0-4 記号と約束

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

本書の全頁で共通に使う記号と約束(点の群としての枠組み、有理表現の読み、行列の列の規約、左右の正則表現、標数指数、整数の約束)、本書が足した仮定、原論文の番号と印字頁の引き方、状態札の意味、原論文の誤植の読み方をまとめた頁である。各頁が「記号は記号と約束のとおり」と書くときはこの頁を指す。記号は各頁でも必要な箇所で短く繰り返し、頁の中で変えるときはその頁で断る。前提となる概念の要点は本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』と本書『0-3 線形代数と群の道具』に、読む順序と状態札の集計は本書『0-1 本書の読み方』にある。
原論文は同じ文字を複数の意味に使う。表現の名と自己準同型の $u$(Proposition 4 の主張と証明)、定理の主張で固定した元と証明の中の別の元の $x$(Théorème 3 の証明)、トーラスの次元と単因子の $n$(Théorème 2 の系 1 の後の観察)、同じ閉部分群を指す $A$ と $H$(同じ観察)、表現の $u$ と 1 の冪根の群 $u(n_i)$ である。本書はこれを書き分けた。下の表の「原論文」の欄は原論文の記号を、左の欄は本書が使う記号を示す。

枠組みの規約

本書全体で一つに決めた読み方である。どれも原論文が明示しないか、同じ語を二通りに読める所で、各頁はこの読みの下で判定する。

点の群

  • $K$ は代数的閉体である。原論文は講演の冒頭で「簡単のため」とこう置き、多くの結果はこの仮定なしでも真だと断るが、どれがそうかは書かない(印字 4-01)。
  • 代数的集合(原論文の「ensemble algébrique」)は、$K$ 上有限型の分離的な被約スキームを、その $K$ 点の集合と同一視したものと読む。古典的な意味の代数多様体の有限個の非交和を許すものである。原論文は定義を同じセミナーの exposé 1(Cartier Car56)に委ね、本書はその本文を開いていない。多様体(variété)は既約な代数的集合である。$A(X)$ は $X$ 上の正則関数の $K$ 代数である。
  • 代数群は、代数的集合で積と逆元をとる写像が射であるものである。原論文が明記するとおり、連結とも、忠実な有理表現をもつとも限らない(印字 4-01)。連結は Zariski 位相の意味で、代数群では既約と同じである(本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』)。
  • この枠組みは点の群の枠組みで、本書の「アフィン代数群」「対角化可能群」は後代の群スキームと同一視しない。代数的閉体の上の被約なアフィン群スキームの $K$ 点に当たる。とくに、対角化可能群の指標群のねじれの位数が $p$ と素に限られることは、この枠組みから来る。標数 $p$ の 1 の $p$ 乗根は点としては $1$ だけで、群スキームとしての $\mu_p$(指標群 $\mathbf Z/p$)は見えない(本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』の注意、本書『3-2 指標群との双対性』の「その後の発展」)。

有理表現

有理表現・有理準同型(représentation rationnelle、homomorphisme rationnel)は、代数群の射である群準同型と読む。原論文はこの講演で有理表現を定義せず、有限次元の表現が有理的であることと係数がすべて正則であることの同値を、定義の言い換えのように述べる(印字 4-02)。本書はこの同値を本書『1-1 行列係数と有限性の補題』で主結果として示す。この読みは本書が足した仮定の一つである(下の「本書が足した仮定」)。

行列の規約

有限次元の表現 $u$ と基底 $(e_i)$ について、$u(s)$ の行列 $F(s)=(F_{ij}(s))$ を
$$u(s)e_j=\sum_iF_{ij}(s)e_i$$
で定める(第 $j$ 列が $u(s)e_j$ の座標。列の規約)。このとき $u(st)=u(s)u(t)$ は $F(st)=F(s)F(t)$、すなわち $F_{ki}(st)=\sum_jF_{kj}(s)F_{ji}(t)$ で、原論文の式 (2)($k=0$ の場合、印字 4-04)はこの規約で成り立つ。双対基底 $(e_i^*)$ に関する反傾表現 $\check u$ の行列は
$$\check F_{ij}(s)=\langle e_i,\check u(s)e_j^*\rangle=F_{ji}(s^{-1})$$
で、これも同じ乗法公式を満たす。
原論文は規約を書かない。Théorème 1 の証明は、(2) と「部分群に入る ⇔ $F_{0i}(s)=0$($i\ge1$)」を組み合わせるが、列の規約では直線 $Ke_0$ を保つ条件は $F_{i0}(s)=0$ であり、後者が成り立つ行の規約では (2) の $s$ と $t$ が入れ替わる。印字の二つの式は、どちらの規約でも同時には成り立たない。本書は半不変式を反傾表現の行列成分 $F_i(t)=\check F_{0i}(t)=F_{i0}(t^{-1})$ に取り替えて、原論文の論証を文字どおり通す(本書『2-1 半不変式による閉部分群の切り出し』)。検算:$\mathrm{GL}(2,K)$ で基底を $e_0,e_1$ とすると、直線 $Ke_0$ の固定群は列の規約で $\{F_{10}=0\}$、すなわち上三角行列の群で、$\{F_{01}=0\}$ は下三角行列の群である。

左右の正則表現

$G$ 上の関数 $f$ に
$$L_sf(t)=f(s^{-1}t),\qquad R_sf(t)=f(ts)$$
とおく(原論文の定義、印字 4-01)。$L_{st}=L_sL_t$、$R_{st}=R_sR_t$ で、左の移動と右の移動は互いに可換である。Lemme 2 の証明の印字「$R_sf(t)=f(st)$」(印字 4-02)は誤植で、$f(ts)$ と読む。論証はどちらでも通る。

標数指数

$p$ は $K$ の標数指数で、標数が $0$ でなければ標数、$0$ なら $1$ である(原論文の「exposant caractéristique」、印字 4-01)。「$p\ne1$」は正標数、「$p=1$」は標数 $0$ を表す。「$p$ と素」は、$p=1$ なら条件が無いことを意味する。記号 $p\nmid d$ も本書では「$d$ は $p$ と素」と同じ意味に使い、$p=1$ なら条件は無いものとする(字義どおりに「$1$ は $d$ を割らない」とは読まない)。

整数の約束

Proposition 2 の $\{x:x^n=e\}$ の $n$、その系の証明の $D_n$、Proposition 4 の系 2 の「$p$ と素な整数 $m$」、Théorème 3 の証明に出る位数 $m$ は、正の整数と読む。$n=0$ では $D_0=D$ でトーラスなら有限でなく、$p=1$ で $m=0$ を許すと単冪な $x\ne1$ について $x^0$ の生成する閉部分群は $\{e\}$ で $x$ のそれと違う。原論文の使い方はすべて正の整数である。これも本書が足した仮定の一つである。

記号の一覧

体と代数的集合

記号意味原論文
$K$、$p$代数的閉体と、その標数指数同
代数的集合、多様体上の「点の群」の読みと、既約な代数的集合ensemble algébrique、variété
$A(X)$$X$ 上の正則関数の $K$ 代数。$X$ がアフィンなら有限生成の被約 $K$ 代数で、$X$ はその極大イデアルの集合と同一視される同
$D(f)$主開集合 $\{f\ne0\}$。座標環は $A(X)[1/f]$言葉で(exposé 1 を引く)
$K^n$、$K^{*n}$加法群の積(アフィン空間)と乗法群の積(トーラス)。$A(K^n)=K[X_1,\dots,X_n]$、$A(K^{*n})=K[X_i,X_i^{-1}]$同
$\overline S$Zariski 位相での閉包言葉で

代数群と表現

記号意味原論文
$G$、$e$、$G_0$代数群、単位元、単位成分$G$、$e$、言葉で
$\mathrm{GL}(V)$、$\mathrm{GL}(n,K)$一般線形群。$A(\mathrm{GL}(V))=K[X_{ij},\det^{-1}]$$G\ell(V)$、$G\ell(n,K)$
$D(n)$、$U(n)$$\mathrm{GL}(n,K)$ の対角行列の群($\cong K^{*n}$)と、対角成分が $1$ の上三角行列の群$D(n)$、無し
線形代数群、アフィン代数群有限次元の $V$ について $\mathrm{GL}(V)$ の閉部分群、それに同型な代数群。後者はアフィン代数的集合である代数群と同じ(本書『1-2 アフィン代数群は線形群』)groupe algébrique linéaire、groupe algébrique affine
有理表現、有理準同型代数群の射である群準同型représentation rationnelle、homomorphisme rationnel
$u$、$u(s)$、$s.x$表現、その $s$ での値、作用同($u$ は自己準同型の名にも使う)
$V'$、$\langle x,x'\rangle$、$\check u$双対空間、対、反傾表現。$\langle x,s.x'\rangle=\langle s^{-1}.x,x'\rangle$同
$u_{x,x'}$、$A_u$係数 $u_{x,x'}(s)=\langle s.x,x'\rangle$ と、係数の張る係数空間同
$L_s$、$R_s$、$V_f$左右の正則表現と、関数 $f$ の右移動 $R_bf$ の張る空間同、言葉で
$F(s)=(F_{ij}(s))$、$\check F_{ij}$列の規約の行列と、反傾表現の行列 $\check F_{ij}(s)=F_{ji}(s^{-1})$同(規約を書かない)
$\Lambda^dV$$d$ 次外冪puissance extérieure d-ième
半不変、重さ $\lambda$$sF=\lambda(s)F$ となること、その乗法的指標 $\lambda$semi-invariant、poids
正規部分群共役で不変な部分群sous-groupe invariant
$E_\chi$、$\chi^g$正規部分群 $H$ の指標 $\chi$ の重さ空間 $\{f:L_hf=\chi(h)f\ (h\in H)\}$ と、$\chi^g(h)=\chi(g^{-1}hg)$$E_0$(重さ $\lambda$ の空間だけ)
$\mathcal A$、$\rho_{\mathcal A}$重さ空間ごとに区分対角な自己準同型の代数と、その上の共役作用(本書『2-2 正規部分群を核とする表現』)無し(本書が立てる)

対角化可能群と指標

記号意味原論文
対角的、対角化可能部分群が $D(n)$ に含まれること、$D(n)$ の部分群に共役なこと。表現が対角化可能とは、像が対角的になる基底があることdiagonal、diagonalisable
対角化可能群$D(n)$ の閉部分群に同型な代数群groupe algébrique diagonalisable(「部分群」と書く)
トーラス$K^{*n}$ に同型な代数群tore algébrique
$\hat D$、$\{x,\hat x\}$有理指標(有理準同型 $D\to K^*$)の群を加法的に書いたものと、$\{x,\hat x\}=\hat x(x)$同
$A^\circ$、$B^\circ$$A\subset D$ の直交 $\{\hat x:\hat x(a)=1\ (a\in A)\}$ と、$B\subset\hat D$ の直交 $\{x:\hat x(x)=1\ (\hat x\in B)\}$同
${}^tu$転置 $\hat D'\to\hat D$、$\chi\mapsto\chi\circ u$同
$\mu_d$$\{\zeta\in K^*:\zeta^d=1\}$($d$ は正の整数)。$d$ が $p$ と素なら位数 $d$ の巡回群$u(n_i)$
$d_i$トーラスの閉部分群の単因子$n_i$
$D_n$$\{x\in D:x^n=e\}$($n$ は正の整数)同
$D/A$$A^\circ$ の生成系 $\chi_1,\dots,\chi_r$ による $\pi=(\chi_1,\dots,\chi_r)\colon D\to K^{*r}$ の像 $\pi(D)$ と同一視したもの$D/A$(構造を定義しない)

半単純元・単冪元と Jordan 分解

記号意味原論文
半単純、単冪自己準同型について:対角化可能、恒等+冪零(本書『0-3 線形代数と群の道具』)。アフィン代数群の元について:忠実な実現で像がそうであること(実現によらない。本書『4-2 準同型と閉部分群と Jordan 分解』)semi-simple、unipotent
$x_s$、$x_n$、$x_u$加法的 Jordan 分解 $x=x_s+x_n$ の半単純部分・冪零部分と、$x$ が可逆なときの単冪部分 $x_u=1+x_s^{-1}x_n$同
$G_s$、$G_u$半単純元・単冪元の集合同
$G(y)$$y$ を含む最小の閉部分群。本書は閉部分群の共通部分として定義し、$\{y^n\}_{n\in\mathbf Z}$ の Zariski 閉包との一致は本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』の事実として述べる$G(y)$
$\exp$、$\log$冪零な $n$ に $\exp(tn)=\sum_kt^kn^k/k!$、単冪な $y$ に $\log y=\sum_{k\ge1}(-1)^{k+1}(y-1)^k/k$(どちらも有限和、標数 $0$)同($\log$ の $1/k$ を欠く)
$u_n$加法群の有理表現 $t\mapsto\exp(tn)$同
単冪群すべての元が単冪な代数群groupe unipotent

可換群と共役作用

記号意味原論文
$W_2$長さ 2 の Witt ベクトルの群:$K^2$ に $(a_0,a_1)+(b_0,b_1)=(a_0+b_0,\ a_1+b_1+S(a_0,b_0))$、$S(a,b)=(a^p+b^p-(a+b)^p)/p$(整数係数の多項式を $p$ で還元したもの)を入れた群無し(「Witt 群」の名だけ)
加法多項式$\sum_ka_kt^{p^k}$ の形の多項式無し(式だけ)
$\sigma_g$共役 $m\mapsto gmg^{-1}$$\sigma_g$
$\gamma_g$、$N'_g$、$N''_g$$\gamma_g(n)=gng^{-1}n^{-1}$ と、その核と像同
$T[m]$トーラスの $\{x:x^m=e\}$$T_n$(Proposition 5 の系 2 の証明)

後代の名称(群スキーム、Hopf 代数、余加群、Cartier 双対、Jordan–Chevalley 分解、加法多項式、Dieudonné 加群)は説明と「その後の発展」で使うが、原論文自身の表記として帰属させない。

本書が足した仮定

原論文が暗黙に使う仮定のうち、定義からも紙面の他の文からも出ないものを、本書は足した仮定として明示する。足した仮定の下での判定は、主結果の札と頁の注意の両方に書く。頁では番号でなく内容で呼ぶ。足した仮定は次の五つである。

仮定内容使う頁外したとき
代数的集合と有理性の読み代数的集合は上の「点の群」の読み、有理表現・有理準同型は代数群の射である群準同型0-2、1-1(全体に掛かる)、3-1、4-1有理表現を抽象群の準同型まで広げると、トーラスの有理指標が単項式に限ることが壊れる($K=\mathbf C$ で複素共役 $z\mapsto\bar z$ は $K^*$ の抽象群の自己準同型だが単項式でない。本書『3-1 トーラスの関数環と閉部分群』)。代数的集合を被約とは限らないスキームまで広げると、指標群のねじれの位数が $p$ と素に限られることが壊れる($\mu_p$)
対角化可能群の定義の部分群は閉原論文の「$D(n)$ の部分群に同型な代数群」の部分群を閉部分群と読む3-1、3-2代数群として同型と言う限り読みは変わらない(代数群の構造をもつ部分群は局所閉で、局所閉な部分群は閉)。抽象群の同型に読み替えると壊れる:複素数の加法群は抽象群としては $\mathbf C^*$ の部分群に同型だが、代数群としては対角化できない(本書『0-3 線形代数と群の道具』の可除群、本書『3-1 トーラスの関数環と閉部分群』)
整数は正上の「整数の約束」3-3、4-2$n=0$ では $D_0=D$ でトーラスなら有限でない。$p=1$ で $m=0$ を許すと、単冪な $x\ne1$ について $x^0$ の生成する閉部分群は $\{e\}$ で、$x$ の生成する閉部分群と違う
商 $D/A$ の読み系 3 c) の $D/A$ を、$A^\circ$ の生成系による準同型 $\pi\colon D\to K^{*r}$ の像 $\pi(D)$ と同一視する($\pi$ の核は $A$、像は閉部分群)3-2原論文は商の代数群の構造を定義せずに $\widehat{D/A}=A^\circ$ を「自明」とする。構造が無ければ $D/A$ の有理指標が定義されず、主張は意味をもたない
系 2 の自己同型は代数群の自己同型Proposition 5 の系 2 のトーラスの自己同型 $u$ を、有理で逆も有理なものと読む5-3外しても主張は成り立つ(抽象群の自己同型でも結論は同じ)。本書の主な証明はトーラスが可除群であることを使ってこの読みに依らず、原論文の証明の道(有限位数の元の稠密性と、$u$ の固定点の集合の閉性)を通すときだけこの読みが要る

原論文の引き方

  • 「原論文」は Grothendieck Gro56、すなわち Séminaire C. Chevalley(E.N.S., 1956/57、「Classification des groupes de Lie algébriques」)の exposé 4 で、1956 年 11 月 26 日の講演の記録(印字 14 頁)である。掲載巻は Che58 である。頁は印字頁 4-01〜4-14 で引き、「印字 4-05」のように書く。Numdam で公開されている PDF の頁番号 $n$ は印字 4-$(n-1)$ に当たる(PDF の 1 頁目は Numdam の表紙)。
  • 原論文の構成は、冒頭の予告と用語の約束(印字 4-01)、n° 1 線形表現の一般論とアフィン代数群(印字 4-01〜4-03)、n° 2 アフィン代数群の閉部分群(印字 4-03〜4-04)、n° 3 対角化可能な代数群(印字 4-05〜4-08)、n° 4 半単純元と単冪元(印字 4-08〜4-11)、n° 5 可換なアフィン代数群(印字 4-12〜4-14)である(節の題は本書の訳)。原論文に文献表と脚注は無い。
  • 番号付きの主張は原論文の語のまま「Théorème 1」「Proposition 4 a)」「Lemme 3」と引く。系は「Théorème 1 の系」「Proposition 2 の系」「Proposition 5 の系 1」のように親の主張の名を付けて引く。Théorème 2 の系 1〜系 4 は、原論文 n° 3 の中心なので「系 3 c)」のように短く引く。注意は「n° 5 の注意」と引く。対応は次のとおりである。
    原論文印字頁本書の頁
    冒頭の予告と用語の約束、Lemme 1、Lemme 24-01〜4-021-1
    Lemme 1・2 の系とその後の例示、Proposition 1、アフィン代数群の定義4-02〜4-031-2
    半不変元と重さ、式 (2)、Théorème 1(Chevalley)4-03〜4-042-1
    Théorème 1 の系4-042-2
    n° 3 冒頭の定義、Théorème 2、系 1、系 1 の後の観察、系 24-05〜4-063-1
    n° 3 冒頭の括弧内の予告、系 3 a) b) c)、転置、系 44-05〜4-073-2
    Proposition 2 とその系4-07〜4-083-3
    n° 4 冒頭の定義、Proposition 3 とその系、Proposition 4 a) b)4-08〜4-104-1
    Proposition 4 の系 1・系 2、Théorème 3、Lemme 3、Théorème 3 の系4-10〜4-114-2
    Théorème 4、n° 5 の注意の前半4-125-1
    n° 5 の注意の後半4-125-2
    Proposition 5、その系 1・系 24-12〜4-145-3
  • Lemme 3 は Théorème 3 の証明の途中で述べられる。印字 4-10 は Théorème 3 の証明の「Notons le」で終わり、印字 4-11 は Lemme 3 の見出しで始まる。文が補題の見出しへ流れ込む組版で、印字頁は連続しており欠頁は無い。
  • 原論文が外に引くのは三つだけである。冒頭で次の講演の目標とする Borel の論文 Bor56(印字 4-01)、代数的集合の定義・積の上の正則関数の分解・主開集合の座標環を委ねる同じセミナーの exposé 1(Cartier Car56。印字 4-01、4-02、4-05)、核と像の次元の和を委ねる exposé 3(Lazard Laz56。印字 4-13)である。exposé 1・3 の講演者と題名は原論文の紙面に無く、Numdam の目録による。本書はどちらの本文も開いておらず、それに委ねられた事実は本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』の標準的な定理として引くか、外部入力として名指す。
  • 原論文自身の確信度(Théorème・Proposition・Lemme・Corollaire・Remarque の別、「évidemment」「il est bien connu」「on vérifie tout de suite」「résulte facilement」の省略、「Chevalley a montré」の帰属、「semble」の控えめな所見)は、各頁の本文で添える。本書の状態札とは別のものである。

状態札の意味

  • 状態札は [完結]/[条件付き:何を引用したか]/[未完結:何が足りないか] の三つである。
  • [完結]は、定義から出るもの、標準的な空間の座標環(本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』の命題(標準的な空間の座標環)と命題(1 次元の場合と積の稠密性))、初等的な代数(本書『0-3 線形代数と群の道具』の全体)、本書の他の頁で[完結]とした主張だけで閉じるものである。
  • [条件付き]は、本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』で証明なしに述べる標準的な定理(定理(アフィン代数的集合の基本定理)、定理(Zariski 位相の基本)、定理(閉部分群と単位成分の基本)、定理(準同型の像と次元の公式)。Hilbert の基底定理、零点定理、積の座標環がテンソル積であること、閉埋め込みの判定、Zariski 位相の一般の場合、部分群の閉包、単位成分、準同型の像の閉性、次元の公式などを含む)か、外部入力(同じセミナーの exposé 1 に委ねられた積の上の正則関数の分解、標数 $0$ の半単純群の完全可約性)を引いた段が一つでもあるものである。札には何を引用したかを書く。条件は依存する主結果に伝わる。原論文に証明が無くても、本書が外部入力を使った証明を与えたものは[条件付き]である。
  • [未完結]は、原論文にも本書にも、外部入力を使った証明も無いものである。原論文が「Chevalley a montré」のように事実として述べ、証明も出典の表示も無い主張は、「原論文はこう述べる」と書き、「証明した」とは書かない(本書『5-2 正標数の可換単冪群と加法多項式』)。
  • 本書が足した仮定に依る主結果は、札に「足した仮定:…」と書く。
  • 原論文の主張が印字のままでは成り立たないときは、訂正した主張を主結果とし、原論文の形がどの反例で破れるかを札の後に添え、原論文の印字と反例をその頁の注意と反例のボックスに書く。したがって札に[偽]は現れない。
  • 例と反例は主結果に数えない。反例は「例と反例」の節に置き、どの条件を外すとどの結論が壊れるかを最初に書く。
  • 第 0 章の頁は引用の頁なので札を付けない。本書の基準で数えた集計と、名指しした古典的前提を完結の側に数えた場合の集計の違いは、本書『0-1 本書の読み方』にある。

主張の偽と証明の段の偽

本書は、原論文の不備を三つに分ける。
一つ目は、印字のままの主張や式が成り立たないもので、近くの式や文が正しい形を与え、誤った形に理由が添えられていないものである。本書はこれを誤植として訂正した形で読み、主結果は訂正形で数える。本書に当たるのは、Théorème 1 の証明で外冪をとる空間(本書『2-1 半不変式による閉部分群の切り出し』)、Proposition 4 b) の証明の対数の級数の係数 $1/k$(本書『4-1 乗法的 Jordan 分解と単冪性』)、Proposition 5 の共通部分の記号(本書『5-3 共役作用の分解』)である。最後のものは印字のままでは主張の形が偽になり反例があるので、主結果の名前に「訂正形」と入れ、札の後に原論文の形を破る反例を添えた。
二つ目は、主張は正しいが証明の一段が偽のものである。本書に当たるのは Théorème 1 の系の証明の「部分群が正規だから重さの空間は群全体で不変」という段(印字 4-04)の一つで、単項行列の群と対角部分の組でこの段が破れ、原論文の構成に従うと核が部分群より小さい表現ができる。主張は正しいので、本書は主結果を系そのもの(証明を重さ空間の直和分解に替えたもの)とし、原論文の段を注意に、反例を反例のボックスに置いた(本書『2-2 正規部分群を核とする表現』)。群が連結または可換なら原論文の段も通る。
三つ目は、主張は正しいが証明の段の記号の規約が食い違うもので、Théorème 1 の証明の行列の添字(上の「行列の規約」)が当たる。本書は半不変式を取り替えて原論文の論証をそのまま通した。
二つ目と三つ目は主張の判定ではないので、札には影響しない。特徴づけや同値を述べる主張については、条件の書き落としが無いかを主張ごとに確かめ、書き落としは見つからなかった。整数を正と読むことは、書き落としではなく原論文の語の約束の問題として、足した仮定に数えた。

原論文の誤植の読み方

誤植と記号の揺れは主結果に数えず、各頁の注意に「印字は…、…と読む」と書く。同じ意味の字形が一箇所だけ揺れるもの(例えば 1-2 の Proposition 1 の証明の必要性の文に一度だけ現れる $\mathrm{GL}(n,K)$。原論文は他所で $G\ell$ と書く)は、この一覧には含めず各頁の注意にだけ書く。一覧は次のとおりである。

箇所原論文の印字本書の読み頁
印字 4-02、Lemme 2 の証明$R_sf(t)=f(st)$$f(ts)$(定義どおり。論証はどちらでも通る)1-1
印字 4-02、Lemme 1 の前後「susjective」、「sous-G-module」の G が上にずれるsurjective、sous-G-module(綴りと打ち損じ)1-1
印字 4-03、Proposition 1 の証明$f$ と $A(G)$ の間の記号が $\in$ でなく a に似た字$f\in A(G)$(打ち損じ)1-2
印字 4-03、半不変元の定義「sous un A ∈ G」$s\in G$ のもとで(直後の式は $sF=\lambda(s)F$)2-1
印字 4-04、Théorème 1 の証明$E$ を「$W$ の $d$ 次外冪」とする$V$ の $d$ 次外冪($W$ の外冪では部分群の外の元の平行移動が表現を定めない)2-1
印字 4-04、Théorème 1 の証明半不変式 $F_i=F_{0i}$ と「$s\in H$ ⇔ $F_{0i}(s)=0$」反傾表現の行列成分 $F_{i0}(t^{-1})$(上の「行列の規約」)2-1
印字 4-04、Théorème 1 とその系の証明右移動についての Lemme 2 を左移動に使う左移動の有限性も同じ分解から出るので、本書は Lemme 2 の主結果に含めて引く1-1、2-1
印字 4-05、系 1 の後の観察「$p\hat x=A^\circ$ implique」$p\hat x\in A^\circ$ ならば3-1
印字 4-06、同じ観察の続き閉部分群の名が $A$ から $H$ に替わる$A$ に揃える3-1
印字 4-07、系 3 c) の証明「dans K」、「les groupes en question est」$K^*$ の中へ、sont(文法)3-2
印字 4-08、Proposition 3 の系「deux endomorphismes」第 1 式は自己準同型について、第 2 式 $(xy)_u=x_uy_u$ は自己同型について読む($x_u$ は可逆なときだけ定義される)4-1
印字 4-09、Proposition 4 の主張と a) の証明主張の「dont l'image contient u」、証明 a) の元の名 $u$どちらも元 $x$($u$ は表現の名)4-1
印字 4-09、Proposition 4 の主張「soit」に取消線状の線判読でき、文意は変わらない4-1
印字 4-09、Proposition 4 b) の証明$P(st)=P(s)P(t)$$P(s+t)=P(s)P(t)$(加法群の演算。どちらからも $P=1$ が出る)4-1
印字 4-09、Proposition 4 b) の証明(2 か所)対数の級数 $\sum_k(-1)^{k+1}m^k$$\sum_k(-1)^{k+1}m^k/k$(印字のままでは $\exp(\log x)=x$ が成り立たない。同じ段の形式的冪級数の恒等式が正しい形を与える)4-1
印字 4-10、Proposition 4 の系 1 の証明「sont l'image」dont l'image(綴り)4-2
印字 4-11、Théorème 3 の証明位数 $m$ の元を主張の $x$ と同じ名で呼ぶ別の名($y$)で呼ぶ4-2
印字 4-11、Théorème 3 の系$f(x)_u=f(x)_u$$f(x)_u=f(x_u)$(直前の $f(x)_s=f(x_s)$ と対)4-2
印字 4-12、n° 5 の注意「tout ses éléments」tous ses éléments(文法)5-3
印字 4-12、Proposition 5$N'_gN''_g=e$$N'_g\cap N''_g=e$(次頁の証明が共通部分の形で 2 度書く。印字のままでは反例がある)5-3
印字 4-13、Proposition 5 の系 1「(resp. nilpotent)」(resp. unipotent)(可逆な元は冪零でないので、印字のままでは空虚な主張)5-3
印字 4-13、Proposition 5 の系 1 の証明生成する閉部分群の元がすべて半単純(単冪)である理由を「$g^n$ もそうで $H$ が可換だから」とだけ書く可換群の半単純元(単冪元)の全体が閉部分群をなすこと(Théorème 4)に黙って依る5-3

誤植ではなく、紙面の語の読み方を本書が決めたものもある。n° 1 の観察の「左右の移動の張る空間」は、左移動と右移動の和ではなく、両側の移動 $f\mapsto L_aR_bf$ の張る空間と読む(原論文の語は両様に読めるので偽ではなく読みの確定である。本書『1-1 行列係数と有限性の補題』)。Lemme 1・2 の系の後の「標数 $0$ の半単純群」は、線形代数群について言う語と読み、アフィンであることを定義の側に入れる(本書『1-2 アフィン代数群は線形群』)。原論文の「sous-groupe invariant」は今日の正規部分群である。

頁の読み方の約束

  • 第 1 章以後の各頁は「この頁で示すこと」「背景と動機」「定義と準備」「主結果と証明」「例と反例」「その後の発展」「原論文との対応表」の順に並ぶ。頁をまたぐ参照は「本書『n-m 頁名』」、別の巻への参照は「第 6 巻『交叉理論の基本性質』の頁『n-m 名前』」の形で書く。
  • 定理類はボックスに書き、ボックスは名前で引く(「上の定理(名前)」)。主結果の名前は各頁の「この頁で示すこと」の名前と同じである。
  • 「その後の発展」は時点を明記し、本書が文献を開いて確かめていないものは「本書は確かめていない」と書く。
  • 「例」「反例」を使い、反例ではどの条件を外したかを最初に書く。

参考文献

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