最近の用語解説

完全関手

完全関手(exact functor)とは、アーベル圏の間の加法関手であって、任意の短完全列を短完全列に送るもの、同値に左完全かつ右完全であるもののことをいう。核・余核・像を過不足なく保つ関手であり、完全関手のもとでは導来関手による「補正」が不要になる(高次の導来関手がすべて消える)という性質を持つ。
8分前

充満忠実関手

充満忠実関手(fully faithful functor)とは、任意の二対象間のHom集合の間に誘導される写像がすべて全単射になるような関手のことをいう。忠実(faithful、単射)と充満(full、全射)という二つの独立な条件を同時に満たすものであり、もとの圏の対象・射の情報を過不足なく写し取る関手として、充満部分圏や米田埋め込みなど圏論のいたるところに現れる。
17分前

偏屈層

偏屈層(perverse sheaf)とは、層化された空間の上の構成可能複体の有界導来圏に、通常の(標準)t構造とは異なる「中間次元」のt構造(摂動t構造)を導入したとき、その心に属する対象のことをいう。各コホモロジー層の台の次元を精密に制御する条件によって定義され、通常の層の圏にはない自己双対性・分解定理などの強い性質を持つ、特異多様体の位相幾何を統制する現代的な道具である。
44分前

t構造

t構造(t-structure)とは、三角圏の対象を「次数が非正の部分」と「次数が非負の部分」に分類する二つの充満部分圏の組であって、互いに直交し、任意の対象がその二種類の部分から一意的に組み立てられるという公理を満たすもののことをいう。標準的なt構造の心(heart)はもとのアーベル圏を復元し、これをずらしたt構造の心として偏屈層の圏が定義される。
49分前

三角関手と導来関手の再定式化

三角関手(triangulated functor)とは、移動関手と距離三角の構造を保つ三角圏の間の関手のことをいう。この概念を用いると、対象ごとに射影分解・入射分解を取ってホモロジーを計算するという導来関手の構成手続きは、導来圏の間の三角関手 $RF\colon D^+(\mathcal A)\to D^+(\mathcal B)$(全導来関手)を一度だけ構成するという単一の操作に再定式化され、$R^nF(A)$ はその特殊な場合として回収される。
54分前

導来圏

導来圏(derived category)とは、アーベル圏 $\mathcal A$ 上の複体のホモトピー圏 $K(\mathcal A)$ を、擬同型のクラスでVerdier局所化して得られる三角圏 $D(\mathcal A):=K(\mathcal A)[\mathrm{Qis}^{-1}]$ のことをいう。ホモロジーだけを見れば区別できない複体を圏論的に同型と扱う枠組みであり、導来関手・$\operatorname{Ext}$・$\operatorname{Tor}$を統一的に記述する現代ホモロジー代数の中心的な舞台になる。
1時間前

Verdier局所化

Verdier局所化(Verdier localization)とは、圏 $\mathcal C$ とその中の射のクラス $S$ に対し、$S$ の元をすべて同型射に変えるという普遍性を持つ圏 $\mathcal C[S^{-1}]$ を構成する操作、とくにそれを三角圏と両立するように行う手続きのことをいう。ホモトピー圏を擬同型のクラスで局所化することで導来圏が構成され、その意味で導来圏の構成手続きそのものを指す語として使われる。
1時間前

三角圏

三角圏(triangulated category)とは、加法圏に移動関手(自己同値 $\Sigma$)と「距離三角」と呼ばれる図式 $X\to Y\to Z\to\Sigma X$ の族を追加の構造として与え、公理TR1〜TR3(および八面体公理)を満たすもののことをいう。核・余核を持たない圏でも短完全列に類する「長完全列を生成する三角形」を扱えるようにする枠組みであり、ホモトピー圏や導来圏はこの構造の典型例になる。
2時間前

ホモトピー圏

ホモトピー圏(homotopy category)とは、加法圏における複体の圏 $\mathrm{Ch}(\mathcal A)$ を、鎖写像を鎖ホモトピーで割った同値類(ホモトピー類)を射とする圏 $K(\mathcal A)$ に置き換えたものをいう。ホモロジー関手はこの商圏上でも矛盾なく定義され、鎖ホモトピー同値な複体を同一視する枠組みとして、擬同型を局所化して構成する導来圏の中間段階をなす。
2時間前

導来関手

導来関手(derived functor)とは、右完全(または左完全)な加法関手 $F$ が短完全列の完全性を一部しか保たないという「欠損」を、射影分解(または入射分解)とホモロジーを用いて系統的に測定する関手の族 $L_nF$(または $R^nF$)のことをいう。$\operatorname{Tor}$ や $\operatorname{Ext}$ はその代表例であり、ホモロジー代数における最も基本的な計算装置の一つである。
2時間前

最近の参考書

測度と積分の表紙
測度と積分
測度論の基礎用語から積分、収束定理、積測度、$L^p$ 空間、Radon測度、Lebesgue測度、Bochner積分までを体系的に扱う。旧Mathpediaの一体版と分割版を照合して移管した非公開下書き。
17時間前
位相線形空間と関数解析の基礎の表紙
位相線形空間と関数解析の基礎
ノルムと内積から、セミノルム位相・汎弱位相、Hahn–Banachの定理、Krein–Milmanの端点定理、Fréchet空間と関数解析の基本定理へ進む。
17時間前
グラフ理論入門の表紙
グラフ理論入門
グラフ理論について基礎的な内容を解説する。
20231015
加法的整数論の表紙
加法的整数論
加法的整数論は、整数や自然数などの加法的な性質について扱う理論である。すなわち $\mathbb{Z}$, $\mathbb{N}$, より一般にある加法半群 $G$ の要素 $g$ を、$G$ の部分集合 $A_1, A_2, \ldots, A_k$ の要素の和 $$g=a_1+a_2+\ldots +a_k\ (a_i\in A_i)$$ としてあらわす方法について扱う理論である。 すべての自然数が$4$つの平方数の和であらわされるというLagrangeの定理、 $4$ 以上のすべての偶数が$2$つの素数の和であらわされるというGoldbachの予想、 与えられた数 $n$ 以下のすべての整数が、ある部分集合 $A$ について、一定の個数以下の $A$ の要素の和であらわされるとき、 そのような部分集合 $A$ で要素の数が可能な限り少ないものをもとめる郵便切手の問題などが加法的整数論で取り扱われる。
2023929
篩法の表紙
篩法
篩法 (sieve method) は、全体集合から、与えられた条件をすべて満足する(あるいはいずれも満足しない)ものの個数を評価する技法である。 最も古い篩法は、与えられた範囲内の素数をすべて発見するEratosthenesの篩であるが、20世紀になって篩法が素数に関する様々な問題の研究に盛んに用いられるようになり、近年では他の数論や組合せ論の問題への応用も行われるようになっている。 この参考書では、20世紀以降飛躍的に進展した、篩法の素数に関する問題への応用について解説する。
2023929
因果階層の表紙
因果階層
因果階層(causal hierarchy)とは、Lorentz多様体の特徴的な因果構造についての性質の包含関係の事である。 その包含関係は、Non-totally vicious ⊃ chronological ⊃ causal ⊃ distinguishing ⊃ strong causal ⊃ stably causal ⊃ causally continuous ⊃ causally simple ⊃ globally hyperbolic である。 この記事では、それぞれの定義と例、またいくらかの顕著な定理について述べる。 この分野の国内での広く知れ渡った和訳の文化はおそらく確立していないため固有名称については英単語のままで解説する。
2023919
代数幾何学入門の表紙
代数幾何学入門
代数幾何学において、もっとも基本的な対象は、多変数多項式の零点、あるいは複数の多変数多項式の共通の零点全体の集合としてあらわされるアフィン代数的集合である。その中でも、アフィン平面上の代数曲線がもっとも基本的な対象となる。 そこで本テキストではアフィン代数的集合の一般論の基礎と、アフィン平面上の代数曲線の概念について解説し、ついで平面上の代数曲線を射影平面上で考察することで、より見通しのよい理論が得られることを解説する。
2023918
有限体入門の表紙
有限体入門
有限体の基本的な性質と応用
202399
特殊相対性理論の表紙
特殊相対性理論
特殊相対性理論は重力を含まない電磁力学の理論としてEinsteinにより提唱され、現代ではMinkowski時空の幾何学として定式化される。
2023724
初等整数論の表紙
初等整数論
本テキストでは、整数の性質について取り扱う。 整数の性質についての研究は初等幾何学と並んで、最も古い数学の分野のひとつである。直角三角形の3辺の長さとなる正の整数、つまり $$a^2+b^2=c^2$$ となる正の整数 $a, b, c$ の組は非常に古く、古代バビロニアや古代エジプトでも知られていたと考えられている(たとえばバビロニアの粘土板プリンプトン322には $65^2+72^2=97^2$, $12709^2+13500^2=18541^2$ をあらわすと思われる記述がある)。$6$ の($6$ 自身を除く)約数の和が $6$ に一致し、$28, 496, 8128$ も同様の性質をもつことは、古代ギリシアのピタゴラス教団では知られており、完全数と呼ばれ崇拝の対象となっていた。ユークリッドの「原論」では公倍数や公約数、素数に関する基礎的な定理が記されている。 本テキストでは、こうした整数の性質や関係について取り扱う。
2023630

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