前の頁の二つの補題を組み合わせ、代数群の有理表現がすべて半単純であることが正則関数の代数の半単純性と同値であることを示す。続いて、アフィン代数的集合である代数群は一般線形群の閉部分群に同型であること、すなわち線形群であることを証明する。原論文が黙って使う閉埋め込みの段は補い、アフィンとは限らない代数群の場合と、標数 0 の半単純群の例示は、それぞれの引用先を名指して分けて書く。
前提知識: 有理表現, 半単純加群, アフィン代数的集合, 座標環, 一般線形群
$K$ を代数的閉体、$G$ を代数群、$A(G)$ をその正則関数の代数とし、$A(G)$ を右正則表現 $R_sf(t)=f(ts)$ で $G$ 加群とみる。代数的集合・代数群・有理表現は本書『1-1 行列係数と有限性の補題』の定義のとおりで、有理表現は代数群の射である群準同型と読む(本書が足した仮定の読み)。
本頁の主結果は次の四つである。
前の頁で、有限次元の表現は係数空間の中に部分加群として映り、正則関数はどれも有理表現の係数であることを見た(本書『1-1 行列係数と有限性の補題』)。原論文はこの二つを「Lemme 1 と 2 を合わせると」の一言でつなぎ、有理表現の半単純性という表現の側の性質が、一つの関数の空間 $A(G)$ の性質に集約されることを系として述べる(印字 4-03)。有理表現は無数にあり得るが、それらの組成因子はすべて $A(G)$ の中に現れる。
原論文は続けて、この条件は標数 0 で $G$ が半単純なら満たされると述べ、任意標数での重要な例は n° 3 で調べると予告する。本講演の中では、この例示に証明も出典も付かない。n° 3 の例とは、トーラスとその閉部分群、すなわち対角化可能群で、その有理表現がすべて対角化可能であることが示される(本書『3-1 トーラスの関数環と閉部分群』、本書『3-2 指標群との双対性』)。
そのうえで原論文は Proposition 1 を置く。代数群が線形群に同型であるための必要十分条件はアフィン代数的集合であることで、以後「線形群に同型な代数群」を「アフィン代数群」と呼ぶと宣言する。証明は、座標環の生成元の右移動が張る有限次元の空間 $V$ をとり、$G$ を $\mathrm{GL}(V)$ に右移動で写すという構成で、Lemme 2 がちょうどそのために用意されていた。原論文は、この写像が同型であることを「$G$ 上の正則関数はすべて $\mathrm{GL}(V)$ 上の正則関数から来る」と言い換える。これは余射が全射であることで、そこから像が閉部分群で写像が同型になるには閉埋め込みの判定が要る。原論文はこの段を書かない。本頁はそれを補う。
原論文の冒頭は、代数群は忠実な有理線形表現をもつとは限らないと注意していた(印字 4-01)。Proposition 1 は、忠実な有理表現をもつ代数群、すなわち線形群が、代数的集合としてアフィンなものとちょうど一致することを言う。アフィンでない代数群の典型はアーベル多様体で、これについては「その後の発展」で触れる。
半単純性は、無限次元の $A(G)$ についても意味をもつように、単純部分加群の和として定める。
$G$ を群とし、$G$ が線形に作用する $K$ ベクトル空間を $G$ 加群と呼ぶ。$G$ 加群 $M$ が単純であるとは、$M\ne0$ で、$G$ で不変な部分空間が $0$ と $M$ だけであることをいう。$M$ が半単純であるとは、$M$ が単純部分加群の和であることをいう($M=0$ も半単純とする)。有限次元の表現が半単純であるとは、その空間が $G$ 加群として半単純であることをいう。$A(G)$ が右正則表現で半単純であるとは、$A(G)$ を $R_s$ による $G$ 加群とみて半単純であることをいう。
有限次元の $M$ については、半単純であることは、どの部分加群も補加群(不変な補空間)をもつことと同値である。本頁で使う半単純加群の事実は、部分加群・商加群・直和・部分加群の和が半単純性を保つことだけで、本書はこれを初等的な代数として完結の側で使う(Bou58、本書『0-3 線形代数と群の道具』)。
有限次元の $V$ について、一般線形群 $\mathrm{GL}(V)$ の閉部分群を線形代数群、または簡単に線形群という。代数群 $G$ がある線形群に代数群として同型であるとき、$G$ をアフィン代数群という(原論文の定義。主結果 4 により、アフィン代数的集合である代数群と同じものになる)。代数群の同型とは、群の同型で、代数的集合の同型でもあるものをいう。
原論文は「アフィン代数群」の語を Proposition 1 の後で初めて導入するので、本頁の主結果 1 までは「アフィン代数的集合である代数群」と書く。
主結果 3 に現れる「半単純群」は、原論文が本講演で定義しない語である。本書は標準的な意味で読む。
連結な線形代数群 $G$ が半単純であるとは、$G$ の連結で可解な閉正規部分群が単位群 $\{e\}$ だけであることをいう。本書は、原論文の「半単純群」を、線形代数群についてのこの意味の語と読む。とくに半単純群はアフィン代数群である。
原論文は「半単純」の定義を書かないので、この読みは本書が選んだものである。連結でない群については、単位成分が半単純である場合を下の注意で扱う。
次の事実は証明せずに引用する。事実 1・2 の出典は主に AM69、Har77 で、要点は本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』の定理「アフィン代数的集合の基本定理」の (3)(4)(事実 1)と (7)(事実 2)にある。事実 3 の出典は Weyl Wey25 と Chevalley Che51、Che55 で、どの文献についても該当箇所は本頁では確認していない。事実 4 は本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』の定理「閉部分群と単位成分の基本」の (3) で、出典は Hum75、Bor91、同じく確認していない。
前の頁の組成因子の定理は、有理表現を係数空間に写し、係数空間は $A(G)$ の部分加群である。正則関数の移動の有限性は、逆に $A(G)$ を有理表現で覆う。この二方向を合わせる。
$G$ をアフィン代数的集合である代数群とする。
段 1(有理表現は $A(G)$ の中に映る).$u$ を有限次元の $V$ 上の有理表現とする。本書『1-1 行列係数と有限性の補題』の定理「有理性の判定」の 1 により $A_u\subset A(G)$、定理「係数の平行移動の公式」により $A_u$ は右移動で不変である。定理「表現と係数空間の組成因子」の 1 により、$V$ は $A_u^n$ の部分加群に、したがって $A(G)^n$ の部分加群に同型である($n=\dim V$)。
段 2($A(G)$ が半単純なら有理表現は半単純).$A(G)$ が半単純なら、有限直和 $A(G)^n$ も、その部分加群も半単純である。段 1 により $V$ は半単純である。
段 3(有理表現が半単純なら $A(G)$ は半単純).有理表現がすべて半単純であるとする。$f\in A(G)$ をとる。本書『1-1 行列係数と有限性の補題』の定理「正則関数の移動の有限性(アフィンの場合)」の 1 により、$f$ の右移動の張る空間 $V_f$ は $A(G)$ の有限次元部分空間で、その上の右移動の表現は有理的である。仮定により $V_f$ は半単純で、単純部分加群の和である。$f\in V_f$($f=R_ef$)なので $A(G)=\sum_{f\in A(G)}V_f$ で、$A(G)$ は単純部分加群の和、すなわち半単純である。
段 4(単純な表現の実現).$V$ を単純な有理表現とし、$V'$ の基底 $x_1',\dots,x_n'$ をとる。段 1 の単射 $x\mapsto(u_{x,x_i'})_i$ は $0$ でないので、ある $i$ について $G$ 準同型 $\phi_i\colon x\mapsto u_{x,x_i'}$ は $0$ でない。その核は $V$ の部分加群で $V$ ではないから、$V$ の単純性により $0$ である。よって $\phi_i$ は $V$ から像 $W=\phi_i(V)\subset A_u\subset A(G)$ への同型で、$W$ は有限次元、右移動で不変で、$V$ の表現は $s\mapsto R_s|_W$ に同型である。
段 5(逆向き).$A(G)$ の右移動で不変な有限次元部分空間の上の右移動の表現が有理的であることは、本書『1-1 行列係数と有限性の補題』の定理「有理性の判定」の 2 である。
段 2・段 4・段 5 は前の頁の完結した主結果だけで閉じ、$G$ がアフィンであることも使わない。$G$ がアフィンであることを使うのは段 3 だけで、そこで正則関数の移動の有限性、したがって積の座標環がテンソル積であるという定理が入る。同じ段 3 は、積の上の正則関数の分解があれば一般の代数群でも通る。
$G$ を代数群(アフィンとは限らない)とする。このとき上の定理(有理表現の半単純性と正則関数の代数(アフィンの場合))の 1・2 がそのまま成り立つ。
上の定理の証明の段 1・段 2・段 4・段 5 は $G$ がアフィンであることを使わない。段 3 で使った「$V_f$ は有限次元で、その上の表現は有理的」は、本書『1-1 行列係数と有限性の補題』の定理「正則関数の移動の有限性(一般の代数群)」がアフィンとは限らない $G$ について与える。したがって同じ証明が通る。
原論文の Corollaire は、アフィンかどうかを区別せずに一般の代数群について述べる。本書が二つに分けたのは、前の頁と同じく、一般の場合が本書の開いていない講演の結果に依るからである。以下の頁で使うのはアフィンの場合だけである。
原論文が例示として挙げる半単純群の場合は、表現の側の完全可約性を外から引き、上の定理の段 3 の向きで $A(G)$ の半単純性に移す。
$K$ の標数を 0 とし、$G$ を半単純群(上の定義「半単純群(本書の読み)」の意味)とする。このとき $A(G)$ は右正則表現で半単純で、$G$ の有理表現はすべて半単純である。
段 1(アフィンであること).$G$ は線形代数群、すなわち $\mathrm{GL}(V)$ の閉部分群である。$\mathrm{GL}(V)$ はアフィン代数的集合なので、引用する事実 1 により $G$ はアフィン代数的集合である。これは下の定理(アフィン代数群は線形群)の必要性の向きと同じ議論で、その定理に依らない。
段 2(完全可約性).引用する事実 3 により、$G$ の有理表現はすべて半単純である。
段 3($A(G)$ の半単純性).段 1 により上の定理(有理表現の半単純性と正則関数の代数(アフィンの場合))が使え、その 1 により $A(G)$ は半単純である。
主張の後半は引用する事実 3 そのもので、この定理の中身は、それを $A(G)$ の性質に言い直したことにある。原論文の例示は証明も出典も示さないので、本書は外部入力を名指して引いた。
原論文は Corollaire の直後(印字 4-03)に、Corollaire の条件は標数 0 で $G$ が半単純なら満たされると一文で述べ、証明も出典も示さない。「半単純」の定義も本講演に無い。上の定理の証明は、アフィンの場合の定理を使うので $G$ がアフィンであることを要する。本書は、当時の用法で「半単純群」は線形代数群について言う語と読み、アフィンであることを定義の側に入れた(上の定義「半単純群(本書の読み)」)。本書はこの読みが原論文の意図どおりであることを確かめていない。外部入力の内容(標数 0 の半単純群の完全可約性)は、Weyl の完全可約性定理 Wey25 と、標数 0 の代数群と Lie 環の対応 Che51、Che55 を合わせて得られるとされるが、本書はどの文献の該当箇所も確かめていない。
$K$ の標数を 0 とし、線形代数群 $G$ の単位成分 $G_0$ が半単純であるとする($G$ は連結でなくてよい)。このときも $G$ の有理表現はすべて半単純で、したがって上の定理(有理表現の半単純性と正則関数の代数(アフィンの場合))により $A(G)$ は半単純である。これは標準的な平均化の議論で示せる。引用する事実 4 により $G_0$ は指数 $m$ が有限の正規部分群で、$G$ の有理表現 $V$ を $G_0$ に制限したものは有理表現なので、上の定理(標数 0 の半単純群)により $G_0$ 加群として半単純である。$W\subset V$ を $G$ 加群の部分加群とし、$W$ の $G_0$ 加群としての補加群に沿う射影 $\pi\colon V\to W$ をとる($\pi$ は $G_0$ 準同型で $W$ 上で恒等)。$G/G_0$ の代表元 $g_1,\dots,g_m$ をとり、
$$\pi'=\frac1m\sum_{i=1}^mg_i\pi g_i^{-1}$$
とおく(標数 0 なので $m$ は $K$ で可逆)。$h\in G_0$ について $(g_ih)\pi(g_ih)^{-1}=g_i(h\pi h^{-1})g_i^{-1}=g_i\pi g_i^{-1}$ なので、各項は剰余類だけで決まる。$g\in G$ を左から掛けると剰余類は置換されるだけなので $g\pi'g^{-1}=\pi'$、すなわち $\pi'$ は $G$ 準同型である。$W$ は $G$ で不変なので $\pi'(V)\subset W$ で、$w\in W$ では $g_i^{-1}w\in W$ から $\pi'(w)=w$。ゆえに $\ker\pi'$ は $W$ の $G$ 加群としての補加群で、$V$ は半単純である。原論文はこの場合に触れない。
主結果 1 の同値の片側は、こうして標数 0 の半単純群で満たされる。同じ性質が任意標数で成り立つ重要な例は、原論文の予告どおり n° 3 のトーラスと対角化可能群である(本書『3-1 トーラスの関数環と閉部分群』、本書『3-2 指標群との双対性』)。そこでは $A(G)$ が指標の直線の直和に分かれる。
最後に、正則関数の移動の有限性を、表現の半単純性ではなく群の埋め込みに使う。座標環の有限個の生成元の移動を集めれば、$G$ が忠実に作用する有限次元の空間が得られる。
代数群 $G$ について、次の二つは同値である。
段 1(必要性).$G$ が $\mathrm{GL}(V)$ の閉部分群 $H$ に同型であるとする。$\dim V=n$ の基底をとると $\mathrm{GL}(V)=\mathrm{GL}(n,K)$ はアフィン空間 $K^{n^2}$ の主開集合で、座標環 $K[X_{ij},\det^{-1}]$ をもつアフィン代数的集合である。引用する事実 1 により、その閉部分集合 $H$ はアフィン代数的集合で、$H$ に同型な $G$ もアフィン代数的集合である。
段 2(有限次元の不変部分空間).以下 $G$ をアフィン代数的集合とする。引用する事実 1 により $A(G)$ は有限生成で、生成元 $f_1,\dots,f_k$ をとる。本書『1-1 行列係数と有限性の補題』の定理「正則関数の移動の有限性(アフィンの場合)」の 1 により、各 $f_i$ の右移動の張る空間 $V_{f_i}$ は $A(G)$ の有限次元部分空間で、右移動で不変である。その和 $V=V_{f_1}+\dots+V_{f_k}$ も有限次元で右移動で不変で、$f_i\in V$ なので $V$ は $K$ 代数 $A(G)$ を生成する。本書『1-1 行列係数と有限性の補題』の定理「有理性の判定」の 2 により、$u(s)=R_s|_V$ は有理表現 $u\colon G\to\mathrm{GL}(V)$ である。
段 3(余射の全射性).$\varepsilon\in V'$ を単位元での評価 $g\mapsto g(e)$ の制限とする。$f\in V$ について
$$f(s)=(R_sf)(e)=\langle u(s)f,\varepsilon\rangle.$$
右辺は、$\mathrm{GL}(V)$ 上の関数 $c_f\colon y\mapsto\langle yf,\varepsilon\rangle$ を $u$ で引き戻したものである。$c_f$ は $y$ の行列成分の一次式なので $\mathrm{GL}(V)$ 上の正則関数で、$f=u^*(c_f)$ となる。余射 $u^*\colon A(\mathrm{GL}(V))\to A(G)$ は $K$ 代数の準同型なので、その像は $V$ を含む部分代数で、$V$ は $A(G)$ を生成するから、$u^*$ は全射である。
段 4(閉埋め込み).$G$ と $\mathrm{GL}(V)$ はアフィン代数的集合で、$u$ は射、$u^*$ は全射なので、引用する事実 2 により $u(G)$ は $\mathrm{GL}(V)$ の閉集合で、$u$ は $G$ から $u(G)$ への代数的集合の同型である。
段 5(群の同型).$u$ は群準同型なので $u(G)$ は $\mathrm{GL}(V)$ の部分群で、段 4 により閉部分群、すなわち線形群である。$u$ は $G$ から $u(G)$ への全単射な群準同型で、代数的集合の同型でもあるから、代数群の同型である。これで 2 から 1 が出た。
段 3 は、有理表現の係数に座標環の生成元が現れるという観察で、段 4 はそこから像の閉性と同型を引き出す。段 3 の等式からは、$u(s)=u(s')$ なら $V$ のすべての $f$ で $f(s)=f(s')$ となることが分かるが、それだけでは像が閉であることも、逆写像が射であることも出ない。
原論文の Proposition 1 の証明(印字 4-03)は、上の段 2 と同じ構成をとったあと、$u$ が $G$ から $\mathrm{GL}(V)$ への同型であることを「$G$ 上の正則関数はすべて $\mathrm{GL}(V)$ 上の正則関数から来る」と言い換え、$V$ の元は $u$ の係数なのでそうなり、$V$ が $A(G)$ を生成するので全体もそうなる、と述べて終える。これは上の段 3 に当たる。言い換えの「すなわち」の部分、つまり余射の全射性から像が閉部分群で $u$ が同型になることは、閉埋め込みの判定(引用する事実 2)によるもので、原論文はこれを書かない。本書は段 4・段 5 としてこれを補った。必要性の向きについて原論文は「明らかに必要」とし、$\mathrm{GL}(n,K)$ とその閉部分集合がアフィンであることを理由に挙げる。上の段 1 はその理由をそのまま書いたものである。
原論文の Proposition 1 の証明の終わり近く(印字 4-03)で、正則関数 $f$ が $A(G)$ に属することを表す記号が「ɑ」に近い字形で打たれている。所属の記号 $\in$ の打ち損じで、$f\in A(G)$ と読む。原論文は一般線形群を $G\ell(V)$、$G\ell(n,K)$ と打つが(本書の記号表)、同じ証明の必要性の文の一か所だけ $\mathrm{GL}(n,K)$ と打つ。意味は同じである。
これで、原論文の意味の「アフィン代数群」(線形群に同型な代数群)は、代数的集合としてアフィンな代数群と同じものになった。以後の頁は、この二つの見方を自由に行き来する。閉部分群を半不変式で切り出す定理(本書『2-1 半不変式による閉部分群の切り出し』)は、上の定理が与える忠実な有理表現と同じ型の構成を、閉部分群のイデアルに当てはめたものである。
主結果 1 の両辺を、いちばん簡単な二つの代数群で比べる。乗法群では両辺がともに成り立ち、加法群ではともに成り立たない。
$G=K^*$(乗法群)とすると $A(G)=K[X,X^{-1}]$(標準的な空間の座標環)で、単項式 $X^k$($k\in\mathbf Z$)が基底である。$R_sX^k(t)=(ts)^k=s^kt^k$ なので $R_sX^k=s^kX^k$ で、各直線 $KX^k$ は右移動で不変な 1 次元、すなわち単純な部分加群である。$A(G)=\bigoplus_{k\in\mathbf Z}KX^k$ は単純部分加群の和なので半単純である。上の定理(有理表現の半単純性と正則関数の代数(アフィンの場合))の 1 により、$K^*$ の有理表現はすべて半単純で、その 2 により単純な有理表現は、$A(G)$ の右移動で不変なある有限次元部分空間の上の表現に同型である。その部分空間は単純部分加群 $\bigoplus_kKX^k$ の中の単純部分加群なので、組成因子として、どれかの $KX^k$ に同型である。さらに指標 $s\mapsto s^k$($k\in\mathbf Z$)は互いに相異なり($K^*$ は無限)、本書『0-3 線形代数と群の道具』の相異なる指標の一次独立性により固有ベクトルは単項式の定数倍に限るので、この部分空間はある直線 $KX^k$ の上の表現 $s\mapsto s^k$ に同型である。この計算は標数によらない。$K^*$ とその積のトーラスについての詳しい扱いは本書『3-1 トーラスの関数環と閉部分群』にある。
$G=K$(加法群)とすると $A(G)=K[X]$ で、$R_sf(t)=f(t+s)$ である。$W=\langle1,X\rangle$ は $R_s1=1$、$R_sX=X+s$ で不変で、基底 $(1,X)$ に関する $R_s$ の行列(列の規約)は $\begin{pmatrix}1&s\\0&1\end{pmatrix}$ である。本書『1-1 行列係数と有限性の補題』の定理「有理性の判定」の 2 により、これは $K$ の 2 次元の有理表現である。この表現は半単純でない。実際、不変な直線 $K(a+bX)$ で $b\ne0$ のものがあれば、$R_s(a+bX)=(a+bs)+bX$ がその直線に入るので、$X$ の係数を比べて $R_s(a+bX)=a+bX$、すなわちすべての $s$ で $bs=0$ となり、$b\ne0$ に反する。したがって不変な直線は $K\cdot1$ だけで、$K\cdot1$ は不変な補空間をもたない。ゆえに主結果 1 の左辺(有理表現がすべて半単純)は成り立たない。右辺も成り立たない。$A(G)$ が半単純なら、その部分加群 $W$ も半単純になるはずだからである。$n\ge1$ について、次数 $n$ 以下の多項式の空間も右移動で不変で、$W$ を部分加群に含むので半単純でない。この計算も標数によらない。標数 0 で加法群の有理表現がどれも冪零な作用素の指数関数 $t\mapsto\exp(tn)$ で与えられることは、本書『4-1 乗法的 Jordan 分解と単冪性』の主結果「標数 0 の加法群の有理表現」で示す。
次の例は主結果 4 の構成を具体的に見る。
$G=K^*$、$A(G)=K[X,X^{-1}]$ の生成元を $f_1=X$、$f_2=X^{-1}$ とする。上の例により $V_{f_1}=KX$、$V_{f_2}=KX^{-1}$ で、$V=\langle X,X^{-1}\rangle$、基底 $(X,X^{-1})$ に関する $u(s)=R_s|_V$ の行列は $\mathrm{diag}(s,s^{-1})$ である。上の定理(アフィン代数群は線形群)により、$u$ は $K^*$ から閉部分群 $\{\mathrm{diag}(s,s^{-1})\}\subset\mathrm{GL}(2,K)$ への代数群の同型である。実際この部分群は $\{y:y_{12}=y_{21}=0,\ y_{11}y_{22}=1\}$ で閉で、逆写像は行列成分 $y_{11}$ をとる射である。生成元を $X$ だけにすると $V=KX$、$u(s)=s\in\mathrm{GL}(1,K)$ となるが、$X$ は $K$ 代数として $A(G)$ を生成しないので、構成の条件を満たさない。それでもこの場合は $u$ が同型 $K^*\to\mathrm{GL}(1,K)$ になるのは、$\mathrm{GL}(1,K)$ の座標環が $\det^{-1}=X^{-1}$ を含むからで、段 3 の $u^*$ の像が $X^{-1}$ を含むことに当たる。
以下は後代の結果の紹介である(本書が文献を開いて確かめていないものはそう書く)。
本頁が対応する原論文は Généralités sur les groupes algébriques affines. Groupes algébriques affines commutatifs Gro56 の n° 1 の後半である。
| 本頁 | 原論文 | 印字頁 |
|---|---|---|
| 定理(有理表現の半単純性と正則関数の代数(アフィンの場合))、定理(有理表現の半単純性と正則関数の代数(一般の代数群)) | Lemme 1・2 の Corollaire | 4-02〜4-03 |
| 定理(標数 0 の半単純群)、注意(原論文の例示の読み(半単純の意味とアフィン性)) | Corollaire の後の例示 | 4-03 |
| 背景と動機(任意標数の重要な例の予告) | 同じ段の n° 3 への予告 | 4-03 |
| 定理(アフィン代数群は線形群)、注意(原論文の証明と閉埋め込みの段) | Proposition 1 とその証明 | 4-03 |
| 注意(印字の読み(Proposition 1 の証明)) | Proposition 1 の証明の $f\in A(G)$ | 4-03 |
| 定義(線形群とアフィン代数群) | 用語と記号の線形代数群、Proposition 1 の後のアフィン代数群の定義 | 4-01、4-03 |
| 背景と動機(忠実な有理表現をもつとは限らない) | 用語と記号 | 4-01 |
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