を体 上の不定元とするとき、 係数の の有理式の全体
は体をなす。この体を 上の有理関数体 (The field of rational functions) と呼ぶ。
一般に、 変数の有理関数体を次のように定める。体 上の代数独立な要素 について、
は体をなす。この体を 上の変数有理関数体と呼ぶ。
それで、 は、多項式環 の局所化として実現される。
前節の定理
より、有理関数体は、環としては有限生成でない。
有理関数体に関して、次の2つの事実が成り立つ。とくに後者の事実はHilbertの零点定理の証明に用いられる(Fulの1.9節および1.10節を参照)。
が体で、 が 上の有理関数体とする。
が 上整ならば、 である。
は 上整なので、
となる がとれる。
とあらわされるから、
とある。よって、
より、 において は を割り切る。
しかし だから、 となる。よって は定数でなければならず、 となる。
「任意の について、 が 上整となる自然数 が存在する」ような多項式 は しか存在しない。
でない多項式 をとり、任意の について、 が 上整となる自然数 が存在すると仮定する。
が定数多項式でないとき、 とし、 が でない定数多項式のとき とおくと、
は定数ではない多項式で、かつ となる。ここで とおく。
ある自然数 をとれば、 が 上整となるから、
となる がとれる。よって
となるので、 は を割り切る。 だから、 なので、 は定数でなければならないが、これは のとり方に反する。