本書は、A. Grothendieck が 1961 年 1 月に Cartan セミナーの連作「Techniques de construction en géométrie analytique」の第 4 回として行った講演「Formalisme général des foncteurs représentables」(exposé 11、28 頁)を道案内にして、前層が一つの対象で表されるのはいつかを判定する一般の方法を解説する参考書である。講演は、対象を点の前層に置き換える対応から始めて、前層の射が表現可能であることを底変換で調べる方法、表現可能な前層を同値の対で割った商が表現可能になる条件、解析空間の圏で開部分関手に覆われる局所的な関手が表現可能になる判定法を与えた。連作の後の回は、この判定法でベクトル束や Grassmann 束の表現可能性を示し、モジュライ問題へ進む。 本書は翻訳ではない。表現可能関手と米田の対応、底変換と相対的表現可能性、有効エピと商、解析空間の貼り合わせ、という主題ごとに四つの章を立て、前提知識と読み方の章を加えて全 16 頁とし、現代の記号と言葉で書き直した。前の三つの章は任意の圏の定理で、解析空間は最後の章で初めて使う。各頁は、その頁で示すこと、背景と動機、定義と準備、主結果と証明、例と反例、その後の発展、原論文との対応表の同じ形で書く。 原論文は「ただちに分かる」「自明」「よく知られている」で多くの段を済ませている。本書はその段を補って閉じ、第 1〜4 章の 47 個の主結果を、本書の中で証明し切れたもの(完結)、引用した事実に依るもの(条件付き)、証明を閉じられなかったもの(未完結)に分けて札で示した。完結は 35 個で、一般の圏の三つの章の主結果である。条件付きは 11 個で、そのうち最後の章の 10 個は連作の前の回の解析空間の定義と環付き空間の貼り合わせだけに依り、定理を使わないので、定義の下では閉じることを札に書き添えた。残る 1 個は前の回の定理を引く。未完結は、原論文が証明なしに述べる一文の 1 個である。原論文が黙って使う三つの読み(解析空間の分離性、空の和と空の被覆、同値の対)は本書が足した仮定として明示した。印字のままでは成り立たない一つの主張はファイバー積の無い圏での反例を示して正しい形に直し、結論に届かない証明の段は別の道で埋めた。 読むには、圏と関手、極限、位相空間の層の初歩が要る。解析空間については連作の前の回の定義を引き、分離性を要求しないという連作の約束を例とともに述べる。この約束を落とすと最後の章の二つの命題が偽になる。要点は第 0 章に、読む順序の案は「本書の読み方」に、記号と本書が足した仮定は「記号と約束」にまとめた。
本書を読むのに要る事実を分野ごとにまとめる章である。宇宙の約束の下の集合の圏、圏と関手と前層、極限とファイバー積、スライス圏、エピと余等化子、集合の同値関係(0-2)は、定義から数行で出るので証明まで書く。位相空間の層と環付き空間の貼り合わせ(0-3)、同じ連作の前の二回の講演が与える解析空間の定義、開部分空間とはめ込み、ファイバー積の存在(0-4)は引用としてまとめ、そこから直ちに出る補題と命題は証明する。解析空間は分離的とは限らないという連作の約束は、第 4 章の定理の成否を左右するので 0-4 で例とともに述べる。頁ごとの前提の対応表と読む順序は 0-1 に、記号、本書が足した仮定、原論文の引き方と誤植の読み方、状態札の意味は 0-5 にまとめる。
原論文 §2 に当たり、対象をその点の前層に送る対応と、前層がいつ一つの対象で表されるかを扱う章である。1-1 は、前層から点の前層への射がその前層の値と一対一に対応すること(後に米田の補題と呼ばれる)と、点の前層への対応が充満忠実であることを示し、前層を表す対象と普遍元の組が同型を除いて一意であることを導く。原論文は対応を作るだけで全単射性の確認を書かないので、その段を補う。1-2 は、前層の圏の極限が点ごとに計算され、点の前層への対応が存在する極限を保つことを示し、対象の上の群の構造を前層の値の群の構造として与える原論文の方法を、図式で書く群対象と比べる。以後の章のファイバー積と底変換は、すべてこの章の言い換えの上に立つ。
原論文 §3 に当たり、前層を底の上の圏に制限する操作と、前層の射が表現可能であることの意味を扱う章である。2-1 は、関手に沿った前層の引き戻しの表現可能性を点ごとの随伴で言い換え、底の上の圏への制限が表現可能になる条件が積の存在であることを示す。2-2 は、射のファイバーを定義し、射が表現可能であることを、任意の点の前層に沿うファイバー積が表現可能であることと言い換える。2-3 は、表現可能な前層の間の射の場合を扱い、普遍元の上の一つのファイバーが前層全体を決めることを示す。2-4 は、表現可能な射が底変換と合成で安定であることを示す。原論文の「合成と後の因子が表現可能なら前の因子も」は、ファイバー積の無い圏で破れるので、正しい形に直す。最後に、底変換で安定な射のクラスについての判定と、解析空間のはめ込みの用例を述べる。
原論文 §4 に当たり、第 2 章の問題を逆向きにする章である。第 2 章では目標の前層が表現可能なとき源の表現可能性を調べたが、ここでは源が表現可能なとき、射の性質から目標の表現可能性を導く。3-1 は、有効エピと普遍有効エピを定義し、普遍有効エピに沿ってカルテシアン正方形が降りること、商対象への射が源の上の降下の組で記述できることを示す。原論文が確かめを省いた関手性と集合の大きさを補う。3-2 は、表現可能な源の自分自身とのファイバー積が同値の対を定めることを示し、主定理として、目標が表現可能で射が与えられたクラスに属するための三条件(ファイバーの表現可能性、降下、同値の対の有効性)を与える。原論文の証明は目標の表現可能性で終わり、射がクラスに属することを示さないので、その段を補う。解析幾何への移し替えを述べる原論文の一文は、証明が無いので未完結とする。
原論文 §5 に当たり、第 3 章の主定理を解析空間の圏で、開被覆に沿った射のクラスに当てはめる章である。解析空間の定義は同じ連作の前の講演に依り、分離性は要求しない。4-1 は、開はめ込みの非交和を全射で覆う局所化射を定義してその基本性質を示し、開はめ込みで局所的な同値の対が貼り合わせで商をもつことを示す。分離的な空間だけで読むとこの命題は偽になることを、原点を二重にした直線で示す。4-2 は、局所的な関手を開被覆についての層として定義し、局所的な関手が開部分関手で覆われれば表現可能であることを示す。原論文の証明の一段は局所化射というだけでは通らないので、別の道で埋める。空の被覆の扱いも定める。4-3 は、開はめ込みを各点の上の値で判定する方法を述べる。
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