素数を法とする合同式では体の性質を使えるが、合成数を法とすると零因子が現れ、積から因子を消去できないことがある。基本方針は、法を互いに素な素数冪へ分解し、各素数冪で解いた後に中国剰余定理で貼り合わせることである。
以下では $a\equiv b\pmod m$ を $m\mid a-b$ の意味で用い、$v_p(n)$ を非零整数 $n$ に含まれる素数 $p$ の指数とする。
$m\geq1$、$a,b\in\mathbb Z$ とし、$d=\gcd(a,m)$ とおく。合同式
$$
ax\equiv b\pmod m
$$
が解をもつための必要十分条件は $d\mid b$ である。可解な場合、法 $m$ の剰余類として解はちょうど $d$ 個ある。
解 $x$ があれば $d$ は $a$ と $m$ を割るので $b=ax-mq$ も割る。逆に $d\mid b$ とし、$a=da_0$、$b=db_0$、$m=dm_0$ と書く。$\gcd(a_0,m_0)=1$ だから、Bézoutの等式より $a_0$ は法 $m_0$ で逆元をもち、
$$
x\equiv a_0^{-1}b_0\pmod {m_0}
$$
が得られる。法 $m$ では $x,x+m_0,\ldots,x+(d-1)m_0$ が相異なる解であり、任意の二解 $x,x'$ について $a_0(x-x')\equiv0\pmod{m_0}$ で $\gcd(a_0,m_0)=1$ だから差は $m_0$ の倍数であり、これらですべてである。
$m=\prod_{i=1}^r p_i^{e_i}$ を素因数分解とする。整数係数多項式 $f$ に対し、写像
$$
\{x\bmod m:f(x)\equiv0\pmod m\}
\longrightarrow
\prod_{i=1}^r\{x_i\bmod p_i^{e_i}:f(x_i)\equiv0\pmod {p_i^{e_i}}\}
$$
を各素数冪への還元で定めると、これは全単射である。特に解の個数は各素数冪における解の個数の積である。
中国剰余定理による環同型
$$
\mathbb Z/m\mathbb Z\cong\prod_{i=1}^r\mathbb Z/p_i^{e_i}\mathbb Z
$$
は加法と乗法を保つので、多項式評価も保つ。したがって法 $m$ で $f(x)=0$ であることは、すべての成分で $f(x_i)=0$ であることと同値である。環同型の全単射性から解集合の全単射と個数の積公式が従う。
法 $3$ と法 $5$ ではそれぞれ $x\equiv\pm1$ である。符号を独立に選び中国剰余定理で貼り合わせると、法 $15$ の解は
$$
x\equiv1,4,11,14\pmod {15}
$$
の4個になる。素数法の「二次方程式の解は高々2個」という結論を合成数法へそのまま移せないことが分かる。
$p$ を素数、$t\geq1$、$f\in\mathbb Z[X]$ とする。$x_t$ が
$$
f(x_t)\equiv0\pmod {p^t},\qquad f'(x_t)\not\equiv0\pmod p
$$
を満たすなら、$x_{t+1}\equiv x_t\pmod {p^t}$ かつ $f(x_{t+1})\equiv0\pmod {p^{t+1}}$ を満たす法 $p^{t+1}$ の剰余類 $x_{t+1}$ が一意に存在する。
$f(x_t)=p^t u_t$ と書く。$y\in\{0,1,\ldots,p-1\}$ に対し、整数係数多項式のTaylor展開から
$$
f(x_t+yp^t)\equiv f(x_t)+yp^t f'(x_t)
\equiv p^t\bigl(u_t+yf'(x_t)\bigr)\pmod {p^{t+1}}
$$
を得る。$f'(x_t)$ は法 $p$ で可逆なので、
$$
u_t+yf'(x_t)\equiv0\pmod p
$$
を満たす $y\bmod p$ は一意に存在する。その $y$ に対して $x_{t+1}=x_t+yp^t$ とすればよい。$x_t$ の法 $p^t$ の持ち上げはすべてこの形なので一意性も従う。
$f(X)=X^2-2$ とする。法 $7$ では $3^2\equiv2$ であり、$f'(3)=6\not\equiv0\pmod7$ である。$x_2=3+7y$ とおくと
$$
f(3+7y)\equiv7(1+6y)\pmod {49}
$$
だから $y\equiv1\pmod7$、従って $x_2\equiv10\pmod {49}$ を得る。もう一つの根 $-3\pmod7$ も一意に持ち上がり、$x\equiv39\pmod {49}$ となる。
$f(X)=X^2$ と $x_1=0\pmod p$ を考えると $f'(x_1)\equiv0\pmod p$ である。法 $p^2$ への持ち上げ $x=py$ はすべて $x^2\equiv0\pmod {p^2}$ を満たすので、一意な持ち上げは得られない。これは単根条件を落としたHensel持ち上げの一意性を破る反例である。
$p$ を奇素数、$a,b$ を $a\neq b$、$p\nmid ab$ かつ $p\mid a-b$ を満たす整数とする。正整数 $n$ に対して
$$
v_p(a^n-b^n)=v_p(a-b)+v_p(n)
$$
が成り立つ。
まず $p\nmid m$ のとき、
$$
\frac{a^m-b^m}{a-b}=a^{m-1}+a^{m-2}b+\cdots+b^{m-1}\equiv mb^{m-1}\not\equiv0\pmod p
$$
なので $v_p(a^m-b^m)=v_p(a-b)$ である。
次に $c,d$ を $c\neq d$、$p\mid c-d$ かつ $p\nmid d$ を満たす整数とし、$t=v_p(c-d)\geq1$ とおく。二項展開により
$$
c^p-d^p=\sum_{k=1}^{p}\binom pk d^{p-k}(c-d)^k
=p d^{p-1}(c-d)+\sum_{k=2}^{p-1}\binom pk d^{p-k}(c-d)^k+(c-d)^p.
$$
$p\nmid d$ だから第1項 $pd^{p-1}(c-d)$ の付値はちょうど $t+1$ である。$2\leq k\leq p-1$ の項は、二項係数 $\binom pk$ が $p$ で割れるので付値が $1+kt\geq 1+2t>t+1$ である。最終項 $(c-d)^p$ の付値は $pt$ であり、$p$ が奇素数なので $pt\geq3t>t+1$ である。付値が最小の項が第1項だけなので
$$
v_p(c^p-d^p)=v_p(c-d)+1
$$
となる。$n=p^s m$、$p\nmid m$ と書く。$0\leq i\leq s$ に対して $c=a^{p^i}$、$d=b^{p^i}$ は、$p\nmid ab$ より $p\nmid d$ を満たし、$p\mid a-b$ から $c-d=(a-b)(a^{p^i-1}+\cdots+b^{p^i-1})$ より $p\mid c-d$ を満たす。また奇数 $p^i$ 乗は整数上で単射なので $a\neq b$ から $c\neq d$ である。よってこの等式を $s$ 回適用して $v_p(a^{p^s}-b^{p^s})=v_p(a-b)+s$ を得、最初の結果を $a^{p^s},b^{p^s}$ と $m$ に適用して $v_p(a^n-b^n)=v_p(a-b)+s=v_p(a-b)+v_p(n)$ を得る。
$a,b$ を $a\neq\pm b$ を満たす奇数とする。$n$ が奇数なら、$p\nmid m$ の場合の議論がそのまま通用して $v_2(a^n-b^n)=v_2(a-b)$ である。$n$ が正の偶数なら
$$
v_2(a^n-b^n)=v_2(a-b)+v_2(a+b)+v_2(n)-1
$$
である。奇素数版の式を $p=2$ へそのまま代入してはならない。例えば $a=3,b=1,n=2$ では $v_2(3^2-1)=v_2(8)=3$ だが、奇素数版の式は $v_2(3-1)+v_2(2)=2$ を与える。
偶数の場合の式は次のように示せる。$n=2^k m$($k\geq1$、$m$ 奇数)と書く。奇数 $x,y$ に対し $x^2-y^2=(x-y)(x+y)$ で、$x\neq\pm y$ なら $v_2(x^2-y^2)=v_2(x-y)+v_2(x+y)$ である。さらに $x^2+y^2\equiv2\pmod4$ だから $v_2(x^2+y^2)=1$ である。$x=a^m$、$y=b^m$ とすると($a\neq\pm b$ と奇数冪の単射性から $x\neq\pm y$)、奇数指数の場合の結果から $v_2(x-y)=v_2(a-b)$、$v_2(x+y)=v_2(a^m+b^m)=v_2(a+b)$($a^m+b^m=(a+b)(a^{m-1}-\cdots+b^{m-1})$ で第2因子は奇数個の奇数の和だから奇数)である。よって $v_2(a^{2m}-b^{2m})=v_2(a-b)+v_2(a+b)$ であり、以後 $x^{2}$ と $y^{2}$ に $v_2(x^2-y^2)=v_2(x-y)+v_2(x+y)=v_2(x-y)+1$ を $k-1$ 回適用して $v_2(a^n-b^n)=v_2(a-b)+v_2(a+b)+(k-1)$ を得る。
$m\geq2$ とし、$a$ を $m$ と互いに素な整数とする。$a$ の法 $m$ における乗法位数が $\varphi(m)$ に等しいとき、$a$ を法 $m$ の原始根という。同値に、
$$
a^j\pmod m\qquad(0\leq j<\varphi(m))
$$
が法 $m$ の既約剰余類を一度ずつ表す。
$m\geq2$ に対して法 $m$ の原始根が存在するための必要十分条件は
$$
m=2,\ 4,\ p^e,\ 2p^e
$$
のいずれかである。ただし $p$ は奇素数、$e\geq1$ とする。NZM91 Chapter 2。
この分類定理の存在方向は、法 $p$ の原始根から法 $p^e$ への持ち上げを構成し、$2p^e$ へ移すことで示す。非存在方向は中国剰余定理による単数群の直積分解と、$2^e$($e\geq3$)の単数群が巡回でないことから従う。完全な証明はNZM91 Chapter 2に委ねる。
法 $8$ の単数は $1,3,5,7$ であり、どの元も平方すると $1$ になる。したがって各元の位数は高々 $2$ で、$\varphi(8)=4$ の元は存在しない。これは合成数法の単数群が常に巡回になるという含意を破る。
$m=\prod_i p_i^{e_i}$ に対し
$$
(\mathbb Z/m\mathbb Z)^\times\cong\prod_i(\mathbb Z/p_i^{e_i}\mathbb Z)^\times
$$
である。従って、単数の位数やすべての単数に共通する指数は各素数冪成分の位数・指数の最小公倍数で決まる。
中国剰余定理の環同型は、元が可逆であることと逆元を成分ごとに取る操作を保つ。よって両辺の単数群を制限して群同型を得る。直積群の元 $(g_i)$ の位数は各 $g_i$ の位数の最小公倍数であるから後半も従う。
合成数 $m$ を法とする多項式合同式は、次の順で処理すると見通しがよい。
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