f\in K[x]$を
$
f(x)=(x-\alpha_1)(x-\alpha_2)(x-\alpha_3)=x^3-s_1x^2+s_2x-s_3
$
とする。 $f(x)=0$はべき根で解ける。
$x=z-\frac{1}{3}a$とおくと、3次方程式は適当な$p,q$を用いて
$
z^3+pz+q=0
$
と書き換えられる。
$K$を標数0の体とする。 $K$係数の4次方程式$x^3+ax^2+bx+c=0$はべき根で解ける。