本書は、A. Grothendieck が 1956 年 11 月に Chevalley セミナー「Classification des groupes de Lie algébriques」で行った講演「Généralités sur les groupes algébriques affines. Groupes algébriques affines commutatifs」(exposé 4、14 頁)を道案内にして、代数的閉体の上のアフィン代数群の基礎を解説する参考書である。講演は、Borel の線形代数群論を解説する前置きとして、表現の係数からアフィン代数群が線形群に埋め込めることを示し、閉部分群を半不変式で切り出す Chevalley の定理、トーラスと対角化可能群の指標による記述、元の Jordan 分解が閉部分群にとどまるという定理、可換群の直積分解を証明した。 本書は翻訳ではない。表現と行列係数、閉部分群、対角化可能群、半単純元と単冪元、可換アフィン代数群、という主題ごとに五つの章を立て、現代の記号と言葉で書き直した。各頁は、その頁で示すこと、背景と動機、定義と準備、主結果と証明、例と反例、その後の発展、原論文との対応表の同じ形で書く。 原論文は「明らかに」「よく知られているように」で多くの段を済ませている。本書はその段を補って閉じ、第 1〜5 章の 51 個の主結果を、本書の中で証明し切れたもの(完結、27 件)、引用した定理に依るもの(条件付き、22 件)、証明を閉じられなかったもの(未完結、2 件)に分けて札で示す。トーラスの正則関数と閉部分群の記述などは、原論文と別の経路で書いて完結にした。原論文が黙って使う仮定は本書が足した仮定として明示し、印字のままでは成り立たない主張は、反例と正しい形を添えて訂正した形で述べる。正規部分群を核とする表現の証明の一段は偽で、反例を示して証明を立て直した。正標数の可換単冪群について原論文が Chevalley に帰属させる分類は、証明も出典も無いので未完結とした。 読むには、線形代数の Jordan 分解、有限生成アーベル群、アフィン代数多様体と座標環の初歩が要る。原論文は群スキームの言葉を使わず、代数的閉体の点の集合として代数群を扱い、本書もこの枠組みで読む。要点は第 0 章に、頁ごとに要る前提の対応表と読む順序の案は「本書の読み方」に、記号と行列の規約、本書が足した仮定、原論文の引き方は「記号と約束」にまとめた。各章で何を扱い、原論文の何を補い、どこを直したかは、目次の各章の説明に書いた。
本書を読むのに要る分野を一覧にし、要点と本書での使いどころを添える章である。代数的閉体上のアフィン代数的集合、座標環と零点定理、Zariski 位相、代数群と閉部分群、単位成分と次元(0-2)、線形代数の Jordan 分解と同時対角化、外冪、指標の一次独立性、半単純加群、有限生成アーベル群と有限アーベル群の双対、冪零作用素の指数と対数(0-3)の順に並べる。原論文は 1956 年の講演で、群スキームの言葉を使わず、代数的閉体の点の集合として代数群を扱う。本書もこの枠組みで読み、後代の群スキームとの違いは各頁の「その後の発展」に書く。頁ごとの前提の対応表と読む順序は 0-1 に、記号と行列の規約、本書が足した仮定、原論文の引き方と誤植の読み方、状態札の意味は 0-4 にまとめる。
原論文 n° 1 に当たり、群の表現の係数を群の上の関数として扱い、アフィン代数群が一般線形群の閉部分群として実現できることを示す章である。1-1 は係数の平行移動の公式、有限次元の表現とその係数空間が同じ組成因子をもつこと、有理性が係数の正則性で判定できること、正則関数の平行移動が有限次元の空間に収まること(補題 2)を示す。原論文が「左右の平行移動の張る空間」と書く係数空間は、左右の移動の和ではなく両側の移動の張る空間と読むべきことを、一般線形群の例で確かめた。1-2 は、すべての有理表現が半単純であることが正則関数の代数の半単純性と同値であることと、アフィン代数的集合である代数群は線形群に同型であること(命題 1)を証明する。原論文が黙って使う閉埋め込みの段は補った。アフィンとは限らない代数群の場合は同じセミナーの別の講演に委ねられており、引用として分けて書く。
原論文 n° 2 に当たり、閉部分群を正則関数の半不変性で切り出す Chevalley の定理と、その系である「閉正規部分群はある有理表現の核になる」を扱う章である。2-1 は定理を、閉部分群のイデアルの生成元の移動が張る有限次元の空間と、その外冪の一本の直線の固定群に帰着して証明する。原論文の証明は外冪をとる空間を取り違え、行列成分の添字の規約が二つの式で食い違うので、外冪を全体の空間でとり、半不変式を反傾表現の行列成分に取り替えて閉じた。2-2 は系を扱う。原論文の証明の「部分群が正規だから重さの空間が群全体で不変」という段は偽で、単項行列の群がその反例になることを示し、重さ空間の直和分解と区分対角な自己準同型への作用で証明を立て直した。群が連結または可換なら原論文の段も通る。
原論文 n° 3 に当たり、乗法群の積であるトーラスと、その閉部分群に同型な対角化可能群を、有理指標の群で記述する章である。3-1 はトーラスの正則関数の代数が指標を基底にもち、指標がちょうど単項式であることから、有理表現が対角化できること、閉部分群が指標の核の共通部分であること、対角化可能群がトーラスと標数と素な位数の有限アーベル群の積であることを示す。3-2 は対角化可能群と指標群の反変的な対応を扱い、閉部分群と指標群の部分群の対応、部分群の指標群、準同型の群の同型を証明する。原論文が商の構造を定義せずに済ませた段は、像への同一視として明示した。3-3 は有限位数の元が稠密であることと、連結な群の対角化可能な正規部分群が中心に入ることを示す。どの結果でも、標数と素というねじれの制限は点の群の枠組みから来るもので、後代の群スキームの枠では外れる。
原論文 n° 4 に当たり、線形代数の Jordan 分解を代数群の元の分解に持ち上げる章である。4-1 は一つの自己同型の乗法的な Jordan 分解と、単冪性の特徴づけを扱う。正標数では単冪な元は位数が標数の冪の元であり、標数 0 では加法群の有理表現がちょうど冪零な作用素の指数関数で、単冪な元はそのような表現の像に入る。原論文の対数の級数は係数の分母を落としており、補って読んだ。4-2 は、有理準同型が半単純元と単冪元を保つこと、したがって半単純・単冪が実現によらないことを示し、一般線形群の閉部分群が各元の半単純部分と単冪部分を含むという定理 3 を証明する。証明は、元の生成する閉部分群を三角化し、対角部分への準同型の像の有限位数の元が稠密であることに帰着させる。こうして任意のアフィン代数群の元が一意に分解される。
原論文 n° 5 に当たり、可換なアフィン代数群を半単純部分と単冪部分に分け、標数による違いを述べ、正規な可換部分群への共役作用を分解する章である。5-1 は、可換なアフィン代数群が対角化可能群と可換な単冪群の直積であることを示し、標数 0 では可換な単冪群が加法群の積に同型であることを指数と対数で証明する。5-2 は正標数の可換単冪群を扱い、長さ 2 の Witt ベクトルの群が連結 2 次元なのに加法群の積と同型でないことを確かめ、加法群の自己準同型が加法多項式であることを示す。原論文が Chevalley に帰属させる分類と、2 次元の場合の拡大の主張は証明も出典も無く、本書でも閉じない。5-3 は、元の共役が部分群とその商に恒等を誘導すれば中心化することを示し、共役作用の核と像による分解を証明する。原論文の命題の等式は共通部分の記号を落としており、訂正して読んだ。
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