最近の用語解説

Tate代数

Tate代数(Tate algebra)とは、非Archimedes的絶対値について完備な体 $K$ 上の冪級数 $\sum a_\alpha t^\alpha$ のうち係数が $0$ に収束するもの全体の環 $K\{t_1,\dots,t_n\}$ で、閉単位多重円板上で収束する冪級数の環である。Gauss ノルム $\|f\|=\max|a_\alpha|$ は乗法的で、$K\{t\}$ は完備な Banach 代数かつ整域になる。Weierstrass の割り算定理により Noether 環・一意分解整域・Jacobson 環で、極大イデアルは閉単位多重円板の $\bar K$ 点の共役類に対応する。その商が affinoid 代数で、rigid 解析空間の局所座標環をなす。$\mathbb{Z}_p\{t\}$ は $\mathbb{Z}_p[t]$ の $p$ 進完備化である。
14時間前

代数的同値

代数的同値(algebraic equivalence)とは、代数多様体 $X$ 上の代数的サイクルの間の同値関係で、非特異連結曲線 $T$ をパラメータとする $X\times T$ の部分多様体の 2 つのファイバーの差 $[\mathcal{V}(t_0)]-[\mathcal{V}(t_1)]$ が生成する部分群を法として一致することをいう。パラメータを $\mathbb{P}^1$ に限った有理同値より粗く、ホモロジー同値・数値的同値より細かい。余次元 $1$ では有理同値との差が $\operatorname{Pic}^0(X)$、商が有限生成の Néron–Severi 群になる。曲線上の因子の類は次数で決まり、楕円曲線の $[P]-[Q]$ は代数的同値で $0$ だが有理同値では $0$ でなく、2 次曲面の異なる規則の直線は交叉数の違いから代数的同値でない。
14時間前

有理同値

有理同値(rational equivalence)とは、代数多様体 $X$ 上の $k$ 次元の代数的サイクルの同値関係で、$(k+1)$ 次元の部分多様体上の有理関数の因子 $\operatorname{div}(r)$ の有限和を $0$ とみなす。$X\times\mathbb{P}^1$ の部分多様体の $0$ と $\infty$ 上のファイバーの差を $0$ とみなす関係でもあり、線型同値の一般化で、商群 $A_k(X)$ が Chow 群である。$\mathbb{P}^n$ のサイクルの類は次数で決まる($A_k(\mathbb{P}^n)\cong\mathbb{Z}$)が、楕円曲線 $E$ では $[P]-[Q]$($P\ne Q$)は有理同値で $0$ でなく $A_0(E)\cong\mathbb{Z}\oplus E(k)$ である。代数的同値より細かい。
14時間前

Weierstrassの楕円関数

Weierstrassの楕円関数(Weierstrass elliptic function)とは、複素平面の格子 $\Lambda$ に対し $\wp(z)=z^{-2}+\sum_{\omega\ne0}((z-\omega)^{-2}-\omega^{-2})$ で定義される、$\Lambda$ の点だけを 2 位の極にもつ $\Lambda$ 周期的な有理型関数である。$g_2=60\sum\omega^{-4}$、$g_3=140\sum\omega^{-6}$ に対し $\wp'^2=4\wp^3-g_2\wp-g_3$ を満たし、$z\mapsto(\wp(z),\wp'(z))$ は複素トーラス $\mathbb{C}/\Lambda$ から楕円曲線 $y^2=4x^3-g_2x-g_3$ への群の同型を与える。楕円関数は $\wp$ と $\wp'$ の有理式で書ける。
14時間前

射影閉包

射影閉包(projective closure)とは、アフィン空間 $\mathbb{A}^n$ を射影空間 $\mathbb{P}^n$ の開集合 $x_0\neq0$ とみなしたとき、アフィン代数的集合 $V\subset\mathbb{A}^n$ の $\mathbb{P}^n$ における Zariski 閉包 $\overline{V}$ のことである。$V$ に「無限遠点」を付け加えたもので、$\overline{V}\cap\mathbb{A}^n=V$ を満たし、その斉次イデアルは $I(V)$ の元をすべて斉次化した $I(V)^h$ である。生成元だけの斉次化では無限遠に余分な成分が現れうる(twisted cubic $y=x^2,z=x^3$ が典型)が、超曲面や次数つき Gröbner 基底なら生成元の斉次化で足りる。
15時間前

アフィンスキーム

アフィンスキーム(affine scheme)とは、可換環 $A$ の素イデアル全体の集合 $\operatorname{Spec}A$ に、$V(I)$ を閉集合とする Zariski 位相と、基本開集合 $D(f)$ 上の切断が局所化 $A_f$、点 $\mathfrak{p}$ での茎が局所環 $A_{\mathfrak{p}}$ になる構造層を載せた局所環付き空間である。環準同型 $A\to B$ は射 $\operatorname{Spec}B\to\operatorname{Spec}A$ を定め、$\operatorname{Spec}$ は可換環の圏とアフィンスキームの圏の反同値を与える。スキームはこれを貼り合わせたものである。$\operatorname{Spec}\mathbb{Z}$ が典型例で、Zariski 位相は準コンパクトだが Hausdorff でない。
15時間前

スキーム

スキーム(scheme)とは、局所環付き空間 $(X,\mathcal{O}_X)$ で、各点が可換環 $A$ のアフィンスキーム $\operatorname{Spec}A$ に同型な開近傍をもつものをいい、射は局所環付き空間の射である。$\operatorname{Spec}\mathbb{Z}$ や $\operatorname{Spec}k[\varepsilon]/(\varepsilon^2)$ と射影空間 $\mathbb{P}^n_A$ を同じ枠組みで扱える。$\operatorname{Hom}(X,\operatorname{Spec}A)=\operatorname{Hom}(A,\Gamma(X,\mathcal{O}_X))$ が基本性質で、体からの射 $\operatorname{Spec}K\to X$ は点と剰余体の埋め込みの組に対応する。
15時間前

入射対象

入射対象(injective object)とは、アーベル圏の対象 $I$ であって、任意のモノ射 $A\hookrightarrow B$ に沿って任意の射 $A\to I$ が $B\to I$ に延長できるもの、同じことだが $\operatorname{Hom}(-,I)$ が完全関手になるものをいい、射影対象の双対概念である。環 $R$ 上の加群では、$R$ の左イデアルからの準同型がすべて $R$ に延びれば入射的である(Baer の判定法)。単項イデアル整域上では入射加群と可除加群が一致し($\mathbb{Q}$、$\mathbb{Q}/\mathbb{Z}$ は入射的、$\mathbb{Z}$ は入射的でない)、加群の圏や層の圏は十分な入射対象をもつ。入射分解は右導来関手(Ext 関手・層コホモロジー)の出発点であり、加群には入射包という最小の入射的拡大がある。
15時間前

flasque層

flasque層(flasque sheaf, flabby sheaf)とは、位相空間 $X$ 上の層 $\mathcal{F}$ で、任意の開集合の組 $V\subset U$ に対する制限写像 $\mathcal{F}(U)\to\mathcal{F}(V)$ がすべて全射である、すなわち切断がつねに大きな開集合へ延長できる層のことである。入射層は flasque であり、flasque 層を含む短完全列では大域切断関手が完全になるので、flasque 層は非輪状($H^q(X,\mathcal{F})=0$、$R^qf_*\mathcal{F}=0$、$q\ge1$)であり、層コホモロジーは flasque 分解(Godement 分解など)で計算できる。既約空間上の定数層は flasque で、$\mathbb{R}$ 上の定数層やアフィン直線の構造層は flasque でない。
15時間前

第1Chern類

第1Chern類(first Chern class)とは、複素多様体 $X$ 上の正則直線束 $L$ に対し、指数完全列 $0\to\mathbb{Z}\to\mathcal{O}_X\to\mathcal{O}_X^*\to0$ の連結準同型 $\operatorname{Pic}(X)\to H^2(X;\mathbb{Z})$ で定まる類 $c_1(L)$ である。$\mathbb{CP}^\infty$ の超平面類の引き戻し、曲率形式の de Rham 類とも一致し、テンソル積を和に移す。コンパクト Riemann 面では $c_1(L)$ の積分が $L$ の次数、コンパクト Kähler 多様体では像が整係数 $(1,1)$ 類の全体(Lefschetz の $(1,1)$ 定理)になる。代数的には因子の類、結晶的には分割冪の対数で定義される。
15時間前

最近の参考書

結晶コホモロジーの構想(Grothendieck「Crystals and the de Rham cohomology of schemes」を読む)の表紙
結晶コホモロジーの構想(Grothendieck「Crystals and the de Rham cohomology of schemes」を読む)
本書は、A. Grothendieck が 1966 年に IHÉS で行った 5 回の講演の記録「Crystals and the De Rham cohomology of schemes」(J. Coates と O. Jussila による記録。『Dix exposés sur la cohomologie des schémas』、North-Holland・Masson、1968 年、306–358 頁)を道案内にして、標数 p の代数多様体に対する p 進コホモロジーの構想、後の結晶コホモロジーの出発点を解説する参考書である。講義は代数的 de Rham コホモロジーの限界の検討から始め、ℓ 進コホモロジーでは見えない p 捩れを捉える理論への要請を列挙し、Monsky–Washnitzer の持上げの方法、接続と stratification、無限小トポスと標数 0 の基本定理を経て、divided power を備えた結晶トポスの定義を提案する。 本書は翻訳ではない。de Rham コホモロジーの批判と p 進理論の要請、Monsky–Washnitzer の方法、接続と Gauss–Manin 接続、無限小トポスと stratifying トポス、基本定理と Čech 計算、結晶トポスの構想、という主題ごとに六つの章を立て、現代の記号と言葉で書き直した。各頁は、その頁で示すこと、定義と準備、主結果と証明、例と反例、その後の発展、原論文との対応表の同じ形で書く。 講義録は着想と見込みを多く含む。本書は、講義が一行で済ませた段(形式的持上げの一意性、Cartan のホモトピー公式、標数 p の楕円曲線族での標準的な stratification の非存在、形式 Poincaré 補題と基本定理の証明など)を補って閉じ、第 1〜6 章の 89 個の主結果を、本書の中で証明し切れたもの(完結、13 件)、引用した定理に依るもの(条件付き、66 件)、証明を閉じられなかったもの(未完結、10 件)、そのままでは成り立たないもの(偽、0 件)に分けて札で示す。印字の誤り(対数の符号など)は訂正した形で述べ、根拠を注意に書く。講義が「期待する」と述べた見込み(結晶トポスの二つの性質、二つの予想、Monsky–Washnitzer コホモロジーの有限性など)は原論文の状態として記録し、Berthelot の結晶コホモロジー(1974 年)など後代の理論での定着を時点を明記して分けて書く。 読むには、スキーム論と連接層のコホモロジー、代数的 de Rham コホモロジーと比較定理、エタールコホモロジーの初歩が要る。第 2 章からは Witt ベクトルと形式スキーム、第 4 章からは景とトポスと微分作用素の初歩が加わる。すべてを先に学ぶ必要はなく、要点は第 0 章に、頁ごとに要る前提の対応表と読む順序の案は「本書の読み方」に、記号と約束、原論文の引き方は「記号と約束」にまとめた。各章で何を扱い、原論文の何を補い、どこを直したかは、目次の各章の説明に書いた。
19時間前
Chern 類の公理的理論(Grothendieck「La théorie des classes de Chern」を読む)の表紙
Chern 類の公理的理論(Grothendieck「La théorie des classes de Chern」を読む)
本書は、A. Grothendieck の論文「La théorie des classes de Chern」(Bulletin de la Société Mathématique de France 第 86 巻、1958 年、137–154 頁)を道案内にして、代数的ベクトル束の Chern 類の公理的理論を解説する参考書である。原論文は Borel と Serre による Riemann–Roch の定理の解説論文の付録として書かれた 18 頁の短い論文で、非特異な代数多様体の上のベクトル束の Chern 類を、Grassmann 多様体を使わずに、射影束のサイクル類環の構造だけから定義し、関手性・正規化・加法性の三つの性質で一意に特徴づけた。Chow 環でも Hodge 型のコホモロジーでも整係数コホモロジーでも同じ議論が通るこの定式化は、その後の交叉理論と Riemann–Roch の定理の標準的な道具になった。 本書は原論文の翻訳ではない。原論文の節の順序ではなく、射影束と旗多様体による分裂、公理系とそのモデル、Chern 類の定義と特徴づけ、λ 環と Chow 環への応用、正則切断の零点サイクル、という主題ごとに五つの章を立て、現代の記号と言葉で書き直した。各頁は、その頁で示すこと、背景と動機、定義と準備、主結果と証明、例と反例、その後の発展、原論文との対応という同じ形で書いてある。 原論文は「いつものように旗多様体へ移って」「形式的に確かめられる」「ここでは証明しない」で多くの段を済ませている。本書はその段を補って証明を閉じ、各主張が、本書の中で証明し切れたもの(完結)、引用した定理に依るもの(条件付き)、証明を閉じられなかったもの(未完結)、そのままでは成り立たないもの(偽)のどれに当たるかを区別して示す。λ 環の構造を与える普遍多項式の存在、横断性の局所計算、Chow 環と $K$ 群の随伴次数付き環の比較の式は本書で補い、原論文が証明を与えない式は、後代の Chern 指標による説明と分けて扱う。 読むには、スキーム論と局所自由層、Chow 環と交叉理論の初歩、層コホモロジーの基本が要る。第 2 章の後半では Hodge 型のコホモロジーと Leray スペクトル系列が、第 4 章では Grothendieck 群と対称関数が加わる。すべてを先に学ぶ必要はない。分野ごとの要点、頁ごとに要る前提の対応表、読む順序の案は第 0 章の「本書の読み方」に、全頁に共通する記号と約束は「記号と約束」にまとめた。各章で何を扱い、原論文の何を補い、どこを直したかは、下の目次の各章の説明に書いた。
3日前
代数的 de Rham コホモロジー(Grothendieck の de Rham コホモロジー論文を読む)の表紙
代数的 de Rham コホモロジー(Grothendieck の de Rham コホモロジー論文を読む)
本書は、A. Grothendieck の論文「On the de Rham cohomology of algebraic varieties」(Publications Mathématiques de l'IHÉS 第 29 巻、1966 年、95–103 頁)を道案内にして、代数的 de Rham コホモロジーの理論を解説する参考書である。原論文は M. F. Atiyah に宛てた 1963 年 10 月の書簡の抜粋に、同年 11 月と 1965 年 7 月の注を付けた 9 頁の短い論文で、複素数体上の非特異な代数多様体の複素係数コホモロジーが、代数的な微分形式の複体だけで計算できるという比較定理を示した。この定理は、Atiyah と Hodge の第二種積分の理論を純代数的なものに置き換え、Hodge–de Rham スペクトル系列、周期、Gauss–Manin 接続、標数 p の結晶コホモロジーへ続く道を開いた。 本書は原論文の翻訳ではない。書簡の順序ではなく、代数的 de Rham コホモロジーの定義、比較定理とその証明、第二種積分と周期、Hodge–de Rham スペクトル系列、相対 de Rham コホモロジーと標数 p、という主題ごとに五つの章を立て、現代の記号と言葉で書き直した。各頁は、その頁で示すこと、背景と動機、定義と準備、主結果と証明、例と反例、その後の発展、原論文との対応という同じ形で書いてある。 原論文は書簡なので、多くの段が「標準的な議論で」「容易に確かめられる」で済まされている。本書はその段を補って証明を閉じ、各主張が、本書の中で証明し切れたもの(完結)、引用した定理に依るもの(条件付き)、証明を閉じられなかったもの(未完結)、そのままでは成り立たないもの(偽)のどれに当たるかを区別して示す。原論文の後半にある期待や推測は、著者自身が注で撤回したもの(標数 p での Betti 数との一致は Serre の反例で破れる)と、後に定理になったもの(Gauss–Manin 接続、標数 p での退化)を分けて扱い、後代の結果は引用であることを明示する。 読むには、可換環論とホモロジー代数、スキーム論と連接層のコホモロジー、複素解析空間と GAGA の初歩が要る。第 3 章からは Hodge 理論と楕円曲線の周期、第 4 章と第 5 章ではアーベル多様体とエタールコホモロジーの初歩が加わる。すべてを先に学ぶ必要はない。分野ごとの要点、頁ごとに要る前提の対応表、読む順序の案は第 0 章の「本書の読み方」に、全頁に共通する記号と約束は「記号と約束」にまとめた。各章で何を扱い、原論文の何を補い、どこを直したかは、下の目次の各章の説明に書いた。
3日前
Brauer群の理論(GrothendieckのBrauer群 I–III を読む)の表紙
Brauer群の理論(GrothendieckのBrauer群 I–III を読む)
本書は、A. Grothendieck の連続講演「Le groupe de Brauer」I(Azumaya 代数)・II(コホモロジー論)・III(補足と計算)を道案内にして、スキームの Brauer 群の理論を解説する参考書である。I と II は Séminaire Bourbaki の 1964/65 年と 1965/66 年の講演で、III を加えた 3 篇が論文集『Dix exposés sur la cohomologie des schémas』(North-Holland・Masson、1968 年)に収められている。原論文は、体の中心単純環の同値類として古典的に定義されていた Brauer 群を、スキームの上の理論に作り直し、エタールコホモロジーの言葉で計算できるようにして、双対性と双有理不変量へつないだ。 本書は原論文の翻訳ではない。原論文の節の順序ではなく、Azumaya 代数、コホモロジー的 Brauer 群、低次元の計算、fppf 位相、純性と双有理不変性、双対性、高次の双有理不変量と予想、という主題ごとに七つの章を立て、現代の記号と言葉で書き直した。各頁は、その頁で示すこと、背景と動機、定義と準備、主結果と証明、例と反例、その後の発展、原論文との対応という同じ形で書いてある。 原論文は、当時の読者が EGA と SGA 4 を手元に置いていることを前提に、多くの段を「よく知られている」「直ちに分かる」で済ませている。本書はその段を補って証明を閉じ、各主張が、本書の中で証明し切れたもの(完結)、引用した定理や仮定に依るもの(条件付き)、証明を閉じられなかったもの(未完結)、印字のままでは成り立たないもの(偽)のどれに当たるかを区別して示す。エタールコホモロジーの基本定理、曲面の交叉理論、Weil 予想の Deligne による証明など、外部から引く結果は引用であることを明示し、各頁の末尾に原論文の番号と頁との対応表を置く。 読むには、可換環論、ホモロジー代数、スキーム論、層とエタールコホモロジー、Galois コホモロジーと類体論の初歩が要る。第 2 章の後半からは代数曲面と ℓ 進の道具が、第 7 章の最後では Hodge 理論の初歩が加わる。すべてを先に学ぶ必要はない。分野ごとの要点、頁ごとに要る前提の対応表、読む順序の案、全頁に共通する記号と約束は、第 0 章の頁「本書の読み方」と「記号と約束」にまとめた。各章で何を扱い、原論文の何を補い、どこを直したかは、下の目次の各章の説明に書いた。
6日前
ネットとフィルターによる位相空間論の表紙
ネットとフィルターによる位相空間論
旧Mathpediaの二つの完成稿を、原稿ごとの境界と番号体系を保って二部構成にした参考書である。第I部はネット、第II部はフィルターを用いて、閉包・連続性・Hausdorff性・コンパクト性・直積位相・Tychonoffの定理を並行して扱う。さらに、二つの定式化を往復するための編集補節を加えた。 【第I部・ネット】 本稿においては、ネットの収束を用いた位相空間論の基本的議論を説明する。ネットは単純に述べれば点列を一般化した概念である。位相空間論においてネットを用いるメリットは、位相的性質をネットの収束により直観的に扱うことが出来る点であり、複雑な関数空間の位相を取り扱う関数解析の議論においては頻繁に用いられる。点列は、距離空間に代表される第一可算空間における収束の問題を扱うのに十分有効であるが、関数解析学における弱位相、弱 $*$-位相のような第一可算性のない位相における収束の問題を扱う際、必ずしも十分ではない。しかし点列の収束をネットの収束に一般化することで、位相空間の可算性に関わらず点列による収束の議論と全く同様の議論が有効になる。また、ネットの概念を用いればある種の命題の証明がほとんど自明化されることもある。ネットはフィルターと同値な概念であり、同様にフィルターによる位相空間論も展開されるが、こちらは集合論の議論において用いられることが多い。本稿においてはネットによる閉性、連続性、Hausdorff 性、コンパクト性などの基本的な位相的性質の特徴付けを行う。また点列との対比のため可算性のある位相空間において、それらの点列による特徴付けを、実際に位相空間の可算性を用いて行う。そして最後にネットにより比較的容易な証明が可能であるTychonoff の定理を示す。 【第II部・フィルター】 本稿においては、フィルターの収束を用いた位相空間論の基本的議論を説明する。位相空間におけるフィルターは単純に述べれば点列を抽象化した概念である。位相空間論においてフィルターを用いるメリットは、位相的性質を収束を中心に扱うことと、超フィルターという強力な概念を駆使することで、収束に関わる性質(特に Hausdorff性 やコンパクト性)を上手く扱えることである。抽象的な位相空間を取り扱う一般位相の議論においては頻繁に用いられる。フィルターはネットと同値な概念であり、同様にネットによる位相空間論も展開されるが、こちらは関数解析の議論において用いられることが多い。本稿においてはフィルターによるコンパクト性やHausdorff 性などの基本的な位相的性質の特徴づけを行い、フィルターにより比較的容易な証明が可能であるTychonoff の定理を示すことを目標とする。
19日前
位相空間論の表紙
位相空間論
このテキストでは、現代数学のどの方面に進むにあたっても必要となる位相空間論の基本事項を、証明をつけた形で解説する。読者には、集合と写像の言葉への慣れを期待する。たとえば、和集合・共通部分などの集合の操作や、全射・単射・像・逆像などの概念には親しんでいるものとする。さらに、具体例を理解するためには、連続性の $\varepsilon$-$\delta$ 論法を用いた定義や、数列の収束の定義、実数の基本性質などを理解していることが望ましい。 現代数学では、点の集まりとしての集合に構造を付加することにより、多彩な概念を構成していく。例えば、代数学においては、集合に加法や乗法などの演算という構造を付加して群、環、体などといった概念を考える。位相空間は、集合にある種の構造を付加することで、写像の連続性や点列の収束など、ある種の「近さ」にまつわる議論を可能にしたものである。つまり、端的に言えば、位相空間とは「近さ」が定義される場所である。 座標平面 $\mathbb{R}^2$ の中には、我々が慣れ親しんだ数多くの図形、たとえば、線分、円、三角形、四角形がある。こうした図形には、自然に「近さ」の概念があると考えられるが、実際にこれらの図形は $\mathbb{R}^2$ からの相対位相という自然な方法で、位相空間とみなすことができる。しかし、図形を位相空間とみなすことは、同時に「近さ」以外の要素を捨象することでもある。その結果として、通常では同じとは思えない図形が、位相空間として同一(正式な用語では「同相」)となることがある。実際、いま述べた円、三角形、四角形はすべて互いに同相である。しかし、線分はこれらと同相ではない。このように、位相空間の立場では図形がかなり「粗く」分類されることになるが、この立場での図形の分類を目指す学問が位相幾何学である。 上に述べたことからも、位相空間論は幾何学の基礎として重要なことは推察されると思うが、位相空間論の重要性は幾何学に留まるものではない。数学の様々な分野で、直観的には図形とは思えない集合に位相空間の構造を与えることで、ある種の図形的考察が可能となる。一つ例を挙げれば、関数解析学においては、関数のなす集合に位相空間としての構造を与えることで「関数空間」をつくり、関数を点とする一種の図形として取り扱うことで解析学の問題解決に豊富な道具を提供している。
19日前
微分方程式の初歩の表紙
微分方程式の初歩
常微分方程式の初期値問題から、Sobolev空間版Gaussの発散定理、楕円型正則性、調和関数、Laplace–Poisson方程式、波動方程式へ進む。
19日前
Hilbert空間上の作用素論の表紙
Hilbert空間上の作用素論
有界・非有界作用素、射影値測度、スペクトル定理、極分解、直和・テンソル積、コンパクト作用素、摂動論、作用素イデアル、von Neumann環、解析ベクトルを体系的に扱う。
19日前
複素解析の基礎の表紙
複素解析の基礎
複素微分と正則関数、冪級数、複素線積分、Cauchy理論、Laurent展開と留数、複素Banach空間値正則関数までを扱う。
19日前
Euclid空間における微積分とベクトル解析の表紙
Euclid空間における微積分とベクトル解析
Euclid空間の多変数微分法から、Euclid空間内の多様体、微分形式、計量、Riemann測度、向き、Stokesの定理までを体系的に扱う。
19日前

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