本書の全頁で共通に使う枠組みの規約と記号、本書が足した仮定とそれを外すと壊れる例、原論文の番号と印字頁の引き方と本書の頁との対応、状態札の意味、原論文の不備の分け方、原論文の誤植の読み方をまとめた頁である。各頁が「記号は記号と約束のとおり」と書くときはこの頁を指す。記号は各頁でも必要な箇所で短く繰り返し、頁の中で変えるときはその頁で断る。前提となる事実は本書『0-2 圏と前層』『0-3 層と環付き空間の貼り合わせ』『0-4 解析空間』に、読む順序と状態札の集計は本書『0-1 本書の読み方』にある。
本書全体で一つに決めた読み方である。どれも原論文が明示しないか、同じ語を二通りに読める所で、各頁はこの読みの下で判定する。
原論文の第 2〜4 節は、任意の圏 $\mathbf C$ についての定理で、解析空間を使わない。第 5 節だけが解析空間の圏 $(\mathrm{An})$ とその上の圏 $(\mathrm{An})_{/S}$ で述べられる。本書も第 1〜3 章を一般の圏の章、第 4 章を解析空間の章として書き分け、第 1〜3 章では解析空間を例・注意と「その後の発展」にだけ出す(例外は、原論文の注意 3.13 の用例を扱う『2-4』の主結果「解析空間のはめ込みのクラスの底変換」の一つ)。
宇宙 $\mathcal U$ を一つ固定し、$(\mathrm{Ens})$ は $\mathcal U$ の元である集合と写像の圏とする。圏 $\mathbf C$ は Hom がすべて $\mathcal U$ 小なものとする。これは原論文自身の約束(原論文は集合の圏が暗黙の宇宙で決まると一言書く。印字 11-03)で、本書の足した仮定には数えない。定義は本書『0-2 圏と前層』にある。$\widehat{\mathbf C}$ は $\mathbf C^\circ$ から $(\mathrm{Ens})$ への関手の圏で、その対象を前層と呼ぶ。原論文の「foncteur contravariant」は本書の前層(または反変関手)、「homomorphisme fonctoriel」は前層の射である。前層に層の条件は入らない。層の条件は第 4 章で「局所的な関手」として後から課す。
「$X\times_ZY$ が存在する」は、点の前層のファイバー積 $h_X\times_{h_Z}h_Y$ が表現可能であることの意味で使う(本書『1-2 前層の圏の極限と関手で与える構造』)。原論文の「表現可能な射」は射のファイバー $F_\eta$ の表現可能性で定義され、後代の「任意の $h_S\to G$ に沿うファイバー積が表現可能」という定義とは本書『2-2 ファイバーと表現可能な射』の主結果「表現可能な射の言い換え」で結ばれる。本書は原論文の定義で始め、言い換えを証明してから両方を使う。
原論文は解析空間を定義しない。本書は同じ連作の第 II 回 Gro61ii の定義を枠組みとして受け取り、この立場を「解析空間の定義」と呼ぶ。完備付値体 $k$ 上の解析空間は、$k$ 代数の環付き空間で、各点が $E^n$ の有限表示の部分環付き空間に同型な開近傍をもつものである。射は $k$ 代数の環付き空間の射である。非被約な構造を許す。詳しくは本書『0-4 解析空間』の定義(解析空間の定義)にある。原論文の「基礎体 $k$」(印字 11-24、11-27)はこの $k$ である。本書は $k$ の絶対値が自明でないものとする。第 II 回はこれを書かないが、本書でこの約束が効くのは非孤立点を要する例だけである(本書『0-4 解析空間』の注意(基礎体の約束))。
解析空間の底の位相空間に分離性(Hausdorff 性)を要求しない。第 II 回の定義 2.1 の直後の注意による。これは本書が足した仮定の一つとして明示する(下の「本書が足した仮定」)。後代の読者に最も誤解されやすい点で、分離性を課す流儀で読むと第 4 章の二つの命題が偽になる(本書『0-4 解析空間』の注意(分離性を課す流儀との違い))。
「和を積に移す」の和には空の族を含める。空の族の和は空の解析空間 $\emptyset$ で、その値の積は一点集合である。層の条件には空集合の空の被覆を含める。したがって局所的な関手 $G$ は $G(\emptyset)$ が一点集合である。これも足した仮定の一つである。
原論文の「graphe d'équivalence」は、原論文の文献 [1] III(Gro61quot の n° 1)の「couple d'équivalence」と読む。すなわち、対 $p_1,p_2\colon R\rightrightarrows X$ で、任意の $T$ について $R(T)\to X(T)\times X(T)$ が単射で像が同値関係のグラフであるものである。「有効」は、余等化子 $X/R$ が存在し、$X\times_{X/R}X$ が存在し、$R\to X\times_{X/R}X$ が同型であることと読む。本書は「同値の対」「有効な同値の対」と書き、「同値グラフ」とは書かない。これも足した仮定の一つである(外しても壊れない)。
原論文の波線付きの S は射の集合(クラス)で、本書は対象 $S$ と区別して $\mathcal S$ と書く。$\mathcal S$ が底変換で安定とは、$f\colon X\to Y$ が $\mathcal S$ に属し $Y'\to Y$ が任意のとき、$X\times_YY'$ が存在し、その任意の選び方について射影が $\mathcal S$ に属することである。「任意の選び方について」の一句が、$\mathcal S$ が両側からの同型の合成で閉じること、すなわち $f\in\mathcal S$ と同型 $\varphi\colon X'\to X$、$\psi\colon Y'\to Y$ について $\psi^{-1}\circ f\circ\varphi\in\mathcal S$ であることを保証する(本書『2-4 安定性と射のクラス』の主結果「底変換で安定な射のクラスの判定」の (b))。表す組は同型を除いてしか決まらないので、「$u$ に対応する射が $\mathcal S$ に属する」という条件が表す組の選び方によらないためには、$F$ の側と $G$ の側の両方の同型が要る。
| 原論文の語 | 本書の語 |
|---|---|
| quarrable | 底変換可能(任意の $Y'\to Y$ に沿うファイバー積が存在する射。初出で原語を併記) |
| foncteur contravariant、homomorphisme fonctoriel | 前層(反変関手)、前層の射 |
| solution du problème universel | 普遍問題の解(前層を表す組) |
| épimorphisme effectif (universel) | 有効エピ(普遍有効エピ) |
| morphisme de $G$-descente effective | $G$ 有効降下の射 |
| graphe (couple) d'équivalence | 同値の対 |
| morphisme de localisation | 局所化射 |
| de nature locale | 局所的(な関手) |
| recollement | 貼り合わせ |
| immersion (ouverte, fermée) | はめ込み(開はめ込み、閉はめ込み) |
後代の名称(米田の補題、表現可能な射、標準位相、景の上の層、代数空間、スタック)は説明と「その後の発展」で使うが、原論文自身の表記として帰属させない。「米田の対応」は本書の名前で、紙面に米田の名は無い(本書『1-1 米田の対応と表現可能関手』)。
原論文は同じ文字を複数の意味に使う。本書はそれを次のように書き分けた。
| 記号 | 意味 | 原論文 |
|---|---|---|
| $\mathcal U$、$(\mathrm{Ens})$ | 固定した宇宙と、$\mathcal U$ の元である集合の圏 | 「l'Univers」、$(\mathrm{Ens})$ |
| $\mathbf C$、$\mathbf C'$、$\mathbf C^\circ$ | 圏(Hom は $\mathcal U$ 小)と反対圏。第 4 章では $\mathbf C=(\mathrm{An})$ または $(\mathrm{An})_{/S}$ | 波線の下線付きの C |
| $\widehat{\mathbf C}$ | 前層の圏 | $\mathbf{Hom}(\mathbf C^\circ,(\mathrm{Ens}))$ |
| $\widehat{\mathbf C}_{\mathrm{rep}}$ | 表現可能な前層のなす $\widehat{\mathbf C}$ の充満部分圏(頁 1-1) | 本書の記号 |
| $F,G,H$;$u\colon F\to G$、$v\colon H\to G$ | 前層と前層の射 | 同 |
| $\mathrm{Ouv}(T)$ | 位相空間 $T$ の開集合と包含の圏(頁 0-3) | 本書の記号 |
| $\varprojlim$、$\times$、$\times_Z$、$\mathrm{pr}_1,\mathrm{pr}_2$ | 極限、積、ファイバー積、その射影 | 同 |
| カルテシアン | 正方形がファイバー積の正方形であること | cartésien |
| 記号 | 意味 | 原論文 |
|---|---|---|
| $h_X=\mathrm{Hom}(-,X)$、$h$、$h_a$ | 点の前層、$X\mapsto h_X$ の関手、射 $a$ の定める $h_X\to h_{X'}$ | 同 |
| $\alpha$、$\beta$ | 米田の対応 $\mathrm{Hom}(h_X,F)\to F(X)$ とその逆 | 同 |
| $(X,\xi)$ | $F$ を表す組($\xi\in F(X)$ は普遍元) | 同 |
| $m$、$e_X$、$\iota$ | 群対象 $X$ の積、単位射 $e_X\colon e\to X$、逆(頁 1-2) | 本書の記号(原論文は群構造を前層の値で与える) |
| $i\colon\mathbf C'\to\mathbf C$、$F\circ i^\circ$、$(j(X),p)$ | 関手、それに沿った引き戻し、随伴が $X$ で定義されるときの表現対(頁 0-2・2-1。引き戻し $F\circ i^\circ$ は頁 2-1 だけ) | 同 |
| $\mathbf C/S$、$i_{/S}$、$F_{/S}$、$p_T$ | $S$ 上の対象の圏、忘却関手、$F$ の制限、構造射 | 同 |
| $i_{S'/S}$ | $S$ 上の対象 $S'$ について $\mathbf C/S'\to\mathbf C/S$(頁 2-1。頁 0-2 の $(\mathbf C/S)/S'$ の忘却関手と同一視で一致) | 同 |
| $h^{\mathbf C/S}_Z=\mathrm{Hom}_S(-,Z)$ | $\mathbf C/S$ の対象 $Z$ の点の前層(頁 2-1 以後) | 本書の記号 |
| $e$、$c$、$c_{/S}$、$F_\xi$、$G_\eta$ | 終対象、一点集合への定数前層、$\mathbf C/S$ 上のそれ、$\xi\in F(e)$ の定める部分前層、$\eta\in G(S)$ の定める $\mathbf C/S$ 上の部分前層 | 同 |
| $F_\eta$、$F^u_\eta$ | $u\colon F\to G$ と $\eta\in G(S)$ のファイバー:$F_\eta(T)=\{x\in F(T):u(x)=G(p_T)(\eta)\}$。射を明示するときは $F^u_\eta$(頁 2-4) | 同 |
| $\eta_Y$、$\xi_X$、$\xi_\eta$ | $G$、$F$、$F_\eta$ を表す組の普遍元 | 同(上の読み分け) |
| $\mathcal S$ | 射のクラス | 波線付きの S |
| 記号 | 意味 | 原論文 |
|---|---|---|
| 有効エピ、普遍有効エピ | $X\times_YX\rightrightarrows X\to Y$ が余等化子であること、任意の底変換がそうであること | épimorphisme effectif (universel) |
| $p_1,p_2\colon R\rightrightarrows X$、$X/R$ | 同値の対と商(上の「同値の対」) | graphe d'équivalence |
| $X',Y',R'$、$g$、$v$、$w$ | 命題 4.2・系 4.3 の底変換の組、底の射 $g\colon Y'\to Y$、$v\colon X'\to X$ と、$p_iw=vp'_i$ で定まる射 $w\colon R'\to R$ | 同 |
| 降下の組 $(X',f',v)$、$B_R$ | 同値の対 $R$ についての $Y'$ の上の降下の組と、その同型類の前層 $Y'\mapsto B_R(Y')$(頁 3-1) | 原論文は系 4.3 の証明で $B(Y')$(本書は $R$ を添字に付ける) |
| $G$ 有効降下の射 | $G(Y)\to G(X)\rightrightarrows G(X\times_YX)$ が等化子である射 | 同 |
| $\xi^i_R$、$\eta_X$、$G'$ | 定理 4.7 の証明の普遍元の引き戻し、$u(X)(\xi_X)$、降下データの前層($F\times_GF$ の同値の対に当てた $B_R$。頁 3-2) | 同 |
| $\mathcal S_{\max}$、(P) | 注意 4.9 の最大のクラス、注意 4.10 の条件(射影の一方が $\mathcal S$ に属する同値の対は有効で、商射が $\mathcal S$ に属する。これを満たせば定理 4.7 の条件 (c) は条件 (a) から従う。頁 3-2 の主結果「有効性の条件の省略」) | 言葉で |
| 記号 | 意味 | 原論文 |
|---|---|---|
| $k$、$E^n$ | 完備付値体(絶対値は自明でない)と、$k^n$ に収束冪級数の層を与えたモデル | 第 II 回の記号 |
| $(\mathrm{An})$、$(\mathrm{An})_{/S}$ | 解析空間(分離的とは限らない)の圏と、$S$ 上の解析空間の圏 | 同 |
| $(\mathrm{An})^{\mathrm{sep}}$ | 分離的な解析空間だけの充満部分圏(頁 4-1・4-2 の反例と命題でだけ使う) | 本書の記号 |
| $\emptyset$ | 空の解析空間(始対象で、空の族の和) | 言葉で |
| はめ込み、開はめ込み、閉はめ込み | 部分解析空間、開部分空間、閉部分解析空間への同型 | immersion |
| 局所化射 | 全射で、源が開集合の非交和 $\coprod X_i$ に分かれ、各 $X_i$ への制限が開はめ込みである射 | morphisme de localisation |
| $X_i$、$R_{ij}$、$X_{ij}$、$X_{ijk}$ | 命題 5.3 の分解、$R_{ij}=p_1^{-1}(X_i)\cap p_2^{-1}(X_j)$、貼り合わせの重なりと $X_{ijk}=X_{ij}\cap X_{ik}$ | 同 |
| 局所的な関手 | $(\mathrm{An})_{/S}$ 上の前層で、各 $T$ の開集合の上で層(空の被覆を含む)になるもの | de nature locale |
| $u_i\colon F_i\to G$、$F_{i\eta}$、$T_{i\eta}$ | 命題 5.6 の射の族、そのファイバー、それを表す開集合 | 同 |
| $S_i$、$G_i=G_{/S_i}$ | 系 5.7 の底の開被覆と制限 | 同 |
| $e_t$、$i_t$、$\eta_t$、$T_\eta$ | 点の部分空間、その包含、点での値、$\{t:\eta_t\in\operatorname{Im}u(e_t)\}$ | 同 |
| $g_{t'}$ | 射 $g\colon T'\to T$ と点 $t'$ について $g\circ i_{t'}=i_t\circ g_{t'}$ となる同型 $e_{t'}\to e_t$($t=g(t')$。頁 4-3) | 本書の記号 |
| $\mathcal S_{\mathrm{ouv}}$ | $(\mathrm{An})_{/S}$ の開はめ込みのクラス(頁 4-3) | 本書の記号 |
| $L$、$D$ | 原点を二重にした直線、二重点(頁 0-4 の例と、4-1・4-2・4-3 の反例だけ) | 本書の記号 |
原論文が暗黙に使う仮定・読みのうち、定義からも紙面の他の文からも一つに決まらないものを、本書は足した仮定として明示する。足した仮定の下での判定は、主結果の札と頁の注意の両方に書く。頁では番号でなく内容で呼ぶ。分離性の読みは第 4 章の全体に掛かる枠組みの読みなので、札には、貼り合わせで作った空間が解析空間であることを証明で使う主結果にだけ書く。ほかの二つは、直接使う主結果のすべての札に書く。足した仮定は次の三つである。
| 仮定 | 内容 | 札に書く主結果 | 外したとき |
|---|---|---|---|
| 解析空間は分離的とは限らない | $(\mathrm{An})$ は連作第 II 回の定義による解析空間の圏で、底空間の分離性(Hausdorff 性)を要求しない | 4-1「はめ込みで局所的な同値の対の商」「相対的な貼り合わせの商」、4-2「開部分関手で覆われる局所的な関手の表現可能性」「底の開被覆による表現可能性の判定」 | 分離的な解析空間だけの圏で読むと、命題 5.3 と命題 5.6 が偽になる。系 5.7 は分離的な読みでも成り立つ |
| 空の和と空の被覆を含める | 「和を積に移す」の和には空の族を含め(空の和は空の解析空間)、層の条件には空集合の空の被覆を含める。したがって局所的な関手の空集合での値は一点 | 4-2「表現可能な関手は局所的」「局所的な関手の言い換え」「開部分関手で覆われる局所的な関手の表現可能性」「底の開被覆による表現可能性の判定」 | 空の和と空の被覆のどちらか一方を除いても、両方を除いても、補題 5.5 の同値が崩れる。命題 5.6・系 5.7 は、空の被覆を除くと(空の和の扱いによらず)偽になる(空の和だけを除いても 5.6・5.7 は成り立つ) |
| 同値の対の読み | 原論文の「graphe d'équivalence」は文献 [1] III の「couple d'équivalence」(各点で単射で、像が同値関係のグラフである対)と読み、「有効」も同じ所の意味で読む | 3-1「有効な同値の対の商射は有効エピ」、3-2「ファイバー積が定める同値の対」「商による表現可能性の判定」「有効性の条件の省略」、4-1「はめ込みで局所的な同値の対の商」「相対的な貼り合わせの商」、4-2「開部分関手で覆われる局所的な関手の表現可能性」 | $X\times X$ が存在すれば、同値の対は $X\times X$ の部分対象で各点が同値関係のグラフになるものと一対一なので、何も壊れない |
外すと壊れる例を、仮定ごとに短く述べる。証明は括弧の頁にある。
分離性の読みについて。$X$ を $E^1$ の二つの写し $X_1$、$X_2$ の非交和とし、$R$ を $X_1$、$X_2$、$U=E^1-\{0\}$ の二つの写し $U_{12}$、$U_{21}$ の非交和、$p_1,p_2$ を $X_i$ の上では恒等、$U_{12}$ の上では $U\subset X_1$ と $U\subset X_2$、$U_{21}$ の上ではその逆とする。$(p_1,p_2)$ は同値の対で、命題 5.3 の条件 (ii) を満たす。分離的な商 $Y$ と局所化射 $X\to Y$ があれば、二つの原点の像は異なる(二つの原点の組は $R$ に入らない)のに、$U$ の上で二つの写像が一致するので像の近傍はつねに交わり、$Y$ の分離性に反する。分離性を課さなければ、商は本書『0-4 解析空間』の例「原点を二重にした直線」$L$ である(本書『4-1 局所化射と貼り合わせの商』の反例「反例:分離的な空間だけでは貼り合わせの商が作れない」)。命題 5.6 は、$L$ への射の前層と二つの開はめ込み $E^1\to L$ で破れる(本書『4-2 局所的な関手の表現可能性』の反例「反例:分離的な読みでは局所的な関手の判定が崩れる」)。
空の和と空の被覆について。$(\mathrm{An})_{/S}$ 上の前層 $G$ を、$T\ne\emptyset$ で $G(T)=\emptyset$、$G(\emptyset)=\{0,1\}$ と定める($T'\to\emptyset$ があれば $T'=\emptyset$ なので、制限は恒等写像と空写像だけである)。$G$ は空でない被覆について層の条件を満たすが、表現可能でない(表す $Y$ があれば $Y=\emptyset$ で、$h_\emptyset(\emptyset)$ は一点)。命題 5.6 を添字集合が空の族に当てると、条件 (ii) の a はこの $G$ で成り立つので、空の被覆を層の条件から除く読みでは (ii)⇒(i) が破れる。系 5.7 も、$S=\emptyset$ とその空の被覆で同じ $G$ により破れる(本書『4-2 局所的な関手の表現可能性』の反例「反例:空の被覆を除くと判定が崩れる」)。空の場合を含める読みの下では、どちらの場合も $G(\emptyset)$ は一点で、$G\cong h_\emptyset$ となって主張が成り立つ。同じ $G$ は補題 5.5 も崩す。空の被覆と空の和を両方の条件から除いても、$\emptyset$ を空の解析空間の二つの写しの(空でない族の)和とみると、$G(\emptyset)\to G(\emptyset)\times G(\emptyset)$ は対角写像で全単射でないので、$G$ は空でない被覆について層なのに和を積に移さない(本書『4-2 局所的な関手の表現可能性』の主結果「局所的な関手の言い換え」の後の段)。「両方の条件から空の場合を除けば補題 5.5 はそのまま成り立つ」と読みたくなるが、この例のとおり誤りで、本書の頁はこの形で判定した。
同値の対の読みについて。解析空間の圏では $X\times X$ が存在する(本書『0-4 解析空間』の定理(解析空間のファイバー積の存在)。判定には使わない)ので、第 4 章ではどちらの読みも同じである。$X\times X$ の無い一般の圏で「グラフ」を $X\times X$ の部分対象に限る読みを採ると、定理 4.7 の条件 (c) の $R$ がグラフとして定まらず条件が意味を失う。本書の読みはどの圏でも意味が通る(本書『3-1 有効エピと降下』の注意「同値の対の読み」)。
| 原論文 | 印字頁 | 本書の頁 |
|---|---|---|
| §1 の目的、§2 冒頭の点の関手、命題 2.1、定理 2.2、表現可能と普遍問題の解 | 11-01〜11-03 | 1-1 |
| §2 の極限の想起、関手で代数構造を与える方法 | 11-03 | 1-2 |
| §3 冒頭の引き戻しの補題、底の上の圏と随伴、命題 3.1、系 3.2、推移性、終対象と定数関手 | 11-03〜11-06 | 2-1 |
| ファイバーとカルテシアン性、定義 3.3 と言い換え、補題 3.4、系 3.5 | 11-06〜11-07 | 2-2 |
| 補題 3.6、命題 3.7、系 3.8、系 3.9 | 11-07〜11-08 | 2-3 |
| 命題 3.10、系 3.11、系 3.12、注意 3.13 とその用例 | 11-08〜11-11 | 2-4 |
| §4 の導入、定義 4.1、同値の対の想起、命題 4.2、系 4.3、注意 4.4、定義 4.6 とその例 | 11-11〜11-17 | 3-1 |
| 命題 4.5、定理 4.7、系 4.8、注意 4.9、注意 4.10 | 11-16〜11-22 | 3-2 |
| 定義 5.1、命題 5.2、命題 5.3、その後の $S$ 上の注意 | 11-22〜11-24 | 4-1 |
| 定義 5.4、補題 5.5、命題 5.6、系 5.7、注意 5.8 | 11-24〜11-26 | 4-2 |
| 点の部分空間 $e_t$、命題 5.9、文献表 | 11-27〜11-28 | 4-3 |
| 原論文の表記 | 印字頁 | 本書の読み |
|---|---|---|
| 「[1], II, A, n° 1」 | 11-01 | 表現可能関手の言語を素描した所。Gro60mod(本書は本文を開いていない) |
| 「cet exposé et du suivant」 | 11-01 | 次の講演は連作第 V 回 Gro61v(本書は本文を開いていない) |
| 「[1], III, n° 1」 | 11-11、11-16 | 同値の対と有効性の定義。Gro61quot |
| Teichmüller 空間の構成の予告 | 11-11 | 連作第 I 回 Gro61i・第 X 回 Gro61x(本書は本文を開いていない) |
| 「un exposé ultérieur」(忠実平坦な射) | 11-21〜11-22 | どの講演か本書は特定していない |
| 「cf. [1], III」(代数幾何の判定の例) | 11-22 | Gro61quot。解析幾何への移し替えは本書『3-2 商と表現可能性の主定理』で未完結とする |
| 「l'exposé précédent」(積の存在) | 11-26 | 連作第 III 回 Gro61iii の定理 2.1 |
| 基礎体 $k$、解析空間 | 11-22〜11-27 | 連作第 II 回 Gro61ii の定義(本書『0-4 解析空間』) |
本書は原論文の不備を三つに分ける。
一つ目は誤植である。印字のままの主張や式が成り立たなくても、近くの式や文が正しい形を与え、誤った形に理由(その形でよい根拠)が添えられていなければ、誤植として訂正した形で読み、主結果は訂正形で数える。番号・記号・綴りの誤りもここに入れる。一覧は下の「原論文の誤植の読み方」にある。
二つ目は主張の偽で、印字のままの主張に反例があり、上の二つの条件のどちらかを欠くものである。本書に当たるのは一件である。命題 3.10 (iii)「$vu$ と $v$ が表現可能なら $u$ も表現可能」は、ファイバー積の無い圏で偽である。原論文は証明の中で、壊れる段(ある $S$ 射が底変換可能であること)に「aussitôt」の理由を添えており、近くに正しい形を与える文も無い。本書は主結果「合成から因子の表現可能性を戻す(訂正形)」とし、反例「反例:ファイバー積の無い圏では合成から因子へ戻れない」(空でない集合の圏)を置いた(本書『2-4 安定性と射のクラス』)。解析空間の圏にはファイバー積があるので、原論文のその後の結果には効かない。
三つ目は、主張は正しいが原論文の証明の段が不備なもので、主張の札には影響させず、その頁の注意に「原論文の段は…で、そのままでは結論に届かない(または確かめを省いている)。本書は…で示す」と書く。本書に当たるのは次の四件である。
誤植と記号の揺れは主結果に数えず、割り付けた頁の注意に「原論文の印字は…、…と読む」と書く。「留保」は、読みを一つに確定できないか、どの読みでも主張が変わらないものである。
| 箇所 | 原論文の印字 | 本書の読み | 頁 |
|---|---|---|---|
| 印字 11-03、表現可能の定義の段 | 「la proposition 2.2」 | 定理 2.2 | 1-1 |
| 同 | 「un objet X de F」 | $\mathbf C$ の対象 $X$ | 1-1 |
| 同 | $\mathrm{Hom}(?,X)$ の第 1 引数(かすれ) | $\mathrm{Hom}(Y,X)$(直後の $f\colon Y\to X$) | 1-1 |
| 印字 11-04、§3 の制限 | $F\circ i^\bullet_{/S}$ の上付き(潰れ) | $i^\circ_{/S}$(留保) | 2-1 |
| 印字 11-05、推移性の式 | $i_{/S'}=i_S\circ i_{S'/S}$ | 第 1 因子は $i_{/S}$ | 2-1 |
| 印字 11-05、終対象の段の括弧の注(N. B.) | 「$F$ を、射 $c\to F$ を添えた点型の関手 $c$ として定める」の $F$ | $F_\xi$(添字の脱落) | 2-1 |
| 印字 11-06、ファイバーの正方形 | 前層の圏 $\mathbf{Hom}(\mathbf C^\circ,(\mathrm{Ens}))$ の中でカルテシアン | $\mathbf C/S$ の前層の圏の中 | 2-2 |
| 印字 11-07、補題 3.4 | $F(\mathrm{pr}_1)(\eta_X)$ | $F(\mathrm{pr}_1)(\xi_X)$ | 2-2 |
| 印字 11-07、補題 3.4 の証明 | 関手 $F_{\eta_S}$ | $F_{\eta_Y}$ に $S\to Y$ で系 3.2 を当てたものと読む(留保。どちらの読みでも証明は通る) | 2-2 |
| 同 | 「en $T/S$」 | $S$ 上の対象 $T$ について | 2-2 |
| 印字 11-07、補題 3.6 | $(X,\eta_X)$ | $(X,\xi_X)$ | 2-3 |
| 印字 11-08、系 3.9 | $F(S)\to F(S')$ | $G(S)\to G(S')$ | 2-3 |
| 印字 11-08、系 3.9 の後 | 構造射 $X\to S$ | $X_\eta\to S$ | 2-3 |
| 印字 11-09、命題 3.10 (i) の証明 | $c_{/S}\to G'$ | $c_{/S}\to G'_{/S}$ | 2-4 |
| 印字 11-09、命題 3.10 (ii) の証明 | 列の二本の矢印がともに $u'$ | 二本目は $v'$ | 2-4 |
| 印字 11-09、命題 3.10 (iii) の証明 | $u_{/S}\colon G_{/S}\to H_{/S}$ | $v_{/S}$ | 2-4 |
| 印字 11-10、系 3.12 | $F\times_HG$ | $F\times_GH$ | 2-4 |
| 印字 11-10、注意 3.13 | $\mathrm{pr}_1=f'$ | $\mathrm{pr}_2$ | 2-4 |
| 印字 11-12、命題 4.2 | $p_iw=wp'_i$ | $p_iw=vp'_i$ | 3-1 |
| 印字 11-13、命題 4.2 の証明 | 「L'application (i)」 | 写像 (*) | 3-1 |
| 印字 11-14、同じ証明 | $p'_1t=\mathrm{id}_{T'}$ | $\mathrm{id}_{X'}$ | 3-1 |
| 印字 11-17、命題 4.5 の証明 | $P(Z)$($P$ が未定義) | $P=F\times_GF$ | 3-2 |
| 印字 11-17、定理 4.7 (ii) a | $F_\eta=F\times_GG$ | $F_\eta=F_{/S}\times_{G_{/S}}c_{/S}$ | 3-2 |
| 印字 11-18、定理 4.7 の証明 | $F(p_i)(\xi_X)=\xi^i_X$ | $\xi^i_R$ | 3-2 |
| 同 | 図式 $(D_1)$ の上の矢印(潰れ) | $w$(次頁の同じ図式) | 3-2 |
| 印字 11-19、同じ証明 | $f(w)(\xi^i_R)$ | $F(w)(\xi^i_R)$ | 3-2 |
| 同 | $(R,\xi^2_X)$ | $(R,\xi^2_R)$ | 3-2 |
| 同 | $\xi^1_{R'}=F(w)(\xi^2_R)$ | 左辺は $\xi^2_{R'}$ | 3-2 |
| 印字 11-20、同じ証明 | $G(p_2(\eta_X))$ | $G(p_2)(\eta_X)$ | 3-2 |
| 印字 11-23、命題 5.3 | $p_1^{-1}(X_i)\,p_2^{-1}(X_j)$ | $p_1^{-1}(X_i)\cap p_2^{-1}(X_j)$ | 4-1 |
| 印字 11-23、命題 5.3 の証明 | 未定義の $X_{jki}$ など | $X_{ijk}=X_{ij}\cap X_{ik}$ | 4-1 |
| 印字 11-24、補題 5.5 b | 「$T$-morphisme」($T$ が束縛されていない) | $S$ 射(留保。どちらの読みでも判定は変わらない) | 4-2 |
| 印字 11-25、命題 5.6 (ii) a | 開集合 $T_i$ | $T_{i\eta}$ | 4-2 |
| 印字 11-26、命題 5.6 の証明 | 関手 $F$ が $T'$ で表される | $F_\eta$ | 4-2 |
| 印字 11-26、系 5.7 の証明 | 構造射 $g\colon Y\to S$ | $g\colon T\to S$ | 4-2 |
| 同 | 関手 $F_i$ が開集合 $g^{-1}(S_i)$ で表される | $F_{i\eta}$ | 4-2 |
| 同 | 「(5.6), (ii) (a)」の (ii)(かすれ) | (ii) | 4-2 |
| 印字 11-24、11-27 | 「$k$-algèbres」「le corps de base $k$」($k$ が未定義) | 連作第 II 回の完備付値体 $k$(本書『0-4 解析空間』で解消) | 4-3、0-4 |
| 印字 11-28、命題 5.9 の証明 | 「(3.3.13)」 | 注意 3.13(留保。3.3 と 3.13 を併せて指すと読んでも同じ) | 4-3 |
| 同 | 「$F(T')$ est non vide」の条件 $g^{-1}(T)=T'$ | $F_\eta(T')\ne\emptyset\iff g^{-1}(T_\eta)=T'$。直前の「l'existence」は消し残り | 4-3 |
印字 11-17 の右上に丸い蔵書印があり、外周の一部だけが読める。印の下の文字は読め、数学の内容は欠けていない。ほかに、各所に軽いタイプの崩れ(打ち損じ、綴り、題の重ね打ちと手書きのアクサン)があるが、数学の内容に影響しないので一覧に入れない(たとえば印字 11-20 の「G-descente effectif」、印字 11-21 の「universe ls」)。
誤植ではなく、紙面の語の読み方を本書が決めたものもある。「graphe d'équivalence」の読み(上の「同値の対」)、解析空間の分離性の読み(上の「分離性の読み」)、空の和と空の被覆(上の「空の和と空の被覆」)である。
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