5-2 正標数の可換単冪群と加法多項式

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

正標数では、可換な単冪群は加法群の積に限らない。長さ 2 の Witt ベクトルの群でこれを確かめ、加法群の有理自己準同型がちょうど加法多項式であることを示し、原論文がその帰結として挙げる奇妙な 1 径数部分群と線形でない自己同型を証明する。原論文が Chevalley に帰属させる分類と、2 次元の群を拡大とみる主張は、原論文の述べ方を紹介するにとどめ、本書でも閉じない。
前提知識: 単冪群, 加法群, Wittベクトル, 加法多項式, Frobenius写像

この頁で示すこと

$K$ を代数的閉体、$p$ をその標数指数(標数が $0$ でなければ標数、$0$ なら $1$)とする。加法群 $K$ とその積 $K^n$ は、座標環が多項式環の代数群である。アフィン代数群の元が単冪であるとは、ある忠実な実現で像が単冪行列(恒等+冪零)であることをいい、すべての元が単冪な代数群を単冪群という。$p\ne1$ のとき、$S(a,b)=\bigl(a^p+b^p-(a+b)^p\bigr)/p$ は整数係数の多項式で、これを $p$ で還元したものも $S$ と書く(下の定義)。
本頁の主結果は次の五つである。

  1. 長さ 2 の Witt ベクトルの群(原論文 n° 5 の注意の例の具体化):$p\ne1$ とし、$K^2$ に $(a_0,a_1)+(b_0,b_1)=(a_0+b_0,\ a_1+b_1+S(a_0,b_0))$ を入れた群 $W_2$ は、代数的集合としてはアフィン平面 $K^2$ で連結な、可換な単冪アフィン代数群である。$(1,0)$ の位数は $p^2$ なので、$W_2$ はどの $K^n$ とも抽象群としてさえ同型でない。射影 $(a_0,a_1)\mapsto a_0$ により、$W_2$ は $K$ の $K$ による分裂しない拡大である。[完結]
  2. 加法群の有理自己準同型(n° 5 の注意):$p\ne1$ なら、加法群 $K$ の有理自己準同型はちょうど $t\mapsto\sum_{k=0}^ra_kt^{p^k}$($a_k\in K$)の形の写像であり、$p=1$ なら相似 $t\mapsto at$ だけである。[完結]
  3. 奇妙な 1 径数部分群と非線形な自己同型(n° 5 の注意):$p\ne1$ なら、$t\mapsto(t,t^p)$ は加法群 $K$ から代数群 $K^2$ の閉部分群 $\{y=x^p\}$ への同型で、この閉部分群は直線(1 次元の部分空間)でない。$(x,y)\mapsto(x,y+x^p)$ は代数群 $K^2$ の自己同型で、線形でない。[完結]
  4. 連結 2 次元の可換単冪群は拡大(n° 5 の注意、原論文の主張):$p\ne1$ で、連結 2 次元の可換単冪群が $K^2$ に同型でなければ、それは $K$ の $K$ による分裂しない可換な拡大である。[未完結:1 次元の連結な単冪群が加法群に同型であることと、代数群の商の構成が要り、原論文にも本書にも、外部入力を使った証明も無い。$W_2$ については主結果 1 の射影で成り立つ]
  5. Chevalley による可換単冪群の分類(n° 5 の注意、原論文の主張):可換な単冪アフィン代数群は、同種を除いて Witt 群の積として分類され、その次元は順序を除いて群で定まる。[未完結:原論文は Chevalley に帰属させるだけで証明も出典の表示も無く、「Witt 群」「同種を除いて」の意味も紙面に無い。本書は外部入力を特定しない。原論文にも本書にも、外部入力を使った証明も無い]
    主結果 1〜3 は、標準的な空間の座標環(多項式が関数として決まること、座標が多項式の写像は射であること)と正標数の二項定理だけで閉じる。主結果 1 は、$W_2$ の忠実な表現を対角成分が $1$ の上三角行列の群の中に書き下すので、アフィン代数的集合である代数群は線形群であるという一般の命題を経ない。主結果 4・5 は原論文が事実として述べる主張で、本書は「原論文はこう述べる」と紹介し、何が足りないかを書く。証明したとは書かない。

背景と動機

原論文は Théorème 4 で可換なアフィン代数群を半単純部分と単冪部分の直積に分け(本書『5-1 可換群の直積分解と標数 0 の単冪群』)、直後の注意(印字 4-12)で、可換群の研究は対角化可能群と可換な単冪群の研究に帰着すると述べる。対角化可能群は n° 3 で分類済みなので、残るのは可換な単冪群である。
注意の前半は標数 0 の場合で、可換な単冪群は $K^n$ に同型で、とくに連結である(本書『5-1 可換群の直積分解と標数 0 の単冪群』)。後半が本頁の主題である。正標数では可換な単冪群は連結とは限らず(位数 $p$ の巡回群。本書『5-1 可換群の直積分解と標数 0 の単冪群』)、連結で 2 次元であっても $K^n$ に同型とは限らない、と原論文は述べ、括弧の中で、そのときは $K$ の $K$ による非自明なアーベル拡大になると添える。続けて、Chevalley が可換な単冪群を「同種を除いて」Witt 群の積として分類したと書く。証明も出典の表示も無い。
原論文は、標数 0 と正標数のこの差の源が、正標数では加法群 $K$ からそれ自身への有理表現に相似以外のもの、つまり $t\mapsto t^{p^k}$ とその一次結合がある点にある「ようだ」(semble)と控えめに述べ、ほかには無いことは容易に分かると添える。そこから、$K^n$ に奇妙な形の 1 径数部分群が多くあり、代数群としての $K^n$ の自己同型が一般に線形でないことが出る、と結ぶ。
原論文は、連結 2 次元で $K^2$ でない群の具体例を挙げない。本頁の主結果 1 の $W_2$ は本書が立てた例で、原論文の名前「Witt 群」の最も小さい場合に当たる。主結果 2・3 は、原論文が「容易に分かる」「ここから出る」で済ませた段を、本書が証明したものである。

定義と準備

主結果に出る群と多項式を、頁の中で定め直す。単冪の定義は本書『4-1 乗法的 Jordan 分解と単冪性』と本書『4-2 準同型と閉部分群と Jordan 分解』のものと同じである。

単冪群

有限次元の $V$ の自己準同型 $x$ が単冪であるとは、$x-1$ が冪零であることをいう。単冪な自己準同型は可逆である。アフィン代数群 $G$ の元 $x$ が単冪であるとは、$G$ のある忠実な実現、すなわち $G$ から一般線形群 $\mathrm{GL}(V)$ の閉部分群への代数群の同型 $\varphi$ について、$\varphi(x)$ が単冪であることをいう。$G$ のすべての元が単冪なとき、$G$ を単冪群という。

本頁で扱う群はどれも、ある忠実な実現を具体的に書き下し、その実現で単冪であることを確かめる。$p\ne1$ の群については、位数が $p$ の冪であることからも単冪性が出る。こちらはどの実現でも成り立つので、実現によらないという一般の結果(本書『4-2 準同型と閉部分群と Jordan 分解』)に頼らずに済む。

長さ 2 の Witt ベクトルの群

$p\ne1$ とする。整数係数の多項式
$$S(a,b)=\frac{a^p+b^p-(a+b)^p}{p}=-\sum_{k=1}^{p-1}\frac1p\binom pk\,a^kb^{p-k}\in\mathbf Z[a,b]$$
を $p$ で還元した $K[a,b]$ の元も $S$ と書く。$0< k< p$ で $\binom pk$ は $p$ で割れる(本書『0-3 線形代数と群の道具』の定理(正標数の二項定理)の (1))ので、係数は整数である。$K^2$ に演算
$$(a_0,a_1)+(b_0,b_1)=\bigl(a_0+b_0,\ a_1+b_1+S(a_0,b_0)\bigr)$$
を入れたものを $W_2$ と書き、長さ 2 の Witt ベクトルの群という。

$p=2$ なら $S(a,b)=(a^2+b^2-(a+b)^2)/2=-ab$ で、$2$ で還元すると $S(a,b)=ab$ である。一般の $p$ でも $S$ は $a$ と $b$ について対称で、$S(a,0)=S(0,b)=0$ である。

加法多項式

$p\ne1$ とする。$a_0,\dots,a_r\in K$ について、$\sum_{k=0}^ra_kX^{p^k}$ の形の $K[X]$ の元を加法多項式という。$p=1$ では、$aX$($a\in K$)の形の多項式を加法多項式という。多項式 $P\in K[X]$ が加法的であるとは、$K[X,Y]$ の中で $P(X+Y)=P(X)+P(Y)$ となることをいう。

加法多項式が加法的であることは、正標数の二項定理から直ちに出る。主結果 2 はその逆、つまり加法的な多項式は加法多項式に限ることを述べる。

引用する事実

本頁の主結果 1〜3 の証明が使う本書の結果は次のとおりで、どれも本書の基準で完結の側にある。主結果 4・5 の紹介で触れる第 0 章の一般論(次元、商)は、その場で名指しする。出典の該当箇所は本頁では確認していない。

  1. 標準的な空間の座標環(本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』の命題(標準的な空間の座標環)の (1)(4)):$K^n$ の上で恒等的に $0$ になる多項式は $0$ である。代数的集合から $K^n$ や $\mathrm{GL}(V)$ への写像は、座標(行列成分)がすべて正則関数であるとき、かつそのときに限り射である。とくに加法群 $K$ から $K$ への射は多項式で与えられる。
  2. 正標数の二項定理(本書『0-3 線形代数と群の道具』の定理(正標数の二項定理)):$p\ne1$ なら、$q=p^a$ について $(\alpha+\beta)^q=\alpha^q+\beta^q$(標数 $p$ の可換環の中で)。$m=p^am'$($p\nmid m'$、$m'>1$)なら、$(X+Y)^m-X^m-Y^m$ の $X^{p^a}Y^{m-p^a}$ の係数は $m'$ で $0$ でない。
  3. 正標数の単冪性(本書『4-1 乗法的 Jordan 分解と単冪性』の主結果、原論文 Proposition 4 a)):$p\ne1$ なら、自己同型が単冪であることと、位数が有限で $p$ の冪であることは同値である。
    事実 3 は本頁では単冪性の確認の別の道としてだけ使い、主結果 1 の単冪性そのものは忠実な表現の行列から直接出す。

主結果と証明

まず $W_2$ が群であることを、多項式 $S$ が有理数係数の世界で「余境界」の形をしていることから確かめ、次に忠実な表現を行列で書き下す。群の公理を $p$ で割る前の多項式の恒等式に持ち上げるのが要点である。

長さ 2 の Witt ベクトルの群

長さ 2 の Witt ベクトルの群

$p\ne1$ とし、$W_2$ を上の定義(長さ 2 の Witt ベクトルの群)の群とする。

  1. $W_2$ は可換群で、単位元は $(0,0)$、$(a_0,a_1)$ の逆元は $(-a_0,\ -a_1-S(a_0,-a_0))$ である。
  2. $W_2$ はアフィン代数群である。より精確に、$V=K^{p+1}$ の上で $Ne_1=0$、$Ne_{i+1}=e_i$($1\le i\le p$)と定めた冪零な $N$ と、$E(a)=\sum_{k=0}^{p-1}\frac{a^k}{k!}N^k$ について、$\rho(a_0,a_1)=E(a_0)+a_1N^p$ は $W_2$ から $\mathrm{GL}(V)$ の閉部分群への代数群の同型であり、その像は対角成分が $1$ の上三角行列の群 $U(p+1)$ に含まれる。
  3. $W_2$ は連結な単冪群である。
  4. $W_2$ のすべての元 $x$ は $p^2x=0$ を満たし、$p\cdot(1,0)=(0,1)\ne0$ である。とくに $(1,0)$ の位数は $p^2$ で、$W_2$ はどの $K^n$ とも抽象群として同型でない。
  5. 射影 $\pi(a_0,a_1)=a_0$ は $W_2$ から加法群 $K$ への全射な有理準同型で、核 $\{(0,a_1)\}$ は $a_1$ によって加法群 $K$ に同型である。$\pi\circ\sigma=\mathrm{id}_K$ となる群準同型 $\sigma\colon K\to W_2$ は存在しない。

段 1(有理数係数での表示).$\phi(x)=x^p/p\in\mathbf Q[x]$ とおくと、$\mathbf Q[a,b]$ の中で $S(a,b)=\phi(a)+\phi(b)-\phi(a+b)$ である。したがって $\mathbf Q[a,b,c]$ の中で
$$S(a,b)+S(a+b,c)=\phi(a)+\phi(b)+\phi(c)-\phi(a+b+c)=S(b,c)+S(a,b+c)$$
が成り立つ。両端の多項式は整数係数の多項式 $S$ に整数係数の多項式を代入したものなので $\mathbf Z[a,b,c]$ の元で、$\mathbf Z[a,b,c]\subset\mathbf Q[a,b,c]$ なので等式は $\mathbf Z[a,b,c]$ の中で成り立つ。係数を $p$ で還元する環準同型 $\mathbf Z[a,b,c]\to\mathbf F_p[a,b,c]\subset K[a,b,c]$ で送れば、同じ等式が $K[a,b,c]$ で成り立ち、$K$ の元を代入してよい。同様に $S(a,b)=S(b,a)$ と $S(a,0)=0$ も $\mathbf Z[a,b]$ の等式として $K$ に移る。
段 2(群の公理).結合律:$(a+b)+c$ と $a+(b+c)$ の第 1 成分はどちらも $a_0+b_0+c_0$、第 2 成分はそれぞれ $a_1+b_1+c_1+S(a_0,b_0)+S(a_0+b_0,c_0)$ と $a_1+b_1+c_1+S(b_0,c_0)+S(a_0,b_0+c_0)$ で、段 1 の等式により等しい。$S(a_0,0)=0$ なので $(0,0)$ は単位元である。$(a_0,a_1)+(-a_0,\ -a_1-S(a_0,-a_0))=(0,\ -S(a_0,-a_0)+S(a_0,-a_0))=(0,0)$ で、可換性($S$ の対称性)からこれは両側の逆元である。これで 1 が出た。
段 3(代数群であること).群の演算の座標 $a_0+b_0$、$a_1+b_1+S(a_0,b_0)$ と逆元の座標は多項式なので、引用する事実 1 により射である($W_2\times W_2$ はアフィン空間 $K^4$ と同一視する。一般線形群の行列の積が射であるのと同じ理由である)。ゆえに $W_2$ は代数的集合としてアフィン平面 $K^2$ をもつ代数群である。
段 4(表現の積).$N$ は $N^ke_{j}=e_{j-k}$($j>k$)、$N^ke_j=0$($j\le k$)を満たし、$N^p\ne0$、$N^{p+1}=0$ である。$k< p$ なら $k!$ は $K$ の中で $0$ でないので $E(a)$ は定義される。
$$E(a)E(b)=\sum_{i,j=0}^{p-1}\frac{a^ib^j}{i!\,j!}N^{i+j}$$
の項を $i+j$ で分ける。$i+j\le p-1$ の部分は $\sum_{k=0}^{p-1}\frac1{k!}\bigl(\sum_{i+j=k}\binom kia^ib^j\bigr)N^k=E(a+b)$ である。$i+j\ge p+1$ の項は $N^{i+j}=0$ で消える。残る $i+j=p$ の項($1\le i\le p-1$)の係数を $c=\sum_{i=1}^{p-1}\frac{a^ib^{p-i}}{i!\,(p-i)!}$ とおく。整数の等式 $(p-1)!/(i!\,(p-i)!)=\frac1p\binom pi$ を $K$ に移すと
$$(p-1)!\,c=\sum_{i=1}^{p-1}\frac1p\binom pi a^ib^{p-i}=-S(a,b)$$
である。ここで $(p-1)!=-1$(Wilson の定理)を使う。$\mathbf F_p$ の中で $X^{p-1}-1=\prod_{\alpha\in\mathbf F_p^*}(X-\alpha)$(乗法群 $\mathbf F_p^*$ の位数は $p-1$ なので各 $\alpha$ が根になり、根は $p-1$ 個)の定数項を比べると $-1=(-1)^{p-1}(p-1)!$ で、$p$ が奇数なら $(p-1)!=-1$、$p=2$ なら $1=-1$ である。ゆえに $c=S(a,b)$、すなわち $E(a)E(b)=E(a+b)+S(a,b)N^p$ である。$N^pN^k=0$($k\ge1$)なので $E(a)N^p=N^pE(a)=N^p$、$N^pN^p=0$ で、
$$\rho(a)\rho(b)=E(a_0)E(b_0)+(a_1+b_1)N^p=E(a_0+b_0)+\bigl(a_1+b_1+S(a_0,b_0)\bigr)N^p=\rho(a+b)$$
である。$\rho(0,0)=1$ なので $\rho$ は群準同型で、値は可逆である。
段 5(像は閉部分群で、$\rho$ は同型).$N^k$ は $(i,i+k)$ 成分だけが $1$ の行列なので、$\rho(a_0,a_1)=\sum_{k=0}^pc_kN^k$ は $c_0=1$、$c_k=a_0^k/k!$($1\le k\le p-1$)、$c_p=a_1$ の上三角行列で、対角成分は $1$、$(1,2)$ 成分は $a_0$、$(1,p+1)$ 成分は $a_1$ である。ゆえに $\rho$ は単射で、像 $\Gamma$ は、行列 $M=(M_{ij})$ で「$i>j$ なら $M_{ij}=0$」「$M_{ij}=M_{1,j-i+1}$($i\le j$)」「$M_{11}=1$」「$M_{1,k+1}=M_{12}^k/k!$($2\le k\le p-1$)」を満たすものの全体である。これらは成分の多項式の等式なので $\Gamma$ は $\mathrm{GL}(V)$ の閉集合で、段 4 により部分群、すなわち閉部分群である。$\rho$ の座標は $a_0,a_1$ の多項式なので $\rho$ は射で、逆写像 $M\mapsto(M_{12},M_{1,p+1})$ は成分の制限なので射である(引用する事実 1)。$\rho$ は群準同型で代数的集合の同型なので、代数群の同型である。$\Gamma\subset U(p+1)$ は上に見たとおりである。これで 2 が出た。
段 6(連結性と単冪性).$K^2$ が二つの真の閉部分集合 $Z_1$、$Z_2$ の和だとすると、$Z_i$ で消える $0$ でない多項式 $f_i$ がとれ、$f_1f_2$ は $K^2$ 全体で消えるので、引用する事実 1 により $f_1f_2=0$ となり、$K[a_0,a_1]$ が整域であることに反する。ゆえに $K^2$ は既約で、交わらない二つの空でない閉集合の和にも書けないので連結である。$\rho$ は忠実な実現で、$\rho(x)\in U(p+1)$ は $1$ と狭義上三角行列(冪零)の和なので単冪である。ゆえに $W_2$ は単冪群である。これで 3 が出た。
段 7(位数).$(0,a)+(0,b)=(0,a+b+S(0,0))=(0,a+b)$ なので、$\{(0,a_1)\}$ は加法群 $K$ に同型な部分群で、その元は $p$ 倍で $0$ になる。任意の $x$ について $p\cdot x$ の第 1 成分は $p\,x_0=0$ なので $p\cdot x$ はこの部分群に入り、$p^2x=0$ である。次に $n\cdot(1,0)=\bigl(n,\ (n-n^p)/p\bigr)$(整数 $(n-n^p)/p$ を $p$ で還元したもの)を $n$ についての帰納法で示す。$n=1$ では第 2 成分は $0$ である。$n$ で正しければ
$$n\cdot(1,0)+(1,0)=\Bigl(n+1,\ \frac{n-n^p}p+S(n,1)\Bigr),\qquad \frac{n-n^p}p+\frac{n^p+1-(n+1)^p}p=\frac{(n+1)-(n+1)^p}p$$
で、$n+1$ でも正しい($S$ の整数での値を $p$ で還元したものは、還元してから代入したものに等しい)。$n=p$ で $(p-p^p)/p=1-p^{p-1}\equiv1\pmod p$ なので $p\cdot(1,0)=(0,1)\ne0$ である。ゆえに $(1,0)$ の位数は $p^2$ である。一方 $K^n$ ではすべての元が $p\cdot x=0$ を満たすので、$W_2$ は $K^n$ と抽象群として同型でない。これで 4 が出た。
段 8(分裂しない拡大).$\pi$ は座標が多項式で、演算の第 1 成分が和なので、全射な有理準同型である。核は段 7 の部分群 $\{(0,a_1)\}$ である。$\pi\circ\sigma=\mathrm{id}_K$ となる準同型 $\sigma$ があったとすると、$\sigma(1)=(1,c)$ と書ける。$(1,c)=(1,0)+(0,c)$ なので、段 7 から $p\cdot\sigma(1)=p\cdot(1,0)+p\cdot(0,c)=(0,1)$ である。一方 $p\cdot\sigma(1)=\sigma(p\cdot1)=\sigma(0)=0$ で、矛盾する。これで 5 が出た。

証明のどの段も、群の演算が多項式であることと、多項式が関数として決まることしか使っていない。段 4 の計算は、標数 $0$ の指数関数 $\exp(aN)$ を $p-1$ 次で切り、切り捨てた $p$ 次の項の係数に $S$ が現れることを見たものである。$W_2$ は、この切り捨てた指数関数の「繰り上がり」を第 2 成分で記録する群だと言える。

次元と、線形性を示す経路

$W_2$ の次元が $2$ であることは、代数的集合としてアフィン平面であることと $\dim K^2=2$(本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』の定理(Zariski 位相の基本)の (5))による。本書の基準ではこの一般論は引用の側にあるので、次元は上の定理(長さ 2 の Witt ベクトルの群)の主張に入れず、ここで引用として添える。主張の要点である「どの $K^n$ とも同型でない」は、次元を比べずに位数だけで示した。また、$W_2$ がアフィン代数群であることは、アフィン代数的集合である代数群は線形群であるという本書『1-2 アフィン代数群は線形群』の主結果「アフィン代数群は線形群」からも出るが、そちらは座標環の有限生成性と閉埋め込みの判定を引く。本書は段 4・段 5 で忠実な表現を書き下したので、その主結果を経ずに閉じた。

$W_2$ が $K^2$ と違うことの根は、段 4 で $p$ 次の項が $N^p$ に「繰り上がる」ことにある。原論文は、標数による違いの源をもっと手前、加法群 $K$ の自己準同型に見ている。次にそれを決める。

加法群の有理自己準同型

加法群の有理自己準同型

加法群 $K$ から $K$ への有理準同型は、ちょうど加法多項式 $P$ による写像 $t\mapsto P(t)$ である。すなわち $p\ne1$ なら $t\mapsto\sum_{k=0}^ra_kt^{p^k}$($a_k\in K$)の形の写像で、$p=1$ なら $t\mapsto at$($a\in K$)の形の写像である。

段 1(多項式の恒等式への翻訳).有理準同型 $f\colon K\to K$ は射なので、引用する事実 1 により多項式 $P\in K[X]$ で $f(t)=P(t)$ と書ける。準同型であることから、多項式 $P(X+Y)-P(X)-P(Y)\in K[X,Y]$ は $K^2$ のすべての点で $0$ になり、引用する事実 1 により $0$ である。すなわち $P$ は加法的である。$X=Y=0$ とおくと $P(0)=0$ である。
段 2(次数ごとに分ける).$P=\sum_{m\ge1}c_mX^m$ と書くと、$P(X+Y)-P(X)-P(Y)=\sum_mc_m\bigl((X+Y)^m-X^m-Y^m\bigr)$ で、第 $m$ 項は $m$ 次の斉次多項式である。斉次成分ごとに比べて、$c_m\ne0$ となる各 $m$ について $(X+Y)^m-X^m-Y^m=0$ である。
段 3($p\ne1$ の場合).$m=p^am'$($p\nmid m'$)と書く。$m'>1$ なら、引用する事実 2 により $(X+Y)^m-X^m-Y^m$ の $X^{p^a}Y^{m-p^a}$ の係数は $m'\ne0$ で、段 2 に反する。ゆえに $c_m\ne0$ となる $m$ はすべて $p$ の冪で、$P$ は加法多項式である。
段 4($p=1$ の場合).$m>1$ なら $(X+Y)^m-X^m-Y^m$ の $XY^{m-1}$ の係数は $m$ で、標数 $0$ では $0$ でない。ゆえに $c_m\ne0$ となるのは $m=1$ だけで、$P=c_1X$ である。
段 5(逆向き).$p\ne1$ なら、引用する事実 2 により $(X+Y)^{p^k}=X^{p^k}+Y^{p^k}$ なので $X^{p^k}$ は加法的で、その一次結合も加法的である。$p=1$ の $aX$ も加法的である。加法的な多項式による写像は準同型で、座標が多項式なので射、すなわち有理準同型である。

原論文は、相似以外の有理表現がほかに無いことを「容易に分かる」と書くだけである(印字 4-12)。上の段 2〜段 4 はその中身で、二項係数が $p$ で割れるかどうかという一点に帰着する。ここで「有理」が効いていることは、下の反例「有理性を外すと加法的な写像は多項式とは限らない」で見る。

標数による違いの源についての原論文の所見

原論文は、標数 $0$ と正標数の違いの源は、正標数では加法群 $K$ からそれ自身への有理表現に相似以外のものがあることに「あるようだ」(semble)と述べる(印字 4-12)。これは所見で、本書は主結果にせず、原論文の控えめな言い方のまま伝える。上の定理(加法群の有理自己準同型)が示すのは、自己準同型の違いそのものであって、それが可換な単冪群の構造の違いの「源」であるという主張ではない。本頁の $W_2$ の構成(上の定理(長さ 2 の Witt ベクトルの群)の段 4)でも、効いたのは正標数の二項定理であり、所見と同じ方向を指してはいるが、所見を証明したものではない。

自己準同型に $t^p$ のような非線形なものがあると、積 $K^n$ の中の部分群や自己同型にも非線形なものが現れる。原論文が結論として挙げるこの二つを確かめる。

奇妙な 1 径数部分群と非線形な自己同型

奇妙な 1 径数部分群と非線形な自己同型

$p\ne1$ とする。

  1. $\lambda(t)=(t,t^p)$ は加法群 $K$ から代数群 $K^2$ の閉部分群 $C=\{(x,y):y=x^p\}$ への代数群の同型である。$C$ は $K^2$ の直線(1 次元の部分空間)でない。
  2. $\alpha(x,y)=(x,\ y+x^p)$ は代数群 $K^2$ の自己同型で、線形写像でない。

段 1(1 径数部分群).上の定理(加法群の有理自己準同型)の段 5 により $t\mapsto t^p$ は有理準同型なので、$\lambda$ は $K$ から $K^2$ への有理準同型で、第 1 成分から単射である。像は $C$ に等しく、$C$ は多項式 $Y-X^p$ の零点なので閉部分群である。$\lambda$ の逆写像 $(x,y)\mapsto x$ は座標の制限なので射で、$\lambda$ は $K$ から $C$ への代数群の同型である。$K$ は無限体で $X^p-X$ の根は高々 $p$ 個なので、$c^p\ne c$ となる $c\in K$ がある。$C$ は $(1,1)$ と $(c,c^p)$ を含むが、$C$ が直線なら $(c,c^p)$ は $(1,1)$ のスカラー倍で $c^p=c$ となり、矛盾する。
段 2(自己同型).$\alpha$ は座標が多項式で、$(x+x')^p=x^p+x'^p$ なので準同型、すなわち有理準同型である。$\beta(x,y)=(x,\ y-x^p)$ も同じく有理準同型で、$\alpha\beta=\beta\alpha=\mathrm{id}$ なので $\alpha$ は代数群の自己同型である。段 1 の $c$ について $\alpha(c,0)=(c,c^p)$ だが $c\,\alpha(1,0)=(c,c)$ なので、$\alpha$ はスカラー倍と可換でなく、線形でない。

上の定理(加法群の有理自己準同型)の加法多項式 $P$ をどれでも使えば、$t\mapsto(t,P(t))$ で同じ型の閉部分群が得られ、$P$ が違えば像も違う。原論文の「多くの」1 径数部分群はこの意味である。標数 $0$ ではこれが起こらないこと($K^n$ の有理自己準同型は線形で、有理準同型 $K\to K^n$ の像は直線か $0$)は、下の例「標数 0 では加法群の積の有理自己準同型は線形」で確かめる。

原論文の二つの主張:拡大と分類

原論文の注意には、本書が閉じられない主張が二つある。どちらも原論文は事実として述べるが、証明も出典の表示も無い。本書は原論文の述べ方を本書の言葉で紹介し、何が足りないかを書く。

連結 2 次元の可換単冪群は拡大

原論文(n° 5 の注意、印字 4-12)は、正標数で連結 2 次元の可換単冪群が $K^n$ に同型でないとき、括弧の中で、それは $K$ の $K$ による非自明なアーベル拡大に「なる」と述べる。本書の言葉では、次の主張である:$p\ne1$ で、$G$ が連結 2 次元の可換単冪群で $K^2$ に同型でなければ、加法群 $K$ に同型な閉部分群 $H$ と、$K$ への全射な有理準同型 $G\to K$ で核が $H$ のものがあり、この拡大は代数群の直積に分裂しない。
分裂しないことは、拡大が得られれば直ちに出る。分裂すれば $G\cong H\times K\cong K^2$ となって仮定に反するからである。足りないのは拡大の存在で、少なくとも次の二つが要る。(a) 1 次元の連結な単冪群は加法群 $K$ に同型であること。(b) $G$ の 1 次元の連結な閉部分群 $H$ の存在と、商 $G/H$ を代数群として作ること(たとえば、$H$ を核とする有理表現の像を商とみて、その像が閉で次元が $1$ であることを示すこと。本書『2-2 正規部分群を核とする表現』と、本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』の定理(準同型の像と次元の公式)を要する)。(a) は正標数では自明でなく、原論文にも本書の他の頁にも無い。原論文にも本書にも、外部入力を使った証明も無いので、本書はこの主張を未完結とする。
本書が示したのは例の側だけである。上の定理(長さ 2 の Witt ベクトルの群)の 5 により、$W_2$ については射影 $\pi$ がこの形の拡大を与え、分裂しない。

Chevalley による可換単冪群の分類

原論文(同じ注意)は続けて、Chevalley が、可換な単冪アフィン代数群を「同種を除いて」Witt 群の積として分類できること、そこに現れる Witt 群の次元は順序を除いて群で定まることを示した、と述べる。本書の言葉では、各可換単冪群 $G$ に次元の組 $(n_1,\dots,n_r)$ が順序を除いて一意に定まり、$G$ は次元 $n_1,\dots,n_r$ の Witt 群の積と同種である、という主張である。
原論文はこれを Chevalley に帰属させるだけで、証明も出典の表示も無い。「Witt 群」(どの長さの Witt ベクトルの群か、次元と長さの関係)、「同種を除いて」(有限な核をもつ全射な準同型のどちら向きで、どの同値関係を考えるか)の精確な意味も紙面に無い。したがって主張の形そのものを本書は確かめられず、外部入力として特定することもできない。原論文にも本書にも、外部入力を使った証明も無いので、本書はこの主張を未完結とし、証明したとは書かない。後代の所在の候補は「その後の発展」に挙げるが、本書はそれを開いて確かめていない。本頁の $W_2$ は、長さ 2 の場合として本書が立てた例で、原論文が $W_2$ を挙げているわけではない。

これで、原論文の注意の後半のうち、例の存在($W_2$)、自己準同型の決定、その帰結の二つは閉じ、一般の構造についての二つの主張は開いたまま残った。残った二つは、1 次元の連結な単冪群の決定と商の構成という、本巻の範囲の外にある一般論を要する。

例と反例

まず $W_2$ の小さな場合を計算し、主結果 1 の位数と表現を具体的に見る。

有限体の座標の点と位数 p の 2 乗の巡回群

$p\ne1$ とする。$S$ は整数係数なので、座標が素体 $\mathbf F_p\subset K$ に入る $W_2$ の点の全体 $W_2(\mathbf F_p)$ は、演算と逆元で閉じた位数 $p^2$ の部分群である。上の定理(長さ 2 の Witt ベクトルの群)の 4 により $(1,0)$ の位数は $p^2$ なので、$W_2(\mathbf F_p)$ は $(1,0)$ の生成する位数 $p^2$ の巡回群である。$p=3$ で確かめる。$S(a,b)=(a^3+b^3-(a+b)^3)/3=-ab(a+b)$ で、$2\cdot(1,0)=(2,S(1,1))=(2,-2)=(2,1)$、$3\cdot(1,0)=(2,1)+(1,0)=(0,\ 1+S(2,1))=(0,1)$($S(2,1)=-6=0$)である。これは公式 $n\cdot(1,0)=(n,(n-n^p)/p)$ の $n=2$($(2-8)/3=-2\equiv1$)、$n=3$($(3-27)/3=-8\equiv1$)と合う。加法群 $K$ の $\mathbf F_p$ 座標の点は位数 $p$ の群で、ここにも $K^2$ との違いが見える。

標数 2 の Witt ベクトルの群

$p=2$ なら $S(a,b)=ab$ で、演算は $(a_0,a_1)+(b_0,b_1)=(a_0+b_0,\ a_1+b_1+a_0b_0)$ である。上の定理(長さ 2 の Witt ベクトルの群)の表現は $E(a)=1+aN$ で、
$$\rho(a_0,a_1)=\begin{pmatrix}1&a_0&a_1\\0&1&a_0\\0&0&1\end{pmatrix}$$
である。二つの積の $(1,3)$ 成分は $b_1+a_0b_0+a_1$ で、演算の第 2 成分と一致する。$2\cdot(a_0,a_1)=(2a_0,\ 2a_1+a_0^2)=(0,a_0^2)$ なので、$a_0\ne0$ の元の位数は $4$ で、$a_0=0$ の元の位数は $2$ 以下である。行列でも、$\rho(a_0,a_1)^2$ の $(1,3)$ 成分は $2a_1+a_0^2=a_0^2$ で、ほかの狭義上三角成分は $2a_0=0$ である。

次の反例は、主結果 2 の「有理」を外すと結論が壊れることを示し、同時に、全単射な有理準同型が代数群の同型とは限らないことも示す。

反例:有理性を外すと加法的な写像は多項式とは限らない

上の定理(加法群の有理自己準同型)から、写像が有理(射)であるという条件を外す。$p\ne1$ とし、$F(t)=t^p$ とおく。$F$ は加法多項式による有理準同型で、$F(s)-F(t)=(s-t)^p$ なので単射、$K$ は代数的閉なので $t$ の $p$ 乗根があり全射である。その逆写像 $F^{-1}(t)=t^{1/p}$ は加法的な全単射だが、多項式で与えられない。実際、$P(t)^p=t$ がすべての $t$ で成り立つ多項式 $P$ があれば、引用する事実 1 により $K[X]$ で $P^p=X$ となり、左辺の次数は $p$ の倍数、右辺は $1$ で矛盾する。ゆえに $F^{-1}$ は加法群の抽象群としての自己同型だが有理でなく、加法多項式ではない。とくに $F$ は全単射な有理準同型だが、代数群の同型でない。

加法多項式の合成と加法群の自己同型

加法多項式の合成は加法多項式である(加法的な多項式の合成は加法的)。合成は可換でない。$p\ne1$、$a\in K$ で $a^p\ne a$ なら、$F(aX)=a^pX^p$ だが $aF(X)=aX^p$ である。合成の次数は次数の積なので、合成について逆をもつ加法多項式は 1 次のものだけである。ゆえに、どの標数でも、代数群としての加法群 $K$ の自己同型はちょうど $t\mapsto at$($a\ne0$)である。$K$ ひとつでは自己同型は線形に限るのに、上の定理(奇妙な 1 径数部分群と非線形な自己同型)の 2 のとおり $K^2$ では線形でない自己同型が現れる。成分の間で $t^p$ を足し込めるからである。

標数 0 では加法群の積の有理自己準同型は線形

$p=1$ とし、$f\colon K^n\to K^m$ を有理準同型とする。$f$ の第 $j$ 成分を第 $i$ 座標軸に制限した $t\mapsto f_j(te_i)$ は $K$ から $K$ への有理準同型なので、上の定理(加法群の有理自己準同型)により $a_{ji}t$ の形である。$f_j$ は加法的なので $f_j(x)=\sum_if_j(x_ie_i)=\sum_ia_{ji}x_i$ で、$f$ は線形写像である。とくに有理準同型 $K\to K^n$ の像は $\{tv\}$(直線か $0$)で、代数群 $K^n$ の自己同型はちょうど $\mathrm{GL}(n,K)$ の元である。$p\ne1$ でも同じ議論で、$f_j(x)=\sum_iP_{ji}(x_i)$($P_{ji}$ は加法多項式)となり、有理準同型は加法多項式を成分とする行列で表される。上の定理(奇妙な 1 径数部分群と非線形な自己同型)の $\lambda$ と $\alpha$ は、その行列 $\begin{pmatrix}X\\X^p\end{pmatrix}$ と $\begin{pmatrix}X&0\\X^p&X\end{pmatrix}$ に当たる。

その後の発展

以下は後代の結果の紹介である(時点を明記する。本書は文献を開いて確かめていない)。

  • Witt ベクトル(1937 年):Witt Wit37 は、標数 $p$ の体の上の巡回拡大の研究の中で Witt ベクトルの環を導入した。長さ 2 の Witt ベクトルの環の加法群が本頁の $W_2$ に当たり、$\mathbf F_p$ 係数の Witt ベクトルの環は $p$ 進整数環になる(長さ 2 では $\mathbf Z/p^2$。上の例(有限体の座標の点と位数 p の 2 乗の巡回群))。
  • 可換単冪群と Witt 群(1959 年):Serre の『Groupes algébriques et corps de classes』Ser59 は、類体論への応用のために可換な代数群を扱い、Witt ベクトルの群(長さ $n$ の群は $n$ 次元)と可換単冪群の構造、同種の概念を論じている。原論文が Chevalley に帰属させる分類の主張の後代の所在の候補であるが、本書は該当箇所を確かめておらず、上の注意(Chevalley による可換単冪群の分類)を閉じたものとは扱わない。
  • Dieudonné 加群(1950〜1970 年代):Demazure–Gabriel DG70 は、完全体の上の可換な単冪群スキームと形式群を、Witt ベクトルの環の上の Frobenius と Verschiebung をもつ加群(Dieudonné 加群)で分類する枠組みを与えた。群スキームの枠では、加法群の Frobenius の核のような被約でない部分群スキームも現れ、上の反例(有理性を外すと加法的な写像は多項式とは限らない)で全単射な $F$ が同型でないことは、核が被約でない群スキームであることとして見える。本書は確かめていない。
  • 1 次元の単冪群と加法多項式(教科書、1975〜1998 年):1 次元の連結な単冪群が加法群に同型であること、加法多項式の環が加法群の自己準同型環であることは、線形代数群の教科書(Humphreys Hum75、Borel Bor91、Springer Spr98)で扱われる。上の注意(連結 2 次元の可換単冪群は拡大)の (a) はこれに当たる。本書は該当箇所を確かめていない。

原論文との対応表

本頁が対応する原論文は Gro56 の n° 5 の注意の後半である。

本頁原論文印字頁
定義(単冪群)n° 5 の注意の中の単冪群の定義、n° 4 の単冪の定義4-12、4-08
定義(長さ 2 の Witt ベクトルの群)、定理(長さ 2 の Witt ベクトルの群)、注意(次元と、線形性を示す経路)n° 5 の注意の「連結 2 次元で $K^n$ に同型でない」(例は本書が立てた。原論文は「Witt 群」の名だけ)4-12
定義(加法多項式)、定理(加法群の有理自己準同型)同じ注意の「$t\mapsto t^{p^k}$ とその一次結合」「ほかには無いことは容易に分かる」4-12
注意(標数による違いの源についての原論文の所見)同じ注意の「semble」の所見4-12
定理(奇妙な 1 径数部分群と非線形な自己同型)同じ注意の結び(奇妙な形の 1 径数部分群、線形でない自己同型)4-12
注意(連結 2 次元の可換単冪群は拡大)同じ注意の括弧の中の主張4-12
注意(Chevalley による可換単冪群の分類)同じ注意の「Chevalley a montré」4-12

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