0-1 本書の読み方

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

本書の目的と原論文の位置づけ、本書の方針、章立て(第 0〜5 章、全 16 頁)と各章の要点、頁ごとに要る前提の対応表、読む順序の案、状態札の読み方と本書全体の集計、第 5 巻『Chern 類と離散群の線形表現』・第 6 巻『交叉理論の基本性質』との関係をまとめる。分野ごとの要点は本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』と本書『0-3 線形代数と群の道具』に、全頁に共通する記号、行列の規約、本書が足した仮定、原論文の引き方と誤植の読み方は本書『0-4 記号と約束』に分けて置く。

本書の使い方

本書は、A. Grothendieck が 1956 年 11 月 26 日に Chevalley セミナー「Classification des groupes de Lie algébriques」(パリ高等師範学校、1956/57 年度)で行った講演「Généralités sur les groupes algébriques affines. Groupes algébriques affines commutatifs」(exposé 4、14 頁。本書では Gro56 と引く)を道案内にして、代数的閉体の上のアフィン代数群の基礎を主題ごとに解説する。講演は冒頭で、これからの講演の目的を Borel の論文 Bor56(1956 年)の結果の解説だと述べ、その前置きとして一般論を整える。表現の係数を群の上の関数として扱い、アフィン代数群が一般線形群の閉部分群として実現できること(n° 1)、閉部分群が正則関数の半不変性で切り出せるという Chevalley の定理(n° 2)、トーラスと対角化可能群の指標による記述(n° 3)、元の Jordan 分解が閉部分群にとどまるという定理(n° 4)、可換なアフィン代数群が半単純部分と単冪部分の直積に分かれること(n° 5)を示す。講演の掲載巻は同じセミナーの第 1 巻 Che58 で、原論文が引く第 1 講演 Car56 と第 3 講演 Laz56 も同じ巻にある。
本書は原論文の翻訳ではない。原論文の n° 1〜n° 5 に一つずつ章を当て、前提知識の第 0 章を加えて 6 章 16 頁とした。第 1 章以後の各頁は、その頁で示すこと、背景と動機、定義と準備、主結果と証明、例と反例、その後の発展、原論文との対応表、という同じ形で書いてある。「この頁で示すこと」には主結果の名前と原論文の番号、状態札が並び、「定義と準備」の中の「引用する事実」には、その頁が証明せずに使う事実が、要点を置いた第 0 章の頁とともに列挙してある。
本書の方針は四つある。第一に、原論文が「明らかに」「よく知られているように」「すぐ確かめられる」で済ませた段を補って閉じる。有理性が係数の正則性で判定できること(『1-1』)、Proposition 1 の閉埋め込みの段(『1-2』)、有限位数の元の集合の積の稠密性(『3-3』)、補題 3 で対角部分が半単純部分になること(『4-2』)、Proposition 5 の系 1 を定理 3・4 に頼らずに示す段(『5-3』)などがそれに当たる。第二に、枠組みを点の群に固定する。原論文は群スキームの言葉を使わず、代数的閉体の点の集合として代数群を扱う。本書もこの枠組みで読み、後代の群スキームとの違いは各頁の「その後の発展」に書く。第三に、原論文が黙って使う仮定は、本書が足した仮定として明示する(五つある。下の「状態札の読み方」)。第四に、原論文の主張や証明の段が印字のままでは成り立たないときは、訂正した形を書き、原論文の印字と反例を注意と反例のボックスに置く。
使い方は三通りを想定している。

  1. 最初に通して読む:次の「本書の章立てと各章の要点」で全体の地図をつかみ、第 0 章の三頁は見出しと各ボックスの名前だけ拾う。
  2. 頁を読んでいて分からない語に出会ったら引く:第 0 章の各項目は分野ごとに頁を分け、定義または定理の要点をボックスに書き、本書での使いどころと教科書への案内を付けた。
  3. どこから読むかを決める:本頁の「頁ごとの前提の対応表」と「読む順序の案」を見る。
    用語解説記事へのリンク(アフィン代数群、線形代数群、Zariski位相、行列係数、代数的トーラス、対角化可能群、Jordan–Chevalley分解、単冪群、Witt ベクトル など)は、記事が未作成のものもリンクの形で示してある。定義は各頁の中でも短く繰り返す。

本書の章立てと各章の要点

章ごとに、頁と原論文の対応と要点を挙げる。各頁の「この頁で示すこと」に並ぶ主結果を要約したもので、詳しくは各頁の冒頭を見よ。印字頁は原論文の頁番号 4-01〜4-14 である。

章頁原論文要点
第 0 章 前提知識と読み方0-1〜0-4冒頭の「用語と記号」読み方、アフィン代数的集合と代数群、線形代数と群の道具、記号と約束
第 1 章 表現と行列係数1-1、1-2n° 1(印字 4-01〜4-03)係数の平行移動、補題 1・2、有理性の判定、有理表現の半単純性、アフィン代数群は線形群
第 2 章 閉部分群と Chevalley の定理2-1、2-2n° 2(印字 4-03〜4-04)半不変元と重さ、Théorème 1、正規部分群を核とする表現
第 3 章 対角化可能群3-1〜3-3n° 3(印字 4-05〜4-08)Théorème 2、トーラスの閉部分群、指標群との双対性、有限位数の元の稠密性
第 4 章 半単純元と単冪元4-1、4-2n° 4(印字 4-08〜4-11)乗法的 Jordan 分解、単冪性の特徴づけ、Théorème 3、アフィン代数群の Jordan 分解
第 5 章 可換アフィン代数群5-1〜5-3n° 5(印字 4-12〜4-14)Théorème 4、標数による違い、長さ 2 の Witt ベクトルの群、共役作用の分解

第 1 章は原論文 n° 1 を二頁に分ける。『1-1 行列係数と有限性の補題』は、表現の係数と係数空間を定め、係数の平行移動の公式、表現と係数空間が同じ組成因子をもつこと(Lemme 1)、有理性が係数の正則性で判定できること、正則関数の平行移動が有限次元の空間に収まること(Lemme 2)を示す。原論文が「左右の平行移動の張る空間」と書く係数空間は、左右の移動の和ではなく両側の移動の張る空間と読むべきことを、一般線形群の例で確かめた。Lemme 2 はアフィンの場合と一般の場合を分け、以後の頁は、1-2 の主結果 2(一般の代数群の場合)を除いてアフィンの場合しか使わない。『1-2 アフィン代数群は線形群』は、有理表現がすべて半単純であることが正則関数の代数の半単純性と同値であることと、アフィン代数的集合である代数群は線形群に同型であること(Proposition 1)を証明する。原論文が黙って使う閉埋め込みの段は補い、標数 0 の半単純群についての原論文の例示は、完全可約性の定理を引く条件付きの結果とした。
第 2 章は原論文 n° 2 である。『2-1 半不変式による閉部分群の切り出し』は、閉部分群を有限個の正則関数の半不変性で切り出す Chevalley の定理(Théorème 1)を、イデアルの生成元の移動が張る有限次元の空間と、その外冪の一本の直線の固定群に帰着して証明する。原論文の証明は外冪をとる空間を取り違え、行列成分の添字が二つの式で食い違うので、外冪を全体の空間でとり、半不変式を反傾表現の行列成分に取り替えて閉じた。『2-2 正規部分群を核とする表現』は、閉正規部分群がある有理表現の核になるという Théorème 1 の系を扱う。原論文の証明の「部分群が正規だから重さの空間が群全体で不変」という一段は偽で、単項行列の群がその反例になる。本書は重さ空間の直和分解で証明を立て直し、群が連結または可換なら原論文の段も通ることを示した。
第 3 章は原論文 n° 3 である。『3-1 トーラスの関数環と閉部分群』は、トーラスの正則関数の代数が指標を基底にもち、指標がちょうど単項式であること(Théorème 2)から、有理表現の対角化、閉部分群が指標の核の共通部分であること(系 1)、対角化可能群がトーラスと標数と素な位数の有限アーベル群の積であること(系 2)を示す。Théorème 2 は積の座標環の定理を経由しない経路で、系 1 は Chevalley の定理を経由しない経路で、どちらも原論文と別の道で書き、この頁の四つの主結果をすべて完結にした。原論文の道筋は注意に置いた。『3-2 指標群との双対性』は、対角化可能群と指標群の反変的な対応(系 3・系 4)を扱い、閉部分群と指標群の部分群の対応、部分群の指標群、準同型の群の同型を証明する。原論文が商の構造を定義せずに済ませた段は、指標による像への同一視として明示した。『3-3 有限位数の元の稠密性』は、有限位数の元が稠密であること(Proposition 2)と、連結な群の対角化可能な正規部分群が中心に入ること(その系)を示す。どの頁でも、標数と素というねじれの制限は点の群の枠組みから来る。
第 4 章は原論文 n° 4 である。『4-1 乗法的 Jordan 分解と単冪性』は、一つの自己同型の乗法的 Jordan 分解(Proposition 3)と単冪性の特徴づけ(Proposition 4)を扱う。正標数では単冪な元は位数が標数の冪の元であり、標数 0 では加法群の有理表現がちょうど冪零な作用素の指数関数で与えられる。原論文の対数の級数は係数の分母を落としており、補って読んだ。この頁の主結果はすべて完結で、他の章に依らない。『4-2 準同型と閉部分群と Jordan 分解』は、有理準同型が半単純元と単冪元を保つこと、したがって半単純・単冪が実現によらないことを示し、一般線形群の閉部分群が各元の半単純部分と単冪部分を含むという Théorème 3 を証明する。証明は、元の生成する閉部分群を三角化し、対角部分への準同型の像の有限位数の元が稠密であることに帰着させる。
第 5 章は原論文 n° 5 を三頁に分ける。『5-1 可換群の直積分解と標数 0 の単冪群』は、可換なアフィン代数群が対角化可能群と可換な単冪群の直積であること(Théorème 4)と、標数 0 では可換な単冪群が加法群の積に同型であることを示す。『5-2 正標数の可換単冪群と加法多項式』は、長さ 2 の Witt ベクトルの群が連結 2 次元なのに加法群の積と同型でないことを確かめ、加法群の自己準同型が加法多項式であることを示す。原論文が Chevalley に帰属させる分類と、2 次元の場合の拡大の主張は、証明も出典も無く、本書でも閉じない。『5-3 共役作用の分解』は、元の共役が部分群とその商に恒等を誘導すれば中心化すること(Proposition 5 の系 1)、共役作用の核と像による分解(Proposition 5)、トーラスの有限位数の自己同型(系 2)を証明する。Proposition 5 の等式は共通部分の記号を落としており、訂正して読んだ。系 2 は、原論文と別の経路(可除群による経路)で書いて完結にした。

本書を読むのに要る分野

分野ごとに、本書で要る水準の目安を示す。「◎」は本書の多くの頁で証明の中で使うもの、「○」は一部の章で使うもの、「△」は言明の理解のために触れるだけのものである。

分野主な内容水準の目安主に使う章第 0 章の頁
アフィン代数的集合座標環、Hilbert の基底定理と零点定理、主開集合、積の座標環、射と余射、閉埋め込み◎ 言明を知っていれば証明は引用でよい1・2・3 章0-2
Zariski 位相閉包と稠密性、既約性と連結性、次元、1 次元の集合の閉部分集合◎ 第 3〜5 章の閉条件の議論の土台3・4・5 章0-2
代数群の一般論閉部分群と部分群の閉包、単位成分、準同型の像の閉性、次元の公式、正規化群と中心化群○ 言明を知っていればよい3・4・5 章0-2
線形代数加法的 Jordan 分解、同時三角化と同時対角化、外冪、指標の一次独立性、行列の規約◎ 全章の証明で使う全章0-3、0-4
加群とアーベル群半単純加群と組成因子、有限生成アーベル群の構造定理と単因子、有限アーベル群の双対、可除群○ 第 1 章と第 3 章で使う1・3・5 章0-3
指数と対数冪零作用素の指数・対数と形式的冪級数の恒等式、標数 $p$ の二項定理○ 第 4・5 章で使う4・5 章0-3
群スキームと後代の理論Hopf 代数、対角化可能群スキーム、Witt ベクトル、Dieudonné 加群△ 「その後の発展」で触れるだけ—0-2

第 0 章に頁を設けない事実(標数 0 の半単純群の完全可約性など、一つの主結果だけに使うもの)は、使う頁の「引用する事実」で出典とともに述べる。

頁ごとの前提の対応表

行は本書の頁、列は第 0 章の頁である。「◎」はその頁の証明の中心で使うもの、「○」は一部の段や引用で使うもの、空欄はほとんど使わないものを表す。「頁の前提」の列には、その頁の前に読んでおくとよい本書の頁を番号で挙げた(第 0 章の頁は省く)。括弧内は、その頁から定義や主結果を一つ二つ引くだけのもの、または例にだけ使うものである。

頁アフィン代数的集合と代数群(0-2)線形代数と群の道具(0-3)頁の前提
1-1 行列係数と有限性の補題◎○なし
1-2 アフィン代数群は線形群◎○1-1
2-1 半不変式による閉部分群の切り出し◎◎1-1
2-2 正規部分群を核とする表現○◎2-1(1-1)
3-1 トーラスの関数環と閉部分群○◎1-1(2-2)
3-2 指標群との双対性◎◎3-1(2-2)
3-3 有限位数の元の稠密性◎3-1(2-2)
4-1 乗法的 Jordan 分解と単冪性○◎なし
4-2 準同型と閉部分群と Jordan 分解◎◎4-1、3-2、3-3
5-1 可換群の直積分解と標数 0 の単冪群○◎4-2、4-1
5-2 正標数の可換単冪群と加法多項式○○5-1、4-1(4-2)
5-3 共役作用の分解◎○4-2(3-3)

表から読み取れることを四つ挙げておく。

  • 本書には二本の柱がある。一本は第 1 章から第 3 章への、表現と閉部分群の筋である。原論文はこれを、正則関数の移動の有限性(『1-1』の Lemme 2)から Chevalley の定理(『2-1』)を経て対角化可能群の双対性(『3-2』)に至る一本道で書く。本書の第 3 章は、係数空間の性質(『1-1』の主結果 1〜4)とトーラスの座標環の計算から閉部分群を直接に記述するので、第 2 章を経ない。もう一本は『4-1』の線形代数の筋で、一つの自己同型の Jordan 分解と単冪性の特徴づけは、第 1〜3 章に依らずに読める。
  • 二本の柱は『4-2』で合流する。Théorème 3 は『4-1』の単冪性の特徴づけと『3-3』の有限位数の元の稠密性を組み合わせて得られ、それを実現によらない分解にするところで『3-2』の対角化可能群の表現の対角化が効く。
  • 第 5 章は応用の章で、『5-1』は Théorème 3 から直積分解を、『5-2』は『4-1』の単冪性から正標数の例を、『5-3』は『4-2』の有理準同型の性質から共役作用の分解を引き出す。
  • 0-2 を証明の中心で使うのは、積の座標環と閉埋め込み(第 1 章)、基底定理(『2-1』)、像の閉性と連結群の性質(『3-2』『3-3』『4-2』『5-3』)である。0-3 は全章で使うが、『3-3』だけはほとんど使わない。

読む順序の案

原論文の順序は n° 1 から n° 5 まで一本道だが、単冪性の特徴づけ(n° 4 の前半)は前の節に依らず、可換群の注意(n° 5)の一部は n° 4 の前半だけで読める。本書は三つの道筋を想定している。どの道筋でも、各頁の冒頭の「この頁で示すこと」に主結果と原論文の番号、状態札がまとめてあるので、まずそこだけを全頁通して読み、原論文のどの主張がどこまで閉じているかの全体像を先につかむのも一つの方法である。

表現から Chevalley の定理を経て Jordan 分解へ通して読む

原論文の主定理の一つである Théorème 3(閉部分群は各元の半単純部分と単冪部分を含む)へ向かう道筋である。
『1-1 行列係数と有限性の補題』→『2-1 半不変式による閉部分群の切り出し』→『2-2 正規部分群を核とする表現』→『3-1 トーラスの関数環と閉部分群』→『3-2 指標群との双対性』→『3-3 有限位数の元の稠密性』→『4-1 乗法的 Jordan 分解と単冪性』→『4-2 準同型と閉部分群と Jordan 分解』
『1-2 アフィン代数群は線形群』からこの道筋が使うのは、Proposition 1 の易しい向き(線形代数群は一般線形群の閉集合なのでアフィン代数的集合であり、『1-1』の Lemme 2 のアフィンの場合が当てはまる)だけである。定義の意味を知るために、主結果の言明は先に読んでおくとよい。第 2 章は Chevalley の定理そのものを読むために置いた。『3-1』以後の主結果の証明は第 2 章に依らず、『2-2』の主結果 2(群が可換なら原論文の議論がそのまま通る)は、『3-1』の系 1 と『3-2』の系 3 c) の原論文の道筋を述べる注意でだけ使われる。続けて『5-1 可換群の直積分解と標数 0 の単冪群』へ進めば、Théorème 3 の直接の応用として可換群の直積分解が分かる。

対角化可能群だけを読む

トーラスと対角化可能群の指標による記述を追う道筋である。
『1-1 行列係数と有限性の補題』(主結果 1〜4 だけ)→『3-1 トーラスの関数環と閉部分群』→『3-2 指標群との双対性』→『3-3 有限位数の元の稠密性』
『3-1』は、『1-1』の係数空間と有理性の判定、トーラスの座標環の計算、指標の一次独立性、有限生成アーベル群の単因子など、定義と初等的な代数だけで閉じ、四つの主結果はすべて完結なので、第 2 章より先に読める。閉部分群の記述(『3-1』の系 1)も Chevalley の定理を経ずに示してある。第 2 章には、原論文が系 1 を Chevalley の定理の系から導く道筋(『3-1』の注意)を読むときに戻ればよい。続けて『5-3 共役作用の分解』の主結果 3(トーラスの有限位数の自己同型)へ進めば、可除群だけで閉じる応用が分かる。

可換群と標数による違いを先に読む

標数 0 と正標数で単冪群がどう違うかを先に知りたい読者のための道筋である。
『4-1 乗法的 Jordan 分解と単冪性』→『5-1 可換群の直積分解と標数 0 の単冪群』(主結果 2・3)→『5-2 正標数の可換単冪群と加法多項式』(主結果 2・3)
この三頁のこれらの主結果はすべて完結で、第 1〜3 章に依らない。『5-2』の主結果 1(長さ 2 の Witt ベクトルの群)も、忠実な表現を対角成分が 1 の上三角行列の群の中に書き下すので完結で、『1-2』の Proposition 1 を経ずに読める。その後に『4-2』へ戻り、『5-1』の主結果 1(直積分解)を読むと、可換群の構造が対角化可能群と可換単冪群に帰着する様子が見える。

状態札の読み方

各主結果には、本書の判定として状態札を一つ付ける。[完結]は本書の中で証明し切ったもの、[条件付き:…]は引用した定理に依るもの(何を引用したかを札の中に書く)、[未完結:…]は証明を閉じられなかったもの(何が足りないかを書く)である。原論文に証明が無くても、本書が外部入力を使った証明を与えたものは[条件付き]であり、原論文にも本書にも、外部入力を使った証明も無いものだけが[未完結]である。
本書の基準は厳しい。第 0 章で証明なしに述べる標準的な定理か外部入力を引いた段が一つでもあれば[条件付き]とする。標準的な定理は、本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』の四つの定理、すなわち定理(アフィン代数的集合の基本定理)、定理(Zariski 位相の基本)、定理(閉部分群と単位成分の基本)、定理(準同型の像と次元の公式)である。Hilbert の基底定理、零点定理、積の座標環がテンソル積であること、閉部分集合への制限の全射性、閉埋め込みの判定、座標環の有限生成性、Zariski 位相の一般の場合、部分群の閉包、連結な群の既約性、正規化群・中心化群の閉性、単位成分、準同型の像の閉性、次元の公式などがここに入る。外部入力は、同じセミナーの exposé 1 に委ねられた積の上の正則関数の分解と、標数 0 の半単純群の完全可約性である。[完結]に残るのは、定義、標準的な空間の座標環(本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』の命題(標準的な空間の座標環)と命題(1 次元の場合と積の稠密性)。アフィン空間、トーラス、一般線形群の座標環、そこへの射が座標で与えられること、乗法群と加法群の無限部分集合の積の稠密性)、初等的な代数(本書『0-3 線形代数と群の道具』の全体。線形代数・加群・アーベル群・指数と対数の事実)と、本書の他の頁で[完結]とした主張だけで閉じるものである。標準的な空間の座標環と初等的な代数をどこまで完結の側に数えるかは本書の判断である。条件は伝わる。積の座標環の定理は『1-1』の Lemme 2(アフィンの場合)と『3-2』の系 3 a) で使われ、それを経由する主結果(第 1 章の後半、第 2 章、第 4・5 章の半単純元についての結果の多く)は[条件付き]になる。したがって[条件付き]は証明の欠落を意味せず、何に依って閉じたかを示す札である。
名指しした古典的な前提だけに依るものを[完結]と数える緩い基準をとれば、本書の主結果の札は大きく変わる。下の集計の 51 個のうち、完結 46・条件付き 3・未完結 2 になる。残る条件付きの 3 個は、同じセミナーの第 1 講演に委ねられた一般の代数群の正則関数の分解に依る二つ(『1-1』の主結果 6、『1-2』の主結果 2)と、標数 0 の半単純群の完全可約性に依る一つ(『1-2』の主結果 3)である。
本書が足した仮定は、その仮定の下での判定として、主結果の札と頁の注意の両方に書く。足した仮定は五つある。代数的集合を有限型の分離的な被約スキームの点と読み、有理表現を代数群の射である準同型と読むこと(『0-2』『1-1』『3-1』『4-1』)、対角化可能群の定義の「部分群」を閉部分群と読むこと(『3-1』『3-2』)、Proposition 2 とその系、Proposition 4 の系 2、Théorème 3 の証明に出る整数を正の整数と読むこと(『3-3』『4-2』)、系 3 c) の商を指標による像と同一視すること(『3-2』)、Proposition 5 の系 2 の自己同型を代数群の自己同型と読むこと(『5-3』)である。最後のものは原論文の証明の道のための読みで、本書の主な証明はこれを使わない。五つの文言は本書『0-4 記号と約束』にまとめた。
原論文の主張が印字のままでは成り立たないとき、本書はそれを独立の主結果として立てない。訂正した主張を主結果とし、「この頁で示すこと」では状態札の後に、原論文の形がどの反例で破れるかを一文で添え、原論文の印字と反例をその頁の注意と反例のボックスに書く。本書でこう扱ったのは、『5-3』の Proposition 5 の等式(共通部分の記号が落ちた形)である。『1-1』の主結果 2 の後にも反例を添えたが、これは原論文の句「左右の移動の張る空間」の読みを確定するためのもので、主張の偽の判定ではない(本書『0-4 記号と約束』)。対数の級数の係数の分母(『4-1』)と、Théorème 1 の証明で外冪をとる空間(『2-1』)も印字のままでは成り立たないが、近くの式が正しい形を与えるので誤植として訂正した形で読む。どれも主結果には数えない。原論文の主張ではなく証明の一段が偽であるものが一つある。『2-2』の「部分群が正規だから重さの空間が群全体で不変」という段で、主張は正しいので主結果は系そのもの(証明を替えたもの)とし、原論文の段を注意に、単項行列の群の反例を反例のボックスに置いた。誤植の一覧は本書『0-4 記号と約束』にある。
状態札とは別に、原論文自身の確信度(定理、命題、注意、「明らかに」、「Chevalley が示した」)を各頁の本文で添える。原論文の控えめな所見(『5-2』の、標数による違いの源は $t^{p^k}$ の存在にある「ようだ」という所見)は主結果に数えず、原論文の言い方のまま伝えた。反例も主結果に数えず、各頁の「例と反例」の節に置く。

本書全体の集計

第 1〜5 章の 12 頁の「この頁で示すこと」に並ぶ主結果の状態札を数えた。主結果は合わせて 51 個で、内訳は次のとおりである。上の所見と反例はこの数に含めない。原論文の主張で[偽]の札が付くものは無い。

章頁主結果完結条件付き未完結
第 1 章1-1、1-210460
第 2 章2-1、2-26240
第 3 章3-1〜3-312840
第 4 章4-1、4-212750
第 5 章5-1〜5-311632
合計12 頁5127222

[完結]の 27 個は、係数の平行移動の公式、係数空間の訂正した読みと有限次元性、表現と係数空間の組成因子、有理性の判定(『1-1』)、半不変元の重さ、行列成分の乗法公式(『2-1』)、トーラスの正則関数と指標、トーラスの閉部分群は指標の核、トーラスの閉部分群の構造、対角化可能群の構造(『3-1』の四つすべて)、転置の規則、指標群の形と点の復元、準同型の群と指標群の準同型の群(『3-2』)、有限位数の元の稠密性(『3-3』)、『4-1』の五つすべて、単冪元の生成する閉部分群、三角化と半単純部分(『4-2』)、標数 0 の可換単冪群、正標数の非連結な可換単冪群(『5-1』)、長さ 2 の Witt ベクトルの群、加法群の有理自己準同型、奇妙な 1 径数部分群と非線形な自己同型(『5-2』)、トーラスの有限位数の自己同型(『5-3』)である。どれも定義、標準的な空間の座標環、初等的な代数と、本書で完結とした主張だけで閉じる。『3-1』の Théorème 2 と系 1、『5-3』の系 2 は、原論文と別の経路で書いたことが[完結]の条件で、原論文の道筋は各頁の注意に書いた。『3-1』の系 1 の後の観察と系 2、『3-2』の系 3 b) と系 4、『3-3』の Proposition 2 は、この別の経路の上で[完結]になる。『5-2』の主結果 1 は、忠実な表現を書き下したことが[完結]の条件である。
[条件付き]の 22 個のうち 19 個は、第 0 章の標準的な定理とその伝播に依る。第 1 章では積の座標環・座標環の有限生成性・閉部分集合への制限・閉埋め込みの判定、第 2 章では基底定理と積の座標環、第 3 章では積の座標環(『3-2』の系 3 a))・準同型の像の閉性・閉部分集合への制限の全射性・中心の閉性、第 4 章では系 3 a) を経た積の座標環と準同型の像の閉性とその伝播、第 5 章では像の閉性・正規化群型の条件で定まる集合の閉性・次元の公式・単位成分・積の既約性とその伝播である。残る 3 個は外部入力に依るもので、上の「状態札の読み方」に挙げた。

原論文が閉じていない点

[未完結]は『5-2』の二つで、どちらも原論文 n° 5 の注意にある。一つは「連結 2 次元の可換単冪群で加法群の積に同型でないものは、加法群の加法群による非自明な拡大になる」という主張で、1 次元の連結単冪群が加法群に同型であることと商の構成が要るが、本講演にも本書にも無い。もう一つは、原論文が Chevalley に帰属させる可換単冪群の分類(同種を除いて Witt 群の積に分かれ、次元の組が群で定まる)で、証明も出典の表示も無く、Witt 群や同種の精確な意味も紙面に無い。本書はどちらも「原論文はこう述べる(後者は Chevalley に帰属)」と書き、証明したとは書かない。後代の所在の候補(Serre Ser59、Demazure–Gabriel DG70、Witt Wit37)は『5-2』の「その後の発展」で紹介するが、本書は確かめておらず、主結果を閉じたものとして扱わない。二つの主張の例(長さ 2 の Witt ベクトルの群)は本書が立てたもので、原論文は具体的な例を挙げない。
原論文が証明も出典も書かず、本書が外部入力を名指して引いたものが一つある。『1-2』の、標数 0 の半単純群では正則関数の代数が半単純であるという例示で、Weyl Wey25 の完全可約性と Chevalley Che51、Che55 の代数群と Lie 環の対応を引く[条件付き]の結果とした。本書はこれらの該当箇所を確かめていない。

第 5 巻・第 6 巻との関係

本書は「古典を読む」の第 7 巻である。第 1〜6 巻の原論文(Brauer 群、代数的 de Rham コホモロジー、Chern 類の公理的理論、結晶コホモロジー、離散群の線形表現の Chern 類、交叉理論)と主題は重ならない。線形代数群の言葉を前提として使った巻は二つあり、本書はその基礎の部分を原論文に沿って証明する側に立つ。
第 5 巻『Chern 類と離散群の線形表現』の頁『0-4 位相的 Chern 類・平坦束・Lie 群と代数群』と第 6 巻『交叉理論の基本性質』の頁『0-2 代数多様体・横断性・射影束と旗多様体』は、Borel 群・単冪根基・Chevalley 分解を引用として述べた。本書はそれより手前(有理表現、閉部分群、対角化可能群、Jordan 分解)を扱い、Borel 群は原論文が予告する Borel の論文の話題として「その後の発展」で触れるだけである。第 6 巻の頁『4-3 アフィン束と主束』は上三角群の単冪根基の列を使ったが、本書の Jordan 分解は群の元の分解で、列の構成には使わない。第 5 巻の頁『8-1 Milnor の定理の一般化:簡約群と可換群』と『8-2 構造論による帰着と定理の証明』は、複素代数群を構造論で可換群と半単純群に帰着させた。本書『5-1』の Théorème 4(可換なアフィン代数群は半単純部分と単冪部分の直積)はその構造論の最初の一段に当たる。どの重なりも小さく、本書では「その後の発展」で言及するにとどめる。
原論文の次の講演(同じセミナーの exposé 5〜7、Grothendieck)と、原論文が解説の対象として予告する Borel の論文の構造論は、本書の範囲外である。「その後の発展」で名前だけ挙げ、内容を原論文に帰属させない。

記号と約束

全頁に共通する記号($K$、$p$、$A(X)$、$G_0$、$L_s$、$R_s$、$u_{x,x'}$、$A_u$、$F_{ij}$、$\check u$、$\hat D$、$A^\circ$、$B^\circ$、${}^tu$、$\mu_d$、$D_n$、$x_s$、$x_u$、$G(y)$、$W_2$、$\gamma_g$ など)、行列の列の規約と左右の正則表現の約束、標数指数、本書が足した仮定の文言、原論文の番号と印字頁の引き方、原論文の誤植の読み方の一覧は、本書『0-4 記号と約束』にまとめてある。

参考文献

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アフィン代数群と可換アフィン代数群(Grothendieck「Généralités sur les groupes algébriques affines. Groupes algébriques affines commutatifs」を読む)の表紙
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