整域

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$\newcommand{\mathmod}[1]{\ \left(\mathrm{mod}\ #1\right)}$ $\newcommand{\Ker}{\mathrm{Ker}}$ $\newcommand{\Img}{\mathrm{Im}}$

定義

環 $R$ が整域であるとは、任意の $a\neq 0$ について $ab=0$ ならば $b=0$ が成り立つことをいう。

基本的事実

可換環 $R$ が整域であるための必要十分条件は $(0)$ が $R$ における素イデアルとなることである。 実際、$R$ が整域である $\Longleftrightarrow$ $ab=0$ ならば $a=0$ または $b=0$ $\Longleftrightarrow$ $ab\in (0)$ ならば $a\in (0)$ または $b\in (0)$ となる。

より一般に、また、可換環 $R$ のイデアル $I$ について、 $R/I$ が整域であるための必要十分条件は $I$ が $R$ における素イデアルとなることである。実際、 $R/I$ が整域である $\Longleftrightarrow$ $ab\equiv 0 \mathmod{I}$ ならば $a\equiv 0\mathmod{I}$ または $b\equiv 0\mathmod{I}$ $\Longleftrightarrow$ $ab\in I$ ならば $a\in I$ または $b\in I$ となる。

$f\colon R \to S$ が可換環 $R$ から可換環 $S$ への準同型写像ならば、準同型定理より $\Img f$ は $R/\Ker f$ に同型だから、 $\Img f$ が整域であることは、$\Ker f$ が素イデアルとなることと同値である。とくに、$S$ が整域ならば $\Img f\subset S$ も整域だから、$\Ker f$ は素イデアルとなる。

ホモロジー代数的な解釈

環 $R$ と $a \in R$ について、$R$ 上の $a$ 倍写像を $a_R$ と表記することにすると、$a_R:R\to R$ は単射であることがわかる。従って、以下の図式 \begin{xy} \xymatrix { 0 \ar[r] & R \ar[r]^{a_R} & R \ar[r] & R/aR \ar[r] & 0 } \end{xy} は短完全列である。

この定義を一般の(左-)$R$ 加群 $M$ について拡張する。$R$ 加群 $M$ と $a\in R$ について、$M$ 上の $a$ 倍写像を $a_M$ と表記することにする。このとき、$a \in R$ が $M$-正則元、もしくは $M$ の非零因子であるとは、以下の図式 \begin{xy} \xymatrix { 0 \ar[r] & M \ar[r]^{a_M} & M \ar[r] & M/aM \ar[r] & 0 } \end{xy} が短完全列であることをいう。任意の $0\neq a\in R$ について、$a$ が $M$ の非零因子であるとき、$M$ は $R$-捻れを持たないという。

関連項目