等角共役

同義語:等角共役点isogonal conjugate

概要

等角共役(isogonal conjugate)とは、三角形 $ABC$ の内部の点 $P$ に対し、直線 $AP,BP,CP$ をそれぞれの頂点の角の二等分線に関して折り返した 3 本が交わる点 $Q$(等角共役点)を対応させる操作である。3 本は 1 点で交わり、$Q$ は $P$ を 3 辺で折り返した 3 点を通る円の中心である。$Q$ の等角共役点は $P$ にもどる。$P$ と $Q$ から 3 辺までの距離の積は 3 辺で等しく、$P$ の重心座標が $(\alpha:\beta:\gamma)$ なら $Q$ は $\left(\frac{a^2}{\alpha}:\frac{b^2}{\beta}:\frac{c^2}{\gamma}\right)$ である。内心は自分自身と、鋭角三角形の垂心は外心と、重心は類似重心と組になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 三角関数形のCevaの定理, Cevaの定理(高校数学), 三角形の外心, ベクトルの内積, 正弦定理(高校数学)

高校での出発点:Ceva 線を角の二等分線で折り返す

三角形の内部に点 $P$ をとり、3 つの頂点と $P$ を結ぶ直線 $AP$、$BP$、$CP$ を引く。この 3 本を、それぞれの頂点の角の二等分線を鏡にして折り返してみる。折り返した 3 本の直線は、どこで交わるだろうか。
角の二等分線そのものは折り返しても変わらないので、$P$ が内心なら折り返した 3 本も内心で交わる。$P$ が内心でないときに何が起こるかを、座標で確かめる。

直角二等辺三角形で折り返す

$A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(0,6)$ と、内部の点 $P(2,3)$ をとる(三角関数形のCevaの定理 で使ったのと同じ三角形と点)。
(1) 頂点 $A$。$\angle A=90^\circ$ の二等分線は直線 $y=x$ である。直線 $y=x$ に関する折り返しは、点 $(x,y)$ を $(y,x)$ に移す。直線 $AP$ は $A$ と $(2,3)$ を通るので、折り返すと $A$ と $(3,2)$ を通る直線 $y=\dfrac23x$ になる。
(2) 3 辺で折り返した点。$P$ を辺 $BC$(直線 $x+y=6$)、辺 $CA$(直線 $x=0$)、辺 $AB$(直線 $y=0$)に関して折り返した点を $P_a$、$P_b$、$P_c$ とする。$P_b=(-2,3)$、$P_c=(2,-3)$ である。$P_a$ は、$P$ から直線 $x+y=6$ に下ろした垂線の足 $\left(\dfrac52,\dfrac72\right)$ が線分 $PP_a$ の中点になる点なので、$P_a=2\left(\dfrac52,\dfrac72\right)-(2,3)=(3,4)$ である。
(3) 3 点 $P_a$、$P_b$、$P_c$ を通る円の中心 $Q(x,y)$ を求める。$QP_b=QP_c$ は
$$ (x+2)^2+(y-3)^2=(x-2)^2+(y+3)^2 $$
で、展開して整理すると $8x=12y$、つまり $y=\dfrac23x$ である。$QP_b=QP_a$ は
$$ (x+2)^2+(y-3)^2=(x-3)^2+(y-4)^2 $$
で、展開して整理すると $10x+2y=12$、つまり $5x+y=6$ である。2 式を連立すると $5x+\dfrac23x=6$、$\dfrac{17}3x=6$ より
$$ x=\frac{18}{17},\qquad y=\frac{12}{17},\qquad Q\left(\frac{18}{17},\frac{12}{17}\right) $$
である。$Q$ は (1) の直線 $y=\dfrac23x$ の上にある。
(4) 頂点 $B$、$C$ でも、$BP$ が辺 $BA$ となす角と $BQ$ が辺 $BC$ となす角が等しく、$CP$ と $CA$、$CQ$ と $CB$ についても同じである。つまり直線 $BQ$、$CQ$ も、$BP$、$CP$ をそれぞれの角の二等分線で折り返した直線である。

(4) 頂点 $B$、$C$ での角を余弦で確かめる計算を開く

ベクトルの内積で余弦を計算する(ベクトルの内積)。$\overrightarrow{BP}=(-4,3)$、$\overrightarrow{BA}=(-6,0)$ から $\cos\angle PBA=\dfrac{24}{5\cdot6}=\dfrac45$、$\overrightarrow{BQ}=\left(-\dfrac{84}{17},\dfrac{12}{17}\right)$、$\overrightarrow{BC}=(-6,6)$ から $\cos\angle QBC=\dfrac45$ である。$\overrightarrow{CP}=(2,-3)$、$\overrightarrow{CA}=(0,-6)$ から $\cos\angle PCA=\dfrac3{\sqrt{13}}$、$\overrightarrow{CQ}=\left(\dfrac{18}{17},-\dfrac{90}{17}\right)$、$\overrightarrow{CB}=(6,-6)$ から $\cos\angle QCB=\dfrac3{\sqrt{13}}$ である。

ex-isog-start では、折り返した 3 本が 1 点 $Q$ で交わり、しかもその点は、$P$ を 3 辺で折り返した 3 点を通る円の中心だった。この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. 折り返した 3 本は、いつも 1 点で交わるか。その点は何か。→ thm-isog-main
  2. 点 $P$ と、折り返した 3 本の交点 $Q$ の間には、どんな関係があるか。→ prop-isog-pedal、lem-isog-dist
  3. $Q$ を式で書けるか。→ thm-isog-bary
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    角の二等分線に関する折り返し等角な直線頂点を通る直線の対合
    3 辺で折り返した点を通る円の中心等角共役点2 次の変換 $P\mapsto Q$
    点から 3 辺までの距離距離の積が一定三線座標の逆数
    面積の比 $\triangle QBC:\triangle QCA:\triangle QAB$重心座標の式$(\alpha:\beta:\gamma)\mapsto\left(\dfrac{a^2}\alpha:\dfrac{b^2}\beta:\dfrac{c^2}\gamma\right)$
    赤は P を通る 3 本、灰色の破線は角の二等分線、青はそれぞれを二等分線で折り返した 3 本で、青の 3 本は Q で交わる 赤は P を通る 3 本、灰色の破線は角の二等分線、青はそれぞれを二等分線で折り返した 3 本で、青の 3 本は Q で交わる

言葉の準備:等角な直線と等角共役点

以下、三角形 $ABC$ の辺の長さを $a=BC$、$b=CA$、$c=AB$ とし、頂点の角の大きさを $A$、$B$、$C$ で表す。

等角な直線と等角共役点

頂点 $A$ を通り、角 $\angle BAC$ の内部を通る直線 $\ell$ が、辺 $AB$ と角 $\theta$ をなすとする($0^\circ<\theta< A$)。$A$ を通り、辺 $AB$ と角 $A-\theta$ をなして角 $\angle BAC$ の内部を通る直線を、$\ell$ の 等角な直線 という。$\ell$ が辺 $AB$ となす角と、等角な直線が辺 $AC$ となす角が等しいので、この名前がある。等角な直線は、$\ell$ を角 $\angle BAC$ の二等分線に関して折り返した直線である。頂点 $B$、$C$ でも同じように定める。
三角形の内部の点 $P$ について、直線 $AP$、$BP$、$CP$ の等角な直線が 1 点 $Q$ で交わるとき、$Q$ を $P$ の 等角共役点 といい、$P$ から $Q$ を作る操作を 等角共役 という。

「二等分線に関する折り返し」になることは、角を数えれば分かる。二等分線は辺 $AB$ と角 $\dfrac A2$ をなすので、$\ell$ と二等分線のなす角は $\left\lvert\theta-\dfrac A2\right\rvert$、等角な直線と二等分線のなす角は $\left\lvert (A-\theta)-\dfrac A2\right\rvert=\left\lvert\dfrac A2-\theta\right\rvert$ で、等しい。しかも 2 本は二等分線の反対側にある。

等角な直線の例
  1. 角の二等分線の等角な直線は、それ自身である($\theta=\dfrac A2$ なら $A-\theta=\dfrac A2$)。
  2. ex-isog-start の頂点 $A$ で、直線 $AP$ は方向 $(2,3)$、その等角な直線は方向 $(3,2)$ である。$AP$ が $AB$($x$ 軸)となす角 $\theta$ は $\tan\theta=\dfrac32$ を満たし、等角な直線が $AB$ となす角は $\tan(90^\circ-\theta)=\dfrac1{\tan\theta}=\dfrac23$ を満たす。
  3. 鋭角三角形の頂点 $A$ から辺 $BC$ に下ろした垂線は $AB$ と角 $90^\circ-B$ をなし、$A$ と外心 $O$ を結ぶ直線は $AC$ と角 $90^\circ-B$ をなす。つまり垂線と直線 $AO$ は等角な直線である。証明は 三角関数形のCevaの定理 にある(二等辺三角形 $OAC$ の底角を円周角の定理で求める)。

等角な直線をもう一度折り返すと、辺 $AB$ となす角が $A-(A-\theta)=\theta$ にもどるので、もとの直線になる。

主定理:折り返した 3 本は 1 点で交わる

ex-isog-start の (2)〜(3) で見た「3 辺で折り返した点」が鍵になる。まず 1 つの頂点で起こることを補題にする。

折り返した 2 点の垂直二等分線

点 $P$ が角 $\angle BAC$ の内部にあるとし、$P$ を直線 $CA$、$AB$ に関して折り返した点を $P_b$、$P_c$ とする。このとき $AP_b=AP_c=AP$、$P_b\ne P_c$ であり、線分 $P_bP_c$ の垂直二等分線は、直線 $AP$ の等角な直線である。

向きの角を数える

要点:$A$ を原点、辺 $AB$ を $x$ 軸の正の向きにとり、$\alpha_1=\angle BAP$、$\alpha_2=\angle PAC$ とする。$P_c$ は向き $-\alpha_1$、$P_b$ は向き $A+\alpha_2$ の点で、どちらも $A$ からの距離は $AP$ である。$AP$ の等角な直線は向き $\alpha_2$ で、2 つの向き $-\alpha_1$ と $A+\alpha_2$ のちょうど真ん中にある($\alpha_1+\alpha_2=A$ を使う)ので、この直線に関する折り返しが $P_c$ と $P_b$ を入れかえる。異なる 2 点を入れかえる折り返しの軸は、2 点を結ぶ線分の垂直二等分線である。

詳しい証明を開く

方針:$A$ を原点とする座標で、3 点 $P$、$P_b$、$P_c$ の「向き」($x$ 軸の正の向きから反時計回りに測った角、一般角と弧度法)を求める。等角な直線に関する折り返しが $P_c$ と $P_b$ を入れかえることを示す。

段 1(座標をとる)。$A$ を原点、辺 $AB$ を $x$ 軸の正の向きにとり、$C$ が $x$ 軸より上にあるようにする。$\alpha_1=\angle BAP$、$\alpha_2=\angle PAC$ とおくと $\alpha_1+\alpha_2=A$ である。半直線 $AB$ の向きは $0^\circ$、半直線 $AC$ の向きは $A$、半直線 $AP$ の向きは $\alpha_1$ である。

段 2(折り返しと向き)。原点を通り向き $\varphi$ の直線に関する折り返しは、原点からの距離を変えず、向き $\theta$ の点を向き $2\varphi-\theta$ の点に移す(折り返しの前と後で、直線となす角は同じ大きさで反対の側にある。$\theta$ と $2\varphi-\theta$ の平均が $\varphi$ である)。これを使うと、$P_c$ は直線 $AB$(向き $0^\circ$)に関する折り返しなので、$AP_c=AP$、向きは $2\cdot0^\circ-\alpha_1=-\alpha_1$ である。$P_b$ は直線 $AC$(向き $A$)に関する折り返しなので、$AP_b=AP$、向きは

$$2A-\alpha_1=A+(A-\alpha_1)=A+\alpha_2$$

である。

段 3($P_b\ne P_c$)。2 つの向きの差は $(A+\alpha_2)-(-\alpha_1)=A+\alpha_1+\alpha_2=2A$ で、$0^\circ<2A<360^\circ$ なので、$P_b$ と $P_c$ は向きが違い、異なる点である。

段 4(入れかえる直線)。$AP$ の等角な直線 $m$ は $AB$ と角 $A-\alpha_1=\alpha_2$ をなして角の内部を通るので、向き $\alpha_2$ の直線である。段 2 により、$m$ に関する折り返しは向き $-\alpha_1$ の点を向き $2\alpha_2-(-\alpha_1)=\alpha_2+(\alpha_1+\alpha_2)=A+\alpha_2$ の点に移し、距離を変えない。よって $m$ に関する折り返しは $P_c$ を $P_b$ に移す。

段 5(垂直二等分線)。異なる 2 点を入れかえる折り返しの軸は、その 2 点を結ぶ線分の垂直二等分線である(軸の上の点は 2 点から等距離にあり、2 点を結ぶ線分は軸に垂直に交わり、交点が中点になる)。段 4 より、$m$ は線分 $P_bP_c$ の垂直二等分線である。$\square$

ex-isog-start では $P_b=(-2,3)$、$P_c=(2,-3)$ で、線分 $P_bP_c$ の中点は $A(0,0)$、$\overrightarrow{P_cP_b}=(-4,6)$ に垂直な方向は $(3,2)$ である。垂直二等分線は方向 $(3,2)$ の直線 $y=\dfrac23x$ で、ex-isog-start の (1) で求めた等角な直線と一致する。

等角共役点の存在

三角形 $ABC$ の内部の点 $P$ を、辺 $BC$、$CA$、$AB$ に関して折り返した点を $P_a$、$P_b$、$P_c$ とする。このとき次が成り立つ。
(1) 直線 $AP$、$BP$、$CP$ の等角な直線は、三角形の内部の 1 点 $Q$ で交わる。つまり $P$ の等角共役点 $Q$ がある。
(2) $Q$ は 3 点 $P_a$、$P_b$、$P_c$ から等しい距離にある。つまり $Q$ は三角形 $P_aP_bP_c$ の外心である。
(3) $Q$ の等角共役点は $P$ である。

垂直二等分線が 1 点で交わることに帰着する

方針:lem-isog-mirror により、3 本の等角な直線は三角形 $P_aP_bP_c$ の 3 辺の垂直二等分線である。三角形の 3 辺の垂直二等分線が 1 点(外心)で交わる理由と同じ議論をする(三角形の外心)。
段 1(2 本の交点)。$P$ は内部にあるので、どの頂点の角の内部にもある。$AP$ の等角な直線は角 $\angle BAC$ の内部を通り、辺 $BC$ と頂点以外の点で交わるので、頂点 $A$ からの Ceva 線を含む。$BP$ の等角な直線も同じである。頂点 $A$ からの Ceva 線と頂点 $B$ からの Ceva 線は、三角形の内部の 1 点で交わる(Cevaの定理(高校数学) の定理の証明の段 1)。この点を $Q$ とする。
段 2(等しい距離)。lem-isog-mirror を頂点 $A$ に使うと、$AP$ の等角な直線は線分 $P_bP_c$ の垂直二等分線である。$Q$ はその上にあるので $QP_b=QP_c$ である。頂点の名前を $A\to B\to C\to A$ と回して lem-isog-mirror を頂点 $B$ に使うと、$BP$ の等角な直線は線分 $P_cP_a$ の垂直二等分線で、$QP_c=QP_a$ である。よって
$$ QP_a=QP_b=QP_c $$
であり、(2) が成り立つ。
段 3(3 本目も通る)。lem-isog-mirror を頂点 $C$ に使うと、$P_a\ne P_b$ で、$CP$ の等角な直線は線分 $P_aP_b$ の垂直二等分線である。段 2 より $QP_a=QP_b$ なので、$Q$ はこの垂直二等分線の上にある(2 点から等距離の点の集まりが垂直二等分線である)。よって 3 本の等角な直線はどれも $Q$ を通り、(1) が成り立つ。
段 4(もとにもどる)。$Q$ は内部の点で、直線 $AQ$、$BQ$、$CQ$ は $AP$、$BP$、$CP$ の等角な直線である。等角な直線の等角な直線はもとの直線なので、$AQ$、$BQ$、$CQ$ の等角な直線は $AP$、$BP$、$CP$ で、これらは $P$ で交わる。よって $Q$ の等角共役点は $P$ であり、(3) が成り立つ。$\square$

P を 3 辺で折り返した点 Pa、Pb、Pc は Q を中心とする円の上にあり、破線で示した線分 PbPc の垂直二等分線は A を通って AP の等角な直線になる P を 3 辺で折り返した点 Pa、Pb、Pc は Q を中心とする円の上にあり、破線で示した線分 PbPc の垂直二等分線は A を通って AP の等角な直線になる
図 2 の円の半径は、ex-isog-start の値で $QP_c=\sqrt{\left(2-\dfrac{18}{17}\right)^2+\left(-3-\dfrac{12}{17}\right)^2}=\sqrt{\dfrac{256+3969}{289}}=\dfrac{65}{17}$ である。

三角関数形の Ceva の定理を使う別の証明を開く

三角関数形のCevaの定理 を使う別の証明もある。$P$ の 3 本で頂点の角が分けられる角を入れかえると、分けられた角の正弦の比がそれぞれ逆数になり、比の積 $1$ も逆数の $1$ のまま保たれる。そこで、三角関数形の Ceva の定理の逆から 3 本が 1 点で交わる。上の証明は角の正弦を使わず、折り返しと垂直二等分線だけで済む点が違う。

垂心を折り返すと外接円の上にくる

3 辺が $13,14,15$ の三角形 $B(0,0)$、$C(14,0)$、$A(5,12)$ を使う(三角形の五心 と同じ三角形)。垂心は $H\left(5,\dfrac{15}4\right)$、外心は $O\left(7,\dfrac{33}8\right)$、外接円の半径は $R=\dfrac{65}8$ である。
$H$ を辺 $BC$($x$ 軸)で折り返すと $H_a\left(5,-\dfrac{15}4\right)$ で、
$$ OH_a^2=(7-5)^2+\left(\frac{33}8+\frac{15}4\right)^2=4+\left(\frac{63}8\right)^2=\frac{256+3969}{64}=\frac{4225}{64}=R^2 $$
である。辺 $CA$、$AB$ で折り返した点 $H_b$、$H_c$ も、同じように計算すると $O$ からの距離の 2 乗が $\dfrac{4225}{64}$ になる。

$H_b$、$H_c$ の座標を開く

$H_b\left(\dfrac{323}{25},\dfrac{969}{100}\right)$、$H_c\left(-\dfrac{145}{169},\dfrac{4185}{676}\right)$ である。


3 点とも外接円の上にあるので、三角形 $H_aH_bH_c$ の外心は $O$ である。thm-isog-main (2) により、$H$ の等角共役点は外心 $O$ である。これは ex-isog-lines (3) と合っている。

垂線の足の 6 点は同じ円の上にある

$P$ と $Q$ の関係は、3 辺に下ろした垂線の足でも見える。ベクトルの内積を使う(ベクトルの内積)。

垂足円

三角形 $ABC$ の内部の点 $P$ と、その等角共役点 $Q$ から、直線 $BC$、$CA$、$AB$ に下ろした垂線の足を、それぞれ $D_1,E_1,F_1$ と $D_2,E_2,F_2$ とする。この 6 点は、線分 $PQ$ の中点 $M$ を中心とする 1 つの円の上にある。

中点から足までの距離を内積で書く

要点:頂点 $A$ を通る直線 $\ell$ の向きの長さ $1$ のベクトルを $\vec u$ とする。$P$ または $Q$ から $\ell$ に下ろした垂線の足 $X$ について、内積で展開すると $MX^2=AM^2-(\vec u\cdot\overrightarrow{AP})(\vec u\cdot\overrightarrow{AQ})$ となる。$\alpha_1=\angle BAP$、$\alpha_2=\angle PAC$ とすると、$\ell=AB$ でも $\ell=AC$ でも、角の入れかわり $\angle BAQ=\alpha_2$、$\angle QAC=\alpha_1$ から右辺の積は $AP\cdot AQ\cos\alpha_1\cos\alpha_2$ になる。頂点 $B$ でも同じなので、6 点は $M$ から等しい距離にある。

詳しい証明を開く

方針:頂点を通る直線に下ろした垂線の足について、$M$ からの距離の 2 乗を式で書く。その式が $P$ と $Q$ について対称になり、さらに等角共役の角の関係から、頂点で交わる 2 辺で同じ値になることを示す。

段 1(1 本の直線での式)。頂点 $A$ を通る直線 $\ell$ の、長さ $1$ の方向ベクトルを $\vec u$ とする。$\vec p=\overrightarrow{AP}$、$\vec q=\overrightarrow{AQ}$ とおくと、$\vec m=\overrightarrow{AM}=\dfrac{\vec p+\vec q}2$ である。$P$ から $\ell$ に下ろした垂線の足を $X$ とすると $\overrightarrow{AX}=(\vec u\cdot\vec p)\,\vec u$ である(正射影。$\vec u\cdot\vec p$ は符号つきの長さで、足が半直線の反対側にくると負になる)。$\lvert\vec u\rvert=1$ を使って展開すると

$$MX^2=\bigl\lvert(\vec u\cdot\vec p)\vec u-\vec m\bigr\rvert^2=(\vec u\cdot\vec p)^2-2(\vec u\cdot\vec p)(\vec u\cdot\vec m)+\lvert\vec m\rvert^2$$

である。$2(\vec u\cdot\vec m)=\vec u\cdot\vec p+\vec u\cdot\vec q$ を代入すると

$$MX^2=(\vec u\cdot\vec p)^2-(\vec u\cdot\vec p)(\vec u\cdot\vec p+\vec u\cdot\vec q)+\lvert\vec m\rvert^2=AM^2-(\vec u\cdot\vec p)(\vec u\cdot\vec q)$$

となる。右辺は $\vec p$ と $\vec q$ について対称なので、$Q$ から $\ell$ に下ろした垂線の足 $Y$ についても $MY^2$ は同じ値である。

段 2(頂点 $A$ の 2 辺)。$\alpha_1=\angle BAP$、$\alpha_2=\angle PAC$ とする。$AQ$ は $AP$ の等角な直線なので $\angle BAQ=\alpha_2$、$\angle QAC=\alpha_1$ である。$\ell=AB$ のとき、$\vec u$ を $\overrightarrow{AB}$ の向きの長さ $1$ のベクトルとすると、内積の定義から $\vec u\cdot\vec p=AP\cos\alpha_1$、$\vec u\cdot\vec q=AQ\cos\alpha_2$ である。$\ell=AC$ のとき、$\overrightarrow{AC}$ の向きの長さ $1$ のベクトル $\vec v$ について $\vec v\cdot\vec p=AP\cos\alpha_2$、$\vec v\cdot\vec q=AQ\cos\alpha_1$ である。どちらでも積は $AP\cdot AQ\cos\alpha_1\cos\alpha_2$ なので、段 1 により

$$MF_1^2=MF_2^2=ME_1^2=ME_2^2=AM^2-AP\cdot AQ\cos\alpha_1\cos\alpha_2$$

である。

段 3(頂点 $B$ の 2 辺)。頂点 $B$ で同じ議論をすると、直線 $BC$ と $BA$ の足について $MD_1^2=MD_2^2=MF_1^2=MF_2^2$ である。段 2 と合わせて、6 点はどれも $M$ から同じ距離にある。$\square$

垂足円を座標で確かめる

ex-isog-start の $P(2,3)$、$Q\left(\dfrac{18}{17},\dfrac{12}{17}\right)$ で、垂線の足は次のとおりである。

  • $P$ から:$BC$ へ $D_1\left(\dfrac52,\dfrac72\right)$、$CA$ へ $E_1(0,3)$、$AB$ へ $F_1(2,0)$
  • $Q$ から:$BC$ へ $D_2\left(\dfrac{54}{17},\dfrac{48}{17}\right)$、$CA$ へ $E_2\left(0,\dfrac{12}{17}\right)$、$AB$ へ $F_2\left(\dfrac{18}{17},0\right)$
    中点は $M\left(\dfrac{26}{17},\dfrac{63}{34}\right)$ である。たとえば
    $$ MF_1^2=\left(2-\frac{26}{17}\right)^2+\left(\frac{63}{34}\right)^2=\frac{16^2+63^2}{34^2}=\frac{4225}{1156},\qquad ME_1^2=\left(\frac{26}{17}\right)^2+\left(3-\frac{63}{34}\right)^2=\frac{52^2+39^2}{34^2}=\frac{4225}{1156} $$
    で、残りの 4 点でも同じ値になる。半径は $\dfrac{65}{34}$ である。prf-isog-pedal の要点の式でも、$AM^2=\dfrac{6673}{1156}$、$\vec u\cdot\vec p=2$、$\vec u\cdot\vec q=\dfrac{18}{17}$ から $\dfrac{6673}{1156}-\dfrac{36}{17}=\dfrac{6673-2448}{1156}=\dfrac{4225}{1156}$ となる。
    半径 $\dfrac{65}{34}$ は、図 2 の円の半径 $\dfrac{65}{17}$ のちょうど半分である。$P$ から辺に下ろした垂線の足は、$P$ とその辺で折り返した点を結ぶ線分の中点なので、$P$ を中心に $\dfrac12$ 倍に縮めると $P_a,P_b,P_c$ が $D_1,E_1,F_1$ に移り、中心 $Q$ は $PQ$ の中点 $M$ に移る。

P と Q から 3 辺に下ろした垂線の足の 6 点は、PQ の中点 M を中心とする 1 つの円の上にある P と Q から 3 辺に下ろした垂線の足の 6 点は、PQ の中点 M を中心とする 1 つの円の上にある

対になる点の一覧

thm-isog-main (3) により、等角共役は点を 2 つずつ組にする。よく知られた点の組を並べる。

点 $P$等角共役点 $Q$理由
内心 $I$$I$ 自身3 本とも角の二等分線(ex-isog-lines (1))
垂心 $H$(鋭角三角形)外心 $O$ex-isog-lines (3)、ex-isog-oh
重心 $G$類似重心 $K$中線を折り返した直線が類似中線(類似重心)
傍心 $I_A$$I_A$ 自身三角形の外の点。rem-isog-outside
外接円の上の点定まらない(3 本が平行)ex-isog-cx-circle

垂心と外心の組は、三角形の垂心 と 三角形の外心 で別々に習う 2 つの点が、実は折り返しで結ばれていることを示している。重心と類似重心の組は次の記事 類似重心 の出発点になる。

三角形の外の点と傍心

この記事の定理は三角形の内部の点について証明した。三角形の外の点 $P$ では、頂点 $V$ を通る直線 $VP$ を、角 $V$ の二等分線を含む直線に関して折り返したものを「等角な直線」とする。$V$ での内角の二等分線と外角の二等分線は垂直なので、どちらに関して折り返しても同じ直線になる(垂直な 2 本の直線に関する折り返しを続けると $V$ を中心とする $180^\circ$ の回転になり、$V$ を通る直線はこの回転で変わらない)。

傍心が自分自身と組になることを開く

この決め方で、傍心 $I_A$ は自分自身の等角共役点になる。直線 $AI_A$ は角 $A$ の二等分線で、折り返しても変わらない。直線 $BI_A$ は角 $B$ の外角の二等分線で、内角の二等分線に垂直なので、折り返しても変わらない(鏡に垂直な直線は、折り返しで自分自身に移る)。$C$ でも同じである。重心座標でも、$I_A=(-a:b:c)$ に thm-isog-bary の式を当てはめると $\left(\dfrac{a^2}{-a}:\dfrac{b^2}b:\dfrac{c^2}c\right)=(-a:b:c)$ となる。外の点で 3 本が 1 点で交わること一般と、そのときにも式が成り立つことは、この記事では証明しない。

大学数学で見る:距離の積と重心座標

thm-isog-main は $Q$ の存在を示したが、$Q$ の位置を式では与えていない。3 辺までの距離を使うと、$Q$ が $P$ から式 1 本で求まる。

3 辺までの距離の積

三角形 $ABC$ の内部の点 $P$ とその等角共役点 $Q$ について、直線 $BC$、$CA$、$AB$ までの距離を、$P$ については $x_P,y_P,z_P$、$Q$ については $x_Q,y_Q,z_Q$ とする。このとき
$$ x_Px_Q=y_Py_Q=z_Pz_Q $$
である。

距離を正弦で書く

段 1(頂点 $A$)。$\alpha_1=\angle BAP$、$\alpha_2=\angle PAC$ とする。$P$ から直線 $AB$ に下ろした垂線の足を $F_1$ とする。直線 $AP$ と直線 $AB$ のなす角は $\alpha_1$ なので、直角三角形 $AF_1P$ で $z_P=PF_1=AP\sin\alpha_1$ である($\alpha_1$ が鈍角で $F_1$ が半直線 $AB$ の反対側にくるときも、$\sin(180^\circ-\alpha_1)=\sin\alpha_1$ なので同じ式になる。$\alpha_1=90^\circ$ なら $F_1=A$ で $z_P=AP$ である)。同じく $y_P=AP\sin\alpha_2$ である。$Q$ については $\angle BAQ=\alpha_2$、$\angle QAC=\alpha_1$ なので、$z_Q=AQ\sin\alpha_2$、$y_Q=AQ\sin\alpha_1$ である。よって
$$ y_Py_Q=AP\cdot AQ\sin\alpha_1\sin\alpha_2=z_Pz_Q $$
である。
段 2(頂点 $B$)。頂点 $B$ で同じ計算をすると $z_Pz_Q=x_Px_Q$ である。段 1 と合わせて結論を得る。$\square$

等角共役点の重心座標

三角形 $ABC$ の内部の点 $P$ の重心座標を $(\alpha:\beta:\gamma)$ とする。$P$ の等角共役点 $Q$ の重心座標は
$$ \left(\frac{a^2}\alpha:\frac{b^2}\beta:\frac{c^2}\gamma\right) $$
である。

面積を距離で書く

方針:内部の点の重心座標は 3 つの三角形の面積の比である。面積を距離で書き、lem-isog-dist を使う。
段 1(重心座標と面積)。$P=\alpha A+\beta B+\gamma C$($\alpha+\beta+\gamma=1$)と表したとき、$P$ が内部にあれば $\alpha,\beta,\gamma$ は正で、$\alpha:\beta:\gamma=\triangle PBC:\triangle PCA:\triangle PAB$ である(Cevaの定理(高校数学) の重心座標の命題)。三角形の面積を $S$ とすると、$\triangle PBC=\dfrac12ax_P$ なので、$\alpha=\dfrac{ax_P}{2S}$、つまり $x_P=\dfrac{2S\alpha}a$ である。同じく $y_P=\dfrac{2S\beta}b$、$z_P=\dfrac{2S\gamma}c$ である。
段 2($Q$ の距離)。lem-isog-dist の共通の値を $k$ とおく($k>0$)。$x_Q=\dfrac k{x_P}$、$y_Q=\dfrac k{y_P}$、$z_Q=\dfrac k{z_P}$ である。
段 3($Q$ の面積の比)。$Q$ も内部の点なので、段 1 と同じく重心座標は面積の比である。
$$ \triangle QBC:\triangle QCA:\triangle QAB=ax_Q:by_Q:cz_Q=\frac{ak}{x_P}:\frac{bk}{y_P}:\frac{ck}{z_P}=\frac{a^2k}{2S\alpha}:\frac{b^2k}{2S\beta}:\frac{c^2k}{2S\gamma} $$
である。共通の正の数 $\dfrac k{2S}$ で割ると $\dfrac{a^2}\alpha:\dfrac{b^2}\beta:\dfrac{c^2}\gamma$ になる。$\square$

重心座標で等角共役点を求める
  1. ex-isog-start の $P(2,3)$ は、$(2,3)=\dfrac13(6,0)+\dfrac12(0,6)$ より $P=\dfrac16A+\dfrac13B+\dfrac12C$ で、重心座標は $(1:2:3)$ である。$a^2=72$、$b^2=c^2=36$ なので
    $$ Q=\left(\frac{72}1:\frac{36}2:\frac{36}3\right)=(72:18:12)=(12:3:2),\qquad Q=\frac{12A+3B+2C}{17}=\left(\frac{18}{17},\frac{12}{17}\right) $$
    で、ex-isog-start の結果と一致する。距離は $x_P=\dfrac{\lvert2+3-6\rvert}{\sqrt2}=\dfrac1{\sqrt2}$、$y_P=2$、$z_P=3$、$x_Q=\dfrac{\lvert\frac{18}{17}+\frac{12}{17}-6\rvert}{\sqrt2}=\dfrac{72}{17\sqrt2}$、$y_Q=\dfrac{18}{17}$、$z_Q=\dfrac{12}{17}$ で、積は
    $$ x_Px_Q=\frac1{\sqrt2}\cdot\frac{72}{17\sqrt2}=\frac{36}{17},\qquad y_Py_Q=2\cdot\frac{18}{17}=\frac{36}{17},\qquad z_Pz_Q=3\cdot\frac{12}{17}=\frac{36}{17} $$
    とそろう(lem-isog-dist)。
  2. ex-isog-oh の 13, 14, 15 の三角形では、垂心 $H=(70:99:55)$ に式を当てはめると $(154:125:169)$ になり、これは外心 $O\left(7,\dfrac{33}8\right)$ の重心座標である。
    (2) 垂心の重心座標から外心を求める計算を開く

    (2) ex-isog-oh の 13, 14, 15 の三角形($a=14$、$b=15$、$c=13$)で、垂心の重心座標は $(\tan A:\tan B:\tan C)$ である(三角形の五心)。$\cos A=\dfrac{b^2+c^2-a^2}{2bc}=\dfrac{33}{65}$、$\cos B=\dfrac5{13}$、$\cos C=\dfrac35$ から $\tan A=\dfrac{56}{33}$、$\tan B=\dfrac{12}5$、$\tan C=\dfrac43$ で、$165$ 倍すると $H=(280:396:220)=(70:99:55)$ である。thm-isog-bary により

    $$Q=\left(\frac{196}{70}:\frac{225}{99}:\frac{169}{55}\right)=\left(\frac{14}5:\frac{25}{11}:\frac{169}{55}\right)=(154:125:169)$$

    で、$Q=\dfrac{154A+125B+169C}{448}=\left(\dfrac{770+2366}{448},\dfrac{1848}{448}\right)=\left(7,\dfrac{33}8\right)$ は外心 $O$ である。

    一般の鋭角三角形でも同じである。垂心の重心座標は $(\tan A:\tan B:\tan C)$、外心の重心座標は $(\sin2A:\sin2B:\sin2C)$ である(三角形の五心)。正弦定理 $a=2R\sin A$ を使うと $\dfrac{a^2}{\tan A}=\dfrac{4R^2\sin^2A\cos A}{\sin A}=2R^2\sin2A$ なので、$\left(\dfrac{a^2}{\tan A}:\dfrac{b^2}{\tan B}:\dfrac{c^2}{\tan C}\right)=(\sin2A:\sin2B:\sin2C)$ となり、垂心の等角共役点は外心である。
  3. 内心 $I=(a:b:c)$ の等角共役点は $\left(\dfrac{a^2}a:\dfrac{b^2}b:\dfrac{c^2}c\right)=(a:b:c)$ で、$I$ 自身である。
  4. 重心 $G=(1:1:1)$ の等角共役点は $(a^2:b^2:c^2)$ である。13, 14, 15 の三角形では $(196:225:169)$ で、点は $\left(\dfrac{1673}{295},\dfrac{1176}{295}\right)$ である。この点が 類似重心 である。
2 次の Cremona 変換

thm-isog-bary の式に $\alpha\beta\gamma$ を掛けると、等角共役は
$$ (\alpha:\beta:\gamma)\longmapsto(a^2\beta\gamma:b^2\gamma\alpha:c^2\alpha\beta) $$
と書ける。右辺は $\alpha,\beta,\gamma$ の 2 次式なので、1 次式で書ける射影変換(射影変換と複比)ではない。この対応を 2 回続けると、第 1 成分は $a^2\cdot(b^2\gamma\alpha)(c^2\alpha\beta)=a^2b^2c^2\alpha\beta\gamma\cdot\alpha$ になり、第 2・第 3 成分も同じく $a^2b^2c^2\alpha\beta\gamma\cdot\beta$、$a^2b^2c^2\alpha\beta\gamma\cdot\gamma$ になる。共通の数 $a^2b^2c^2\alpha\beta\gamma$ で割ると $(\alpha:\beta:\gamma)$ にもどる($\alpha\beta\gamma\ne0$ のとき)。これは thm-isog-main (3) の式での表れである。2 次式で書けて、逆の対応も同じ形で書ける射影平面の変換を 2 次の Cremona 変換 という(Cremona変換)。

外接円と無限遠直線が入れかわることを開く

重心座標の成分に負の数も許すと、三角形の外の点も $(\alpha:\beta:\gamma)$ で表せる(Cevaの定理(高校数学) の後半)。成分の和が $0$ の比は平面の点を表さず、「無限遠の点」(ある向きの平行線の集まり)を表すと考える。外接円の重心座標による方程式は $a^2\beta\gamma+b^2\gamma\alpha+c^2\alpha\beta=0$ である(この記事では証明しない)。この式の左辺は、上の変換の像の成分の和そのものである。したがって、外接円の上の点は、成分の和が $0$ の比、つまり無限遠の点に移る。この対応は 2 回続けるともとにもどるので、逆に無限遠の点(3 頂点の成分が $0$ にならないもの)は外接円の上の点に移る。

ex-isog-start の三角形で、外接円の上の点 $(6,6)$ は $(6,6)=-A+B+C$ なので $(-1:1:1)$ である。$a^2\beta\gamma+b^2\gamma\alpha+c^2\alpha\beta=72-36-36=0$ で方程式を満たす。像は $(72:-36:-36)=(2:-1:-1)$ で成分の和は $0$ であり、$2A-B-C=(-6,-6)$ の向き、つまり傾き $1$ の向きの無限遠の点を表す。これは ex-isog-cx-circle の 3 本の平行線の向きと一致する。

また、3 頂点を通らない直線は、3 頂点を通る 2 次曲線に移る(証明しない)。

例と反例

thm-isog-main と prop-isog-pedal の仮定を外すと何が崩れるかを並べる。三角形の外の点では、def-isog の「角の内部を通る直線」の代わりに、頂点を通る直線を角の二等分線を含む直線に関して折り返したものを使う。

外す条件反例成り立たなくなること
$P$ が三角形の内部にある外接円の上の点 $P(6,6)$折り返した 3 本が 1 点で交わる
$P$ が三角形の内部にある辺 $BC$ の上の点等角共役点の等角共役点が $P$ にもどる
$Q$ が $P$ の等角共役点$P(2,3)$ と重心 $G(2,2)$垂線の足の 6 点が同じ円の上にある
反例:外接円の上の点では 3 本が平行

ex-isog-start の三角形の外接円は、中心 $(3,3)$、半径 $3\sqrt2$ の円である。点 $P(6,6)$ は $(6-3)^2+(6-3)^2=18$ なのでこの円の上にある。
頂点 $A$、$B$、$C$ で直線 $AP$、$BP$、$CP$ を角の二等分線を含む直線に関して折り返すと、それぞれ直線 $y=x$、$y=x-6$、$y=x+6$ になる。

3 本の直線を求める計算を開く

(1) 頂点 $A$。直線 $AP$ は $y=x$ で、角 $A$ の二等分線そのものなので、折り返しても $y=x$ である。

(2) 頂点 $B$。半直線 $BA$ の向きは $180^\circ$、半直線 $BC$ の向きは $135^\circ$ なので、角 $B$ の二等分線の向きは $157.5^\circ$ である。直線 $BP$ は $x=6$ で向き $90^\circ$ である。向き $\varphi$ の直線に関する折り返しは向き $\theta$ を $2\varphi-\theta$ に移す(鏡の直線となす角が同じで、反対の側にくる)ので、向き $90^\circ$ は $2\cdot157.5^\circ-90^\circ=225^\circ$ に移る。向き $225^\circ$ の直線は傾き $1$ なので、折り返した直線は $y=x-6$ である。

(3) 頂点 $C$。半直線 $CA$ の向きは $270^\circ$、半直線 $CB$ の向きは $315^\circ$ で、二等分線の向きは $292.5^\circ$ である。直線 $CP$ は $y=6$ で向き $0^\circ$ なので、折り返すと向き $585^\circ$、つまり $225^\circ$ で、直線 $y=x+6$ になる。


3 本 $y=x$、$y=x-6$、$y=x+6$ は平行で、共有点をもたない。thm-isog-main (2) の円も作れない。$P$ を 3 辺で折り返した点は $(6,-6)$、$(-6,6)$、$(0,0)$ で、どれも直線 $y=-x$ の上に並ぶからである。

外接円の上の点 P では、折り返した 3 本の青い直線が平行になる 外接円の上の点 P では、折り返した 3 本の青い直線が平行になる
辺 BC の上の点 P では、折り返した 3 本の青い直線がどれも頂点 A を通る 辺 BC の上の点 P では、折り返した 3 本の青い直線がどれも頂点 A を通る
反例:辺の上の点はどれも頂点に集まる

ex-isog-start の三角形で、辺 $BC$ の中点 $P(3,3)$ をとる。直線 $BP$ は直線 $BC$ そのもので、角 $B$ の二等分線で折り返すと直線 $BA$ になる。同じく直線 $CP$ は直線 $CB$ で、折り返すと直線 $CA$ になる。直線 $AP$ は $y=x$ で、折り返しても $y=x$ である。3 本はどれも頂点 $A$ を通る。
辺 $BC$ の上のどの点 $P$(頂点以外)でも、$B$ と $C$ で折り返した直線は $BA$ と $CA$ なので、3 本の交点はいつも $A$ である。辺 $BC$ の上の無数の点がすべて同じ点 $A$ に移るので、thm-isog-main (3) のように「もとにもどす」ことはできない。重心座標で見ると、$P=(0:\beta:\gamma)$ の像は $(a^2\beta\gamma:0:0)=(1:0:0)$、つまり $A$ である(rem-isog-cremona の式)。

反例:等角共役でない 2 点では足が同じ円に乗らない

ex-isog-start の三角形で、$P(2,3)$ と重心 $G(2,2)$ をとる。$G$ は $P$ の等角共役点ではない($P$ の等角共役点は $Q\left(\dfrac{18}{17},\dfrac{12}{17}\right)$)。$P$ の垂線の足 $\left(\dfrac52,\dfrac72\right)$、$(0,3)$、$(2,0)$ を通る円は
$$ x^2+y^2-\frac{52}{17}x-\frac{63}{17}y+\frac{36}{17}=0 $$
である(3 点を代入して係数を決めた)。$G$ から辺 $BC$ に下ろした垂線の足 $(3,3)$ を左辺に代入すると
$$ 9+9-\frac{156}{17}-\frac{189}{17}+\frac{36}{17}=\frac{306-156-189+36}{17}=-\frac3{17}\ne0 $$
なので、$(3,3)$ はこの円の上にない。6 つの足は同じ円の上にない。

さらに先へ

  • 角の二等分線で折り返す代わりに、Ceva 線の足を辺の中点に関して折り返すと、等長共役 という別の対応が得られる。重心座標では $(\alpha:\beta:\gamma)\mapsto\left(\dfrac1\alpha:\dfrac1\beta:\dfrac1\gamma\right)$ で、Gergonne 点と Nagel 点がその組になる(Gergonne点とNagel点)。
  • 重心の等角共役点である類似重心は、3 辺までの距離の 2 乗の和を最小にする点として特徴づけられる(類似重心)。
  • 等角共役の対の表は Wei26 にある。外心と垂心、重心と類似重心のほか、Fermat 点(Fermat点)と等力点なども組になる。
  • 外接円の上の点 $P$ では、3 辺で折り返した点が一直線に並び(ex-isog-cx-circle)、垂線の足も一直線に並ぶ(Simson 線。この記事では証明しない)。
  • 平面の 2 次の変換としては、円に関する反転 も「2 回続けるともとにもどる」変換である。反転は円を円に移し、等角共役は外接円を無限遠直線に移す(rem-isog-cremona)。

関連項目

参考文献

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する