最近の用語解説

ベクトル

ベクトル(vector)とは、体 $K$ 上のベクトル空間の元のことであり、和とスカラー倍の計算ができることがその本質である。高校数学で扱う平面・空間の矢印のベクトルは、平行移動で重なる有向線分を同一視した同値類として定義でき、矢印をつなぐ和と伸縮による実数倍は代表のとり方によらずに定まり、その全体は $\mathbb{R}^2$・$\mathbb{R}^3$ と同型な実ベクトル空間になる。基底を1組選ぶとベクトルは座標(成分)の列とただ1通りに対応し、基底を行列 $P$ で取り替えると座標は $P^{-1}$ で変換される。数ベクトル・関数・多項式・複素数なども、ベクトル空間の元としてベクトルと呼ばれる。
3時間前

2次関数

2次関数(quadratic function)とは、零でない実対称行列 $A$、ベクトル $b$、実数 $c$ によって $f(x)=x^{\top}Ax+b^{\top}x+c$ と書ける $\mathbb{R}^n$ 上の関数のことで、$n=1$ の場合が $ax^2+bx+c$($a\neq0$)である。$2Ap=-b$ となる $p$ があれば $f(x)=(x-p)^{\top}A(x-p)+f(p)$ と平方完成でき、$f$ が最小値をもつことは $A$ が半正定値で $b$ が $A$ の像に入ることと同値で、最小点がただ1つであることは $A$ が正定値であることと同値になる。また $f$ が凸関数であることは $A$ が半正定値であることと同値である。最小二乗法や Cauchy–Schwarz の不等式の判別式による証明は、2次関数の最小値の問題として理解できる。
3時間前

2次方程式

2次方程式(quadratic equation)とは、体 $K$ の元 $a\neq0$、$b$、$c$ を係数とする方程式 $ax^2+bx+c=0$ のことである。$K$ の標数が $2$ でなければ、平方完成により解は $\delta^2=b^2-4ac$ となる $\delta$ を使って $(-b\pm\delta)/(2a)$ と表され、$K$ に解をもつことと判別式 $b^2-4ac$ が $K$ の元の平方であることが同値になる。標数 $2$ では $2a=0$ のため解の公式が使えず、$b\neq0$ なら $y^2+y=t$ の形に帰着し、有限体ではトレースで解の有無が決まる。既約な2次方程式の解を添加すると2次拡大が得られ、標数が $2$ でない体の2次拡大は平方類 $K^\times/(K^\times)^2$ の単位元以外の元と1対1に対応する。
3時間前

双曲幾何学

双曲幾何学(hyperbolic geometry)とは、Euclid 幾何の平行線公準を「直線の外の 1 点を通る平行線が 2 本以上ある」に置きかえた幾何で、上半平面に長さ $ds=\sqrt{dx^2+dy^2}/y$ を入れた双曲平面がその代表的なモデルである。そこでは 2 点を結ぶ最短の道(双曲直線)は実軸に中心をもつ半円か縦の半直線で、距離は $\cosh d=1+|z-w|^2/(2\operatorname{Im}z\operatorname{Im}w)$ で与えられ、実数係数の 1 次分数変換が長さを保つ。Gauss 曲率はいたるところ $-1$ で、三角形の内角の和は $\pi$ より小さく、余弦定理は双曲線関数で書かれる。
3時間前

Gauss曲率

Gauss曲率(Gaussian curvature)とは、$\mathbb R^3$ の曲面の各点で単位法ベクトルの変化を表す形作用素の行列式、つまり 2 つの主曲率の積 $K=\kappa_1\kappa_2$ のことで、第 1・第 2 基本形式の係数から $K=(LN-M^2)/(EG-F^2)$ と計算できる。球面では正、円柱では $0$、鞍の形では負になり、その絶対値は単位法ベクトルが単位球面に描く像の面積の拡大率に等しい。Gauss の驚異の定理により $K$ は曲面の上で測る長さ(第 1 基本形式)だけで決まり、そのため球面の地図は角と面積を同時には保てない。Gauss–Bonnet の定理、断面曲率、双曲幾何学への出発点である。
4時間前

曲率(曲線)

曲率(曲線)(curvature of a curve)とは、Euclid 空間の正則曲線を弧長 $s$ で表したときの単位接ベクトル $T$ の変化の速さ $\kappa=|dT/ds|$ のことで、直線では $0$、半径 $r$ の円では $1/r$ になる。一般の径数では $\kappa=|\gamma'\times\gamma''|/|\gamma'|^3$ などの式で計算でき、平面曲線では左右の曲がり方を区別する符号つき曲率が、曲線を回転と平行移動を除いてただ 1 つに決める。空間曲線では曲率に捩率を加えた Frenet–Serret の公式が成り立ち、曲率が正なら曲率と捩率の組が曲線を合同を除いて決める。曲面の主曲率や測地曲率、Riemann 多様体の曲率へ続く出発点である。
4時間前

標準予想

標準予想(standard conjectures)とは、Grothendieck が定式化した、滑らかな射影多様体の代数的サイクルと Weil コホモロジーについての予想の総称である。対角線の Künneth 成分が代数的であるという Künneth 型($\mathrm{C}$)、Hard Lefschetz の逆写像を与える作用素 $\Lambda$ が代数的であるという Lefschetz 型($\mathrm{B}$)、原始的な代数的類の上の交点形式が正定値であるという Hodge 型、ホモロジー同値と数値的同値の一致($\mathrm{D}$)からなる。$\mathbb{C}$ 上では Hodge 型が成り立ち、$\mathrm{B}$ から $\mathrm{D}$ が従う。一般の場合は未解決で、純粋モチーフの理論の基礎をなす。
4時間前

モチーフ

モチーフ(motive)とは、Grothendieck が滑らかな射影多様体の普遍的なコホモロジーとして構想した対象で、多様体 $X$、対応のなす代数の冪等元 $p$、整数 $m$ の三つ組 $(X,p,m)$ を対象とし、$X\times Y$ 上の代数的サイクルを適切な同値関係で割った対応を射とする圏の対象である。有理同値で割ると Chow 群を射の空間として復元する Chow モチーフの圏になり、射影直線のモチーフは $\mathbb{1}\oplus\mathbb{L}$ と分かれる。数値的同値で割った圏は Jannsen の定理により半単純アーベル圏であり、Weil コホモロジーとの関係は標準予想に集約される。
4時間前

Hodgeフィルトレーション

Hodgeフィルトレーション(Hodge filtration)とは、重さ $n$ の Hodge 構造の複素化で Hodge 成分を束ねた減少フィルトレーション $F^p=\bigoplus_{p'\ge p}H^{p',n-p'}$、および滑らかなスキームの代数的 de Rham コホモロジーで、次数 $p$ 以上の微分形式からなる部分複体の超コホモロジーの像として定まるフィルトレーションのことである。$\mathbb{C}$ 上の滑らかな射影多様体では両者が比較同型で一致し、Hodge 構造は $F^\bullet$ が複素共役に関して $n$ 反対であることとして言い直される。代数的な $F^p$ は定義体上で定まり、引き戻しとカップ積に両立し、Poincaré 双対のもとで $F^p$ の直交補空間は $F^{d-p+1}$ になる。周期写像や混合 Hodge 構造の基礎である。
4時間前

特殊線形群

特殊線形群(special linear group)とは、可換環 $R$ 上の行列式が $1$ の $n$ 次正方行列のなす群 $\mathrm{SL}_n(R)$ のことで、行列式 $\det\colon\mathrm{GL}_n(R)\to R^\times$ の核として一般線形群の正規部分群になる。体の上では基本行列 $I+cE_{ij}$ で生成され、中心はスカラー行列 $aI$($a^n=1$)だけからなり、$n\ge3$ または体の元が $4$ 個以上なら自分自身の交換子部分群に等しい完全群である。実数・複素数の上では弧状連結な Lie 群で、図形の体積と向きを保つ 1 次変換の全体として現れ、中心で割った射影特殊線形群は有限単純群の主要な族を与える。
4時間前

最近の参考書

旗束と閉はめ込み定理(Grothendieck「Techniques de construction en géométrie analytique V」を読む)の表紙
旗束と閉はめ込み定理(Grothendieck「Techniques de construction en géométrie analytique V」を読む)
本書は、A. Grothendieck が 1961 年 2 月に Cartan セミナーの連作「Techniques de construction en géométrie analytique」の第 5 回として行った講演「Fibrés vectoriels, fibrés projectifs, fibrés en drapeaux」(exposé 12、15 頁)を道案内にして、解析空間の上のベクトル束・射影束・旗束を、それらが表す関手から構成する方法を解説する参考書である。講演は、前の回で与えた表現可能性の判定法を初めて本格的に使い、有限表示の加群のベクトル束、局所自由な商の列である旗の束の存在を示し、全射・外積・テンソル積から来る射が閉はめ込みであることを証明した。 本書は翻訳ではない。ベクトル束、旗の関手と存在定理、閉はめ込み定理、射影束と旗束の性質、という主題ごとに四つの章を立て、前提知識と読み方の章を加えて全 17 頁とし、現代の記号と言葉で書き直した。前の講演の判定法は、同じシリーズの第 9 巻『表現可能関手の一般形式』で証明した結果として引く。各頁は、その頁で示すこと、背景と動機、定義と準備、主結果と証明、例と反例、その後の発展、原論文との対応表の同じ形で書く。 原論文は「容易に示せる」「全く同様」「類似でより簡単」で多くの段を済ませている。本書はその段を補って閉じ、第 1〜4 章の 37 個の主結果を札で区別した。10 個は空間の存在を使わず、加群と関手の水準で本書の中で証明し切った完結である。26 個は引用した事実に依る条件付きで、そのうち 3 個は解析空間の定義とその直後の事実、前の講演の判定法だけに依り、連作の定理を使わないので、定義の下では閉じることを札に書き添えた。残りの 22 個は数空間への射が大域関数の組と一対一であるという前の回の一つの定理に、1 個は局所環のネーター性と Krull の交叉定理に依る。未完結は、代数幾何からの移し替えを予告する前置きの一文の 1 個である。旗束を射影束に埋め込む原論文の注意は、零の加群と四次元空間の例で破れるので正しい形に直した。確かめを省いた五つの証明の段も補った。 読むには、環付き空間の上の加群、外積とテンソル積、中山の補題の初歩が要る。解析空間は連作の前の回の定義を引き、分離性を要求しない約束を明示したうえで、得られた空間は底が分離的なら分離的であることも示す。要点は第 0 章に、読む順序の案は「本書の読み方」に、記号と本書が足した仮定は「記号と約束」にまとめた。
11日前
表現可能関手の一般形式(Grothendieck「Techniques de construction en géométrie analytique IV」を読む)の表紙
表現可能関手の一般形式(Grothendieck「Techniques de construction en géométrie analytique IV」を読む)
本書は、A. Grothendieck が 1961 年 1 月に Cartan セミナーの連作「Techniques de construction en géométrie analytique」の第 4 回として行った講演「Formalisme général des foncteurs représentables」(exposé 11、28 頁)を道案内にして、前層が一つの対象で表されるのはいつかを判定する一般の方法を解説する参考書である。講演は、対象を点の前層に置き換える対応から始めて、前層の射が表現可能であることを底変換で調べる方法、表現可能な前層を同値の対で割った商が表現可能になる条件、解析空間の圏で開部分関手に覆われる局所的な関手が表現可能になる判定法を与えた。連作の後の回は、この判定法でベクトル束や Grassmann 束の表現可能性を示し、モジュライ問題へ進む。 本書は翻訳ではない。表現可能関手と米田の対応、底変換と相対的表現可能性、有効エピと商、解析空間の貼り合わせ、という主題ごとに四つの章を立て、前提知識と読み方の章を加えて全 16 頁とし、現代の記号と言葉で書き直した。前の三つの章は任意の圏の定理で、解析空間は最後の章で初めて使う。各頁は、その頁で示すこと、背景と動機、定義と準備、主結果と証明、例と反例、その後の発展、原論文との対応表の同じ形で書く。 原論文は「ただちに分かる」「自明」「よく知られている」で多くの段を済ませている。本書はその段を補って閉じ、第 1〜4 章の 47 個の主結果を、本書の中で証明し切れたもの(完結)、引用した事実に依るもの(条件付き)、証明を閉じられなかったもの(未完結)に分けて札で示した。完結は 35 個で、一般の圏の三つの章の主結果である。条件付きは 11 個で、そのうち最後の章の 10 個は連作の前の回の解析空間の定義と環付き空間の貼り合わせだけに依り、定理を使わないので、定義の下では閉じることを札に書き添えた。残る 1 個は前の回の定理を引く。未完結は、原論文が証明なしに述べる一文の 1 個である。原論文が黙って使う三つの読み(解析空間の分離性、空の和と空の被覆、同値の対)は本書が足した仮定として明示した。印字のままでは成り立たない一つの主張はファイバー積の無い圏での反例を示して正しい形に直し、結論に届かない証明の段は別の道で埋めた。 読むには、圏と関手、極限、位相空間の層の初歩が要る。解析空間については連作の前の回の定義を引き、分離性を要求しないという連作の約束を例とともに述べる。この約束を落とすと最後の章の二つの命題が偽になる。要点は第 0 章に、読む順序の案は「本書の読み方」に、記号と本書が足した仮定は「記号と約束」にまとめた。
11日前
ホモロジー的捩れと有理切断(Grothendieck「Torsion homologique et sections rationnelles」を読む)の表紙
ホモロジー的捩れと有理切断(Grothendieck「Torsion homologique et sections rationnelles」を読む)
本書は、A. Grothendieck が 1958 年 6 月に Chevalley セミナー「Anneaux de Chow et applications」で行った講演「Torsion homologique et sections rationnelles」(exposé 5、29 頁)を道案内にして、代数群を構造群とする主束がいつ局所自明になるかを、旗多様体の Chow 環で測る理論を解説する参考書である。講演は、前の講演の交叉理論を使って、有限エタール被覆の上でしか自明にならない主束の障害を、旗多様体の Chow 環の中の特性部分環の指数という一つの整数(捩れ指数)に集約し、局所等自明な主束がすべて局所自明になる特別群を、アフィン・連結・捩れなしの三条件で特徴づけた。複素数体の上では、捩れ指数の素因子が分類空間の整係数コホモロジーの捩れと一致することも示した。 本書は翻訳ではない。可解群の等質空間、ファイバーの Chow 環、線形表現による有理切断、特性環と捩れ指数、ホモロジー的な捩れ、特別群、という主題ごとに六つの章を立て、現代の記号と言葉で書き直した。各頁は、その頁で示すこと、背景と動機、定義と準備、主結果と証明、例と反例、その後の発展、原論文との対応表の同じ形で書く。 原論文は「ただちに」「読者に委ねる」「よく知られている」で多くの段を済ませている。本書はその段を補って閉じ、第 1〜6 章の 71 個の主結果を、本書の中で証明し切れたもの(完結、1 件)、引用した事実に依るもの(条件付き、65 件)、証明を閉じられなかったもの(未完結、5 件)に分けて札で示す。札の基準は厳しく、代数群の構造論や交叉理論の古典的な定理、前の講演が与える Chow 環の性質を一つでも引けば条件付きとする。条件付きのうち 26 件は Chow 環の性質と古典的な定理だけで閉じ、7 件は古典的な定理だけで閉じることを札に書き分けた。原論文が証明なしに認めるサイクル類写像や未公刊の Bott の結果に依る部分は、引用として分けて述べる。原論文が黙って使う仮定は本書が足した仮定として明示した。印字のままでは成り立たない四つの主張は、反例を示し、正しい形に直して述べる。 読むには、線形代数群の構造(Borel 部分群と旗多様体)、主ファイバー空間とエタール射の初歩、Chow 環の基本的な性質が要る。Chow 環の性質は同じシリーズの『交叉理論の基本性質』で証明したものを引き、頁ごとの対応表を付けた。代数群の基礎は同じシリーズの『アフィン代数群と可換アフィン代数群』の結果を引く。原論文と同じく、空間は代数的閉体の点の集合として扱う。要点は第 0 章に、読む順序の案は「本書の読み方」に、記号と本書が足した仮定は「記号と約束」にまとめた。
11日前
アフィン代数群と可換アフィン代数群(Grothendieck「Généralités sur les groupes algébriques affines. Groupes algébriques affines commutatifs」を読む)の表紙
アフィン代数群と可換アフィン代数群(Grothendieck「Généralités sur les groupes algébriques affines. Groupes algébriques affines commutatifs」を読む)
本書は、A. Grothendieck が 1956 年 11 月に Chevalley セミナー「Classification des groupes de Lie algébriques」で行った講演「Généralités sur les groupes algébriques affines. Groupes algébriques affines commutatifs」(exposé 4、14 頁)を道案内にして、代数的閉体の上のアフィン代数群の基礎を解説する参考書である。講演は、Borel の線形代数群論を解説する前置きとして、表現の係数からアフィン代数群が線形群に埋め込めることを示し、閉部分群を半不変式で切り出す Chevalley の定理、トーラスと対角化可能群の指標による記述、元の Jordan 分解が閉部分群にとどまるという定理、可換群の直積分解を証明した。 本書は翻訳ではない。表現と行列係数、閉部分群、対角化可能群、半単純元と単冪元、可換アフィン代数群、という主題ごとに五つの章を立て、現代の記号と言葉で書き直した。各頁は、その頁で示すこと、背景と動機、定義と準備、主結果と証明、例と反例、その後の発展、原論文との対応表の同じ形で書く。 原論文は「明らかに」「よく知られているように」で多くの段を済ませている。本書はその段を補って閉じ、第 1〜5 章の 51 個の主結果を、本書の中で証明し切れたもの(完結、27 件)、引用した定理に依るもの(条件付き、22 件)、証明を閉じられなかったもの(未完結、2 件)に分けて札で示す。トーラスの正則関数と閉部分群の記述などは、原論文と別の経路で書いて完結にした。原論文が黙って使う仮定は本書が足した仮定として明示し、印字のままでは成り立たない主張は、反例と正しい形を添えて訂正した形で述べる。正規部分群を核とする表現の証明の一段は偽で、反例を示して証明を立て直した。正標数の可換単冪群について原論文が Chevalley に帰属させる分類は、証明も出典も無いので未完結とした。 読むには、線形代数の Jordan 分解、有限生成アーベル群、アフィン代数多様体と座標環の初歩が要る。原論文は群スキームの言葉を使わず、代数的閉体の点の集合として代数群を扱い、本書もこの枠組みで読む。要点は第 0 章に、頁ごとに要る前提の対応表と読む順序の案は「本書の読み方」に、記号と行列の規約、本書が足した仮定、原論文の引き方は「記号と約束」にまとめた。各章で何を扱い、原論文の何を補い、どこを直したかは、目次の各章の説明に書いた。
11日前
交叉理論の基本性質(Grothendieck「Sur quelques propriétés fondamentales en théorie des intersections」を読む)の表紙
交叉理論の基本性質(Grothendieck「Sur quelques propriétés fondamentales en théorie des intersections」を読む)
本書は、A. Grothendieck が 1958 年の Chevalley セミナー「Anneaux de Chow et applications」で行った講演「Sur quelques propriétés fondamentales en théorie des intersections」(exposé 4、36 頁)を道案内にして、交叉理論を公理から組み立てる方法を解説する参考書である。原論文は、各代数多様体に環を対応させ、引き戻し、固有射に沿う直像、外積、横断的な底変換を公理として並べ、そこから射影公式、Chern 類、旗束の環を導いた。さらに局所化の完全列とアフィン直線に関するホモトピーの公理を置いて射影束公式を証明し、Chow 環と連接層の類の環がこの枠組みに入ることを示した。 本書は翻訳ではない。交叉理論の公理系、射影束と Chern 類、完全性とホモトピー、射影束公式の証明、Chow 環と K 理論での実現、という主題ごとに五つの章を立て、現代の記号と言葉で書き直した。各頁は、その頁で示すこと、定義と準備、主結果と証明、例と反例、その後の発展、原論文との対応表の同じ形で書く。 原論文は「容易に確かめられる」「難なく」で多くの段を済ませている。本書はその段を補って閉じ、第 1〜5 章の 57 個の主結果を、本書の中で証明し切れたもの(完結、8 件)、引用した定理に依るもの(条件付き、48 件)、証明を閉じられなかったもの(未完結、1 件)に分けて札で示す。第 1〜4 章の判定は公理を仮定とする命題としてのもので、公理を満たす理論が実在することは第 5 章で確かめる。原論文が黙って使う仮定は本書が足した仮定として明示し、印字のままでは成り立たない主張は、反例と正しい形を添えて訂正した形で述べる。Chern 類の定義と一意性の議論、λ 環の一般論は第 3 巻『Chern 類の公理的理論』に委ね、本書では原論文に固有の筋に重心を置く。 読むには、古典的な代数多様体の言葉、サイクルと Chow 環の初歩、ベクトル束と射影束が要る。第 2 章の後半からは対称式と線形代数群、第 5 章からは連接層の類の環と λ 環が加わる。すべてを先に学ぶ必要はなく、要点は第 0 章に、頁ごとに要る前提の対応表と読む順序の案は「本書の読み方」に、記号と射影束の規約、公理の一覧、原論文の引き方は「記号と約束」にまとめた。各章で何を扱い、原論文の何を補い、どこを直したかは、目次の各章の説明に書いた。
11日前
Chern 類と離散群の線形表現(Grothendieck「Classes de Chern et représentations linéaires des groupes discrets」を読む)の表紙
Chern 類と離散群の線形表現(Grothendieck「Classes de Chern et représentations linéaires des groupes discrets」を読む)
本書は、A. Grothendieck が 1966 年に IHÉS でまとめた論文「Classes de Chern et représentations linéaires des groupes discrets」(『Dix exposés sur la cohomologie des schémas』、North-Holland・Masson、1968 年、215–305 頁)を道案内にして、離散群の線形表現の Chern 類を代数的・算術的に扱う方法を解説する参考書である。原論文は、体の自己同型で不変な整係数の理論が作れないことから出発し、1 の冪根の捩れを係数とするエタールコホモロジーで作用群つきスキームの Chern 類を定め、位相的な Chern 類と比べたうえで、体の自己同型が Chern 類に働く様子から、有限生成の群の複素表現の有理 Chern 類が 0 になることを示した。Weil 予想の下での射影多様体への一般化、捩れにならない算術的な例、de Rham 型の類、Milnor の定理の一般化も含む。 本書は翻訳ではない。整係数の障害と序論の構想、算術的 Chern 類の構成、超越的 Chern 類との比較、幾何的な場合の捩れ定理、Weil 予想と射影多様体、算術的な場合、de Rham 型と Hodge 型の Chern 類、平坦束の特性類と Milnor の定理、という主題ごとに八つの章を立て、現代の記号と言葉で書き直した。各頁は、その頁で示すこと、定義と準備、主結果と証明、例と反例、その後の発展、原論文との対応表の同じ形で書く。 原論文は「容易に確かめられる」「読者に任せる」で多くの段を済ませている。本書はその段を補って閉じ、第 1〜8 章の 131 個の主結果を、本書の中で証明し切れたもの(完結、11 件)、引用した定理に依るもの(条件付き、111 件)、証明を閉じられなかったもの(未完結、9 件)に分けて札で示す。原論文の印字のままでは成り立たない主張(7 件)は、独立の状態札を立てず、訂正した主張だけを主結果として札を付け、原論文の形がどの反例で破れるかをその頁の注意に書く。誤植は訂正した形で述べて根拠を注意に書く。原論文が予想や期待として述べたことは原論文の状態として記録し、後代の結果とは時点を明記して分ける。Chern 類の公理的な扱いは第 3 巻『Chern 類の公理的理論』に委ねる。 読むには、スキーム論、群のコホモロジー、エタールコホモロジーの初歩、位相的な Chern 類が要る。第 5 章からは Weil 予想の言明、第 7 章からは de Rham コホモロジーと Hodge コホモロジー、第 8 章からは Lie 群と代数群の構造が加わる。すべてを先に学ぶ必要はなく、要点は第 0 章に、頁ごとに要る前提の対応表と読む順序の案は「本書の読み方」に、記号と射影束の規約、原論文の引き方は「記号と約束」にまとめた。各章で何を扱い、原論文の何を補い、どこを直したかは、目次の各章の説明に書いた。
11日前
結晶コホモロジーの構想(Grothendieck「Crystals and the de Rham cohomology of schemes」を読む)の表紙
結晶コホモロジーの構想(Grothendieck「Crystals and the de Rham cohomology of schemes」を読む)
本書は、A. Grothendieck が 1966 年に IHÉS で行った 5 回の講演の記録「Crystals and the De Rham cohomology of schemes」(J. Coates と O. Jussila による記録。『Dix exposés sur la cohomologie des schémas』、North-Holland・Masson、1968 年、306–358 頁)を道案内にして、標数 p の代数多様体に対する p 進コホモロジーの構想、後の結晶コホモロジーの出発点を解説する参考書である。講義は代数的 de Rham コホモロジーの限界の検討から始め、ℓ 進コホモロジーでは見えない p 捩れを捉える理論への要請を列挙し、Monsky–Washnitzer の持上げの方法、接続と stratification、無限小トポスと標数 0 の基本定理を経て、divided power を備えた結晶トポスの定義を提案する。 本書は翻訳ではない。de Rham コホモロジーの批判と p 進理論の要請、Monsky–Washnitzer の方法、接続と Gauss–Manin 接続、無限小トポスと stratifying トポス、基本定理と Čech 計算、結晶トポスの構想、という主題ごとに六つの章を立て、現代の記号と言葉で書き直した。各頁は、その頁で示すこと、定義と準備、主結果と証明、例と反例、その後の発展、原論文との対応表の同じ形で書く。 講義録は着想と見込みを多く含む。本書は、講義が一行で済ませた段(形式的持上げの一意性、Cartan のホモトピー公式、標数 p の楕円曲線族での標準的な stratification の非存在、形式 Poincaré 補題と基本定理の証明など)を補って閉じ、第 1〜6 章の 89 個の主結果を、本書の中で証明し切れたもの(完結、13 件)、引用した定理に依るもの(条件付き、66 件)、証明を閉じられなかったもの(未完結、10 件)、そのままでは成り立たないもの(偽、0 件)に分けて札で示す。印字の誤り(対数の符号など)は訂正した形で述べ、根拠を注意に書く。講義が「期待する」と述べた見込み(結晶トポスの二つの性質、二つの予想、Monsky–Washnitzer コホモロジーの有限性など)は原論文の状態として記録し、Berthelot の結晶コホモロジー(1974 年)など後代の理論での定着を時点を明記して分けて書く。 読むには、スキーム論と連接層のコホモロジー、代数的 de Rham コホモロジーと比較定理、エタールコホモロジーの初歩が要る。第 2 章からは Witt ベクトルと形式スキーム、第 4 章からは景とトポスと微分作用素の初歩が加わる。すべてを先に学ぶ必要はなく、要点は第 0 章に、頁ごとに要る前提の対応表と読む順序の案は「本書の読み方」に、記号と約束、原論文の引き方は「記号と約束」にまとめた。各章で何を扱い、原論文の何を補い、どこを直したかは、目次の各章の説明に書いた。
13日前
Chern 類の公理的理論(Grothendieck「La théorie des classes de Chern」を読む)の表紙
Chern 類の公理的理論(Grothendieck「La théorie des classes de Chern」を読む)
本書は、A. Grothendieck の論文「La théorie des classes de Chern」(Bulletin de la Société Mathématique de France 第 86 巻、1958 年、137–154 頁)を道案内にして、代数的ベクトル束の Chern 類の公理的理論を解説する参考書である。原論文は Borel と Serre による Riemann–Roch の定理の解説論文の付録として書かれた 18 頁の短い論文で、非特異な代数多様体の上のベクトル束の Chern 類を、Grassmann 多様体を使わずに、射影束のサイクル類環の構造だけから定義し、関手性・正規化・加法性の三つの性質で一意に特徴づけた。Chow 環でも Hodge 型のコホモロジーでも整係数コホモロジーでも同じ議論が通るこの定式化は、その後の交叉理論と Riemann–Roch の定理の標準的な道具になった。 本書は原論文の翻訳ではない。原論文の節の順序ではなく、射影束と旗多様体による分裂、公理系とそのモデル、Chern 類の定義と特徴づけ、λ 環と Chow 環への応用、正則切断の零点サイクル、という主題ごとに五つの章を立て、現代の記号と言葉で書き直した。各頁は、その頁で示すこと、背景と動機、定義と準備、主結果と証明、例と反例、その後の発展、原論文との対応という同じ形で書いてある。 原論文は「いつものように旗多様体へ移って」「形式的に確かめられる」「ここでは証明しない」で多くの段を済ませている。本書はその段を補って証明を閉じ、各主張が、本書の中で証明し切れたもの(完結)、引用した定理に依るもの(条件付き)、証明を閉じられなかったもの(未完結)、そのままでは成り立たないもの(偽)のどれに当たるかを区別して示す。λ 環の構造を与える普遍多項式の存在、横断性の局所計算、Chow 環と $K$ 群の随伴次数付き環の比較の式は本書で補い、原論文が証明を与えない式は、後代の Chern 指標による説明と分けて扱う。 読むには、スキーム論と局所自由層、Chow 環と交叉理論の初歩、層コホモロジーの基本が要る。第 2 章の後半では Hodge 型のコホモロジーと Leray スペクトル系列が、第 4 章では Grothendieck 群と対称関数が加わる。すべてを先に学ぶ必要はない。分野ごとの要点、頁ごとに要る前提の対応表、読む順序の案は第 0 章の「本書の読み方」に、全頁に共通する記号と約束は「記号と約束」にまとめた。各章で何を扱い、原論文の何を補い、どこを直したかは、下の目次の各章の説明に書いた。
16日前
代数的 de Rham コホモロジー(Grothendieck の de Rham コホモロジー論文を読む)の表紙
代数的 de Rham コホモロジー(Grothendieck の de Rham コホモロジー論文を読む)
本書は、A. Grothendieck の論文「On the de Rham cohomology of algebraic varieties」(Publications Mathématiques de l'IHÉS 第 29 巻、1966 年、95–103 頁)を道案内にして、代数的 de Rham コホモロジーの理論を解説する参考書である。原論文は M. F. Atiyah に宛てた 1963 年 10 月の書簡の抜粋に、同年 11 月と 1965 年 7 月の注を付けた 9 頁の短い論文で、複素数体上の非特異な代数多様体の複素係数コホモロジーが、代数的な微分形式の複体だけで計算できるという比較定理を示した。この定理は、Atiyah と Hodge の第二種積分の理論を純代数的なものに置き換え、Hodge–de Rham スペクトル系列、周期、Gauss–Manin 接続、標数 p の結晶コホモロジーへ続く道を開いた。 本書は原論文の翻訳ではない。書簡の順序ではなく、代数的 de Rham コホモロジーの定義、比較定理とその証明、第二種積分と周期、Hodge–de Rham スペクトル系列、相対 de Rham コホモロジーと標数 p、という主題ごとに五つの章を立て、現代の記号と言葉で書き直した。各頁は、その頁で示すこと、背景と動機、定義と準備、主結果と証明、例と反例、その後の発展、原論文との対応という同じ形で書いてある。 原論文は書簡なので、多くの段が「標準的な議論で」「容易に確かめられる」で済まされている。本書はその段を補って証明を閉じ、各主張が、本書の中で証明し切れたもの(完結)、引用した定理に依るもの(条件付き)、証明を閉じられなかったもの(未完結)、そのままでは成り立たないもの(偽)のどれに当たるかを区別して示す。原論文の後半にある期待や推測は、著者自身が注で撤回したもの(標数 p での Betti 数との一致は Serre の反例で破れる)と、後に定理になったもの(Gauss–Manin 接続、標数 p での退化)を分けて扱い、後代の結果は引用であることを明示する。 読むには、可換環論とホモロジー代数、スキーム論と連接層のコホモロジー、複素解析空間と GAGA の初歩が要る。第 3 章からは Hodge 理論と楕円曲線の周期、第 4 章と第 5 章ではアーベル多様体とエタールコホモロジーの初歩が加わる。すべてを先に学ぶ必要はない。分野ごとの要点、頁ごとに要る前提の対応表、読む順序の案は第 0 章の「本書の読み方」に、全頁に共通する記号と約束は「記号と約束」にまとめた。各章で何を扱い、原論文の何を補い、どこを直したかは、下の目次の各章の説明に書いた。
16日前
Brauer群の理論(GrothendieckのBrauer群 I–III を読む)の表紙
Brauer群の理論(GrothendieckのBrauer群 I–III を読む)
本書は、A. Grothendieck の連続講演「Le groupe de Brauer」I(Azumaya 代数)・II(コホモロジー論)・III(補足と計算)を道案内にして、スキームの Brauer 群の理論を解説する参考書である。I と II は Séminaire Bourbaki の 1964/65 年と 1965/66 年の講演で、III を加えた 3 篇が論文集『Dix exposés sur la cohomologie des schémas』(North-Holland・Masson、1968 年)に収められている。原論文は、体の中心単純環の同値類として古典的に定義されていた Brauer 群を、スキームの上の理論に作り直し、エタールコホモロジーの言葉で計算できるようにして、双対性と双有理不変量へつないだ。 本書は原論文の翻訳ではない。原論文の節の順序ではなく、Azumaya 代数、コホモロジー的 Brauer 群、低次元の計算、fppf 位相、純性と双有理不変性、双対性、高次の双有理不変量と予想、という主題ごとに七つの章を立て、現代の記号と言葉で書き直した。各頁は、その頁で示すこと、背景と動機、定義と準備、主結果と証明、例と反例、その後の発展、原論文との対応という同じ形で書いてある。 原論文は、当時の読者が EGA と SGA 4 を手元に置いていることを前提に、多くの段を「よく知られている」「直ちに分かる」で済ませている。本書はその段を補って証明を閉じ、各主張が、本書の中で証明し切れたもの(完結)、引用した定理や仮定に依るもの(条件付き)、証明を閉じられなかったもの(未完結)、印字のままでは成り立たないもの(偽)のどれに当たるかを区別して示す。エタールコホモロジーの基本定理、曲面の交叉理論、Weil 予想の Deligne による証明など、外部から引く結果は引用であることを明示し、各頁の末尾に原論文の番号と頁との対応表を置く。 読むには、可換環論、ホモロジー代数、スキーム論、層とエタールコホモロジー、Galois コホモロジーと類体論の初歩が要る。第 2 章の後半からは代数曲面と ℓ 進の道具が、第 7 章の最後では Hodge 理論の初歩が加わる。すべてを先に学ぶ必要はない。分野ごとの要点、頁ごとに要る前提の対応表、読む順序の案、全頁に共通する記号と約束は、第 0 章の頁「本書の読み方」と「記号と約束」にまとめた。各章で何を扱い、原論文の何を補い、どこを直したかは、下の目次の各章の説明に書いた。
19日前

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