連続関数環(ring of continuous functions)とは、位相空間 $X$ 上の実数値連続関数の全体 $C(X)$ に各点ごとの和と積を入れた可換環である。点 $x$ で $0$ になる関数の全体 $\mathfrak m_x$ は極大イデアルであり、一般の極大イデアルは零集合のなす z-超フィルターと一対一に対応する。Tychonoff 空間 $X$ がコンパクトであることは、極大イデアルがすべて $\mathfrak m_x$ の形であることと同値である。コンパクト Hausdorff 空間では $x\mapsto\mathfrak m_x$ が極大スペクトルへの同相写像になり、連続写像と環準同型が対応するので、空間は環 $C(X)$ から同相を除いて決まる。
前提知識: 位相空間, 連続関数, 可換環, 極大イデアル, Tychonoff空間
位相空間 $X$ 上の実数値連続関数の全体は、各点ごとの和と積で可換環になる。これを連続関数環 $C(X)$ という。点 $x$ で値をとる操作 $f\mapsto f(x)$ は環準同型 $C(X)\to\mathbb R$ であり、その核は極大イデアルである。$X$ がコンパクト Hausdorff 空間なら、逆に $C(X)$ の極大イデアルはすべてこの形をしており、極大イデアルの全体に自然な位相を入れると $X$ と同相になる。さらに連続写像と環準同型が一対一に対応し、空間 $X$ は環 $C(X)$ だけから同相を除いて決まる。コンパクトでない空間では、どの点にも対応しない極大イデアルが現れる。
この記事では、まず任意の位相空間について $C(X)$ の極大イデアルを零集合の超フィルターで記述し、それを使ってコンパクト性を極大イデアルで特徴づけ、コンパクト Hausdorff 空間を環 $C(X)$ から復元する定理を証明する。
位相空間 $X$ 上の実数値連続関数の全体を $C(X)$ と書き、和と積を
$$
(f+g)(x):=f(x)+g(x),\qquad (fg)(x):=f(x)g(x)\qquad(x\in X)
$$
で定める。$C(X)$ は定数関数 $1$ を単位元とする可換環であり、これを $X$ の連続関数環(ring of continuous functions)という。有界な連続関数の全体 $C^*(X)$ は $C(X)$ の部分環である。
実数 $c$ を値 $c$ の定数関数と同一視して $\mathbb R\subset C(X)$ とみなす。$f,g\in C(X)$ について、各点で $f(x)\le g(x)$ となることを $f\le g$ と書く。$f\in C(X)$ の零集合(位相)を $Z(f):=f^{-1}(0)$、その補集合を $\operatorname{coz}(f):=X\setminus Z(f)$ と書く。$Z(f)$ は閉集合、$\operatorname{coz}(f)$ は開集合である。$X$ の零集合の全体を $\mathcal Z(X)$ と書く。次の等式をよく使う。
$$
Z(f)\cap Z(g)=Z(f^2+g^2),\qquad Z(f)\cup Z(g)=Z(fg).
$$
$x\in X$ に対し $\mathfrak m_x:=\{f\in C(X)\mid f(x)=0\}$ とおく。$C(X)$ のイデアル $I$ が固定されている(fixed)とは、$\bigcap_{f\in I}Z(f)\neq\emptyset$、すなわち $I$ のすべての元が共通に $0$ になる点があることをいう。そうでないとき $I$ は自由(free)であるという。
値をとる写像 $\mathrm{ev}_x\colon C(X)\to\mathbb R$、$f\mapsto f(x)$ は環準同型で、定数関数があるので全射であり、核は $\mathfrak m_x$ である。$C(X)/\mathfrak m_x\cong\mathbb R$ は体なので、$\mathfrak m_x$ は極大イデアルである(極大イデアル の命題「剰余環が体であることとの同値」)。固定された極大イデアル $\mathfrak m$ は、共通の零点 $x$ について $\mathfrak m\subset\mathfrak m_x$ を満たし、極大性から $\mathfrak m=\mathfrak m_x$ となる。したがって固定された極大イデアルは $\mathfrak m_x$ の形のものに限る。
連続関数の少ない空間では、$C(X)$ は空間の点を見分けられない。たとえば $X$ が 2 点以上の密着位相の空間なら、連続関数は定数だけで $C(X)=\mathbb R$ となり、すべての点 $x$ について $\mathfrak m_x=\{0\}$ である。そこで主な定理では $X$ を Tychonoff空間($T_1$ で、点 $x$ とそれを含まない閉集合 $F$ に対して $f(x)=1$、$f|_F=0$ となる $f\in C(X)$ がある空間)と仮定する。このとき、$x$ を含む開集合 $W$ に $F=X\setminus W$ として上の $f$ をとると $x\in\operatorname{coz}(f)\subset W$ となるので、零集合の補集合の全体 $\{\operatorname{coz}(f)\}$ は $X$ の開基になる。コンパクト Hausdorff 空間は正規空間であり、Urysohnの補題により Tychonoff 空間である。
$X$ を位相空間とする。
1:$Z(f)=\emptyset$ なら $1/f$ は連続で $f\cdot(1/f)=1$ である。逆に $fg=1$ なら各点で $f(x)g(x)=1$ なので $f(x)\neq0$ である。2:$f\ge0$ なら $g:=\sqrt f$ は連続で $g^2=f$ であり、逆に平方は非負である。4 の前半:$f^n=0$ なら各点で $f(x)^n=0$ なので $f=0$ である。3 と 4 の後半は挙げた記事の例による。$\square$
2 により、順序 $f\le g$ は「$g-f$ が平方である」という環の言葉で書ける。このことから、環準同型は自動的に定数と順序を保つ。
$X,Y$ を位相空間とし、$\Phi\colon C(Y)\to C(X)$ を単位元を保つ環準同型とする。このとき $g\le g'$ なら $\Phi(g)\le\Phi(g')$ であり、すべての実数 $c$ について $\Phi(c)=c$ である。とくに $\Phi$ は $\mathbb R$ 線形である。
要点:$g'-g$ が平方なら $\Phi(g')-\Phi(g)$ も平方で非負になり、有理数の定数で挟めば実数の定数も保たれる。
$g\le g'$ なら、prop-cfr-basic の 2 により $g'-g=h^2$ と書けて、$\Phi(g')-\Phi(g)=\Phi(h)^2\ge0$ である。$\Phi(1)=1$ と加法性から、整数 $n$ について $\Phi(n)=n$、さらに $m\Phi(n/m)=\Phi(n)=n$ から有理数 $q$ について $\Phi(q)=q$ である。実数 $c$ と有理数 $q< c< q'$ について、単調性から $q\le\Phi(c)\le q'$ が各点で成り立つ。$q,q'$ を $c$ に近づけて $\Phi(c)=c$ を得る。最後に $\Phi(cg)=\Phi(c)\Phi(g)=c\Phi(g)$ である。$\square$
この節では $X$ を空でない位相空間とし、「イデアル」は $C(X)$ と異なる真のイデアルを指す。
零集合の族 $\mathcal F\subset\mathcal Z(X)$ が z-フィルターであるとは、次を満たすことをいう。
イデアル $I$ と z-フィルター $\mathcal F$ に対し
$$
Z[I]:=\{Z(f)\mid f\in I\},\qquad Z^{-1}[\mathcal F]:=\{f\in C(X)\mid Z(f)\in\mathcal F\}
$$
とおく。どちらも包含の向きを保つ。また定義から、つねに
$$
I\subset Z^{-1}\bigl[Z[I]\bigr],\qquad Z\bigl[Z^{-1}[\mathcal F]\bigr]=\mathcal F
$$
である(後者は、$\mathcal F$ の元はある $f$ の零集合であり、その $f$ が $Z^{-1}[\mathcal F]$ に属することによる)。
$X$ を空でない位相空間とする。
1:$I$ について。$Z(f)=\emptyset$ なら $f$ は単元(prop-cfr-basic の 1)で、単元を含むイデアルは $C(X)$ 全体なので、$\emptyset\notin Z[I]$ である。$X=Z(0)\in Z[I]$。$f,g\in I$ なら $f^2+g^2\in I$ で $Z(f)\cap Z(g)=Z(f^2+g^2)$ である。$f\in I$、$Z(f)\subset Z(h)$ なら $fh\in I$ で $Z(fh)=Z(f)\cup Z(h)=Z(h)$ である。よって $Z[I]$ は z-フィルターである。
$\mathcal F$ について。$Z(0)=X\in\mathcal F$ なので $0\in Z^{-1}[\mathcal F]$。$f,g\in Z^{-1}[\mathcal F]$ なら $Z(f+g)\supset Z(f)\cap Z(g)\in\mathcal F$ で、$Z(f+g)$ は零集合なので条件 3 により $\mathcal F$ に属する。$h\in C(X)$ について $Z(hf)\supset Z(f)$ から同様に $hf\in Z^{-1}[\mathcal F]$。$Z(1)=\emptyset\notin\mathcal F$ なので $1\notin Z^{-1}[\mathcal F]$ である。
2:$Z^{-1}\bigl[Z[\mathfrak m]\bigr]$ は 1 によりイデアルで $\mathfrak m$ を含むので、極大性から $\mathfrak m$ に等しい。z-フィルター $\mathcal F\supset Z[\mathfrak m]$ をとると、$Z^{-1}[\mathcal F]\supset Z^{-1}\bigl[Z[\mathfrak m]\bigr]=\mathfrak m$ はイデアルなので $\mathfrak m$ に等しく、$\mathcal F=Z\bigl[Z^{-1}[\mathcal F]\bigr]=Z[\mathfrak m]$ である。よって $Z[\mathfrak m]$ は z-超フィルターである。
3:イデアル $Z^{-1}[\mathcal F]$ を含む極大イデアル $\mathfrak m$ がある(極大イデアル の定理「真イデアルを含む極大イデアルの存在」)。$Z[\mathfrak m]\supset Z\bigl[Z^{-1}[\mathcal F]\bigr]=\mathcal F$ で、$Z[\mathfrak m]$ は z-フィルター、$\mathcal F$ は極大なので $Z[\mathfrak m]=\mathcal F$ である。2 から $Z^{-1}[\mathcal F]=Z^{-1}\bigl[Z[\mathfrak m]\bigr]=\mathfrak m$ となる。
最後の主張:2 により $\mathfrak m\mapsto Z[\mathfrak m]$ は単射で、3 と $Z\bigl[Z^{-1}[\mathcal F]\bigr]=\mathcal F$ により全射である。$\square$
3 の証明は極大イデアルの存在定理を使うので、選択公理(Zorn の補題)に依存する。点 $x$ に対応する $\mathfrak m_x$ には、$x$ を含む零集合の全体 $\{Z\in\mathcal Z(X)\mid x\in Z\}$ が対応する。
$X$ を Tychonoff 空間とする。$X$ がコンパクトであることと、$C(X)$ の極大イデアルがすべて固定されていること、すなわちすべて $\mathfrak m_x$ の形であることは同値である。このとき $x\mapsto\mathfrak m_x$ は、$X$ から $C(X)$ の極大イデアルの全体への全単射である。
コンパクトなら固定されていること:極大イデアル $\mathfrak m$ について、$Z[\mathfrak m]$ は閉集合の族で、thm-cfr-zultra により z-フィルターなので、有限個の元の共通部分は再び $Z[\mathfrak m]$ に属し、空でない。コンパクト空間では、このような族(有限交叉性をもつ閉集合族)の共通部分は空でない(有限交叉性 の定理「コンパクト性の言い換え」)。よって $\mathfrak m$ は固定されている。
固定されているならコンパクトであること:対偶を示す。$X$ がコンパクトでないとし、有限部分被覆をもたない開被覆 $\{U_s\}_{s\in S}$ をとる。
$$
I:=\Bigl\{f\in C(X)\Bigm|\text{ある有限集合 }T\subset S\text{ について }Z(f)\supset X\setminus\textstyle\bigcup_{s\in T}U_s\Bigr\}
$$
とおく。$Z(f+g)\supset Z(f)\cap Z(g)$ と $Z(hf)\supset Z(f)$ から、$I$ は和と $C(X)$ の元の掛け算で閉じる(有限集合 $T$ は和集合をとる)。有限個の $U_s$ では $X$ を覆えないので $Z(1)=\emptyset$ はどの $X\setminus\bigcup_{s\in T}U_s$ も含まず、$1\notin I$ である。よって $I$ は真のイデアルである。各 $x\in X$ について $x\in U_s$ となる $s$ を選び、Tychonoff 性により $f_x(x)=1$、$f_x|_{X\setminus U_s}=0$ となる $f_x\in C(X)$ をとる。$Z(f_x)\supset X\setminus U_s$ なので $f_x\in I$ である。$I$ を含む極大イデアル $\mathfrak m$ をとると、どの $x$ についても $f_x\in\mathfrak m$ かつ $f_x(x)\neq0$ なので、$\mathfrak m$ のすべての元が消える点はない。すなわち $\mathfrak m$ は自由である。
全単射であること:全射は前半による。$x\neq y$ なら、$\{x\}$ は閉集合($T_1$ 性)なので、Tychonoff 性により $g(y)=1$、$g(x)=0$ となる $g\in C(X)$ があり、$g\in\mathfrak m_x\setminus\mathfrak m_y$ である。$\square$
前半はコンパクト性だけを使い、Hausdorff 性を使わない。後半と単射性は Tychonoff 性を使う(下の反例の表)。
可換環 $A$ の極大イデアルの全体を $\operatorname{Max}A$ と書く。$a\in A$ に対し $O_a:=\{\mathfrak m\in\operatorname{Max}A\mid a\notin\mathfrak m\}$ とおくと、極大イデアルは素イデアルなので $O_a\cap O_b=O_{ab}$ であり、$O_1=\operatorname{Max}A$ である。よって $\{O_a\}_{a\in A}$ を開基とする位相が $\operatorname{Max}A$ に入る。これは $\operatorname{Spec}A$ の Zariski位相 の相対位相であり、この位相をもつ $\operatorname{Max}A$ を $A$ の極大スペクトルという。$O_a$ も位相も環の構造だけで決まるので、環同型 $A\cong B$ は同相 $\operatorname{Max}A\cong\operatorname{Max}B$ を引き起こす。
$X,Y$ をコンパクト Hausdorff 空間とする。
1:thm-cfr-compact により $\mu_X$ は全単射である。$f\in C(X)$ について
$$
\mu_X^{-1}(O_f)=\{x\in X\mid f\notin\mathfrak m_x\}=\operatorname{coz}(f)
$$
である。$\operatorname{coz}(f)$ は開集合なので $\mu_X$ は連続である。$X$ は Tychonoff 空間なので $\{\operatorname{coz}(f)\}$ は $X$ の開基であり、その像 $\mu_X(\operatorname{coz}(f))=O_f$ は開集合なので、$\mu_X$ は開写像でもある。よって $\mu_X$ は同相写像である。
2:単射であること。$h\neq h'$ なら $h(x)\neq h'(x)$ となる $x$ がある。$Y$ は Tychonoff 空間なので $g(h(x))=1$、$g(h'(x))=0$ となる $g\in C(Y)$ があり、$h^*(g)\neq h'^*(g)$ である。
全射であること。単位元を保つ環準同型 $\Phi\colon C(Y)\to C(X)$ をとる。$x\in X$ を固定すると、$\mathrm{ev}_x\circ\Phi\colon C(Y)\to\mathbb R$ は環準同型で、lem-cfr-constants により定数を保つので全射である。その核は剰余環が体 $\mathbb R$ なので極大イデアルであり、thm-cfr-compact によりただ一つの $y\in Y$ について $\mathfrak m_y$ に等しい。この $y$ を $h(x)$ とおく。$g\in C(Y)$ について $g-g(h(x))\in\mathfrak m_{h(x)}$ なので
$$
\Phi(g)(x)=\Phi\bigl(g(h(x))\bigr)(x)=g(h(x))
$$
である(2 つ目の等号は lem-cfr-constants)。よって $\Phi(g)=g\circ h$ である。$h$ の連続性:$g\in C(Y)$ について $h^{-1}(\operatorname{coz}(g))=\{x\mid g(h(x))\neq0\}=\operatorname{coz}(\Phi(g))$ は開集合で、$\{\operatorname{coz}(g)\}$ は $Y$ の開基なので $h$ は連続である。
3:同相写像 $h\colon X\to Y$ があれば、$h^*$ は環同型で逆は $(h^{-1})^*$ である。逆に環同型 $\Phi\colon C(Y)\to C(X)$ とその逆 $\Psi$ があるとする。2 により連続写像 $h\colon X\to Y$、$k\colon Y\to X$ で $\Phi=h^*$、$\Psi=k^*$ となるものがある。$g\in C(Y)$ について $(\Psi\circ\Phi)(g)=g\circ h\circ k$ なので $(h\circ k)^*=\Psi\circ\Phi=\mathrm{id}=(\mathrm{id}_Y)^*$ であり、2 の単射性($X=Y$ の場合)から $h\circ k=\mathrm{id}_Y$ である。同様に $k\circ h=\mathrm{id}_X$ であり、$h$ は同相写像である。$\square$
1 は AM69 第 1 章の演習 26(pp. 14–15)の主張である。2 は、コンパクト Hausdorff 空間の間の連続写像が、連続関数環の間の環準同型と(向きを逆にして)一対一に対応することを述べている。3 は環の同型だけで空間が決まることを言う。Engelking89 の Problem 3.12.22(pp. 239–241)は 3 を (c) に含み、この問題全体を Stone(1937)、Gelfand–Kolmogorov(1939)、Hewitt(1948, 1950)に帰している。
コンパクトでない Tychonoff 空間 $X$ では、thm-cfr-compact により $\operatorname{Max}C(X)$ は $\mu_X$ の像より真に大きい。一方、$C(X)$ 上の実数値の環準同型(核が剰余体 $\mathbb R$ をもつ極大イデアルになるもの)がすべて点での値になることは、$X$ が実コンパクト空間であることと同値である(実コンパクト空間 の命題「準同型による実コンパクト性の特徴づけ」)。
$X=\{1,\dots,n\}$ を離散空間とすると、$C(X)=\mathbb R^n$(成分ごとの演算)である。$X$ はコンパクト Hausdorff 空間なので、thm-cfr-compact により極大イデアルはちょうど $n$ 個の $\mathfrak m_i=\{f\mid f(i)=0\}$ であり、$\operatorname{Max}C(X)$ は $n$ 点の離散空間である。冪等元 $e_i$($i$ で $1$、ほかで $0$)は開かつ閉集合 $\{i\}$ に対応する。
$X=\mathbb N$ を離散空間とすると、$C(\mathbb N)$ は実数列全体の環 $\mathbb R^{\mathbb N}$ である。任意の部分集合 $A\subset\mathbb N$ は、$\mathbb N\setminus A$ の特性関数の零集合なので零集合であり、z-フィルターは $\mathbb N$ 上のフィルター、z-超フィルターは超フィルターと同じものになる。thm-cfr-zultra により、極大イデアルは超フィルター $\mathcal U$ と
$$
\mathfrak m_{\mathcal U}=\{f\in\mathbb R^{\mathbb N}\mid\{n\mid f(n)=0\}\in\mathcal U\}
$$
によって一対一に対応する。$\mathfrak m_{\mathcal U}$ が固定されているのは、$\mathcal U$ がある点 $n$ を含む集合の全体(単項超フィルター)のときで、このとき $\mathfrak m_{\mathcal U}=\mathfrak m_n$ である。単項でない超フィルターは存在するので(超フィルター)、自由な極大イデアルが存在する。たとえば台が有限な数列の全体は真のイデアルであり、それを含む極大イデアルはどれも自由である。
$C([0,1])$ の極大イデアル $\mathfrak m_0$ は有限生成でない。有限個の生成元の絶対値の和を $s$ とすると、$\sqrt s$ は $\mathfrak m_0$ に属するので $s$ の定数倍で抑えられるはずだが、$0$ の近くではそうならない。
$\mathfrak m_0=(f_1,\dots,f_n)$ と仮定し、$s:=|f_1|+\dots+|f_n|$ とおく。恒等関数 $t$ は $\mathfrak m_0$ に属するので $t=\sum_ih_if_i$ と書け、$t>0$ で $0< t\le(\max_i\sup|h_i|)\,s(t)$ となるから、$s$ は $(0,1]$ で正である。$g:=\sqrt s$ は連続で $g(0)=0$ なので $g\in\mathfrak m_0$ であり、$g=\sum_ik_if_i$ と書ける。$K:=\max_i\sup|k_i|$ とおくと $g\le Ks=Kg^2$ である。$g\neq0$ なので $K>0$ で、$t>0$ では $g(t)>0$ から $g(t)\ge1/K$ となる。これは $g(t)\to g(0)=0$($t\to0$)に反する。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| thm-cfr-compact の前半のコンパクト性 | 離散空間 $\mathbb N$(ex-cfr-naturals) | 極大イデアルがすべて固定されていること |
| thm-cfr-compact の後半の Tychonoff 性 | 特定点位相の $\mathbb N$(下の例) | 極大イデアルがすべて固定ならコンパクトであること |
| thm-cfr-gk の 1 の Hausdorff 性 | 2 点の密着空間 | $\mu_X$ が単射であること |
| thm-cfr-gk の 3 のコンパクト性 | $[0,\omega_1)$ と $[0,\omega_1]$(下の例) | 環の同型から同相が従うこと |
3 行目:2 点の密着空間はコンパクトで、連続関数は定数だけなので $C(X)=\mathbb R$ となり、2 点とも同じ極大イデアル $\{0\}$ に写る。
$\mathbb N$ に、$\emptyset$ と $0$ を含む部分集合の全体を開集合とする位相を入れる。連続関数 $f\colon\mathbb N\to\mathbb R$ について、開集合 $f^{-1}(\mathbb R\setminus\{f(0)\})$ は $0$ を含まないので空であり、$f$ は定数である。よって $C(\mathbb N)=\mathbb R$ で、極大イデアルは $\{0\}$ だけであり、これはどの点でも $\mathfrak m_n=\{0\}$ と固定されている。一方、開被覆 $\{\{0,n\}\}_{n\ge1}$ は有限部分被覆をもたないので、この空間はコンパクトでない。点 $1$ を含む開集合はつねに $0$ を含むので、この空間は $T_1$ でなく、Tychonoff 空間でない。
$\omega_1$ を最小の非可算順序数とし、順序数空間 $[0,\omega_1)$ と $[0,\omega_1]$ を考える。どちらも Tychonoff 空間で、$[0,\omega_1]$ はコンパクトだが、$[0,\omega_1)$ はコンパクトでない(可算コンパクト空間 の命題「$\omega_1$ は可算コンパクトだがコンパクトでない」)ので、両者は同相でない。制限 $\rho\colon C([0,\omega_1])\to C([0,\omega_1))$、$F\mapsto F|_{[0,\omega_1)}$ は環準同型である。$\omega_1$ は $[0,\omega_1)$ の閉包に属する(順序位相 の命題「非可算終点と点列」)ので、$[0,\omega_1)$ で一致する 2 つの連続関数は $\omega_1$ でも一致し、$\rho$ は単射である。$f\in C([0,\omega_1))$ はある $\gamma<\omega_1$ から先で定数 $c$ である(Tychonoffの板 の補題「連続関数は最後に一定」)。$F(\omega_1):=c$ として延ばすと、$F$ は点 $\omega_1$ の近傍 $(\gamma,\omega_1]$ で一定なので連続であり、$\rho(F)=f$ である。よって $\rho$ は環同型であり、thm-cfr-gk の 3 でコンパクト性を外せないことが分かる。この同型で点 $\omega_1$ の $\mathfrak m_{\omega_1}$ に対応する $C([0,\omega_1))$ の極大イデアル $\{f\mid f\text{ は最後に }0\}$ は自由である。
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