多角形の等周問題(isoperimetric problem for polygons)とは、周の長さと辺の数 $n$ を決めた多角形のうち面積が最大のものを求める問題である。周の長さが $L$ の $n$ 角形の面積は $\frac{L^2}{4n\tan(\pi/n)}$ 以下で、等号は正 $n$ 角形のときに限る。内接円をもつ多角形では、周を接線の長さ $r\tan\beta_i$ の和で書き $\tan$ の凸性で直接示せる。一般の場合は、最大の $n$ 角形の存在を認め、へこみの折り返し、隣り合う辺をそろえる取り替え、4 辺を保つ曲げで、最大のものが凸・等辺・円に内接、つまり正 $n$ 角形だと示す。存在を示さずにこの論法を使うと誤りうる(Perron のパラドックス)。同じ仮定で、辺の数を決めないと最大はなく、面積は円の $\frac{L^2}{4\pi}$ 未満である。
前提知識: 三角形の等周問題, 円に内接する四角形, Jensenの不等式(高校数学), 三角形の面積の公式
長さ $12$ の紐で四角形を作る。三角形の等周問題 では、周が同じ三角形の中で正三角形が最も広いことを示した。四角形ではどうだろうか。
周 12 の四角形。長方形 2×4 は面積 8、1 つの角が 60° のひし形は面積 9√3/2、正方形は面積 9
周 $12$ の正三角形(1 辺 $4$)の面積は $4\sqrt3=6.92\ldots$、正方形(1 辺 $3$)は $9$、正六角形(1 辺 $2$、1 辺 $2$ の正三角形 6 つ)は $6\cdot\dfrac{\sqrt3}4\cdot2^2=6\sqrt3=10.39\ldots$ である。周 $12$ の円は半径 $\dfrac6\pi$ で、面積は $\pi\cdot\dfrac{36}{\pi^2}=\dfrac{36}\pi=11.45\ldots$ である。辺の数が増えるほど広くなり、円に近づく。
周 12 の正三角形、正方形、正六角形、円。面積は 4√3、9、6√3、36/π で、辺の数が増えるほど大きい
この記事で答える問いは次の 4 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 正 $n$ 角形を $n$ 個の二等辺三角形に分ける | 正 $n$ 角形の面積 $\dfrac{L^2}{4n\tan(\pi/n)}$ | 等周比 |
| 内接円の接線の長さ | $L=2r\sum\tan\beta_i$ | 凸関数の Jensen の不等式 |
| 二等辺三角形に取り替える | 最大の $n$ 角形は辺が等しい | 変分(形を少し動かす) |
| 対角の和が $180^\circ$ | 最大の $n$ 角形は円に内接する | 極値の必要条件 |
| 最大があると仮定する | 最大の存在 | コンパクト性 |
$n\ge3$ とする。平面の $n$ 個の点 $P_1,P_2,\ldots,P_n$ を順に線分で結び、$P_n$ から $P_1$ にもどる閉じた折れ線を考える。この折れ線が自分自身と交わらない(どの 2 本の線分も、隣り合う 2 本が端点を共有するほかには共有点をもたない)とき、折れ線が囲む図形を $n$ 角形 といい、各点を頂点、各線分を辺という。辺の長さの和を 周の長さ という。
この記事では、比べる範囲を広くとるため、内角が $180^\circ$ の頂点(両隣の頂点と一直線に並ぶ頂点)も許す。すべての内角が $180^\circ$ 以下の $n$ 角形を、この記事では 凸 という(多角形の内角の和と外角の和 の凸多角形はすべての内角が $180^\circ$ より小さいものなので、それより少し広い)。すべての辺の長さが等しく、すべての内角が等しい $n$ 角形を 正 $n$ 角形 という。
内角 $180^\circ$ の頂点を許すと、たとえば正方形の 1 辺の中点を頂点に加えたものも 5 角形に数える。こう決めても、主定理の答え(正 $n$ 角形が最大)は変わらない。正 $n$ 角形の内角は $\dfrac{(n-2)\cdot180^\circ}n<180^\circ$ なので、$180^\circ$ の角を許さない普通の $n$ 角形の範囲でも、正 $n$ 角形は比べる相手に入っているからである。
周の長さが $L$ の正 $n$ 角形の内接円の半径は $r=\dfrac L{2n\tan(\pi/n)}$、面積は
$$
S_n(L)=\frac{L^2}{4n\tan\frac\pi n}
$$
である。
段 1(中心)。正 $n$ 角形では、各頂点の内角の二等分線がすべて 1 点 $O$ で交わり、$O$ と各辺の両端を結ぶと、頂角が $\dfrac{2\pi}n$ の合同な $n$ 個の二等辺三角形に分かれる。
正 $n$ 角形 $P_1P_2\cdots P_n$ の内角を $\alpha$ とする(内角の和は $(n-2)\pi$ なので $\alpha=\dfrac{(n-2)\pi}n$。多角形の内角の和と外角の和)。頂点 $P_1$、$P_2$ の内角の二等分線の交点を $O$ とすると、三角形 $OP_1P_2$ は底角が $\dfrac\alpha2$ の二等辺三角形で、$OP_1=OP_2$ である。三角形 $OP_2P_3$ は、$OP_2$ が共通、$P_2P_3=P_1P_2$、間の角 $\angle OP_2P_3=\alpha-\dfrac\alpha2=\dfrac\alpha2=\angle OP_1P_2$ なので、三角形 $OP_1P_2$ と合同である(2 辺とその間の角)。よって $OP_3=OP_2$、$\angle OP_3P_2=\dfrac\alpha2$ で、$O$ は $P_3$ の内角の二等分線の上にもある。これを $P_4,\ldots,P_n$ と続けると、$O$ と各辺の両端を結んだ $n$ 個の三角形はすべて合同な二等辺三角形である。これらは $O$ のまわりを 1 周するので、頂角の和は $2\pi$、各頂角は $\dfrac{2\pi}n$ である。
$L=12$ とする。
(1) $n=3$:$\tan\dfrac\pi3=\sqrt3$ から $S_3=\dfrac{144}{12\sqrt3}=4\sqrt3$。
(2) $n=4$:$\tan\dfrac\pi4=1$ から $S_4=\dfrac{144}{16}=9$。
(3) $n=6$:$\tan\dfrac\pi6=\dfrac1{\sqrt3}$ から $S_6=\dfrac{144}{24/\sqrt3}=6\sqrt3$。
いずれも ex-pip-regular-start の値と一致する。
| $n$ | $3$ | $4$ | $6$ | $12$ | 円 |
|---|---|---|---|---|---|
| 周 $12$ の最大の面積 | $4\sqrt3=6.92\ldots$ | $9$ | $6\sqrt3=10.39\ldots$ | $6+3\sqrt3=11.19\ldots$ | $\dfrac{36}\pi=11.45\ldots$ |
| 等周比 $\dfrac{L^2}S$ | $12\sqrt3=20.78\ldots$ | $16$ | $8\sqrt3=13.85\ldots$ | $96-48\sqrt3=12.86\ldots$ | $4\pi=12.56\ldots$ |
表の「最大の面積」が本当に最大であることが、この記事の主定理(thm-pip-main)である。$n=12$ では $\tan\dfrac\pi{12}=\tan15^\circ=2-\sqrt3$ を使った。等周比 $\dfrac{L^2}{S_n}=4n\tan\dfrac\pi n$ は $n$ が増えると小さくなり、円の $4\pi$ に近づく(cor-pip-increasing)。
まず、存在を仮定せずに示せる場合を扱う。すべての辺が 1 つの円に接している凸多角形である。
内角がすべて $180^\circ$ より小さい凸 $n$ 角形の内部に円があり、$n$ 本の辺がすべてその円に接するとき、この円を 内接円 といい、$n$ 角形は内接円をもつという。
三角形、正 $n$ 角形、ひし形は内接円をもつ。長方形 $2\times4$ は内接円をもたない(長い辺の組に接する円の直径は $2$、短い辺の組に接する円の直径は $4$ で、両方に接する円はない)。
内接円をもつ $n$ 角形の周の長さを $L$、面積を $S$ とすると
$$
S\le\frac{L^2}{4n\tan\frac\pi n}
$$
であり、等号は正 $n$ 角形のときに限る。
方針:面積と周の長さを、内接円の半径 $r$ と、中心で見た角で書く。周の長さは $\tan$ の和になり、$\tan$ が下に凸であることから下限が出る。
段 1(面積)。内接円の中心を $O$ とする。$O$ と各辺の両端を結ぶと、$n$ 角形は $n$ 個の三角形に分かれる。どの三角形も、底辺をその辺とすると高さは $r$(中心から接線までの距離)である。よって
$$
S=\frac12r\cdot(\text{辺の長さの和})=\frac12rL
$$
である。
段 2(接線の長さ)。辺 $e_i$ が内接円に接する点を $T_i$ とし、頂点 $V_i$ は辺 $e_i$ と $e_{i+1}$ の共有点とする($e_{n+1}=e_1$)。四角形 $OT_iV_iT_{i+1}$ は $T_i$、$T_{i+1}$ で直角で、$OT_i=OT_{i+1}=r$ なので、2 つの直角三角形 $OT_iV_i$、$OT_{i+1}V_i$ は合同である(斜辺 $OV_i$ が共通で、他の 1 辺が等しい)。$\angle T_iOT_{i+1}=2\beta_i$ とおくと、$\angle T_iOV_i=\beta_i$ で
$$
V_iT_i=V_iT_{i+1}=r\tan\beta_i
$$
である。
段 3(角の条件)。角 $2\beta_1,\ldots,2\beta_n$ は $O$ のまわりを 1 周するので、$2\beta_1+\cdots+2\beta_n=2\pi$、つまり $\beta_1+\cdots+\beta_n=\pi$ である。四角形 $OT_iV_iT_{i+1}$ の角の和から、頂点 $V_i$ の内角は $2\pi-\dfrac\pi2-\dfrac\pi2-2\beta_i=\pi-2\beta_i$ で、これは正なので $0<\beta_i<\dfrac\pi2$ である。
段 4(周の長さ)。各辺は、両端の頂点から接点までの 2 つの線分に分かれる。段 2 から
$$
L=2r(\tan\beta_1+\tan\beta_2+\cdots+\tan\beta_n)
$$
である。関数 $\tan x$ は $0< x<\dfrac\pi2$ で下に凸(2 階導関数 $\dfrac{2\sin x}{\cos^3x}>0$)なので、Jensenの不等式(高校数学) と段 3 により
$$
\tan\beta_1+\cdots+\tan\beta_n\ge n\tan\frac{\beta_1+\cdots+\beta_n}n=n\tan\frac\pi n
$$
であり、等号は $\beta_1=\cdots=\beta_n$ のときに限る。よって $L\ge2rn\tan\dfrac\pi n$、つまり $r\le\dfrac L{2n\tan(\pi/n)}$ である。
段 5(面積の上限)。段 1 と段 4 から
$$
S=\frac12rL\le\frac12\cdot\frac L{2n\tan(\pi/n)}\cdot L=\frac{L^2}{4n\tan\frac\pi n}
$$
である。
段 6(等号)。等号は段 4 で等号のとき、つまり $\beta_1=\cdots=\beta_n=\dfrac\pi n$ のときに限る。このとき、段 3 から内角はすべて $\pi-\dfrac{2\pi}n$ で等しく、段 2 から接点までの長さはすべて $r\tan\dfrac\pi n$ で、辺の長さはすべて $2r\tan\dfrac\pi n$ で等しい。よって正 $n$ 角形である。逆に正 $n$ 角形では prop-pip-regular により等号が成り立つ。$\square$
内接円をもつ五角形。頂点 V から 2 つの接点までの長さは等しく、中心 O で見た角の半分 β を使って r tan β と書ける
ex-pip-start (3) のひし形(1 辺 $3$、角 $60^\circ$ と $120^\circ$)は内接円をもつ。段 3 の関係「内角 $=\pi-2\beta$」から、内角 $60^\circ$ の頂点では $\beta=60^\circ$、内角 $120^\circ$ の頂点では $\beta=30^\circ$ である。
$$
\tan60^\circ+\tan30^\circ+\tan60^\circ+\tan30^\circ=2\sqrt3+\frac2{\sqrt3}=\frac{8}{\sqrt3}=4.61\ldots
$$
で、$4\tan\dfrac\pi4=4$ より大きい。$L=12=2r\cdot\dfrac8{\sqrt3}$ から $r=\dfrac{3\sqrt3}4$、面積は $\dfrac12\cdot\dfrac{3\sqrt3}4\cdot12=\dfrac{9\sqrt3}2$ で、ex-pip-start (3) と一致する。上限 $S_4(12)=9$ より小さい。
$n=3$ の場合、三角形の頂点 $A$ での $\beta$ は $\dfrac\pi2-\dfrac A2$ で、$\tan\beta=\dfrac1{\tan\frac A2}$ となる。これは 三角形の等周問題 の主定理の別証明(角の半分の $\cot$ の和)と同じ計算である。
thm-pip-tangential の証明は「最大の $n$ 角形がある」ことを使っていない。しかし、内接円をもたない $n$ 角形(長方形 $2\times4$ など)には使えない。一般の $n$ 角形では、別の道をとる。
方針は「面積が最大の $n$ 角形があるとして、それが正 $n$ 角形でなければ、周を変えずにもっと広くできる」である。この論法には、最大の $n$ 角形があることが欠かせない(ex-pip-cx-perron)。この記事では、最大があることを次の事実として認める。
$n\ge3$ と $L>0$ を決めると、周の長さが $L$ の $n$ 角形の中に、面積が最大のものがある。
これは、自分自身と交わってもよい周 $L$ の閉じた折れ線の頂点の座標の組の集まりが「閉じていて有界」であることと、面積が座標の連続関数であることから導かれる(最大値・最小値の定理(高校数学) の多変数版。rem-pip-compact)。ただし、自分自身と交わる折れ線を除く扱いに注意が要り、この記事では証明しない。
最大の $n$ 角形が正 $n$ 角形であることを、3 つの補題で示す。どの補題も「$n$ 角形を作りかえて、周の長さを変えずに面積を増やす」操作である(lem-pip-convex と lem-pip-bend は辺の長さの並びも変えない)。
凸でない $n$ 角形は、辺の長さの並びを変えずに、面積のもっと大きい $n$ 角形に作りかえられる。
四角形 $A(-3,0)$、$B(0,4)$、$C(3,0)$、$D(0,1)$ を考える。$D$ は三角形 $ABC$ の内部にあり、頂点 $D$ の内角は $180^\circ$ より大きい(へこんでいる)。辺は $AB=BC=5$、$CD=DA=\sqrt{10}$ である。面積は三角形 $ABC$ から三角形 $ACD$ を除いたもので、$\dfrac12\cdot6\cdot4-\dfrac12\cdot6\cdot1=12-3=9$ である。
$D$ を直線 $AC$($x$ 軸)で折り返した $D'(0,-1)$ をとると、四角形 $ABCD'$ は凸で、辺は $AB=BC=5$、$CD'=D'A=\sqrt{10}$ と同じ並びである。面積は $12+3=15$ で、$9+2\cdot3$ に等しい。へこみの三角形 $ACD$ の分を取りもどし、さらに同じ面積を外に加えたことになる。
へこんだ四角形 ABCD。D は三角形 ABC の内部にあり、面積は 9
D を直線 AC で折り返した凧形 ABCD'。辺の長さの並びは同じで、面積は 15
要点:$n$ 角形を囲む最小の凸多角形(凸包)を考える。凸でない $n$ 角形には、凸包の 1 辺 $P_iP_j$ と、$n$ 角形の辺の列 $P_i\to P_{i+1}\to\cdots\to P_j$ にはさまれた「へこみ」がある。この辺の列を直線 $P_iP_j$ に関して折り返すと、辺の長さの並びは変わらず、面積はへこみの面積の 2 倍だけ増える。ex-pip-flip はその例である。
段 1(へこみを見つける)。凸でない $n$ 角形には、内角が $180^\circ$ より大きい頂点 $V$ がある。$V$ の近くで $n$ 角形は半平面より広い部分を占めるので、$V$ は凸包のふちにはない。$n$ 角形の頂点のうち凸包のふちの上にあるものは、$n$ 角形の順と凸包の周の順が同じになる(この事実は証明しない)。そこで、$V$ をはさんで、$n$ 角形の順で続く凸包のふちの上の頂点を $P_i$、$P_j$ とすると、線分 $P_iP_j$ は凸包の辺の上にあり、間の頂点 $P_{i+1},\ldots,P_{j-1}$ はどれも凸包の内部にある。
段 2(折り返す)。凸包は直線 $P_iP_j$ の片側(内側)にあるので、$n$ 角形の全体もその側にある。間の頂点は凸包の内部にあるので、直線から離れて内側にある。辺の列 $P_i\to\cdots\to P_j$ を直線 $P_iP_j$ に関して折り返すと、折り返した列は、端点 $P_i$、$P_j$ 以外では外側にある。したがって、残りの辺の列と交わらず、新しい折れ線も自分自身と交わらない。折り返しは長さを変えないので、辺の長さの並びは同じである。
段 3(面積)。辺の列 $P_i\to\cdots\to P_j$ と線分 $P_iP_j$ で囲まれた部分(へこみ)の面積を $D>0$ とする。もとの $n$ 角形に、へこみを加えると、残りの辺の列と線分 $P_iP_j$ で囲まれた図形になる。新しい $n$ 角形は、この図形に、折り返したへこみ(面積 $D$)を線分 $P_iP_j$ の外側に加えたものである。よって面積は $D+D=2D$ だけ増える。$\square$
凸 $n$ 角形の隣り合う 2 辺 $P_1P_2$、$P_2P_3$ の長さが違い、$P_2$ の内角が $180^\circ$ より小さければ、周の長さを変えずに、面積のもっと大きい $n$ 角形に作りかえられる。
要点:$P_2$ を、周を変えずに $P_1P_3$ を底辺とする二等辺三角形の頂点 $P_2'$ に取り替える。三角形の等周問題 の命題により三角形の面積が増え、凸なので残りの部分とは重ならない。
$P_2$ の内角は $180^\circ$ より小さいので、$P_2$ は直線 $P_1P_3$ の上にない。$P_2$ を、直線 $P_1P_3$ に関して $P_2$ と同じ側にあり、$P_1P_2'=P_2'P_3=\dfrac{P_1P_2+P_2P_3}2$ となる点 $P_2'$ に取り替える。三角形 $P_1P_2P_3$ と $P_1P_2'P_3$ は、底辺 $P_1P_3$ と周の長さが同じで、後者は二等辺三角形なので、三角形の等周問題 の命題「1 辺と周を固定したときの最大」により、後者の面積の方が大きい($P_1P_2\ne P_2P_3$ なので等号にならない)。
凸 $n$ 角形なので、残りの頂点 $P_4,\ldots,P_n$ と $n$ 角形の残りの部分は、直線 $P_1P_3$ の反対側(直線の上を含む)にある。三角形 $P_1P_2'P_3$ は $P_2$ の側にあるので、残りの部分と重ならない。よって新しい $n$ 角形の面積は、三角形の面積の差だけ増える。周の長さは $P_1P_2'+P_2'P_3=P_1P_2+P_2P_3$ から変わらない。$\square$
最後の補題は、4 辺の長さを変えずに四角形を曲げる操作である。
4 点 $Q_1,Q_2,Q_3,Q_4$ があり、$Q_1$ と $Q_3$ が直線 $Q_2Q_4$ の反対側にあるとする。辺の長さを $a=Q_1Q_2$、$b=Q_2Q_3$、$c=Q_3Q_4$、$d=Q_4Q_1$、角を $\theta=\angle Q_2Q_1Q_4$、$\varphi=\angle Q_2Q_3Q_4$ とし、三角形 $Q_1Q_2Q_4$ と $Q_2Q_3Q_4$ の面積の和を $K$ とする。
(1) $K^2=\dfrac{(ad+bc)^2}4-\dfrac{(a^2+d^2-b^2-c^2)^2}{16}-\dfrac{abcd}2\bigl(1+\cos(\theta+\varphi)\bigr)$ である。
(2) $\theta+\varphi\ne180^\circ$ なら、$Q_1$、$Q_4$ と 4 つの長さ $a,b,c,d$ を変えずに $Q_2$、$Q_3$ を少し動かして、$Q_1$ と $Q_3$ が直線 $Q_2Q_4$ の反対側にあるまま $K$ を大きくできる。
要点:対角線 $Q_2Q_4$ に 2 つの三角形で余弦定理を使うと $ad\cos\theta-bc\cos\varphi$ が一定になる。面積の式 $4K=2ad\sin\theta+2bc\sin\varphi$ と 2 乗して足すと (1) になり、$K$ は $\cos(\theta+\varphi)$ が小さいほど大きい。$Q_2$ を $Q_1$ のまわりに回して $\theta$ を増やすと $\varphi$ も増えるので、$\theta+\varphi$ を $180^\circ$ に近づけられる。
段 1((1) の式)。$Q_1$ と $Q_3$ は直線 $Q_2Q_4$ の反対側にあるので、$0<\theta<\pi$、$0<\varphi<\pi$ で、$4K=2ad\sin\theta+2bc\sin\varphi$ である(三角形の面積の公式)。対角線 $Q_2Q_4$ の長さを $e$ とすると、余弦定理により $e^2=a^2+d^2-2ad\cos\theta=b^2+c^2-2bc\cos\varphi$ なので、$2ad\cos\theta-2bc\cos\varphi=a^2+d^2-b^2-c^2$ である。この式と $4K$ の式をそれぞれ 2 乗して足し、$\sin^2+\cos^2=1$ と加法定理 $\cos\theta\cos\varphi-\sin\theta\sin\varphi=\cos(\theta+\varphi)$ を使うと
$$16K^2+(a^2+d^2-b^2-c^2)^2=4a^2d^2+4b^2c^2-8abcd\cos(\theta+\varphi)$$
となる。右辺を $4(ad+bc)^2-8abcd\bigl(1+\cos(\theta+\varphi)\bigr)$ と書きかえて 16 で割ると (1) である。これは用語解説 Heronの公式 の定理「凸四角形の面積」と同じ計算である。
段 2(曲げ方)。$Q_1$、$Q_4$ を止め、$Q_2$ を $Q_1$ を中心とする半径 $a$ の円の上で動かして $\theta$ を変える。$Q_3$ は、直線 $Q_2Q_4$ に関して $Q_1$ と反対側にあって $Q_2Q_3=b$、$Q_3Q_4=c$ となる点にとる。$e^2=a^2+d^2-2ad\cos\theta$ は $\theta$ が増えると増え($0<\theta<\pi$ で $\cos$ は減る)、$\cos\varphi=\dfrac{b^2+c^2-e^2}{2bc}$ は減るので $\varphi$ も増える。$\theta$ の変化が小さければ $\varphi$ の変化も小さく($\varphi$ は $\theta$ の連続関数)、$b,c,e$ で三角形が作れることも、$Q_1$ と $Q_3$ が反対側にあることも保たれる。したがって $\theta+\varphi$ は $\theta$ について増加し、連続に変わる。
段 3(大きくする)。$0<\theta+\varphi<2\pi$ で、$\cos(\theta+\varphi)$ は $\theta+\varphi$ が $\pi$ より小さい範囲では減少、大きい範囲では増加する。$\theta+\varphi<\pi$ なら $\theta$ を少し増やすと、$\theta+\varphi$ は $\pi$ を越えない範囲で増え、$\cos(\theta+\varphi)$ は小さくなる。(1) により $K$ は大きくなる。$\theta+\varphi>\pi$ なら $\theta$ を少し減らせばよい。$\square$
$Q_1=A$、$Q_2=B$、$Q_3=C$、$Q_4=D$ として、$AB=2$、$BC=3$、$CD=3$、$DA=4$ の四角形を考える。lem-pip-bend (1) の式は、$(ad+bc)^2=17^2$、$a^2+d^2-b^2-c^2=2$、$abcd=72$ から
$$
K^2=\frac{289}4-\frac4{16}-36\bigl(1+\cos(\theta+\varphi)\bigr)=36-36\cos(\theta+\varphi)
$$
となる。
(1) $\theta=\angle A=60^\circ$:$BD^2=4+16-16\cos60^\circ=12$、$\cos\varphi=\dfrac{9+9-12}{18}=\dfrac13$ で $\varphi=70.5\ldots^\circ$、$\theta+\varphi=130.5\ldots^\circ<180^\circ$ である。面積は $\dfrac12\cdot2\cdot4\sin60^\circ+\dfrac12\cdot3\cdot3\sin\varphi=2\sqrt3+3\sqrt2=7.70\ldots$ である($\sin\varphi=\dfrac{2\sqrt2}3$)。
(2) $\theta=90^\circ$:$BD^2=20$、$\cos\varphi=-\dfrac19$ で $\varphi=96.3\ldots^\circ$、$\theta+\varphi=186.3\ldots^\circ>180^\circ$ である。面積は $4+2\sqrt5=8.47\ldots$ である。
辺 2、3、3、4 の四角形で ∠A を 60° にしたもの。円に内接せず、面積は 2√3+3√2
同じ辺の長さで円に内接するように曲げた四角形。面積は最大の 6√2
周の長さが $L$ の $n$ 角形($n\ge3$)の面積 $S$ は
$$
S\le\frac{L^2}{4n\tan\frac\pi n}
$$
を満たし、等号は正 $n$ 角形のときに限る。ただし、面積が最大の $n$ 角形があること(rem-pip-existence)は証明せずに認める。
方針:面積が最大の $n$ 角形 $M$ をとり、3 つの補題で $M$ が正 $n$ 角形であることを示す。$n=3$ は 三角形の等周問題 の主定理なので、$n\ge4$ とする。
段 1(最大の $n$ 角形)。rem-pip-existence により、周の長さが $L$ の $n$ 角形の中に面積が最大のもの $M$ がある。
段 2($M$ は凸)。$M$ が凸でなければ、lem-pip-convex により、辺の長さの並びが同じで(したがって周の長さも $L$ で)面積のもっと大きい $n$ 角形がある。これは $M$ が最大であることに反する。よって $M$ は凸である。
段 3(曲げても広くならない)。$M$ の続いた 4 頂点 $Q_1,Q_2,Q_3,Q_4$ で、$Q_1$ と $Q_3$ が直線 $Q_2Q_4$ の反対側にあり、$Q_2$、$Q_3$ がどちらも直線 $Q_1Q_4$ の上にないものをとる($M$ に内角 $180^\circ$ の頂点がなければ、どの続いた 4 頂点もこの条件を満たす)。$M$ は凸なので、$M$ は四角形 $Q_1Q_2Q_3Q_4$ と、直線 $Q_1Q_4$ の反対側の残りの部分($n=4$ なら何もない)に分かれる。もし $\angle Q_2Q_1Q_4+\angle Q_2Q_3Q_4\ne180^\circ$(lem-pip-bend の $\theta+\varphi\ne180^\circ$)なら、lem-pip-bend (2) で $Q_2$、$Q_3$ だけを少し動かし、四角形の面積 $K$ を大きくできる。動きが小さければ、四角形は直線 $Q_1Q_4$ の同じ側にとどまって残りの部分と重ならず、辺の長さはどれも変わらない。こうしてできた $n$ 角形は周が $L$ で面積が $M$ より大きく、最大であることに反する。よって $\angle Q_2Q_1Q_4+\angle Q_2Q_3Q_4=180^\circ$ である。$Q_1$ と $Q_3$ が直線 $Q_2Q_4$ の反対側にあって対角の和が $180^\circ$ なので、4 点 $Q_1,Q_2,Q_3,Q_4$ は同じ円の上にある(円に内接する四角形 の、対角の和による判定)。
段 4($180^\circ$ の角はない)。$M$ に内角 $180^\circ$ の頂点があるとする。すべての頂点が一直線上にあることはない(面積が正)ので、頂点を順にたどると、内角 $180^\circ$ の頂点 $V$ で、次の頂点 $W$ の内角が $180^\circ$ より小さいものがある。$V$ の前の頂点を $U$、$W$ の次の頂点を $X$ とする。$U,V,W$ は一直線上にあり、$X$ はその直線の上にない($W$ の内角が $180^\circ$ より小さい)ので、$U$ と $W$ は直線 $VX$ の反対側にあり、$V$、$W$ は直線 $UX$ の上にない。よって段 3 を $Q_1=U$、$Q_2=V$、$Q_3=W$、$Q_4=X$ に使うと、4 点 $U,V,W,X$ は同じ円の上にある。しかし $U,V,W$ は一直線上にあり、円と直線の共有点は 2 個以下なので、これは起こらない。よって $M$ のすべての内角は $180^\circ$ より小さい。
段 5(辺はすべて等しい)。段 4 により $M$ の内角はすべて $180^\circ$ より小さい。$M$ の隣り合う 2 辺の長さが違えば、lem-pip-equal により、周が $L$ で面積のもっと大きい $n$ 角形がある。これは最大であることに反する。よって隣り合う辺はすべて等しく、$M$ のすべての辺の長さは $\dfrac Ln$ である。
段 6(すべての頂点が 1 つの円の上)。段 4 により、段 3 はどの続いた 4 頂点にも使える。頂点を $P_1,\ldots,P_n$ とし、3 点 $P_1,P_2,P_3$(一直線上にない)を通る円を $\Gamma$ とする。段 3 により $P_4$ は $P_1,P_2,P_3$ を通る円、つまり $\Gamma$ の上にある。次に $P_2,P_3,P_4$ を通る円は $\Gamma$ で(3 点を通る円は 1 つ)、段 3 により $P_5$ も $\Gamma$ の上にある。これを続けると、すべての頂点が $\Gamma$ の上にある。
段 7(正 $n$ 角形)。$\Gamma$ の中心を $O$ とする。$M$ は $\Gamma$ に内接する凸 $n$ 角形なので、頂点は $\Gamma$ の上をこの順に 1 周し、隣り合う頂点ではさまれた $n$ 個の弧の中心角の和は $2\pi$ である。各辺は長さ $\dfrac Ln$ の弦なので、その弧の中心角は、ある $\gamma$($0<\gamma\le\pi$)について $\gamma$ か $2\pi-\gamma$ である。中心角が $2\pi-\gamma$ で $\gamma$ と違う弧があるとすると、$2\pi-\gamma>\pi$ である。そのような弧が 2 つ以上なら、中心角の和が $2\pi$ を超えてしまう。ちょうど 1 つなら、和は $(2\pi-\gamma)+(n-1)\gamma=2\pi+(n-2)\gamma>2\pi$ となり、やはり矛盾する。よってすべての弧の中心角は $\gamma$ で、$n\gamma=2\pi$ から $\gamma=\dfrac{2\pi}n$ である。各頂点の内角は、その頂点を含まない $n-2$ 個の弧に対する円周角なので $\dfrac12(n-2)\cdot\dfrac{2\pi}n=\dfrac{(n-2)\pi}n$ で、すべて等しい。よって $M$ は正 $n$ 角形である。
段 8(結論)。段 7 と prop-pip-regular により、最大の面積は $\dfrac{L^2}{4n\tan(\pi/n)}$ である。どの $n$ 角形の面積もこれ以下である。等号が成り立つ $n$ 角形は面積が最大なので、段 2〜7 をその $n$ 角形に使えば正 $n$ 角形である。逆に正 $n$ 角形では等号が成り立つ。$\square$
段 7 の弧の議論を $n=4$、$\dfrac Ln=3$ で見ると、4 つの弧の中心角はどれも $\dfrac\pi2$ で、$M$ は 1 辺 $3$ の正方形になる。ex-pip-start と ex-pip-bend で見た正方形以外の四角形は、どれも段 5(辺が等しい)か段 3(対角の和が $180^\circ$)のどちらかを満たさず、正方形より狭い。
(2) ex-pip-flip の凧形(周 $10+2\sqrt{10}=16.32\ldots$、面積 $15$)では、上限は $\dfrac{(10+2\sqrt{10})^2}{16}=16.65\ldots$ で、$15$ より大きい。
周の長さ $L$ を決めると、正 $n$ 角形の面積 $S_n(L)$ は $n$ について増加し、すべての $n$ で $S_n(L)<\dfrac{L^2}{4\pi}$(同じ周の円の面積)である。
$S_n(L)=\dfrac{L^2}{4n\tan(\pi/n)}$ なので、$n\tan\dfrac\pi n$ が $n$ について減少することを示せばよい。$f(x)=\dfrac{\tan x}x$($0< x<\dfrac\pi2$)とおくと $n\tan\dfrac\pi n=\pi f\left(\dfrac\pi n\right)$ である。$f'(x)=\dfrac{x-\sin x\cos x}{x^2\cos^2x}=\dfrac{2x-\sin2x}{2x^2\cos^2x}$ で、$t>0$ のとき $\sin t< t$ なので $f'(x)>0$、$f$ は増加する。$\dfrac\pi{n+1}<\dfrac\pi n$ から $(n+1)\tan\dfrac\pi{n+1}< n\tan\dfrac\pi n$、つまり $S_n(L)< S_{n+1}(L)$ である。この証明は最大の存在を使わない。
後半は、$0< x<\dfrac\pi2$ で $\tan x>x$(正多角形で円周率を挟む の補題)を $x=\dfrac\pi n$ に使うと $n\tan\dfrac\pi n>\pi$ なので、$S_n(L)=\dfrac{L^2}{4n\tan(\pi/n)}<\dfrac{L^2}{4\pi}$ である。$\square$
cor-pip-increasing の後半と thm-pip-main を合わせると、周が $L$ のどの多角形の面積も $\dfrac{L^2}{4\pi}$ より小さい。これは 等周不等式(高校数学) の系「凸多角形の等周不等式」$L^2>4\pi S$ と同じ内容を、凸でない多角形まで含めて、別の道で示したことになる(ただし最大の存在を認めている)。
lem-pip-convex と lem-pip-bend は辺の長さの並びを変えない操作だった。したがって prf-pip-main の段 2〜4 と段 6 をそのまま使うと、「辺の長さの並びを決めた $n$ 角形のうち面積が最大のもの(があれば、それ)は、凸で円に内接する」ことが分かる(段 5 は辺の長さを変えるので使わない)。
四角形では、Heronの公式 の定理「凸四角形の面積」(Bretschneider の公式)から、最大の存在を仮定せずに直接分かる:辺を $a,b,c,d$、$s=\dfrac{a+b+c+d}2$、向かい合う角を $B$、$D$ とすると、凸四角形の面積 $K$ は $K^2=(s-a)(s-b)(s-c)(s-d)-abcd\cos^2\dfrac{B+D}2$ を満たし、第 2 項は $0$ 以上で、円に内接するとき $0$ になる。
thm-pip-main の結論「周の長さと辺の数を決めると、面積が最大の多角形があり、それは正 $n$ 角形である」の条件を外すと、次のように崩れる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 辺の数 $n$ を決める | 周 $12$ のすべての多角形 | 面積が最大の多角形がある |
| 周の長さだけを決める(辺の長さをすべて決める) | 辺 $2,3,3,4$ の四角形 | 最大が正 $n$ 角形である |
| 最大があることを確かめる | 「最大の正の整数は $1$」(Perron のパラドックス) | 「最大でなければ改良できる」から最大の形を結論してよい |
周 $12$ の多角形を、辺の数を決めずにすべて比べる。cor-pip-increasing により、正 $n$ 角形の面積 $4\sqrt3,\ 9,\ \ldots,\ 6\sqrt3,\ \ldots$ は $n$ とともに増え、どれも $\dfrac{36}\pi=11.45\ldots$ より小さい。$n\to\infty$ で $n\tan\dfrac\pi n\to\pi$ なので($\dfrac{\tan x}x\to1$)、面積は $\dfrac{36}\pi$ にいくらでも近づく。
どの多角形も、ある $n$ について $n$ 角形なので、thm-pip-main(最大の存在を認めている)により面積は $S_n(12)$ 以下で、$S_{n+1}(12)$ より小さい。つまり、どの多角形にもそれより広い多角形がある。面積が最大の多角形はない。上限 $\dfrac{36}\pi$ をとるのは円で、円は多角形ではない(等周不等式(高校数学))。
辺の長さを順に $2,3,3,4$ と決めた四角形の面積の最大は、ex-pip-bend で見たとおり、円に内接する場合の $6\sqrt2=8.48\ldots$ である(rem-pip-sides の Bretschneider の公式でも、$(6-2)(6-3)(6-3)(6-4)=72$ から最大は $\sqrt{72}$)。この四角形は辺の長さが違うので正方形ではない。周の長さだけを決めれば、1 辺 $3$ の正方形(面積 $9$)がもっと広い。辺の長さを決めたことで、lem-pip-equal の「隣り合う辺をそろえる」操作が使えなくなったのである。
次の「証明」を考える。
「最大の正の整数を $N$ とする。$N>1$ なら $N^2>N$ で、$N^2$ は $N$ より大きい正の整数になり、$N$ が最大であることに反する。よって $N=1$ である。」
結論「最大の正の整数は $1$」は誤りである。誤りの原因は最初の 1 文で、最大の正の整数は存在しない。「$1$ でなければもっと大きくできる」ことは正しいが、そこから言えるのは「最大があるなら $1$ である」ということだけで、最大がない以上、何も結論できない。
prf-pip-main の段 2〜7 も同じ形をしている。「正 $n$ 角形でなければ、もっと広くできる」から言えるのは「最大があるなら正 $n$ 角形である」ことだけである。この記事では段 1 で最大の存在(rem-pip-existence)を認めたので、結論が正しく出る。ex-pip-cx-no-n では、「辺を増やせばもっと広くできる」という同じ形の事実から、正しく「最大の多角形はない」と結論した。一方、thm-pip-tangential と 三角形の等周問題 の主定理は、上限を直接示しているので、存在を別に認める必要がない。
$n$ 角形は、頂点の座標を並べた $2n$ 個の数の組で表せる。平行移動で面積も周も変わらないので、$P_1$ を原点に置く。周の長さが $L$ なら、どの頂点も原点から $L$ 以内にあるので、組の集合は有界である。周の長さと面積(靴ひも公式 で頂点の座標の式として書ける)は座標の連続関数である。閉じた有界な集合の上の連続関数は最大値をとる(コンパクト空間)。
周の長さが $L$ の $n$ 角形の集合は閉じていない。自分自身と交わらない折れ線の列が、交わる折れ線(たとえば 2 本の辺が重なるもの)に近づくことがあるからである。そこで、自分自身と交わってもよい周 $L$ の閉じた折れ線すべての集合(閉じていて有界)で、靴ひも公式の値の絶対値を最大にするものを考える。この最大値をとる折れ線が、実は自分自身と交わらない凸 $n$ 角形であることを、この記事の補題に似た操作で示すと、rem-pip-existence が得られる。この部分はこの記事では証明しない。
19 世紀前半に Steiner は、図形を折り返したり対称にそろえたりして「円でない図形は、周を変えずにもっと広くできる」ことを巧みに示し、等周問題の答えは円だと結論した。しかし、その議論は最大の図形があることを仮定していた。
後に Weierstrass らは、変分法の立場から最大の存在を問題にし、存在まで含めた証明を与えた。ex-pip-cx-perron の論法の穴が、実際の数学の歴史の中で問題になったのである。一般の閉曲線の等周不等式の、存在を仮定しない証明の 1 つは 等周不等式(高校数学) にある。
thm-pip-tangential は、内接円をもつ多角形で、中心で見た角 $\beta_i$ を動かして比べた。逆に、多角形の内角(つまり各辺の向き)を決めて周を固定すると、内接円をもつものが面積最大になることが知られている(L'Huilier による結果。球面三角形の面積についての L'Huilierの定理 とは別のもの。この記事では証明しない)。
正 $n$ 角形が最大であることと、内接円をもつ多角形が最大であることは、どちらも「円に近い形ほど広い」ことの多角形版である。
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