ベクトル(vector)とは、体 $K$ 上のベクトル空間の元のことであり、和とスカラー倍の計算ができることがその本質である。高校数学で扱う平面・空間の矢印のベクトルは、平行移動で重なる有向線分を同一視した同値類として定義でき、矢印をつなぐ和と伸縮による実数倍は代表のとり方によらずに定まり、その全体は $\mathbb{R}^2$・$\mathbb{R}^3$ と同型な実ベクトル空間になる。基底を1組選ぶとベクトルは座標(成分)の列とただ1通りに対応し、基底を行列 $P$ で取り替えると座標は $P^{-1}$ で変換される。数ベクトル・関数・多項式・複素数なども、ベクトル空間の元としてベクトルと呼ばれる。
3時間前
2次関数(quadratic function)とは、零でない実対称行列 $A$、ベクトル $b$、実数 $c$ によって $f(x)=x^{\top}Ax+b^{\top}x+c$ と書ける $\mathbb{R}^n$ 上の関数のことで、$n=1$ の場合が $ax^2+bx+c$($a\neq0$)である。$2Ap=-b$ となる $p$ があれば $f(x)=(x-p)^{\top}A(x-p)+f(p)$ と平方完成でき、$f$ が最小値をもつことは $A$ が半正定値で $b$ が $A$ の像に入ることと同値で、最小点がただ1つであることは $A$ が正定値であることと同値になる。また $f$ が凸関数であることは $A$ が半正定値であることと同値である。最小二乗法や Cauchy–Schwarz の不等式の判別式による証明は、2次関数の最小値の問題として理解できる。
3時間前
2次方程式(quadratic equation)とは、体 $K$ の元 $a\neq0$、$b$、$c$ を係数とする方程式 $ax^2+bx+c=0$ のことである。$K$ の標数が $2$ でなければ、平方完成により解は $\delta^2=b^2-4ac$ となる $\delta$ を使って $(-b\pm\delta)/(2a)$ と表され、$K$ に解をもつことと判別式 $b^2-4ac$ が $K$ の元の平方であることが同値になる。標数 $2$ では $2a=0$ のため解の公式が使えず、$b\neq0$ なら $y^2+y=t$ の形に帰着し、有限体ではトレースで解の有無が決まる。既約な2次方程式の解を添加すると2次拡大が得られ、標数が $2$ でない体の2次拡大は平方類 $K^\times/(K^\times)^2$ の単位元以外の元と1対1に対応する。
3時間前
双曲幾何学(hyperbolic geometry)とは、Euclid 幾何の平行線公準を「直線の外の 1 点を通る平行線が 2 本以上ある」に置きかえた幾何で、上半平面に長さ $ds=\sqrt{dx^2+dy^2}/y$ を入れた双曲平面がその代表的なモデルである。そこでは 2 点を結ぶ最短の道(双曲直線)は実軸に中心をもつ半円か縦の半直線で、距離は $\cosh d=1+|z-w|^2/(2\operatorname{Im}z\operatorname{Im}w)$ で与えられ、実数係数の 1 次分数変換が長さを保つ。Gauss 曲率はいたるところ $-1$ で、三角形の内角の和は $\pi$ より小さく、余弦定理は双曲線関数で書かれる。
3時間前
Gauss曲率(Gaussian curvature)とは、$\mathbb R^3$ の曲面の各点で単位法ベクトルの変化を表す形作用素の行列式、つまり 2 つの主曲率の積 $K=\kappa_1\kappa_2$ のことで、第 1・第 2 基本形式の係数から $K=(LN-M^2)/(EG-F^2)$ と計算できる。球面では正、円柱では $0$、鞍の形では負になり、その絶対値は単位法ベクトルが単位球面に描く像の面積の拡大率に等しい。Gauss の驚異の定理により $K$ は曲面の上で測る長さ(第 1 基本形式)だけで決まり、そのため球面の地図は角と面積を同時には保てない。Gauss–Bonnet の定理、断面曲率、双曲幾何学への出発点である。
4時間前
曲率(曲線)(curvature of a curve)とは、Euclid 空間の正則曲線を弧長 $s$ で表したときの単位接ベクトル $T$ の変化の速さ $\kappa=|dT/ds|$ のことで、直線では $0$、半径 $r$ の円では $1/r$ になる。一般の径数では $\kappa=|\gamma'\times\gamma''|/|\gamma'|^3$ などの式で計算でき、平面曲線では左右の曲がり方を区別する符号つき曲率が、曲線を回転と平行移動を除いてただ 1 つに決める。空間曲線では曲率に捩率を加えた Frenet–Serret の公式が成り立ち、曲率が正なら曲率と捩率の組が曲線を合同を除いて決める。曲面の主曲率や測地曲率、Riemann 多様体の曲率へ続く出発点である。
4時間前
標準予想(standard conjectures)とは、Grothendieck が定式化した、滑らかな射影多様体の代数的サイクルと Weil コホモロジーについての予想の総称である。対角線の Künneth 成分が代数的であるという Künneth 型($\mathrm{C}$)、Hard Lefschetz の逆写像を与える作用素 $\Lambda$ が代数的であるという Lefschetz 型($\mathrm{B}$)、原始的な代数的類の上の交点形式が正定値であるという Hodge 型、ホモロジー同値と数値的同値の一致($\mathrm{D}$)からなる。$\mathbb{C}$ 上では Hodge 型が成り立ち、$\mathrm{B}$ から $\mathrm{D}$ が従う。一般の場合は未解決で、純粋モチーフの理論の基礎をなす。
4時間前
モチーフ(motive)とは、Grothendieck が滑らかな射影多様体の普遍的なコホモロジーとして構想した対象で、多様体 $X$、対応のなす代数の冪等元 $p$、整数 $m$ の三つ組 $(X,p,m)$ を対象とし、$X\times Y$ 上の代数的サイクルを適切な同値関係で割った対応を射とする圏の対象である。有理同値で割ると Chow 群を射の空間として復元する Chow モチーフの圏になり、射影直線のモチーフは $\mathbb{1}\oplus\mathbb{L}$ と分かれる。数値的同値で割った圏は Jannsen の定理により半単純アーベル圏であり、Weil コホモロジーとの関係は標準予想に集約される。
4時間前
Hodgeフィルトレーション(Hodge filtration)とは、重さ $n$ の Hodge 構造の複素化で Hodge 成分を束ねた減少フィルトレーション $F^p=\bigoplus_{p'\ge p}H^{p',n-p'}$、および滑らかなスキームの代数的 de Rham コホモロジーで、次数 $p$ 以上の微分形式からなる部分複体の超コホモロジーの像として定まるフィルトレーションのことである。$\mathbb{C}$ 上の滑らかな射影多様体では両者が比較同型で一致し、Hodge 構造は $F^\bullet$ が複素共役に関して $n$ 反対であることとして言い直される。代数的な $F^p$ は定義体上で定まり、引き戻しとカップ積に両立し、Poincaré 双対のもとで $F^p$ の直交補空間は $F^{d-p+1}$ になる。周期写像や混合 Hodge 構造の基礎である。
4時間前
特殊線形群(special linear group)とは、可換環 $R$ 上の行列式が $1$ の $n$ 次正方行列のなす群 $\mathrm{SL}_n(R)$ のことで、行列式 $\det\colon\mathrm{GL}_n(R)\to R^\times$ の核として一般線形群の正規部分群になる。体の上では基本行列 $I+cE_{ij}$ で生成され、中心はスカラー行列 $aI$($a^n=1$)だけからなり、$n\ge3$ または体の元が $4$ 個以上なら自分自身の交換子部分群に等しい完全群である。実数・複素数の上では弧状連結な Lie 群で、図形の体積と向きを保つ 1 次変換の全体として現れ、中心で割った射影特殊線形群は有限単純群の主要な族を与える。
4時間前