消去理論の主定理

同義語:消去理論の基本定理main theorem of elimination theoryfundamental theorem of elimination theory

概要

消去理論の主定理(main theorem of elimination theory)とは、可換環 $A$ を係数とする斉次多項式の族について、剰余体の代数閉包の中に自明でない共通零点をもつ素イデアル全体が $\operatorname{Spec}A$ の閉集合になるという定理である。その閉集合は、十分高い次数での掛け算写像の行列の小行列式で具体的に定まり、係数を不定元にとれば整数係数の多項式の共通零点として書ける。幾何学的には、射影空間の構造射 $\mathbb{P}^n_A\to\operatorname{Spec}A$ が閉写像であることの言い換えで、射影射が普遍閉であることの代数的な根拠を与える。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 射影空間, 斉次イデアル, Proj(次数付き環の射影スキーム), Hilbertの零点定理

連立方程式から変数を消去して、係数だけの条件を取り出すのが消去理論である。2 つの 1 変数多項式が共通の根をもつ条件は終結式 1 つで書けるが、変数が増えると、条件を書く多項式も増える。消去理論の主定理(main theorem of elimination theory)は、係数をパラメータとする斉次多項式の族が「自明でない共通零点をもつ」というパラメータの条件が、つねに係数の多項式の共通零点で書けること、すなわち Zariski 閉な条件であることを述べる。
幾何学的には、これは射影空間からの射影 $\mathbb{P}^n_A\to\operatorname{Spec}A$ が閉集合を閉集合へ送ることと同じである。アフィン空間からの射影では像は閉とは限らず(Chevalleyの定理によれば構成可能集合にはなる)、無限遠点を付け加えた射影空間で初めて閉になる。この記事では、係数の多項式を掛け算写像の小行列式として具体的に与えて主定理を証明し、射影空間の構造射が普遍閉であることを導く。

主張

記号

$A$ を可換環、$S=A[x_0,\dots,x_n]$ を通常の次数をもつ多項式環とし、$S_d$ を $d$ 次斉次式のなす部分 $A$ 加群とする($d<0$ なら $S_d=0$)。$S_d$ は $d$ 次単項式を基底とする階数 $N_d:=\binom{n+d}{n}$ の自由 $A$ 加群である。$f_1,\dots,f_r\in S$ を次数 $d_1,\dots,d_r\ge0$ の斉次多項式とする。
環準同型 $A\to B$ に対し、係数に施して得られる $B[x_0,\dots,x_n]$ の元も同じ記号 $f_i$ で表す。体 $K$ の代数閉包を $\overline{K}$ と書き、$K$ 上の斉次多項式の族 $f_1,\dots,f_r$ が自明でない共通零点をもつとは、$a\in\overline{K}^{\,n+1}\setminus\{0\}$ で $f_1(a)=\cdots=f_r(a)=0$ となるものがあることをいう。$\mathfrak{p}\in\operatorname{Spec}A$ の剰余体を $\kappa(\mathfrak{p})$ とする。

掛け算写像と小行列式のイデアル

各整数 $d\ge0$ について、$A$ 線形写像
$$ \varphi_d\colon\bigoplus_{i=1}^{r}S_{d-d_i}\longrightarrow S_d,\qquad(g_1,\dots,g_r)\longmapsto\sum_{i=1}^rg_if_i $$
を考え、単項式の基底に関するその行列を $M_d$ とする($N_d$ 行、$\sum_iN_{d-d_i}$ 列)。$M_d$ の $N_d$ 次小行列式全体が生成する $A$ のイデアルを $J_d$ とする(列が $N_d$ 本より少なければ $J_d=0$)。また
$$ Z(f_1,\dots,f_r):=\{\mathfrak{p}\in\operatorname{Spec}A\mid f_1,\dots,f_r\text{ は }\kappa(\mathfrak{p})\text{ 上で自明でない共通零点をもつ}\} $$
とおく。

$\varphi_d$ の像は、$f_1,\dots,f_r$ が生成する斉次イデアル $I$ の $d$ 次部分 $I_d$ である。$I$ の元の $d$ 次成分は $\sum_ig_if_i$ の $d$ 次成分であり、それは $g_i$ の $d-d_i$ 次成分だけで決まるからである。主定理(thm-elim-main)は、$Z(f_1,\dots,f_r)$ が $J_d$ たちで定まる閉集合であることを述べる。

体の上の射影零点定理

主定理の核心は、体の上で「自明でない共通零点がない」ことを、ある次数の掛け算写像の全射性で言い換えることである。

射影零点定理

$K$ を体、$f_1,\dots,f_r\in K[x_0,\dots,x_n]$ を斉次多項式、$I$ をそれらが生成する斉次イデアル、$R=K[x_0,\dots,x_n]$ とする。次の 3 条件は同値である。

  1. $f_1,\dots,f_r$ は自明でない共通零点をもたない。
  2. ある $d\ge0$ について $R_d\subset I$、すなわち $\varphi_d$ が全射である。
  3. $\operatorname{Proj}(R/I)=\emptyset$ である。
    さらに、2 がある $d$ で成り立てば、$d$ 以上のすべての次数で成り立つ。$K\subset L$ を体の拡大とすると、各 $d$ について「$\varphi_d$ が全射」は $K$ 上で考えても $L$ 上で考えても同じであり、とくに 1 は $K$ を $L$ に取り替えても変わらない。
零点定理と次数の鳩の巣論法

まず準備を 2 つ述べる。
(i) 各 $j$ で $x_j^m\in I$ なら、$d=(n+1)(m-1)+1$ のとき $R_d\subset I$ である。$d$ 次の単項式 $x_0^{e_0}\cdots x_n^{e_n}$ は $\sum e_j=d$ を満たすので、どれかの $e_j$ が $m$ 以上であり、$x_j^m$ で割り切れるからである。
(ii) $\varphi_d$ は $K$ の元を成分とする行列で表される $K$ 線形写像である。行列の階数は係数体を広げても変わらないから、$\varphi_d$ が全射かどうかは $K$ 上で見ても $L$ 上で見ても同じである。
2 ⇒ 1:$a\in\overline{K}^{\,n+1}$ が共通零点なら、$I$ のすべての元が $a$ で消える。$x_j^d\in R_d\subset I$ なので $a_j^d=0$、すなわち $a_j=0$ がすべての $j$ で成り立ち、$a=0$ である。
1 ⇒ 2:$I\overline{K}[x_0,\dots,x_n]$ の $\overline{K}^{\,n+1}$ における零点集合は $\{0\}$ か空集合である。いずれの場合も各座標関数 $x_j$ はこの零点集合の上で消えるので、Hilbertの零点定理の定理「Hilbertの零点定理」の 3(零点集合が空なら 2)により、ある $m$ で $x_j^m\in I\overline{K}[x_0,\dots,x_n]$ がすべての $j$ で成り立つ。(i) により $\overline{K}$ 上の $\varphi_d$ はある $d$ で全射であり、(ii) により $K$ 上の $\varphi_d$ も全射である。
2 ⇔ 3:Proj(次数付き環の射影スキーム)の命題「空になる場合」により、3 は $(R/I)_+$ のすべての元が冪零であることと同値である。$(R/I)_+$ は $x_0,\dots,x_n$ の像が生成するイデアルであり、冪零元の有限個で生成されるイデアルの元はすべて冪零なので、3 は「各 $j$ である $m$ について $x_j^m\in I$」と同値である。これは (i) により 2 を導き、逆に 2 なら $x_j^d\in I$ である。
最後の主張のうち、次数を上げてよいことは $R_{d+1}=\sum_jx_jR_d$ から従う。体の取り替えについては、(ii) と 1 ⇔ 2 による。$\square$

主定理

消去理論の主定理

上の記号で、次が成り立つ。

  1. $\mathfrak{p}\in\operatorname{Spec}A$ について、$\mathfrak{p}\notin Z(f_1,\dots,f_r)$ であるための必要十分条件は、ある $d\ge0$ で $J_d\not\subset\mathfrak{p}$ となることである。したがって
    $$ Z(f_1,\dots,f_r)=\bigcap_{d\ge0}V(J_d) $$
    であり、$Z(f_1,\dots,f_r)$ は $\operatorname{Spec}A$ の閉集合である。
  2. $V(J_0)\supset V(J_1)\supset V(J_2)\supset\cdots$ である。$A$ が Noether環 なら、ある $D$ があって、$d\ge D$ のとき $Z(f_1,\dots,f_r)=V(J_d)$ となる。
剰余体へ落として階数で読む

1:$\mathfrak{p}\in\operatorname{Spec}A$ を固定し、$K=\kappa(\mathfrak{p})$ とおく。$S_d\otimes_AK=K[x_0,\dots,x_n]_d$ であり、$\varphi_d\otimes_AK$ は $K$ 上の $f_1,\dots,f_r$ に対する掛け算写像で、その行列は $M_d$ の成分を $K$ へ写したものである。lem-elim-projective-nullstellensatz の 1 ⇔ 2 により、$\mathfrak{p}\notin Z(f_1,\dots,f_r)$ はある $d$ で $\varphi_d\otimes_AK$ が全射であることと同値である。これは $M_d$ の像の階数が $N_d$ であること、すなわち $M_d$ のある $N_d$ 次小行列式の $K$ における像が $0$ でないことと同値であり、小行列式が $\mathfrak{p}$ に属さないこと、つまり $J_d\not\subset\mathfrak{p}$ と同値である。よって $Z(f_1,\dots,f_r)$ の補集合は開集合 $D(J_d)=\operatorname{Spec}A\setminus V(J_d)$ の合併であり、$Z(f_1,\dots,f_r)=\bigcap_dV(J_d)$ は閉集合である。
2:1 の議論により、$\mathfrak{p}\notin V(J_d)$ は $\kappa(\mathfrak{p})$ 上の $\varphi_d$ が全射であることと同値である。lem-elim-projective-nullstellensatz によりそのとき $\varphi_{d+1}$ も全射なので $\mathfrak{p}\notin V(J_{d+1})$ であり、$V(J_{d+1})\subset V(J_d)$ が成り立つ。$A$ が Noether 環なら $\operatorname{Spec}A$ は Noether 空間であり(Noetherスキーム)、閉集合の減少列 $V(J_0)\supset V(J_1)\supset\cdots$ はある $D$ から先で一定になる。1 によりその値が $Z(f_1,\dots,f_r)$ である。$\square$

条件「$\kappa(\mathfrak{p})$ 上で自明でない共通零点をもつ」は、代数閉包 $\overline{\kappa(\mathfrak{p})}$ の中の零点で読む。$\kappa(\mathfrak{p})$ の中の零点で読むと、cor-elim-universal のような係数の多項式による判定はできない(prop-elim-rational)。
各 $J_d$ は有限個の小行列式で生成されるので、Noether 環の上では $Z(f_1,\dots,f_r)$ は $M_D$ の有限個の小行列式の共通零点として具体的に書ける。係数を不定元にとると、次の系の形が得られる(Har77 I 定理 5.7A、p. 35)。

系

不定元の係数による形

係数の整数係数多項式による判定

$n\ge0$ と $d_1,\dots,d_r\ge0$ を固定する。各 $f_i$ を、$d_i$ 次単項式 $x^\nu$ の係数を不定元 $c_{i,\nu}$ とした「一般の斉次多項式」$f_i=\sum_\nu c_{i,\nu}x^\nu$ とする。このとき整数係数の多項式 $g_1,\dots,g_t\in\mathbb{Z}[c_{i,\nu}]$ が存在して、次が成り立つ:任意の体 $k$ と係数の値 $\gamma=(\gamma_{i,\nu})\in k^{\sum_iN_{d_i}}$ について、係数に $\gamma$ を代入した $f_1,\dots,f_r$ が($\overline{k}$ の中に)自明でない共通零点をもつことと、$g_1(\gamma)=\cdots=g_t(\gamma)=0$ であることは同値である。

普遍な係数環に主定理を当てる

$A_0=\mathbb{Z}[c_{i,\nu}]$ は Noether 環なので(Hilbertの基底定理)、thm-elim-main の 2 により $Z(f_1,\dots,f_r)=V(J_D)$ となる $D$ がある。$g_1,\dots,g_t$ を $M_D$ の $N_D$ 次小行列式の全体とする。値 $\gamma$ の代入は環準同型 $\psi\colon A_0\to k$ であり、$\mathfrak{p}=\ker\psi$ は素イデアルで、$\psi$ は体の埋め込み $\kappa(\mathfrak{p})\to k$ を引き起こす。$k$ 上の $f_i$ は $\kappa(\mathfrak{p})$ 上の $f_i$ の係数をこの埋め込みで写したものだから、lem-elim-projective-nullstellensatz の最後の主張により、$k$ 上で自明でない共通零点をもつことは $\mathfrak{p}\in Z(f_1,\dots,f_r)=V(J_D)$ と同値である。これは全ての $g_j$ が $\mathfrak{p}$ に属すること、すなわち $g_j(\gamma)=\psi(g_j)=0$ と同値である。$\square$

射影空間の構造射は閉写像である

主定理を幾何学的に読む。$\pi\colon\mathbb{P}^n_A=\operatorname{Proj}S\to\operatorname{Spec}A$ を構造射とする。$\mathbb{P}^n_A$ の閉集合は、斉次イデアル $I\subset S$ による $V_+(I)=\{P\in\operatorname{Proj}S\mid P\supset I\}$ の形をしている(Proj(次数付き環の射影スキーム))。

射影空間の構造射の閉性
  1. 任意の可換環 $A$ と斉次イデアル $I\subset S$ について、像 $\pi(V_+(I))$ は $\operatorname{Spec}A$ の閉集合である。$I$ が $f_1,\dots,f_r$ で生成されるとき、$\pi(V_+(I))=Z(f_1,\dots,f_r)$ である。
  2. 任意のスキーム $Y$ について、$\mathbb{P}^n_Y=\mathbb{P}^n_{\mathbb{Z}}\times_{\operatorname{Spec}\mathbb{Z}}Y\to Y$ は閉写像である。したがって $\mathbb{P}^n_{\mathbb{Z}}\to\operatorname{Spec}\mathbb{Z}$ は普遍閉である。
ファイバーが空になる条件を全射性で読む

1:$\mathfrak{p}\in\operatorname{Spec}A$ を固定し、$K=\kappa(\mathfrak{p})$、$R=K[x_0,\dots,x_n]=S_{\mathfrak{p}}/\mathfrak{p}S_{\mathfrak{p}}$ とする。$A\setminus\mathfrak{p}$ による局所化と $\mathfrak{p}$ による剰余は次数 $0$ の元によるので、$S\to R$ は次数を保つ環準同型であり、素イデアルの対応(引き戻しと拡大)は斉次素イデアルどうしを対応させる(斉次イデアルの引き戻しは斉次で、斉次イデアルの拡大は斉次元で生成される)。また $R_+$ は $x_0,\dots,x_n$ の像で生成されるので、$S_+$ を含むことと対応する素イデアルが $R_+$ を含むことは同値である。したがって $\pi^{-1}(\mathfrak{p})\cap V_+(I)$ の点、すなわち $I+\mathfrak{p}S$ を含み $S_+$ を含まず $A$ との共通部分が $\mathfrak{p}$ である斉次素イデアルは、$\operatorname{Proj}(R/IR)$ の点と 1 対 1 に対応する。lem-elim-projective-nullstellensatz の 2 ⇔ 3 により、$\mathfrak{p}\notin\pi(V_+(I))$ はある $d$ で $(IR)_d=R_d$ となることと同値である。
このとき、$(IR)_d$ は $I_d$ の像で張られ $R_d$ は有限次元なので、$I_d$ の有限個の元 $h_1,\dots,h_s$ の像が $R_d$ を張る。$h_1,\dots,h_s$ の係数を並べた $N_d\times s$ 行列のある $N_d$ 次小行列式 $\delta$ は $\mathfrak{p}$ に属さない。$\mathfrak{q}\in D(\delta)$ なら同じ小行列式が $\kappa(\mathfrak{q})$ で $0$ でないので $(IR')_d=R'_d$($R'=\kappa(\mathfrak{q})[x_0,\dots,x_n]$)となり、上と同じ理由で $\mathfrak{q}\notin\pi(V_+(I))$ である。よって補集合は開集合で、$\pi(V_+(I))$ は閉集合である。$I$ が $f_1,\dots,f_r$ で生成されるとき、$IR$ は $R$ の中の $f_1,\dots,f_r$ で生成されるので、lem-elim-projective-nullstellensatz の 1 ⇔ 2 により $\pi(V_+(I))=Z(f_1,\dots,f_r)$ である。
2:$Y$ のアフィン開被覆 $\{V_\alpha=\operatorname{Spec}A_\alpha\}$ をとると、構造射 $\pi_Y$ による $V_\alpha$ の逆像は $\mathbb{P}^n_{A_\alpha}$ である。閉集合 $C\subset\mathbb{P}^n_Y$ について $\pi_Y(C)\cap V_\alpha=\pi_{A_\alpha}(C\cap\mathbb{P}^n_{A_\alpha})$ は 1 により $V_\alpha$ の閉集合であり、部分集合が閉であることは開被覆の各成分で確かめられるので、$\pi_Y(C)$ は閉集合である。$\mathbb{P}^n_{\mathbb{Z}}\to\operatorname{Spec}\mathbb{Z}$ の任意の底変換は $\mathbb{P}^n_Y\to Y$ の形なので、普遍閉である。$\square$

2 と、閉埋め込みが普遍閉であることを合わせると、固有射の定理「射影射の固有性」のうち普遍閉の部分が、付値判定法を使わずに得られる。分離性と有限型は別に確かめる必要がある。

例

2 つの 2 元形式と終結式

$n=1$、$r=2$、$m,l\ge1$ とし、
$$ f=\sum_{i=0}^ma_ix_0^{m-i}x_1^{i},\qquad g=\sum_{j=0}^lb_jx_0^{l-j}x_1^{j}\qquad(a_i,b_j\in A) $$
とする。$\tilde f(X)=f(X,1)$、$\tilde g(X)=g(X,1)$ を形式的な次数 $m,l$ の 1 変数多項式とみる。$d=m+l-1$ のとき $\varphi_d\colon S_{l-1}\oplus S_{m-1}\to S_{m+l-1}$ は階数 $m+l$ の自由加群の間の写像で、定義域の基底を $x_0^{l-1},x_0^{l-2}x_1,\dots$($f$ の側)、$x_0^{m-1},\dots$($g$ の側)、終域の基底を $x_0^{d},x_0^{d-1}x_1,\dots,x_1^{d}$ の順にとると、$M_d$ は 終結式 の定義「Sylvester 行列と終結式」の $\operatorname{Syl}_{m,l}(\tilde f,\tilde g)$ の転置になる。よって $J_{m+l-1}=(\operatorname{Res}_{m,l}(\tilde f,\tilde g))$ であり、
$$ Z(f,g)=V\bigl(\operatorname{Res}_{m,l}(\tilde f,\tilde g)\bigr) $$
が成り立つ。

2 元形式の一意分解

$\subset$ は thm-elim-main の 1 による。逆に $\mathfrak{p}\notin Z(f,g)$ とし、$K=\overline{\kappa(\mathfrak{p})}$ 上で考える。$f$ が $K$ 上で $0$ なら、$g$ は($0$ でも、$K$ 上で 1 次式の積に分解しても)$\mathbb{P}^1(K)$ に零点をもち、それが共通零点になるので矛盾する。同様に $g\ne0$ である。代数閉体上の $0$ でない 2 元形式は 1 次形式の積に分解し、1 次形式の零点は $\mathbb{P}^1(K)$ の 1 点なので、$f$ と $g$ は共通の 1 次因子をもたない。$(u,v)\in K[x_0,x_1]_{l-1}\oplus K[x_0,x_1]_{m-1}$ が $uf+vg=0$ を満たすとすると、一意分解性により $f$ は $vg$ を割り、$g$ と互いに素なので $v$ を割る。$\deg v< m$ だから $v=0$、したがって $uf=0$ から $u=0$ である。よって $K$ 上の $\varphi_{m+l-1}$ は単射であり、正方行列なので行列式は $0$ でない。行列式の値は $\kappa(\mathfrak{p})$ で計算しても同じなので $\operatorname{Res}_{m,l}(\tilde f,\tilde g)\notin\mathfrak{p}$ である。$\square$

$a_0$ と $b_0$ がともに $\mathfrak{p}$ に属すれば、$(1:0)$ が共通零点で、Sylvester 行列の第 1 列が $0$ になる。終結式の定理「共通因数と終結式」が最高次係数の一方が $0$ でないことを仮定するのは、この無限遠点の共通零点を除くためである。

次数 $d$ が小さいと足りない

$A=\mathbb{Z}$、$n=1$、$f_1=x_0^2$、$f_2=x_1^2$ とする。どの体の上でも共通零点は $0$ だけなので $Z(f_1,f_2)=\emptyset$ である。一方 $\varphi_2\colon S_0\oplus S_0\to S_2$ は列が 2 本で $N_2=3$ より少ないので $J_2=0$、$V(J_2)=\operatorname{Spec}\mathbb{Z}$ である。$\varphi_3\colon S_1\oplus S_1\to S_3$ の像は $x_0^3,x_0^2x_1,x_0x_1^2,x_1^3$ をすべて含むので全射で、$J_3=\mathbb{Z}$、$V(J_3)=\emptyset=Z(f_1,f_2)$ である。これは ex-elim-resultant の $m=l=2$、$d=3$ の場合でもある。

有理点では係数の多項式で判定できない

有限個とは限らない整数係数の多項式の族 $\{g_j\}\subset\mathbb{Z}[a,b,c]$ で、任意の体 $k$ と $(a,b,c)\in k^3$ について「$ax_0^2+bx_0x_1+cx_1^2$ が $k^2$ の中に自明でない零点をもつ」ことと「すべての $j$ で $g_j(a,b,c)=0$」が同値になるものは存在しない。

実数体と複素数体で同じ値を比べる

そのような族があったとする。$(a,b,c)=(1,0,1)$ とすると、$x_0^2+x_1^2$ は $\mathbb{R}^2$ に自明でない零点をもたないので、ある $j$ で $g_j(1,0,1)\ne0$ である。$g_j(1,0,1)$ は整数であり、$\mathbb{R}$ で計算しても $\mathbb{C}$ で計算しても同じ値である。ところが $\mathbb{C}^2$ では $(1,i)$ が自明でない零点なので、すべての $j$ で $g_j(1,0,1)=0$ でなければならない。矛盾である。$\square$

反例:条件を外すと崩れること

反例の表
外す条件反例成り立たなくなること
射影空間で考える(斉次多項式)$A=k[t]$ 上のアフィン直線と $tx-1$共通零点をもつパラメータの集合が閉集合
零点を代数閉包で読む$k=\mathbb{R}$ と $\mathbb{C}$ の $x_0^2+x_1^2$(prop-elim-rational)係数の多項式による判定(cor-elim-universal)
次数 $d$ を十分大きくとる$x_0^2,x_1^2$ と $d=2$(ex-elim-small-degree)$Z(f_1,\dots,f_r)=V(J_d)$

1 行目:$k$ を体、$A=k[t]$ とし、斉次でない 1 変数多項式 $tx-1\in A[x]$ を考える。$\mathfrak{p}\in\operatorname{Spec}A$ で $tx-1$ が $\overline{\kappa(\mathfrak{p})}$ に零点をもつのは $t\notin\mathfrak{p}$ のときに限るので、零点をもつパラメータの集合は $D(t)$ であり、$\operatorname{Spec}A$ の閉集合でない(Chevalleyの定理の記事の例「双曲線の射影」)。$tx-1$ を斉次化した $tx_1-x_0$ は、どの $\mathfrak{p}$ でも自明でない零点 $(t,1)$ をもち、$t\in\mathfrak{p}$ のときの零点 $(0:1)$ は無限遠点である。射影空間に無限遠点を補うことで、像が閉じる。

補足

文献と一般化

cor-elim-universal の形は Har77 I 定理 5.7A(p. 35)に、証明なしで述べられている。体 $k$ の元を係数に代入したとき、自明でない共通零点は $\overline{k}$ の中で読む(prop-elim-rational)。cor-elim-closed の 2 は、射影射が固有であること(Har77 II 定理 4.9、p. 103)の普遍閉の部分にあたる。$n$ 個の $n$ 変数の斉次多項式の場合には、条件を 1 つの多項式(多変数の終結式)で書けることが知られている(終結式の記事の注意「一般化」)。この記事では証明しない。

関連項目

参考文献

[1]
Robin Hartshorne, Algebraic Geometry, Graduate Texts in Mathematics 52, Springer, 1977, I 定理 5.7A(消去理論、p. 35)、II 定理 4.9(射影射の固有性、p. 103)

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