篩の方法を本格的に進展させたBrunの最初の考えは、$\mu(I)$ において $I$ の個数を与えられた個数以下に制限した関数
$$\mu_k(I)=\left\{\begin{array}{cl}
(-1)^{\# I} & (\# I\leq k), \\
0 & (\# I>k)
\end{array}\right.$$
を利用するものである。
たとえば $k=1$ のとき、$\mu_1(\emptyset)=1$, $\mu_1(\{i\})=-1$ でそれ以外の $I$ については $\mu_1(I)=0$ となるので
$$\sum_{I\subset\{1, 2, \ldots, n\}}\mu_1(I) \# A_I=\# A-\sum_{i=1}^n\# A_i\leq \# S$$
が明らかに成り立つ。Brunの最初の篩(Brun's pure sieveと呼ばれる)の基本原理はこれを次のように一般化したものである。
$k$ が奇数のとき
$$\# S\geq \sum_{I\subset\{1, 2, \ldots, n\}}\mu_k(I) \# A_I \ \ (1.1)$$
となり、$k$ が偶数のとき
$$\# S\leq \sum_{I\subset\{1, 2, \ldots, n\}}\mu_k(I) \# A_I \ \ (1.2)$$
となる。
$x\in A_i$ となる $i$ 全体の集合を $J(x)$ とおくと
$$\#S=\sum_{x\in S}\sum_{J(x)=\emptyset}1$$
となる。
$J(x)=\emptyset$ のとき
$$\sum_{I\subset J}\mu_k(I)=\mu_k(\emptyset)=1$$
となる。
よって、一般に任意の空でない有限集合 $J$ について $k$ が奇数のとき
$$\sum_{I\subset J}\mu_k(I)\leq 0,$$
$k$ が偶数のとき
$$\sum_{I\subset J}\mu_k(I)\geq 0$$
となることを示せばよい。$m=\# J\geq 1$ とおくと
$$\sum_{I\subset J}\mu_k(I)=\sum_{j=0}^k \sum_{\# I=j}(-1)^j=\sum_{j=0}^k (-1)^j\binom{m}{j}$$
となるが、
「初等整数論」二項係数:定理5
で述べた等式から
$$\sum_{I\subset J}\mu_k(I)=(-1)^k\binom{m-1}{k}$$
となり、右辺の和は $k$ が奇数のとき $0$ 以下、$k$ が偶数のとき $0$ 以上となるので、定理が従う。