Mittag-Leffler条件

同義語:Mittag-Leffler conditionML条件ミッタク・レフラー条件

概要

Mittag-Leffler条件(Mittag-Leffler condition)とは、射影系 $(A_i,\psi_{ji})$ において、各 $i$ に対する像 $\operatorname{im}(A_j\to A_i)$ が $j$ について十分先で一定になるという条件である。推移写像がすべて全射な系や、有限群・Artin 加群からなる系はこれをみたす。可算添字の加群の射影系がこれをみたせば $\varprojlim^1$ が消え、左端の系がこれをみたす各段で完全な短完全列は射影極限をとっても完全であり、空でない集合の系の極限は空でない。$\varprojlim^1_np^n\mathbb{Z}\cong\mathbb{Z}_p/\mathbb{Z}\neq0$ が条件の破れる典型例である。Milnor 完全列や形式関数の定理で基本的な役割を果たす。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 射影極限, 加群, 完全列, 有向集合, 導来関手

定義

Mittag-Leffler 条件は、射影極限をとる操作が完全性を失う度合いを制御する、射影系(射影極限 の記事の定義「射影系」)に対する条件である。加群の射影極限は左完全関手(完全関手)にすぎず、右完全性の障害として $\varprojlim^1$ が現れる。Mittag-Leffler 条件は「遠くの段から届く像が、十分先で一定の部分集合に落ち着く」という条件であり、これが成り立てば可算添字の射影系で $\varprojlim^1=0$ となる。定義は集合・群・加群・層など、像の意味がある任意の対象の射影系に対して同じ形で述べられる。

射影系のMittag-Leffler条件

$(I,\le)$ を有向集合とし、$(A_i,\psi_{ji}\colon A_j\to A_i)_{i\le j}$ を集合(または群、加群)の $I$ 上の射影系とする。$i\in I$ を固定すると、$j\ge i$ に対する像 $\operatorname{im}\psi_{ji}=\psi_{ji}(A_j)\subset A_i$ は、$j\le k$ のとき $\psi_{ki}=\psi_{ji}\circ\psi_{kj}$ により $\operatorname{im}\psi_{ki}\subset\operatorname{im}\psi_{ji}$ をみたす。すなわち $\{\operatorname{im}\psi_{ji}\}_{j\ge i}$ は $A_i$ の部分集合(部分群、部分加群)の減少する族である。
射影系 $(A_i,\psi_{ji})$ が Mittag-Leffler 条件(Mittag-Leffler condition、略して ML 条件)をみたすとは、各 $i\in I$ に対して $j_0\ge i$ が存在し、$j\ge j_0$ なるすべての $j$ について
$$ \operatorname{im}\bigl(\psi_{ji}\colon A_j\to A_i\bigr)=\operatorname{im}\bigl(\psi_{j_0i}\colon A_{j_0}\to A_i\bigr) $$
が成り立つことをいう。このとき一定になった像
$$ A_i^{\mathrm{st}}:=\operatorname{im}\psi_{j_0i}=\bigcap_{j\ge i}\operatorname{im}\psi_{ji} $$
を $A_i$ における安定像(stable image)という。安定する添字 $j_0$ は $i$ ごとに選んでよく、$i$ について一様である必要はない。
添字集合が $\mathbb{N}$ のときは、射影系を $(A_n,\rho_n\colon A_{n+1}\to A_n)_{n\in\mathbb{N}}$ と書き、$\psi_{mn}=\rho_n\circ\rho_{n+1}\circ\cdots\circ\rho_{m-1}$($m>n$)である。この場合 Mittag-Leffler 条件は「各 $n$ に対し、像 $\operatorname{im}(A_m\to A_n)$ が $m\ge m(n)$ で一定になる」と述べられる。

Mittag-Leffler 条件は、$A_i$ の側から見ると「無限に先の段から生き残ってくる元の全体」が有限段 $j_0$ で既に決まっているという条件である。推移写像がすべて全射なら像はつねに $A_i$ 全体であり、条件は自明にみたされる(prop-mittag-leffler-sufficient)。条件が破れる典型は、像が真に減少し続ける場合である(ex-mittag-leffler-counter-pnz)。
Mittag-Leffler 条件が制御する量 $\varprojlim^1$ を定義する。記事を単独で読めるように、射影極限 の記事と同じ構成をここに述べる。

射影系の lim1

$A$ を環とし、$(A_n,\rho_n)_{n\in\mathbb{N}}$ を $\mathbb{N}$ 上の $A$ 加群の射影系とする。直積の間の $A$ 準同型
$$ \Delta\colon\prod_{n\in\mathbb{N}}A_n\longrightarrow\prod_{n\in\mathbb{N}}A_n,\qquad (a_n)_n\longmapsto\bigl(a_n-\rho_n(a_{n+1})\bigr)_n $$
を考える。$\Delta$ の核は両立する族 $(a_n)$($a_n=\rho_n(a_{n+1})$ がすべての $n$ で成り立つ族)の全体、すなわち射影極限 $\varprojlim_nA_n$ であり、$\Delta$ の余核を
$$ \varprojlim{}^1_nA_n:=\operatorname{coker}\Delta=\prod_nA_n\Bigm/\operatorname{im}\Delta $$
と定める。射影系の射 $(f_n)\colon(A_n)\to(B_n)$ は $\prod f_n$ を通じて $\varprojlim^1A_n\to\varprojlim^1B_n$ を誘導し、$\varprojlim^1$ は $\mathbb{N}$ 上の射影系の圏から $A$ 加群の圏への関手である。$\varprojlim^1A_n=0$ であることは $\Delta$ が全射であること、すなわち任意の $(c_n)\in\prod A_n$ に対し $b_n-\rho_n(b_{n+1})=c_n$(すべての $n$)をみたす $(b_n)$ が存在することと同値である。

導来関手による解釈

$\mathbb{N}$ 上の $A$ 加群の射影系の全体はアーベル圏をなし、十分多くの入射対象(入射対象・射影対象)をもつ。$\varprojlim$ はこの圏から $A$ 加群の圏への左完全関手であり、その右導来関手 $R^i\varprojlim$ について $R^1\varprojlim$ は def-mittag-leffler-lim1 の $\varprojlim^1$ と一致し、$R^i\varprojlim=0$($i\ge2$)である(Wei94 §3.5)。$\varprojlim^1$ は $\lim^1$、$R^1\lim$ とも書く。可算でない有向集合の上でも $R^i\varprojlim$ は定義されるが、$i\ge2$ で消えるとは限らず、本記事の $\varprojlim^1$ に関する主張は添字集合が $\mathbb{N}$(またはそれと共終な可算有向集合。射影極限 の記事の命題「共終部分集合への制限」)の場合に限る。Mittag-Leffler 条件そのものは def-mittag-leffler-condition のとおり任意の有向集合の上で意味をもつ。

直感

射影極限の元は、すべての段で両立する元の列 $(x_n)$ である。これを作るには、$x_n$ を選んだあと $\rho_n(x_{n+1})=x_n$ となる $x_{n+1}$ を選び、それを無限に続けなければならない。途中で「$x_n$ は上の段から来ていたが、さらに上の段からは来ていなかった」と判明すれば構成は行き詰まる。Mittag-Leffler 条件は、各段で「無限に先から届く元」の範囲(安定像)が有限段で確定していることを保証し、最初から安定像の中で元を選べば構成が行き詰まらないことを述べている(prop-mittag-leffler-stable)。$\varprojlim^1$ は「各段での修正 $c_n$ を積み上げて両立する列にできない」度合いであり、安定像の中では推移写像が全射なので修正が必ず吸収され、$\varprojlim^1=0$ となる(thm-mittag-leffler-vanishing)。名の由来である複素解析の Mittag-Leffler の定理は、有限段での近似を次の段で修正しながら極限で貼り合わせる同じ原理の現れである(rem-mittag-leffler-name)。

例と反例

推移写像が全射な射影系

$p$ を素数とする。$\mathbb{N}$ 上の射影系 $(\mathbb{Z}/p^n)_n$(推移写像は自然な全射 $\mathbb{Z}/p^{n+1}\to\mathbb{Z}/p^n$)は、推移写像が全射なので Mittag-Leffler 条件をみたし、$A_n^{\mathrm{st}}=\mathbb{Z}/p^n$ である。射影極限はp進整数環 $\mathbb{Z}_p=\varprojlim\mathbb{Z}/p^n$ であり、prop-mittag-leffler-stable により各標準射影 $\mathbb{Z}_p\to\mathbb{Z}/p^n$ は全射である。同様に、Noether環 $A$ とイデアル $I$ に対する射影系 $(A/I^n)_n$、形式スキームを定める射影系 $(\mathcal{O}_X/\mathcal{I}^n)_n$ の affine 開集合上の切断の系、Tate加群 $T_\ell(E)=\varprojlim E[\ell^n]$ を定める射影系(推移写像は $\ell$ 倍で全射)はいずれも推移写像が全射である。

有限群・有限次元ベクトル空間の射影系

各 $A_n$ が有限集合、有限群、体 $k$ 上の有限次元ベクトル空間、あるいはより一般に Artin 加群(Artin加群)であれば、推移写像がどのようなものでも Mittag-Leffler 条件が成り立つ(prop-mittag-leffler-sufficient の 3)。たとえば $A_n=\mathbb{Z}/p^n$ に推移写像として $p$ 倍写像 $\rho_n\colon\mathbb{Z}/p^{n+1}\to\mathbb{Z}/p^n$、$x\bmod p^{n+1}\mapsto px\bmod p^n$ を入れた射影系では、$\psi_{mn}$ は $p^{m-n}$ 倍写像であり、$m\ge2n$ で $\psi_{mn}=0$ となる。像は $\mathbb{Z}/p^n\supset p\mathbb{Z}/p^n\supset\cdots\supset p^n\mathbb{Z}/p^n=0$ と真に減少するが、有限群なので有限回で止まり、$A_n^{\mathrm{st}}=0$ である。この射影系は $\varprojlim A_n=0$、$\varprojlim^1A_n=0$ をみたす(thm-mittag-leffler-vanishing)。
エタールコホモロジーでは、有限係数のコホモロジー群 $H^i(X,\mathbb{Z}/\ell^n)$ が有限群であることから射影系 $(H^i(X,\mathbb{Z}/\ell^n))_n$ が Mittag-Leffler 条件をみたし、有限係数の完全列から $\ell$ 進係数の完全列 $\varprojlim_n$ が得られる(ℓ進コホモロジー、thm-mittag-leffler-vanishing の 3)。

反例:像が安定しない射影系

$p$ を素数とし、$A_n:=p^n\mathbb{Z}\subset\mathbb{Z}$、推移写像を包含写像 $p^{n+1}\mathbb{Z}\hookrightarrow p^n\mathbb{Z}$ とする $\mathbb{N}$ 上のアーベル群の射影系を考える。$\operatorname{im}(A_m\to A_n)=p^m\mathbb{Z}$ は $m$ について真に減少し続け、どの $m$ でも一定にならないので、この射影系は Mittag-Leffler 条件をみたさない。射影極限は $\bigcap_np^n\mathbb{Z}=0$ であり、$\varprojlim^1_np^n\mathbb{Z}\cong\mathbb{Z}_p/\mathbb{Z}\ne0$ である(prop-mittag-leffler-lim1-pnz)。
この射影系は、$A_n=\mathbb{Z}$ で推移写像を $p$ 倍写像 $\mathbb{Z}\xrightarrow{p}\mathbb{Z}$ とする射影系と同型である(各段で $\mathbb{Z}\to p^n\mathbb{Z}$、$x\mapsto p^nx$ が同型を与え、推移写像と両立する)。
この例が破る含意は「各段で全射ならば射影極限でも全射」である。射影系の短完全列 $0\to(p^n\mathbb{Z})\to(\mathbb{Z})\to(\mathbb{Z}/p^n)\to0$(中央は恒等写像を推移写像とする定数系)は各段で完全だが、射影極限をとった $\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}_p$ は全射でない。すなわちこの例は「各段で完全」という性質をみたし、「極限でも完全」という性質をみたさず、その障害がちょうど $\varprojlim^1p^n\mathbb{Z}$ である(thm-mittag-leffler-vanishing の 1)。

反例:極限が空になる集合の射影系

$X_n:=\{m\in\mathbb{N}\mid m\ge n\}$ とし、包含写像 $X_{n+1}\subset X_n$ を推移写像とする集合の射影系を考える。各 $X_n$ は空でないが、$\operatorname{im}(X_m\to X_n)=X_m$ は $m$ について真に減少し続けるので Mittag-Leffler 条件をみたさず、実際に射影極限は $\bigcap_nX_n=\emptyset$ である。この例が破る含意は「各段が空でなければ極限も空でない」であり、Mittag-Leffler 条件のもとではこの含意が成り立つ(prop-mittag-leffler-stable の 4)。

性質

Mittag-Leffler 条件の十分条件

Mittag-Leffler条件の十分条件

$(A_i,\psi_{ji})$ を有向集合 $I$ 上の集合(群、加群)の射影系とする。

  1. 推移写像 $\psi_{ji}$ がすべて全射ならば、Mittag-Leffler 条件が成り立ち、$A_i^{\mathrm{st}}=A_i$ である。
  2. (群・加群の場合)各 $i$ に対し $\psi_{ji}=0$ となる $j\ge i$ が存在する(射影系が本質的に零である)ならば、Mittag-Leffler 条件が成り立ち、$A_i^{\mathrm{st}}=0$ である。
  3. 各 $A_i$ が有限集合ならば、また各 $A_i$ が Artin 加群(部分加群の降鎖条件をみたす加群)ならば、Mittag-Leffler 条件が成り立つ。とくに各 $A_i$ が有限群、または体上の有限次元ベクトル空間ならば成り立つ。
  4. $(f_i)\colon(A_i)\to(B_i)$ を射影系の射とし、各 $f_i$ が全射であるとする。$(A_i)$ が Mittag-Leffler 条件をみたせば $(B_i)$ もみたし、$B_i^{\mathrm{st}}=f_i(A_i^{\mathrm{st}})$ である。
  5. $J\subset I$ を共終な部分集合(任意の $i\in I$ に対し $i\le j$ なる $j\in J$ が存在する)とする。$(A_i)_{i\in I}$ が Mittag-Leffler 条件をみたすことと、$J$ に制限した射影系 $(A_j)_{j\in J}$ がみたすこととは同値である。

1:任意の $j\ge i$ で $\operatorname{im}\psi_{ji}=A_i$ なので、$j_0=i$ がとれる。
2:$\psi_{ji}=0$ となる $j$ をとると、$k\ge j$ に対し $\psi_{ki}=\psi_{ji}\circ\psi_{kj}=0$ なので像は $0$ で一定である。
3:$A_i$ が有限集合のとき、$\{\operatorname{im}\psi_{ji}\}_{j\ge i}$ は有限集合 $A_i$ の部分集合の族なので、元の個数が最小のもの $\operatorname{im}\psi_{j_0i}$ がある。$k\ge j_0$ に対し $\operatorname{im}\psi_{ki}\subset\operatorname{im}\psi_{j_0i}$ であり、個数の最小性から等号が成り立つ。$A_i$ が Artin 加群のとき、Artin 加群では部分加群の空でない族が極小元をもつ(降鎖条件との同値性は AM69 Proposition 6.1)ので、族 $\{\operatorname{im}\psi_{ji}\}_{j\ge i}$ の極小元 $\operatorname{im}\psi_{j_0i}$ をとれば、$k\ge j_0$ に対し $\operatorname{im}\psi_{ki}\subset\operatorname{im}\psi_{j_0i}$ と極小性から等号が従う。有限群は有限集合であり、体上の有限次元ベクトル空間は部分空間の次元が真に減少する列が有限で止まるので Artin 加群である。
4:$\chi_{ji}\colon B_j\to B_i$ を $(B_i)$ の推移写像とすると、$f_j$ の全射性と $\chi_{ji}\circ f_j=f_i\circ\psi_{ji}$ から
$$ \operatorname{im}\chi_{ji}=\chi_{ji}(f_j(A_j))=f_i(\psi_{ji}(A_j))=f_i(\operatorname{im}\psi_{ji}) $$
である。$(A_i)$ で像が $j\ge j_0$ について一定なら、右辺も一定である。
5:$(A_i)_{i\in I}$ が条件をみたすとし、$i\in J$ に対し $I$ での安定添字 $j_0$ をとる。共終性により $j_0\le j_1$ なる $j_1\in J$ があり、$k\in J$、$k\ge j_1$ ならば $\operatorname{im}\psi_{ki}=\operatorname{im}\psi_{j_0i}=\operatorname{im}\psi_{j_1i}$ である。逆に $(A_j)_{j\in J}$ が条件をみたすとし、$i\in I$ を任意にとる。共終性により $i\le i'$ なる $i'\in J$ があり、$i'$ に対する $J$ での安定添字 $j_0\in J$ をとる。$k\in I$、$k\ge j_0$ に対し、共終性により $k\le k'$ なる $k'\in J$ をとると
$$ \operatorname{im}\psi_{k'i}\subset\operatorname{im}\psi_{ki}\subset\operatorname{im}\psi_{j_0i},\qquad \operatorname{im}\psi_{k'i}=\psi_{i'i}(\operatorname{im}\psi_{k'i'})=\psi_{i'i}(\operatorname{im}\psi_{j_0i'})=\operatorname{im}\psi_{j_0i} $$
なので $\operatorname{im}\psi_{ki}=\operatorname{im}\psi_{j_0i}$ であり、$I$ 上でも条件がみたされる。$\square$

5 により、Mittag-Leffler 条件は添字の付け替えや部分列への制限で変わらない。たとえば $\mathbb{N}$ 上の射影系について、偶数番目だけを見ても条件の成否は同じである。

安定像と射影極限

安定像への射影

$(A_n,\rho_n)_{n\in\mathbb{N}}$ を Mittag-Leffler 条件をみたす $\mathbb{N}$ 上の集合(群、加群)の射影系とし、$A_n^{\mathrm{st}}$ を安定像とする。

  1. $\rho_n(A_{n+1}^{\mathrm{st}})=A_n^{\mathrm{st}}$ である。すなわち $(A_n^{\mathrm{st}})_n$ は推移写像が全射な部分射影系である。
  2. $\varprojlim_nA_n=\varprojlim_nA_n^{\mathrm{st}}$ である($\prod_nA_n$ の部分集合として)。
  3. 各標準射影 $\pi_n\colon\varprojlim_mA_m\to A_n$ の像は $A_n^{\mathrm{st}}$ に一致する。
  4. 各 $A_n$ が空でなければ $\varprojlim_nA_n$ は空でない。

1:$n$ と $n+1$ の両方に対する安定添字以上の $m$ をとると、$A_n^{\mathrm{st}}=\psi_{mn}(A_m)=\rho_n(\psi_{m,n+1}(A_m))=\rho_n(A_{n+1}^{\mathrm{st}})$ である。
2:$(x_n)\in\varprojlim A_n$ とすると、任意の $m\ge n$ で $x_n=\psi_{mn}(x_m)\in\operatorname{im}\psi_{mn}$ なので $x_n\in\bigcap_{m\ge n}\operatorname{im}\psi_{mn}=A_n^{\mathrm{st}}$ である。よって $(x_n)\in\varprojlim A_n^{\mathrm{st}}$。逆の包含は明らかである。
3:2 により $\pi_n(\varprojlim A_m)\subset A_n^{\mathrm{st}}$ である。逆に $x\in A_n^{\mathrm{st}}$ をとり、$k< n$ に対しては $x_k:=\psi_{nk}(x)$、$x_n:=x$ とおく。$k\ge n$ については、$x_k\in A_k^{\mathrm{st}}$ が定まったとき 1 により $\rho_k(x_{k+1})=x_k$ をみたす $x_{k+1}\in A_{k+1}^{\mathrm{st}}$ を選ぶ。帰納的に得られる $(x_k)_k$ は $\rho_k(x_{k+1})=x_k$ をすべての $k$ でみたすので $\varprojlim A_m$ の元であり、$\pi_n((x_k))=x$ である。
4:$A_n^{\mathrm{st}}=\psi_{mn}(A_m)$ は空でない集合の像なので空でなく、3 により $\varprojlim A_m$ は空でない。$\square$

添字集合の可算性は 3・4 で本質的に使われている($k\ge n$ について順に元を選ぶ帰納的構成)。推移写像が全射な場合の 3・4 は 射影極限 の記事の定理「Mittag-Leffler条件のもとでの消滅」の証明でも用いられている。

$\varprojlim^1$ の消滅と 6 項完全列

Mittag-Leffler条件のもとでの消滅

$A$ を環とし、$\mathbb{N}$ 上の $A$ 加群の射影系を考える。

  1. 射影系の短完全列 $0\to(A'_n)\to(A_n)\to(A''_n)\to0$(各 $n$ で完全)に対し、自然な 6 項完全列
    $$ 0\to\varprojlim A'_n\to\varprojlim A_n\to\varprojlim A''_n\xrightarrow{\ \delta\ }\varprojlim{}^1A'_n\to\varprojlim{}^1A_n\to\varprojlim{}^1A''_n\to0 $$
    が存在する。
  2. 射影系 $(A_n)$ が Mittag-Leffler 条件をみたせば $\varprojlim^1_nA_n=0$ である。
  3. 1 の短完全列で $(A'_n)$ が Mittag-Leffler 条件をみたせば、$0\to\varprojlim A'_n\to\varprojlim A_n\to\varprojlim A''_n\to0$ は完全である。
証明の所在

証明は 射影極限 の記事の命題「6項完全列」、定理「Mittag-Leffler条件のもとでの消滅」、系「有限群・Artin加群の射影系の完全性」に譲る(Wei94 §3.5、Har77 II.9.1、EGA3 0_III §13.2)。筋だけ述べる。1 は $\Delta'$、$\Delta$、$\Delta''$ を縦の射とする直積の短完全列の可換図式に蛇の補題を適用したものである。2 は prop-mittag-leffler-stable の 1 により安定像の部分射影系 $(A_n^{\mathrm{st}})$ の推移写像が全射であること、商の射影系 $(A_n/A_n^{\mathrm{st}})$ が本質的に零であることに帰着する。推移写像が全射な射影系では、$(c_n)$ に対し $b_0:=0$ から始めて $\rho_n(b_{n+1})=b_n-c_n$ をみたす $b_{n+1}$ を順に選べば $\Delta((b_n))=(c_n)$ となり $\Delta$ は全射である。本質的に零な射影系では $b_n:=\sum_{k\ge n}\psi_{kn}(c_k)$(有限和)が $\Delta((b_n))=(c_n)$ をみたす。短完全列 $0\to(A_n^{\mathrm{st}})\to(A_n)\to(A_n/A_n^{\mathrm{st}})\to0$ に 1 を適用すれば $\varprojlim^1A_n$ は両側の $0$ に挟まれて $0$ である。3 は 1 と 2 から直ちに従う。逆向きの含意「$\varprojlim^1A_n=0$ ならば Mittag-Leffler 条件」は一般には成り立たず、Mittag-Leffler 条件はあくまで十分条件である。

lim1 が消えない例の計算

$p$ を素数とし、$(p^n\mathbb{Z})_{n\in\mathbb{N}}$ を包含写像を推移写像とする射影系とする(ex-mittag-leffler-counter-pnz)。このとき
$$ \varprojlim{}^1_np^n\mathbb{Z}\cong\mathbb{Z}_p/\mathbb{Z} $$
であり、これは $0$ でない(非可算である)。同型は $(c_n)_n\mapsto\sum_{n\ge0}c_n\bmod\mathbb{Z}$ で与えられる。

$\rho_n$ が包含写像なので $\Delta((b_n))=(b_n-b_{n+1})_n$ である。$(c_n)\in\prod_np^n\mathbb{Z}$ に対し、$c_n\in p^n\mathbb{Z}$ は $p$ 進付値(p進付値)が $n$ 以上なので $n\to\infty$ で $p$ 進的に $0$ に収束し、級数 $\varphi((c_n)):=\sum_{n\ge0}c_n$ は $p$ 進整数環 $\mathbb{Z}_p$(p進整数)で収束する。$\varphi\colon\prod_np^n\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}_p$ は加法的である。
$\varphi$ は全射である:$x\in\mathbb{Z}_p$ は $p$ 進展開 $x=\sum_{n\ge0}a_np^n$($a_n\in\{0,1,\dots,p-1\}$)をもつので、$c_n:=a_np^n\in p^n\mathbb{Z}$ とおけば $\varphi((c_n))=x$ である。したがって合成 $\bar\varphi\colon\prod_np^n\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}_p\to\mathbb{Z}_p/\mathbb{Z}$ も全射である。
$\ker\bar\varphi=\operatorname{im}\Delta$ を示す。$(b_n)\in\prod_np^n\mathbb{Z}$ に対し、部分和は $\sum_{n=0}^{N}(b_n-b_{n+1})=b_0-b_{N+1}$ であり、$b_{N+1}\in p^{N+1}\mathbb{Z}$ は $N\to\infty$ で $0$ に収束するので $\varphi(\Delta((b_n)))=b_0\in\mathbb{Z}$ である。よって $\operatorname{im}\Delta\subset\ker\bar\varphi$。逆に $(c_n)$ が $s:=\varphi((c_n))\in\mathbb{Z}$ をみたすとし、
$$ b_n:=s-\sum_{k< n}c_k\in\mathbb{Z} $$
とおく。$\mathbb{Z}_p$ の中では $b_n=\sum_{k\ge n}c_k\in p^n\mathbb{Z}_p$ であり、$\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}_p/p^n\mathbb{Z}_p$ が同型なので $\mathbb{Z}\cap p^n\mathbb{Z}_p=p^n\mathbb{Z}$、したがって $b_n\in p^n\mathbb{Z}$ である。$b_n-b_{n+1}=c_n$ なので $(c_n)=\Delta((b_n))\in\operatorname{im}\Delta$ である。以上により $\varprojlim^1p^n\mathbb{Z}=\operatorname{coker}\Delta\cong\mathbb{Z}_p/\mathbb{Z}$ である。$\mathbb{Z}_p$ は非可算(非可算集合。$p$ 進展開の係数列は $\{0,\dots,p-1\}$ の任意の列)で $\mathbb{Z}$ は可算(可算集合)なので、$\mathbb{Z}_p/\mathbb{Z}$ は非可算であり、とくに $0$ でない。$\square$

射影極限 の記事は同じ同型を、短完全列 $0\to(p^n\mathbb{Z})\to(\mathbb{Z})\to(\mathbb{Z}/p^n)\to0$ に対する 6 項完全列 $0\to\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}_p\xrightarrow{\delta}\varprojlim^1p^n\mathbb{Z}\to0$ から導いている。上の証明の $\bar\varphi$ は、その連結準同型 $\delta$ が誘導する同型 $\mathbb{Z}_p/\mathbb{Z}\to\varprojlim^1p^n\mathbb{Z}$ の逆写像を、符号を除いて明示したものである($x\in\mathbb{Z}_p$ を $a_n\equiv x\bmod p^n$ なる $(a_n)\in\prod_n\mathbb{Z}$ に持ち上げると $\delta(x)=[(a_n-a_{n+1})_n]$ であり、$\bar\varphi(\delta(x))=a_0-x\equiv-x\bmod\mathbb{Z}$ となる)。

複体の射影系と Milnor 完全列

複体の射影系のMilnor完全列

$A$ を環とし、$(C_n^\bullet,\rho_n\colon C_{n+1}^\bullet\to C_n^\bullet)_{n\in\mathbb{N}}$ を $A$ 加群の複体(コチェイン複体)と鎖写像からなる $\mathbb{N}$ 上の射影系とする。各次数 $q$ について射影系 $(C_n^q)_n$ が Mittag-Leffler 条件をみたす(たとえば各 $\rho_n$ が次数ごとに全射である)と仮定し、$C^\bullet:=\varprojlim_nC_n^\bullet$(次数ごとの射影極限)とおく。このとき各 $q$ について自然な短完全列
$$ 0\longrightarrow\varprojlim{}^1_nH^{q-1}(C_n^\bullet)\longrightarrow H^q(C^\bullet)\longrightarrow\varprojlim_nH^q(C_n^\bullet)\longrightarrow0 $$
が存在する。

各次数 $q$ で def-mittag-leffler-lim1 の写像 $\Delta^q\colon\prod_nC_n^q\to\prod_nC_n^q$ を考える。$\rho_n$ が鎖写像なので $\Delta^q$ は微分と可換であり、$\Delta=(\Delta^q)_q$ は複体の射 $\prod_nC_n^\bullet\to\prod_nC_n^\bullet$ である(直積複体の微分は成分ごとの微分)。次数ごとに $\ker\Delta^q=\varprojlim_nC_n^q=C^q$ であり、仮定と thm-mittag-leffler-vanishing の 2 により $\operatorname{coker}\Delta^q=\varprojlim^1_nC_n^q=0$ である。よって
$$ 0\longrightarrow C^\bullet\longrightarrow\prod_nC_n^\bullet\xrightarrow{\ \Delta\ }\prod_nC_n^\bullet\longrightarrow0 $$
は複体の短完全列であり、コホモロジーの長完全列
$$ H^{q-1}\Bigl(\prod_nC_n^\bullet\Bigr)\xrightarrow{\Delta_*}H^{q-1}\Bigl(\prod_nC_n^\bullet\Bigr)\xrightarrow{\ \partial\ }H^q(C^\bullet)\longrightarrow H^q\Bigl(\prod_nC_n^\bullet\Bigr)\xrightarrow{\Delta_*}H^q\Bigl(\prod_nC_n^\bullet\Bigr) $$
が得られる。直積複体のコホモロジーは各成分のコホモロジーの直積である(核・像は成分ごとに計算される)ので、$H^q(\prod_nC_n^\bullet)=\prod_nH^q(C_n^\bullet)$ であり、この同一視のもとで $\Delta_*$ は $([c_n])_n\mapsto([c_n]-\rho_n([c_{n+1}]))_n$、すなわち射影系 $(H^q(C_n^\bullet))_n$ に対する def-mittag-leffler-lim1 の写像 $\Delta$ である。したがって長完全列の完全性から
$$ 0\longrightarrow\operatorname{coker}\bigl(\Delta_*|_{H^{q-1}}\bigr)\xrightarrow{\ \partial\ }H^q(C^\bullet)\longrightarrow\ker\bigl(\Delta_*|_{H^{q}}\bigr)\longrightarrow0 $$
が完全であり、$\operatorname{coker}=\varprojlim^1H^{q-1}(C_n^\bullet)$、$\ker=\varprojlim H^q(C_n^\bullet)$ である。構成はすべて射影系の射と両立するので自然である。$\square$

位相空間と層への応用

thm-mittag-leffler-milnor の形の完全列を Milnor 完全列という。代表的な応用を挙げる。

  1. 空間の増大列。位相空間 $X$ が開集合の増大列 $X_0\subset X_1\subset\cdots$ の和 $X=\bigcup_nX_n$ であり、$\mathcal{F}$ を $X$ 上のアーベル群の層とする。$\mathcal{F}$ の脆弱層(flasque 層)による分解 $\mathcal{I}^\bullet$ をとると、制限写像 $\Gamma(X_{n+1},\mathcal{I}^q)\to\Gamma(X_n,\mathcal{I}^q)$ は全射で $\Gamma(X,\mathcal{I}^q)=\varprojlim_n\Gamma(X_n,\mathcal{I}^q)$ なので、thm-mittag-leffler-milnor により層コホモロジーの短完全列
    $$ 0\to\varprojlim{}^1_nH^{q-1}(X_n,\mathcal{F})\to H^q(X,\mathcal{F})\to\varprojlim_nH^q(X_n,\mathcal{F})\to0 $$
    が得られる(Stacks Cohomology of Sheaves 章 Derived limits 節も参照)。CW 複体(CW複体)$X$ と部分複体の増大列 $X_n$ に対する特異コホモロジーでも同じ形の完全列 $0\to\varprojlim^1H^{q-1}(X_n;G)\to H^q(X;G)\to\varprojlim H^q(X_n;G)\to0$ が成り立つ(Hat02 Theorem 3F.8。もとは Mil62)。各 $H^{q-1}(X_n;G)$ が有限群のとき(たとえば $G$ が有限で $X_n$ が有限複体のとき)は Mittag-Leffler 条件により $\varprojlim^1$ が消え、$H^q(X;G)=\varprojlim H^q(X_n;G)$ である。
  2. ファイブレーションの塔。ファイブレーションの列 $\cdots\to X_{n+1}\to X_n\to\cdots\to X_0$ の極限 $X=\varprojlim X_n$ のホモトピー群について、短完全列 $0\to\varprojlim^1_n\pi_{i+1}(X_n)\to\pi_i(X)\to\varprojlim_n\pi_i(X_n)\to0$ が成り立つ(BK72 IX §3)。Postnikov塔がその典型である。
  3. 層の射影系と $\mathbf{R}\varprojlim$。位相空間(または景)$X$ 上のアーベル群の層の射影系 $(\mathcal{F}_n)_n$ に対し、導来圏 $D(X)$ の対象 $\mathbf{R}\varprojlim\mathcal{F}_n$ が定まり、完全三角(三角圏) $\mathbf{R}\varprojlim\mathcal{F}_n\to\prod_n\mathcal{F}_n\xrightarrow{\Delta}\prod_n\mathcal{F}_n\to$ がある。その大域切断のコホモロジーについて $0\to\varprojlim^1_nH^{q-1}(X,\mathcal{F}_n)\to H^q(X,\mathbf{R}\varprojlim\mathcal{F}_n)\to\varprojlim_nH^q(X,\mathcal{F}_n)\to0$ が成り立ち、開集合の基底の各 $U$ で $H^p(U,\mathcal{F}_n)=0$($p>0$)かつ $(\mathcal{F}_n(U))_n$ が Mittag-Leffler 条件をみたすならば $\mathbf{R}\varprojlim\mathcal{F}_n=\varprojlim\mathcal{F}_n$ である(Stacks Cohomology of Sheaves 章 Derived limits 節)。$\ell$ 進係数のコホモロジー $H^q(X,\mathbb{Z}_\ell):=\varprojlim_nH^q(X,\mathbb{Z}/\ell^n)$ をこの枠組みで扱うとき、係数の射影系 $(\mathbb{Z}/\ell^n)$ は推移写像が全射なので Mittag-Leffler 条件をみたす(ℓ進コホモロジー)。
形式関数の定理・Artin–Rees の補題との関係

Mittag-Leffler 条件は Grothendieck が EGA3 0_III §13 で、形式スキーム(形式スキーム)上の連接層のコホモロジーを扱うために導入した。Har77 II.9.1 も形式スキームの節の冒頭で thm-mittag-leffler-vanishing の 3 を述べている。

  1. Artin–Reesの補題。$A$ を Noether 環、$I$ をイデアル、$M$ を有限生成 $A$ 加群(有限生成加群)、$N\subset M$ を部分加群とすると、ある $c$ が存在して $n\ge c$ で $I^nM\cap N=I^{n-c}(I^cM\cap N)$ が成り立つ(AM69 Corollary 10.10)。したがって射影系 $(N/(N\cap I^nM))_n$ の射影極限は $I$ 進完備化 $\hat N=\varprojlim N/I^nN$ に一致し、各段の完全列 $0\to N/(N\cap I^nM)\to M/I^nM\to(M/N)/I^n(M/N)\to0$ において左端の射影系は推移写像が全射なので Mittag-Leffler 条件をみたす。thm-mittag-leffler-vanishing の 3 により $0\to\hat N\to\hat M\to\widehat{M/N}\to0$ は完全であり、Noether 環上の有限生成加群に対して $I$ 進完備化は完全関手である(AM69 Proposition 10.12)。
  2. 形式関数の定理。$f\colon X\to Y$ を Noether スキーム(Noetherスキーム)の固有射、$\mathcal{F}$ を $X$ 上の連接層、$y\in Y$ とし、$X_n$ を $y$ のファイバーの $n$ 次無限小近傍とすると、$(R^if_*\mathcal{F})^{\wedge}_y\cong\varprojlim_nH^i(X_n,\mathcal{F}|_{X_n})$ が成り立つ(形式関数の定理、Har77 III.11.1、EGA3 4.1.5)。証明では、$\mathfrak{m}$ 進フィルトレーションから作られる加群の射影系について、Artin–Rees の補題と有限生成性を用いて、比較すべき核・余核の射影系が本質的に零(prop-mittag-leffler-sufficient の 2)であることを示し、射影極限をとっても同型が保たれることを導く。結晶コホモロジーで固有滑らかな持上げ $X/W$ の $W_n$ 上のde Rhamコホモロジーの射影極限を $X/W$ の de Rham コホモロジーと比較する際にも、同じ定理が用いられる。
名の由来と位相的な Mittag-Leffler の定理

名は複素解析の Mittag-Leffler の定理(有理型関数の存在)に由来する。開集合 $U\subset\mathbb{C}$ の離散な点列に主要部を指定したとき、それらを主要部にもつ有理型関数が存在するというこの定理は、$U$ をコンパクトな部分集合(コンパクト空間)の増大列 $K_n$ で尽くし、各段で作った有理型関数を Rungeの定理による正則関数で修正して収束させることで証明される。「有限段の解を、次の段で(前の段を壊さない範囲で)修正し、極限で貼り合わせる」というこの論法が、rem-mittag-leffler-vanishing-source で述べた推移写像が全射な射影系での $\Delta$ の全射性の証明、および prop-mittag-leffler-stable の帰納的構成と同じ構造をもつことから、Grothendieck は EGA3 0_III §13 でこの条件を Mittag-Leffler 条件と名づけた(命名はこの類似にちなむ)。
同じ原理の位相的な形が Bourbaki の「Mittag-Leffler の定理」である。完備な距離空間(完備距離空間。より一般に可算な基本近傍系をもつ完備 Hausdorff 一様空間。Hausdorff空間)と一様連続写像からなる $\mathbb{N}$ 上の射影系 $(X_n)$ において、各推移写像の像 $\rho_n(X_{n+1})$ が $X_n$ で稠密ならば、射影極限 $\varprojlim X_n$ の各 $X_n$ への像は稠密であり、とくに各 $X_n$ が空でなければ $\varprojlim X_n$ も空でない(Bou98 Chapter II §3.5 Theorem 1)。「像が安定する」という代数的な Mittag-Leffler 条件は、この「像が稠密である」という条件の離散版にあたり、prop-mittag-leffler-stable の 3 がその対応物である。

関連項目

参考文献

[1]
Charles A. Weibel, An Introduction to Homological Algebra, Cambridge University Press, 1994, §3.5($\varprojlim^1$、Mittag-Leffler 条件、導来関手としての解釈、複体の塔と Milnor 型完全列)
[2]
Michael F. Atiyah, Ian G. Macdonald, Introduction to Commutative Algebra, Addison-Wesley, 1969, Proposition 6.1(降鎖条件と極小条件)、Chapter 10(Corollary 10.10 Artin–Rees の補題、Proposition 10.12 完備化の完全性)
[3]
Robin Hartshorne, Algebraic Geometry, Springer, 1977, II.9.1(Mittag-Leffler 条件と射影極限の完全性)、III.11.1(形式関数の定理)
[4]
Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002, §3.F(Theorem 3F.8、CW 複体の増大列に対する $\varprojlim^1$ を含む Milnor 完全列)
[5]
Nicolas Bourbaki, General Topology: Chapters 1–4, Springer-Verlag, 1998, Chapter II §3.5 Theorem 1(完備一様空間の射影系に対する Mittag-Leffler の定理)
[6]
Aldridge K. Bousfield, Daniel M. Kan, Homotopy Limits, Completions and Localizations, Springer, 1972, Chapter IX §3(ファイブレーションの塔のホモトピー群と $\varprojlim^1$ の完全列)
[7]
Alexander Grothendieck, Jean Dieudonné, Éléments de géométrie algébrique III : Étude cohomologique des faisceaux cohérents, Première partie, Publications Mathématiques de l'IHÉS 11, pp. 5–167, 1961, 0_III §13(射影極限と Mittag-Leffler 条件の導入、13.2 完全性)、§4(形式関数の定理 4.1.5)
[8]
John Milnor, On axiomatic homology theory, Pacific Journal of Mathematics 12, pp. 337–341, 1962, CW 複体の増大列に対する $\varprojlim^1$ を含むコホモロジーの完全列
[9]
The Stacks Project Authors, The Stacks Project, The Stacks Project Authors, 閲覧日 2026年9月22日

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