Dedekind整域(Dedekind domain)とは、$0$ でない任意のイデアルが有限個の素イデアルの積として順序を除き一意に書ける整域のことである。$0$ でない分数イデアルがすべて可逆であること、Noether 環かつ整閉整域かつ Krull 次元 $1$ 以下であること、Noether 環で $0$ でない素イデアルでの局所化がすべて離散付値環であることと同値である。整数の素因数分解の一意性を元からイデアルへ移したもので、単項イデアル整域、代数体の整数環、滑らかなアフィン曲線の座標環が例であり、$\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ では $(6)=P_2^2P_3P_3'$ が $6$ の 2 通りの分解を説明する。イデアル類群が単項イデアル整域からのずれを測り、これが自明なことと一意分解整域であることは同値である。
1時間前
可微分多様体(differentiable manifold)とは、位相多様体(Hausdorff かつ第 2 可算な局所 Euclid 空間)に、座標変換がすべて $C^r$ 級($1\le r\le\infty$ または実解析的)であるアトラスの極大なもの(微分構造)を指定したものである。微分可能多様体・微分多様体ともいい、$r=\infty$ のとき滑らかな多様体という。座標変換が微分可能なので、写像の微分可能性・接ベクトル・ベクトル場・微分形式・Riemann 計量が座標によらずに定まり、微分幾何学と微分トポロジーの基本的対象になる。Euclid 空間・球面・射影空間・トーラスが基本例で、開部分集合と直積で閉じ、滑らかな 1 の分割をもち、Whitney の定理により Euclid 空間に埋め込める。同じ位相多様体上の微分構造は微分同相とは限らず、エキゾチック球面がその例である。
1時間前
Koebeの1/4定理(Koebe one-quarter theorem)とは、単位開円板上の単葉関数(単射な正則関数)$f$ で $f(0)=0$、$f'(0)=1$ と正規化されたものの像が、必ず原点中心・半径 $1/4$ の開円板を含むという定理である。定数 $1/4$ は最良で、Koebe 関数 $z/(1-z)^2$ は円板を $\mathbb{C}\setminus(-\infty,-1/4]$ に写し $-1/4$ を像に含まない。証明は、$|z|>1$ 上の単葉関数の像の補集合の面積が非負であることから得られる面積定理と、そこから導かれる Bieberbach の不等式 $|a_2|\leq2$ を、像から抜けた点 $w$ による Möbius 変換との合成に適用して行う。単葉関数論の出発点であり、Poincaré 密度の評価にも使われる。
1時間前
Sylowの定理(Sylow's theorems)とは、位数 $p^{s}m$($p$ は素数、$m$ は $p$ で割り切れない)の有限群 $G$ の位数 $p^{s}$ の部分群、すなわち Sylow $p$ 部分群についての定理であり、Sylow $p$ 部分群が存在すること、任意の $p$ 部分群がある Sylow $p$ 部分群に含まれること、Sylow $p$ 部分群が互いに共役であること、その個数 $n_{p}$ が $n_{p}\equiv1\pmod p$ を満たし $m$ を割ることを主張する。Lagrange の定理の逆は一般に成り立たないが、素数の冪の約数については部分群の存在が保証される。$n_{p}=1$ は Sylow $p$ 部分群が正規部分群であることと同値であり、小位数の群の分類の基本的な道具になる。Cauchy の定理はその系である。
1時間前
不等式(inequality)とは、全順序をもつ集合(典型的には実数)の元 $a,b$ の間の大小関係を $a<b$、$a\le b$、$a>b$、$a\ge b$ の形で主張する式のことであり、狭義($<,>$)と非狭義($\le,\ge$)を区別し、非狭義の不等式は等号成立条件まで込めて主張が完結する。実数の不等式の性質(推移律、加法・乗法との両立、負の数を掛けたときの向きの反転)は正の実数全体に関する 2 つの公理から導かれる。相加相乗平均の不等式 $\sqrt[n]{a_1\cdots a_n}\le(a_1+\cdots+a_n)/n$、Cauchy–Schwarz の不等式 $(\sum a_ib_i)^2\le\sum a_i^2\sum b_i^2$、三角不等式、Chebyshev・Schur・Hölder・Minkowski の不等式が代表的である。
1時間前
付値環(valuation ring)とは、商体 $K$ をもつ整域 $R$ であって、$K$ の $0$ でない任意の元 $x$ について $x\in R$ または $x^{-1}\in R$ が成り立つもののことである。イデアル全体が包含関係で全順序をなすこと、任意の 2 元の一方が他方を割り切ることと同値であり、付値 $v\colon K\to\Gamma\cup\{\infty\}$ の付値環 $\{v\ge0\}$ としてちょうど得られる。付値環は局所環かつ整閉整域で、有限生成イデアルは単項である。$\mathbb{Z}_{(p)}$ や $k[\![t]\!]$ のように値群が $\mathbb{Z}$ のものが離散付値環であり、(体でない)Noether 環である付値環、局所環である単項イデアル整域と一致する。整閉包の記述、局所体、スキームの付値判定法に使われる。
1時間前
Liouvilleの定理(複素解析)(Liouville's theorem)とは、複素平面全体で正則な関数(整関数)が有界ならば定数であるという定理である。Cauchy の積分公式から導かれる評価式 $|f'(a)|\leq M/R$ で $R\to\infty$ とすれば導関数が消えることから従い、$\sin x$ のような有界で滑らかな実関数が非定数でありうることと対照的に、複素微分可能性の強さを示す。同じ議論で $|f(z)|\leq A+B|z|^k$ を満たす整関数は次数 $k$ 以下の多項式であることが分かり、$1/p$ が有界な整関数になることから代数学の基本定理が短く証明される。有界な整関数を Riemann 球面からの正則写像に拡張し、コンパクトな Riemann 面からの正則写像の全射性と $\mathbb{C}$ の非コンパクト性を対比させる別証明もある。
1時間前
多様体(manifold)とは、各点が Euclid 空間 $\mathbb{R}^n$ の開集合と同相な開近傍をもつ Hausdorff かつ第 2 可算な位相空間(位相多様体)と、その座標変換に微分可能性・正則性・区分線形性などの条件を課して得られる可微分多様体・複素多様体・PL 多様体の総称である。円周・球面・トーラス・射影空間のように大域的には曲がった図形を、局所座標を貼り合わせて扱うための共通の枠組みを与え、幾何学のほぼ全域の基礎的対象である。位相多様体は局所コンパクト・局所弧状連結・距離化可能・パラコンパクトであり、次元は位相だけから定まる。二つの原点をもつ直線(Hausdorff でない)と長い直線(第 2 可算でない)は、局所的には Euclid 空間と同じでも多様体でない反例である。
1時間前
Newton法(Newton's method)とは、方程式 $f(x)=0$ の解(零点)を近似的に求める反復計算法であり、初期値 $x_0$ から漸化式 $x_{n+1}=x_n-f(x_n)/f'(x_n)$(多変数では $x_{n+1}=x_n-Df(x_n)^{-1}f(x_n)$)によって数列を定める。関数を接線(1 次の Taylor 近似)で置き換えて線形方程式を解く方法であり、$f$ が $C^2$ 級で零点 $x^*$ において $f'(x^*)\neq0$ ならば、$x^*$ に十分近い初期値から出発した数列は $|x_{n+1}-x^*|\le C|x_n-x^*|^2$ を満たして収束する(2 次収束、反復ごとに有効桁数がほぼ倍増する)。初期値が遠いと周期点に陥ったり発散したりし、重根では線形収束にとどまる。Newton–Raphson 法とも呼ばれる。
1時間前
単項イデアル整域(principal ideal domain, PID)とは、すべてのイデアルが 1 つの元で生成される整域のことである。$\mathbb{Z}$、体上の 1 変数多項式環 $K[X]$、Gauss 整数環、離散付値環が代表例で、Euclid 整域はつねに単項イデアル整域であるが逆は成り立たない。単項イデアル整域は Noether 環で、$0$ でない素イデアルはすべて極大(体でなければ Krull 次元 $1$)、既約元は素元、したがって一意分解整域である。整域が単項イデアル整域であることは Dedekind–Hasse ノルムをもつ概 Euclid 整域であることと同値で、$\mathbb{Z}[X]$、$K[X,Y]$、$\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ は単項イデアル整域でない。その上の有限生成加群は巡回加群の直和に分解する。
1時間前