接層(tangent sheaf)とは、スキームの射 $X\to S$ の相対 Kähler 微分の層 $\Omega^1_{X/S}$ の双対 $T_{X/S}=\mathcal{H}om(\Omega^1_{X/S},\mathcal{O}_X)$ のことで、アフィン開集合 $\operatorname{Spec}B$ の上の切断は導分 $B\to B$(ベクトル場)である。滑らかな有理点ではファイバーが Zariski 接空間に一致し、射影直線では $T_{\mathbb{P}^1}\cong\mathcal{O}(2)$ で大域ベクトル場は 3 次元、$\mathbb{P}^n$ では Euler 列から $h^0=(n+1)^2-1$ と高次コホモロジーの消滅が従う。滑らかな射には相対接層の完全列があり、$H^1(X,T_X)$ は滑らかなスキームの 1 次変形を分類する。
前提知識: Kähler微分, 導分, 局所自由層, 準連接層, Zariski接空間
可微分多様体の上のベクトル場は、関数を微分する作用素、すなわち関数環の導分と同じものである(接束)。スキームでは接ベクトルを点ごとに集めて束を作る代わりに、この「導分」の見方を層の言葉で採る。Kähler微分 の層 $\Omega^1_{X/S}$ は導分の普遍的な受け手なので、その双対 $\mathcal{H}om(\Omega^1_{X/S},\mathcal{O}_X)$ の切断は、ちょうど $\mathcal{O}_X$ の導分になる。これが接層である。
この記事では接層を定義し、アフィン開集合の上の切断が導分であることと、滑らかな有理点ではファイバーが Zariski 接空間に一致することを示す。主定理は射影空間の接層の計算である。射影直線では $T_{\mathbb{P}^1}\cong\mathcal{O}(2)$ で大域ベクトル場が $\partial_x,x\partial_x,x^2\partial_x$ で張られることを直接示し、一般の $\mathbb{P}^n$ では Euler 列から $h^0(T_{\mathbb{P}^n})=(n+1)^2-1$ と高次コホモロジーの消滅を導く。さらに相対接層の完全列を述べ、滑らかさの仮定を外した反例を挙げる。
$f\colon X\to S$ をスキームの射とし、$\Omega^1_{X/S}$ を相対 Kähler 微分の層(Kähler微分 の記事の定義「相対微分形式の層」)、$d\colon\mathcal{O}_X\to\Omega^1_{X/S}$ を普遍導分とする。
$\mathcal{O}_X$ 加群の層
$$
T_{X/S}:=\mathcal{H}om_{\mathcal{O}_X}(\Omega^1_{X/S},\mathcal{O}_X)
$$
を $f$ の相対接層(relative tangent sheaf)という。$S=\operatorname{Spec}k$($k$ は体)のとき $T_X:=T_{X/k}$ と書き、$X$ の接層(tangent sheaf)という。開集合 $U$ の上の切断 $\xi\in\Gamma(U,T_{X/S})$ を $U$ 上の(相対)ベクトル場という。
この定義は Har77 II §8(p. 180、体の上の非特異多様体の場合)のものと同じである。$X$ が体 $k$ 上滑らかで次元 $n$ なら $\Omega^1_{X/k}$ は階数 $n$ の局所自由層であり(Kähler微分 の記事の定理「滑らかな射の相対微分形式」)、その双対 $T_X$ も階数 $n$ の局所自由層である(局所自由層 の記事の命題「局所自由層の構成で閉じること」)。
$V=\operatorname{Spec}A\subset S$、$U=\operatorname{Spec}B\subset f^{-1}(V)$ をアフィン開集合とする。
要点:$\widetilde M$ から $\mathcal{O}_U$ への射は加群の射と同じで、加群の射は Kähler 微分の普遍性で導分と同じである。
1:$\Gamma(U,T_{X/S})=\operatorname{Hom}_{\mathcal{O}_U}(\Omega^1_{X/S}|_U,\mathcal{O}_U)$ であり、$\Omega^1_{X/S}|_U\cong\widetilde{\Omega_{B/A}}$(Kähler微分 の記事の命題「局所的な記述」)である。アフィンスキーム上で $\widetilde M$ から $\mathcal{O}_U$ 加群 $\mathcal{G}$ への射は $B$ 線形写像 $M\to\Gamma(U,\mathcal{G})$ と一対一に対応する(Stacks Lemma 26.7.1、Tag 01I7、p. 2283)。よって $\Gamma(U,T_{X/S})\cong\operatorname{Hom}_B(\Omega_{B/A},B)$ であり、Kähler 微分の普遍性(Kähler微分 の記事の定義「Kähler微分の加群」)によりこれは $\operatorname{Der}_A(B,B)$ に $\varphi\mapsto\varphi\circ d$ で同型である。2:仮定のもとで $B$ は Noether 環で $\Omega_{B/A}$ は有限生成、したがって有限表示の $B$ 加群である(Kähler微分 の記事の命題「局所的な記述」)。有限表示の $M$ について $\mathcal{H}om_{\mathcal{O}_U}(\widetilde M,\widetilde N)\cong\widetilde{\operatorname{Hom}_B(M,N)}$ である(Stacks Lemma 26.7.2 (3)、Tag 01I8、pp. 2283–2284)ので、$T_{X/S}|_U\cong\widetilde{\operatorname{Hom}_B(\Omega_{B/A},B)}=\widetilde{\operatorname{Der}_A(B,B)}$ であり、$\operatorname{Hom}_B$ は有限生成加群の間では有限生成なので連接である。$\square$
導分としての読み方。 1 により、$U$ 上のベクトル場 $\xi$ は $A$ 上の導分 $D_\xi=\xi\circ d\colon B\to B$ であり、関数 $b$ を $\xi$ の方向に微分したものが $D_\xi(b)=\langle\xi,db\rangle$ である。$\mathbb{A}^n_A=\operatorname{Spec}A[x_1,\dots,x_n]$ では $\Omega$ が $dx_1,\dots,dx_n$ を基底とする自由加群なので(Kähler微分 の記事の命題「多項式環の微分加群」)、$T_{\mathbb{A}^n_A/A}$ はその双対基底である偏微分 $\partial/\partial x_1,\dots,\partial/\partial x_n$ を基底とする自由加群である。
$k$ を体、$X$ を $k$ スキーム、$x\in X(k)$ を有理点とし、$\mathfrak{m}_x$ を局所環 $\mathcal{O}_{X,x}$ の極大イデアル、$T_{X,x}=\operatorname{Hom}_k(\mathfrak{m}_x/\mathfrak{m}_x^2,k)$ を Zariski 接空間(Zariski接空間)とする。
要点:有理点では $\mathcal{O}_{X,x}=k\oplus\mathfrak{m}_x$ なので、$k$ に値をとる導分は $\mathfrak{m}_x/\mathfrak{m}_x^2$ 上の線形形式と同じである。
$R:=\mathcal{O}_{X,x}$ とおく。茎 $(\Omega^1_{X/k})_x=\Omega_{R/k}$ である(Kähler微分 の記事の命題「局所化との交換」)。1:$\operatorname{Hom}_k(\Omega_{R/k}\otimes_Rk,k)=\operatorname{Hom}_R(\Omega_{R/k},k)=\operatorname{Der}_k(R,k)$($k$ は $R/\mathfrak{m}_x$ として $R$ 加群)である。$x$ は有理点なので $R=k\oplus\mathfrak{m}_x$ である。$k$ 導分 $D\colon R\to k$ は $k$ 上で $0$ であり、$a,b\in\mathfrak{m}_x$ について $D(ab)=a(x)D(b)+b(x)D(a)=0$ なので $\mathfrak{m}_x^2$ 上で $0$ である。よって $D$ は線形形式 $\mathfrak{m}_x/\mathfrak{m}_x^2\to k$ を定める。逆に線形形式 $\lambda$ に対し $D(c+a):=\lambda(\bar a)$($c\in k$、$a\in\mathfrak{m}_x$)とおくと、$D((c+a)(c'+a'))=c\lambda(\bar a')+c'\lambda(\bar a)=(c+a)(x)D(c'+a')+(c'+a')(x)D(c+a)$ なので $k$ 導分である。2 つの対応は互いに逆である。2:$x$ の近傍で $\Omega^1_{X/k}$ は基底 $\omega_1,\dots,\omega_n$ をもつとしてよい。$T_X$ はその双対基底 $\xi_1,\dots,\xi_n$ をもつ自由加群で、$T_X\otimes\kappa(x)$ は $\bar\xi_1,\dots,\bar\xi_n$ を基底とし、$\operatorname{Hom}_k(\Omega\otimes\kappa(x),k)$ は $\bar\omega_i$ の双対基底をもつ。自然な写像は $\bar\xi_i$ を $\bar\omega_i$ の双対基底の元に写すので同型であり、1 の同型と合成すると、$\xi$ を $\bar f\mapsto\langle\xi,df\rangle(x)=D_\xi(f)(x)$ に写す写像になる。$\square$
1 は Har77 II Proposition 8.7(p. 174)の余接空間の同型 $\mathfrak{m}_x/\mathfrak{m}_x^2\cong\Omega_{R/k}\otimes k$ の双対である。2 の仮定は外せない(ex-tangent-sheaf-counterexamples の 1 行目)。
$k$ を体、$\mathbb{P}^1=\mathbb{P}^1_k$ の同次座標を $x_0,x_1$ とし、$U_0=D_+(x_0)=\operatorname{Spec}k[x]$($x=x_1/x_0$)、$U_1=D_+(x_1)=\operatorname{Spec}k[y]$($y=x_0/x_1$)とおく。$U_0\cap U_1=\operatorname{Spec}k[x,x^{-1}]$ の上で $y=x^{-1}$ である。
$T|_{U_0}$ は $\partial_x$ を、$T|_{U_1}$ は $\partial_y$ を基底とする自由加群である(前節の $\mathbb{A}^1$ の場合)。$U_0\cap U_1$ の上で導分 $\partial_y$ を関数 $x=y^{-1}$ に施すと $\partial_y(y^{-1})=-y^{-2}=-x^2$ だから、導分として
$$
\partial_y=-x^2\,\partial_x
$$
である($k[x,x^{-1}]$ の $k$ 導分は $x$ での値で決まる)。
1:$\mathcal{O}(2)$ は $U_0$ の上で $x_0^2$、$U_1$ の上で $x_1^2$ を基底とし、重なりでは $x_1^2=x^2x_0^2$ である。$\varphi\colon T\to\mathcal{O}(2)$ を $U_0$ の上で $\partial_x\mapsto x_0^2$、$U_1$ の上で $\partial_y\mapsto-x_1^2$ と定めると、重なりで $\partial_y=-x^2\partial_x\mapsto-x^2x_0^2=-x_1^2$ となって整合するので、$\varphi$ は貼り合わさる。局所的に基底を基底に写すので同型である。
2:大域切断は、$U_0$ 上の $a(x)\partial_x$($a\in k[x]$)と $U_1$ 上の $b(y)\partial_y$($b\in k[y]$)で重なりで一致するものの組である。重なりで $b(y)\partial_y=-x^2b(x^{-1})\partial_x$ だから、条件は $k[x,x^{-1}]$ の中の等式
$$
a(x)=-x^2\,b(x^{-1})
$$
である。$b(y)=\sum_jb_jy^j$ とすると右辺は $-\sum_jb_jx^{2-j}$ で、これが $x$ の多項式であるためには $j\ge3$ の係数がすべて $0$ でなければならない。逆に $\deg b\le2$ なら $a(x):=-x^2b(x^{-1})$ は次数 $2$ 以下の多項式である。よって大域切断は次数 $2$ 以下の $a$ による $a(x)\partial_x$ 全体と一致し、$\partial_x,x\partial_x,x^2\partial_x$ が基底である。それぞれ $U_1$ の上では $-y^2\partial_y$、$-y\partial_y$、$-\partial_y$ である。$\square$
2 の 3 つのベクトル場は、$\mathbb{P}^1$ の自己同型群 $\mathrm{PGL}_2(k)$ の 1 径数部分群(平行移動 $x\mapsto x+c$、拡大 $x\mapsto cx$、$x\mapsto x/(1-cx)$)の速度に当たり、$\dim\mathrm{PGL}_2=3$ と一致する。$H^1(\mathbb{P}^1,T_{\mathbb{P}^1})=0$ は同じ座標変換を使った Čech コホモロジーの計算で示され、$\mathbb{P}^1$ が変形しないことを意味する(変形理論 の記事の例「射影直線は剛である」)。
$k$ を体、$n\ge1$、$X=\mathbb{P}^n_k$ とする。
1:Kähler微分 の記事の例「射影空間の Euler 列」で証明された短完全列
$$
0\to\Omega^1_{X/k}\to\mathcal{O}_X(-1)^{\oplus(n+1)}\xrightarrow{\ q\ }\mathcal{O}_X\to0,\qquad q(f_0,\dots,f_n)=\textstyle\sum_ix_if_i
$$
から出発する。3 項とも局所自由層で、各 $D_+(x_j)$ の上で $q$ は分裂する($\mathcal{O}$ の生成元を第 $j$ 成分の生成元に持ち上げればよい)。局所的に分裂する短完全列に $\mathcal{H}om(-,\mathcal{O}_X)$ を施すと、局所的には分裂した列の双対なので短完全列が得られる。$\mathcal{H}om(\mathcal{O}(-1),\mathcal{O})\cong\mathcal{O}(1)$、$\mathcal{H}om(\Omega^1,\mathcal{O})=T_X$ であり、$q$ の双対は $1\mapsto(x_0,\dots,x_n)$ である。
2:$\mathbb{P}^n_k$ の直線束のコホモロジーについて次を使う。$H^0(X,\mathcal{O})=k$、$H^0(X,\mathcal{O}(1))$ は $x_0,\dots,x_n$ を基底とする $(n+1)$ 次元の空間、$0< i< n$ ではすべての $m$ について $H^i(X,\mathcal{O}(m))=0$、$m>-n-1$ なら $H^n(X,\mathcal{O}(m))$ は $H^0(X,\mathcal{O}(-m-n-1))=0$ の双対なので $0$(以上 Har77 III Theorem 5.1 (a)(b)(d)、p. 225)、$i>n$ では $H^i=0$(Grothendieck の消滅定理、同 III Theorem 2.7、p. 208)。とくに $i\ge1$ について $H^i(X,\mathcal{O})=H^i(X,\mathcal{O}(1))=0$ である。1 の列のコホモロジー長完全列
$$
0\to H^0(\mathcal{O})\to H^0(\mathcal{O}(1))^{\oplus(n+1)}\to H^0(T_X)\to H^1(\mathcal{O})\to\cdots\to H^i(\mathcal{O}(1))^{\oplus(n+1)}\to H^i(T_X)\to H^{i+1}(\mathcal{O})\to\cdots
$$
で、$i\ge1$ について $H^i(T_X)$ は $0$ と $0$ に挟まれるので $0$ であり、$H^0$ については $0\to k\to k^{(n+1)^2}\to H^0(T_X)\to0$ が完全なので $\dim H^0(T_X)=(n+1)^2-1$ である。$\square$
1 は Har77 II Example 8.20.1(p. 182)の列である。$(n+1)^2-1$ は $\mathbb{P}^n_k$ の自己同型群 $\mathrm{PGL}_{n+1}(k)$(Har77 II Example 7.1.1、p. 151)の次元に等しい。$n=1$ では thm-tangent-sheaf-p1 と一致する。$H^1(T_X)=0$ は $\mathbb{P}^n$ の 1 次変形が自明なものに限ることを意味する(変形理論 の記事の定理「滑らかなスキームの1次変形の分類」)。射影束 $\mathbb{P}(\mathcal{E})\to S$ の相対接層についての同様の列は、射影束 の記事の定理「相対 Euler 列」にある。
$f\colon X\to Y$、$g\colon Y\to S$ をスキームの射とし、$f$ は滑らかであるとする。このとき $\mathcal{O}_X$ 加群の短完全列
$$
0\longrightarrow T_{X/Y}\longrightarrow T_{X/S}\longrightarrow\mathcal{H}om_{\mathcal{O}_X}(f^*\Omega^1_{Y/S},\mathcal{O}_X)\longrightarrow0
$$
がある。$\Omega^1_{Y/S}$ が階数有限の局所自由層なら(たとえば $g$ が滑らかなら)、右端は $f^*T_{Y/S}$ である。
要点:滑らかな $f$ については Kähler 微分の第 1 基本完全列が左でも完全で、右端が局所自由なので局所的に分裂する。
$f$ が滑らかなので $0\to f^*\Omega^1_{Y/S}\to\Omega^1_{X/S}\to\Omega^1_{X/Y}\to0$ は完全である(Stacks Lemma 29.35.16、Tag 02K4、p. 2496。右側の完全性は Kähler微分 の記事の注意「スキームでの形」)。$\Omega^1_{X/Y}$ は階数有限の局所自由層である(Kähler微分 の記事の定理「滑らかな射の相対微分形式」)。$\Omega^1_{X/Y}$ が自由になるアフィン開集合 $U$ の上では、その基底を $\Omega^1_{X/S}(U)$ に持ち上げて分裂を得る。局所的に分裂する短完全列に $\mathcal{H}om(-,\mathcal{O}_X)$ を施すと短完全列になり、これが主張の列である。$\Omega^1_{Y/S}$ が階数有限の局所自由層なら、局所的に基底をとって $\mathcal{H}om(f^*\Omega^1_{Y/S},\mathcal{O}_X)\cong f^*\mathcal{H}om(\Omega^1_{Y/S},\mathcal{O}_Y)=f^*T_{Y/S}$ である。$\square$
$S=\operatorname{Spec}k$ で $Y$ も $k$ 上滑らかなら、列は $0\to T_{X/Y}\to T_X\to f^*T_Y\to0$ となる。$X$ を $Y$ の有理点 $y$ のファイバー $X_y$ に制限すると $f^*T_Y|_{X_y}=T_{Y,y}\otimes\mathcal{O}_{X_y}$ であり、この列の連結準同型 $T_{Y,y}\to H^1(X_y,T_{X_y})$ が族 $f$ の Kodaira–Spencer 写像である(変形理論 の記事の定義「Kodaira–Spencer写像」)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $\Omega^1_{X/k}$ の局所自由性(prop-tangent-sheaf-fiber の 2) | 尖点 $X=\operatorname{Spec}k[x,y]/(y^2-x^3)$ の原点(標数 $\ne2,3$) | $T_X\otimes\kappa(x)\to T_{X,x}$ が同型であること |
| 局所 Noether・局所有限型(prop-tangent-sheaf-derivations の 2) | $X=\operatorname{Spec}k[x_1,x_2,\dots]$(可算無限個の変数) | $T_{X/k}$ が準連接であること |
| $f$ の滑らかさ(prop-tangent-sheaf-relative) | 標数 $p$ の Frobenius $f\colon\mathbb{A}^1_k\to\mathbb{A}^1_k$、$t\mapsto t^p$ | $T_X\to f^*T_Y$ の全射性 |
1 行目。 $B=k[x,y]/(y^2-x^3)$ は $x\mapsto t^2$、$y\mapsto t^3$ により $k[t^2,t^3]\subset k[t]$ と同型な整域である。$D\in\operatorname{Der}_k(B,B)$ について、$y^2=x^3$ を微分して $2y\,D(y)=3x^2D(x)$、すなわち $D(x)=f(t)$、$D(y)=g(t)$ とおくと $2t^3g=3t^4f$、$g=\tfrac32tf$ である。$f$ の定数項 $f(0)$ が $0$ でなければ $g$ は $t$ の 1 次の項 $\tfrac32f(0)t$ をもつが、$k[t^2,t^3]$ の元は 1 次の項をもたないので矛盾する。よって $f(0)=0$ であり、$f\in k[t^2,t^3]$ は $t^2$ 以上の項しかもたず、$g=\tfrac32tf$ は $t^3$ 以上の項しかもたない。したがってどのベクトル場 $D$ も原点で $D(x)(0)=D(y)(0)=0$ となり、$T_X\otimes\kappa(0)\to T_{X,0}$ は零写像である。他方、$y^2-x^3\in(x,y)^2$ なので原点の $\mathfrak{m}/\mathfrak{m}^2=(x,y)/\bigl((x,y)^2+(y^2-x^3)\bigr)=(x,y)/(x,y)^2$ は $\bar x,\bar y$ を基底とし、$T_{X,0}$ は $2$ 次元である。
2 行目。 $B=k[x_1,x_2,\dots]$ について $\Omega_{B/k}$ は $dx_1,dx_2,\dots$ を基底とする自由加群なので、$\Gamma(X,T)=\operatorname{Hom}_B(\Omega_{B/k},B)\cong\prod_iB$ であり、同様に $\Gamma(D(x_1),T)\cong\prod_iB_{x_1}$ である(prop-tangent-sheaf-derivations の 1 は仮定なしに成り立つ)。$T$ が準連接なら $\Gamma(D(x_1),T)=\Gamma(X,T)_{x_1}$ のはずである。ところが $(x_1^{-i})_{i\ge1}\in\prod_iB_{x_1}$ は $(\prod_iB)_{x_1}$ の像に入らない。像の元は $(b_i/x_1^N)_i$($N$ は $i$ によらない)の形で、$b_i/x_1^N=x_1^{-i}$ なら $b_i=x_1^{N-i}$ となり、$i>N$ では $B$ の元でないからである。
3 行目。 $X=\operatorname{Spec}k[t]$、$Y=\operatorname{Spec}k[s]$、$f^*(s)=t^p$ とする。$f^*\Omega^1_Y\to\Omega^1_X$ は $ds\mapsto d(t^p)=pt^{p-1}dt=0$ なので零写像であり、双対の $T_X\to f^*T_Y$ も零写像である。$f^*T_Y\cong\mathcal{O}_X\ne0$ なので全射でない。$f$ は有限平坦だが、原点のファイバー $\operatorname{Spec}k[t]/(t^p)$ が被約でないので滑らかでない。
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