有理関数体

T を体 K 上の不定元とするとき、K 係数の T の有理式の全体
K(T)={f(T)g(T) | f(T),g(T)K[T], g(T)0}
は体をなす。この体を K 上の有理関数体 (The field of rational functions) と呼ぶ。

一般に、n 変数の有理関数体を次のように定める。体 K 上の代数独立な要素 T1,,Tn について、
K(T1,,Tn)={f(T1,,Tn)g(T1,,Tn) | f,gK[T1,,Tn], g(T1,,Tn)0}
は体をなす。この体を K 上のn変数有理関数体と呼ぶ。

それで、K(T1,,Tn) は、多項式環 K[T1,,Tn] の局所化として実現される。

前節の定理 より、有理関数体は、環としては有限生成でない。

有理関数体に関して、次の2つの事実が成り立つ。とくに後者の事実はHilbertの零点定理の証明に用いられる(Fulの1.9節および1.10節を参照)。

Fulton Ful, 1.49a

K が体で、L=K(X)K 上の有理関数体とする。
zLK[X] 上整ならば、zK[X] である。

zK[X] 上整なので、
zd+a1zd1+ad=0
となる a1,,adK[X] がとれる。
z=F/G,F,GK[X],gcd(F,G)=1 とあらわされるから、
Fd+a1Fd1G++adGd=0
とある。よって、
Fd=G(a1Fd1++adGd1)
より、K[X] において GFd を割り切る。
しかし gcd(F,G)=1 だから、gcd(Fn,G)=1 となる。よって G は定数でなければならず、z=F/GK[X] となる。

Fulton Ful, 1.49b

「任意の zK(X) について、FnzK[X] 上整となる自然数 n>0 が存在する」ような多項式 FK[X]F=0 しか存在しない。

0 でない多項式 FK[X] をとり、任意の zK(X) について、FnzK[X] 上整となる自然数 n>0 が存在すると仮定する。
F が定数多項式でないとき、G=F+1 とし、F0 でない定数多項式のとき G=F+X とおくと、
G は定数ではない多項式で、かつ gcd(F,G)=1 となる。ここで z=1/G とおく。
ある自然数 n>0 をとれば、Fn/GK[X] 上整となるから、
(Fn/G)d+a1(Fn/G)d1+ad=0
となる a1,,adK[X] がとれる。よって
Fnd+a1Fn(d1)G++adGd=0
となるので、GFnd を割り切る。gcd(F,G)=1 だから、gcd(Fnd,G)=1 なので、G は定数でなければならないが、これはG のとり方に反する。

参考文献

Mathpediaを支援する

現在のページ

有理関数体
  1. 参考文献
前のページへ
3 / 8
次のページへ
前ページへ
代数幾何学入門の表紙
次ページへ