方べきの定理(高校数学)

概要

方べきの定理(高校数学)は、点 $P$ を通る直線が中心 $O$、半径 $r$ の円と $A,B$ で交わるとき、内積 $\overrightarrow{PA}\cdot\overrightarrow{PB}$ が直線によらず $OP^2-r^2$($P$ の方べき)に等しいという定理である。接線なら $PT^2$ に等しく、$P$ が円の内部なら値は負になる。円の方程式を $x^2+y^2+Dx+Ey+F=0$ と書くと、方べきは左辺に $P$ の座標を代入した値であり、2 円の方べきが等しい点の集合は方程式の差が表す直線(根軸)である。一方の円の中心の、他方の円に関する方べきが一方の半径の 2 乗に等しいことは、交わる 2 円が直交することと同値であり、反転や、円を 4 次元のベクトルとみる符号 $(3,1)$ の 2 次形式の見方につながる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 三平方の定理, 円の方程式, 解と係数の関係, ベクトルの内積(高校数学)

高校での出発点:交点までの長さの積

点 $P$ を通る直線が円と 2 点 $A,B$ で交わるとき、積 $PA\cdot PB$ は直線の引き方によらない。これが教科書で習う 方べきの定理 である。教科書では次の 3 つの形で述べる。

  • $P$ が円の内部にあり、$P$ を通る 2 本の弦 $AB$、$CD$ があるとき、$PA\cdot PB=PC\cdot PD$。
  • $P$ が円の外部にあり、$P$ を通る 2 本の直線が円とそれぞれ $A,B$ と $C,D$ で交わるとき、$PA\cdot PB=PC\cdot PD$。
  • $P$ が円の外部にあり、$P$ を通る直線が円と $A,B$ で交わり、$P$ から引いた接線の接点が $T$ のとき、$PA\cdot PB=PT^2$。
    教科書の証明は、相似な三角形を見つけて比をとる(rem-pop-textbook)。この記事では、一定になる値そのものに名前をつけ、それが 円の方程式の左辺に $P$ の座標を代入した値 であることを示す。すると 3 つの形が 1 つの式にまとまり、2 つの円の関係(根軸)、円に関する反転、円を 4 次元のベクトルとみる見方へとつながる。まず座標で確かめる。
円の内部の点を通る弦

円 $x^2+y^2=25$(中心 $O$ が原点、半径 $5$)と点 $P=(1,2)$ を考える。$OP^2=1+4=5<25$ なので、$P$ は円の内部にある。
(1) 直線 $y=2$:$x^2+4=25$ より $x=\pm\sqrt{21}$ で、交点は $A=(-\sqrt{21},2)$、$B=(\sqrt{21},2)$ である。$PA=\sqrt{21}+1$、$PB=\sqrt{21}-1$ なので $PA\cdot PB=21-1=20$ である。
(2) 直線 $x=1$:$1+y^2=25$ より $y=\pm2\sqrt6$ で、$PA=2\sqrt6+2$、$PB=2\sqrt6-2$ なので $PA\cdot PB=24-4=20$ である。
(3) 直線 $y=x+1$:$x^2+(x+1)^2=25$ より $2x^2+2x-24=0$、つまり $(x-3)(x+4)=0$ で、交点は $C=(3,4)$、$D=(-4,-3)$ である。$PC=\sqrt{2^2+2^2}=2\sqrt2$、$PD=\sqrt{5^2+5^2}=5\sqrt2$ なので $PC\cdot PD=2\sqrt2\cdot5\sqrt2=20$ である。
3 本とも積は $20$ で、これは $25-OP^2=25-5$ に等しい。

円の外部の点を通る直線と接線

同じ円 $x^2+y^2=25$ と点 $P=(7,1)$ を考える。$OP^2=49+1=50>25$ なので、$P$ は円の外部にある。
(1) 直線 $y=1$:交点は $(\pm2\sqrt6,1)$ で、$PA=7-2\sqrt6$、$PB=7+2\sqrt6$ なので $PA\cdot PB=49-24=25$ である。
(2) 直線 $y=\dfrac{x-5}2$:$x^2+\dfrac{(x-5)^2}4=25$ の両辺を $4$ 倍して整理すると $5x^2-10x-75=0$、つまり $(x-5)(x+3)=0$ で、交点は $C=(5,0)$、$D=(-3,-4)$ である。$PC=\sqrt{2^2+1^2}=\sqrt5$、$PD=\sqrt{10^2+5^2}=5\sqrt5$ なので $PC\cdot PD=25$ である。
(3) 接線:点 $T=(3,4)$ は円の上にあり、$\overrightarrow{OT}\cdot\overrightarrow{TP}=(3,4)\cdot(4,-3)=12-12=0$ なので、直線 $PT$ は $T$ における接線(半径 $OT$ に垂直な直線)である。$PT^2=4^2+(-3)^2=25$ である。$T'=(4,-3)$ も同じく接点で、$PT'^2=3^2+4^2=25$ である。
どれも $25$ で、これは $OP^2-25=50-25$ に等しい。

円 x² + y² = 25 と 3 つの場合。(a) 内部の点 P(1, 2) を通る 2 本の弦で積はどちらも 20、(b) 外部の点 P(7, 1) を通る 2 本の直線で積はどちらも 25、(c) 同じ P からの接線の長さの 2 乗も 25 で、割線 y = 1 の積 PA · PB = 25 と等しい 円 x² + y² = 25 と 3 つの場合。(a) 内部の点 P(1, 2) を通る 2 本の弦で積はどちらも 20、(b) 外部の点 P(7, 1) を通る 2 本の直線で積はどちらも 25、(c) 同じ P からの接線の長さの 2 乗も 25 で、割線 y = 1 の積 PA · PB = 25 と等しい
ex-pop-start-inside と ex-pop-start-outside では、一定の値が、内部の点では $r^2-OP^2$、外部の点では $OP^2-r^2$ になった($r$ は半径)。符号を込めて $OP^2-r^2$ と 1 つにまとめるのがこの記事の出発点である。この記事で答える問いは次の 4 つである。

  1. 積が直線によらないのはなぜか。一定の値は何か。→ thm-pop-main
  2. 積が等しいことから、4 点が同じ円周上にあると言えるか。→ cor-pop-converse
  3. 一定の値を座標で計算するにはどうするか。2 つの円ではどうなるか。→ prop-pop-equation、prop-pop-radical
  4. 大学の数学では、この値はどう見えるか。→ prop-pop-orthogonal、prop-pop-bilinear
    高校の計算・定理この記事の言葉大学の言葉
    $PA\cdot PB=PC\cdot PD=PT^2$方べき $OP^2-r^2$(符号つき)円に付随する 2 次関数の値
    内部と外部で式が変わる内積 $\overrightarrow{PA}\cdot\overrightarrow{PB}$ の符号符号つきの長さ
    円の方程式 $x^2+y^2+Dx+Ey+F=0$左辺に $P$ を代入した値が方べき2 次関数の等高線
    2 円の方程式を引いて交点を通る直線方べきが等しい点の集合(根軸)円の束(1 次結合)
    $OP\cdot OP'=r^2$ の点 $P'$直交する円は反転で自分に移る反転、1 次分数変換
    円の係数 $(D,E,F)$円を 4 次元のベクトルとみる符号 $(3,1)$ の 2 次形式

方べきを定義する

点の円に関する方べき

中心 $O$、半径 $r>0$ の円 $\Gamma$ と点 $P$ について
$$ \operatorname{pow}_\Gamma(P):=OP^2-r^2 $$
を、$P$ の $\Gamma$ に関する 方べき という。$\Gamma$ が文脈から決まるときは $\operatorname{pow}(P)$ と書く。

$OP< r$、$OP=r$、$OP>r$ に応じて、方べきは負、$0$、正になる。つまり方べきの符号は、$P$ が円の内部・円周上・外部のどこにあるかを表す。中心では最小値 $-r^2$ をとる。

方べきを計算する
  1. 円 $x^2+y^2=25$ について、$P=(1,2)$ の方べきは $5-25=-20$、$P=(7,1)$ の方べきは $50-25=25$、$P=(3,4)$ の方べきは $25-25=0$ である。
  2. 中心 $(2,-1)$、半径 $3$ の円について、$P=(0,0)$ の方べきは $(0-2)^2+(0+1)^2-9=5-9=-4$、$P=(5,3)$ の方べきは $(5-2)^2+(3+1)^2-9=25-9=16$ である。

方べきは $P$ の座標の 2 次関数である。値が等しい点を結ぶと、中心 $O$ を中心とする同心円になる(図 2)。$\operatorname{pow}(P)=c$ は $OP^2=r^2+c$ と同じだからである。
単位円 x² + y² = 1 に関する方べき x² + y² − 1 の等高線。同心円になり、円の内部で負、円周上で 0、外部で正 単位円 x² + y² = 1 に関する方べき x² + y² − 1 の等高線。同心円になり、円の内部で負、円周上で 0、外部で正
直線上の積を符号つきで扱うため、ベクトルの内積を使う。$A,B$ が $P$ を通る 1 本の直線の上にあるとき、$\overrightarrow{PA}$ と $\overrightarrow{PB}$ は平行である。内積 $\overrightarrow{PA}\cdot\overrightarrow{PB}$ は、$A,B$ が $P$ から見て同じ向きにあれば $PA\cdot PB$、$P$ が $A$ と $B$ の間にあれば $-PA\cdot PB$ である。$\overrightarrow{PA}$ と $\overrightarrow{PB}$ のなす角が $0^\circ$ なら $\cos0^\circ=1$、$180^\circ$ なら $\cos180^\circ=-1$ だからである(ベクトルの内積(高校数学))。$A=P$ または $B=P$ なら内積は $0$ である。

主定理:方べきの定理

まず、直線と円の交わり方を、中心から直線に下ろした垂線で調べておく。

直線と円の交点

中心 $O$、半径 $r$ の円 $\Gamma$ と直線 $\ell$ があり、$O$ から $\ell$ に下ろした垂線の足を $M$、$\ell$ の向きを表す長さ $1$ のベクトルを $\boldsymbol u$ とする。$\ell$ の点 $X=M+t\boldsymbol u$($t$ は実数)が $\Gamma$ の上にあるのは、$t^2=r^2-OM^2$ のときに限る。したがって、$OM< r$ なら交点は $M\pm h\boldsymbol u$($h=\sqrt{r^2-OM^2}>0$)の 2 つ、$OM=r$ なら $M$ だけ、$OM>r$ なら交点はない。

垂線の足からの距離で表す

方針:$OX^2$ を三平方の定理で $OM$ と $t$ で表す。
$\overrightarrow{OX}=\overrightarrow{OM}+t\boldsymbol u$ で、$\overrightarrow{OM}$ は $\ell$ に垂直なので $\overrightarrow{OM}\cdot\boldsymbol u=0$ である。したがって
$$ OX^2=\bigl(\overrightarrow{OM}+t\boldsymbol u\bigr)\cdot\bigl(\overrightarrow{OM}+t\boldsymbol u\bigr)=OM^2+2t\,\overrightarrow{OM}\cdot\boldsymbol u+t^2|\boldsymbol u|^2=OM^2+t^2 $$
である($O$ が $\ell$ の上にあって $M=O$ のときも同じ式が成り立つ)。$X$ が $\Gamma$ の上にあることは $OX^2=r^2$、つまり $t^2=r^2-OM^2$ と同じである。右辺が正なら $t=\pm h$ の 2 つ、$0$ なら $t=0$ だけ、負なら解はない。$\square$

$OM=r$ のとき、$\ell$ は $M$ で半径 $OM$ に垂直なので、$\ell$ は $M$ における 接線 である。以下、$\ell$ が $\Gamma$ に接するときは、接点 $T$ を「$A=B=T$」と 2 回数えて扱う。

方べきの定理(符号つきの形)

円 $\Gamma$ と点 $P$ があり、$P$ を通る直線 $\ell$ が $\Gamma$ と $A,B$ で交わる(接するときは $A=B=T$ とする)。このとき
$$ \overrightarrow{PA}\cdot\overrightarrow{PB}=\operatorname{pow}_\Gamma(P)=OP^2-r^2 $$
である。特に、この値は直線 $\ell$ の選び方によらない。

垂線の足を使う証明

方針:lem-pop-line-circle の $M$ と $\boldsymbol u$ で $A,B,P$ を表し、内積を計算する。
段 1(点を表す)。lem-pop-line-circle により、$A=M-h\boldsymbol u$、$B=M+h\boldsymbol u$ と書ける($h=\sqrt{r^2-OM^2}\ge0$。接するときは $h=0$ で $A=B=M$)。$P$ も $\ell$ の上にあるので、実数 $c$ を使って $P=M+c\boldsymbol u$ と書ける。
段 2(内積)。$\overrightarrow{PA}=A-P=(-h-c)\boldsymbol u$、$\overrightarrow{PB}=B-P=(h-c)\boldsymbol u$ なので
$$ \overrightarrow{PA}\cdot\overrightarrow{PB}=(-h-c)(h-c)|\boldsymbol u|^2=(c+h)(c-h)=c^2-h^2 $$
である。
段 3(方べき)。prf-pop-line-circle と同じ計算で $OP^2=OM^2+c^2$ である。また $h^2=r^2-OM^2$ である。したがって
$$ OP^2-r^2=(OM^2+c^2)-(OM^2+h^2)=c^2-h^2 $$
である。段 2 と比べて $\overrightarrow{PA}\cdot\overrightarrow{PB}=OP^2-r^2$ を得る。$\square$

2 つ目の証明は、交点を 2 次方程式の解として求め、解と係数の関係 を使う。

2 次方程式の解の積による証明

方針:$\ell$ の点を $P+s\boldsymbol u$ と書き、円の上にある条件を $s$ の 2 次方程式にする。解の積が方べきになる。
段 1(方程式)。$\boldsymbol u$ を $\ell$ の向きの長さ $1$ のベクトルとし、$\ell$ の点を $X=P+s\boldsymbol u$ と書く。$\overrightarrow{OX}=\overrightarrow{OP}+s\boldsymbol u$ なので
$$ OX^2-r^2=s^2+2s\,\overrightarrow{OP}\cdot\boldsymbol u+OP^2-r^2 $$
である。$X$ が円の上にある条件は、右辺が $0$ になることである。
段 2(解と係数の関係)。$A=P+s_1\boldsymbol u$、$B=P+s_2\boldsymbol u$ とすると、$s_1,s_2$ は段 1 の $s$ の 2 次方程式の 2 つの解である(接するときは重解 $s_1=s_2$)。$s^2$ の係数は $1$ なので、解と係数の関係により $s_1s_2=OP^2-r^2$ である。
段 3(内積)。$\overrightarrow{PA}\cdot\overrightarrow{PB}=s_1\boldsymbol u\cdot s_2\boldsymbol u=s_1s_2|\boldsymbol u|^2=s_1s_2$ なので、段 2 と合わせて主張を得る。$\square$

2 つ目の証明の段 1 の 2 次方程式の判別式が、直線と円が 2 点で交わるか、接するか、交わらないかを決める。判別式と重解・接線の関係は 2次方程式の判別式の正体 で扱う。

定理を数値で確かめる

ex-pop-start-inside (3) では $\overrightarrow{PC}=(2,2)$、$\overrightarrow{PD}=(-5,-5)$ で、内積は $-10-10=-20$ である。$P$ は $C$ と $D$ の間にあり、内積は負で、方べき $-20$(ex-pop-power-calc)に等しい。
ex-pop-start-outside (2) では $\overrightarrow{PC}=(-2,-1)$、$\overrightarrow{PD}=(-10,-5)$ で、内積は $20+5=25$ である。$C,D$ は $P$ から見て同じ向きにあり、内積は正で、方べき $25$ に等しい。
2 つ目の証明の形でも確かめる。$P=(7,1)$、$\boldsymbol u=(1,0)$(直線 $y=1$)とすると、段 1 の方程式は $s^2+2s\cdot7+50-25=s^2+14s+25=0$ で、解は $s=-7\pm2\sqrt6$ である。解の積は $49-24=25$ で方べきに等しい。

教科書の証明(相似な三角形)

教科書では、$P$ が円の内部にあり 2 本の弦 $AB$、$CD$ が $P$ で交わる場合を、次のように示す。三角形 $PAC$ と三角形 $PDB$ で、$\angle APC=\angle DPB$(対頂角)であり、$\angle PAC=\angle BAC$ と $\angle PDB=\angle CDB$ は同じ弧 $BC$ に対する円周角なので等しい(円周角の定理(高校数学))。2 組の角が等しいので 2 つの三角形は相似であり、$PA:PD=PC:PB$、すなわち $PA\cdot PB=PC\cdot PD$ である。外部の点の場合も、接線の場合も(接弦定理を使って)同じように相似な三角形を作る。この証明は 2 本の直線の積を比べるので、一定の値が何であるか($|OP^2-r^2|$)は出てこない。prf-pop-main は値そのものを計算するので、場合分けがいらない。Euclid『原論』第 III 巻の命題 35(交わる弦)と命題 36(割線と接線)がこの定理にあたり、命題 37 は命題 36 の逆($PA\cdot PB=PT^2$ なら直線 $PT$ は接線である)にあたる(Hea56)。

接線の場合を取り出しておく。

接線の長さ

$P$ が円 $\Gamma$ の外部にあり、$P$ から引いた接線の接点を $T$ とすると、$PT^2=\operatorname{pow}_\Gamma(P)$ である。特に、$P$ から引いた 2 本の接線の長さは等しい。$P$ を通る直線が $\Gamma$ と $A,B$ で交わるとき $PA\cdot PB=PT^2$ である。

接するときは $A=B=T$

方針:thm-pop-main を接線と割線に使う。
接線では $A=B=T$ なので、thm-pop-main により $\overrightarrow{PT}\cdot\overrightarrow{PT}=PT^2=\operatorname{pow}(P)$ である。2 本の接線の接点を $T,T'$ とすると $PT^2=PT'^2=\operatorname{pow}(P)$ で、長さは等しい。$P$ は外部にあるので $\operatorname{pow}(P)>0$ であり、$P$ を通る直線と $\Gamma$ の交点 $A,B$ について、内積 $\overrightarrow{PA}\cdot\overrightarrow{PB}$ は正、つまり $A,B$ は $P$ から見て同じ向きにあり、$PA\cdot PB=\overrightarrow{PA}\cdot\overrightarrow{PB}=\operatorname{pow}(P)=PT^2$ である。$\square$

接線の長さは、三平方の定理 $OP^2=OT^2+PT^2$(半径 $OT$ は接線に垂直)からも直接 $PT^2=OP^2-r^2$ と分かる。ex-pop-start-outside (3) の $PT^2=PT'^2=25$ はこの例である。
方べきの定理の逆も、同じ考えで示せる。

方べきの定理の逆

異なる 2 直線が点 $P$ で交わり、一方の上に $A,B$、他方の上に $C,D$ がある。4 点 $A,B,C,D$ は相異なり、どれも $P$ と異なるとする。
$$ \overrightarrow{PA}\cdot\overrightarrow{PB}=\overrightarrow{PC}\cdot\overrightarrow{PD} $$
ならば、$A,B,C,D$ は同じ円周上にある。

もう 1 つの交点と比べる

方針:$A,B,C$ を通る円 $\Gamma$ をとり、直線 $PC$ が $\Gamma$ と交わるもう 1 つの点が $D$ であることを示す。
段 1(円をとる)。$C$ は直線 $AB$ の上にない($C$ が直線 $AB$ の上にあれば、$C$ は 2 直線の交点 $P$ に一致するが、$C\ne P$ である)。よって $A,B,C$ は一直線上になく、3 点を通る円 $\Gamma$ がただ 1 つある(三角形の外心)。
段 2(もう 1 つの交点)。直線 $PC$ は $\Gamma$ と $C$ で交わるので、lem-pop-line-circle により、もう 1 つの交点 $D'$ がある(接するときは $D'=C$)。thm-pop-main を直線 $AB$ と直線 $CD'$ に使うと
$$ \overrightarrow{PC}\cdot\overrightarrow{PD'}=\operatorname{pow}_\Gamma(P)=\overrightarrow{PA}\cdot\overrightarrow{PB}=\overrightarrow{PC}\cdot\overrightarrow{PD} $$
である(最後の等号は仮定)。
段 3($D'=D$)。$D,D'$ は直線 $PC$ の上にあるので、$\boldsymbol u$ をこの直線の向きの長さ $1$ のベクトルとして $\overrightarrow{PC}=c\boldsymbol u$、$\overrightarrow{PD}=d\boldsymbol u$、$\overrightarrow{PD'}=d'\boldsymbol u$ と書ける。段 2 から $cd'=cd$ で、$C\ne P$ より $c\ne0$ なので $d'=d$、すなわち $D'=D$ である。よって $D$ は $\Gamma$ の上にある。$\square$

段 3 で $D'=C$(接する場合)なら $D=C$ となり、仮定 $C\ne D$ に反する。したがって、この場合は起こらない。仮定を内積(符号つき)でなく長さの積 $PA\cdot PB=PC\cdot PD$ にすると、逆は成り立たない(ex-pop-sign)。

座標で見る:方べきは円の方程式に代入した値

円の方程式を $x^2+y^2+Dx+Ey+F=0$ の形($x^2,y^2$ の係数が $1$)に書くと、方べきは代入するだけで求まる。

方べきと円の方程式

中心 $(a,b)$、半径 $r$ の円の方程式 $(x-a)^2+(y-b)^2=r^2$ を展開して
$$ f(x,y):=x^2+y^2+Dx+Ey+F=0\qquad(D=-2a,\ E=-2b,\ F=a^2+b^2-r^2) $$
と書く。このとき、点 $P=(p,q)$ の方べきは $f(p,q)$ に等しい。

展開する前の形に戻す

方針:$f(x,y)$ を平方完成して、中心からの距離の 2 乗が現れることを見る。
$D,E,F$ の定め方から
$$ f(x,y)=x^2-2ax+a^2+y^2-2by+b^2-r^2=(x-a)^2+(y-b)^2-r^2 $$
である。$x=p$、$y=q$ を代入すると、$(p-a)^2+(q-b)^2$ は中心 $O=(a,b)$ と $P$ の距離の 2 乗 $OP^2$ なので、$f(p,q)=OP^2-r^2=\operatorname{pow}(P)$ である。$\square$

代入で方べきを求める

円 $x^2+y^2-4x+2y-4=0$ は $(x-2)^2+(y+1)^2=9$ と同じで、中心 $(2,-1)$、半径 $3$ である。prop-pop-equation により、$P=(0,0)$ の方べきは $f(0,0)=-4$、$P=(5,3)$ の方べきは $f(5,3)=25+9-20+6-4=16$ である。どちらも ex-pop-power-calc (2) の値と一致する。$(0,0)$ は円の内部、$(5,3)$ は外部にあり、$(5,3)$ から引いた接線の長さは $\sqrt{16}=4$ である。

2 つの円について方べきが等しい点を集めると、方程式の引き算で 2 次の項が消える。

根軸

中心が異なる 2 つの円 $\Gamma_1:f_1(x,y)=x^2+y^2+D_1x+E_1y+F_1=0$、$\Gamma_2:f_2(x,y)=x^2+y^2+D_2x+E_2y+F_2=0$ について、$\operatorname{pow}_{\Gamma_1}(P)=\operatorname{pow}_{\Gamma_2}(P)$ となる点 $P$ の全体は、直線
$$ (D_1-D_2)x+(E_1-E_2)y+(F_1-F_2)=0 $$
であり、この直線は 2 つの中心を結ぶ直線に垂直である。この直線を 2 円の 根軸 という。

引き算すると 1 次式が残る

方針:prop-pop-equation により方べきの差は $f_1-f_2$ であり、これが 1 次式になる。
段 1(1 次式)。prop-pop-equation により、$\operatorname{pow}_{\Gamma_1}(P)=\operatorname{pow}_{\Gamma_2}(P)$ は $f_1(p,q)-f_2(p,q)=0$ と同じである。$x^2+y^2$ が消えて、$f_1-f_2=(D_1-D_2)x+(E_1-E_2)y+(F_1-F_2)$ となる。
段 2(直線であること)。中心は $\left(-\dfrac{D_1}2,-\dfrac{E_1}2\right)$、$\left(-\dfrac{D_2}2,-\dfrac{E_2}2\right)$ で、これらが異なるので $(D_1-D_2,E_1-E_2)\ne(0,0)$ である。よって段 1 の式は直線を表す。
段 3(垂直)。直線 $\alpha x+\beta y+\gamma=0$ の法線ベクトルは $(\alpha,\beta)$ である。ここでは $(D_1-D_2,E_1-E_2)$ で、中心 $O_1$ から $O_2$ へのベクトル $\left(\dfrac{D_1-D_2}2,\dfrac{E_1-E_2}2\right)$ の $2$ 倍に等しい。よって根軸は $O_1O_2$ に垂直である。$\square$

2 円が 2 点で交わるとき、交点ではどちらの方べきも $0$ なので、根軸は 2 つの交点を通る直線(共通弦を延ばした直線)である。2 円が交わらなくても根軸はあり、根軸上の点から 2 円に引いた接線の長さは等しい(cor-pop-tangent)。

根軸を求める
  1. 交わる 2 円 $x^2+y^2-25=0$ と $(x-6)^2+y^2=13$、つまり $x^2+y^2-12x+23=0$:引き算すると $(x^2+y^2-25)-(x^2+y^2-12x+23)=12x-48$ で、根軸は $x=4$ である。$x=4$ を 1 つ目に代入すると $y=\pm3$ で、$(4,\pm3)$ は 2 つ目の円の上にもある($(4-6)^2+9=13$)。根軸上の点 $Q=(4,7)$ の方べきは、$16+49-25=40$ と $16+49-48+23=40$ で等しい。
  2. 交わらない 2 円 $x^2+y^2-1=0$ と $(x-4)^2+y^2=4$、つまり $x^2+y^2-8x+12=0$:引き算すると $8x-13$ で、根軸は $x=\dfrac{13}8$ である。点 $\left(\dfrac{13}8,0\right)$ の方べきは $\dfrac{169}{64}-1=\dfrac{105}{64}$ と $\left(\dfrac{13}8-4\right)^2-4=\dfrac{361}{64}-\dfrac{256}{64}=\dfrac{105}{64}$ で等しく、この点から 2 円に引いた接線の長さはどちらも $\dfrac{\sqrt{105}}8$ である。

左は交わる 2 円と根軸 x = 4(共通弦を延ばした直線)。右は交わらない 2 円と根軸 x = 13/8。根軸上の点から 2 円に引いた接線の長さは等しい 左は交わる 2 円と根軸 x = 4(共通弦を延ばした直線)。右は交わらない 2 円と根軸 x = 13/8。根軸上の点から 2 円に引いた接線の長さは等しい
3 つの円の根軸が 1 点で交わること(根心)や、根軸を使う作図は 根軸と根心 で扱う。$f_1-f_2=0$ が 2 円の交点を通る直線を表すことは、$f_1+kf_2=0$ の形の図形の一般論(2曲線の交点を通る図形(束))の特別な場合である。

大学数学で見る:反転と、円を 4 次元のベクトルとみる見方

直交する円と反転

方べきが半径の 2 乗に等しいという条件は、2 つの円が直角に交わることを表す。

円に関する反転と直交する円

中心 $O_1$、半径 $r_1$ の円 $\Gamma_1$ を考える。$O_1$ と異なる点 $X$ に対し、半直線 $O_1X$ の上にあって $O_1X\cdot O_1X'=r_1^2$ を満たす点 $X'$ を、$X$ の $\Gamma_1$ に関する 反転 という。
交わる 2 つの円 $\Gamma_1$(中心 $O_1$、半径 $r_1$)と $\Gamma_2$(中心 $O_2$、半径 $r_2$)が 直交する とは、交点 $I$ で 2 本の半径 $O_1I$、$O_2I$ が垂直であることをいう。

$\Gamma_1$ の上の点は反転で動かず、内部の点($O_1$ 以外)は外部へ、外部の点は内部へ移る。$X'$ の反転は $X$ に戻る。

直交する円と方べき

交わる 2 つの円 $\Gamma_1,\Gamma_2$ の中心間の距離を $d=O_1O_2$ とする。

  1. $\Gamma_1$ と $\Gamma_2$ が直交することと、$d^2=r_1^2+r_2^2$ であることと、$\operatorname{pow}_{\Gamma_2}(O_1)=r_1^2$ であることは、互いに同値である。
  2. $\Gamma_1$ と $\Gamma_2$ が直交するとき、$O_1$ を通る直線が $\Gamma_2$ と $X,Y$ で交わるならば、$Y$ は $X$ の $\Gamma_1$ に関する反転である。したがって、$\Gamma_1$ に関する反転は $\Gamma_2$ の点を $\Gamma_2$ の点に移す。
三平方の定理と方べきの定理

方針:1 は交点 $I$ で作る三角形 $O_1IO_2$ に三平方の定理とその逆を使う。2 は thm-pop-main を点 $O_1$ に使う。
段 1(1 の前半)。交点 $I$ で $O_1I=r_1$、$O_2I=r_2$ である。$\angle O_1IO_2=90^\circ$ なら三平方の定理により $d^2=r_1^2+r_2^2$ である。逆に $d^2=r_1^2+r_2^2$ なら、三平方の定理の逆により $\angle O_1IO_2=90^\circ$ である。
段 2(1 の後半)。$\operatorname{pow}_{\Gamma_2}(O_1)=O_1O_2^2-r_2^2=d^2-r_2^2$ なので、$\operatorname{pow}_{\Gamma_2}(O_1)=r_1^2$ は $d^2=r_1^2+r_2^2$ と同じである。
段 3(2)。1 により $\operatorname{pow}_{\Gamma_2}(O_1)=r_1^2>0$ なので、$O_1$ は $\Gamma_2$ の外部にある。thm-pop-main により $\overrightarrow{O_1X}\cdot\overrightarrow{O_1Y}=r_1^2>0$ である。内積が正なので $X,Y$ は $O_1$ から見て同じ向きにあり($Y$ は半直線 $O_1X$ の上にある)、$O_1X\cdot O_1Y=r_1^2$ である。これは $Y=X'$ ということである。接するときは $X=Y$ で $O_1X^2=r_1^2$ となり、$X$ は $\Gamma_1$ の上にあって $X'=X$ である。
段 4(2 の後半)。$\Gamma_2$ の点 $X$ をとると、$O_1$ は $\Gamma_2$ の外部にあるので $X\ne O_1$ であり、直線 $O_1X$ は $\Gamma_2$ と $X$ で交わる。lem-pop-line-circle により、もう 1 つの交点 $Y$(接するときは $Y=X$)がある。段 3 により $X'=Y$ は $\Gamma_2$ の上にある。$\square$

直交する 2 円

$\Gamma_1:x^2+y^2=1$($O_1=(0,0)$、$r_1=1$)と $\Gamma_2:(x-2)^2+y^2=3$($O_2=(2,0)$、$r_2=\sqrt3$)を考える。$d^2=4=1+3=r_1^2+r_2^2$ なので直交する。実際、交点 $I=\left(\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2\right)$ で $\overrightarrow{O_1I}\cdot\overrightarrow{O_2I}=\dfrac12\cdot\left(-\dfrac32\right)+\dfrac{\sqrt3}2\cdot\dfrac{\sqrt3}2=-\dfrac34+\dfrac34=0$ である。
(1) 直線 $y=0$ と $\Gamma_2$ の交点は $X=(2-\sqrt3,0)$、$Y=(2+\sqrt3,0)$ で、$O_1X\cdot O_1Y=(2-\sqrt3)(2+\sqrt3)=4-3=1=r_1^2$ である。
(2) 直線 $y=x$ と $\Gamma_2$ の交点は、$(x-2)^2+x^2=3$、つまり $2x^2-4x+1=0$ の解 $x=1\pm\dfrac{\sqrt2}2$ で与えられる。$O_1$ からの距離は $\sqrt2\,x$ なので、積は $2x_1x_2=2\cdot\dfrac12=1$(解と係数の関係 $x_1x_2=\dfrac12$)である。
どちらの直線でも、2 つの交点は $\Gamma_1$ に関して互いに反転の関係にある(図 4)。

直交する 2 円 x² + y² = 1 と (x − 2)² + y² = 3。原点 O₁ を通るどの直線でも(図は (1) の y = 0 と (2) の y = x)、第 2 の円との 2 交点 X, Y は O₁X · O₁Y = 1 を満たし、互いに第 1 の円に関する反転になっている 直交する 2 円 x² + y² = 1 と (x − 2)² + y² = 3。原点 O₁ を通るどの直線でも(図は (1) の y = 0 と (2) の y = x)、第 2 の円との 2 交点 X, Y は O₁X · O₁Y = 1 を満たし、互いに第 1 の円に関する反転になっている
反転は円と直線を円と直線に移し、交わる角の大きさを保つ(証明しない。Hit18 定理 3.2.6、定理 3.2.10)。prop-pop-orthogonal は、その中で「反転の円に直交する円は動かない」という部分を、方べきの定理だけで示したものである(Hit18 補題 3.2.7・定理 3.2.8 も同じ方法)。反転の詳しい性質は 円に関する反転 で、複素数 $w=\dfrac1z$ との関係は 1次分数変換(高校数学) で扱う。

円を 4 次元のベクトルとみる

円の方程式を $a(x^2+y^2)+Dx+Ey+F=0$ と書くと、図形は 4 つの実数の組 $(a,D,E,F)$ で決まる($0$ でない数を掛けても同じ図形である)。$a\ne0$ なら円(または 1 点、または空集合)、$a=0$ で $(D,E)\ne(0,0)$ なら直線である。方べきは、この 4 次元の組の間の「内積のような量」として表せる。

円のベクトルと双線形形式

4 つの実数の組 $v=(a,D,E,F)$、$v'=(a',D',E',F')$ について
$$ \langle v,v'\rangle:=DD'+EE'-2(aF'+a'F),\qquad Q(v):=\langle v,v\rangle=D^2+E^2-4aF $$
と定める。中心 $(x_1,y_1)$、半径 $r$ の円には $v=(1,-2x_1,-2y_1,x_1^2+y_1^2-r^2)$ を、点 $P=(p,q)$ には $\pi_P:=(1,-2p,-2q,p^2+q^2)$(半径 $0$ の円)を対応させる。

$\langle v,v'\rangle=\langle v',v\rangle$ であり、$v$ について 1 次式、$v'$ について 1 次式である(このような量を 対称双線形形式 という)。

方べきは双線形形式で書ける

$v$ を中心 $O_1=(x_1,y_1)$、半径 $r_1$ の円 $\Gamma_1$ のベクトル、$w$ を中心 $O_2=(x_2,y_2)$、半径 $r_2$ の円 $\Gamma_2$ のベクトル、$P$ を点とし、$d=O_1O_2$ とする。

  1. $Q(v)=4r_1^2$、$Q(\pi_P)=0$ である。
  2. $\langle\pi_P,v\rangle=-2\operatorname{pow}_{\Gamma_1}(P)$ である。特に、$P$ が $\Gamma_1$ の上にあることと $\langle\pi_P,v\rangle=0$ は同値である。
  3. $\langle v,w\rangle=2(r_1^2+r_2^2-d^2)$ である。特に、交わる 2 円が直交することと $\langle v,w\rangle=0$ は同値である。
定義に代入して展開する

方針:どれも定義の式に成分を代入して展開する。3 では prop-pop-orthogonal を使う。
段 1(1)。$v=(1,-2x_1,-2y_1,x_1^2+y_1^2-r_1^2)$ なので
$$ Q(v)=4x_1^2+4y_1^2-4(x_1^2+y_1^2-r_1^2)=4r_1^2 $$
である。$\pi_P$ は $r_1=0$、$(x_1,y_1)=(p,q)$ の場合なので $Q(\pi_P)=0$ である。
段 2(2)。$P=(p,q)$ として、定義に代入すると
$$ \langle\pi_P,v\rangle=(-2p)(-2x_1)+(-2q)(-2y_1)-2\bigl((x_1^2+y_1^2-r_1^2)+(p^2+q^2)\bigr) $$
である。$-2$ でくくると $-2\bigl(p^2-2px_1+x_1^2+q^2-2qy_1+y_1^2-r_1^2\bigr)=-2\bigl((p-x_1)^2+(q-y_1)^2-r_1^2\bigr)$ で、括弧の中は $\operatorname{pow}_{\Gamma_1}(P)$ である。$P$ が $\Gamma_1$ の上にあることは方べきが $0$ であることと同じである。
段 3(3)。同じく代入すると
$$ \langle v,w\rangle=4x_1x_2+4y_1y_2-2\bigl((x_2^2+y_2^2-r_2^2)+(x_1^2+y_1^2-r_1^2)\bigr) $$
である。$-2\bigl(x_1^2-2x_1x_2+x_2^2+y_1^2-2y_1y_2+y_2^2\bigr)=-2d^2$ を使うと、右辺は $2(r_1^2+r_2^2)-2d^2$ に等しい。prop-pop-orthogonal の 1 により、直交は $d^2=r_1^2+r_2^2$、つまり $\langle v,w\rangle=0$ と同値である。$\square$

ベクトルで計算する
  1. 円 $x^2+y^2=25$ は $v=(1,0,0,-25)$、点 $P=(7,1)$ は $\pi_P=(1,-14,-2,50)$ である。$\langle\pi_P,v\rangle=0+0-2(1\cdot(-25)+1\cdot50)=-50$ で、$-2\operatorname{pow}(P)=-2\cdot25$ に等しい。$Q(v)=0+0-4\cdot(-25)=100=4\cdot5^2$ である。
  2. ex-pop-orthogonal の 2 円は $v_1=(1,0,0,-1)$、$v_2=(1,-4,0,1)$ である。$\langle v_1,v_2\rangle=0+0-2(1\cdot1+1\cdot(-1))=0$ で、直交している。$Q(v_1)=4$、$Q(v_2)=16-4=12=4\cdot3$ である。交点 $I=\left(\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2\right)$ は $\pi_I=(1,-1,-\sqrt3,1)$ で、$\langle\pi_I,v_1\rangle=-2(1\cdot(-1)+1\cdot1)=0$、$\langle\pi_I,v_2\rangle=(-1)(-4)+0-2(1\cdot1+1\cdot1)=4-4=0$ である。$I$ は両方の円の上にある。
符号 (3,1) の 2 次形式という見方

ここから先は大学で学ぶ内容の紹介である。

  • $Q(v)=D^2+E^2-4aF=D^2+E^2+(a-F)^2-(a+F)^2$ と書ける($(a-F)^2-(a+F)^2=-4aF$)。つまり $Q$ は、4 つの 2 乗のうち 3 つが正、1 つが負の和である。このような 2 次形式を 符号 $(3,1)$ の 2 次形式という。相対性理論の時空(Minkowski 空間)の「長さの 2 乗」と同じ形である。$a\ne0$ のとき、本当の円は $Q>0$、点は $Q=0$、空集合($x^2+y^2=-1$ など)は $Q<0$ のベクトルにあたる。直線($a=0$、$(D,E)\ne(0,0)$)は $Q=D^2+E^2>0$ で、円と同じ側に入る。
  • 交わる 2 円の交点で、2 本の半径のなす角を $\theta$ とすると、余弦定理 $d^2=r_1^2+r_2^2-2r_1r_2\cos\theta$ と prop-pop-bilinear の 3 から
    $$ \cos\theta=\frac{r_1^2+r_2^2-d^2}{2r_1r_2}=\frac{\langle v,w\rangle}{\sqrt{Q(v)}\sqrt{Q(w)}} $$
    である。ベクトルのなす角の公式 $\cos\theta=\dfrac{\boldsymbol a\cdot\boldsymbol b}{|\boldsymbol a|\,|\boldsymbol b|}$ と同じ形であり、円どうしの交わる角が、この「内積」で測られる。
  • 2 つの円のベクトル $v,w$ の 1 次結合 $\lambda v+\mu w$ は、2 円の方程式 $f_1=0$、$f_2=0$ から作る $\lambda f_1+\mu f_2=0$ にあたり、2 円の交点をすべて通る(円の束)。$x^2+y^2$ の係数を $1$ にした $v-w$ は $a=0$ のベクトルで、prop-pop-radical の根軸にあたる(2曲線の交点を通る図形(束))。
  • 円と直線を円と直線に移す 1 次分数変換(Möbius 変換)は、円のベクトルの定数倍を適切に選ぶと、この 4 次元の空間の 1 次変換として働き、$Q$ を保つ。こうして Möbius 変換の群は、$Q$ を保つ 1 次変換の群(Lorentz 群)と結びつく(証明しない。SL(2,C)と固有順時Lorentz群)。

例と反例

外した仮定崩れる主張ボックス
積を符号つき(内積)で比べる方べきの定理の逆ex-pop-sign
図形が円である積が直線によらないex-pop-ellipse
直線が円と交わる積 $PA\cdot PB$ が考えられるex-pop-no-meet
2 円の中心が異なる方べきが等しい点の集合は直線ex-pop-concentric
反例:長さの積だけでは逆が成り立たない

$P=(0,0)$、$A=(-1,0)$、$B=(1,0)$、$C=\left(0,\dfrac12\right)$、$D=(0,2)$ とする。長さの積は $PA\cdot PB=1$、$PC\cdot PD=\dfrac12\cdot2=1$ で等しい。しかし内積は $\overrightarrow{PA}\cdot\overrightarrow{PB}=-1$($P$ は $A,B$ の間)、$\overrightarrow{PC}\cdot\overrightarrow{PD}=1$($C,D$ は同じ向き)で異なる。$A,B,D$ を通る円は中心 $\left(0,\dfrac34\right)$、半径の 2 乗 $1+\dfrac9{16}=\dfrac{25}{16}$ であり、$C$ の中心からの距離の 2 乗は $\left(\dfrac12-\dfrac34\right)^2=\dfrac1{16}\ne\dfrac{25}{16}$ なので、4 点は同じ円周上にない。
$D$ を $D'=(0,-2)$ に替えると $\overrightarrow{PC}\cdot\overrightarrow{PD'}=-1=\overrightarrow{PA}\cdot\overrightarrow{PB}$ となり、cor-pop-converse により 4 点 $A,B,C,D'$ は同じ円周上にある。実際、中心 $\left(0,-\dfrac34\right)$、半径の 2 乗 $\dfrac{25}{16}$ の円について $C$ の距離の 2 乗は $\left(\dfrac12+\dfrac34\right)^2=\dfrac{25}{16}$ である。

反例:楕円では積が一定でない

楕円 $\dfrac{x^2}4+y^2=1$ と中心 $P=(0,0)$ を考える。$x$ 軸との交点は $(\pm2,0)$ で積は $2\cdot2=4$、$y$ 軸との交点は $(0,\pm1)$ で積は $1\cdot1=1$ である。直線 $y=x$ との交点は $\dfrac{x^2}4+x^2=1$ より $x^2=\dfrac45$ で、$P$ からの距離の 2 乗は $2x^2=\dfrac85$、積は $\dfrac85$ である。直線によって $4$、$1$、$\dfrac85$ と変わる。prf-pop-main-quadratic の段 1 で、$s^2$ の係数が $|\boldsymbol u|^2=1$ と方向によらなかったことが、円の場合の要点である。楕円では $s^2$ の係数が方向によって変わるので、解の積も変わる。

直線が円と交わらないとき

円 $x^2+y^2=25$ と円の外部の点 $P=(0,6)$、直線 $y=6$ を考える。$P+s(1,0)=(s,6)$ を代入すると $s^2+36-25=s^2+11=0$ で、実数の解はなく、直線は円と交わらない。$PA\cdot PB$ は考えられない。ただし、この 2 次方程式の解を複素数の範囲で考えると $s=\pm\sqrt{11}\,i$ で、解の積は $11=\operatorname{pow}(P)=36-25$ である。prf-pop-main-quadratic の「解の積は方べき」という関係は、解が実数でなくても式としては成り立っている。

反例:同心円には根軸がない

同心円 $x^2+y^2-1=0$ と $x^2+y^2-4=0$ では、方べきの差は $(x^2+y^2-1)-(x^2+y^2-4)=3$ で、どの点でも $0$ にならない。方べきが等しい点は存在せず、根軸はない。prf-prop-pop-radical の段 2 で中心が異なることを使ったのは、1 次の項の係数 $(D_1-D_2,E_1-E_2)$ が $(0,0)$ にならないためである。

さらに先へ

  • 垂心を通る 3 つの円について、三角形の頂点が 2 つの円の根軸の上にあることを使って 6 点が同じ円周上にあることを示す問題(国際数学オリンピック(2008 年)第 1 問)は、三角形の垂心 で扱う。そこでは prop-pop-radical と同じ「方べきの差は 1 次式」という考えが使われる。
  • 3 つの円の中心が一直線上になければ、2 つずつの組の 3 本の根軸は 1 点(根心)で交わる。根軸を使う作図と共円の証明は 根軸と根心 で扱う。
  • 三角形の内心 $I$ と外心 $O$ の距離についての Euler の公式 $OI^2=R^2-2Rr$ は、内心を通る外接円の弦に方べきの定理を使って示せる(Eulerの三角形の定理)。
  • 円に関する反転は、円と直線を円と直線に移し、角の大きさを保つ。反転を使うと、接する円の問題を平行な直線の問題に移せる(円に関する反転)。
  • 円の外部の点から引いた 2 本の接線の接点を結ぶ直線(極線)は、方べきの式を 1 次にした式で表される(円の接線と極線)。
  • 大学では、方べきは 2次形式 の値として、円の全体は符号 $(3,1)$ の空間の中の図形として扱われ、Möbius変換 の幾何につながる。

関連項目

参考文献

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