三角関数形のCevaの定理(trigonometric form of Ceva's theorem)とは、三角形 $ABC$ の辺 $BC,CA,AB$ 上の頂点と異なる点 $D,E,F$ について、Ceva 線 $AD,BE,CF$ が 1 点で交わることと $\frac{\sin\angle BAD}{\sin\angle DAC}\cdot\frac{\sin\angle CBE}{\sin\angle EBA}\cdot\frac{\sin\angle ACF}{\sin\angle FCB}=1$ が同値であるという定理である。三角形の面積を 2 通りに書くと、辺の比の積と角の正弦の比の積はいつも等しい。角の二等分線で折り返すと正弦の比が逆数になるので、内部の点には等角共役点がある。鋭角三角形の外心と垂心、重心と類似重心はその対である。
前提知識: Cevaの定理(高校数学), 正弦定理(高校数学), 三角形の面積の公式
Cevaの定理(高校数学) は、三角形 $ABC$ の頂点と向かい合う辺の上の点を結ぶ 3 本の線分が 1 点で交わる条件を、3 つの辺が分けられる比 $\dfrac{BD}{DC}$、$\dfrac{CE}{EA}$、$\dfrac{AF}{FB}$ で述べた定理である。ところが、図形の問題では「辺をどんな比に分けるか」より「頂点の角をどう分けるか」の方が分かっていることが多い。角の二等分線や垂線は、角で決まる線だからである。
そこで、頂点の角が 2 つに分けられるときの角の正弦($\sin$)の比を掛けてみる。
Cevaの定理(高校数学) の最初の例と同じく、$A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(0,6)$ と、三角形の内部の点 $P(2,3)$ をとる。$\angle A=90^\circ$、$\angle B=\angle C=45^\circ$ である。
(1) 頂点 $A$。$\overrightarrow{AP}=(2,3)$ で $AP=\sqrt{13}$ である。$AB$ は $x$ 軸の正の向きなので、$\angle BAP$ は $\overrightarrow{AP}$ が $x$ 軸となす角であり、$\sin\angle BAP=\dfrac{3}{\sqrt{13}}$、$\cos\angle BAP=\dfrac{2}{\sqrt{13}}$ である。$\angle PAC=90^\circ-\angle BAP$ なので $\sin\angle PAC=\cos\angle BAP=\dfrac2{\sqrt{13}}$ である。よって
$$
\frac{\sin\angle BAP}{\sin\angle PAC}=\frac{3/\sqrt{13}}{2/\sqrt{13}}=\frac32
$$
である。
(2) 頂点 $B$。$\overrightarrow{BP}=(-4,3)$ で $BP=5$ である。$\overrightarrow{BA}$ は $x$ 軸の負の向きなので、$\sin\angle PBA=\dfrac35$、$\cos\angle PBA=\dfrac45$ である。$\angle CBP=45^\circ-\angle PBA$ なので、加法定理 により
$$
\sin\angle CBP=\sin45^\circ\cos\angle PBA-\cos45^\circ\sin\angle PBA=\frac{\sqrt2}2\left(\frac45-\frac35\right)=\frac{\sqrt2}{10}
$$
である。よって $\dfrac{\sin\angle CBP}{\sin\angle PBA}=\dfrac{\sqrt2/10}{3/5}=\dfrac{\sqrt2}{6}=\dfrac1{3\sqrt2}$ である。
(3) 頂点 $C$。$\overrightarrow{CP}=(2,-3)$ で $CP=\sqrt{13}$ である。$\overrightarrow{CA}$ は $y$ 軸の負の向きなので、$\sin\angle ACP=\dfrac2{\sqrt{13}}$、$\cos\angle ACP=\dfrac3{\sqrt{13}}$ である。$\angle PCB=45^\circ-\angle ACP$ なので
$$
\sin\angle PCB=\frac{\sqrt2}2\left(\frac3{\sqrt{13}}-\frac2{\sqrt{13}}\right)=\frac{\sqrt2}{2\sqrt{13}}=\frac1{\sqrt{26}}
$$
である。よって $\dfrac{\sin\angle ACP}{\sin\angle PCB}=\dfrac{2/\sqrt{13}}{1/\sqrt{26}}=2\sqrt2$ である。
3 つを掛けると
$$
\frac{\sin\angle BAP}{\sin\angle PAC}\cdot\frac{\sin\angle CBP}{\sin\angle PBA}\cdot\frac{\sin\angle ACP}{\sin\angle PCB}=\frac32\cdot\frac1{3\sqrt2}\cdot2\sqrt2=1
$$
になる。
A(0,0)、B(6,0)、C(0,6)、P(2,3)。各頂点の角が Ceva 線で 2 つに分けられ、分けられた角の正弦の比 3/2、1/(3√2)、2√2 の積は 1 になる
図 1 の 3 つの比は、辺の比 $\dfrac{BD}{DC}=\dfrac32$、$\dfrac{CE}{EA}=\dfrac13$、$\dfrac{AF}{FB}=2$(Cevaの定理(高校数学) で計算した値)とは、2 つ目と 3 つ目が違う。それでも積は同じ $1$ である。
2 つの例で、分けられた角の正弦の比の積はどちらも $1$ になった。この記事で答える問いは次の 4 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 面積 $\frac12bc\sin A$ と正弦定理 | 比の補題:辺の比を角の比に直す | 辺の比=(隣り合う 2 辺の比)×(角の正弦の比) |
| 辺の比の積が $1$(Ceva) | 三角関数形の Ceva の定理 | 同じ条件の言い換え |
| $\dfrac{\sin\theta}{\sin(C-\theta)}$ は $\theta$ とともに増える | 角の比から角が決まる | 頂点を通る直線は 1 つの比で決まる |
| 角の二等分線で折り返す | 等角共役点 | 重心座標 $(\alpha:\beta:\gamma)\mapsto\left(\dfrac{a^2}\alpha:\dfrac{b^2}\beta:\dfrac{c^2}\gamma\right)$ |
三角形 $ABC$ の辺 $BC$、$CA$、$AB$ の上に、それぞれ頂点と異なる点 $D$、$E$、$F$ をとる。頂点と向かい合う辺の上の点を結ぶ線分 $AD$、$BE$、$CF$ を Ceva 線 という(Cevaの定理(高校数学))。
Ceva 線 $AD$ は頂点 $A$ の角 $\angle BAC$ を 2 つの角 $\angle BAD$ と $\angle DAC$ に分け、$\angle BAD+\angle DAC=\angle BAC$ である。この記事では
$$
\alpha_1=\angle BAD,\quad \alpha_2=\angle DAC,\qquad \beta_1=\angle CBE,\quad \beta_2=\angle EBA,\qquad \gamma_1=\angle ACF,\quad \gamma_2=\angle FCB
$$
と書く。どの頂点でも、頂点を $A\to B\to C\to A$ の順に一周するとき、「その頂点の次に来る頂点の側の角」を添字 $1$、「その頂点の直前の頂点の側の角」を添字 $2$ にしている($A$ では次の $B$ の側が $\alpha_1$、$B$ では次の $C$ の側が $\beta_1$、$C$ では次の $A$ の側が $\gamma_1$)。6 つの角はどれも $0^\circ$ より大きく $180^\circ$ より小さいので、正弦はどれも正である。
ex-tceva-start では $\alpha_1=\angle BAP$、$\alpha_2=\angle PAC$($P$ は線分 $AD$ の上にあるので $\angle BAD=\angle BAP$)で、$\alpha_1+\alpha_2=90^\circ$ である。$\beta_1+\beta_2=\gamma_1+\gamma_2=45^\circ$ である。
Ceva 線の足が辺を分ける比は、頂点で分けられた角の正弦と、頂点をはさむ 2 辺で書ける。これがこの記事の中心の道具である。
点 $D$ が辺 $BC$ の上にあり、$D\ne B$、$D\ne C$ とする。このとき
$$
\frac{BD}{DC}=\frac{AB\cdot\sin\angle BAD}{AC\cdot\sin\angle DAC}
$$
である。
方針:三角形 $ABD$ と $ADC$ の面積の比を、「底辺の比」と「2 辺とその間の角」の 2 通りに書く。
段 1(底辺の比)。三角形 $ABD$ と $ADC$ は頂点 $A$ を共有し、底辺 $BD$、$DC$ は同じ直線 $BC$ の上にある。$A$ から直線 $BC$ に下ろした垂線の長さを $h$ とすると、どちらの三角形の高さも $h$ なので
$$
\frac{\triangle ABD}{\triangle ADC}=\frac{\frac12\cdot BD\cdot h}{\frac12\cdot DC\cdot h}=\frac{BD}{DC}
$$
である(三角形の面積比)。
段 2(2 辺とその間の角)。三角形の面積は「2 辺とその間の角の正弦の積の半分」である(三角形の面積の公式)。三角形 $ABD$ の 2 辺 $AB$、$AD$ の間の角は $\angle BAD$、三角形 $ADC$ の 2 辺 $AD$、$AC$ の間の角は $\angle DAC$ なので
$$
\triangle ABD=\frac12\cdot AB\cdot AD\cdot\sin\angle BAD,\qquad \triangle ADC=\frac12\cdot AD\cdot AC\cdot\sin\angle DAC
$$
である。
段 3(比べる)。段 1 と段 2 から
$$
\frac{BD}{DC}=\frac{\triangle ABD}{\triangle ADC}=\frac{\frac12\cdot AB\cdot AD\cdot\sin\angle BAD}{\frac12\cdot AD\cdot AC\cdot\sin\angle DAC}=\frac{AB\cdot\sin\angle BAD}{AC\cdot\sin\angle DAC}
$$
である。途中で $\frac12\cdot AD$ を約分した($AD>0$)。$\square$
要点:三角形 $ABD$ と $ADC$ のそれぞれで 正弦定理(高校数学) を使う。$D$ での 2 つの角 $\angle ADB$、$\angle ADC$ が補角なので正弦が等しく、割ると約分される。
段 1(三角形 $ABD$)。正弦定理により $\dfrac{BD}{\sin\angle BAD}=\dfrac{AB}{\sin\angle ADB}$、つまり $BD=\dfrac{AB\cdot\sin\angle BAD}{\sin\angle ADB}$ である。
段 2(三角形 $ADC$)。同じく $\dfrac{DC}{\sin\angle DAC}=\dfrac{AC}{\sin\angle ADC}$、つまり $DC=\dfrac{AC\cdot\sin\angle DAC}{\sin\angle ADC}$ である。
段 3(補角)。$D$ は線分 $BC$ の内部にあるので、$\angle ADB+\angle ADC=180^\circ$ である。$\sin(180^\circ-\theta)=\sin\theta$ なので(三角比と鈍角への拡張)、$\sin\angle ADB=\sin\angle ADC$ である。
段 4(割る)。段 1 を段 2 で割ると、段 3 により分母の正弦が約分されて
$$\frac{BD}{DC}=\frac{AB\cdot\sin\angle BAD}{AC\cdot\sin\angle DAC}$$
である。$\square$
$AB=AC$ のときは、辺の比と角の正弦の比がそのまま等しい。角の二等分線では $\sin\angle BAD=\sin\angle DAC$ なので $\dfrac{BD}{DC}=\dfrac{AB}{AC}$ となり、これは 角の二等分線の定理 である。
ex-tceva-start の三角形では $AB=AC=6$、$BC=6\sqrt2$ である。
(1) 頂点 $A$:$\dfrac{AB}{AC}\cdot\dfrac{\sin\alpha_1}{\sin\alpha_2}=1\cdot\dfrac32=\dfrac32$ で、$\dfrac{BD}{DC}=\dfrac32$ と一致する。
(2) 頂点 $B$:補題を頂点 $B$ に使うと $\dfrac{CE}{EA}=\dfrac{BC\cdot\sin\angle CBE}{BA\cdot\sin\angle EBA}$ である。$\dfrac{6\sqrt2}{6}\cdot\dfrac1{3\sqrt2}=\dfrac13$ で、$\dfrac{CE}{EA}=\dfrac13$ と一致する。
(3) 頂点 $C$:$\dfrac{AF}{FB}=\dfrac{CA\cdot\sin\angle ACF}{CB\cdot\sin\angle FCB}=\dfrac{6}{6\sqrt2}\cdot2\sqrt2=2$ で、$\dfrac{AF}{FB}=2$ と一致する。
逆向きの議論では、「角の正弦の比が同じなら、角も同じ」ことが要る。
$0^\circ< C<180^\circ$ とし、$0^\circ<\theta< C$ に対して
$$
f(\theta)=\frac{\sin\theta}{\sin(C-\theta)}
$$
とおく。$f$ は $\theta$ について狭義に増加し、どの正の数 $k$ についても $f(\theta)=k$ となる $\theta$ がちょうど 1 つある。その $\theta$ は、$1+k\cos C\ne0$ なら $\tan\theta=\dfrac{k\sin C}{1+k\cos C}$ を満たし、$1+k\cos C=0$ なら $\theta=90^\circ$ である。
方針:分母を加法定理で展開し、$f(\theta)$ を $\dfrac{\cos\theta}{\sin\theta}$ だけの式に直す。
段 1(書き直す)。加法定理 により $\sin(C-\theta)=\sin C\cos\theta-\cos C\sin\theta$ である。$0^\circ<\theta< C<180^\circ$ なので $\sin\theta>0$、$\sin(C-\theta)>0$ である。分母と分子を $\sin\theta$ で割ると
$$
\frac1{f(\theta)}=\frac{\sin(C-\theta)}{\sin\theta}=\sin C\cdot\frac{\cos\theta}{\sin\theta}-\cos C
$$
である。
段 2(増加)。$g(\theta)=\dfrac{\cos\theta}{\sin\theta}$ は $0^\circ<\theta<180^\circ$ で狭義に減少する。実際、$0^\circ<\theta<\varphi<180^\circ$ なら
$$
g(\theta)-g(\varphi)=\frac{\cos\theta\sin\varphi-\sin\theta\cos\varphi}{\sin\theta\sin\varphi}=\frac{\sin(\varphi-\theta)}{\sin\theta\sin\varphi}>0
$$
である(分子は加法定理、$0^\circ<\varphi-\theta<180^\circ$ なので正)。$\sin C>0$ なので、段 1 の $\dfrac1{f(\theta)}$ は狭義に減少し、しかも正である。正の数の逆数をとると大小が入れかわるので、$f(\theta)$ は狭義に増加する。
段 3(ちょうど 1 つ)。狭義に増加するので、$f(\theta)=k$ となる $\theta$ は 2 つ以上はない。次に、$f(\theta)=k$ は $\sin\theta=k\sin(C-\theta)=k\sin C\cos\theta-k\cos C\sin\theta$、つまり
$$
(1+k\cos C)\sin\theta=k\sin C\cos\theta
$$
と同値である。右辺の $k\sin C$ は正である。$1+k\cos C=0$ なら、この式は $\cos\theta=0$ つまり $\theta=90^\circ$ と同値で、このとき $\cos C=-\dfrac1k<0$ なので $C>90^\circ$ であり、$\theta=90^\circ$ は $0^\circ<\theta< C$ を満たす。$1+k\cos C\ne0$ なら、$\cos\theta\ne0$ で割って $\tan\theta=\dfrac{k\sin C}{1+k\cos C}$ である。この式を満たし $0^\circ<\theta<180^\circ$ である $\theta$ はただ 1 つあり(正接は $0^\circ<\theta<90^\circ$ で正の値を、$90^\circ<\theta<180^\circ$ で負の値を、それぞれ 1 回ずつとる)、その $\theta$ について $\sin\theta$ と $\cos\theta$ は上の式を満たす。上の式から $\sin(C-\theta)=\dfrac{\sin\theta}k>0$ なので $C-\theta$ は $0^\circ$ と $180^\circ$ の間にあり、$\theta< C$ となる。$\square$
数学 III の微分を使うと、$f'(\theta)=\dfrac{\sin C}{\sin^2(C-\theta)}>0$ からも増加が分かる。
三角形 $ABC$ の辺 $BC$、$CA$、$AB$ の上に、それぞれ頂点と異なる点 $D$、$E$、$F$ があるとする。def-tceva-angles の記号で、次の 2 つは同値である。
方針:lem-tceva-ratio を 3 つの頂点で使うと、辺の比の積と角の正弦の比の積が、3 点が 1 点で交わるかどうかに関係なく等しいことが分かる。あとは Cevaの定理(高校数学) とその逆を使う。
段 1(3 つの比を書く)。$a=BC$、$b=CA$、$c=AB$ とする。lem-tceva-ratio を頂点 $A$ に使うと $\dfrac{BD}{DC}=\dfrac{c\sin\alpha_1}{b\sin\alpha_2}$ である。頂点の名前を $A\to B\to C\to A$ と回して、頂点 $B$、$C$ に使うと
$$
\frac{CE}{EA}=\frac{BC\cdot\sin\angle CBE}{BA\cdot\sin\angle EBA}=\frac{a\sin\beta_1}{c\sin\beta_2},\qquad \frac{AF}{FB}=\frac{CA\cdot\sin\angle ACF}{CB\cdot\sin\angle FCB}=\frac{b\sin\gamma_1}{a\sin\gamma_2}
$$
である。
段 2(掛ける)。段 1 の 3 つの式を掛けると、辺の長さ $a$、$b$、$c$ は分子と分母に 1 回ずつ現れて約分されるので
$$
\frac{BD}{DC}\cdot\frac{CE}{EA}\cdot\frac{AF}{FB}=\frac{c\,a\,b}{b\,c\,a}\cdot\frac{\sin\alpha_1}{\sin\alpha_2}\cdot\frac{\sin\beta_1}{\sin\beta_2}\cdot\frac{\sin\gamma_1}{\sin\gamma_2}=\frac{\sin\alpha_1}{\sin\alpha_2}\cdot\frac{\sin\beta_1}{\sin\beta_2}\cdot\frac{\sin\gamma_1}{\sin\gamma_2}
$$
である。この等式は、$D$、$E$、$F$ が辺の上の頂点と異なる点でありさえすれば成り立つ。
段 3(1 ⇒ 2)。3 本が 1 点で交わるなら、Cevaの定理(高校数学) により段 2 の左辺は $1$ である。よって右辺も $1$ である。
段 4(2 ⇒ 1)。右辺が $1$ なら、段 2 により左辺も $1$ である。$D$、$E$、$F$ は辺の上の頂点と異なる点なので、Ceva の定理の逆(Cevaの定理(高校数学))により 3 本は 1 点で交わる。$\square$
要点:1 ⇒ 2 は、交点 $P$ を頂点とする 3 つの三角形 $ABP$、$BCP$、$CAP$ で 正弦定理(高校数学) を使うと、正弦の比が $\dfrac{PB}{PA}$、$\dfrac{PC}{PB}$、$\dfrac{PA}{PC}$ になり、掛けると $1$ になる。2 ⇒ 1 は、2 本の交点を通る 3 本目を引き直し、lem-tceva-monotone で角が同じことを示す。
段 1(1 ⇒ 2:3 つの三角形)。3 本が点 $P$ で交わるとする。$P$ は三角形の内部にあり、線分 $AD$、$BE$、$CF$ の上にある(2 本の Ceva 線は三角形の内部で交わる。Cevaの定理(高校数学) の定理の証明の段 1)。よって $\alpha_1=\angle BAP$、$\alpha_2=\angle PAC$、$\beta_1=\angle CBP$、$\beta_2=\angle PBA$、$\gamma_1=\angle ACP$、$\gamma_2=\angle PCB$ である。三角形 $ABP$ で正弦定理を使うと、$PB$ の向かいの角は $\angle BAP=\alpha_1$、$PA$ の向かいの角は $\angle PBA=\beta_2$ なので
$$\frac{PB}{\sin\alpha_1}=\frac{PA}{\sin\beta_2},\qquad\text{つまり}\qquad \frac{\sin\alpha_1}{\sin\beta_2}=\frac{PB}{PA}$$
である。同じように、三角形 $BCP$ では $PC$ の向かいが $\beta_1$、$PB$ の向かいが $\gamma_2$ なので $\dfrac{\sin\beta_1}{\sin\gamma_2}=\dfrac{PC}{PB}$、三角形 $CAP$ では $PA$ の向かいが $\gamma_1$、$PC$ の向かいが $\alpha_2$ なので $\dfrac{\sin\gamma_1}{\sin\alpha_2}=\dfrac{PA}{PC}$ である。
段 2(掛ける)。段 1 の 3 つの式を掛けると
$$\frac{\sin\alpha_1\sin\beta_1\sin\gamma_1}{\sin\beta_2\sin\gamma_2\sin\alpha_2}=\frac{PB}{PA}\cdot\frac{PC}{PB}\cdot\frac{PA}{PC}=1$$
で、左辺は 2 の積を並べかえたものである。
段 3(2 ⇒ 1:3 本目を引き直す)。2 の積が $1$ であるとする。Ceva 線 $AD$ と $BE$ は三角形の内部の点 $P$ で交わり、直線 $CP$ は辺 $AB$ と $A$、$B$ と異なる点 $F'$ で交わる(Cevaの定理(高校数学) の逆の証明の段 1・段 2)。3 本の Ceva 線 $AD$、$BE$、$CF'$ は $P$ で交わるので、段 1・段 2 により
$$\frac{\sin\alpha_1}{\sin\alpha_2}\cdot\frac{\sin\beta_1}{\sin\beta_2}\cdot\frac{\sin\angle ACF'}{\sin\angle F'CB}=1$$
である。仮定の式と比べて $\dfrac{\sin\alpha_1}{\sin\alpha_2}\cdot\dfrac{\sin\beta_1}{\sin\beta_2}\ne0$ で割ると、$\dfrac{\sin\angle ACF'}{\sin\angle F'CB}=\dfrac{\sin\angle ACF}{\sin\angle FCB}$ を得る。
段 4(角が同じ)。$F$、$F'$ は辺 $AB$ の上にあるので、$\angle FCB=\angle ACB-\angle ACF$、$\angle F'CB=\angle ACB-\angle ACF'$ である。$\angle ACB=C$ とおくと、段 3 の式は $f(\angle ACF')=f(\angle ACF)$($f(\theta)=\dfrac{\sin\theta}{\sin(C-\theta)}$)である。lem-tceva-monotone により $f$ は狭義に増加するので $\angle ACF'=\angle ACF$ である。半直線 $CF'$ と $CF$ は、どちらも $CA$ から辺 $AB$ の側へ同じ角だけ回した半直線なので一致し、辺 $AB$ との交点も一致する。よって $F'=F$ で、3 本は $P$ で交わる。$\square$
2 つ目の証明の段 1〜2 は、辺の長さを一切使わない。1 点で交わる 3 本の線について、角の正弦の比の積が $1$ になるのは、交点 $P$ から 3 頂点までの距離 $PA$、$PB$、$PC$ が約分されるからだと読める。
鋭角三角形 $ABC$ で、$A$ から辺 $BC$ に下ろした垂線の足を $D$ とする。$D$ は辺 $BC$ の内部にあり(Cevaの定理(高校数学) の系の証明の段 3)、直角三角形 $ABD$ の内角の和から $\angle BAD=90^\circ-B$、直角三角形 $ADC$ から $\angle DAC=90^\circ-C$ である。よって
$$
\frac{\sin\angle BAD}{\sin\angle DAC}=\frac{\sin(90^\circ-B)}{\sin(90^\circ-C)}=\frac{\cos B}{\cos C}
$$
である。頂点の名前を回すと、残りの 2 つの比は $\dfrac{\cos C}{\cos A}$、$\dfrac{\cos A}{\cos B}$ で、積は
$$
\frac{\cos B}{\cos C}\cdot\frac{\cos C}{\cos A}\cdot\frac{\cos A}{\cos B}=1
$$
である。thm-tceva-main により、3 本の垂線は 1 点(垂心)で交わる。辺の比を使うと $\dfrac{BD}{DC}=\dfrac{c\cos B}{b\cos C}$ のように辺の長さが入るが、角の比では辺の長さが最初から現れない。
数値では、$A(1,4)$、$B(0,0)$、$C(5,0)$ の三角形で $\cos A=\dfrac3{\sqrt{34}}$、$\cos B=\dfrac1{\sqrt{17}}$、$\cos C=\dfrac1{\sqrt2}$ なので、3 つの比は $\dfrac{\sqrt{34}}{17}$、$\dfrac{\sqrt{17}}3$、$\dfrac{3\sqrt2}2$ で、積は $\dfrac{\sqrt{34}\cdot\sqrt{17}\cdot3\sqrt2}{17\cdot3\cdot2}=\dfrac{3\cdot34}{102}=1$ である。垂心は $H(1,1)$ である(三角形の垂心)。
三角関数形がいちばん役に立つのは、角の関係だけで決まる直線を扱うときである。その代表が、Ceva 線を角の二等分線で折り返す操作である。
三角形 $ABC$ の頂点 $A$ を通り、角 $\angle BAC$ の内部を通る直線 $\ell$ が、$AB$ と角 $\theta$ をなす($0^\circ<\theta< A$)とする。$A$ を通り、$AB$ と角 $A-\theta$ をなして角の内部を通る直線を、$\ell$ の 等角な直線 という。$\ell$ を $\angle A$ の二等分線に関して折り返した直線である($\ell$ と二等分線のなす角と、等角な直線と二等分線のなす角は、どちらも $\left\lvert\theta-\dfrac A2\right\rvert$ である)。
三角形の内部の点 $P$ について、直線 $AP$、$BP$、$CP$ の等角な直線が 1 点 $Q$ で交わるとき、$Q$ を $P$ の 等角共役点 という(等角共役)。
三角形 $ABC$ の内部の点 $P$ について、直線 $AP$、$BP$、$CP$ の等角な直線は、三角形の内部の 1 点 $Q$ で交わる。さらに $Q$ の等角共役点は $P$ である。
方針:等角な直線では、def-tceva-angles の 2 つの角が入れかわる。すると正弦の比は逆数になり、積も逆数 $\dfrac11=1$ になる。
段 1(もとの 3 本)。直線 $AP$、$BP$、$CP$ が向かい合う辺と交わる点を $D$、$E$、$F$ とする。$P$ は内部にあるので $D$、$E$、$F$ は辺の上の頂点と異なる点で、3 本の Ceva 線 $AD$、$BE$、$CF$ は $P$ で交わる。thm-tceva-main により
$$
\frac{\sin\alpha_1}{\sin\alpha_2}\cdot\frac{\sin\beta_1}{\sin\beta_2}\cdot\frac{\sin\gamma_1}{\sin\gamma_2}=1
$$
である。
段 2(折り返した 3 本)。直線 $AP$ の等角な直線は、$AB$ と角 $A-\alpha_1=\alpha_2$ をなして角 $\angle BAC$ の内部を通る。角の内部を通る半直線は線分 $BC$ の内部と交わる(この平面の基本的な性質は、ここでは証明せずに使う)。その交点を $D'$ とすると $\angle BAD'=\alpha_2$、$\angle D'AC=\alpha_1$ である。同じように $BP$、$CP$ の等角な直線と辺 $CA$、$AB$ の交点を $E'$、$F'$ とすると、$\angle CBE'=\beta_2$、$\angle E'BA=\beta_1$、$\angle ACF'=\gamma_2$、$\angle F'CB=\gamma_1$ である。
段 3(積)。3 本の Ceva 線 $AD'$、$BE'$、$CF'$ の角の正弦の比の積は
$$
\frac{\sin\alpha_2}{\sin\alpha_1}\cdot\frac{\sin\beta_2}{\sin\beta_1}\cdot\frac{\sin\gamma_2}{\sin\gamma_1}=\frac1{\;\dfrac{\sin\alpha_1}{\sin\alpha_2}\cdot\dfrac{\sin\beta_1}{\sin\beta_2}\cdot\dfrac{\sin\gamma_1}{\sin\gamma_2}\;}=\frac11=1
$$
である。thm-tceva-main(2 ⇒ 1)により、$AD'$、$BE'$、$CF'$ は 1 点 $Q$ で交わる。2 本の Ceva 線の交点なので、$Q$ は三角形の内部にある。
段 4(もとに戻る)。等角な直線の等角な直線は、角 $A-(A-\theta)=\theta$ をなすので、もとの直線である。よって $AQ$、$BQ$、$CQ$ の等角な直線は $AP$、$BP$、$CP$ で、これらは $P$ で交わる。つまり $Q$ の等角共役点は $P$ である。$\square$
P(2,3)(赤の 3 本の交点)と、赤の 3 本を角の二等分線(灰色の破線)で折り返した青の 3 本。青の 3 本は等角共役点 Q(18/17, 12/17) で交わる
等角な直線の足が辺を分ける比には、きれいな関係がある。
三角形 $ABC$ で $a=BC$、$b=CA$、$c=AB$ とする。頂点 $A$ から出る 2 本の Ceva 線 $AD$、$AD'$ が互いに等角な直線なら
$$
\frac{BD}{DC}\cdot\frac{BD'}{D'C}=\frac{c^2}{b^2}
$$
である。
方針:lem-tceva-ratio を $AD$ と $AD'$ に使う。角が入れかわるので、正弦が約分される。
$\alpha_1=\angle BAD$、$\alpha_2=\angle DAC$ とすると、等角な直線なので $\angle BAD'=\alpha_2$、$\angle D'AC=\alpha_1$ である。lem-tceva-ratio により
$$
\frac{BD}{DC}=\frac{c\sin\alpha_1}{b\sin\alpha_2},\qquad \frac{BD'}{D'C}=\frac{c\sin\alpha_2}{b\sin\alpha_1}
$$
である。掛けると $\sin\alpha_1$ と $\sin\alpha_2$ が約分されて $\dfrac{c^2}{b^2}$ になる。$\square$
ex-tceva-start の $A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(0,6)$、$P(2,3)$ では $a^2=72$、$b^2=c^2=36$ である。
(1) 足の比。$P$ の Ceva 線の足の比は $\dfrac{BD}{DC}=\dfrac32$、$\dfrac{CE}{EA}=\dfrac13$、$\dfrac{AF}{FB}=2$ だった。prop-tceva-foot-product と、その頂点の名前を回したもの $\dfrac{CE}{EA}\cdot\dfrac{CE'}{E'A}=\dfrac{a^2}{c^2}$、$\dfrac{AF}{FB}\cdot\dfrac{AF'}{F'B}=\dfrac{b^2}{a^2}$ から
$$
\frac{BD'}{D'C}=\frac{36}{36}\cdot\frac23=\frac23,\qquad \frac{CE'}{E'A}=\frac{72}{36}\cdot3=6,\qquad \frac{AF'}{F'B}=\frac{36}{72}\cdot\frac12=\frac14
$$
である。積は $\dfrac23\cdot6\cdot\dfrac14=1$ で、Cevaの定理(高校数学) の条件を満たしている。
(2) 点を求める。$D'$ は $BC$ を $2:3$ に分ける点で $D'=\dfrac{3B+2C}5=\left(\dfrac{18}5,\dfrac{12}5\right)$、$E'$ は $CA$ を $6:1$ に分ける点で $E'=\dfrac{C+6A}7=\left(0,\dfrac67\right)$ である。直線 $AD'$ は $y=\dfrac23x$、直線 $BE'$ は $y=\dfrac67-\dfrac17x$ である。連立すると $\dfrac23x+\dfrac17x=\dfrac67$、$\dfrac{17}{21}x=\dfrac67$ より $x=\dfrac{18}{17}$、$y=\dfrac{12}{17}$ で、$Q\left(\dfrac{18}{17},\dfrac{12}{17}\right)$ である。
(3) 3 本目。$F'$ は $AB$ を $1:4$ に分ける点で $F'\left(\dfrac65,0\right)$ である。直線 $CF'$ は $y=6-5x$ で、$x=\dfrac{18}{17}$ のとき $y=6-\dfrac{90}{17}=\dfrac{12}{17}$ なので、$Q$ を通る。直線 $AQ$ の方向 $(18,12)=6(3,2)$ は、ex-tceva-isogonal-lines (2) の等角な直線の方向と一致する。
鋭角三角形 $ABC$ の外心を $O$、垂心を $H$ とする。$H$ の等角共役点は $O$ である。
方針:頂点 $A$ で $\angle BAH=\angle OAC$ を示す。すると直線 $AO$ は直線 $AH$ の等角な直線である。頂点 $B$、$C$ でも同じである。
段 1($\angle BAH$)。$A$ から辺 $BC$ に下ろした垂線の足を $D$ とする。鋭角三角形なので $D$ は辺 $BC$ の内部にある(ex-tceva-altitudes)。他の頂点からの垂線の足も辺の内部にあるので、垂線は Ceva 線であり、その交点 $H$ は 2 本の Ceva 線の交点として三角形の内部にあって、線分 $AD$ の上にある。直角三角形 $ABD$ の内角の和から $\angle BAH=\angle BAD=90^\circ-B$ である。
段 2($\angle OAC$)。鋭角三角形の外心は三角形の内部にある(三角形の外心)。弦 $AC$ に対する円周角 $\angle ABC=B$ は鋭角で、$B$ と $O$ は直線 $AC$ の同じ側にあるので、中心角は $\angle AOC=2B$ である(円周角の定理(高校数学))。$OA=OC$(外接円の半径)なので三角形 $OAC$ は二等辺三角形で、底角は
$$
\angle OAC=\frac{180^\circ-2B}2=90^\circ-B
$$
である。
段 3(等角)。段 1・段 2 から $\angle BAH=\angle OAC$ である。$H$、$O$ はどちらも角 $\angle BAC$ の内部にあるので、直線 $AO$ は $AB$ と角 $A-(90^\circ-B)$ をなし、直線 $AH$ は $AB$ と角 $90^\circ-B$ をなす。よって $AO$ は $AH$ の等角な直線である。頂点の名前を回すと、$BO$ は $BH$ の、$CO$ は $CH$ の等角な直線である。$AO$、$BO$、$CO$ は $O$ で交わるので、$H$ の等角共役点は $O$ である。$\square$
鋭角三角形 A(1,4)、B(0,0)、C(5,0)。垂線 AD と直線 AO は、AB と AC から同じ角 90° − B だけ離れている
$A(1,4)$、$B(0,0)$、$C(5,0)$ では、垂心は $H(1,1)$、外心は $O\left(\dfrac52,\dfrac32\right)$($OA=OB=OC=\dfrac{\sqrt{34}}2$)である。$\overrightarrow{AB}=(-1,-4)$、$\overrightarrow{AH}=(0,-3)$ なので
$$
\cos\angle BAH=\frac{(-1)\cdot0+(-4)(-3)}{\sqrt{17}\cdot3}=\frac4{\sqrt{17}}
$$
である。$\overrightarrow{AO}=\left(\dfrac32,-\dfrac52\right)$、$\overrightarrow{AC}=(4,-4)$ なので
$$
\cos\angle OAC=\frac{\frac32\cdot4+\left(-\frac52\right)(-4)}{\frac{\sqrt{34}}2\cdot4\sqrt2}=\frac{16}{4\sqrt{17}}=\frac4{\sqrt{17}}
$$
で、2 つの角は等しい。$\cos B=\dfrac1{\sqrt{17}}$ なので $\sin B=\dfrac4{\sqrt{17}}$ で、$\cos(90^\circ-B)=\sin B=\dfrac4{\sqrt{17}}$ とも一致する。
重心の等角共役点を 類似重心(Lemoine 点。類似重心)という。中線の等角な直線を 類似中線 という。
中線 $AM$($M$ は辺 $BC$ の中点)では $\dfrac{BM}{MC}=1$ なので、prop-tceva-foot-product により、類似中線 $AK_a$ の足 $K_a$ は
$$
\frac{BK_a}{K_aC}=\frac{c^2}{b^2}
$$
を満たす。つまり類似中線は、向かいの辺を、隣り合う 2 辺の長さの 2 乗の比に分ける。
$a=5$、$b=6$、$c=4$ の三角形では、3 本の類似中線の足の比は $\dfrac{c^2}{b^2}=\dfrac{16}{36}=\dfrac49$、$\dfrac{a^2}{c^2}=\dfrac{25}{16}$、$\dfrac{b^2}{a^2}=\dfrac{36}{25}$ で、積は $\dfrac49\cdot\dfrac{25}{16}\cdot\dfrac{36}{25}=\dfrac{4\cdot36}{9\cdot16}=1$ である。$B(0,0)$、$C(5,0)$ とすると $BK_a=5\cdot\dfrac{4}{13}=\dfrac{20}{13}$ である。
Cevaの定理(高校数学) の後半で使った 重心座標 $(\alpha:\beta:\gamma)$(重心座標)で三角関数形の Ceva の定理を書き直すと、等角共役が式 1 本で表せる。$a=BC$、$b=CA$、$c=AB$ とすると、三角形の内部の点 $(\alpha:\beta:\gamma)$ の等角共役点は $\left(\dfrac{a^2}\alpha:\dfrac{b^2}\beta:\dfrac{c^2}\gamma\right)$ である。この式の証明と、重心・内心・垂心での計算、2 次の Cremona 変換としての見方は 等角共役 で扱う。
どの仮定を外すと何が崩れるかを一覧にする。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 3 本の Ceva 線が 1 点で交わる | 角の正弦の比の積が $1$ になる | ex-tceva-cx-trisect |
| どの頂点でも、$A\to B\to C\to A$ の順で次に来る頂点の側の角($\alpha_1,\beta_1,\gamma_1$)を分子に置く | 角の正弦の比の積が $1$ になる | ex-tceva-cx-order |
| 3 本目の直線が角 $\angle ACB$ の内部を通る($F$ が辺 $AB$ の上にある) | 逆:積が $1$ なら 1 点で交わる | ex-tceva-cx-outside |
| 角の二等分線に関して折り返す | 移した 3 本が 1 点で交わる | ex-tceva-cx-rotate |
$A(0,0)$、$B(3,0)$、$C(0,3)$ とし、辺を $1:2$ に分ける点 $D(2,1)$、$E(0,2)$、$F(1,0)$ をとる(三角形の重心(高校数学) の反例と同じ)。3 本の Ceva 線は 1 点で交わらない。
(1) 頂点 $A$:$\overrightarrow{AD}=(2,1)$ なので $\sin\angle BAD=\dfrac1{\sqrt5}$、$\sin\angle DAC=\cos\angle BAD=\dfrac2{\sqrt5}$ で、比は $\dfrac12$ である。
(2) 頂点 $B$:$\overrightarrow{BE}=(-3,2)$ なので $\sin\angle EBA=\dfrac2{\sqrt{13}}$、$\cos\angle EBA=\dfrac3{\sqrt{13}}$ である。$\angle CBE=45^\circ-\angle EBA$ なので $\sin\angle CBE=\dfrac{\sqrt2}2\cdot\dfrac{3-2}{\sqrt{13}}=\dfrac1{\sqrt{26}}$ で、比は $\dfrac{1/\sqrt{26}}{2/\sqrt{13}}=\dfrac1{2\sqrt2}$ である。
(3) 頂点 $C$:$\overrightarrow{CF}=(1,-3)$ なので $\sin\angle ACF=\dfrac1{\sqrt{10}}$、$\cos\angle ACF=\dfrac3{\sqrt{10}}$ である。$\angle FCB=45^\circ-\angle ACF$ なので $\sin\angle FCB=\dfrac{\sqrt2}2\cdot\dfrac{3-1}{\sqrt{10}}=\dfrac1{\sqrt5}$ で、比は $\dfrac{1/\sqrt{10}}{1/\sqrt5}=\dfrac1{\sqrt2}$ である。
積は $\dfrac12\cdot\dfrac1{2\sqrt2}\cdot\dfrac1{\sqrt2}=\dfrac18\ne1$ である。これは辺の比の積 $\dfrac12\cdot\dfrac12\cdot\dfrac12=\dfrac18$ に等しく、prf-tceva-main の段 2 のとおり、1 点で交わらなくても 2 つの積は等しい。3 本が囲む三角形の面積は Routhの定理 で求まる。
ex-tceva-start の 1 点で交わる 3 本で、頂点 $B$ と $C$ の比だけ分子と分母を入れかえて $\dfrac{\sin\alpha_1}{\sin\alpha_2}\cdot\dfrac{\sin\beta_2}{\sin\beta_1}\cdot\dfrac{\sin\gamma_2}{\sin\gamma_1}$ を計算すると
$$
\frac32\cdot3\sqrt2\cdot\frac1{2\sqrt2}=\frac94\ne1
$$
になる。定理の式は、どの頂点でも「$A\to B\to C\to A$ の順でその頂点の次に来る頂点の側の角」を分子に置いたときにだけ成り立つ。辺の比 $\dfrac{BD}{DC}$、$\dfrac{CE}{EA}$、$\dfrac{AF}{FB}$ を一周する順に並べるのと同じ注意である。
ex-tceva-start の $D$、$E$ はそのままにして、$F$ の代わりに辺 $AB$ の延長の上の点 $F'(12,0)$ をとる。$\overrightarrow{CF'}=(12,-6)$、$CF'=6\sqrt5$ なので $\sin\angle ACF'=\dfrac{12}{6\sqrt5}=\dfrac2{\sqrt5}$、$\cos\angle ACF'=\dfrac1{\sqrt5}$ である。半直線 $CF'$ は角 $\angle ACB$ の外にあり、$\angle ACF'=\angle ACB+\angle BCF'$、つまり $\angle F'CB=\angle ACF'-45^\circ$ である。よって
$$
\sin\angle F'CB=\frac{2}{\sqrt5}\cdot\frac{\sqrt2}2-\frac1{\sqrt5}\cdot\frac{\sqrt2}2=\frac1{\sqrt{10}},\qquad \frac{\sin\angle ACF'}{\sin\angle F'CB}=\frac{2/\sqrt5}{1/\sqrt{10}}=2\sqrt2
$$
で、$F$ のときと同じ値である。したがって $\dfrac32\cdot\dfrac1{3\sqrt2}\cdot2\sqrt2=1$ となるが、直線 $CF'$ は $y=6-\dfrac12x$ で、$x=2$ のとき $y=5\ne3$ なので、$AD$ と $BE$ の交点 $P(2,3)$ を通らない。
lem-tceva-monotone は $\angle ACF$ と $\angle FCB$ の和が $\angle ACB$ になることを使っていた。$F'$ ではこの和の関係が崩れ、正弦の比が同じでも角が同じとは限らない。
折り返しの代わりに、3 本の角の二等分線を、それぞれの頂点のまわりに同じ向きに同じ角 $\delta$ だけ回す($0^\circ<\delta<\dfrac12\min(A,B,C)$)。$\delta$ が各頂点の角の半分より小さいので、回した直線も角の内部を通り、向かいの辺と頂点以外の点で交わる。
どの角が増えるかを確かめる。三角形 $ABC$ の頂点が反時計回りに並ぶとする(ex-tceva-start の $A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(0,6)$ がそうである)。このとき頂点 $A$ の角は辺 $AB$ から辺 $AC$ へ、頂点 $B$ の角は辺 $BC$ から辺 $BA$ へ、頂点 $C$ の角は辺 $CA$ から辺 $CB$ へ、どれも反時計回りに開いている(ex-tceva-start では、$A$ で向き $0^\circ$ から $90^\circ$ へ、$B$ で $135^\circ$ から $180^\circ$ へ、$C$ で $270^\circ$ から $315^\circ$ へ)。そこで 3 本とも反時計回りに $\delta$ 回すと、どの頂点でも def-tceva-angles の添字 $1$ の角($A$ では $AB$ の側、$B$ では $BC$ の側、$C$ では $CA$ の側)が $\delta$ 増え、添字 $2$ の角が $\delta$ 減る。つまり
$$
\alpha_1=\frac A2+\delta,\quad \alpha_2=\frac A2-\delta,\qquad \beta_1=\frac B2+\delta,\quad \beta_2=\frac B2-\delta,\qquad \gamma_1=\frac C2+\delta,\quad \gamma_2=\frac C2-\delta
$$
である(時計回りに回すと、添字 $1$ と $2$ の役割が入れかわり、どの比も $1$ より小さくなる。以下と同じ議論で積は $1$ より小さい)。
頂点 $A$ では、加法定理から積和・和積・合成・正接の公式を導く の和積の公式により
$$
\sin\left(\frac A2+\delta\right)-\sin\left(\frac A2-\delta\right)=2\cos\frac A2\sin\delta>0
$$
なので($0^\circ<\dfrac A2<90^\circ$、$0^\circ<\delta<90^\circ$)、比 $\dfrac{\sin\alpha_1}{\sin\alpha_2}=\dfrac{\sin(A/2+\delta)}{\sin(A/2-\delta)}$ は $1$ より大きい。頂点 $B$、$C$ でも同じ計算で $\dfrac{\sin\beta_1}{\sin\beta_2}>1$、$\dfrac{\sin\gamma_1}{\sin\gamma_2}>1$ である。1 より大きい正の数を 3 つ掛けるので、積は $1$ より大きく、thm-tceva-main により 3 本は 1 点で交わらない。たとえば正三角形で $\delta=10^\circ$ なら、比はどれも $\dfrac{\sin40^\circ}{\sin20^\circ}=2\cos20^\circ\approx1.879$ で、積は約 $6.64$ である。二等分線で折り返す操作だけが、比を逆数にして積 $1$ を保つ。
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