最近の用語解説

線形独立

線形独立 (linear independence) とは、ベクトルの族に零ベクトルを作る非自明な線形関係がないことである。これは「どの材料も他の材料から作れない」「線形結合の係数が一意に決まる」「係数空間からの写像に核がない」という同じ現象の異なる表現である。生成が作れる範囲を測るのに対し、独立性は作り方の冗長性を測る。
14時間前

普遍要素

普遍要素(universal element)とは、関手 $F\colon\mathcal C\to\mathbf{Set}$ と対象 $A\in\mathcal C$、元 $u\in F(A)$ の組であって、任意の対象 $X$ と任意の元 $x\in F(X)$ に対し $F(f)(u)=x$ を満たす射 $f\colon A\to X$ がただ一つ存在するもののことをいう。$F$ が普遍要素を持つことと、$F$ が表現可能関手であって $(A,u)$ がその普遍元を与えることは同値であり、普遍要素は「関手の元の圏における始対象」として圏論的に統一的に捉えられる。積・テンソル積・自由対象など、数学の様々な構成に現れる普遍性の言明を共通の言葉で記述する、圏論の基礎的な概念である。
21時間前

六演算

六演算(six operations)とは、層化された空間の間の射 $f\colon X\to Y$ に対して定まる6つの関手 $\{f^*,Rf_*,f_!,f^!,\otimes^{\mathbf L},R\mathcal{H}om\}$ の総称——逆像・順像・例外的順像・例外的逆像・導来テンソル積・導来内部Homのことをいう。$(f^*,Rf_*)$、$(f_!,f^!)$、$(\otimes^{\mathbf L},R\mathcal{H}om)$ がそれぞれ随伴対をなし、固有射で $f_!=Rf_*$ に一致するなど、互いに整合的な公理系(Grothendieckの六演算の形式主義)を満たす。Verdier双対性と組み合わさることで層係数コホモロジーの計算を統制する、現代の代数幾何・表現論・特異点論における中心的な道具である。
21時間前

分解定理

分解定理(decomposition theorem)とは、複素代数多様体の間の固有射 $f\colon X\to Y$($X$ は滑らか)に対し、順像複体 $Rf_*(\mathbb Q_X[\dim X])$ が $D^b_c(Y)$ の半単純複体——すなわち各摂動コホモロジー ${}^pH^i$ が半単純な偏屈層であり、複体自身がそれらのシフトの直和に(導来圏で)同型になる——という現象を述べるBeilinson–Bernstein–Deligneの定理のことをいう。$f$ が滑らかとは限らない一般の固有射に対しても常に成り立つという驚くべき強さを持ち、位相幾何・代数幾何・表現論を横断する現代的な道具の中心に位置する。
21時間前

交叉コホモロジー

交叉コホモロジー(intersection cohomology)とは、複素代数多様体(または層化された空間)$X$ の滑らかな稠密開部分 $U\subset X$ 上の定数層をずらした複体 $\mathbb Q_U[n]$($n=\dim_{\mathbb C}X$)を、偏屈層の中間拡張 $j_{!*}$ によって $X$ 全体へ延長して得られる交叉コホモロジー複体 $IC_X$ の超コホモロジー $IH^k(X):=\mathbb H^k(X,IC_X)$ のことをいう。$X$ が滑らかであれば通常のコホモロジー $H^{k+n}(X;\mathbb Q)$ に一致するが、$X$ が特異点を持つ場合にも通常のコホモロジーが満たさないPoincaré双対性を回復するように設計された不変量であり、特異多様体の位相幾何における中心的な道具である。
21時間前

スペクトル系列

スペクトル系列(spectral sequence)とは、完全対 $(D,E,i,j,k)$ から反復的に導かれる複体の列 $(E_r,d_r)_{r\ge1}$(各段が前段のホモロジー $E_{r+1}=H(E_r,d_r)$ として得られる)のことをいう。フィルター付き複体 $F^\bullet C$ に対しては、そのフィルター商 $\operatorname{gr}^pC$ のコホモロジー $E_1^{p,q}=H^{p+q}(\operatorname{gr}^pC)$ を初期段とし、有界なフィルターのもとで全体のコホモロジー $H^{p+q}(C)$ のassociated gradedへと収束する($E_1^{p,q}\Rightarrow H^{p+q}(C)$)。短完全列から長完全列を作る操作を反復・体系化した道具であり、代数的位相幾何学・代数幾何学・ホモロジー代数全般で最も汎用性の高い計算手法の一つである。
21時間前

Ext関手

Ext関手(Ext functor)とは、環 $R$ 上の加群 $A,B$ に対し、Hom関手 $\operatorname{Hom}_R(A,-)$ の右導来関手として定まる $\operatorname{Ext}_R^n(A,B)$ のことをいう。Hom関手が左完全であって右完全とは限らないことの「ずれ」を測る不変量であり、$\operatorname{Ext}_R^0(A,B)\cong\operatorname{Hom}_R(A,B)$ が成り立つ。$\operatorname{Ext}_R^1(A,B)$ は $A$ を $B$ による拡大(短完全列 $0\to B\to E\to A\to0$)の同値類全体と一対一に対応するという古典的な解釈を持つ、ホモロジー代数で最も基本的な導来不変量の一つである。
22時間前

Tor関手

Tor関手(Tor functor)とは、環 $R$ 上の右加群 $A$ と左加群 $B$ に対し、テンソル積 $A\otimes_R-$ の左導来関手として定まる $\operatorname{Tor}_n^R(A,B)$ のことをいう。テンソル積が右完全であって左完全とは限らないことの「ずれ」を測る不変量であり、$\operatorname{Tor}_0^R(A,B)\cong A\otimes_R B$ が成り立つ。加群が平坦である(テンソル積が完全になる)ことの障害を検出する、可換環論・代数的位相幾何学で最も基本的な導来不変量の一つである。
22時間前

3×3補題

3×3補題(nine lemma)とは、9個の対象を3行3列に並べた可換図式において、すべての列が短完全列であり上二段の行が短完全列であれば、残る一段(下段)の行も自動的に短完全列になるという補題である。蛇の補題を二つの行の間の射に適用し、列の短完全性から現れる自明な核・余核を消去することで直ちに得られる、蛇の補題の典型的な応用例である。
23時間前

蛇の補題

蛇の補題(snake lemma)とは、二つの短完全列を縦射でつなぐ可換図式から、核どうし・余核どうしを結ぶ6項の完全列を——両者の間を「接続準同型」で橋渡しして——自動的に作り出せることを述べる補題である。この接続準同型の作り方(下段へ降りて折り返し上段の余核へ戻る、蛇のような経路をたどることに由来する名称)と完全性の証明は、ホモロジー代数における図式追跡の集大成であり、長完全列の構成原理そのものを与える。
23時間前

最近の参考書

ネットとフィルターによる位相空間論の表紙
ネットとフィルターによる位相空間論
旧Mathpediaの二つの完成稿を、原稿ごとの境界と番号体系を保って二部構成にした参考書である。第I部はネット、第II部はフィルターを用いて、閉包・連続性・Hausdorff性・コンパクト性・直積位相・Tychonoffの定理を並行して扱う。さらに、二つの定式化を往復するための編集補節を加えた。 【第I部・ネット】 本稿においては、ネットの収束を用いた位相空間論の基本的議論を説明する。ネットは単純に述べれば点列を一般化した概念である。位相空間論においてネットを用いるメリットは、位相的性質をネットの収束により直観的に扱うことが出来る点であり、複雑な関数空間の位相を取り扱う関数解析の議論においては頻繁に用いられる。点列は、距離空間に代表される第一可算空間における収束の問題を扱うのに十分有効であるが、関数解析学における弱位相、弱 $*$-位相のような第一可算性のない位相における収束の問題を扱う際、必ずしも十分ではない。しかし点列の収束をネットの収束に一般化することで、位相空間の可算性に関わらず点列による収束の議論と全く同様の議論が有効になる。また、ネットの概念を用いればある種の命題の証明がほとんど自明化されることもある。ネットはフィルターと同値な概念であり、同様にフィルターによる位相空間論も展開されるが、こちらは集合論の議論において用いられることが多い。本稿においてはネットによる閉性、連続性、Hausdorff 性、コンパクト性などの基本的な位相的性質の特徴付けを行う。また点列との対比のため可算性のある位相空間において、それらの点列による特徴付けを、実際に位相空間の可算性を用いて行う。そして最後にネットにより比較的容易な証明が可能であるTychonoff の定理を示す。 【第II部・フィルター】 本稿においては、フィルターの収束を用いた位相空間論の基本的議論を説明する。位相空間におけるフィルターは単純に述べれば点列を抽象化した概念である。位相空間論においてフィルターを用いるメリットは、位相的性質を収束を中心に扱うことと、超フィルターという強力な概念を駆使することで、収束に関わる性質(特に Hausdorff性 やコンパクト性)を上手く扱えることである。抽象的な位相空間を取り扱う一般位相の議論においては頻繁に用いられる。フィルターはネットと同値な概念であり、同様にネットによる位相空間論も展開されるが、こちらは関数解析の議論において用いられることが多い。本稿においてはフィルターによるコンパクト性やHausdorff 性などの基本的な位相的性質の特徴づけを行い、フィルターにより比較的容易な証明が可能であるTychonoff の定理を示すことを目標とする。
17時間前
位相空間論の表紙
位相空間論
このテキストでは、現代数学のどの方面に進むにあたっても必要となる位相空間論の基本事項を、証明をつけた形で解説する。読者には、集合と写像の言葉への慣れを期待する。たとえば、和集合・共通部分などの集合の操作や、全射・単射・像・逆像などの概念には親しんでいるものとする。さらに、具体例を理解するためには、連続性の $\varepsilon$-$\delta$ 論法を用いた定義や、数列の収束の定義、実数の基本性質などを理解していることが望ましい。 現代数学では、点の集まりとしての集合に構造を付加することにより、多彩な概念を構成していく。例えば、代数学においては、集合に加法や乗法などの演算という構造を付加して群、環、体などといった概念を考える。位相空間は、集合にある種の構造を付加することで、写像の連続性や点列の収束など、ある種の「近さ」にまつわる議論を可能にしたものである。つまり、端的に言えば、位相空間とは「近さ」が定義される場所である。 座標平面 $\mathbb{R}^2$ の中には、我々が慣れ親しんだ数多くの図形、たとえば、線分、円、三角形、四角形がある。こうした図形には、自然に「近さ」の概念があると考えられるが、実際にこれらの図形は $\mathbb{R}^2$ からの相対位相という自然な方法で、位相空間とみなすことができる。しかし、図形を位相空間とみなすことは、同時に「近さ」以外の要素を捨象することでもある。その結果として、通常では同じとは思えない図形が、位相空間として同一(正式な用語では「同相」)となることがある。実際、いま述べた円、三角形、四角形はすべて互いに同相である。しかし、線分はこれらと同相ではない。このように、位相空間の立場では図形がかなり「粗く」分類されることになるが、この立場での図形の分類を目指す学問が位相幾何学である。 上に述べたことからも、位相空間論は幾何学の基礎として重要なことは推察されると思うが、位相空間論の重要性は幾何学に留まるものではない。数学の様々な分野で、直観的には図形とは思えない集合に位相空間の構造を与えることで、ある種の図形的考察が可能となる。一つ例を挙げれば、関数解析学においては、関数のなす集合に位相空間としての構造を与えることで「関数空間」をつくり、関数を点とする一種の図形として取り扱うことで解析学の問題解決に豊富な道具を提供している。
18時間前
微分方程式の初歩の表紙
微分方程式の初歩
常微分方程式の初期値問題から、Sobolev空間版Gaussの発散定理、楕円型正則性、調和関数、Laplace–Poisson方程式、波動方程式へ進む。
19時間前
Hilbert空間上の作用素論の表紙
Hilbert空間上の作用素論
有界・非有界作用素、射影値測度、スペクトル定理、極分解、直和・テンソル積、コンパクト作用素、摂動論、作用素イデアル、von Neumann環、解析ベクトルを体系的に扱う。
19時間前
複素解析の基礎の表紙
複素解析の基礎
複素微分と正則関数、冪級数、複素線積分、Cauchy理論、Laurent展開と留数、複素Banach空間値正則関数までを扱う。
20時間前
Euclid空間における微積分とベクトル解析の表紙
Euclid空間における微積分とベクトル解析
Euclid空間の多変数微分法から、Euclid空間内の多様体、微分形式、計量、Riemann測度、向き、Stokesの定理までを体系的に扱う。
20時間前
測度と積分の表紙
測度と積分
測度空間論の基礎用語から、測度と積分の基本定理、$L^p$ 空間の完備性と双対性、局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度とLebesgue測度、Bochner積分へ進む。
21時間前
位相線形空間と関数解析の基礎の表紙
位相線形空間と関数解析の基礎
ノルムと内積から、セミノルム位相・汎弱位相、Hahn–Banachの定理、Krein–Milmanの端点定理、Fréchet空間と関数解析の基本定理へ進む。
1日前
グラフ理論入門の表紙
グラフ理論入門
グラフ理論について基礎的な内容を解説する。
20231015
加法的整数論の表紙
加法的整数論
加法的整数論は、整数や自然数などの加法的な性質について扱う理論である。すなわち $\mathbb{Z}$, $\mathbb{N}$, より一般にある加法半群 $G$ の要素 $g$ を、$G$ の部分集合 $A_1, A_2, \ldots, A_k$ の要素の和 $$g=a_1+a_2+\ldots +a_k\ (a_i\in A_i)$$ としてあらわす方法について扱う理論である。 すべての自然数が$4$つの平方数の和であらわされるというLagrangeの定理、 $4$ 以上のすべての偶数が$2$つの素数の和であらわされるというGoldbachの予想、 与えられた数 $n$ 以下のすべての整数が、ある部分集合 $A$ について、一定の個数以下の $A$ の要素の和であらわされるとき、 そのような部分集合 $A$ で要素の数が可能な限り少ないものをもとめる郵便切手の問題などが加法的整数論で取り扱われる。
2023929

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