4-2 局所的な関手の表現可能性

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

解析空間の圏の上の前層で、各解析空間の開集合の上で層になるもの(局所的な関手)を定め、表現可能な前層は局所的であること、局所性が「和を積に移す」と「局所化射に沿う降下」に分かれることを示す。そのうえで、表現可能な前層からの射の族が開部分関手として前層を覆い、前層が局所的なら、前層は表現可能であることを示し、底の開被覆による判定を導く。空の被覆の約束と、解析空間に分離性を課さない約束が、この判定のどこで効くかを反例で示す。
前提知識: 層, 表現可能関手, 解析空間, 開はめ込み, 有効エピ射, 局所化射

この頁で示すこと

$S$ を解析空間とし、$(\mathrm{An})_{/S}$ を $S$ 上の解析空間の圏とする。解析空間は連作第 II 回の定義により、分離性を要求しない(本書『0-4 解析空間』の定義「解析空間の定義」)。前層は $(\mathrm{An})_{/S}$ の反対圏から集合の圏への関手である。$T$ の開集合 $U$ は、構造射の制限で $(\mathrm{An})_{/S}$ の対象とみる。記号は本書『0-5 記号と約束』のとおりである。
本頁の主結果は次の五つである。

  1. 表現可能な関手は局所的(原論文 定義 5.4 に添えた主張、印字 11-24):$(\mathrm{An})_{/S}$ 上の表現可能な前層は、各対象 $T$ の開集合の上で、空の被覆を含めて層になる。[条件付き:本書『0-3 層と環付き空間の貼り合わせ』の定義「前層と層」と定理「環付き空間と射の貼り合わせ」、本書『0-4 解析空間』の命題「開はめ込みの底変換と非交和」を引用。解析空間の定義の下では完結。足した仮定:空の和と空の被覆を含める]
  2. 局所的な関手の言い換え(原論文 補題 5.5、印字 11-24):前層が局所的であることは、和を積に移し(空の和を含む)、$S$ 射である局所化射がすべて有効降下の射であることと同値である。[条件付き:本書『4-1 局所化射と貼り合わせの商』の補題「局所化射の自分自身とのファイバー積」と、本書『0-4 解析空間』の命題「開はめ込みの底変換と非交和」を引用(本書『0-3 層と環付き空間の貼り合わせ』の定義「前層と層」の意味で)。解析空間の定義の下では完結。足した仮定:空の和と空の被覆を含める]
  3. 開部分関手で覆われる局所的な関手の表現可能性(原論文 命題 5.6、印字 11-24〜11-26):表現可能な前層からの射の族 $u_i\colon F_i\to G$ について、$G$ が表現可能で $u_i$ を表す射が像で全体を覆う開はめ込みであることは、各 $u_i$ のファイバーが底の開部分空間で表されてそれらが底を覆い、$G$ が局所的であることと同値である。[条件付き:本書『4-1 局所化射と貼り合わせの商』の主結果「局所化射の基本性質」「はめ込みで局所的な同値の対の商」「相対的な貼り合わせの商」と補題「局所化射の自分自身とのファイバー積」、本書『0-4 解析空間』の命題「開はめ込みの底変換と非交和」を引用し、本書『3-2 商と表現可能性の主定理』の主結果「ファイバー積が定める同値の対」「商による表現可能性の判定」、本書『2-2 ファイバーと表現可能な射』の主結果「表現可能な関手の間の射のファイバー」、主結果 1・2 による。解析空間の定義の下では完結。足した仮定:解析空間は分離的とは限らない、空の和と空の被覆を含める、同値の対の読み]
  4. 底の開被覆による表現可能性の判定(原論文 系 5.7、印字 11-26):$S$ の開被覆 $(S_i)$ について、$(\mathrm{An})_{/S}$ 上の前層が表現可能であることは、それが局所的で、各 $S_i$ の上の解析空間の圏への制限が表現可能であることと同値である。[条件付き:主結果 1・3、本書『2-1 制限と底変換』の主結果「スライス圏への制限の表現可能性」、本書『0-4 解析空間』の命題「開はめ込みの底変換と非交和」による。解析空間の定義の下では完結。足した仮定:解析空間は分離的とは限らない、空の和と空の被覆を含める]
  5. 貼り合わせの判定は積の存在に依らない(原論文 注意 5.8 の第二文の前半、印字 11-26):主結果 3 の証明は、解析空間の圏にファイバー積が一般に存在すること(連作第 III 回の定理)を使わない。[条件付き:主結果 3 の証明による。解析空間の定義の下では完結]
    五つとも、連作第 II 回の定義の直後の事実と層・環付き空間の貼り合わせを引くので[条件付き]で、連作の定理(はめ込みの一般の底変換、ファイバー積の存在)は使わない。主結果 3 は、第 3 章の商による表現可能性の判定を、射のクラスを局所化射に選んで当てはめたもので、原論文の証明の一段(同値の対が有効であることを確かめる段)はそのままでは通らないので、別の道で埋める。

背景と動機

原論文は補題 5.5 の直後で、命題 5.6 を本節の主な結果と呼ぶ(印字 11-24)。求める解析空間 $Y$ を直接作る代わりに、$Y$ への射のなす前層 $G$ を書き下し、$G$ が表現可能であることを示すのが、本講演の表現可能関手の方法であった(本書『1-1 米田の対応と表現可能関手』)。表現可能な前層は、射が開被覆の上で貼り合わさることから、開被覆について層の条件を満たす。命題 5.6 はその逆を、開部分関手による被覆という形で与える。$G$ の中に表現可能な部分 $F_i$ があり、それらが開部分空間として $G$ を覆い、$G$ が層の条件を満たせば、$F_i$ を表す解析空間を貼り合わせて $G$ を表す空間が得られる。
原論文の第 1 節は、この回と次の回の目的を、普遍問題についての一般の言明ととくに簡単な例を与えることだと書く(印字 11-01)。次の回である連作第 V 回はベクトル束・Grassmann 束・旗束を関手で定め、その表現可能性をこの節の判定で示す、と説明される(Gro61v。本書は第 V 回を開いていない)。
証明は、第 3 章の商による表現可能性の判定(本書『3-2 商と表現可能性の主定理』の主結果「商による表現可能性の判定」)を、射のクラス $\mathcal S$ を $S$ 射である局所化射の全体として使う。判定の前提と三つの条件のうち、前提は本書『4-1 局所化射と貼り合わせの商』の主結果「局所化射の基本性質」、降下の条件は局所性、ファイバーの条件は開部分関手による被覆、同値の対の有効性は本書『4-1 局所化射と貼り合わせの商』の主結果「はめ込みで局所的な同値の対の商」に当たる。

定義と準備

局所的な関手を定義し、それを言い換えるための二つの性質(和を積に移すこと、有効降下の射)を置く。続いて、射のファイバーが開部分空間で表されることの意味を確かめる補題を置く。

引用する事実

次の事実は本書の第 0 章と第 4 章の前の頁から引用する。出典は連作第 II 回 Gro61ii と層・環付き空間の一般論で、後者の該当箇所は本書では確かめていない。

  1. 前層と層(本書『0-3 層と環付き空間の貼り合わせ』の定義):位相空間の開集合の上の前層が層であるとは、どの開集合のどの開被覆(空集合の空の被覆を含む)についても等化子の条件が成り立つことをいう。空の被覆についての条件は、空集合での値が一点であることを言う。
  2. 環付き空間と射の貼り合わせ(同じ頁の定理):環付き空間の射は開被覆の上で局所的に決まり、重なりで一致する射の族は一意に貼り合わさる。
  3. 開はめ込みの底変換と非交和(本書『0-4 解析空間』の命題。証明が連作第 II 回の定義に依る):開はめ込みに沿うファイバー積は逆像の開部分空間で、射の像が開部分空間に入るなら射はそれをただ一通りに経由する。非交和は和で、非交和への射は源の開かつ閉な分解と射の族に同じである。これらは $(\mathrm{An})_{/S}$ でも成り立ち、開被覆の上の $S$ 射の族で重なりで一致するものは一意に貼り合わさる。
  4. 局所化射の基本性質、はめ込みで局所的な同値の対の商、相対的な貼り合わせの商、局所化射の自分自身とのファイバー積(本書『4-1 局所化射と貼り合わせの商』の主結果と補題。いずれも上の事実に依る)。
局所的な関手

$G$ を $(\mathrm{An})_{/S}$ 上の前層とする。$(\mathrm{An})_{/S}$ の対象 $T$ の開集合 $U$ に $G(U)$ を、開集合の包含 $V\subset U$($S$ 射である)に制限写像 $G(U)\to G(V)$ を対応させると、$T$ の上の前層 $G|_T$ が得られる。どの対象 $T$ についても $G|_T$ が本書『0-3 層と環付き空間の貼り合わせ』の定義「前層と層」の意味の層(空集合の空の被覆を含む)であるとき、$G$ は局所的であるという。とくに局所的な前層 $G$ は $G(\emptyset)$ が一点集合である。

原論文の語は「de nature locale」で、原論文は定義の直後に、条件を開被覆 $(T_i)$ についての図式 $G(T)\to\prod G(T_i)\rightrightarrows\prod G(T_i\cap T_j)$ の完全性として書き直す(印字 11-24)。空の被覆を含めるのは本書が足した仮定の一つである(本書『0-5 記号と約束』の「空の和と空の被覆」)。含めないと主結果 3・4 が境界の場合に偽になることは、下の反例「反例:空の被覆を除くと判定が崩れる」で示す。

和を積に移す前層と有効降下の射

$G$ を $(\mathrm{An})_{/S}$ 上の前層とする。
(1) $G$ が和を積に移すとは、$(\mathrm{An})_{/S}$ の対象の族 $(T_\alpha)_{\alpha\in A}$($A$ は $\mathcal U$ 小な集合で、空でもよい)とその和 $T=\coprod_\alpha T_\alpha$(標準の射 $\varepsilon_\alpha\colon T_\alpha\to T$)について、写像 $G(T)\to\prod_\alpha G(T_\alpha)$、$\eta\mapsto(G(\varepsilon_\alpha)(\eta))_\alpha$ がつねに全単射であることをいう。$A$ が空なら和は空の解析空間 $\emptyset$ で、条件は $G(\emptyset)$ が一点集合であることを言う。
(2) $(\mathrm{An})_{/S}$ の射 $f\colon X\to Y$ が $G$ 有効降下の射であるとは、ファイバー積 $X\times_YX$ が存在し、写像の図式 $G(Y)\to G(X)\rightrightarrows G(X\times_YX)$(右の二本は二つの射影による)が等化子であることをいう。

和の存在と形は本書『0-4 解析空間』の命題「開はめ込みの底変換と非交和」の (2)(3) による。和の選び方を変えても条件は変わらない(和は同型を除いて一つで、同型は $G$ の値の全単射を与える)。(2) は本書『3-1 有効エピと降下』の定義「有効降下の射」(原論文の定義 4.6)を $(\mathrm{An})_{/S}$ に当てたもので、ファイバー積の選び方によらない。
主結果 3 の条件は、射のファイバーが開部分空間で表されることを言う。ファイバーの定義は本書『2-2 ファイバーと表現可能な射』にあり、ここでは $(\mathrm{An})_{/S}$ の上で繰り返す。

射のファイバーと開部分空間による表現

$u\colon F\to G$ を $(\mathrm{An})_{/S}$ 上の前層の射、$T$ を対象、$\eta\in G(T)$ とする。$T$ 上の対象 $q\colon T''\to T$ に集合
$$F_\eta(T'')=\{x\in F(T''):u(x)=G(q)(\eta)\}$$
を対応させる $(\mathrm{An})_{/T}$ 上の前層 $F_\eta$ を、$u$ の $\eta$ の上のファイバーという。ここで $(\mathrm{An})_{/T}$ は、$(\mathrm{An})_{/S}$ の中の $T$ 上の対象の圏と同じものとみる(本書『0-2 圏と前層』の補題「スライス圏」の (3))。$F_\eta$ が $T$ の開部分空間 $V$ で表されるとは、包含 $V\to T$ を構造射とする $(\mathrm{An})_{/T}$ の対象 $V$ が $F_\eta$ を表すことをいう。

開部分空間の点の前層は、次のように「像が入るかどうか」だけを見る前層である。主結果 3・4 の証明と反例はこの形で計算する。

開部分空間が表す前層

$T$ を $(\mathrm{An})_{/S}$ の対象、$V$ を $T$ の開集合とする。$T$ 上の対象 $q\colon T''\to T$ について、$\mathrm{Hom}_T(T'',V)$ は $q(T'')\subset V$ なら一点、そうでなければ空である。したがって、$(\mathrm{An})_{/T}$ 上の前層 $P$ で、$P(T'')$ が $q(T'')\subset V$ のとき一点、そうでないとき空であるものは、$V$ で表される。

$T$ 射 $T''\to V$ は、包含との合成が $q$ になる射で、本書『0-4 解析空間』の命題「開はめ込みの底変換と非交和」の証明の段 1 により、$q(T'')\subset V$ のときただ一つあり、そうでないときは無い。$S$ 射であることは合成から従う。$P$ と $h_V$ は値がともに高々一点で、空になる $T''$ が一致するので、ただ一つの前層の射が同型を与える。

主結果と証明

まず局所性を二つの性質に分け、表現可能な前層がそれを満たすことを確かめる。そのうえで、局所性と開部分関手による被覆から表現可能性を導く。

局所的な関手

表現可能な関手は局所的

$(\mathrm{An})_{/S}$ 上の前層 $G$ が表現可能なら、$G$ は局所的である。

$G$ が対象 $Y$ で表されるとし、同型 $G\cong h_Y$ を一つ固定する。同型は値の全単射で制限と両立するので、$h_Y$ が局所的であることを示せばよい。$T$ を対象、$U$ をその開集合、$(U_i)$ を $U$ の開被覆とする。$S$ 射 $g_i\colon U_i\to Y$ の族で、重なり $U_i\cap U_j$ の上で制限が一致するものは、本書『0-4 解析空間』の命題「開はめ込みの底変換と非交和」の (3)(その根拠は本書『0-3 層と環付き空間の貼り合わせ』の定理「環付き空間と射の貼り合わせ」)により、$U$ から $Y$ への $S$ 射にただ一通りに貼り合わさる。これは層の条件そのものである。空の被覆については、空の解析空間 $\emptyset$ は始対象なので(同じ命題の (2))$\mathrm{Hom}_S(\emptyset,Y)$ は一点で、条件が成り立つ。

原論文は、この条件が表現可能な $G$ について自明に成り立つと一言で書く(印字 11-24)。自明である理由は射の貼り合わせで、空の被覆の場合は空の解析空間が始対象であることによる。

局所的な関手の言い換え

$(\mathrm{An})_{/S}$ 上の前層 $G$ について、次の二条件は同値である。
(1) $G$ は局所的である。
(2) 次の a と b が成り立つ。a. $G$ は和を積に移す(空の和を含む)。b. $S$ 射である局所化射はすべて $G$ 有効降下の射である。

段 1((1) から a).$T=\coprod_\alpha T_\alpha$ を和とする。和の標準の射は $T$ の互いに素な開かつ閉な部分への同型なので(本書『0-4 解析空間』の命題「開はめ込みの底変換と非交和」の (2))、$T_\alpha$ はその開部分空間だとしてよい。$(T_\alpha)$ は $T$ の開被覆で、$\alpha\ne\beta$ なら $T_\alpha\cap T_\beta=\emptyset$ である。層の条件の等化子 $\prod_\alpha G(T_\alpha)\rightrightarrows\prod_{\alpha,\beta}G(T_\alpha\cap T_\beta)$ で、$\alpha\ne\beta$ の成分は空の被覆についての層の条件により一点の集合 $G(\emptyset)$ で、$\alpha=\beta$ の成分では二本の写像は等しい。ゆえに等化子は $\prod_\alpha G(T_\alpha)$ 全体で、層の条件は $G(T)\to\prod_\alpha G(T_\alpha)$ が全単射であることを言う。族が空なら $T=\emptyset$ で、空の被覆についての条件により $G(\emptyset)$ は一点である。
段 2((1) から b).$f\colon X\to Y$ を $S$ 射である局所化射とし、分解を $(X_i)$、$V_i=f(X_i)$、$V_{ij}=V_i\cap V_j$、$\iota_i\colon X_i\cong V_i$ とする。本書『4-1 局所化射と貼り合わせの商』の補題「局所化射の自分自身とのファイバー積」により、$X\times_YX$ は $(\mathrm{An})_{/S}$ に存在し、成分 $(i,j)$ が $V_{ij}$ と同一視され、二つの射影は包含 $V_{ij}\to V_i$、$V_{ij}\to V_j$ に当たる。段 1 により $G(X)\cong\prod_iG(X_i)\cong\prod_iG(V_i)$(後の同型は $S$ 同型 $\iota_i$ による)、$G(X\times_YX)\cong\prod_{i,j}G(V_{ij})$ である。この同一視で、$G(f)$ は $\eta\mapsto(\eta|_{V_i})_i$ に、二つの射影による写像は $(\eta_i)\mapsto(\eta_i|_{V_{ij}})$ と $(\eta_i)\mapsto(\eta_j|_{V_{ij}})$ に当たる。ゆえに $f$ が $G$ 有効降下の射であることは、$Y$ の開被覆 $(V_i)$ についての層の条件そのもので、(1) により成り立つ。ファイバー積の別の選び方は射影と両立する同型で移るので、結論は選び方によらない。
段 3((2) から (1)).$T$ を対象、$U$ をその開集合、$(U_i)_{i\in I}$ を $U$ の開被覆とする。$U$ を構造射の制限で $(\mathrm{An})_{/S}$ の対象とみれば、$U$ の開集合は $T$ の開集合なので、$T=U$、$T_i=U_i$ としてよい。開部分空間の非交和から $T$ への包含たちの定める射 $q\colon\coprod_iT_i\to T$ は、$S$ 射である局所化射である。$I=\emptyset$ なら $T=\emptyset$ で、a により $G(\emptyset)$ は一点であり、空の被覆についての層の条件が成り立つ。$I$ が空でなければ、b により $q$ は $G$ 有効降下の射である。段 2 と同じ同一視を a により行うと(こんどは a を仮定として使う)、有効降下の等化子の条件は、被覆 $(T_i)$ についての層の条件になる。

主結果 2 の条件 a は空の和を含む。そのため $G(\emptyset)$ は一点になり、段 1 と段 3 の空の場合が両向きで対応する。空の和と空の被覆のどちらか一方でも除くと、この同値は崩れる。両方を除いても崩れる。たとえば下の反例「反例:空の被覆を除くと判定が崩れる」の $G$ は空でない被覆について層の条件を満たすが、$\emptyset$ の二つの写しの和について $G(\emptyset)\to G(\emptyset)^2$ が全単射でない(本書『0-5 記号と約束』の「本書が足した仮定」)。

原論文の段と補題の読み
  1. 原論文は補題 5.5 に証明を付けない(印字 11-24)。上の証明の三段は本書が補ったものである。原論文は a を「和を積に移す」とだけ書き、空の和に触れない。本書は空の和を含めて読む。
  2. 原論文の b は「どの $T$ 射 $f\colon X\to Y$ も、局所化射なら $G$ 有効降下の射」と印字されている(印字 11-24)が、この $T$ は補題の中で束縛されていない。本書は $S$ 射と読む。$T$ 上の対象の間の $T$ 射と読んでも、それは $S$ 射でもあるので条件は弱くなるだけであり、上の証明の段 3 で使う $q$ は $T$ 射でもあるので、同値は変わらない。

開部分関手による貼り合わせ

次の定理が本節の主な結果である。条件 a の各ファイバーを表す開部分空間 $T_{i\eta}$ は、「$\eta$ が $F_i$ から来る所」を表し、それらが $T$ を覆うことは、$G$ の元が局所的には $F_i$ のどれかから来ることを言う。

開部分関手で覆われる局所的な関手の表現可能性

$G$ を $(\mathrm{An})_{/S}$ 上の前層、$(u_i\colon F_i\to G)_{i\in I}$ を前層の射の族とし、各 $F_i$ は $(\mathrm{An})_{/S}$ の対象 $X_i$ で表されるとする。次の二条件は同値である。
(i) $G$ は $(\mathrm{An})_{/S}$ の対象 $Y$ で表され、$u_i$ を表す射 $f_i\colon X_i\to Y$ はすべて開はめ込みで、像 $f_i(X_i)$ は $Y$ を覆う。
(ii) 次の a と b が成り立つ。a. $(\mathrm{An})_{/S}$ のどの対象 $T$ とどの $\eta\in G(T)$ についても、$u_i$ の $\eta$ の上のファイバー $F_{i\eta}$ は $T$ の開部分空間 $T_{i\eta}$ で表され、$T=\bigcup_iT_{i\eta}$ である。b. $G$ は局所的である。

段 1((i) から (ii)).$\eta\in G(T)$ に対応する $S$ 射を $\tilde\eta\colon T\to Y$ とする。本書『2-2 ファイバーと表現可能な射』の主結果「表現可能な関手の間の射のファイバー」により、$F_{i\eta}$ は $X_i\times_YT\to T$ で表される。本書『0-4 解析空間』の命題「開はめ込みの底変換と非交和」の (1)(3) により、このファイバー積は開部分空間 $\tilde\eta^{-1}(f_i(X_i))$ にとれ、$f_i(X_i)$ が $Y$ を覆うので、これらは $T$ を覆う。これが a である。b は上の定理(表現可能な関手は局所的)である。
段 2(和と射 $u$).以下 (ii) を仮定する。$X=\coprod_iX_i$ を $(\mathrm{An})_{/S}$ の和とし、$F=h_X$ と置く。各 $F_i$ を表す組 $(X_i,\xi_i)$ を固定し、$F_i(T)$ を $\mathrm{Hom}_S(T,X_i)$ と同一視する。本書『0-4 解析空間』の命題「開はめ込みの底変換と非交和」の (2)(3) により、$F(T)$ の元 $\xi$ は、$T$ の開かつ閉な分解 $T=\coprod_iT_i$ と元 $\xi_i\in F_i(T_i)$ の族と一対一に対応する。上の定理(局所的な関手の言い換え)の a により $G(T)\to\prod_iG(T_i)$ は全単射なので、$u(\xi)\in G(T)$ を、$T_i$ への制限が $u_i(\xi_i)$ となるただ一つの元と定める。射 $g\colon T'\to T$ について $g^*\xi$ は分解 $(g^{-1}(T_i))$ と $\xi_i$ の引き戻しの族で、$u(g^*\xi)$ と $G(g)(u(\xi))$ は各 $g^{-1}(T_i)$ への制限が等しいので、同じ全単射により等しい。ゆえに $u\colon F\to G$ は前層の射で、包含 $X_i\to X$ の定める $v_i\colon F_i\to F$ について $uv_i=u_i$ である。
段 3(ファイバーの条件).$\mathcal S$ を $(\mathrm{An})_{/S}$ の $S$ 射である局所化射の全体とする。$\eta\in G(T)$ と $T$ 上の対象 $q\colon T''\to T$ について、$\xi=(T''_i,\xi_i)\in F(T'')$ が $u(\xi)=G(q)(\eta)$ を満たすことは、同じ全単射により、各 $i$ で $u_i(\xi_i)=G(q|_{T''_i})(\eta)$、すなわち $\xi_i\in F_{i\eta}(T''_i)$ であることと同じである。a と上の補題(開部分空間が表す前層)により、そのような $\xi_i$ は $q(T''_i)\subset T_{i\eta}$ のときただ一つあり、そうでないときは無い。ゆえに $F_\eta(T'')$ は、$T''$ の開かつ閉な分解 $(T''_i)$ で $q(T''_i)\subset T_{i\eta}$ となるものの全体と一対一に対応し、これは $T''$ から $T'=\coprod_iT_{i\eta}$(包含たちの定める射で $T$ 上の対象とみる)への $T$ 射の全体と同じである。対応は $T''$ について自然なので、$F_\eta$ は $T'$ で表される。$T=\bigcup_iT_{i\eta}$ なので $T'\to T$ は局所化射で、$\mathcal S$ に属する。
段 4(判定の前提と降下の条件).本書『4-1 局所化射と貼り合わせの商』の主結果「局所化射の基本性質」の (v) により、$\mathcal S$ は $(\mathrm{An})_{/S}$ で底変換で安定で、元は普遍有効エピである。この (v) は、$(\mathrm{An})$ で普遍有効エピな $S$ 射が $(\mathrm{An})_{/S}$ でも普遍有効エピであること(本書『0-2 圏と前層』の補題「スライス圏」の (4))に依る。上の定理(局所的な関手の言い換え)の b により、$\mathcal S$ の元は $G$ 有効降下の射である。
段 5(同値の対の各片).段 3 により $u$ は表現可能な射で、本書『3-2 商と表現可能性の主定理』の主結果「ファイバー積が定める同値の対」により、$F\times_GF$ は対象 $R$ で表され、二つの射影 $p_1,p_2\colon R\rightrightarrows X$ は $(\mathrm{An})_{/S}$ の同値の対で、$r\mapsto(p_1r,p_2r)$ により $\mathrm{Hom}_S(T'',R)$ は $u(x)=u(y)$ となる組 $(x,y)\in F(T'')^2$ の全体と一対一に対応する。$R_{ij}=p_1^{-1}(X_i)\cap p_2^{-1}(X_j)$ とし、$\eta_i=u_i(\xi_i)\in G(X_i)$ と置く。$X_i$ 上の対象 $t\colon T''\to X_i$ について、$p_1r=t$(を $X$ への射とみたもの)となる $r\colon T''\to R_{ij}$ は、$p_2r$ が $X_j$ を経由する組 $(t,y)$、すなわち $u_i(t)=u_j(b)$ となる $b\in F_j(T'')$ と一対一に対応する。$u_i(t)=G(t)(\eta_i)$ なので、これは $b\in F_{j,\eta_i}(T'')$ ということであり、$p_1$ で $X_i$ 上の対象とみた $R_{ij}$ は、$u_j$ の $\eta_i$ の上のファイバー $F_{j,\eta_i}$ を表す。a を $T=X_i$、$\eta=\eta_i$ に当てると、$F_{j,\eta_i}$ は $X_i$ の開部分空間でも表される。本書『1-1 米田の対応と表現可能関手』の主結果「普遍問題の解の一意性」により、$R_{ij}$ はその開部分空間と $X_i$ 上で同型で、$p_1|_{R_{ij}}\colon R_{ij}\to X_i$ は開はめ込みである。
段 6(同値の対の有効性).本書『4-1 局所化射と貼り合わせの商』の主結果「相対的な貼り合わせの商」の (1) により $(p_1,p_2)$ は $(\mathrm{An})$ の同値の対でもあり、段 5 により主結果「はめ込みで局所的な同値の対の商」の条件 (ii) を族 $(X_i)$ で満たす。主結果「相対的な貼り合わせの商」の (2) により、$R$ は $(\mathrm{An})_{/S}$ で有効で、商射 $X\to X/R$ は $S$ 射である局所化射、すなわち $\mathcal S$ の元である(余等化子の選び方を変えても、主結果「局所化射の基本性質」の (i)(iii) により $\mathcal S$ に属する)。
段 7(判定の適用).段 3〜6 により、本書『3-2 商と表現可能性の主定理』の主結果「商による表現可能性の判定」の前提と三つの条件が成り立つ。ゆえに $G$ は組 $(Y,\eta_Y)$ で表され、$u$ を表す射 $f\colon X\to Y$ は $\mathcal S$ に属する。
段 8($f_i$ は開はめ込み).$uv_i=u_i$ なので、$u_i$ を表す射は $f_i=f\circ(X_i\to X)$ である(本書『1-1 米田の対応と表現可能関手』の主結果「点の関手の充満忠実性」)。本書『2-2 ファイバーと表現可能な射』の主結果「表現可能な関手の間の射のファイバー」により、$F_{i\eta_Y}$ は $X_i\times_YY=X_i$(構造射 $f_i$)で表される。a を $T=Y$、$\eta=\eta_Y$ に当てると、$F_{i\eta_Y}$ は $Y$ の開部分空間 $Y_i$ でも表され、$Y=\bigcup_iY_i$ である。普遍問題の解の一意性により $X_i$ と $Y_i$ は $Y$ 上で同型で、$f_i$ は同型と包含の合成、すなわち像 $Y_i$ の開はめ込みである。像は $Y$ を覆う。

証明の段 5 が、原論文の証明と違う所である。原論文はここで、射影 $p_1$ が $\mathcal S$ の元であることから命題 5.3 を当てるが、命題 5.3 の条件は与えた分解について開はめ込みを求めるので、それでは足りない。

原論文の段と局所化射

原論文の証明は、第 4 節で注意したとおり $p_1$ で $X$ 上の対象とみた $R$ がファイバー $F_{\eta_X}$ を表すので、条件 a により $p_1$ は $\mathcal S$ に属し、命題 5.3 を当てれば同値の対の有効性が出る、と進む(印字 11-26)。しかし命題 5.3(本書『4-1 局所化射と貼り合わせの商』の主結果「はめ込みで局所的な同値の対の商」)の条件 (ii) は、$X$ の与えた分解 $(X_i)$ について、$p_1$ の各片 $R_{ij}$ への制限が $X_i$ への開はめ込みであることを求める。$p_1$ が局所化射であることは、$R$ の異なる片が $X_i$ の同じ点の上に重なることを許すので、これだけでは出ない。実際、$p_1$ が局所化射でありながら、どの分解についても条件 (ii) が成り立たない同値の対がある(下の反例「反例:局所化射というだけでは貼り合わせの条件は満たされない」)。本書は段 5 で、条件 a を $T=X_i$ と $\eta=u_i(\xi_i)$ に当て、$R_{ij}$ が $X_i$ の開部分空間で表されるファイバーを表すことから (ii) を直接導いた。原論文の推論のままでは結論に届かない段で、主張そのものは正しい。

原論文の段と底の上の圏

原論文は、判定の前提が命題 5.2 の (ii)(iv) により成り立つと書く(印字 11-26)。命題 5.2 は $(\mathrm{An})$ の命題で、ここで要るのは $(\mathrm{An})_{/S}$ の中での同じ主張である。$(\mathrm{An})_{/S}$ のファイバー積は $(\mathrm{An})$ のものと同じで、$(\mathrm{An})$ で普遍有効エピな $S$ 射は $(\mathrm{An})_{/S}$ でも普遍有効エピなので(本書『0-2 圏と前層』の補題「スライス圏」の (2)(4))、一行で埋まる。本書はこれを本書『4-1 局所化射と貼り合わせの商』の主結果「局所化射の基本性質」の (v) として示してから使った(段 4)。原論文が確かめを省いた段である。

印字の読み(命題 5.6 と系 5.7)
  1. 命題 5.6 の条件 a は、ファイバー $F_{i\eta}$ を表す開集合を $T_i$ と印字し、次の式で $T_{i\eta}$ と書く(印字 11-25)。本書は $T_{i\eta}$ に揃えた。
  2. 同じ証明は、条件 a の確かめで「関手 $F$ は $T'$ で表される」と印字する(印字 11-26)。表されるのはファイバー $F_\eta$ で、上の証明の段 3 のとおりである。
  3. 系 5.7 の証明は、構造射を $g\colon Y\to S$ と印字するが、文脈から $g\colon T\to S$ と読む。同じ段の「関手 $F_i$ は開集合 $g^{-1}(S_i)$ で表される」は $F_{i\eta}$ と読む。命題 5.6 の条件を引く「(5.6), (ii) (a)」の (ii) はかすれているが (ii) と読む(いずれも印字 11-26)。
  4. 命題 5.6 の (i) から (ii) を、原論文は補題 3.4(本書『2-2 ファイバーと表現可能な射』の主結果「表現可能な関手の間の射のファイバー」)から明らかとする(印字 11-25)。

添字集合 $I$ が空の場合も、上の証明はそのまま通る。このとき a により空でない $T$ で $G(T)$ は空で、b により $G(\emptyset)$ は一点なので、$G$ は空の解析空間の点の前層 $h_\emptyset$ に同型で、(i) は $Y=\emptyset$ で成り立つ。ここで空の被覆の約束が効いている。約束を外すとこの場合が偽になることは、下の反例で示す。

底の開被覆による判定

主結果 3 を、底 $S$ の開被覆 $(S_i)$ から作る開部分関手に当てると、表現可能性が底の上で局所的な性質であることが分かる。$(\mathrm{An})_{/S_i}$ は、$(\mathrm{An})_{/S}$ の中の $S_i$ 上の対象の圏と同じものとみる(本書『0-2 圏と前層』の補題「スライス圏」の (3))。前層 $G$ の $(\mathrm{An})_{/S_i}$ への制限を $G_i=G_{/S_i}$ と書く。$T$ が $S_i$ 上の対象なら $G_i(T)=G(T)$ である。

底の開被覆による表現可能性の判定

$(S_i)_{i\in I}$ を $S$ の開被覆、$G$ を $(\mathrm{An})_{/S}$ 上の前層とする。$G$ が表現可能であることは、$G$ が局所的で、各 $G_i$ が $(\mathrm{An})_{/S_i}$ 上で表現可能であることと同値である。

段 1(必要性).$G$ が $Y$ で表されるとする。上の定理(表現可能な関手は局所的)により $G$ は局所的である。本書『2-1 制限と底変換』の主結果「スライス圏への制限の表現可能性」を圏 $(\mathrm{An})_{/S}$ と対象 $S_i$ に当てると、$G_i$ が表現可能であることは $(\mathrm{An})_{/S}$ で積 $Y\times S_i$、すなわち $Y\times_SS_i$ が存在することと同値である(本書『0-2 圏と前層』の補題「スライス圏」の (2))。$S_i\to S$ は開はめ込みなので、このファイバー積は開部分空間 $p_Y^{-1}(S_i)$ として存在する(本書『0-4 解析空間』の命題「開はめ込みの底変換と非交和」の (1)(3))。
段 2(開部分関手の族).以下、$G$ が局所的で各 $G_i$ が表現可能とする。$(\mathrm{An})_{/S}$ 上の前層 $F_i$ を、$p_T(T)\subset S_i$ なら $F_i(T)=G(T)$、そうでなければ $F_i(T)=\emptyset$ と定める。$T'\to T$ があり $p_T(T)\subset S_i$ なら $p_{T'}(T')\subset S_i$ なので、$F_i$ は $G$ の部分前層で、包含を $u_i\colon F_i\to G$ とする。$G_i$ を表す $S_i$ 上の対象 $Y_i$ を、$S_i\subset S$ との合成で $S$ 上の対象とみると、$Y_i$ は $F_i$ を表す。実際、$p_T(T)\not\subset S_i$ なら $S$ 射 $T\to Y_i$ は無く、$p_T(T)\subset S_i$ なら $T$ は $S_i$ 上の対象で、$S$ 射 $T\to Y_i$ は $S_i$ 射と同じなので、$\mathrm{Hom}_S(T,Y_i)=\mathrm{Hom}_{S_i}(T,Y_i)\cong G_i(T)=F_i(T)$ である。
段 3(主結果 3 の条件 a).$\eta\in G(T)$ と $T$ 上の対象 $q\colon T''\to T$ について、$u_i$ は包含なので、$F_{i\eta}(T'')$ は $p_Tq(T'')\subset S_i$ なら一点 $\{G(q)(\eta)\}$、そうでなければ空である。$p_Tq(T'')\subset S_i$ は $q(T'')\subset p_T^{-1}(S_i)$ と同じなので、上の補題(開部分空間が表す前層)により、$F_{i\eta}$ は開部分空間 $T_{i\eta}=p_T^{-1}(S_i)$ で表される。$(S_i)$ が $S$ を覆うので、$T=\bigcup_iT_{i\eta}$ である。
段 4(結論).主結果 3 の条件 b は仮定である。主結果 3 により $G$ は表現可能である。

原論文は十分性だけを証明し、必要性は述べるにとどまる(印字 11-26)。段 1 が必要性の確かめである。主結果 3 は分離性を課さない読みの下で証明したので、この定理も同じ読みの下で証明したことになる。ただし結論そのものは、分離的な解析空間だけの圏で読んでも正しい(下の命題「分離的な読みでの底の開被覆による判定」)。

積の存在との関係

原論文は注意 5.8 で、命題 5.6 が解析空間の積の存在に依らないと述べる。これは証明についての主張なので、証明を追って確かめる。

貼り合わせの判定は積の存在に依らない

主結果 3 の証明は、解析空間の圏に任意の二つの射のファイバー積が存在すること(本書『0-4 解析空間』の定理「解析空間のファイバー積の存在」)を使わない。証明に現れるファイバー積は、開はめ込みに沿うもの、局所化射に沿うもの、前層の表現可能性から存在が出るものだけである。

主結果 3 の証明の各段で使ったファイバー積を挙げる。段 1 の $X_i\times_YT$ は開はめ込み $f_i$ に沿うもので、本書『0-4 解析空間』の命題「開はめ込みの底変換と非交和」の (1) により存在する。段 4 で引く本書『4-1 局所化射と貼り合わせの商』の主結果「局所化射の基本性質」(v) の中の局所化射の底変換と $X\times_YX$ は、同じ主結果と補題「局所化射の自分自身とのファイバー積」により、開はめ込みの底変換と非交和だけから存在する。段 5 の $R$ は $F\times_GF$ を表す対象で、その存在は段 3 で示した $u$ の表現可能性から出る(本書『3-2 商と表現可能性の主定理』の主結果「ファイバー積が定める同値の対」の前提は、$F$ と $u$ の表現可能性だけである)。段 6 で使う $X\times_{X/R}X$ は局所化射に沿う。段 7 で使う本書『3-2 商と表現可能性の主定理』の主結果「商による表現可能性の判定」は、任意の圏についての定理で前提にファイバー積の存在を含まないが、判定の証明の中のファイバー積は $\mathcal S$ の元に沿うもので、段 4 の前提から存在する。段 1・8 で使う本書『2-2 ファイバーと表現可能な射』の主結果「表現可能な関手の間の射のファイバー」も、任意の圏についての定理で、前提にファイバー積の存在を含まない(後者は、ファイバー積が存在するときに表す対象を与える)。段 8 の $X_i\times_YY$ は $X_i$ 自身である。ゆえに、どの段も連作第 III 回の定理を使わない。

原論文は同じ注意で、前の講演が積の存在を証明したとき命題 5.6 の直接の証明を実質的に繰り返していた、と先に述べ、命題 5.6 はその存在証明に使えたはずだ、と結ぶ(印字 11-26)。

前の講演についての所見 [rem-4-2-previous-exposé]

注意 5.8 の「前の講演」は、連作第 III 回 Gro61iii で、その定理 2.1 が解析空間のファイバー積の存在である(本書『0-4 解析空間』の定理「解析空間のファイバー積の存在」)。原論文の第一文の所見(前の講演の積の存在証明が命題 5.6 の直接の証明を実質的に繰り返していたこと)は、前の講演の証明の方針を評価する所見で、本講演で証明すべき主張の形をしていないので、本書は主結果にしない。本書は第 III 回の証明を開いて比べていない。上の定理(貼り合わせの判定は積の存在に依らない)は、この所見に続く第二文の前半(命題 5.6 が積の存在に依らないこと)だけを確かめたものである。

例と反例

主結果 3 の二つの条件はどちらも外せない。条件 a を外す例は、$S=e$、$G=h_e$、$I=\emptyset$(族 $(u_i)$ が空)とすればよい。$G$ は主結果 1 により局所的で条件 b は成り立つが、$G(e)$ が空でないので条件 a(空の族の像の和 $\emptyset$ が $e$ を覆うこと)は成り立たず、(i) は $Y=\emptyset$ を要するので偽である。以下では、まず局所性を外した反例を置き、次に原論文の証明の段を検討する例、空の被覆の約束と分離性の約束を外した反例を置く。

反例:局所的でない関手は開部分関手で覆われても表現可能とは限らない

主結果 3 の条件 b(局所性)を外した例である。$S=e$(一点に $k$ を与えた空間。$(\mathrm{An})$ の終対象なので $(\mathrm{An})_{/S}=(\mathrm{An})$)とし、前層 $G$ を、空でない $T$ で $G(T)=\{0,1\}$、$G(\emptyset)=\{*\}$ と定める。制限は、空でない空間の間では恒等写像、$\emptyset$ への制限は一点への写像である($T\to\emptyset$ があれば $T=\emptyset$ なので、前層になる)。$F_1=F_2=h_S$(どの $T$ でも一点)とし、$u_i\colon h_S\to G$ を $G(S)$ の元 $i-1$ に対応する射とする。
(a) 条件 a が成り立つこと.空でない $T$ と $\eta\in G(T)$ について、$T$ 上の $T''$ での $F_{i\eta}(T'')$ は、$T''=\emptyset$ なら一点、$T''\ne\emptyset$ なら $\eta=i-1$ のとき一点、そうでないとき空である。上の補題(開部分空間が表す前層)により、$F_{i\eta}$ は $\eta=i-1$ なら $T$ 自身で、そうでなければ開部分空間 $\emptyset$ で表される。$\eta$ はどちらか一方の $i$ で $i-1$ に等しいので、二つの開集合の和は $T$ である。$T=\emptyset$ ではどちらも $\emptyset$ で表される。
(b) $G$ は表現可能でない.二点の空間 $e\sqcup e$ で $G(e\sqcup e)=\{0,1\}$ は $G(e)\times G(e)$(四点)と一致しないので、$G$ は和を積に移さず、上の定理(局所的な関手の言い換え)により局所的でない。上の定理(表現可能な関手は局所的)により、$G$ は表現可能でない。

次の例は主張の反例ではない。原論文の証明が同値の対の有効性を確かめる段の推論(射影が局所化射なら命題 5.3 が当てはまる)が、一般には成り立たないことを示す。

反例:局所化射というだけでは貼り合わせの条件は満たされない

本書『4-1 局所化射と貼り合わせの商』の主結果「はめ込みで局所的な同値の対の商」の条件 (ii) を、射影 $p_1$ が局所化射であるという条件に取り替えると成り立たない例である。$k=\mathbf C$、$X=E^1-\{0\}$ とし、$R=X\sqcup X$ の第一の写しの上で $p_1=p_2=\mathrm{id}$、第二の写しの上で $p_1=\mathrm{id}$、$p_2=-\mathrm{id}$($z\mapsto-z$。$E^1$ の自己同型の制限。本書では証明しない)とする。
(a) 同値の対であること.$r\colon T\to R$ は $T$ の開かつ閉な分解 $T=A\sqcup B$ と射 $A\to X$、$B\to X$ の組で、像 $(x,y)$ は $A$ の上で $y=x$、$B$ の上で $y=-x$ である。$X$ の点は $z\ne-z$ を満たすので、$A$、$B$ は $T$ の点 $t$ で $y(t)=x(t)$、$y(t)=-x(t)$ となるものの全体として $(x,y)$ で決まり、$r$ も決まる。像は、開かつ閉な分解で $y=\pm x$ となる組の全体で、符号の積を考えれば同値関係である。
(b) $p_1$ は局所化射である.二つの写しへの制限はどちらも恒等射で、全射である。
(c) 条件 (ii) はどの分解でも成り立たない.$X$ は連結なので(本書では証明しない)、互いに素な開集合による $X$ の被覆は、空でない片が $X$ 自身の一つだけで、$R_{11}=R\to X$ は底の写像が単射でなく、開はめ込みでない。ゆえに、同じ定理により、$R$ が有効で商射が局所化射になることはない。同じ現象($p_1$ が局所化射でも条件 (ii) がどの分解でも成り立たないこと)は、本書『4-1 局所化射と貼り合わせの商』の反例「反例:無理数の平行移動の同値関係」にも現れる。
上の命題 5.6 の証明の段 5 では、$R_{ij}$ が開部分空間で表されるファイバーを表すことが、条件 a から直接出る。この例の $R$ には、それに当たる性質が無い。

反例:空の被覆を除くと判定が崩れる

局所性と和の条件から空の被覆・空の和を除く(空でない被覆・族についてだけ課す)と、主結果 3・4 が境界の場合に崩れる例である。$(\mathrm{An})_{/S}$ 上の前層 $G$ を、空でない $T$ で $G(T)=\emptyset$、$G(\emptyset)=\{0,1\}$ と定める($T'\to\emptyset$ があれば $T'=\emptyset$ なので、制限は恒等写像か空写像で、前層になる)。
(a) 空でない被覆についての層の条件.空でない開集合 $U$ の被覆には空でない片があるので、両辺とも空集合で条件が成り立つ。空集合 $\emptyset$ を空でない族(片はすべて $\emptyset$)で覆う場合は、制限がすべて恒等写像なので、等化子は $G(\emptyset)$ の対角で、条件が成り立つ。
(b) 表現可能でない.$G$ が $Y$ で表されるなら、$G(Y)$ は一点を含むので $Y=\emptyset$ だが、$h_\emptyset(\emptyset)$ は一点で $G(\emptyset)$ は二点である。
(c) 主結果 3 が崩れること.$I=\emptyset$ とする。空でない $T$ では $G(T)$ に元が無く、$T=\emptyset$ では空の族の和が $\emptyset=T$ なので、条件 a が成り立つ。(a) により弱めた条件 b も成り立つが、(b) により (i) は成り立たない。$I$ が空でなければ、a を $T=\emptyset$ に当てると $G(\emptyset)$ の元はすべて $u_i$ の像になり($F_i(\emptyset)$ は一点)、$G(\emptyset)$ は一点になるので、崩れるのは $I=\emptyset$ の場合だけである。
(d) 主結果 4 が崩れること.$S=\emptyset$ とすると $(\mathrm{An})_{/S}$ の対象は $\emptyset$ だけで、$G$ は上と同じ前層である。$S$ の空の被覆をとると、各 $G_i$ が表現可能という条件は空で、$G$ は弱めた意味で局所的だが、(b) により表現可能でない。
空の被覆を含める本書の約束の下では、どちらの場合も $G(\emptyset)$ は一点で $G\cong h_\emptyset$ となり、主張は成り立つ。

最後に、分離性を課す読みで主結果 3 が偽になる例と、それでも主結果 4 の結論は正しいことを述べる。以下 $k$ の絶対値は自明でないとし、$(\mathrm{An})^{\mathrm{sep}}$ を分離的な解析空間の充満部分圏とする。

反例:分離的な読みでは局所的な関手の判定が崩れる

主結果 3 の圏 $(\mathrm{An})_{/S}$ を、分離的な解析空間だけの圏に取り替えた例である。$S=e$ とし、$L$ を本書『0-4 解析空間』の例「原点を二重にした直線」、$j_1,j_2\colon E^1\to L$ を同じ例の二つの開はめ込みとする。$L$ は解析空間だが分離的でない。$(\mathrm{An})^{\mathrm{sep}}$ 上の前層 $G$ を $G(T)=\mathrm{Hom}(T,L)$ と定め、$F_1=F_2=h_{E^1}$、$u_m$ を $j_m$ との合成とする。
(a) 条件 a と b が成り立つこと.$\eta\colon T\to L$ について、$F_{m\eta}(T'')$ は $j_ma=\eta q$ となる $a\colon T''\to E^1$ の全体で、$j_m$ は開はめ込みなので、$\eta q(T'')\subset j_m(E^1)$ ならただ一つ、そうでなければ無い。分離的な空間の開部分空間は分離的なので、上の補題(開部分空間が表す前層)の議論により、$F_{m\eta}$ は開部分空間 $\eta^{-1}(j_m(E^1))$ で表され、二つは $T$ を覆う。$G$ の局所性は、射 $U\to L$ の貼り合わせ(本書『0-3 層と環付き空間の貼り合わせ』の定理「環付き空間と射の貼り合わせ」)による。
(b) $G$ は $(\mathrm{An})^{\mathrm{sep}}$ で表現可能でない.分離的な $Y$ と $\eta_Y\colon Y\to L$ が $G$ を表すとし、$j_m=\eta_Y\circ f_m$ となる $f_m\colon E^1\to Y$ をとる。$U=E^1-\{0\}$ の上で $j_1=j_2$ なので、表現の一意性から $f_1|_U=f_2|_U$ である。$\eta_Yf_1(0)=0'\ne0''=\eta_Yf_2(0)$ なので $f_1(0)\ne f_2(0)$ で、交わらない開近傍 $W_1$、$W_2$ がとれる。$f_1^{-1}(W_1)\cap f_2^{-1}(W_2)$ は $0$ の開近傍で $0$ でない点 $u$ を含み、$f_1(u)=f_2(u)\in W_1\cap W_2$ となって矛盾する。
ゆえに分離的な読みでは主結果 3 の (ii) から (i) が崩れる。分離性を課さない本書の読みでは、$G$ は $L$ で表され、(i) が成り立つ。

分離的な読みでの底の開被覆による判定

$S$ を分離的な解析空間、$(S_i)$ をその開被覆、$G$ を分離的な $S$ 上の解析空間の圏上の前層とする。$G$ が分離的な対象で表されることは、$G$ が局所的で(分離的な $T$ の開集合の上で層で)、各 $S_i$ の上への制限 $G_i$ が分離的な対象で表されることと同値である。

必要性は主結果 1 と主結果 4 の段 1 と同じで、開部分空間 $p_Y^{-1}(S_i)$ は分離的である。十分性を示す。$G_i$ を表す組を $(Y_i,\eta_i)$、$S_{ij}=S_i\cap S_j$、$Y_{ij}=p_{Y_i}^{-1}(S_{ij})$ とする。$S_{ij}$ 上の対象から $Y_i$ への $S$ 射は像が $Y_{ij}$ に入るので $Y_{ij}$ を経由する(本書『0-4 解析空間』の命題「開はめ込みの底変換と非交和」の証明の段 1)。ゆえに $Y_{ij}$ は $\eta_i$ の制限とともに $G$ の $S_{ij}$ の上への制限を表し、$Y_{ji}$ も同じ前層を表す。本書『1-1 米田の対応と表現可能関手』の主結果「普遍問題の解の一意性」により、普遍元を保つ $S$ 同型 $\varphi_{ji}\colon Y_{ij}\to Y_{ji}$ がただ一つあり、同じ一意性から $\varphi_{ii}=\mathrm{id}$ と三重の交わりの上のコサイクル条件が成り立ち、$\varphi_{ji}$ は $S_{ijk}$ の上の部分を $S_{ijk}$ の上の部分へ移す。本書『0-3 層と環付き空間の貼り合わせ』の定理「環付き空間の貼り合わせ」と「環付き空間と射の貼り合わせ」により、$Y_i$ を貼り合わせた解析空間 $Y$ と構造射 $p\colon Y\to S$ が得られ、$p^{-1}(S_i)$ は $Y_i$ の像である。$Y$ は分離的である。実際、二点の $S$ での像が異なれば $S$ の交わらない開集合の逆像で分けられ、像が同じ点 $s\in S_i$ なら二点はともに分離的な開集合 $p^{-1}(S_i)$ に入り、その中で分けられる。$\eta_i$ は重なりで一致するので、$G$ の局所性により $\eta\in G(Y)$ に貼り合わさる。分離的な $T$ について $g\mapsto G(g)(\eta)$ が $\mathrm{Hom}_S(T,Y)\to G(T)$ の全単射であることは、$T$ の開被覆 $(p_T^{-1}(S_i))$ の各片と重なりの上では $(Y_i,\eta_i)$ が表すことから成り立ち、両辺が $T$ の上の層なので $T$ の上でも成り立つ。

主結果 3 が分離的な読みで崩れるのは、(ii) から作る空間が分離的とは限らないからである。底の開被覆から作る場合は、上の証明のとおり、底の分離性が貼り合わせた空間の分離性を保証する。

その後の発展

以下は後代の結果の紹介である(2026 年時点の一般的な記述。本書は各文献の該当箇所を確かめていない)。

  • ベクトル束と Grassmann 束(1961 年):連作第 V 回 Gro61v は、ベクトル束・Grassmann 束・旗束を $(\mathrm{An})_{/S}$ 上の前層として定め、その表現可能性を、局所的な関手であることと、底の開被覆や標準の開部分関手の上で表現可能であることから、主結果 3・4 の形で示すと説明される(本書は第 V 回を開いていない)。
  • スキームの関手の判定:同じ形の判定は、スキームの圏の上の Zariski 位相についての層で、表現可能な開部分関手に覆われるものは表現可能である、という形で、EGA I の新版 EGA1n、Demazure–Gabriel DG70、Stacks Project Stacks に述べられている、とされる。後代の言葉では、局所的な関手は解析空間の圏に開被覆の位相を入れたときの層に当たる。

原論文との対応表

本頁が対応する原論文は Techniques de construction en géométrie analytique IV Gro61iv の第 5 節の中ほどである。

本頁原論文印字頁
背景と動機第 1 節の目的、補題 5.5 の直後の一文11-01、11-24
定義(局所的な関手)、定理(表現可能な関手は局所的)定義 5.4 と直後の言い換え、「自明に成り立つ」の一句11-24
定義(和を積に移す前層と有効降下の射)補題 5.5 の a・b、定義 4.611-24、11-17
定理(局所的な関手の言い換え)、注意(原論文の段と補題の読み)補題 5.511-24
定義(射のファイバーと開部分空間による表現)、補題(開部分空間が表す前層)命題 5.6 の条件 a(第 3 節のファイバーへの送り)11-25
定理(開部分関手で覆われる局所的な関手の表現可能性)、注意(原論文の段と局所化射)、注意(原論文の段と底の上の圏)、注意(印字の読み(命題 5.6 と系 5.7))命題 5.6 とその証明11-24〜11-26
定理(底の開被覆による表現可能性の判定)系 5.7 とその証明11-26
定理(貼り合わせの判定は積の存在に依らない)、注意(前の講演についての所見)注意 5.811-26
反例(反例:局所的でない関手は開部分関手で覆われても表現可能とは限らない)、反例(反例:局所化射というだけでは貼り合わせの条件は満たされない)、反例(反例:空の被覆を除くと判定が崩れる)原論文に無い—
反例(反例:分離的な読みでは局所的な関手の判定が崩れる)、命題(分離的な読みでの底の開被覆による判定)原論文に無い。連作第 II 回の定義 2.1 の直後の注意第 II 回 9-09

参考文献

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