余等化子として振る舞う射(有効エピ)と、どの底変換も有効エピである射(普遍有効エピ)を定め、普遍有効エピに沿ってカルテシアン正方形が降りることと、商対象への射が源の上の降下の組で記述できることを示す。原論文が確かめを省いた、その記述の関手性と集合の大きさも補う。
前提知識: 圏, ファイバー積, 余等化子, エピ射, 同値関係, 降下
宇宙 $\mathcal U$ を一つ固定し、$\mathbf C$ は Hom がすべて $\mathcal U$ 小な圏とする(本書『0-2 圏と前層』の定義「宇宙と集合の圏」「圏と関手と前層」)。対象 $Z$、$X$ について $X(Z)=\mathrm{Hom}(Z,X)$ と書き、$X$ の $Z$ 点の集合と呼ぶ。「ファイバー積 $X\times_YY'$ が存在する」は本書『1-2 前層の圏の極限と関手で与える構造』の定義「積とファイバー積が存在するという約束」の意味で使う。射のクラス $\mathcal S$ が底変換で安定であるとは、$f\colon X\to Y$ が $\mathcal S$ に属し $Y'\to Y$ が任意のとき、$X\times_YY'$ が存在し、その任意の選び方について射影 $X\times_YY'\to Y'$ が $\mathcal S$ に属することである(本書『2-4 安定性と射のクラス』の定義「底変換で安定な射のクラス」、本書『0-5 記号と約束』の「射のクラス」)。
本頁の主結果は次の五つである。
第 2 章では、目標の前層 $G$ が表現可能なとき、源の前層 $F$ が表現可能になる条件を調べた。原論文 §4 は問題を逆向きにする。$F$ が表現可能だとして、$G$ の表現可能性をどう導くか、である。§4 の冒頭で本人は、そのための判定(原論文の定理 4.7、本書『3-2 商と表現可能性の主定理』の主結果「商による表現可能性の判定」)を本講演では §5 の貼り合わせの判定を得るためだけに使い、口頭の講演もそこまでで止めたと断る(印字 11-11)。それでもこの判定は代数幾何の表現可能性の問題で常に使われ、後に Teichmüller 空間を構成するときに一般の形で要る、と続ける(連作第 I 回 Gro61i・第 X 回 Gro61x の予告。本書はその二回を開いていない)。
$G$ を $X$ で表したいとき、手元にあるのは表現可能な $F=h_X$ から $G$ への射である。集合の世界なら、全射 $X\to Y$ があれば $Y$ は $X$ を同値関係で割った商集合で、$Y$ への写像は $X$ の上の写像で同値な点に同じ値をとるものと同じである。一般の圏でこの二つを保証する射が有効エピで、底変換してもそうであり続ける射が普遍有効エピである。この頁は、商対象 $Y$ の性質を $X$ と同値の対だけで読み取る道具を整える。$Y$ から出る射は有効エピの定義そのものが記述するが、$Y$ へ入る射($Y$ の点の前層)は一般には $X$ と同値の対から読み取れない。それを読み取れるようにするのが主結果 2 と 3 で、これが次の頁の主定理の骨組みになる。
原論文 §4 の定義 4.1 を置く。本書『0-2 圏と前層』の定義「エピと余等化子」で同じ形のものを先に定めたが、ここで原論文の定義として述べ直す。
圏 $\mathbf C$ の射 $f\colon X\to Y$ は、ファイバー積 $X\times_YX$ が存在し、$f$ がその二つの射影 $\mathrm{pr}_1,\mathrm{pr}_2\colon X\times_YX\rightrightarrows X$ の余等化子であるとき、有効エピという。すなわち、どの対象 $Q$ についても、$k\mapsto k\circ f$ が $\mathrm{Hom}(Y,Q)$ から $\{h\colon X\to Q : h\,\mathrm{pr}_1=h\,\mathrm{pr}_2\}$ への全単射であることをいう。どの射 $Y'\to Y$ についてもファイバー積 $X\times_YY'$ が存在し、射影 $X\times_YY'\to Y'$ が有効エピであるとき、$f$ を普遍有効エピという。
有効エピはエピであり、ファイバー積の選び方をどうとっても余等化子であり、源と目標に同型を合成しても有効エピのままである。普遍有効エピについても、同型を合成したものは普遍有効エピである。どれも本書『0-2 圏と前層』の補題「エピと余等化子」の (4) で示した。普遍有効エピは有効エピである。$\mathrm{id}_Y$ に沿うファイバー積として $(X;\mathrm{id}_X,f)$ がとれ(本書『0-2 圏と前層』の補題「極限の普遍性と一意性」の (4))、その射影は $f$ 自身だからである。
原論文は同値の対を、原論文の文献 [1] III(Gro61quot の n° 1)の定義の想起として導入する。本書は次の形で読む。
射の組 $p_1,p_2\colon R\rightrightarrows X$ は、どの対象 $T$ についても写像 $R(T)\to X(T)\times X(T)$、$c\mapsto(p_1c,p_2c)$ が単射で、その像が集合 $X(T)$ の同値関係のグラフであるとき、同値の対という。同値の対は、次の三つが成り立つとき有効という。(1) $p_1,p_2$ の余等化子 $q\colon X\to X/R$ が存在する。(2) ファイバー積 $X\times_{X/R}X$ が存在する。(3) 射 $(p_1,p_2)\colon R\to X\times_{X/R}X$ が同型である。$q$ を商射という。$q$ が普遍有効エピであるとき、$R$ を普遍有効という。
原論文は、ここと §4・§5 の各所で「graphe d'équivalence」(同値関係のグラフ)という語を使う(印字 11-11、11-15〜11-16、11-18、11-21〜11-23)。グラフと言えば $X\times X$ の部分対象を思わせるが、原論文が想起として引く文献 [1] III の n° 1 は、同じものを「couple d'équivalence」として上の定義の形で定め、$X\times X$ が存在するときに限って、それが $X\times X$ の部分対象で各点が同値関係のグラフになるものと同じだと述べる(Gro61quot の印字 100〜101。本書は画像で確かめた)。本書は原論文の語をこの「couple d'équivalence」の意味で読み、「有効」も同じ所の意味で読む。これは本書が足した仮定である(本書『0-5 記号と約束』の「本書が足した仮定」)。
外しても何も壊れない。$X\times X$ が存在すれば、同値の対 $(p_1,p_2)$ の定める $R\to X\times X$ は、どの $T$ でも $T$ 点の写像が単射なので単射(モノ)で、逆に $X\times X$ の部分対象で各点の像が同値関係のグラフであるものは同値の対を定める。二つの読みは、射影と両立する同型を除いて一対一に対応する。$X\times X$ の無い圏でグラフを $X\times X$ の部分対象に限る読みを採ると、次の頁の主定理の条件 (c) の対象 $R$(表現可能な前層のファイバー積を表す対象)がグラフとして定まらず、条件が意味を失う。本書の読みはどの圏でも意味が通る。第 4 章の解析空間の圏では $X\times X$ が存在する(本書『0-4 解析空間』の「解析空間のファイバー積の存在」。判定には使わない)ので、二つの読みは同じである。
同値の対の典型は、射の定める核の対である。次の補題は主結果 1 の逆向きに当たり、次の頁の主定理の (i)⇒(ii) で使う。
射 $f\colon X\to Y$ についてファイバー積 $X\times_YX$ が存在すれば、その二つの射影 $\mathrm{pr}_1,\mathrm{pr}_2$ は同値の対である。$f$ が有効エピなら、この同値の対は有効で、$f$ はその商射である。
段 1(同値の対).本書『0-2 圏と前層』の補題「Hom は極限を保つ」により、対象 $T$ について $c\mapsto(\mathrm{pr}_1c,\mathrm{pr}_2c)$ は $(X\times_YX)(T)$ から集合のファイバー積 $\{(a,b)\in X(T)\times X(T): fa=fb\}$ への全単射である。したがって $(X\times_YX)(T)\to X(T)\times X(T)$ は単射で、像は写像 $a\mapsto fa$ の定める同値関係「$fa=fb$」のグラフである。
段 2(有効).$f$ が有効エピなら、定義により $f$ は $\mathrm{pr}_1,\mathrm{pr}_2$ の余等化子で、$X/R=Y$、$q=f$ ととれる。ファイバー積 $X\times_YX$ は存在し、(3) の射は恒等射である。
射のクラスの底変換での安定性は、同型との合成についての閉性を含む(本書『2-4 安定性と射のクラス』の主結果「底変換で安定な射のクラスの判定」の (b))。主結果 3 と次の頁で何度も使う。
次の補題は、正方形のカルテシアン性を集合の問題に移すためのもので、主結果 2 の証明の全体で使う。
可換な正方形
$$\begin{array}{ccc}P&\xrightarrow{\ a\ }&X\\ {\scriptstyle b}\downarrow&&\downarrow{\scriptstyle f}\\ Y'&\xrightarrow{\ g\ }&Y\end{array}$$
がカルテシアンであることは、どの対象 $Z$ についても、写像 $P(Z)\to X(Z)\times_{Y(Z)}Y'(Z)$、$c\mapsto(ac,bc)$ が全単射であることと同値である。ここで右辺は集合のファイバー積 $\{(x,y')\in X(Z)\times Y'(Z): fx=gy'\}$ である。
本書『0-2 圏と前層』の補題「Hom は極限を保つ」を、$f$ と $g$ の図式とその上の錐 $(P;a,b)$ に当てる。右辺は集合の図式 $X(Z)\to Y(Z)\leftarrow Y'(Z)$ の極限の具体形(同じ頁の補題「集合の圏の極限と余極限」の (4))で、錐がファイバー積であることはすべての $Z$ でこの写像が全単射であることと同じである。
この補題の右辺の元 $(x,y')$ を、以下では「$Z$ 点の組」と呼ぶ。最後に、原論文の定義 4.6 を置く。これは前層 $G$ について、一本の射に沿った層の条件である。
$G$ を $\mathbf C$ 上の前層とする。射 $f\colon X\to Y$ は、ファイバー積 $X\times_YX$ が存在し、写像の図式
$$G(Y)\xrightarrow{\ G(f)\ }G(X)\ \overset{G(\mathrm{pr}_1)}{\underset{G(\mathrm{pr}_2)}{\rightrightarrows}}\ G(X\times_YX)$$
が等化子の図式であるとき、すなわち $G(f)$ が $G(Y)$ から $\{x\in G(X): G(\mathrm{pr}_1)(x)=G(\mathrm{pr}_2)(x)\}$ への全単射であるとき、$G$ 有効降下の射という(原論文の morphisme de $G$-descente effective)。
この条件もファイバー積の選び方によらない。別の選び方 $P'$ は射影を保つ同型 $\varphi\colon P'\to X\times_YX$ で結ばれ(本書『0-2 圏と前層』の補題「極限の普遍性と一意性」の (1))、$G(\varphi)$ は全単射で $G(\mathrm{pr}_i\varphi)=G(\varphi)G(\mathrm{pr}_i)$ だからである。
本頁は事実を引用しない。使うのは、本書『0-2 圏と前層』の補題「集合の圏の極限と余極限」「極限の普遍性と一意性」「Hom は極限を保つ」「カルテシアン正方形の貼り合わせ」「エピと余等化子」「集合の同値関係と商集合」、本書『1-1 米田の対応と表現可能関手』の補題「表現の二つの言い方」、本書『2-4 安定性と射のクラス』の主結果「底変換で安定な射のクラスの判定」、上で頁内に示した補題だけである。主結果 3 の同型類の全体が集合であることには、本書『1-1 米田の対応と表現可能関手』の「引用する事実」の節で述べた、宇宙の約束の下で圏の対象の全体が一つの集合であることを使う。
まず有効な同値の対と有効エピの関係を確かめ、次にカルテシアン正方形が普遍有効エピに沿って降りることを示す。商対象への射の記述は、その二つを組み合わせたものである。
同値の対 $p_1,p_2\colon R\rightrightarrows X$ が有効で、$q\colon X\to X/R$ をその商射とすると、$q$ は有効エピである。上の補題(有効エピの定める同値の対)と合わせると、有効エピ $f\colon X\to Y$ と、有効な同値の対とその商射の組は、同じものの二つの見方である。
有効性の (2) により $X\times_{X/R}X$ が存在し、(3) により $\varphi=(p_1,p_2)\colon R\to X\times_{X/R}X$ は同型で、$\mathrm{pr}_i\varphi=p_i$ である。$q$ は $p_1,p_2$ の余等化子なので、本書『0-2 圏と前層』の補題「エピと余等化子」の (3) の後半($p_i\varphi^{-1}=\mathrm{pr}_i$ なので $\alpha=\varphi^{-1}$、$\beta=\mathrm{id}_X$ として当てる)により、$q$ は $\mathrm{pr}_1,\mathrm{pr}_2$ の余等化子である。これは $q$ が有効エピであることの定義である。後半は、有効エピ $f$ からは補題(有効エピの定める同値の対)で有効な同値の対 $X\times_YX$ と商射 $f$ が得られ、逆に有効な同値の対の商射は前半により有効エピで、その核の対 $X\times_{X/R}X$ は $\varphi$ で $R$ と同型だからである。
原論文は、この主張を想起の直後に「Cela implique」の一句で述べる(印字 11-11)。証明に使ったのは有効性の (3) の同型だけで、同値の対の単射性は使っていない。足した仮定(同値の対の読み)は、ここでは「有効」の意味を決めるためだけに効く。
原論文の命題 4.2 の設定を置く。$f\colon X\to Y$、$f'\colon X'\to Y'$ を射とし、ファイバー積 $R=X\times_YX$、$R'=X'\times_{Y'}X'$ が存在するとして、その射影を $p_1,p_2$、$p'_1,p'_2$ と書く。射 $g\colon Y'\to Y$、$v\colon X'\to X$ が $fv=gf'$ を満たすとき、$fvp'_1=gf'p'_1=gf'p'_2=fvp'_2$ なので、$p_iw=vp'_i$($i=1,2$)を満たす射 $w\colon R'\to R$ がただ一つある。次の二つの正方形を考える。
$$(\mathrm D)\quad\begin{array}{ccc}X'&\xrightarrow{\ v\ }&X\\ {\scriptstyle f'}\downarrow&&\downarrow{\scriptstyle f}\\ Y'&\xrightarrow{\ g\ }&Y\end{array}\qquad\qquad(\mathrm D_1)\quad\begin{array}{ccc}R'&\xrightarrow{\ w\ }&R\\ {\scriptstyle p'_1}\downarrow&&\downarrow{\scriptstyle p_1}\\ X'&\xrightarrow{\ v\ }&X\end{array}$$
どちらがカルテシアンであるかは、ファイバー積 $R$、$R'$ の選び方によらない(本書『0-2 圏と前層』の補題「極限の普遍性と一意性」の (3))。
上の設定で、(D) がカルテシアンなら (D$_1$) もカルテシアンである。逆に、(D$_1$) がカルテシアンで $f'$ が普遍有効エピなら、(D) はカルテシアンである。
以下、補題(カルテシアン性は点ごとに確かめられる)により、対象 $Z$ ごとの集合の写像で考える。本書『0-2 圏と前層』の補題「Hom は極限を保つ」により、$R(Z)$ は組 $(a,b)\in X(Z)^2$ で $fa=fb$ を満たすものの集合、$R'(Z)$ は組 $(a',b')\in X'(Z)^2$ で $f'a'=f'b'$ を満たすものの集合と同一視でき、$w$ は $(a',b')\mapsto(va',vb')$、$p_1$ は第 1 成分への射影になる。(D) についての写像を
$$(*)\qquad X'(Z)\to X(Z)\times_{Y(Z)}Y'(Z),\qquad x'\mapsto(vx',f'x')$$
と書き、(D$_1$) についての写像は $(a',b')\mapsto((va',vb'),a')$ である。
段 1((D) から (D$_1$)).(D) がカルテシアンなら、どの $Z$ でも $(*)$ は全単射である。(D$_1$) の写像の行き先の元 $((a,b),a')$、すなわち $fa=fb$、$a=va'$ を満たすものをとる。$fb=fa=fva'=gf'a'$ なので、$(*)$ の全単射性により $vb'=b$、$f'b'=f'a'$ を満たす $b'\in X'(Z)$ がただ一つある。$(a',b')$ は $R'(Z)$ の元で $((a,b),a')$ に写り、そのような $b'$ はこれに限る。したがって (D$_1$) の写像は全単射で、(D$_1$) はカルテシアンである。
段 2((D$_1$) から $(*)$ の単射性).この段と次の段では (D$_1$) がカルテシアンだと仮定し、$f'$ にはまだ仮定を置かない。$a',b'\in X'(Z)$ が $va'=vb'$、$f'a'=f'b'$ を満たすとする。$(a',b')$ と $(a',a')$ はどちらも $R'(Z)$ の元で、(D$_1$) の写像でともに $((va',va'),a')$ に写る。(D$_1$) の写像は単射なので $(a',b')=(a',a')$、すなわち $a'=b'$ である。ゆえに $(*)$ はどの $Z$ でも単射である。
段 3($f'$ が有効エピなら切断が対応する).$f'$ の切断の集合 $\Gamma(X'/Y')=\{\rho\colon Y'\to X': f'\rho=\mathrm{id}_{Y'}\}$ と、$\mathrm{Hom}_Y(Y',X)=\{r\colon Y'\to X: fr=g\}$ を考える。$f'$ が有効エピなら、$\rho\mapsto v\rho$ は $\Gamma(X'/Y')$ から $\mathrm{Hom}_Y(Y',X)$ への全単射である。$fv\rho=gf'\rho=g$ なので写像は定まり、単射性は段 2 を $Z=Y'$ に当てたものである。全射性を示す。$r\in\mathrm{Hom}_Y(Y',X)$ をとり、$\tilde r=rf'\colon X'\to X$ とおく。$fv=gf'=fr f'=f\tilde r$ なので、$p_1s=v$、$p_2s=\tilde r$ を満たす $s\colon X'\to R$ がある。(D$_1$) がカルテシアンで $p_1s=v\circ\mathrm{id}_{X'}$ なので、$wt=s$、$p'_1t=\mathrm{id}_{X'}$ を満たす $t\colon X'\to R'$ がただ一つある。$\tilde\rho=p'_2t\colon X'\to X'$ とおくと
$$f'\tilde\rho=f'p'_2t=f'p'_1t=f',\qquad v\tilde\rho=vp'_2t=p_2wt=p_2s=\tilde r$$
である。次に $\tilde\rho p'_1=\tilde\rho p'_2$ を示す。段 2 を $Z=R'$ に当てると、$v\tilde\rho p'_1=v\tilde\rho p'_2$ と $f'\tilde\rho p'_1=f'\tilde\rho p'_2$ を示せばよい。前者は $v\tilde\rho p'_i=rf'p'_i$ と $f'p'_1=f'p'_2$ から、後者は $f'\tilde\rho p'_i=f'p'_i$ から従う。$f'$ は $p'_1,p'_2$ の余等化子なので、$\tilde\rho=\rho f'$ となる $\rho\colon Y'\to X'$ がただ一つある。$f'\rho f'=f'\tilde\rho=f'$ と $v\rho f'=v\tilde\rho=rf'$ から、$f'$ がエピであること(本書『0-2 圏と前層』の補題「エピと余等化子」の (4))により $f'\rho=\mathrm{id}_{Y'}$、$v\rho=r$ を得る。
段 4($f'$ が普遍有効エピなら (D)).段 2 により、どの $Z$ でも $(*)$ が全射であることを示せばよい。$fa=gy'$ を満たす $a\in X(Z)$、$y'\in Y'(Z)$ をとる。$f'$ は普遍有効エピなので、$y'$ に沿うファイバー積 $X''=X'\times_{Y'}Z$(射影 $q\colon X''\to X'$、$f''\colon X''\to Z$)が存在し、$f''$ は有効エピで、$R''=X''\times_ZX''$ も存在する(射影 $p''_1,p''_2$)。$p'_iq_R=qp''_i$ を満たす $q_R\colon R''\to R'$ をとる。正方形 $(q,f'',f',y')$ はカルテシアンなので、段 1 をこれに当てると、正方形 $(q_R,p''_1,p'_1,q)$ はカルテシアンである。本書『0-2 圏と前層』の補題「カルテシアン正方形の貼り合わせ」を、右の正方形 (D$_1$) と左の正方形 $(q_R,p''_1,p'_1,q)$ に当てると、外側の正方形 $(wq_R,p''_1,p_1,vq)$ もカルテシアンである。ここで $f(vq)=gf'q=(gy')f''$ で、$p_i(wq_R)=vp'_iq_R=(vq)p''_i$ である。したがって $f$、$f''$、$gy'$、$vq$ は上の設定を満たし、その (D$_1$) はこの外側の正方形である。段 3 を $f''$ に当てると、$fa=gy'$ なので $a\in\mathrm{Hom}_Y(Z,X)$ で($gy'$ について)、$f''\sigma=\mathrm{id}_Z$、$vq\sigma=a$ を満たす切断 $\sigma\colon Z\to X''$ がある。$a'=q\sigma$ とおくと $va'=a$、$f'a'=f'q\sigma=y'f''\sigma=y'$ なので、$(*)$ は $a'$ を $(a,y')$ に写す。
必要の向きは集合の正方形の計算にすぎないが、逆向きは $f'$ の性質を二度使う。段 3 で $f'$ が有効エピであることを使って切断を作り、段 4 でどの底変換も有効エピであることを使って、一般の $Z$ 点を切断の問題に置き換える。$f'$ が普遍有効エピでないと逆が壊れることは、下の反例「反例:普遍有効エピでない射ではカルテシアン性は降りない」で見る。
原論文の証明は、必要の向きを「集合の場合に帰着して自明」の一句で済ませ、逆向きの第 1 段を $Y$ と $Y'$ の一点の上のファイバーに制限して示す(印字 11-12〜11-13)。本書の段 2 はファイバーに制限せず、(D$_1$) の単射性を二つの組に当てて直接示した。第 2 段・第 3 段は原論文の筋のとおりである。
上の定理の逆向きを使うと、$Y$ への射を $X$ の側のデータで書ける。そのデータを定義し、底変換で引き戻せることを確かめてから、原論文の系 4.3 を述べる。以下、$\mathcal S$ は底変換で安定な射のクラスで、その元はすべて有効エピであるとする。$\mathcal S$ の元 $f'$ は、どの底変換も $\mathcal S$ の元なので有効エピで、したがって普遍有効エピである。
$p_1,p_2\colon R\rightrightarrows X$ を同値の対とし、$Y'$ を対象とする。組 $(X',f',v)$ で、$f'\colon X'\to Y'$ が $\mathcal S$ の元、$v\colon X'\to X$ が射であり、$R'=X'\times_{Y'}X'$(射影 $p'_1,p'_2$。$f'$ は有効エピなので存在する)について次の二つを満たすものを、$R$ についての $Y'$ の上の降下の組という。
(b) $p_iw=vp'_i$($i=1,2$)を満たす射 $w\colon R'\to R$ がある。
(c) 正方形 (D$_1$) $=(w,p'_1,p_1,v)$ はカルテシアンである。
二つの降下の組 $(X'_1,f'_1,v_1)$、$(X'_2,f'_2,v_2)$ は、同型 $\varphi\colon X'_1\to X'_2$ で $f'_2\varphi=f'_1$、$v_2\varphi=v_1$ となるものがあるとき同型という。$Y'$ の上の降下の組の同型類の全体を $B_R(Y')$ と書く。
(b) の $w$ はあればただ一つである。同値の対の単射性により、$R$ への射は $p_1$、$p_2$ との合成で決まるからである。(b)(c) は $R'$ の選び方によらない(別の選び方は射影を保つ同型 $\psi$ で $R'$ と結ばれ、$w$ は $w\psi$ に変わる)。同型な組の一方が降下の組なら他方もそうである。$f'_1=f'_2\varphi$ が $\mathcal S$ に属することは本書『2-4 安定性と射のクラス』の主結果「底変換で安定な射のクラスの判定」の (b) により、(b)(c) は $\varphi$ から誘導される同型 $R'_1\to R'_2$ で移る。
$R$ を $X$ の同値の対とする。射 $h\colon Y''\to Y'$ と $Y'$ の上の降下の組 $(X',f',v)$ について、$X''=X'\times_{Y'}Y''$(射影 $q\colon X''\to X'$、$f''\colon X''\to Y''$)をとると、$(X'',f'',vq)$ は $Y''$ の上の降下の組で、その同型類は $(X',f',v)$ の同型類だけで決まる。これを $B_R(h)$ と書くと、$Y'\mapsto B_R(Y')$ は $\mathbf C$ 上の、集合に値をとる反変関手である。
段 1(降下の組であること).$f''$ は安定性により $\mathcal S$ の元で、$R''=X''\times_{Y''}X''$ が存在する。$p'_iq_R=qp''_i$ を満たす $q_R\colon R''\to R'$ をとる。正方形 $(q,f'',f',h)$ はカルテシアンなので、上の定理(カルテシアン正方形の降下)の必要の向きにより、正方形 $(q_R,p''_1,p'_1,q)$ はカルテシアンである。$w''=wq_R$ は $p_iw''=vp'_iq_R=(vq)p''_i$ を満たすので (b) が成り立ち、本書『0-2 圏と前層』の補題「カルテシアン正方形の貼り合わせ」を右の (D$_1$) と左の正方形に当てて、外側の正方形 $(w'',p''_1,p_1,vq)$ がカルテシアン、すなわち (c) が成り立つ。
段 2(選び方と同型類).$X''$ の別の選び方は、$q$ と $f''$ を保つ同型で $X''$ と結ばれ、これは降下の組の同型である。同型 $\varphi\colon X'_1\to X'_2$ で結ばれた組からは、$\varphi$ と $\mathrm{id}_{Y''}$ の誘導する同型 $X'_1\times_{Y'}Y''\to X'_2\times_{Y'}Y''$ が $f''$ と $vq$ を保つ。
段 3(関手であること).$h=\mathrm{id}_{Y'}$ のとき、$(X';\mathrm{id}_{X'},f')$ が $X'\times_{Y'}Y'$ の一つの選び方なので(本書『0-2 圏と前層』の補題「極限の普遍性と一意性」の (4))、$B_R(\mathrm{id}_{Y'})$ は恒等写像である。$k\colon Y'''\to Y''$ について、同じ頁の補題「カルテシアン正方形の貼り合わせ」により $(X'\times_{Y'}Y'')\times_{Y''}Y'''$ は、二つの射影の合成とともに $X'\times_{Y'}Y'''$($hk$ に沿う)の一つの選び方である。$X$ への射も $v$ と射影の合成で一致するので、$B_R(hk)=B_R(k)\circ B_R(h)$ である。
段 4(集合であること).宇宙の約束の下で $\mathbf C$ の対象の全体は一つの集合なので、組の全体は集合で、同型類はその部分集合、$B_R(Y')$ はその部分集合の集合である。$B_R(Y')$ が $\mathcal U$ 小であるとは限らない。
原論文の系 4.3 は、$R$ が $\mathcal S$ の元 $f$ の核の対であるとき、この関手が $Y$ の点の前層に同型であると述べる。$R=X\times_YX$ は上の補題(有効エピの定める同値の対)により同値の対である。
$f\colon X\to Y$ を $\mathcal S$ の元とし、$R=X\times_YX$(射影 $p_1,p_2$)とする。対象 $Y'$ について
$$\alpha(Y')\colon\mathrm{Hom}(Y',Y)\to B_R(Y'),\qquad g\mapsto[X\times_YY',\ \mathrm{pr}_2,\ \mathrm{pr}_1]$$
は全単射で、その逆は、降下の組 $(X',f',v)$ の類に $gf'=fv$ を満たすただ一つの $g\colon Y'\to Y$ を対応させる写像 $\beta(Y')$ である。$\alpha$ は $Y'$ について自然で、関手の同型 $h_Y\cong B_R$ を与える。とくに $B_R(Y')$ は $\mathcal U$ 小な集合と一対一で、$B_R$ は(値を代表の集合に取り替えれば)$h_Y$ に同型な前層である。
段 1($\alpha$ が定まる).$g\colon Y'\to Y$ について $X\times_YY'$ は存在し、射影 $\mathrm{pr}_2$ は安定性により $\mathcal S$ の元である。$v=\mathrm{pr}_1$、$f'=\mathrm{pr}_2$ とおくと $fv=gf'$ で、正方形 (D) はカルテシアンである。(b) の $w$ は上の設定の段落で作った射で、(c) は上の定理(カルテシアン正方形の降下)の必要の向きである。ファイバー積の別の選び方は $\mathrm{pr}_1$、$\mathrm{pr}_2$ を保つ同型で結ばれるので、類はそれによらない。
段 2($\beta$ が定まる).降下の組 $(X',f',v)$ について、$fvp'_1=fp_1w=fp_2w=fvp'_2$ で、$f'$ は $p'_1,p'_2$ の余等化子なので、$gf'=fv$ を満たす $g$ がただ一つある。同型 $\varphi$ で結ばれた組 $(X'_1,f'_1,v_1)$、$(X'_2,f'_2,v_2)$ の $g_1$、$g_2$ については、$g_2f'_1=g_2f'_2\varphi=fv_2\varphi=fv_1=g_1f'_1$ で $f'_1$ はエピなので $g_1=g_2$ である。
段 3($\beta\alpha=\mathrm{id}$).$\beta(\alpha(g))$ は $g'\mathrm{pr}_2=f\mathrm{pr}_1$ を満たす $g'$ で、$g$ もこれを満たし、$\mathrm{pr}_2$ はエピなので $g'=g$ である。
段 4($\alpha\beta=\mathrm{id}$).降下の組 $(X',f',v)$ と $g=\beta[X',f',v]$ をとる。正方形 (D) $=(v,f',f,g)$ は可換で、(b) の $w$ は設定の段落の $w$ と同じもので、(c) により (D$_1$) はカルテシアンである。$f'$ は $\mathcal S$ の元なので普遍有効エピである。上の定理(カルテシアン正方形の降下)の逆向きにより (D) はカルテシアン、すなわち $(X';v,f')$ は $X\times_YY'$ の一つの選び方で、$[X',f',v]=\alpha(g)$ である。
段 5(自然性).$h\colon Y''\to Y'$ について、$\alpha(gh)$ は $[X\times_YY'',\mathrm{pr}_2,\mathrm{pr}_1]$、$B_R(h)(\alpha(g))$ は $[(X\times_YY')\times_{Y'}Y'',\mathrm{pr}_2,\mathrm{pr}_1\mathrm{pr}_1]$ である。本書『0-2 圏と前層』の補題「カルテシアン正方形の貼り合わせ」により、後者の対象は二つの射とともに $X\times_YY''$ の一つの選び方なので、二つの類は等しい。
段 6(大きさ).段 3・4 により $B_R(Y')$ は $\mathrm{Hom}(Y',Y)\in\mathcal U$ と一対一である。各類に代表を一つ選べば、$\mathcal U$ 小な集合に値をとる前層が得られ、段 5 によりそれは $h_Y$ に同型である。
$Y$ への射は、$X$ の上の降下の組、すなわち「$X$ の $\mathcal S$ 局所的な写し」で完全に記述される。次の頁の主定理では、$Y$ がまだ無い状況でこの関手 $B_R$ を作り、それが目標の前層に一致することを示す。
原論文は系 4.3 で、全単射が $Y'$ について「fonctorielle」であると述べるが、$Y'$ の射に沿って降下の組の類を引き戻す写像を定めず、それが関手であることも、$\alpha$ がそれと両立することも確かめない。また、同型類の全体が集合であることにも触れない(印字 11-15〜11-16)。証明の本体は「$\beta\alpha=\mathrm{id}$ は自明、$\alpha\beta=\mathrm{id}$ も命題 4.2 により同様」の一文である。段が破れているのではなく、確かめを省いた段である。本書は上の補題(降下の組の前層)で引き戻しと関手性を、上の定理の段 5・6 で自然性と大きさを補った。関手性の確かめには命題 4.2 の必要の向きと、カルテシアン正方形の貼り合わせを使う。
主結果 3 を使うには、底変換で安定な有効エピのクラスが要る。いつでも使える最大のものが、普遍有効エピの全体である。
$\mathbf C$ の普遍有効エピの全体を $\mathcal S$ とすると、$\mathcal S$ は底変換で安定で、その元はすべて有効エピである。したがって $\mathcal S$ について上の定理(商対象への射の記述)が使える。
元が有効エピであることは、定義の後の段落で見た。$f\colon X\to Y$ を普遍有効エピ、$g\colon Y'\to Y$ を射とし、$X\times_YY'$ の任意の選び方 $(X';a,f')$ をとる。$h\colon Y''\to Y'$ について、$f$ は普遍有効エピなので $X\times_YY''$($gh$ に沿う)が存在し、その射影は有効エピである。本書『0-2 圏と前層』の補題「カルテシアン正方形の貼り合わせ」により、右の正方形 $(a,f',f,g)$ がカルテシアンなので、$X'\times_{Y'}Y''$ が存在し、その任意の選び方は($X$ への射と合わせて)$X\times_YY''$ の一つの選び方である。したがってその射影 $X'\times_{Y'}Y''\to Y''$ は有効エピである(ファイバー積の選び方によらないことは、同じ頁の補題「エピと余等化子」の (4))。ゆえに $f'$ は普遍有効エピである。
原論文の注意 4.4 の前半は、商対象 $Y=X/R$ は共変関手 $Z\mapsto\mathrm{Hom}(Y,Z)$ を表すものとして定まるので、反変関手 $Z\mapsto\mathrm{Hom}(Z,Y)$ は一般には $X$ と $R$ の言葉で捉えられない、と述べる(印字 11-16)。これは所見で、本書は判定しない。系 4.3 の意味は、$R$ が普遍有効な同値の対のとき、この反変関手を $(X,R)$ で決められることにある。上の定理(普遍有効エピのクラス)の $\mathcal S$ をとれば、商射 $X\to X/R$ が普遍有効エピである限り、上の定理(商対象への射の記述)がそのまま使える。
原論文は、定理 4.7 の条件を述べるために、一本の射に沿った層の条件(定義「有効降下の射」)を導入し、その例として次の主張を事実として述べる(印字 11-17)。証明は無い。
射 $f\colon X\to Y$ について、次の二つは同値である。(1) $f$ は有効エピである。(2) $\mathbf C$ 上のすべての表現可能な前層 $G$ について、$f$ は $G$ 有効降下の射である。
段 1(点の前層の場合).どちらの条件も $X\times_YX$ の存在を含む((2) は表現可能な前層 $h_X$ に当てればよい)。対象 $Q$ について、$G=h_Q$ の図式は $\mathrm{Hom}(Y,Q)\to\mathrm{Hom}(X,Q)\rightrightarrows\mathrm{Hom}(X\times_YX,Q)$、$k\mapsto kf$、$h\mapsto h\,\mathrm{pr}_i$ で、これが等化子の図式であることは、$k\mapsto kf$ が $\mathrm{Hom}(Y,Q)$ から $\{h: h\,\mathrm{pr}_1=h\,\mathrm{pr}_2\}$ への全単射であることにほかならない。すべての $Q$ でこれが成り立つことは、$f$ が $\mathrm{pr}_1,\mathrm{pr}_2$ の余等化子であること(本書『0-2 圏と前層』の補題「Hom は極限を保つ」の余等化子の形)、すなわち $f$ が有効エピであることである。
段 2(表現可能な前層への移行).$G$ が $(Q,\zeta)$ で表されるとき、本書『1-1 米田の対応と表現可能関手』の補題「表現の二つの言い方」により同型 $\theta\colon h_Q\to G$ がある。$\theta$ の成分は全単射で、自然性により $\theta(X)\circ h_Q(f)=G(f)\circ\theta(Y)$、$\theta(X\times_YX)\circ h_Q(\mathrm{pr}_i)=G(\mathrm{pr}_i)\circ\theta(X)$ なので、$h_Q$ の図式が等化子であることと $G$ の図式が等化子であることは同じである。段 1 と合わせて (1)⇒(2) が、$G=h_Q$ に当てて (2)⇒(1) が従う。
この定理により、定義「有効降下の射」は有効エピの概念を任意の前層へ広げたものと読める。次の頁の主定理の条件 (b) は、$\mathcal S$ の元がこの意味で目標の前層 $G$ に対して有効エピのように振る舞うことを求める。
集合の圏では、有効エピ・普遍有効エピ・同値の対の有効性がすべて具体的に読める。最初の二つの例でそれを見て、最後に、主結果 2 の逆向きの仮定を外すと結論が崩れることを確かめる。
$\mathbf C=(\mathrm{Ens})$ とする。本書『0-2 圏と前層』の補題「集合の同値関係と商集合」により、写像が全射であること、有効エピであること、普遍有効エピであることは同じで、全射の底変換は全射である。したがって全射の全体 $\mathcal S$ は底変換で安定な有効エピのクラスで、上の定理(普遍有効エピのクラス)の $\mathcal S$ と一致する。
上の定理(商対象への射の記述)をこの $\mathcal S$ と全射 $f\colon X\to Y$ に当てて読む。集合の正方形がカルテシアンであることは、一点集合 $Z$ の上で補題(カルテシアン性は点ごとに確かめられる)の写像が全単射であることと同じである($Z$ 点の集合は元の集合と同一視できる)。この読みでは、降下の組の条件 (b)(c) は次のことを言う:$(x'_1,x'_2)\mapsto((vx'_1,vx'_2),x'_1)$ が $\{f'x'_1=f'x'_2\}$ から $\{fx_1=fx_2,\ x_1=vx'_1\}$ への全単射であること、すなわち、$v$ が $f'$ の各ファイバーを $f$ の一つのファイバーの上へ全単射に写すこと。写像 $g\colon Y'\to Y$ はこの組から $g(f'(x'))=f(v(x'))$ で戻り、逆に $g$ からは $X'=\{(x,y'):fx=gy'\}$ が作られる。$Y$ への写像を、$X$ のファイバーを $Y'$ の上に並べ直したデータで書いたことになる。
有効な同値の対も集合の圏では特別なものではない。どの同値関係も有効である。
$\mathbf C=(\mathrm{Ens})$ で、写像の組 $p_1,p_2\colon R\rightrightarrows X$ が同値の対であることは、$(p_1,p_2)\colon R\to X\times X$ が単射で、像 $E$ が $X$ の同値関係のグラフであることと同じである。実際、$T$ を一点集合にとれば後者が出る。逆に後者が成り立てば、どの集合 $T$ についても $R(T)\to X(T)\times X(T)$ は単射で、像は「すべての $t\in T$ で $(a(t),b(t))\in E$」という $X(T)$ の同値関係のグラフである。
このとき $R$ はつねに有効で、普遍有効でもある。本書『0-2 圏と前層』の補題「集合の同値関係と商集合」の (1) により、商写像 $q\colon X\to X/E$ は $E$ の二つの射影の余等化子で、$X\times_{X/E}X=E$ である。$R\to E$ は射影と両立する全単射なので、同じ頁の補題「エピと余等化子」の (3) により $q$ は $p_1,p_2$ の余等化子で、$(p_1,p_2)\colon R\to X\times_{X/R}X$ は同型である。$q$ は全射なので普遍有効エピである。$X=\emptyset$ でも、$R=\emptyset$、$X/R=\emptyset$ として同じことが成り立つ。
最後の反例は、主結果 2 の逆向きで $f'$ が普遍有効エピであるという仮定が外せないことを示す。
上の定理(カルテシアン正方形の降下)の逆向きから、$f'$ が普遍有効エピであるという仮定を外す。$\mathbf C=(\mathrm{Ens})$ とし、$X=Y=Y'=\{0\}$、$f=g=\mathrm{id}$、$X'=\emptyset$、$f'\colon\emptyset\to\{0\}$、$v\colon\emptyset\to\{0\}$ を空写像とする。$fv=gf'$ は空写像どうしの等式である。
$R=X\times_YX$ は一点 $\{(0,0)\}$ で、$p_1$ は全単射である。$R'=X'\times_{Y'}X'=\emptyset$ で、$w$ は空写像である。$p_1$ と $v$ のファイバー積は $\{(r,x')\in R\times\emptyset: p_1r=vx'\}=\emptyset$ なので、(D$_1$) はカルテシアンである。しかし $X\times_YY'$ は一点 $\{(0,0)\}$ で $X'=\emptyset$ と一致しないので、(D) はカルテシアンでない。
破れたのは $f'$ の仮定である。$f'$ は全射でないので、本書『0-2 圏と前層』の補題「集合の同値関係と商集合」により有効エピでも普遍有効エピでもない(直接にも、$\emptyset\rightrightarrows\emptyset$ の余等化子は $\emptyset$ で $\{0\}$ ではない)。証明の段 3 もここで破れる。$\Gamma(X'/Y')=\emptyset$ だが、$\mathrm{Hom}_Y(Y',X)$ は一点である。空集合という境界の場合に、必要の向きは成り立ち、逆向きだけが崩れる。集合の圏では有効エピと普遍有効エピが一致するので、「有効だが普遍でない」射で逆向きが崩れる例はこの圏では作れない。本書はそのような例を立てていない。
以下は後代の展開の紹介である(2026 年時点の一般的な記述。本書は各文献の該当箇所を確かめていない)。
本頁が対応する原論文は Techniques de construction en géométrie analytique IV Gro61iv の第 4 節の前半である。
| 本頁 | 原論文 | 印字頁 |
|---|---|---|
| 背景と動機(定理 4.7 の用途、口頭の講演、Teichmüller 空間の予告) | §4 の冒頭 | 11-11 |
| 定義(有効エピと普遍有効エピ) | 定義 4.1 | 11-11 |
| 定義(同値の対と有効な同値の対)、注意(同値の対の読み) | 同値の対の想起(文献 [1] III、n° 1) | 11-11 |
| 定理(有効な同値の対の商射は有効エピ) | 同じ段の「Cela implique」 | 11-11 |
| 定理(カルテシアン正方形の降下)、注意(印字の読み(命題 4.2 とその証明)) | 命題 4.2 とその証明 | 11-12〜11-15 |
| 定義(降下の組)、補題(降下の組の前層)、定理(商対象への射の記述)、注意(原論文の段と関手性) | 系 4.3 とその証明 | 11-15〜11-16 |
| 定理(普遍有効エピのクラス)、注意(商対象の点の前層) | 注意 4.4 | 11-16 |
| 定義(有効降下の射)、定理(有効エピと表現可能な関手の降下) | 定義 4.6 とその例 | 11-17 |
| 補題(有効エピの定める同値の対)、補題(カルテシアン性は点ごとに確かめられる)、例(集合の圏の全射は普遍有効エピ)、例(同値関係の商集合と有効な同値の対)、反例(反例:普遍有効エピでない射ではカルテシアン性は降りない) | 原論文に無い(本書が補った) | — |
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