Brun以降の篩法の出発点は、$\mu(d)$ を別の関数 $\lambda(I)$ で置き換えるところにある。一般的には次の定理が成り立つ。
$\lambda^+(I)$ が $\{1, 2, \ldots, n\}$ の部分集合に関する関数で、すべての $I\subset \{1, 2, \ldots, n\}$ について
$$\sum_{J\subset I}\mu(J) \leq \sum_{J\subset I}\lambda^+(J)$$
が成り立つとき、
$$\# S \leq \sum_{I\subset\{1, 2, \ldots, n\}}\lambda^+(I) \#A_I$$
が成り立つ。同様に、$\lambda^-(I)$ が $\{1, 2, \ldots, n\}$ の部分集合に関する関数で、すべての $I\subset \{1, 2, \ldots, n\}$ について
$$\sum_{J\subset I}\mu(J) \geq \sum_{J\subset I}\lambda^-(J)$$
が成り立つとき、
$$\# S \geq \sum_{I\subset\{1, 2, \ldots, n\}}\lambda^+(I) \#A_I$$
が成り立つ。
各 $x$ について
$$\sum_{I\subset J(x)}\mu(I) \leq \sum_{I\subset J(x)}\lambda^+(I)$$
が成り立つから
$$\# S \leq \sum_{x\in A} \sum_{I\subset J(x)}\lambda^+(I)=\sum_{I\subset\{1, 2, \ldots, n\}}\lambda^+(I) \# A_I$$
となる。同様に各 $x$ について
$$\sum_{I\subset J(x)}\mu(I) \geq \sum_{I\subset J(x)}\lambda^-(I)$$
だから
$$\# S \geq \sum_{x\in A} \sum_{I\subset J(x)}\lambda^-(I)=\sum_{I\subset\{1, 2, \ldots, n\}}\lambda^-(I) \# A_I$$
となる。
整数論において篩法を用いる場合の多くは素数を法とする剰余類を取り除く。このことはつぎのようにあらわすことができる。
$A$ をものの集まりとし、各素数 $p$ に対して $A$ の部分集合 $A_p$ が与えられ、
相異なる素数の積 $d=p_1 p_2 \cdots p_r$ について $A_d=\bigcap_{i=1}^r A_p$ と定め、$A_1=A$ と定める。
一方、各素数 $p$ に対して実数(整数でなくてもよい) $\rho(p)$ が対応し、相異なる素数の積 $d=p_1 p_2 \cdots p_r$ について
$$\rho(d)=\prod_{i=1}^r \rho(p), \rho(1)=1$$
と定める。
そして各 $d$ について
$$\# A_d=\frac{\rho(d)}{d}X+R_d=X\prod_{p\mid d}\frac{\rho(p)}{p}+R_d$$
となるとする(先述の $\delta_i$ に対して $\rho(p)/p$ が対応している)。
このとき $z$ よりも小さい素数 $p$ に対する $A_p$ をすべて $A$ から取り除いた集合の要素の個数を
$$S(A, z)=\# \left(A\setminus \bigcup_{p< z} A_p\right)$$
とおくと、包含と除去の原理から
$$S(A, z)=\sum_d \mu(d)\#A_d=X\prod_{p< z}\left(1-\frac{\rho(p)}{p}\right)+\sum_d \mu(d)R_d\tag{1}$$
となる。
この場合も、誤差項となる右辺の和は大きなものになりうるので、$\mu(d)$ を別の関数 $\lambda(d)$ で置き換えることがBrun以降の篩法の出発点であることは先の一般的な場合と同様である。