対角化可能群では、位数が有限の元の全体が Zariski 位相で稠密であることを示す。トーラスなら、標数と異なる一つの素数の冪の位数の元だけで足りる。その応用として、連結な代数群の対角化可能な閉正規部分群は中心に含まれることを証明し、連結性や対角化可能性を外すとこれが壊れる例を挙げる。
前提知識: 対角化可能群, 代数的トーラス, 1の冪根, Zariski位相, 代数群の中心
$K$ を代数的閉体、$p$ をその標数指数(標数が $0$ でなければ標数、$0$ なら $1$)とする。対角化可能群は乗法群の積 $K^{*N}$ の対角行列の群 $D(N)$ の閉部分群に同型な代数群、トーラスは $K^{*m}$ に同型な代数群である。正の整数 $n$ について、対角化可能群 $D$ の中の $x^n=e$ となる元の全体を $D_n$ と書く(下の定義)。
本頁の主結果は次の二つである。
原論文 n° 3 は、対角化可能群を有理指標の群で記述し終えたところで(印字 4-07)、Proposition 2 を置く。主張は、対角化可能群の中で $x^n=e$ となる元が各 $n$ について有限個しかなく、それでも $n$ を動かした全体は稠密だ、というものである。証明は、系 2 と、$q$ 冪位数の 1 の冪根の群が $K^*$ の無限部分群で、$K^*$ が 1 次元なので稠密だという事実からの直接の帰結だと一文で述べるだけである。系 2 は、対角化可能群がトーラスと位数が $p$ と素な有限アーベル群の積に同型であるという主張(本書『3-1 トーラスの関数環と閉部分群』)である。
続く系は、連結な代数群の対角化可能な閉正規部分群が中心に入ることを述べる(印字 4-07〜4-08)。原論文の証明は、各 $D_n$ が有限な正規部分群なので、群が連結だから「よく知られた論法で」中心に入り、$D_n$ の和集合が稠密で中心が閉だから結論が出る、という三行である。
この二つは短いが、原論文の後半で繰り返し使われる型の最初の例になっている。対角化可能群の中では有限位数の元が稠密なので、閉集合で書ける性質は有限位数の元で確かめれば足りる。有限位数の元は $x^n=e$ という有限な情報で押さえられ、連結性や位数の議論が効く。原論文はこの型を、閉部分群が各元の半単純部分と単冪部分を含むという Théorème 3 と、トーラスの有限位数の自己同型についての Proposition 5 の系 2 でも使う。
原論文は Proposition 2 の「pour tout entier $n$」の $n$ が正であることを書かない。$n=0$ では $x^0=e$ はすべての元で成り立つので、主張の「有限」が壊れる。本書は $n$ を正の整数と読む(本書が足した仮定)。
主結果に出る群を、本頁の中で定め直しておく。対角化可能群の定義の「部分群」を閉部分群と読むのは本書の読みで、その理由は本書『3-1 トーラスの関数環と閉部分群』と『0-4 記号と約束』にある。
$D(N)\subset\mathrm{GL}(N,K)$ を対角行列の部分群とする。$D(N)$ は $K^{*N}$ に同型で、座標環は Laurent 多項式環 $K[X_1^{\pm1},\dots,X_N^{\pm1}]$ である。代数群 $D$ が対角化可能であるとは、ある $N$ について $D(N)$ の閉部分群に代数群として同型であることをいう(本書が足した仮定の読み:部分群は閉部分群)。代数群 $T$ がトーラスであるとは、ある $m\ge0$ について $K^{*m}$ に代数群として同型であることをいう。トーラスは対角化可能群である。対角化可能群は可換である。
対角化可能群は可換なので、同じ位数の条件を満たす元の全体は部分群になる。
可換な代数群 $D$ と正の整数 $n$ について、$D_n=\{x\in D:x^n=e\}$ とおく。$D$ は可換なので $D_n$ は部分群で、$n\mid n'$ なら $D_n\subset D_{n'}$ である。$\bigcup_{n\ge1}D_n$ は $D$ の位数有限の元の全体である。正の整数 $d$ について、$K^*$ の場合の $D_d$ を $\mu_d$ と書く(位数が $d$ を割る 1 の冪根の群)。素数 $q$ について $\mu_{q^\infty}=\bigcup_k\mu_{q^k}$ とおく。
本頁で使う乗法群の性質は次のとおりで、どれも本書『0-3 線形代数と群の道具』の定理(有限アーベル群の双対)の (1) にある。$\mu_d$ は $X^d-1$ の零点なので高々 $d$ 個の元をもつ。$p\nmid d$ なら $\mu_d$ はちょうど $d$ 個の元をもつ巡回群である。$p\ne1$ なら $K^*$ には $1$ 以外に $p$ 冪位数の元が無く、$d=p^ad'$($p\nmid d'$)なら $\mu_d=\mu_{d'}$ である。とくに $q$ が $p$ と異なる素数なら $|\mu_{q^k}|=q^k$ で、$\mu_{q^\infty}$ は無限集合である。
稠密性は Zariski 位相の意味で言う。アフィン代数的集合 $X$ の部分集合 $S$ の閉包は、$S$ で消える正則関数の共通零点であり、$S$ が稠密であることは、$S$ で消える $X$ 上の正則関数が $0$ だけであることと同じである(本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』の定義(Zariski 位相・既約性・次元))。代数群の同型は射で逆も射なので、閉集合を閉集合に移し、稠密な部分集合を稠密な部分集合に移す。
次の事実は証明せずに引く。1 は本書の頁の主結果で、そこでの札は[完結]である。2 は本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』に集めた代数群の一般論の一つで、出典は Hum75、Bor91 だが、該当箇所は本頁では確認していない。
構造の結果(引用する事実 1)で対角化可能群は具体的な形に書けるので、あとは有限群の部分と乗法群の部分を分けて調べればよい。
$D$ を対角化可能群とする。
段 1(有限性).$D$ は $D(N)$ の閉部分群 $D'$ に同型なので、$D_n$ は $D'_n\subset D(N)_n$ に同型である。$D(N)_n$ は対角成分がすべて $\mu_n$ に属する対角行列の全体 $\mu_n^N$ で、$|\mu_n|\le n$ なので高々 $n^N$ 個の元からなる。ゆえに $D_n$ は有限である。部分群であることは上の定義(位数が n を割る元の部分群)による。
段 2(トーラスの場合).3 を示す。$D\cong K^{*m}$ なので $D=K^{*m}$ としてよい。このとき $D_{q^k}=\mu_{q^k}^m$ で、$\bigcup_kD_{q^k}=\mu_{q^\infty}^m$ である($\mu_{q^k}\subset\mu_{q^{k+1}}$ に注意)。$q\ne p$ なので $\mu_{q^\infty}$ は $K^*$ の無限部分集合であり、本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』の命題(1 次元の場合と積の稠密性)の (2) により $\mu_{q^\infty}^m$ は $K^{*m}$ で稠密である。
段 3(構造への帰着).2 を示す。引用する事実 1 により、$D$ は $E=\mu_{d_1}\times\dots\times\mu_{d_r}\times K^{*m}\subset D(r+m)$ に同型なので、$D=E$ としてよい。$F=\mu_{d_1}\times\dots\times\mu_{d_r}$ とおく。$p$ と異なる素数 $q$ を一つ固定し、$d=d_1\cdots d_r$ とする。$\zeta\in F$、$s\in\mu_{q^k}^m$ について $(\zeta,s)^{dq^k}=e$ なので、
$$\bigcup_{n\ge1}E_n\supset F\times\mu_{q^\infty}^m$$
である。右辺が $E$ で稠密であることを示せば足りる。
段 4(右辺の稠密性).$E$ の正則関数は Laurent 多項式 $P(X_1,\dots,X_r,Y_1,\dots,Y_m)$ の $E$ への制限である。$P$ が $F\times\mu_{q^\infty}^m$ で消えるとする。$\zeta=(\zeta_1,\dots,\zeta_r)\in F$ を固定すると、$Y$ だけの Laurent 多項式 $P_\zeta(Y)=P(\zeta,Y)$ は $\mu_{q^\infty}^m$ で消えるので、段 2 と同じ命題により $K^{*m}$ 全体で消える。すなわち $P$ は $\{\zeta\}\times K^{*m}$ で消える。$\zeta$ は $F$ の任意の元なので $P$ は $E$ で消え、正則関数として $0$ である。ゆえに $F\times\mu_{q^\infty}^m$ で消える $E$ 上の正則関数は $0$ だけで、その閉包は $E$ である。
証明の中で構造の結果を使ったのは段 3 だけである。有限性(段 1)とトーラスの場合(段 2)は、対角化可能群とトーラスの定義から直接出る。段 4 は、有限群の部分が有限個の点からなるので、各点の上の切り口で乗法群の部分の稠密性に帰着するという、変数ごとの議論である。原論文は「$K^*$ は 1 次元なので無限部分集合は稠密」とだけ書き、積の稠密性と有限群の部分の扱いに触れないので、本書が段 2 と段 4 で補った。
原論文の Proposition 2 は「pour tout entier $n$」とし、$n$ の範囲を書かない(印字 4-07)。$n=0$ を許すと $D_0=\{x:x^0=e\}=D$ なので、$D$ が次元 $1$ 以上のトーラスなら $D_0$ は有限でなく、上の定理(有限位数の元の稠密性)の 1 は偽になる。負の $n$ については $D_n=D_{-n}$ なので、正の $n$ に限っても失うものはない。原論文の証明も系の証明も、$D_n$ を位数が $n$ を割る元の群として扱っており、正の整数の場合だけを使っている。本書は $n$ を正の整数と読む(本書が足した仮定)。これは誤植や偽の判定の対象ではなく、原論文の語「entier」の約束の問題である。
トーラスの場合に素数 $q$ の冪だけで足りることは、構造の結果を使わずに閉じた。一方、有限群の因子 $F$ があると、$q$ を $p$ と異なる任意の素数にとれるとは限らない。$q$ の冪で足りるのは $|F|$ が $q$ の冪のときに限る(下の例と反例)。3 がトーラスの場合に限って述べられているのはこの違いに対応する。
稠密性の最初の使い道は、正規部分群が共役でどう動くかの制限である。有限な正規部分群は、群が連結なら共役で動けない。
$G$ を連結な代数群、$D$ を $G$ の閉部分群で、正規であり、誘導された構造で対角化可能群であるものとする。このとき $D$ は $G$ の中心 $Z(G)$ に含まれる。
段 1($D_n$ は有限な正規部分群).正の整数 $n$ を固定する。上の定理(有限位数の元の稠密性)の 1 により $D_n$ は有限である。$g\in G$、$d\in D_n$ について、$D$ は正規なので $gdg^{-1}\in D$ で、$(gdg^{-1})^n=gd^ng^{-1}=e$ だから $gdg^{-1}\in D_n$ である。
段 2(共役の射の切り口).$d\in D_n$ を固定し、$c_d\colon G\to G$、$g\mapsto gdg^{-1}$ とおく。$c_d$ は積と逆元の射の合成なので射であり、段 1 によりその値は有限集合 $D_n$ に入る。代数的集合の点は閉集合で(アフィンな開集合の中で座標の方程式で定まる)、射は連続なので、各 $d'\in D_n$ について $C_{d'}=c_d^{-1}(d')$ は $G$ の閉集合である。$G$ は有限個の互いに交わらない閉集合 $C_{d'}$($d'\in D_n$)の和であり、各 $C_{d'}$ の補集合は残りの有限個の閉集合の和なので閉、すなわち各 $C_{d'}$ は開かつ閉である。
段 3(連結性から定値).$G$ は連結なので、空でない開かつ閉な部分集合は $G$ 自身である。$e\in C_d$ なので $C_d=G$、すなわちすべての $g\in G$ で $gdg^{-1}=d$ である。ゆえに $D_n\subset Z(G)$ で、$n$ は任意なので $\bigcup_nD_n\subset Z(G)$ である。
段 4(稠密性で閉じる).引用する事実 2 により $Z(G)$ は $G$ の閉集合で、$Z(G)\cap D$ は $D$ の閉集合である。これは $\bigcup_nD_n$ を含み、上の定理(有限位数の元の稠密性)の 2 により $\bigcup_nD_n$ は $D$ で稠密なので、$Z(G)\cap D=D$、すなわち $D\subset Z(G)$ である。
段 2・段 3 が $D_n$ について使ったのは、それが有限で共役で保たれることだけである。対角化可能性が本当に効くのは段 4 で、そうした有限な部分群が、和集合が $D$ で稠密になるほど多くあることを保証する。
原論文は系の証明で、有限な正規部分群 $D_n$ が中心に入ることを、$G$ が連結なので「よく知られた論法により」と書くだけで済ませる(印字 4-07)。本書は段 2・段 3 で、共役の射 $c_d$ の切り口が $G$ を有限個の開かつ閉な集合に分けるという形で閉じた。同じことを、連結な代数群は既約であり(本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』の定理(閉部分群と単位成分の基本)の (3))、既約な集合の射による像は既約で、既約な有限集合は 1 点である、と言うこともできる。こちらは第 0 章の一般論を二つ余分に引く。本書の経路は、射が連続であることと点が閉であることしか使わない。
これで、対角化可能群の中では有限位数の元が稠密であり、閉な条件(ここでは中心に入ること)は有限位数の元で確かめれば足りる、という型が一度使われた。原論文はこの型をあと二度使う。閉部分群が各元の半単純部分と単冪部分を含むという Théorème 3 では、元の生成する閉部分群を三角化し、対角部分への準同型の像の有限位数の元で確かめる(本書『4-2 準同型と閉部分群と Jordan 分解』の主結果(閉部分群は半単純部分と単冪部分を含む))。トーラスの有限位数の自己同型についての Proposition 5 の系 2 では、自己同型で固定される点の集合が閉であることと、固定されることを有限位数の元で確かめることを組み合わせる(本書『5-3 共役作用の分解』。本書はそこで、稠密性を経ない別の証明も与える)。
まず小さな対角化可能群で $D_n$ を書き出し、主結果 1 の 2 と 3 の違いを見る。
$d$ を $p$ と素な正の整数とし、$D=\mu_d\times K^*\subset D(2)$ とする。正の整数 $n$ について $D_n=(\mu_d\cap\mu_n)\times\mu_n=\mu_{\gcd(d,n)}\times\mu_n$ で、$\mu_n$ は $n$ の $p$ と素な部分と同じ個数の元をもつので、$D_n$ は有限である。$n$ をすべて動かすと $\bigcup_nD_n=\mu_d\times\mu_\infty$($\mu_\infty$ は $K^*$ の 1 の冪根の全体)で、上の定理(有限位数の元の稠密性)の 2 のとおり $D$ で稠密である。一方、$p$ と異なる素数 $q$ の冪だけを動かすと、$d$ を割る最大の $q$ の冪を $d_q$ として $\bigcup_kD_{q^k}=\mu_{d_q}\times\mu_{q^\infty}$ である。その閉包は $\mu_{d_q}\times K^*$ である。実際、有限個の閉集合 $\{\zeta\}\times K^*$($\zeta\in\mu_{d_q}$)の和なので閉で、各切り口の上では証明の段 4 と同じく $\mu_{q^\infty}$ が $K^*$ で稠密だからである。したがって $q$ の冪だけで稠密になるのは $d_q=d$、すなわち $d$ が $q$ の冪のときに限る。
上の定理(有限位数の元の稠密性)の 3 から、$D$ がトーラスであるという仮定を外す。$\ell$ を $p$ と異なる素数とし、$D=\mu_\ell\subset K^*$(位数 $\ell$ の巡回群で、対角化可能群)とする。$q$ を $p$ とも $\ell$ とも異なる素数とすると、$\zeta\in D_{q^k}$ は $\zeta^\ell=1$ と $\zeta^{q^k}=1$ を満たし、$\gcd(\ell,q^k)=1$ なので $\zeta=1$ である。ゆえに $\bigcup_kD_{q^k}=\{1\}$ で、これは閉集合(点)であり $D$ と異なるので、稠密でない。すべての $n$ を動かせば $D_\ell=D$ なので、2 は成り立つ。
上の定理(有限位数の元の稠密性)の 3 から、$q\ne p$ という仮定を外す。$p\ne1$ とし、$D=K^*$、$q=p$ とする。$K^*$ には $1$ 以外に $p$ 冪位数の元が無い(本書『0-3 線形代数と群の道具』の定理(正標数の二項定理)の (3))ので、$D_{p^k}=\{1\}$ で、$\bigcup_kD_{p^k}=\{1\}$ は $K^*$ で稠密でない。証明で壊れるのは段 2 の「$\mu_{q^\infty}$ は無限」である。点の群の枠では、$x^p=1$ の定める群は一点で、被約でない構造は見えない(本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』の注意(点の枠組みで何が見えなくなるか))。
次の二つは主結果 2 の仮定を一つずつ外す。どちらも群の共役を行列で直接計算できる。
上の定理(対角化可能な正規部分群は中心的)から、$G$ が連結であるという仮定を外す。$G\subset\mathrm{GL}(2,K)$ を単項行列の群 $\{\mathrm{diag}(s,s^{-1})\}\cup\bigl\{\begin{pmatrix}0&r\\r^{-1}&0\end{pmatrix}\bigr\}$($s,r\in K^*$)とする。本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』の例(単項行列の群と単位成分)のとおり、$G$ は閉部分群で、対角部分 $H=\{\mathrm{diag}(s,s^{-1})\}$ は指数 $2$ の閉正規部分群、$G=H\sqcup wH$($w=\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix}$)で、$G$ は連結でない。この群は本書『2-2 正規部分群を核とする表現』の反例「単項行列の群と対角部分:原論文の構成の核は部分群より小さい」と同じものである。$D=H$ は $D(2)$ の閉部分群で乗法群に同型なので、対角化可能(トーラス)である。ところが $w\,\mathrm{diag}(s,s^{-1})\,w^{-1}=\mathrm{diag}(s^{-1},s)$ なので、$s^2\ne1$ の元は中心に入らない。証明がどこで壊れるかも見える。$q$ を $p$ と異なる奇素数、$\zeta$ を 1 の原始 $q$ 乗根とし、$d=\mathrm{diag}(\zeta,\zeta^{-1})\in D_q$ をとる。$\zeta^2\ne1$ なので $d\ne d^{-1}$ で、共役の射 $c_d$ は $H$ の上で $d$、$wH$ の上で $d^{-1}$ をとる。証明の段 2 の分解は $G=C_d\sqcup C_{d^{-1}}=H\sqcup wH$ で、二つとも空でないので、段 3 の「連結なので $C_d=G$」が使えない。
上の定理(対角化可能な正規部分群は中心的)から、$D$ が対角化可能であるという仮定を外す。$G=B(2)$ を $2$ 次の上三角行列の群、$N=U(2)=\bigl\{\begin{pmatrix}1&b\\0&1\end{pmatrix}\bigr\}$ とする。$G$ は代数的集合として $K^*\times K^*\times K$ に同型で連結である(本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』の定理(Zariski 位相の基本)の (1)(3))。上三角行列の積の対角部分は対角部分の積なので、対角部分をとる写像 $G\to D(2)$ は準同型で、その核 $N$ は閉正規部分群である。共役を計算すると(行列成分 $a,b',c$ は上の定理の証明の $D_n$ の元 $d$ とは無関係の記号である)
$$\begin{pmatrix}a&c\\0&b'\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1&b\\0&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a&c\\0&b'\end{pmatrix}^{-1}=\begin{pmatrix}1&ab/b'\\0&1\end{pmatrix}$$
で、$a\ne b'$、$b\ne0$ なら元は動くので、$N$ は中心に含まれない。$N$ は加法群 $K$ に $b$ で同型で、対角化可能でない。実際、$K$ から $D(M)$ の閉部分群への有理準同型 $\varphi$ があれば、各座標 $X_i\circ\varphi$ は $K$ から $K^*$ への有理準同型、すなわち $K$ の上で零点をもたない多項式で、$K$ は代数的閉なので定数であり、$0$ での値から $1$ である。ゆえに $\varphi$ は自明で、同型にはなりえない。証明で壊れるのは段 1 と段 4 である。標数 $0$ では $N_n=\{e\}$ で、有限位数の元は単位元だけなので稠密でない。$p\ne1$ では $N_p=N$ で、$N_n$ が有限という段 1 がすでに成り立たない。
以下は後代の結果の紹介である(本書は文献を開いて確かめていない)。
本頁が対応する原論文は Gro56 の n° 3 の末尾である。
| 本頁 | 原論文 | 印字頁 |
|---|---|---|
| 定義(対角化可能群とトーラス) | n° 3 冒頭の定義 | 4-05 |
| 定義(位数が n を割る元の部分群) | Proposition 2 の主張の集合、系の証明の $D_n$ | 4-07 |
| 定理(有限位数の元の稠密性)、注意(整数を正と読むこと) | Proposition 2 とその証明 | 4-07 |
| 定理(対角化可能な正規部分群は中心的)、注意(原論文の「よく知られた論法」) | Proposition 2 の系とその証明 | 4-07〜4-08 |
| 引用する事実 1(対角化可能群の構造) | n° 3 の系 2 | 4-06 |
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