整数全体の集合$\mathbb{Z}$に一般的な和と積を考えたものを整数環という。
$R$を可換環とする。 $a_0,\cdots,a_n\in R$と変数$x$に対して、
$
f(x)=a_0+a_1x+\cdots a_nx^n
$
を$R$係数の1変数多項式という。 $a_i(i=0,\cdots n)$を係数という。 $a_ix^i(i=0,\cdots n)$を項と呼び、特に$a_0$を定数項という。 $a_n\neq 0$ならば$n$を多項式の次数と呼び、$\deg f(x)=n$と定義する。 ただし、$f(x)=0$ならば$\deg0=-\infty$と定義する。 また、2つの1変数多項式$f(x),g(x)$に対して、$f(x)=g(x)$$\Leftrightarrow$任意の係数が等しいと定義する。 1変数多項式$f(x)$は変数が明らかな場合には$f$と省略されることもある。
$R$を可換環とする。 $R$係数の変数$x$を持つ1変数多項式全体の集合を$R[x]$と表記する。 $R[x]$に普通の多項式に関する和と積を考えることで$R[x]$は可換環になる。 $R[x]$を1変数多項式環という。 $R$の元は定数項のみからなる多項式とみなせるので$R\subset R[x]$である。
$R$を可換環とする。 $R[x_1]$係数で$x_1$と異なる変数$x_2$を持つ多項式環$(R[x_1])[x_2]$を2変数多項式環と呼び$R[x_1,x_2]$と表記する。 これを繰り返して、$n$変数多項式環$R[x_1,\cdots,x_n]$が定義される。
$R$を可換環とする。 $f(x)\in R[x]$の最高次の係数が1のとき、$f(x)$をモニックという。
$R$を可換環、$f,g\in R[x]\backslash\{0\}$とする。
$
\deg(f+g)\leq max\{\deg f,\deg g\}
$
が成り立つ。
$f=a_0+a_1x+\cdots a_nx^n,g=b_0+b_1x+\cdots b_mx^m(a_0,\cdots,a_n,b_0,\cdots,b_m\in R)$とおけば明らか。
$R$を整域、$f,g\in R[x]\backslash\{0\}$とする。
$
\deg(fg)=\deg f+\deg g
$
が成り立つ。
$f=a_0+a_1x+\cdots a_nx^n,g=b_0+b_1x+\cdots b_mx^m(a_0,\cdots,a_n,b_0,\cdots,b_m\in R,a_n,b_m\neq0)$とおく。
$
fg=\sum_{i=0}^n\left(\sum_{j=0}^ma_ib_jx^{i+j}\right)
$
$i+j\leq n+m$より最高次の係数は$a_nb_m$で、$R$は整域なので$a_nb_m\neq0$である。 よって、
$
\deg(fg)=n+m=\deg f+\deg g
$
$R$が整域$\Leftrightarrow$$R[x]$が整域。
$\Leftarrow$は明らか。$\Rightarrow$を示す。 $f,g\in R[x]\backslash\{0\}$とする。 $\deg fg=\deg f+\deg g\neq-\infty$なので、$fg\neq0$である。 つまり、$R[x]$の0ではない元同士の積は0にならない。 よって、$R[x]$は0以外の零因子を持たないので整域である。
$R$を可換環、$f,g\in R[x]$で$f$の最高次数の係数は可逆元であるとする。
$
g(x)=qf+r
$
$
\deg r<\deg f
$
を満たす$q,r\in R[x]$が一意に存在する。
(存在) $\deg f>\deg g$ならば$q=0,r=g$とすれば良い。 $f=a_0+a_1x+\cdots a_nx^n,g=b_0+b_1x+\cdots b_mx^m(a_0,\cdots,a_n,b_0,\cdots,b_m\in R,a_n,b_m\neq0,n\leq m)$とおく。 (一意性)
$R$を整域、$\alpha_1,\cdots,\alpha_n\in R$を相異なる元とする。 $f(x)\in R[x]$が$f(\alpha_1)=\cdots=f(\alpha_n)=0$を満たすならば、ある$g(x)\in R[x]$が存在して
$
f(x)=g(x)(x-\alpha_1)\cdots(x-\alpha_n)
$
を満たす。
$K$を体とする。 $f(x)\in K[x]$の次数が$n$ならば$f(x)$の根は高々$n$個。
$R$を可換環、$I\neq R$をイデアルとする。
$
R[x]/IR[x]\cong(R/I)[x]
$
が成り立つ。
$a\in R$に対して、$\overline{a}=a+I\in R/I$と定義する。 $f=a_0+a_1x+\cdots a_nx^n\in R[x]$に対して、$\overline{f}=\overline{a_0}+\overline{a_1}x+\cdots \overline{a_n}x^n\in(R/I)[x]$と定義する。 このとき、写像$f\mapsto \overline{f}$は$R[x]$から$(R/I)[x]$への全射準同型である。 $\overline{f}=0\Leftrightarrow$$f$の任意の係数が$I$の元である。 よって、$I[x]=IR[x]$と準同型定理より、
$
R[x]/IR[x]\cong(R/I)[x]
$
$R$を可換環、$\mathfrak{p}\subset R$を素イデアルとする。 $\mathfrak{p}R[x]$は$R[x]$の素イデアルである。
$
R[x]/\mathfrak{p}R[x]\cong(R/\mathfrak{p})[x]
$
が成り立つ。 $\mathfrak{p}$が素イデアルなので$R/\mathfrak{p}$は整域である。 よって、$R[x]/\mathfrak{p}R[x]$も整域なので、$\mathfrak{p}R[x]$は素イデアル。 (\mathfrak{p}が素イデアル$\Leftrightarrow$$R\mathfrak{p}$は整域。)
$R$を整域、$p\in R$を$R$上の素元とする。 $p$は$R[x]$上の素元である。
$(p)$が素イデアルなので$(p)R[x]$は素イデアル。 よって、$p$は$R[x]$の元としても素元。
$K$を体とする。 $K[x]$はユークリッド整域である。
$d:R[x]\backslash\{0\}\ni f\mapsto \deg(f)\in\mathbb{N}$と写像を定めると、これはユークリッド関数となる。
=== 系 5. ($K[x]$はPID・UFDである) === $K$を体とする。 $K[x]$はPID・UFDである。 === 系 5. ($f(x)\in K[x]$が既約$\Rightarrow$$K[x]/(f(x))$は体) === $K$を体とする。 $f(x)\in K[x]$が既約ならば$K[x]/(f(x))$は体である。
$R$をUFDとする。 $f=a_0+a_1x+\cdots a_nx^n\in R[x]$に対して、$a_0,\cdots,a_n$の最大公約元が単元のとき、$f$を原始多項式という。
$R$をUFD、$K$を$R$の商体とする。 $f\in K[x]\backslash\{0\}$に対して、原始多項式$g\in K[x]$と$a\in K\backslash\{0\}$が存在して、$f=ag$となる。 また、$h\in K[x]$を原始多項式、$b\in K\backslash\{0\}$で$f=bh$ならば$a/b\in R^\times$である。 $f\in R[x]$ならば$a\in R$である。