本書の全頁で共通に使う記号と約束(点の群としての枠組み、有理表現の読み、行列の列の規約、左右の正則表現、標数指数、整数の約束)、本書が足した仮定、原論文の番号と印字頁の引き方、状態札の意味、原論文の誤植の読み方をまとめた頁である。各頁が「記号は記号と約束のとおり」と書くときはこの頁を指す。記号は各頁でも必要な箇所で短く繰り返し、頁の中で変えるときはその頁で断る。前提となる概念の要点は本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』と本書『0-3 線形代数と群の道具』に、読む順序と状態札の集計は本書『0-1 本書の読み方』にある。
原論文は同じ文字を複数の意味に使う。表現の名と自己準同型の $u$(Proposition 4 の主張と証明)、定理の主張で固定した元と証明の中の別の元の $x$(Théorème 3 の証明)、トーラスの次元と単因子の $n$(Théorème 2 の系 1 の後の観察)、同じ閉部分群を指す $A$ と $H$(同じ観察)、表現の $u$ と 1 の冪根の群 $u(n_i)$ である。本書はこれを書き分けた。下の表の「原論文」の欄は原論文の記号を、左の欄は本書が使う記号を示す。
本書全体で一つに決めた読み方である。どれも原論文が明示しないか、同じ語を二通りに読める所で、各頁はこの読みの下で判定する。
有理表現・有理準同型(représentation rationnelle、homomorphisme rationnel)は、代数群の射である群準同型と読む。原論文はこの講演で有理表現を定義せず、有限次元の表現が有理的であることと係数がすべて正則であることの同値を、定義の言い換えのように述べる(印字 4-02)。本書はこの同値を本書『1-1 行列係数と有限性の補題』で主結果として示す。この読みは本書が足した仮定の一つである(下の「本書が足した仮定」)。
有限次元の表現 $u$ と基底 $(e_i)$ について、$u(s)$ の行列 $F(s)=(F_{ij}(s))$ を
$$u(s)e_j=\sum_iF_{ij}(s)e_i$$
で定める(第 $j$ 列が $u(s)e_j$ の座標。列の規約)。このとき $u(st)=u(s)u(t)$ は $F(st)=F(s)F(t)$、すなわち $F_{ki}(st)=\sum_jF_{kj}(s)F_{ji}(t)$ で、原論文の式 (2)($k=0$ の場合、印字 4-04)はこの規約で成り立つ。双対基底 $(e_i^*)$ に関する反傾表現 $\check u$ の行列は
$$\check F_{ij}(s)=\langle e_i,\check u(s)e_j^*\rangle=F_{ji}(s^{-1})$$
で、これも同じ乗法公式を満たす。
原論文は規約を書かない。Théorème 1 の証明は、(2) と「部分群に入る ⇔ $F_{0i}(s)=0$($i\ge1$)」を組み合わせるが、列の規約では直線 $Ke_0$ を保つ条件は $F_{i0}(s)=0$ であり、後者が成り立つ行の規約では (2) の $s$ と $t$ が入れ替わる。印字の二つの式は、どちらの規約でも同時には成り立たない。本書は半不変式を反傾表現の行列成分 $F_i(t)=\check F_{0i}(t)=F_{i0}(t^{-1})$ に取り替えて、原論文の論証を文字どおり通す(本書『2-1 半不変式による閉部分群の切り出し』)。検算:$\mathrm{GL}(2,K)$ で基底を $e_0,e_1$ とすると、直線 $Ke_0$ の固定群は列の規約で $\{F_{10}=0\}$、すなわち上三角行列の群で、$\{F_{01}=0\}$ は下三角行列の群である。
$G$ 上の関数 $f$ に
$$L_sf(t)=f(s^{-1}t),\qquad R_sf(t)=f(ts)$$
とおく(原論文の定義、印字 4-01)。$L_{st}=L_sL_t$、$R_{st}=R_sR_t$ で、左の移動と右の移動は互いに可換である。Lemme 2 の証明の印字「$R_sf(t)=f(st)$」(印字 4-02)は誤植で、$f(ts)$ と読む。論証はどちらでも通る。
$p$ は $K$ の標数指数で、標数が $0$ でなければ標数、$0$ なら $1$ である(原論文の「exposant caractéristique」、印字 4-01)。「$p\ne1$」は正標数、「$p=1$」は標数 $0$ を表す。「$p$ と素」は、$p=1$ なら条件が無いことを意味する。記号 $p\nmid d$ も本書では「$d$ は $p$ と素」と同じ意味に使い、$p=1$ なら条件は無いものとする(字義どおりに「$1$ は $d$ を割らない」とは読まない)。
Proposition 2 の $\{x:x^n=e\}$ の $n$、その系の証明の $D_n$、Proposition 4 の系 2 の「$p$ と素な整数 $m$」、Théorème 3 の証明に出る位数 $m$ は、正の整数と読む。$n=0$ では $D_0=D$ でトーラスなら有限でなく、$p=1$ で $m=0$ を許すと単冪な $x\ne1$ について $x^0$ の生成する閉部分群は $\{e\}$ で $x$ のそれと違う。原論文の使い方はすべて正の整数である。これも本書が足した仮定の一つである。
| 記号 | 意味 | 原論文 |
|---|---|---|
| $K$、$p$ | 代数的閉体と、その標数指数 | 同 |
| 代数的集合、多様体 | 上の「点の群」の読みと、既約な代数的集合 | ensemble algébrique、variété |
| $A(X)$ | $X$ 上の正則関数の $K$ 代数。$X$ がアフィンなら有限生成の被約 $K$ 代数で、$X$ はその極大イデアルの集合と同一視される | 同 |
| $D(f)$ | 主開集合 $\{f\ne0\}$。座標環は $A(X)[1/f]$ | 言葉で(exposé 1 を引く) |
| $K^n$、$K^{*n}$ | 加法群の積(アフィン空間)と乗法群の積(トーラス)。$A(K^n)=K[X_1,\dots,X_n]$、$A(K^{*n})=K[X_i,X_i^{-1}]$ | 同 |
| $\overline S$ | Zariski 位相での閉包 | 言葉で |
| 記号 | 意味 | 原論文 |
|---|---|---|
| $G$、$e$、$G_0$ | 代数群、単位元、単位成分 | $G$、$e$、言葉で |
| $\mathrm{GL}(V)$、$\mathrm{GL}(n,K)$ | 一般線形群。$A(\mathrm{GL}(V))=K[X_{ij},\det^{-1}]$ | $G\ell(V)$、$G\ell(n,K)$ |
| $D(n)$、$U(n)$ | $\mathrm{GL}(n,K)$ の対角行列の群($\cong K^{*n}$)と、対角成分が $1$ の上三角行列の群 | $D(n)$、無し |
| 線形代数群、アフィン代数群 | 有限次元の $V$ について $\mathrm{GL}(V)$ の閉部分群、それに同型な代数群。後者はアフィン代数的集合である代数群と同じ(本書『1-2 アフィン代数群は線形群』) | groupe algébrique linéaire、groupe algébrique affine |
| 有理表現、有理準同型 | 代数群の射である群準同型 | représentation rationnelle、homomorphisme rationnel |
| $u$、$u(s)$、$s.x$ | 表現、その $s$ での値、作用 | 同($u$ は自己準同型の名にも使う) |
| $V'$、$\langle x,x'\rangle$、$\check u$ | 双対空間、対、反傾表現。$\langle x,s.x'\rangle=\langle s^{-1}.x,x'\rangle$ | 同 |
| $u_{x,x'}$、$A_u$ | 係数 $u_{x,x'}(s)=\langle s.x,x'\rangle$ と、係数の張る係数空間 | 同 |
| $L_s$、$R_s$、$V_f$ | 左右の正則表現と、関数 $f$ の右移動 $R_bf$ の張る空間 | 同、言葉で |
| $F(s)=(F_{ij}(s))$、$\check F_{ij}$ | 列の規約の行列と、反傾表現の行列 $\check F_{ij}(s)=F_{ji}(s^{-1})$ | 同(規約を書かない) |
| $\Lambda^dV$ | $d$ 次外冪 | puissance extérieure d-ième |
| 半不変、重さ $\lambda$ | $sF=\lambda(s)F$ となること、その乗法的指標 $\lambda$ | semi-invariant、poids |
| 正規部分群 | 共役で不変な部分群 | sous-groupe invariant |
| $E_\chi$、$\chi^g$ | 正規部分群 $H$ の指標 $\chi$ の重さ空間 $\{f:L_hf=\chi(h)f\ (h\in H)\}$ と、$\chi^g(h)=\chi(g^{-1}hg)$ | $E_0$(重さ $\lambda$ の空間だけ) |
| $\mathcal A$、$\rho_{\mathcal A}$ | 重さ空間ごとに区分対角な自己準同型の代数と、その上の共役作用(本書『2-2 正規部分群を核とする表現』) | 無し(本書が立てる) |
| 記号 | 意味 | 原論文 |
|---|---|---|
| 対角的、対角化可能 | 部分群が $D(n)$ に含まれること、$D(n)$ の部分群に共役なこと。表現が対角化可能とは、像が対角的になる基底があること | diagonal、diagonalisable |
| 対角化可能群 | $D(n)$ の閉部分群に同型な代数群 | groupe algébrique diagonalisable(「部分群」と書く) |
| トーラス | $K^{*n}$ に同型な代数群 | tore algébrique |
| $\hat D$、$\{x,\hat x\}$ | 有理指標(有理準同型 $D\to K^*$)の群を加法的に書いたものと、$\{x,\hat x\}=\hat x(x)$ | 同 |
| $A^\circ$、$B^\circ$ | $A\subset D$ の直交 $\{\hat x:\hat x(a)=1\ (a\in A)\}$ と、$B\subset\hat D$ の直交 $\{x:\hat x(x)=1\ (\hat x\in B)\}$ | 同 |
| ${}^tu$ | 転置 $\hat D'\to\hat D$、$\chi\mapsto\chi\circ u$ | 同 |
| $\mu_d$ | $\{\zeta\in K^*:\zeta^d=1\}$($d$ は正の整数)。$d$ が $p$ と素なら位数 $d$ の巡回群 | $u(n_i)$ |
| $d_i$ | トーラスの閉部分群の単因子 | $n_i$ |
| $D_n$ | $\{x\in D:x^n=e\}$($n$ は正の整数) | 同 |
| $D/A$ | $A^\circ$ の生成系 $\chi_1,\dots,\chi_r$ による $\pi=(\chi_1,\dots,\chi_r)\colon D\to K^{*r}$ の像 $\pi(D)$ と同一視したもの | $D/A$(構造を定義しない) |
| 記号 | 意味 | 原論文 |
|---|---|---|
| 半単純、単冪 | 自己準同型について:対角化可能、恒等+冪零(本書『0-3 線形代数と群の道具』)。アフィン代数群の元について:忠実な実現で像がそうであること(実現によらない。本書『4-2 準同型と閉部分群と Jordan 分解』) | semi-simple、unipotent |
| $x_s$、$x_n$、$x_u$ | 加法的 Jordan 分解 $x=x_s+x_n$ の半単純部分・冪零部分と、$x$ が可逆なときの単冪部分 $x_u=1+x_s^{-1}x_n$ | 同 |
| $G_s$、$G_u$ | 半単純元・単冪元の集合 | 同 |
| $G(y)$ | $y$ を含む最小の閉部分群。本書は閉部分群の共通部分として定義し、$\{y^n\}_{n\in\mathbf Z}$ の Zariski 閉包との一致は本書『0-2 アフィン代数的集合と代数群』の事実として述べる | $G(y)$ |
| $\exp$、$\log$ | 冪零な $n$ に $\exp(tn)=\sum_kt^kn^k/k!$、単冪な $y$ に $\log y=\sum_{k\ge1}(-1)^{k+1}(y-1)^k/k$(どちらも有限和、標数 $0$) | 同($\log$ の $1/k$ を欠く) |
| $u_n$ | 加法群の有理表現 $t\mapsto\exp(tn)$ | 同 |
| 単冪群 | すべての元が単冪な代数群 | groupe unipotent |
| 記号 | 意味 | 原論文 |
|---|---|---|
| $W_2$ | 長さ 2 の Witt ベクトルの群:$K^2$ に $(a_0,a_1)+(b_0,b_1)=(a_0+b_0,\ a_1+b_1+S(a_0,b_0))$、$S(a,b)=(a^p+b^p-(a+b)^p)/p$(整数係数の多項式を $p$ で還元したもの)を入れた群 | 無し(「Witt 群」の名だけ) |
| 加法多項式 | $\sum_ka_kt^{p^k}$ の形の多項式 | 無し(式だけ) |
| $\sigma_g$ | 共役 $m\mapsto gmg^{-1}$ | $\sigma_g$ |
| $\gamma_g$、$N'_g$、$N''_g$ | $\gamma_g(n)=gng^{-1}n^{-1}$ と、その核と像 | 同 |
| $T[m]$ | トーラスの $\{x:x^m=e\}$ | $T_n$(Proposition 5 の系 2 の証明) |
後代の名称(群スキーム、Hopf 代数、余加群、Cartier 双対、Jordan–Chevalley 分解、加法多項式、Dieudonné 加群)は説明と「その後の発展」で使うが、原論文自身の表記として帰属させない。
原論文が暗黙に使う仮定のうち、定義からも紙面の他の文からも出ないものを、本書は足した仮定として明示する。足した仮定の下での判定は、主結果の札と頁の注意の両方に書く。頁では番号でなく内容で呼ぶ。足した仮定は次の五つである。
| 仮定 | 内容 | 使う頁 | 外したとき |
|---|---|---|---|
| 代数的集合と有理性の読み | 代数的集合は上の「点の群」の読み、有理表現・有理準同型は代数群の射である群準同型 | 0-2、1-1(全体に掛かる)、3-1、4-1 | 有理表現を抽象群の準同型まで広げると、トーラスの有理指標が単項式に限ることが壊れる($K=\mathbf C$ で複素共役 $z\mapsto\bar z$ は $K^*$ の抽象群の自己準同型だが単項式でない。本書『3-1 トーラスの関数環と閉部分群』)。代数的集合を被約とは限らないスキームまで広げると、指標群のねじれの位数が $p$ と素に限られることが壊れる($\mu_p$) |
| 対角化可能群の定義の部分群は閉 | 原論文の「$D(n)$ の部分群に同型な代数群」の部分群を閉部分群と読む | 3-1、3-2 | 代数群として同型と言う限り読みは変わらない(代数群の構造をもつ部分群は局所閉で、局所閉な部分群は閉)。抽象群の同型に読み替えると壊れる:複素数の加法群は抽象群としては $\mathbf C^*$ の部分群に同型だが、代数群としては対角化できない(本書『0-3 線形代数と群の道具』の可除群、本書『3-1 トーラスの関数環と閉部分群』) |
| 整数は正 | 上の「整数の約束」 | 3-3、4-2 | $n=0$ では $D_0=D$ でトーラスなら有限でない。$p=1$ で $m=0$ を許すと、単冪な $x\ne1$ について $x^0$ の生成する閉部分群は $\{e\}$ で、$x$ の生成する閉部分群と違う |
| 商 $D/A$ の読み | 系 3 c) の $D/A$ を、$A^\circ$ の生成系による準同型 $\pi\colon D\to K^{*r}$ の像 $\pi(D)$ と同一視する($\pi$ の核は $A$、像は閉部分群) | 3-2 | 原論文は商の代数群の構造を定義せずに $\widehat{D/A}=A^\circ$ を「自明」とする。構造が無ければ $D/A$ の有理指標が定義されず、主張は意味をもたない |
| 系 2 の自己同型は代数群の自己同型 | Proposition 5 の系 2 のトーラスの自己同型 $u$ を、有理で逆も有理なものと読む | 5-3 | 外しても主張は成り立つ(抽象群の自己同型でも結論は同じ)。本書の主な証明はトーラスが可除群であることを使ってこの読みに依らず、原論文の証明の道(有限位数の元の稠密性と、$u$ の固定点の集合の閉性)を通すときだけこの読みが要る |
| 原論文 | 印字頁 | 本書の頁 |
|---|---|---|
| 冒頭の予告と用語の約束、Lemme 1、Lemme 2 | 4-01〜4-02 | 1-1 |
| Lemme 1・2 の系とその後の例示、Proposition 1、アフィン代数群の定義 | 4-02〜4-03 | 1-2 |
| 半不変元と重さ、式 (2)、Théorème 1(Chevalley) | 4-03〜4-04 | 2-1 |
| Théorème 1 の系 | 4-04 | 2-2 |
| n° 3 冒頭の定義、Théorème 2、系 1、系 1 の後の観察、系 2 | 4-05〜4-06 | 3-1 |
| n° 3 冒頭の括弧内の予告、系 3 a) b) c)、転置、系 4 | 4-05〜4-07 | 3-2 |
| Proposition 2 とその系 | 4-07〜4-08 | 3-3 |
| n° 4 冒頭の定義、Proposition 3 とその系、Proposition 4 a) b) | 4-08〜4-10 | 4-1 |
| Proposition 4 の系 1・系 2、Théorème 3、Lemme 3、Théorème 3 の系 | 4-10〜4-11 | 4-2 |
| Théorème 4、n° 5 の注意の前半 | 4-12 | 5-1 |
| n° 5 の注意の後半 | 4-12 | 5-2 |
| Proposition 5、その系 1・系 2 | 4-12〜4-14 | 5-3 |
本書は、原論文の不備を三つに分ける。
一つ目は、印字のままの主張や式が成り立たないもので、近くの式や文が正しい形を与え、誤った形に理由が添えられていないものである。本書はこれを誤植として訂正した形で読み、主結果は訂正形で数える。本書に当たるのは、Théorème 1 の証明で外冪をとる空間(本書『2-1 半不変式による閉部分群の切り出し』)、Proposition 4 b) の証明の対数の級数の係数 $1/k$(本書『4-1 乗法的 Jordan 分解と単冪性』)、Proposition 5 の共通部分の記号(本書『5-3 共役作用の分解』)である。最後のものは印字のままでは主張の形が偽になり反例があるので、主結果の名前に「訂正形」と入れ、札の後に原論文の形を破る反例を添えた。
二つ目は、主張は正しいが証明の一段が偽のものである。本書に当たるのは Théorème 1 の系の証明の「部分群が正規だから重さの空間は群全体で不変」という段(印字 4-04)の一つで、単項行列の群と対角部分の組でこの段が破れ、原論文の構成に従うと核が部分群より小さい表現ができる。主張は正しいので、本書は主結果を系そのもの(証明を重さ空間の直和分解に替えたもの)とし、原論文の段を注意に、反例を反例のボックスに置いた(本書『2-2 正規部分群を核とする表現』)。群が連結または可換なら原論文の段も通る。
三つ目は、主張は正しいが証明の段の記号の規約が食い違うもので、Théorème 1 の証明の行列の添字(上の「行列の規約」)が当たる。本書は半不変式を取り替えて原論文の論証をそのまま通した。
二つ目と三つ目は主張の判定ではないので、札には影響しない。特徴づけや同値を述べる主張については、条件の書き落としが無いかを主張ごとに確かめ、書き落としは見つからなかった。整数を正と読むことは、書き落としではなく原論文の語の約束の問題として、足した仮定に数えた。
誤植と記号の揺れは主結果に数えず、各頁の注意に「印字は…、…と読む」と書く。同じ意味の字形が一箇所だけ揺れるもの(例えば 1-2 の Proposition 1 の証明の必要性の文に一度だけ現れる $\mathrm{GL}(n,K)$。原論文は他所で $G\ell$ と書く)は、この一覧には含めず各頁の注意にだけ書く。一覧は次のとおりである。
| 箇所 | 原論文の印字 | 本書の読み | 頁 |
|---|---|---|---|
| 印字 4-02、Lemme 2 の証明 | $R_sf(t)=f(st)$ | $f(ts)$(定義どおり。論証はどちらでも通る) | 1-1 |
| 印字 4-02、Lemme 1 の前後 | 「susjective」、「sous-G-module」の G が上にずれる | surjective、sous-G-module(綴りと打ち損じ) | 1-1 |
| 印字 4-03、Proposition 1 の証明 | $f$ と $A(G)$ の間の記号が $\in$ でなく a に似た字 | $f\in A(G)$(打ち損じ) | 1-2 |
| 印字 4-03、半不変元の定義 | 「sous un A ∈ G」 | $s\in G$ のもとで(直後の式は $sF=\lambda(s)F$) | 2-1 |
| 印字 4-04、Théorème 1 の証明 | $E$ を「$W$ の $d$ 次外冪」とする | $V$ の $d$ 次外冪($W$ の外冪では部分群の外の元の平行移動が表現を定めない) | 2-1 |
| 印字 4-04、Théorème 1 の証明 | 半不変式 $F_i=F_{0i}$ と「$s\in H$ ⇔ $F_{0i}(s)=0$」 | 反傾表現の行列成分 $F_{i0}(t^{-1})$(上の「行列の規約」) | 2-1 |
| 印字 4-04、Théorème 1 とその系の証明 | 右移動についての Lemme 2 を左移動に使う | 左移動の有限性も同じ分解から出るので、本書は Lemme 2 の主結果に含めて引く | 1-1、2-1 |
| 印字 4-05、系 1 の後の観察 | 「$p\hat x=A^\circ$ implique」 | $p\hat x\in A^\circ$ ならば | 3-1 |
| 印字 4-06、同じ観察の続き | 閉部分群の名が $A$ から $H$ に替わる | $A$ に揃える | 3-1 |
| 印字 4-07、系 3 c) の証明 | 「dans K」、「les groupes en question est」 | $K^*$ の中へ、sont(文法) | 3-2 |
| 印字 4-08、Proposition 3 の系 | 「deux endomorphismes」 | 第 1 式は自己準同型について、第 2 式 $(xy)_u=x_uy_u$ は自己同型について読む($x_u$ は可逆なときだけ定義される) | 4-1 |
| 印字 4-09、Proposition 4 の主張と a) の証明 | 主張の「dont l'image contient u」、証明 a) の元の名 $u$ | どちらも元 $x$($u$ は表現の名) | 4-1 |
| 印字 4-09、Proposition 4 の主張 | 「soit」に取消線状の線 | 判読でき、文意は変わらない | 4-1 |
| 印字 4-09、Proposition 4 b) の証明 | $P(st)=P(s)P(t)$ | $P(s+t)=P(s)P(t)$(加法群の演算。どちらからも $P=1$ が出る) | 4-1 |
| 印字 4-09、Proposition 4 b) の証明(2 か所) | 対数の級数 $\sum_k(-1)^{k+1}m^k$ | $\sum_k(-1)^{k+1}m^k/k$(印字のままでは $\exp(\log x)=x$ が成り立たない。同じ段の形式的冪級数の恒等式が正しい形を与える) | 4-1 |
| 印字 4-10、Proposition 4 の系 1 の証明 | 「sont l'image」 | dont l'image(綴り) | 4-2 |
| 印字 4-11、Théorème 3 の証明 | 位数 $m$ の元を主張の $x$ と同じ名で呼ぶ | 別の名($y$)で呼ぶ | 4-2 |
| 印字 4-11、Théorème 3 の系 | $f(x)_u=f(x)_u$ | $f(x)_u=f(x_u)$(直前の $f(x)_s=f(x_s)$ と対) | 4-2 |
| 印字 4-12、n° 5 の注意 | 「tout ses éléments」 | tous ses éléments(文法) | 5-3 |
| 印字 4-12、Proposition 5 | $N'_gN''_g=e$ | $N'_g\cap N''_g=e$(次頁の証明が共通部分の形で 2 度書く。印字のままでは反例がある) | 5-3 |
| 印字 4-13、Proposition 5 の系 1 | 「(resp. nilpotent)」 | (resp. unipotent)(可逆な元は冪零でないので、印字のままでは空虚な主張) | 5-3 |
| 印字 4-13、Proposition 5 の系 1 の証明 | 生成する閉部分群の元がすべて半単純(単冪)である理由を「$g^n$ もそうで $H$ が可換だから」とだけ書く | 可換群の半単純元(単冪元)の全体が閉部分群をなすこと(Théorème 4)に黙って依る | 5-3 |
誤植ではなく、紙面の語の読み方を本書が決めたものもある。n° 1 の観察の「左右の移動の張る空間」は、左移動と右移動の和ではなく、両側の移動 $f\mapsto L_aR_bf$ の張る空間と読む(原論文の語は両様に読めるので偽ではなく読みの確定である。本書『1-1 行列係数と有限性の補題』)。Lemme 1・2 の系の後の「標数 $0$ の半単純群」は、線形代数群について言う語と読み、アフィンであることを定義の側に入れる(本書『1-2 アフィン代数群は線形群』)。原論文の「sous-groupe invariant」は今日の正規部分群である。
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