表現可能な前層の射が、底変換と合成で表現可能のまま保たれることを示し、表現可能な射どうしのファイバー積を扱う。原論文の「合成と後の因子が表現可能なら前の因子も表現可能」は、ファイバー積の無い圏で破れるので、ファイバー積の存在を仮定した正しい形に直す。最後に、底変換で安定な射のクラスについての判定を述べ、解析空間のはめ込みの三つのクラスがその例であることを確かめる。
前提知識: 表現可能関手, ファイバー積, スライス圏, 底変換
宇宙 $\mathcal U$ を固定し、$\mathbf C$ は Hom がすべて $\mathcal U$ の元である圏、$\widehat{\mathbf C}$ はその前層の圏とする(本書『0-2 圏と前層』)。前層の射 $u\colon F\to G$、対象 $S$、$\eta\in G(S)$ について、$u$ のファイバーは $\mathbf C/S$ 上の前層 $F_\eta(T)=\{x\in F(T):u(x)=G(p_T)(\eta)\}$ で、すべてのファイバーが $\mathbf C/S$ 上で表現可能な $u$ を表現可能という(本書『2-2 ファイバーと表現可能な射』)。射を明示したいときは、$u$ のファイバーを $F^u_\eta$ と書く。
本頁の主結果は次の七つである。
本書『2-3 表現可能な関手の間の射』で、表現可能な前層 $G$ への射 $u$ が表現可能であることは、$F$ が表現可能で対応する射が底変換可能であることと同じだと分かった。すると表現可能な射は、「もとの圏の底変換可能な射」を前層の側へ広げた概念とみなせる。本頁は、そのような射の全体が、もとの圏の射と同じく底変換と合成について閉じていることを確かめる。これは、ある前層の表現可能性を別の前層の表現可能性に帰着させるときに、帰着の各段で表現可能性を運べることを保証する。
原論文は命題 3.10 を三つの部分に分ける(印字 11-08〜11-10)。(i) は底変換、(ii) は同型と合成で、証明は正しい。(iii) は「逆に、$vu$ と $v$ が表現可能なら $u$ も表現可能」と述べるが、証明の中の一段が一般の圏では成り立たず、主張も偽になる。本書は (iii) を、ファイバー積の存在を仮定した形に直して主結果とする。第 4 章で扱う解析空間の圏にはファイバー積があるので、原論文のその後の議論はこの訂正の影響を受けない(下の注意「原論文の命題 3.10 (iii) の形」)。
続く系 3.11・3.12 はファイバー積の表現可能性で、第 3 章の同値の対の構成(本書『3-2 商と表現可能性の主定理』の主結果「ファイバー積が定める同値の対」)が系 3.12 を使う。注意 3.13 は、表現可能な射の性質を「対応する射が決まったクラスに属する」という形で扱う枠組みを与える。原論文は、この判定を主に $S$ 上の解析空間の圏とはめ込みのクラスで使うと述べる(印字 11-11)。本書では、第 3 章の主定理(本書『3-2 商と表現可能性の主定理』の主結果「商による表現可能性の判定」)と第 4 章の開はめ込みの判定がこの判定を引く。
ファイバー積の存在は、本書『1-2 前層の圏の極限と関手で与える構造』の定義「積とファイバー積が存在するという約束」の意味で使う。前層の圏ではファイバー積はいつも存在し、点ごとに計算される(同じ頁の主結果「前層の圏の極限と表現可能性」の (a))。射 $f\colon X\to Y$ が底変換可能とは、任意の $Y'\to Y$ についてファイバー積 $X\times_YY'$ が存在することである(本書『2-2 ファイバーと表現可能な射』)。$F$、$G$ を表す組 $(X,\xi_X)$、$(Y,\eta_Y)$ について、$u(X)(\xi_X)=G(f)(\eta_Y)$ となるただ一つの $f\colon X\to Y$ を $u$ に対応する射という(本書『2-2 ファイバーと表現可能な射』の補題「表現可能な前層の間の射を与える射」。表す組を取り替えたときの変わり方は本書『2-3 表現可能な関手の間の射』の補題「対応する射の取り替え」)。
本書『2-1 制限と底変換』の補題「前層の同型は表す組を移す」により、表現可能性は前層の同型で移る。以下、ファイバーが同型であることを示して表現可能性を移す所では、これを断らずに使う。
本頁の主結果 2・3 は、ある底 $S$ の上で、圏 $\mathbf C/S$ に本書『2-3 表現可能な関手の間の射』の主結果を当てる。そのためには、表現可能な射を $\mathbf C/S$ に制限したものが、圏 $\mathbf C/S$ の中で表現可能であることを確かめておく必要がある。原論文は命題 3.10 (ii) の証明でこれを断らずに使う。
$u\colon F\to G$ が表現可能なら、任意の対象 $S$ について、$\mathbf C/S$ 上の前層の射 $u_{/S}\colon F_{/S}\to G_{/S}$($u$ の $\mathbf C/S$ への制限)は、圏 $\mathbf C/S$ の上で表現可能である。
段 1(ファイバーの比較).$\mathbf C/S$ の対象 $(T,p_T)$ と $\eta\in G_{/S}(T,p_T)=G(T)$ をとる。$u_{/S}$ の $\eta$ の上のファイバーは $(\mathbf C/S)/(T,p_T)$ 上の前層で、その対象 $((U,p_U),q)$($q\colon U\to T$ は $S$ 射)での値は $\{x\in F(U):u(x)=G(q)(\eta)\}$ である。本書『0-2 圏と前層』の補題「スライス圏」の (3) により、$((U,p_U),q)\mapsto(U,q)$ は圏の同型 $(\mathbf C/S)/(T,p_T)\cong\mathbf C/T$ で、射の上では恒等写像である。この同一視で、上の値は $u$ の $\eta\in G(T)$ の上のファイバー $F_\eta$ の $(U,q)$ での値そのもので、制限の写像もどちらも $F$ の制限である。
段 2(表す組).$u$ は表現可能なので $F_\eta$ は $\mathbf C/T$ 上で組 $((Z,z),\zeta)$ で表される。圏の同型で対象 $(Z,z)$ に当たるのは $((Z,p_T\circ z),z)$ で、射の集合も一致するので、この対象と同じ元 $\zeta$ の組が $u_{/S}$ のファイバーを表す。
射のクラスの底変換での安定性は、原論文の注意 3.13 の定義による。原論文の定義にある「任意の選び方について」の一句を、本書も定義に残す。この一句の役割は主結果 6 の (b) と、下の反例「反例:任意の選び方の一句を外すとクラスの判定が表現の選び方に依る」で見る。
$\mathbf C$ の射の集まり $\mathcal S$ が底変換で安定であるとは、$\mathcal S$ に属する任意の射 $f\colon X\to Y$ と任意の射 $g\colon Y'\to Y$ について、ファイバー積 $X\times_YY'$ が存在し、そのどの選び方 $(P;a,f')$($a\colon P\to X$、$f'\colon P\to Y'$、$f\circ a=g\circ f'$)についても、$Y'$ への射影 $f'$ が $\mathcal S$ に属することをいう。
主結果 1〜6 は事実を引用しない。主結果 7 は次の事実を引用する。出典は同じ連作の第 II 回 Gro61ii で、本書『0-4 解析空間』にまとめてある。
底変換から始める。前層の圏のファイバー積は点ごとに作れるので、ファイバーの比較は集合の計算になる。
前層の射 $u\colon F\to G$、$w\colon G'\to G$ と、$\widehat{\mathbf C}$ のカルテシアンな正方形
$$\begin{array}{ccc}F'&\longrightarrow&F\\ {\scriptstyle u'}\downarrow&&\downarrow{\scriptstyle u}\\ G'&\xrightarrow{\ w\ }&G\end{array}$$
をとる。$u$ が表現可能なら $u'$ も表現可能である。さらに、対象 $S$ と $\eta'\in G'(S)$ について、$u'$ のファイバー $F'_{\eta'}$ は、$u$ の $w(S)(\eta')\in G(S)$ の上のファイバーに $\mathbf C/S$ 上の前層として同型である。
段 1(点ごとの形).本書『1-2 前層の圏の極限と関手で与える構造』の主結果「前層の圏の極限と表現可能性」の (a) により、$u$ と $w$ のファイバー積は、各 $T$ で集合のファイバー積 $\{(x,y')\in F(T)\times G'(T):u(x)=w(y')\}$ をとったもので与えられる。本書『0-2 圏と前層』の補題「極限の普遍性と一意性」の (1) により、$F'$ はこれと射影を保つ同型で結ばれるので、$F'(T)$ をこの集合、$u'$ を第 2 射影としてよい(ファイバーは同型で移る)。
段 2(ファイバーの比較).$\mathbf C/S$ の対象 $(T,p_T)$ について、$\eta=w(S)(\eta')$ とおくと、
$$F'_{\eta'}(T)=\{(x,y'):u(x)=w(y'),\ y'=G'(p_T)(\eta')\}$$
で、$y'$ は $\eta'$ から決まり、そのとき条件 $u(x)=w(G'(p_T)(\eta'))=G(p_T)(w(\eta'))=G(p_T)(\eta)$ は $x\in F_\eta(T)$ と同じである($w$ の自然性)。したがって $(x,y')\mapsto x$ は全単射 $F'_{\eta'}(T)\to F_\eta(T)$ で、制限はどちらも $F$ と $G'$ の制限なので $T$ について自然である。本書『1-1 米田の対応と表現可能関手』の補題「成分ごとに全単射な前層の射は同型」により $F'_{\eta'}\cong F_\eta$ である。
段 3(表現可能性).$u$ は表現可能なので $F_\eta$ は表現可能で、段 2 の同型で $F'_{\eta'}$ も表現可能である。$S$、$\eta'$ は任意なので $u'$ は表現可能である。
ファイバーは底変換で変わらない。これが主結果 1 の中身で、原論文は同じことを、$\mathbf C/S$ に制限した正方形と定数前層からの射で述べる(印字 11-09)。
前層の同型は表現可能である。$u\colon F\to G$ と $v\colon G\to H$ が表現可能なら、合成 $v\circ u\colon F\to H$ も表現可能である。
段 1(同型).$u$ を同型とし、$\eta\in G(S)$ をとる。$F_\eta(T)$ は $u(T)^{-1}(G(p_T)(\eta))$ のただ一点からなるので、$F_\eta$ から $\mathbf C/S$ 上の一点集合への定数前層 $c_{/S}$ へのただ一つの射は、成分ごとに全単射で、本書『1-1 米田の対応と表現可能関手』の補題「成分ごとに全単射な前層の射は同型」により同型である。$c_{/S}$ は $\mathbf C/S$ の終対象 $(S,\mathrm{id}_S)$ で表される(本書『2-1 制限と底変換』の主結果「終対象と定数関手」)ので、$F_\eta$ も表現可能である。
段 2(合成のファイバー).$\zeta\in H(S)$ をとる。$v\circ u$ のファイバーを $F^{vu}_\zeta$、$v$ のファイバーを $G^v_\zeta$ と書く。$(T,p_T)$ での値は $F^{vu}_\zeta(T)=\{x\in F(T):v(u(x))=H(p_T)(\zeta)\}$、$G^v_\zeta(T)=\{y\in G(T):v(y)=H(p_T)(\zeta)\}$ で、$u$ は $F^{vu}_\zeta$ を $G^v_\zeta$ に写す。この射を $u_\zeta$ と書く。$x\in F(T)$ が $F^{vu}_\zeta(T)$ に入ることは $u(x)\in G^v_\zeta(T)$ と同じなので、各 $T$ で $F^{vu}_\zeta(T)$ は $F(T)$ と $G^v_\zeta(T)$ の $G(T)$ 上のファイバー積である。圏 $\mathbf C/S$ で本書『1-2 前層の圏の極限と関手で与える構造』の主結果「前層の圏の極限と表現可能性」の (a) を使えば、$\mathbf C/S$ 上の前層の正方形
$$\begin{array}{ccc}F^{vu}_\zeta&\longrightarrow&F_{/S}\\ {\scriptstyle u_\zeta}\downarrow&&\downarrow{\scriptstyle u_{/S}}\\ G^v_\zeta&\longrightarrow&G_{/S}\end{array}$$
(横は包含)はカルテシアンである。
段 3(表現可能性).上の補題(表現可能な射のスライス圏への制限)により $u_{/S}$ は圏 $\mathbf C/S$ の上で表現可能で、上の定理(表現可能な射の底変換)を圏 $\mathbf C/S$ で使えば $u_\zeta$ も表現可能である。$v$ は表現可能なので $G^v_\zeta$ は $\mathbf C/S$ 上で表現可能である。本書『2-3 表現可能な関手の間の射』の主結果「普遍元の上のファイバーが関手を決める」を圏 $\mathbf C/S$ と射 $u_\zeta$ に当てると、$F^{vu}_\zeta$ は $\mathbf C/S$ 上で表現可能である。$S$、$\zeta$ は任意なので $v\circ u$ は表現可能である。
段 3 で使ったのは本書『2-3 表現可能な関手の間の射』の主結果のうち、底変換可能性を仮定しない向きだけである。逆向きの主張、すなわち合成と後の因子から前の因子へ戻る主張では、底変換可能性を仮定する向きが要る。そこで原論文の証明が破れる。
まず原論文の形と、その証明の破れる段を記録する。
原論文の命題 3.10 (iii) は、$v\circ u$ と $v$ が表現可能なら $u$ も表現可能である、と述べる(印字 11-09)。証明は主結果 2 の段 2 の図式を使い、二つのファイバー $F^{vu}_\zeta$、$G^v_\zeta$ が $\mathbf C/S$ の対象 $X$、$Y$ で表されることを確かめたうえで、構造射 $X\to S$、$Y\to S$ が系 3.9 により底変換可能であることから「ただちに」(aussitôt)$S$ 射 $X\to Y$ が底変換可能だと結論し、命題 3.7 で $u_\zeta$ を表現可能とする。この一段は一般の圏では成り立たない。二つの構造射が底変換可能でも、その間の射は底変換可能とは限らない(下の反例「反例:ファイバー積の無い圏では合成から因子へ戻れない」では、$S$ が終対象、$X\to S$、$Y\to S$ は底変換可能だが、$X\to Y$ は底変換可能でない)。証明の残りの段($u_\zeta$ のファイバーから $u$ のファイバーを読む段)は正しい。
本書はこれを誤植ではなく主張の偽として扱う。近くに正しい形(ファイバー積の存在の仮定)を与える文が無く、しかも破れる段そのものに「ただちに」という理由が添えられているからである(本書『0-5 記号と約束』の「主張の偽と証明の段の不備」)。命題 3.7 の括弧の注意(ファイバー積がつねにあれば底変換可能性は自動的)は命題 3.7 についての注意で、命題 3.10 には掛からない。
第 4 章で扱う解析空間の圏とその上の圏には任意のファイバー積がある(本書『0-4 解析空間』の定理「解析空間のファイバー積の存在」)ので、そこでは下の主結果の仮定 (α) が成り立ち、原論文の形のまま正しい。原論文のその後の議論はこの訂正の影響を受けない。この事実は本頁の判定には使わない。
訂正した形では、原論文の証明の破れた一段を仮定に置き換える。仮定 (β) は、その一段がちょうど要求することである。
前層の射 $u\colon F\to G$、$v\colon G\to H$ について、$v\circ u$ と $v$ が表現可能であるとし、次のどちらかを仮定する。
(α) $\mathbf C$ で任意の二つの射 $X\to Z$、$Y\to Z$ のファイバー積が存在する。
(β) 任意の対象 $S$ と $\zeta\in H(S)$ について、$u$ が引き起こす $\mathbf C/S$ 上の前層の射 $u_\zeta\colon F^{vu}_\zeta\to G^v_\zeta$($x\mapsto u(x)$。主結果 2 の証明の段 2 を参照)を考え、$F^{vu}_\zeta$、$G^v_\zeta$ を表す組をとったとき、それらについて $u_\zeta$ に対応する $\mathbf C/S$ の射($S$ 射)は底変換可能である。
このとき $u$ は表現可能である。
段 1((α) なら (β)).$\mathbf C/S$ のファイバー積は $\mathbf C$ のファイバー積に構造射を与えたもので、一方が存在すれば他方も存在する(本書『0-2 圏と前層』の補題「スライス圏」の (2))。(α) の下では $\mathbf C$ のどの射も底変換可能なので、$\mathbf C/S$ のどの射も底変換可能である。なお、$\mathbf C$ の射 $Y'\to Y$ は、$Y$ が $S$ 上の対象なら合成で $Y'$ を $S$ 上の対象とみた $S$ 射になるので、$S$ 射が $\mathbf C/S$ で底変換可能であることと $\mathbf C$ で底変換可能であることは同じである。以下 (β) を仮定する。
段 2(設定).$\eta\in G(S)$ をとり、$\zeta=v(S)(\eta)\in H(S)$ とおく。主結果 2 の証明の段 2 と同じく、$u$ は $\mathbf C/S$ 上の前層の射 $u_\zeta\colon F^{vu}_\zeta\to G^v_\zeta$ を与える。$v\circ u$ と $v$ が表現可能なので、$F^{vu}_\zeta$、$G^v_\zeta$ は $\mathbf C/S$ 上で表現可能である。
段 3($u_\zeta$ は表現可能).(β) により、表す組について $u_\zeta$ に対応する $S$ 射は底変換可能である。本書『2-3 表現可能な関手の間の射』の主結果「表現可能な射と関手の表現可能性」を圏 $\mathbf C/S$ で使うと、$u_\zeta$ は圏 $\mathbf C/S$ の上で表現可能である。
段 4($u_\zeta$ のファイバーとして $F_\eta$ を読む).$v(\eta)=\zeta=H(\mathrm{id}_S)(\zeta)$ なので、$\eta$ は $G^v_\zeta$ の $\mathbf C/S$ の終対象 $(S,\mathrm{id}_S)$ での値の元である。$u_\zeta$ の $\eta$ の上のファイバーは $(\mathbf C/S)/(S,\mathrm{id}_S)$ 上の前層で、この圏は本書『0-2 圏と前層』の補題「スライス圏」の (3) により $\mathbf C/S$ そのものである($(S,\mathrm{id}_S)$ への $S$ 射は構造射だけである)。その $(T,p_T)$ での値は
$$\{x\in F^{vu}_\zeta(T):u(x)=G(p_T)(\eta)\}=\{x\in F(T):u(x)=G(p_T)(\eta)\}=F_\eta(T)$$
である。左の等号は、$u(x)=G(p_T)(\eta)$ なら $v(u(x))=H(p_T)(v(\eta))=H(p_T)(\zeta)$ となって $x\in F^{vu}_\zeta(T)$ が自動的に成り立つことによる。制限はどちらも $F$ の制限である。段 3 により $u_\zeta$ は表現可能なので、このファイバー、すなわち $F_\eta$ は $\mathbf C/S$ 上で表現可能である。$S$、$\eta$ は任意なので $u$ は表現可能である。
段 4 は原論文が三段の図式から読み取る所で、$G^v_\zeta$ の元 $\eta$ に沿った $u_\zeta$ の底変換が $u$ の $\eta$ の上のファイバーになる、という観察である(印字 11-10)。破れていたのは段 3 の入口だけで、(β) はそこに必要なことをそのまま仮定している。仮定を外したときに何が起きるかは、下の反例で見る。
主結果 1 と 2 を合わせると、表現可能な射どうしのファイバー積も表現可能な射になる。原論文は系 3.11 でこれを述べ、ファイバーを直接書き下す確かめも添える。
$u\colon F\to G$ と $v\colon H\to G$ が表現可能なら、ファイバー積 $F\times_GH$ から $G$ への射 $w$ は表現可能である。対象 $S$ と $\eta\in G(S)$ について、$F^u_\eta$ を組 $(X_\eta,\xi_\eta)$、$H^v_\eta$ を組 $(Z_\eta,\zeta_\eta)$ が表すとき、ファイバー積 $X_\eta\times_SZ_\eta$ が存在し、それを $S$ 上の対象とみたものと元 $(F(\mathrm{pr}_1)(\xi_\eta),H(\mathrm{pr}_2)(\zeta_\eta))$ の組が $w$ のファイバーを表す。有限個の表現可能な射 $u_k\colon F_k\to G$($1\le k\le n$)についても、$F_1\times_G\cdots\times_GF_n\to G$ は表現可能である。
段 1(主結果 1・2 から).$F\times_GH$ は点ごとに作ったもの($(F\times_GH)(T)=\{(x,y):u(x)=v(y)\}$)をとる。別の選び方はこれと同型で移り合い、ファイバーも同型なので結論は変わらない。第 2 射影 $F\times_GH\to H$ は $u$ を $v$ に沿って底変換したものなので、上の定理(表現可能な射の底変換)により表現可能で、$v$ との合成が $w$ なので、上の定理(表現可能な射の合成)により $w$ は表現可能である。
段 2(ファイバーの直接の形).$(T,p_T)$ での値は
$$(F\times_GH)^w_\eta(T)=\{(x,y):u(x)=v(y)=G(p_T)(\eta)\}=F^u_\eta(T)\times H^v_\eta(T)$$
である。本書『2-3 表現可能な関手の間の射』の主結果「表現するファイバーの底変換」により $X_\eta$ の構造射は底変換可能なので、$X_\eta\times_SZ_\eta$ が存在する。本書『0-2 圏と前層』の補題「スライス圏」の (2) により、これは $\mathbf C/S$ での $X_\eta$ と $Z_\eta$ の積である。したがって $S$ 射 $a\colon T\to X_\eta\times_SZ_\eta$ は $S$ 射の組 $(\mathrm{pr}_1\circ a,\mathrm{pr}_2\circ a)$ と一対一に対応し、それは二つの表す組により $F^u_\eta(T)\times H^v_\eta(T)$ の元 $(F(\mathrm{pr}_1\circ a)(\xi_\eta),H(\mathrm{pr}_2\circ a)(\zeta_\eta))$ と一対一に対応する。これは元 $(F(\mathrm{pr}_1)(\xi_\eta),H(\mathrm{pr}_2)(\zeta_\eta))$ を $a$ で引き戻したものである($a=\mathrm{id}$ の場合からこの元は値の中にある)。ゆえにこの組がファイバーを表す。
段 3(有限個).$n=0$ のとき空のファイバー積は $G$ 自身で、$G\to G$ は恒等射なので主結果 2 により表現可能である。$n\ge1$ では、$F_1\times_G\cdots\times_GF_n=(F_1\times_G\cdots\times_GF_{n-1})\times_GF_n$ と見て(本書『1-2 前層の圏の極限と関手で与える構造』の主結果 (a) により点ごとに同じ集合になる)、$n$ についての帰納法で段 1 を当てればよい。
原論文は直接の確かめを、表す組を「$(X\times_SY,(\xi,\zeta))$」と略して書く(印字 11-10)。組の第 2 成分は、上のとおり二つの普遍元を射影で引き戻した組と読む。
原論文の系 3.12 は、ファイバー積の一つの因子が表現可能な前層の場合で、第 3 章で繰り返し使われる。
$F$ が表現可能で、$v\colon H\to G$ が表現可能なら、任意の射 $u\colon F\to G$ についてファイバー積 $F\times_GH$ は表現可能である。
第 1 射影 $F\times_GH\to F$ は $v$ を $u$ に沿って底変換したものなので、上の定理(表現可能な射の底変換)により表現可能である。$F$ は表現可能なので、本書『2-3 表現可能な関手の間の射』の主結果「普遍元の上のファイバーが関手を決める」をこの射影に当てると、$F\times_GH$ は表現可能である。
原論文の証明も同じで、「(i) により $F$ 上で表現可能、(3.7) で結論」の二段である(印字 11-10)。使うのは命題 3.7 のうち底変換可能性を仮定しない向きなので、ファイバー積の存在はここでは要らない。
原論文の注意 3.13 は、命題 3.7 の証明を「表す射が決まったクラスに属する」形に読み替える。まずクラスの側の二つの性質を確かめる。
$\mathcal S$ を $\mathbf C$ の底変換で安定な射のクラスとする。
(a) $\mathcal S$ に属する射は底変換可能である。
(b) $f\colon X\to Y$ が $\mathcal S$ に属し、$\varphi\colon X'\to X$、$\psi\colon Y'\to Y$ が同型なら、$\psi^{-1}\circ f\circ\varphi$ も $\mathcal S$ に属する。
(c) $G$ が表現可能であるとし、$u\colon F\to G$ を前層の射とする。$F$ が表現可能で、$F$、$G$ を表す組について $u$ に対応する射が $\mathcal S$ に属することは、任意の対象 $S$ と $\eta\in G(S)$ について $F_\eta$ が $\mathbf C/S$ のある対象 $Z$ で表され、その構造射 $Z\to S$ が $\mathcal S$ に属することと同値である。(b) により、どちらの条件も表す組の選び方によらない。
段 1((a)).定義により、$\mathcal S$ の元 $f\colon X\to Y$ はどの $Y'\to Y$ に沿ってもファイバー積をもつ。
段 2((b)).$(X';\varphi,\psi^{-1}\circ f\circ\varphi)$ は $f$ と $\psi$ のファイバー積である。実際、$f\circ\varphi=\psi\circ(\psi^{-1}\circ f\circ\varphi)$ で、$f\circ a=\psi\circ b$ を満たす $a\colon Z\to X$、$b\colon Z\to Y'$ について、$\varphi\circ z=a$ となる $z$ は $z=\varphi^{-1}\circ a$ だけで、そのとき $\psi^{-1}\circ f\circ\varphi\circ z=\psi^{-1}\circ f\circ a=b$ である。$\mathcal S$ は底変換で安定で、定義は選び方を問わないので、この選び方の射影 $\psi^{-1}\circ f\circ\varphi$ も $\mathcal S$ に属する。
段 3(選び方によらないこと).$F$、$G$ を表す組を取り替えると、$u$ に対応する射は本書『2-3 表現可能な関手の間の射』の補題「対応する射の取り替え」の (1) の形 $\psi^{-1}\circ f\circ\varphi$ に変わるので、(b) により $\mathcal S$ に属するかどうかは変わらない。$F_\eta$ を表す二つの組の対象 $Z$、$Z'$ は、本書『1-1 米田の対応と表現可能関手』の主結果「普遍問題の解の一意性」を圏 $\mathbf C/S$ で使えば $S$ 同型 $\varphi\colon Z'\to Z$ で結ばれ、$Z'$ の構造射は $Z$ の構造射に $\varphi$ を合成したものなので、(b)($\psi=\mathrm{id}_S$)により $\mathcal S$ に属するかどうかは変わらない。
段 4((c) の前から後).$F$ を $(X,\xi_X)$、$G$ を $(Y,\eta_Y)$ が表し、$u$ に対応する射 $f\colon X\to Y$ が $\mathcal S$ に属するとする。$\eta\in G(S)$ に対応する射を $p\colon S\to Y$ とする。(a) により $X\times_YS$ が存在し、本書『2-2 ファイバーと表現可能な射』の主結果「表現可能な関手の間の射のファイバー」により、$X\times_YS$ を第 2 射影で $S$ 上の対象とみたものが $F_\eta$ を表す。第 2 射影は $f$ を $p$ に沿って底変換したものなので $\mathcal S$ に属する。
段 5((c) の後から前).すべての $F_\eta$ が表現可能なので、$u$ は表現可能である。$S=Y$、$\eta=\eta_Y$ にとると、仮定により $F_{\eta_Y}$ は $\mathbf C/Y$ の対象 $(Z,z)$ と元 $\xi$ の組で表され、$z\in\mathcal S$ である。本書『2-3 表現可能な関手の間の射』の主結果「普遍元の上のファイバーが関手を決める」により、$(Z,\xi)$ は $F$ を表し、$z$ は組 $(Z,\xi)$、$(Y,\eta_Y)$ について $u$ に対応する射である。ゆえに $F$ は表現可能で、対応する射は $\mathcal S$ に属する。段 3 により、ほかの表す組についても同じである。
原論文は (c) を「命題 3.7 の証明から次が出る」とだけ書き、(b) には触れない((a) は定義の後の括弧で述べる。印字 11-10〜11-11)。証明は確かに命題 3.7 の証明(本書『2-3 表現可能な関手の間の射』の主結果「普遍元の上のファイバーが関手を決める」と、本書『2-2 ファイバーと表現可能な射』の主結果「表現可能な関手の間の射のファイバー」(原論文の補題 3.4))で $\mathcal S$ を追うだけだが、判定が表す組の選び方によらないためには (b) が要る。
原論文の注意 3.13 は、安定性の定義に「このファイバー積のどの選び方についても」の一句を入れる(印字 11-10)。この一句が、上の定理の (b)、すなわちクラスが両側からの同型の合成で閉じることを保証する。表す組は同型を除いてしか決まらないので、(b) が無いと「$u$ に対応する射が $\mathcal S$ に属する」は表す組の選び方に依る条件になる。一句を外したときに実際に選び方に依ってしまう例を、下の反例「反例:任意の選び方の一句を外すとクラスの判定が表現の選び方に依る」に置いた。原論文の括弧「$\mathcal S$ の元は底変換可能」は上の定理の (a) である。
原論文はこの判定を、$S$ 上の解析空間の圏とはめ込みのクラスで使う、と述べる(印字 11-11)。その用例のクラスが実際に底変換で安定であることを確かめておく。本書『4-3 開はめ込みの点ごとの判定』は、開はめ込みのクラスについて上の定理を使う。
解析空間 $S$ を固定し、$(\mathrm{An})_{/S}$ を $S$ 上の解析空間と $S$ 射の圏とする(本書『0-4 解析空間』の定義「解析空間の射」)。$S$ 射 $f\colon X\to Y$ が $(\mathrm{An})$ の射としてはめ込み(閉はめ込み、開はめ込み)であるとき、$S$ 上のはめ込み(閉はめ込み、開はめ込み)という。
$(\mathrm{An})_{/S}$ の中で、$S$ 上のはめ込みの全体、$S$ 上の閉はめ込みの全体、$S$ 上の開はめ込みの全体は、それぞれ底変換で安定な射のクラスである。
段 1(ファイバー積の存在と射影).$f\colon X\to Y$ を $S$ 上のはめ込み、$g\colon Y'\to Y$ を $S$ 射とする。上の「引用する事実」の 2(本書『0-4 解析空間』の定理「はめ込みの底変換」)により、$(\mathrm{An})$ にファイバー積 $(P;a,f')$ が存在し、射影 $f'\colon P\to Y'$ ははめ込みで、$f$ が閉はめ込みなら閉はめ込み、開はめ込みなら開はめ込みである。$P$ に構造射 $p_{Y'}\circ f'$ を与えると、本書『0-2 圏と前層』の補題「スライス圏」の (2) により、$(P;a,f')$ は $(\mathrm{An})_{/S}$ でのファイバー積である。
段 2(どの選び方でも).$(\mathrm{An})_{/S}$ でのファイバー積の別の選び方 $(P';a'',f'')$ は、本書『0-2 圏と前層』の補題「極限の普遍性と一意性」の (1) により、射影を保つ同型 $\varphi\colon P'\to P$ で $(P;a,f')$ と結ばれ、$f''=f'\circ\varphi$ である。引用する事実の 1(本書『0-4 解析空間』の定理「解析空間の開部分空間とはめ込み」)により、$f'$ は部分解析空間 $Q\subset Y'$ への同型 $\sigma\colon P\to Q$ と包含の合成で、$f''$ は同型 $\sigma\circ\varphi\colon P'\to Q$ と同じ包含の合成である。したがって $f''$ は $f'$ と同じ種類(同じ部分解析空間への)のはめ込みである。
段 3(開はめ込みの場合).$f$ が開はめ込みのときは、段 1 の代わりに引用する事実の 3(本書『0-4 解析空間』の命題「開はめ込みの底変換と非交和」の (1)。$(\mathrm{An})_{/S}$ での形は同じ命題の (3))により、逆像の開部分空間がファイバー積で、どの選び方でも射影は開はめ込みである。この場合は連作第 II 回の定理「はめ込みの底変換」を使わず、解析空間の定義とその直後の事実、環付き空間の貼り合わせだけで閉じる。
札の種類は三つのクラスをまとめて[条件付き]とした。段 3 のとおり、開はめ込みのクラスだけなら解析空間の定義の下で閉じる。本書の後の頁が扱うのは開はめ込みのクラスだけである。本書『4-3 開はめ込みの点ごとの判定』は、その安定性を同じ頁の補題「開はめ込みのクラスの底変換での安定性」で示してから、上の定理(底変換で安定な射のクラスの判定)を当てる。原論文はこの用例に証明を書かない。
まず原論文の命題 3.10 (iii) を破る例を置き、次に注意 3.13 の一句を外すと判定が崩れる例、最後に集合の圏で底変換で安定なクラスの例を見る。
主結果 3 から仮定 (α)(β)、すなわちファイバー積の存在を外す。$\mathbf C$ を空でない $\mathcal U$ 小な集合と写像のなす圏とする(本書『1-2 前層の圏の極限と関手で与える構造』の反例「反例:前層のファイバー積は表現可能とは限らない」の圏)。一点集合 $\{*\}$ は終対象で、空でない二つの集合の直積は空でないので、任意の二つの対象の積がある。
$X=\{0\}$、$Y=\{0,1\}$、$f\colon X\to Y$、$f(0)=0$ とし、$F=h_X$、$G=h_Y$、$u=h_f$、$H=c$(一点集合への定数前層)、$v\colon G\to H$ をただ一つの射とする。
(a) $v\circ u$ と $v$ は表現可能である。$X$ と $Y$ はどの対象とも積をもつので底変換可能な対象で、本書『2-3 表現可能な関手の間の射』の主結果「終対象への射の表現可能性」により、$h_X\to c$ と $h_Y\to c$ は表現可能である。
(b) $u$ は表現可能でない。$g\colon\{1\}\to Y$ を包含とすると、本書『1-2 前層の圏の極限と関手で与える構造』の反例「反例:前層のファイバー積は表現可能とは限らない」のとおり、前層のファイバー積 $h_X\times_{h_Y}h_{\{1\}}$ はすべての値が空で表現可能でなく、$f$ と $g$ のファイバー積は $\mathbf C$ に無い。したがって $f$ は底変換可能でなく、本書『2-2 ファイバーと表現可能な射』の主結果「表現可能な射と底変換可能な射」により $u$ は表現可能でない。
ゆえに原論文の命題 3.10 (iii) の形「$vu$ と $v$ が表現可能なら $u$ も」は、この圏で破れる。原論文の証明に当てはめると、$S=\{*\}$ のとき $\mathbf C/S$ は $\mathbf C$ と同じで、ファイバー $F^{vu}_\zeta$、$G^v_\zeta$ を表す対象は $X$、$Y$、構造射 $X\to\{*\}$、$Y\to\{*\}$ は底変換可能だが、その間の $S$ 射 $f$ は底変換可能でない。破れるのは、主結果 3 の仮定 (β) が要求する段である。
この圏では、集合の圏のファイバー積 $\emptyset$ が取り除かれているだけで、終対象と積はそろっている。訂正形の仮定がファイバー積の存在(あるいはその弱い形)でなければならない理由は、ちょうどこの欠け方にある。
底変換で安定の定義から「どの選び方についても」の一句を外し、「ある選び方について射影が $\mathcal S$ に属する」とする。$\mathbf C=(\mathrm{Ens})$ とし、$\mathcal S$ を恒等写像の全体とする。$\mathrm{id}_Y$ と任意の $g\colon Y'\to Y$ について、$(Y';g,\mathrm{id}_{Y'})$ はファイバー積の一つの選び方で、射影は $\mathrm{id}_{Y'}\in\mathcal S$ なので、$\mathcal S$ は一句を外した意味では底変換で安定である。しかし本来の意味では安定でない。$Y'=\{0,1\}$ と入れ替え $\sigma$ をとると、$(Y';g\circ\sigma,\sigma)$ もファイバー積の選び方で、射影 $\sigma$ は恒等写像でない。
この $\mathcal S$ で上の定理(底変換で安定な射のクラスの判定)の (c) の左辺を見る。$Y=\{0,1\}$、$F=G=h_Y$、$u=\mathrm{id}$ とする。$F$、$G$ をともに $(Y,\mathrm{id}_Y)$ で表せば、$u$ に対応する射は $\mathrm{id}_Y\in\mathcal S$ である。$F$ を $(Y,\sigma)$ で表す($a\mapsto\sigma\circ a$ は全単射なので、これも $F=h_Y$ を表す組である)と、$u(\sigma)=\sigma=G(f)(\mathrm{id}_Y)$ となる $f$ は $\sigma$ で、$\mathcal S$ に属さない。すなわち「$u$ に対応する射が $\mathcal S$ に属する」は表す組の選び方で真にも偽にもなる。右辺でも同じで、$\eta=p\in G(S)$ のファイバーは一点の前層で、$\mathbf C/S$ の終対象 $(S,\mathrm{id}_S)$ で表せば構造射は $\mathcal S$ に属する。$S$ が恒等でない自己同型 $\alpha$ をもてば(たとえば $S=\{0,1\}$)、$(S,\alpha)$ も $(S,\mathrm{id}_S)$ に $S$ 同型 $\alpha$ で同型な終対象でこのファイバーを表し、その構造射 $\alpha$ は $\mathcal S$ に属さない。壊れているのは上の定理の (b) で、一句が無いと $\mathcal S$ が同型の合成で閉じない。
最後に、集合の圏で本来の意味で底変換で安定なクラスを一つ見る。
$\mathbf C=(\mathrm{Ens})$ とし、$\mathcal S$ を単射の全体とする。単射 $f\colon X\to Y$ と写像 $g\colon Y'\to Y$ について、ファイバー積 $P=\{(x,y'):f(x)=g(y')\}$ の第 2 射影は単射である($(x_1,y')$、$(x_2,y')$ が $P$ に入れば $f(x_1)=f(x_2)$ で $x_1=x_2$)。別の選び方の射影はこれに全単射を合成したものなので、やはり単射である。ゆえに $\mathcal S$ は底変換で安定である。
上の定理の (c) をこのクラスで読む。$A\subset Y$ を部分集合とし、$F\subset h_Y$ を $F(T)=\{a\colon T\to Y:a(T)\subset A\}$、$u$ を包含とする。$F$ は $(A,\text{包含})$ で表され、$u$ に対応する射は包含 $A\to Y$ で単射である。一方、$\eta\in G(S)$ に対応する $p\colon S\to Y$ のファイバーは、$S$ 上の対象 $(T,p_T)$ に、$p\circ p_T$ の像が $A$ に入るなら一点、入らないなら空集合を対応させる前層で、包含 $p^{-1}(A)\to S$ で表される。これも単射で、(c) の二つの条件がどちらも成り立つことが直接確かめられる。
以下は後代の用法の紹介である(2026 年時点の一般的な記述。本書は各文献の該当箇所を確かめていない)。
本頁が対応する原論文は Techniques de construction en géométrie analytique IV Gro61iv の第 3 節の後半である。
| 本頁 | 原論文 | 印字頁 |
|---|---|---|
| 補題(表現可能な射のスライス圏への制限) | 命題 3.10 (ii) の証明が断らずに使う一歩 | 11-09 |
| 定義(底変換で安定な射のクラス) | 注意 3.13 の安定性の定義 | 11-10 |
| 定理(表現可能な射の底変換) | 命題 3.10 (i) とその証明 | 11-08〜11-09 |
| 定理(表現可能な射の合成) | 命題 3.10 (ii) とその証明 | 11-09 |
| 注意(原論文の命題 3.10 (iii) の形)、定理(合成から因子の表現可能性を戻す(訂正形)) | 命題 3.10 (iii) とその証明 | 11-09〜11-10 |
| 定理(ファイバー積への射の表現可能性) | 系 3.11 とその直接の確かめ | 11-10 |
| 定理(表現可能な関手とのファイバー積) | 系 3.12 とその証明 | 11-10 |
| 定理(底変換で安定な射のクラスの判定)、注意(任意の選び方の一句) | 注意 3.13 | 11-10〜11-11 |
| 定理(解析空間のはめ込みのクラスの底変換) | 注意 3.13 の後の用例 | 11-11 |
| 注意(印字の読み(命題 3.10 から注意 3.13)) | 命題 3.10 の証明、系 3.12、注意 3.13 | 11-09〜11-10 |
| 反例(反例:ファイバー積の無い圏では合成から因子へ戻れない) | 命題 3.10 (iii) を破る例(原論文に無い) | — |
| 反例(反例:任意の選び方の一句を外すとクラスの判定が表現の選び方に依る)、例(集合の圏の単射のクラス) | 原論文に無い(本書が補った) | — |
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