Hasse不変量(Hasse invariant)とは、標数 $p>0$ の体上の楕円曲線 $E$ について、絶対 Frobenius が 1 次元空間 $H^1(E,\mathcal{O}_E)$ に引き起こす $p$ 線形写像を、不変微分 $\omega$ の Serre 双対基底について表した値 $A(E,\omega)$ である。$p$ が奇素数で $E\colon y^2=f(x)$ なら $f^{(p-1)/2}$ の $x^{p-1}$ の係数に等しく、Legendre 族では Hasse 多項式 $H_p(\lambda)=\sum_i\binom{(p-1)/2}{i}^2\lambda^i$ で与えられる。$A=0$ と $E$ の超特異性は同値で、$\omega\mapsto u\omega$ で $u^{1-p}$ 倍される重み $p-1$ のモジュラー形式である。
前提知識: 楕円曲線, Frobenius写像, 層コホモロジー, Čechコホモロジー, Serre双対性, 有限体
Hasse 不変量は、標数 $p>0$ の体 $k$ の上の楕円曲線 $E$ に対し、Frobenius が 1 次元の $k$ ベクトル空間 $H^1(E,\mathcal{O}_E)$ に引き起こす作用を 1 つの数として取り出したものである。零であるかどうかが $E$ が超特異楕円曲線であるかどうかを判定し、値そのものは不変微分の取り替えに対して重み $p-1$ の変換則に従う。定義は 2 通りある。Weierstrass 方程式の係数から読む初等的な定義と、コホモロジーによる内在的な定義である。両者が一致することを thm-hasse-invariant-weierstrass-formula で示す。
以下、$k$ を標数 $p>0$ の体、$E$ を $k$ 上の楕円曲線とし、Weierstrass方程式
$$
E\colon y^2+a_1xy+a_3y=x^3+a_2x^2+a_4x+a_6\qquad(a_i\in k)
$$
で与えられているとする。$O=[0:1:0]$ を無限遠点、
$$
\omega:=\frac{dx}{2y+a_1x+a_3}
$$
を不変微分とする。$\omega$ は $E$ 上いたるところ正則で零点をもたず、$H^0(E,\Omega^1_E)=k\omega$ である(Sil09 III.1.5 と II.5)。$p$ が奇素数のときは $y$ を $y-(a_1x+a_3)/2$ で置き換えて $a_1=a_3=0$ にでき、方程式は
$$
E\colon y^2=f(x),\qquad f(x)=x^3+a_2x^2+a_4x+a_6
$$
($f$ は $\bar k$ に相異なる 3 根をもつ)の形になる(Sil09 III.1)。
$p$ を奇素数、$E\colon y^2=f(x)$ を上の形の Weierstrass 方程式とし、$m:=(p-1)/2$ とおく。多項式 $f(x)^m$ における $x^{p-1}$ の係数
$$
A(E):=\bigl[x^{p-1}\bigr]f(x)^m\in k
$$
を、この方程式の Hasse 不変量(Hasse invariant)という。
$f^m$ の次数は $3m=3(p-1)/2\ge p-1$ なので、この係数はつねに意味をもつ。$A(E)$ は方程式に依存し、$E$ の同型類(同型類)だけでは決まらない(ex-hasse-invariant-twist)。方程式を取り替えたときの変化は cor-hasse-invariant-coordinate-change にまとめる。$p=2$ では $m$ が整数でなく、この定義は使えない(ex-hasse-invariant-char-2)。
次に内在的な定義を述べる。必要な事実は Serre 双対性と、留数によるその記述である。
$E$ を体 $k$ 上の楕円曲線とする。
1 は Har77 III.7.7 と III.7.12($k$ が代数閉体のとき。一般の $k$ では、$\bar k$ への底変換でコホモロジーが $\bar k\otimes_k(-)$ で計算されることから従う)、または任意の体上の曲線について留数で双対性を構成する Tat68 による。2 の留数による記述と留数定理は Ser88 第 II 章 §7–§8 および Tat68 にある。カップ積は Čech 余鎖の上では単なる積 $[s]\cup\omega=[s\omega]$ である。$\epsilon$ の値は本記事の結果に影響しない(thm-hasse-invariant-weierstrass-formula の証明)。
$F_E\colon E\to E$ を絶対 Frobenius写像(位相空間の上では恒等写像、構造層の上では $h\mapsto h^p$)とする。$F_E$ は $H^1(E,\mathcal{O}_E)$ に写像
$$
F_E^*\colon H^1(E,\mathcal{O}_E)\to H^1(E,\mathcal{O}_E)
$$
を引き起こす。これは加法的で $F_E^*(c\xi)=c^p\,F_E^*(\xi)$($c\in k$)をみたす($p$ 線形写像)。$H^1(E,\mathcal{O}_E)$ は 1 次元なので、基底 $\xi$ をとると $F_E^*\xi=a\,\xi$ となる $a\in k$ がただ 1 つ定まる。
$\omega\in H^0(E,\Omega^1_E)$ を零でない不変微分とし、$\eta_\omega\in H^1(E,\mathcal{O}_E)$ を thm-hasse-invariant-serre-duality の完全対に関する双対基底(双対基底)、すなわち $\langle\eta_\omega,\omega\rangle=1$ なる元とする。
$$
F_E^*\eta_\omega=A(E,\omega)\,\eta_\omega
$$
で定まる $A(E,\omega)\in k$ を、組 $(E,\omega)$ の Hasse 不変量という。$A(E,\omega)=0$ であるかどうかは $\omega$ の取り方によらない(prop-hasse-invariant-transformation)ので、このとき単に「$E$ の Hasse 不変量が $0$ である」という。
$F_E$ は $k$ 上の射ではない($k$ の上でも $c\mapsto c^p$ を引き起こす)ので、$F_E^*$ は $k$ 線形ではなく $p$ 線形である。$k$ 線形な写像として述べるには相対 Frobenius $F_{E/k}\colon E\to E^{(p)}$ を使う。$E^{(p)}$ は $E$ の Weierstrass 方程式の係数をすべて $p$ 乗して得られる楕円曲線で、$F_{E/k}$ は $(x,y)\mapsto(x^p,y^p)$ である。$F_{E/k}^*\colon H^1(E^{(p)},\mathcal{O}_{E^{(p)}})\to H^1(E,\mathcal{O}_E)$ は $k$ 線形で、平坦底変換 $H^1(E^{(p)},\mathcal{O}_{E^{(p)}})=H^1(E,\mathcal{O}_E)\otimes_{k,\sigma}k$($\sigma\colon c\mapsto c^p$。Har77 III.9.3)のもとで $\xi\otimes1\mapsto F_E^*\xi$ に対応する。$F_{E/k}^*$ を $E$ の Hasse–Witt 写像という。Hasse–Witt 写像が $0$ であることと $F_E^*=0$、すなわち Hasse 不変量が $0$ であることは同値である。
$p$ を奇素数、$m=(p-1)/2$ とする。
$$
H_p(\lambda):=\sum_{i=0}^{m}\binom{m}{i}^2\lambda^i\in\mathbb{F}_p[\lambda]
$$
を Hasse 多項式という。$\lambda\ne0,1$ に対する Legendre 形の楕円曲線 $E_\lambda\colon y^2=x(x-1)(x-\lambda)$ の Hasse 不変量は $H_p(\lambda)$ で表される(prop-hasse-invariant-legendre)。
$H^1(E,\mathcal{O}_E)$ は「$E$ の上の関数の貼り合わせの障害」を表す 1 次元の空間で、正則微分の空間 $H^0(E,\Omega^1_E)$ と双対である。標数 $p$ では関数の $p$ 乗がまた関数を与えるので、この空間に $p$ 乗写像が作用する。1 次元空間の $p$ 線形写像は零か単射($k$ が完全体なら全単射)かのどちらかで、零になるのは $E$ が超特異なとき、すなわち $p$ 捩れ点をもたないときに限る。Hasse 不変量は、この二者択一を、不変微分 $\omega$ を固定することで $k$ の元 $A(E,\omega)$ にまで精密化したものである。$\omega$ を $u\omega$ に取り替えると $A$ は $u^{1-p}$ 倍されるので、$A$ は $(E,\omega)$ の関数として重み $p-1$ のモジュラー形式の変換則をもつ。実際 Katz の意味で $A$ は標数 $p$ の重み $p-1$ のモジュラー形式であり、その零点が超特異点である(rem-hasse-invariant-modular-form)。Weierstrass 方程式 $y^2=f(x)$ では $H^1(E,\mathcal{O}_E)$ の基底を関数 $x^2/y$ の Čech 類にとれるので、$(x^2/y)^p$ の類を計算すれば $A$ が求まる。その計算の答えが $f^{(p-1)/2}$ の $x^{p-1}$ の係数である。
$p=3$ では $m=1$、$f^m=f$ なので $A(E)=[x^2]f=a_2$ である。Legendre 族では $H_3(\lambda)=1+\lambda$ で、$\lambda=-1$ の $E_{-1}\colon y^2=x^3-x$ だけが Hasse 不変量 $0$ をもつ。
$p=5$ では $m=2$ で、
$$
f(x)^2=x^6+2a_2x^5+(a_2^2+2a_4)x^4+(2a_6+2a_2a_4)x^3+\cdots
$$
なので $A(E)=a_2^2+2a_4$ である。たとえば $E\colon y^2=x^3-x$($a_2=0$、$a_4=-1$)では $A(E)=-2=3\ne0$、$E\colon y^2=x^3+1$($a_2=a_4=0$)では $A(E)=0$ である。Legendre 族では $H_5(\lambda)=1+4\lambda+\lambda^2=\lambda^2-\lambda+1$ で、その根は $\mathbb{F}_{25}$ に属する 1 の原始 6 乗根 2 個である。
$p=7$ では $m=3$、$H_7(\lambda)=1+9\lambda+9\lambda^2+\lambda^3=(\lambda+1)(\lambda^2+\lambda+1)$ で、根は $\lambda=-1,2,4\in\mathbb{F}_7$ の 3 個である。これらの根がどの超特異曲線に対応するかは 超特異楕円曲線 の記事の例にある。いずれの $p$ でも根は $m$ 個で重根がない(thm-hasse-invariant-igusa)。
$p$ を奇素数、$m=(p-1)/2$ とする。零・非零の判定と超特異性の関係は 超特異楕円曲線 の記事の例で扱われているので、ここでは値を求める。
$p$ を奇素数、$E\colon y^2=f(x)$ とする。$\omega=dx/(2y)$ と $dx/y=2\omega$ に対し、prop-hasse-invariant-transformation の 2 により $A(E,dx/y)=2^{1-p}A(E,\omega)=A(E,\omega)$ である($\mathbb{F}_p$ で $2^{p-1}=1$)。一般に $\omega$ の $\mathbb{F}_p^\times$ 倍は $A$ を変えない。
$d\in k^\times$ に対し、$E$ の $d$ による 2 次捻り(2次捻り)を
$$
E_d\colon y^2=d^3f(x/d)=x^3+da_2x^2+d^2a_4x+d^3a_6
$$
とおく。$(d^3f(x/d))^m$ における $x^{p-1}$ の係数は $d^{3m}\cdot d^{-(p-1)}A(E)=d^{m}A(E)$ なので
$$
A(E_d)=d^{(p-1)/2}A(E)
$$
である。$k=\mathbb{F}_p$ なら $d^{(p-1)/2}=\left(\frac{d}{p}\right)$ は Legendre記号であり、$d$ が平方非剰余なら $A(E_d)=-A(E)$ である。たとえば $p=5$、$E\colon y^2=x^3-x$($A(E)=3$)、$d=2$ に対し $E_2\colon y^2=x^3+x$ で、$A(E_2)=2a_4=2=-3$ である。
一方、$u\in\bar k$ を $u^2=d$ なる元とすると、$(x',y')\mapsto(x'/d,\,y'/u^3)$ は $\bar k$ 上の同型 $\phi\colon E_d\to E$ を与え、$\phi^*(dx/y)=u\,dx'/y'$ である。したがって $E$ と $E_d$ は $\bar k$ 上同型だが、$A(E)\ne0$ かつ $d$ が平方非剰余なら $A(E_d)\ne A(E)$ である。この例が示すのは、方程式から読んだ値 $A(E)$ は「$\bar k$ 上の同型類の不変量である」という性質をみたさず、「$E\cong E'$ ならば $A(E)=A(E')$」という含意を破ることである。不変なのは $A(E)=0$ かどうか(thm-hasse-invariant-supersingular)と、組 $(E,\omega)$ の関数としての値 $A(E,\omega)$(prop-hasse-invariant-transformation の 3)である。
$p=2$ では $m=(p-1)/2$ が整数でなく、また $a_1=a_3=0$ の形への変形($2$ で割る操作)もできないので、def-hasse-invariant-coefficient は意味をもたない。コホモロジーによる定義はそのまま使え、一般の Weierstrass 方程式 $y^2+a_1xy+a_3y=x^3+a_2x^2+a_4x+a_6$ と $\omega=dx/(a_1x+a_3)$ に対して
$$
A(E,\omega)=a_1
$$
である(thm-hasse-invariant-weierstrass-formula の 3)。標数 $2$ では $j$ 不変量(j不変量)が $j=a_1^{12}/\Delta$ なので(Sil09 付録 A)、Hasse 不変量が $0$ であることと $j=0$ は同値である。たとえば $y^2+y=x^3$ は $a_1=0$ で超特異、$y^2+xy=x^3+1$ は $a_1=1$ で通常(通常楕円曲線)である。$a_1=0$ と $E[2]=0$ の同値は 超特異楕円曲線 の記事の例で直接示されており、上の式と整合する。
この例は、「Hasse 不変量は $f^{(p-1)/2}$ の係数で読める」という公式が $p$ が奇素数であるという仮定を必要とすること、そして $p=2$ では別の係数 $a_1$ がその役を果たすことを示す。同様に $p=3$ では $A(E)=a_2$ である(ex-hasse-invariant-small-primes)。
$E$ を標数 $p$ の体 $k$ 上の楕円曲線とする。
1:$p$ 線形性により $F_E^*(c\xi)=c^pF_E^*\xi=c^pa\xi=c^{p-1}a\cdot(c\xi)$ である。$c^{p-1}\ne0$ なので、$c^{p-1}a=0$ と $a=0$ は同値である。
2:完全対の双線形性から $\langle u^{-1}\eta_\omega,u\omega\rangle=\langle\eta_\omega,\omega\rangle=1$ なので $\eta_{u\omega}=u^{-1}\eta_\omega$ である。1 を $\xi=\eta_\omega$、$c=u^{-1}$ に適用すると $F_E^*\eta_{u\omega}=u^{-(p-1)}A(E,\omega)\,\eta_{u\omega}$、すなわち $A(E,u\omega)=u^{1-p}A(E,\omega)$ である。$c\in\mathbb{F}_p^\times$ なら $c^{p-1}=1$ である。
3:$\phi$ は $k$ 上の同型なので、引き戻し $\phi^*$ は $H^1(E,\mathcal{O}_E)\to H^1(E',\mathcal{O}_{E'})$、$H^0(E,\Omega^1_E)\to H^0(E',\Omega^1_{E'})$、$H^1(E,\Omega^1_E)\to H^1(E',\Omega^1_{E'})$ の同型を与え、カップ積と標準的なトレース写像はこれらと両立する(すべて $k$ 上の楕円曲線から標準的に構成された対象なので、同型で移り合う)。したがって $\langle\phi^*\eta_\omega,\phi^*\omega\rangle=\langle\eta_\omega,\omega\rangle=1$、すなわち $\phi^*\eta_\omega=\eta_{\phi^*\omega}$ である。絶対 Frobenius は任意の射と可換である($\phi\circ F_{E'}=F_E\circ\phi$。どちらも位相空間上は $\phi$、構造層上は $h\mapsto\phi^\sharp(h)^p$)ので $F_{E'}^*\circ\phi^*=\phi^*\circ F_E^*$ であり、
$$
F_{E'}^*\eta_{\phi^*\omega}=\phi^*F_E^*\eta_\omega=A(E,\omega)\,\phi^*\eta_\omega=A(E,\omega)\,\eta_{\phi^*\omega}
$$
を得る。よって $A(E',\phi^*\omega)=A(E,\omega)$ である。
prop-hasse-invariant-transformation の 2 と 3 は、$A$ が「楕円曲線と不変微分の組 $(E,\omega)$ に $k$ の元を対応させ、同型で不変で、$\omega\mapsto u\omega$ で $u^{1-p}$ 倍される規則」であることを述べている。これは Katz の意味の、$\mathbb{F}_p$ 上の重み $p-1$、レベル $1$ のモジュラー形式の定義そのものである(正確には、任意の $\mathbb{F}_p$ 代数 $R$ 上の楕円曲線 $E/R$ と不変微分 $\omega$ に対して $A(E,\omega)\in R$ を定め、底変換と両立させる。定義の各段階は $R$ 上でもそのまま通る)。Katz Kat73 §2 はこの立場で Hasse 不変量を定義し、その $q$ 展開(Tate 曲線(Tate曲線)での値)が $1$ であること、$p\ge5$ では Eisenstein 級数(Eisenstein級数)$E_{p-1}$ の係数の $\bmod p$ 還元が Hasse 不変量の $q$ 展開に一致すること(Deligne の観察。$E_{p-1}$ の定数項が $1$ で他の係数が $p$ で割れることによる)を示している。この見方では超特異点は「重み $p-1$ のモジュラー形式 $A$ の零点」であり、超特異 $j$ 不変量の個数がおよそ $(p-1)/12$ であること(超特異楕円曲線 の記事の個数公式)は、重み $p-1$ の形式の零点の個数が $(p-1)/12$ であることの標数 $p$ 版である。
$E$ を一般の Weierstrass 方程式で与えられた $k$ 上の楕円曲線とし、$g(x):=x^3+a_2x^2+a_4x+a_6$、$h(x):=a_1x+a_3$ とおく(方程式は $y(y+h(x))=g(x)$ と書ける)。$U:=E\setminus\{O\}$ とし、$V\subset E$ を、$x$ 座標が $g$ の根であるような点をすべて除いた開集合(射 $x\colon E\to\mathbb{P}^1$ による $\mathbb{P}^1\setminus\{g=0\}$ の逆像)とする。
1:$U$ は Weierstrass 方程式の定めるアフィン平面曲線 $\operatorname{Spec}k[x,y]/(y^2+h(x)y-g(x))$ であり、方程式が $y$ について最高次係数 $1$ の 2 次式なので $\mathcal{O}(U)$ は $k[x]$ 上 $1,y$ を基底とする自由加群である。$x\colon E\to\mathbb{P}^1$ は射影曲線の間の定数でない射なので有限射であり(Har77 II.6.8)、$\mathbb{P}^1\setminus\{g=0\}$ は $g$ の斉次化 $G(X,Z)=Z^3g(X/Z)$ に対する $D_+(G)$ でアフィンなので、その逆像 $V$ はアフィンである。$x$ の極は $O$ だけなので $O\in V$、また $g$ の根は $x\ne\infty$ なので $E\setminus V\subset U$、よって $U\cup V=E$ である。$U\cap V$ は $U$ の中で関数 $g(x)$ が消えない開集合 $D(g)$ なので $\mathcal{O}(U\cap V)=\mathcal{O}(U)[g^{-1}]=k[x,g^{-1}]\oplus k[x,g^{-1}]y$ である。最後に $V=(U\cap V)\cup\{O\}$ なので、$U\cap V$ 上正則な関数が $V$ 上正則であることと $O$ で正則であることは同値である。
以下で $O$ における位数(零点の位数)$\operatorname{ord}_O$ を使う。$x$、$y$ は $O$ にそれぞれ位数 $2$、$3$ の極をもち、$E$ の他の点では正則である(Sil09 III.1)。$\operatorname{ord}_O$ は付値なので、次数 $d$ の $r\in k[x]\setminus\{0\}$ に対し $\operatorname{ord}_O r(x)=-2d$、$\operatorname{ord}_O r(x)y=-2d-3$ であり、前者は偶数、後者は奇数なので、$a,b\in k(x)$ に対し $\operatorname{ord}_O(a+by)=\min\{\operatorname{ord}_Oa,\operatorname{ord}_O(by)\}$ である。
2:$a=r/g^n$($r\in k[x]$、$n\ge0$)と書き、$r=qg^n+r'$、$\deg r'<3n$ と割り算する。$q\in\mathcal{O}(U)$ であり、$r'/g^n$ は $U\cap V$ 上正則で $\operatorname{ord}_O(r'/g^n)=-2\deg r'+6n\ge-2(3n-1)+6n=2>0$ なので $O$ でも正則、よって $\mathcal{O}(V)$ に属する($r'=0$ なら自明)。
3:$b=qg^n+r$ と割り算すると $qy\in\mathcal{O}(U)$ である。$r$ の $x^{3n-1}$ の係数を $c$ とし $r'':=r-cx^{3n-1}$ とおくと $\deg r''\le3n-2$ なので $\operatorname{ord}_O(r''y/g^n)=-2\deg r''-3+6n\ge1$ であり、$r''y/g^n\in\mathcal{O}(V)$ である。残るのは $c\,x^{3n-1}y/g^n$ で、
$$
\frac{x^{3n-1}y}{g^n}-\frac{x^2y}{g}=\frac{x^2\bigl(x^{3n-3}-g^{n-1}\bigr)y}{g^n}
$$
の分子の多項式 $x^2(x^{3n-3}-g^{n-1})$ は、$g^{n-1}$ が最高次係数 $1$ の $3n-3$ 次式なので次数 $3n-2$ 以下($n=1$ なら $0$)であり、上と同じ計算で右辺は $\mathcal{O}(V)$ に属する。以上を合わせて主張を得る。
4:$x^2/y=x^2(y+h)/g=x^2y/g+(a_1x^3+a_3x^2)/g$ であり、第 2 項は 2 により $\mathcal{O}(U)+\mathcal{O}(V)$ に属するので $[x^2/y]=[x^2y/g]$ である。$x^2/y=s+t$($s\in\mathcal{O}(U)$、$t\in\mathcal{O}(V)$)と書けたとする。$\operatorname{ord}_O(x^2/y)=-4+3=-1$ で $t$ は $O$ で正則なので $\operatorname{ord}_O s=\operatorname{ord}_O(x^2/y-t)=-1$ である。しかし $s=a(x)+b(x)y\in\mathcal{O}(U)$ の位数は $-2\deg a$ か $-2\deg b-3$ の小さい方で、決して $-1$ にならない。これは矛盾である。よって $[x^2/y]\ne0$ であり、2、3 と合わせて $\mathcal{O}(U\cap V)=\mathcal{O}(U)+\mathcal{O}(V)+k\cdot x^2/y$ である。$U$、$V$ がアフィンで $E$ が分離的なので、Čech コホモロジーは層コホモロジー $H^1(E,\mathcal{O}_E)$ に一致する(Har77 III.4.5)。
$E$ を Weierstrass 方程式で与えられた $k$ 上の楕円曲線、$\omega=dx/(2y+a_1x+a_3)$ とし、$\xi=[x^2/y]$ を lem-hasse-invariant-cech-basis の基底とする。
1:thm-hasse-invariant-serre-duality の 2 により $\langle\xi,\omega\rangle=\operatorname{tr}[(x^2/y)\omega]=\epsilon\operatorname{res}_O\bigl((x^2/y)\omega\bigr)$ である。$z:=-x/y$ は $O$ における一意化元で、$z$ による展開は
$$
x=z^{-2}-a_1z^{-1}-a_2-\cdots,\qquad y=-z^{-3}+a_1z^{-2}+a_2z^{-1}+\cdots,\qquad\omega=(1+a_1z+\cdots)\,dz
$$
である(Sil09 IV.1)。よって $x^2/y=z^{-4}(1-a_1z-\cdots)^2\big/\bigl(-z^{-3}(1-a_1z-\cdots)\bigr)=-z^{-1}(1-a_1z+\cdots)$ であり、$(x^2/y)\omega=(-z^{-1}+\cdots)dz$ の留数は $-1$ である。ゆえに $\langle\xi,\omega\rangle=-\epsilon\in\{1,-1\}$ で、$\eta_\omega=-\epsilon\xi$ である。$F_E^*\xi=a\xi$ とすると、prop-hasse-invariant-transformation の 1 により $F_E^*\eta_\omega=(-\epsilon)^{p-1}a\,\eta_\omega=a\,\eta_\omega$ である($p$ が奇素数なら $p-1$ は偶数、$p=2$ なら $-1=1$)。よって $A(E,\omega)=a$ である。
2:Čech 余鎖の上で $F_E^*$ は $s\mapsto s^p$ なので $F_E^*\xi=[x^{2p}/y^p]$ である。$y^2=f$ から $y^{p-1}=f^m$、$y^{2p}=f^p$ なので
$$
\frac{x^{2p}}{y^p}=\frac{x^{2p}\,y\,y^{p-1}}{y^{2p}}=\frac{x^{2p}f(x)^m\,y}{f(x)^p}
$$
である。$f^m=\sum_{j=0}^{3m}c_jx^j$($c_{p-1}=A(E)$)と書くと $x^{2p}/y^p=\sum_jc_j\,x^{2p+j}y/f^p$ であり、各項に lem-hasse-invariant-cech-basis の 3($n=p$、$3n-1=3p-1$)を適用する。$j\le p-1$ なら $\deg x^{2p+j}\le3p-1<3p$ なので余りは $x^{2p+j}$ 自身で、その $x^{3p-1}$ の係数は $j=p-1$ のとき $1$、それ以外は $0$ である。$j\ge p$ なら、$x^3=f-(a_2x^2+a_4x+a_6)$ を $p$ 乗して(標数 $p$、$p$ 奇数)
$$
x^{3p}=f(x)^p-(a_2x^2+a_4x+a_6)^p
$$
なので $x^{2p+j}=x^{j-p}x^{3p}\equiv-x^{j-p}(a_2x^2+a_4x+a_6)^p\pmod{f^p}$ であり、右辺の次数は $j+p\le3m+p=(5p-3)/2<3p-1$ である。よって余りの $x^{3p-1}$ の係数は $0$ である。以上から $F_E^*\xi=c_{p-1}\xi=A(E)\xi$ であり、1 により $A(E,\omega)=A(E)$ である。$dx/y=2\omega$ なので、prop-hasse-invariant-transformation の 2 と $2^{p-1}=1$ から $A(E,dx/y)=A(E,\omega)$ である。
3:$p=2$ とする。$y(y+h)=g$ から $1/y=(y+h)/g$、$1/y^2=(y+h)^2/g^2=(y^2+h^2)/g^2=(g+hy+h^2)/g^2$ なので
$$
\frac{x^4}{y^2}=\frac{x^4(g+h^2)}{g^2}+\frac{x^4h}{g^2}\,y
$$
である。第 1 項は lem-hasse-invariant-cech-basis の 2 により $\mathcal{O}(U)+\mathcal{O}(V)$ に属する。第 2 項に同補題の 3 を $n=2$、$b=x^4h=a_1x^5+a_3x^4$ で適用すると、$\deg b\le5<6$ なので余りは $b$ 自身で、その $x^5$ の係数は $a_1$ である。よって $F_E^*\xi=[x^4/y^2]=a_1\xi$ であり、1 により $A(E,\omega)=a_1$ である。
$p$ を奇素数、$E\colon y^2=f(x)$ とし、$u\in k^\times$、$r\in k$ による座標変換 $x=u^2x'+r$、$y=u^3y'$ で $y'^2=f'(x')$、$f'(x')=u^{-6}f(u^2x'+r)$ に書き直すと、$A'=[x'^{p-1}]f'^m$ は
$$
A'=u^{-(p-1)}A(E)
$$
をみたす。
$\phi\colon E'\to E$、$(x',y')\mapsto(u^2x'+r,u^3y')$ は $k$ 上の同型で、$\phi^*(dx/2y)=u^2dx'/(2u^3y')=u^{-1}\,dx'/2y'$ である。thm-hasse-invariant-weierstrass-formula の 2 と prop-hasse-invariant-transformation の 2、3 により
$$
A'=A(E',dx'/2y')=A(E',u\phi^*(dx/2y))=u^{1-p}A(E',\phi^*(dx/2y))=u^{1-p}A(E,dx/2y)=u^{1-p}A(E)
$$
である。係数の直接計算による証明は 超特異楕円曲線 の記事の補題にある。
$p$ を奇素数、$E\colon y^2=f(x)$、$m=(p-1)/2$ とする。
1:$\binom{p-1}{j}=\prod_{i=1}^{j}\frac{p-i}{i}$ で、各因子は $\bmod p$ で $\frac{-i}{i}=-1$ に合同である($1\le i\le j< p$ なので $i$ は $p$ で割れない)。
2:2 項展開(二項定理)により
$$
(y^2-f)^{p-1}=\sum_{j=0}^{p-1}\binom{p-1}{j}y^{2j}(-f)^{p-1-j}
$$
であり、$y^{p-1}$ を含む項は $j=m$ の項 $\binom{p-1}{m}(-1)^my^{p-1}f^m$ だけである。その $x^{p-1}y^{p-1}$ の係数は $\binom{p-1}{m}(-1)^m[x^{p-1}]f^m$ で、1 により $\binom{p-1}{m}(-1)^m=1$ なので $A(E)$ に等しい。斉次版は、$F^{p-1}$ が $(y^2-f)^{p-1}$ の斉次化(次数 $3(p-1)$)であり、$(XYZ)^{p-1}$ が $(xy)^{p-1}$ の斉次化($Z$ の指数は $3(p-1)-2(p-1)=p-1$)であることから従う。
$p=2$ でも、一般の Weierstrass 方程式の斉次化 $F=Y^2Z+a_1XYZ+a_3YZ^2-X^3-a_2X^2Z-a_4XZ^2-a_6Z^3$ に対し $F^{p-1}=F$ の $XYZ$ の係数は $a_1$ で、thm-hasse-invariant-weierstrass-formula の 3 と一致する。「$F^{p-1}$ の $(XYZ)^{p-1}$ の係数」という形は、rem-hasse-invariant-hasse-witt で述べる平面曲線の Hasse–Witt 行列の公式の $g=1$ の場合である。
$E$ を標数 $p$ の体 $k$ 上の楕円曲線とする。次は同値である。
2 と 3 の同値は thm-hasse-invariant-weierstrass-formula による。1 と 3 の同値および点の個数の公式は、有限体上では 超特異楕円曲線 の記事の定理で点の個数を数えて証明されており(Sil09 V.4.1 と同じ方法)、一般の体では $\bar k$ に帰着して Har77 IV 演習 4.15 に譲られている。同じ命題を本記事で重ねて証明することはしない。$p=2$ では、thm-hasse-invariant-weierstrass-formula の 3 と、$a_1=0$ と $E[2]=0$ の同値(超特異楕円曲線 の記事の例)から 1 と 2 の同値が直接従う。
1 と 2 の同値のコホモロジー的な理由の筋は次のとおりである。$H^1(E,\mathcal{O}_E)$ は $E$ の Picard 多様体 $\operatorname{Pic}^0_E\cong E$(Picardスキーム、双対アーベル多様体)の原点での接空間であり、$F_E^*$ は Frobenius の引き戻し $\operatorname{Pic}^0(F_{E/k})$、すなわち相対 Frobenius $F_{E/k}\colon E\to E^{(p)}$ の双対同種写像(同種写像)$V\colon E^{(p)}\to E$(Verschiebung)が接空間に引き起こす写像に対応する。$[p]=V\circ F_{E/k}$ で $F_{E/k}$ は純非分離な次数 $p$ の同種写像なので、$E[p]$ の位数は $V$ の分離次数に等しく、$E$ が超特異であることと $V$ が非分離であること、すなわち $V$ の微分が $0$ であること、すなわち $F_E^*=0$ は同値である(Har77 IV 演習 4.15、Sil09 III.6 と V.3.1)。
$p$ を奇素数、$m=(p-1)/2$、$\lambda\in k\setminus\{0,1\}$、$E_\lambda\colon y^2=x(x-1)(x-\lambda)$、$\omega_\lambda=dx/2y$ とする。
$$
A(E_\lambda,\omega_\lambda)=A(E_\lambda)=(-1)^mH_p(\lambda)=\binom{p-1}{m}H_p(\lambda)
$$
であり、$E_\lambda$ が超特異であることと $H_p(\lambda)=0$ は同値である。
thm-hasse-invariant-weierstrass-formula の 2 により $A(E_\lambda,\omega_\lambda)=[x^{p-1}](x(x-1)(x-\lambda))^m$ である。この係数が $(-1)^mH_p(\lambda)$ に等しいことは、$x^m(x-1)^m(x-\lambda)^m$ の $x^{2m}$ の係数、すなわち $(x-1)^m(x-\lambda)^m$ の $x^m$ の係数を 2 項展開で求めればよく、超特異楕円曲線 の記事の命題(Legendre 族の Hasse 多項式による判定)の証明で計算されている。$(-1)^m=\binom{p-1}{m}$ は prop-hasse-invariant-plane-cubic の 1 による。超特異性との同値は thm-hasse-invariant-supersingular による。
$p$ を奇素数、$m=(p-1)/2$ とする。
1:$H_p(0)=\binom{m}{0}^2=1$ である。$\sum_{i=0}^m\binom{m}{i}^2=\sum_i\binom{m}{i}\binom{m}{m-i}$ は $(1+t)^m(1+t)^m=(1+t)^{2m}$ の $t^m$ の係数なので $\binom{2m}{m}=\binom{p-1}{m}$ であり、prop-hasse-invariant-plane-cubic の 1 により $(-1)^m\ne0$ である。
2:多項式 $H=\sum_ic_i\lambda^i$ について、左辺の $\lambda^i$ の係数は
$$
4(i+1)i\,c_{i+1}-4i(i-1)c_i+4(i+1)c_{i+1}-8i\,c_i-c_i=4(i+1)^2c_{i+1}-(2i+1)^2c_i
$$
である。$c_i=\binom{m}{i}^2$($i>m$ では $0$)とすると、$i< m$ では $(i+1)\binom{m}{i+1}=(m-i)\binom{m}{i}$ により $4(i+1)^2c_{i+1}=4(m-i)^2c_i$ であり、$2(m-i)=p-1-2i\equiv-(2i+1)$ なので $4(m-i)^2\equiv(2i+1)^2$、よって係数は $0$ である。$i=m$ では $c_{m+1}=0$ かつ $(2m+1)^2=p^2\equiv0$ なので係数は $0$ である。$i>m$ では両方の項が $0$ である。
3:$\lambda_0\in\bar{\mathbb{F}}_p$ を $H_p$ の重根とすると $H_p(\lambda_0)=H_p'(\lambda_0)=0$ である。1 により $\lambda_0\ne0,1$ である。2 の微分方程式を $n$ 回微分すると(Leibniz則)
$$
4\lambda(1-\lambda)H^{(n+2)}+\bigl(4(1-2\lambda)+4n(1-2\lambda)\bigr)H^{(n+1)}-\bigl(4n(n-1)+8n+1\bigr)H^{(n)}=0
$$
なので、$H^{(n)}(\lambda_0)=H^{(n+1)}(\lambda_0)=0$ なら $4\lambda_0(1-\lambda_0)H^{(n+2)}(\lambda_0)=0$、$\lambda_0\ne0,1$ より $H^{(n+2)}(\lambda_0)=0$ である。帰納法によりすべての $n\ge0$ で $H_p^{(n)}(\lambda_0)=0$ である。$\deg H_p=m< p$ なので Taylor 展開(Taylor展開)$H_p(\lambda)=\sum_{n=0}^{m}\frac{H_p^{(n)}(\lambda_0)}{n!}(\lambda-\lambda_0)^n$ が成り立ち($n\le m< p$ なので $n!$ は $\mathbb{F}_p$ で可逆)、$H_p=0$ となる。これは $H_p(0)=1$ に反する。よって重根はなく、$\deg H_p=m$(最高次係数 $\binom{m}{m}^2=1$)から根はちょうど $m$ 個である。
3 は Igusa Igu58 による(Sil09 V.4.1(c) も同じ微分方程式による証明を与える)。2 の微分方程式は、Legendre 族の周期(周期(代数多様体))$\int dx/y$ がみたす Picard–Fuchs 方程式(Picard–Fuchs方程式)であり、$H_p$ は超幾何級数(超幾何関数)${}_2F_1(\tfrac12,\tfrac12;1;\lambda)=\sum_i\frac{(1/2)_i^2}{(i!)^2}\lambda^i$ の $\bmod p$ での切り詰めである($\binom{m}{i}\equiv(-1)^i(1/2)_i/i!$)。Hasse 不変量が周期の $\bmod p$ 還元として現れるというこの事実は、Hasse 不変量を Gauss–Manin接続の $p$ 曲率や結晶コホモロジーの Frobenius と結びつける入口である。3 により、超特異な $\lambda$ の個数は $m=(p-1)/2$ で、$\lambda\mapsto j(E_\lambda)$ が一般に $6$ 対 $1$ であることから超特異 $j$ 不変量の個数(超特異楕円曲線 の記事の個数公式)が得られる。
$k$ を完全体とする。$H^0(E,\Omega^1_E)$ には Cartier 作用素(Cartier作用素)$C$ が $p^{-1}$ 線形に作用し、Serre 双対性のもとで $F_E^*$ の随伴である。すなわち $\langle F_E^*\eta,\omega\rangle=\langle\eta,C\omega\rangle^p$ が成り立つ(Ser58)。これを $\eta=\eta_\omega$ に適用すると $C\omega=A(E,\omega)^{1/p}\,\omega$ を得る。$E\colon y^2=f(x)$、$\omega=dx/y$ で直接確かめることもできる。$C(s^p\theta)=sC(\theta)$ と $C(x^jdx)=x^{(j+1)/p-1}dx$($p\mid j+1$ のとき。それ以外は $0$)により
$$
C\Bigl(\frac{dx}{y}\Bigr)=C\Bigl(\frac{f^m\,dx}{y^p}\Bigr)=\frac1y\sum_jc_j\,C(x^jdx)=\frac{c_{p-1}^{1/p}}{y}\,dx
$$
であり($j\le3m<2p-1$ なので $p\mid j+1$ は $j=p-1$ に限る)、$c_{p-1}=A(E)$ である。
種数 $g$ の滑らかな射影曲線 $C$ に対し、$F_C^*\colon H^1(C,\mathcal{O}_C)\to H^1(C,\mathcal{O}_C)$ は $g$ 次元空間の $p$ 線形写像で、基底に関する行列を $C$ の Hasse–Witt 行列(Hasse–Witt行列)という。基底を $P$ で取り替えると行列は $P^{-1}MP^{(p)}$($P^{(p)}$ は成分を $p$ 乗した行列)に変わる。Hasse と Witt HW36 はこの行列を、$C$ の関数体の不分岐な $p$ 次巡回拡大(巡回拡大)の個数を数えるために導入した。$k$ が代数閉のとき、Artin–Schreier 完全列(Artin–Schreier完全列)によりエタールコホモロジー(エタールコホモロジー)は $H^1(C_{\text{ét}},\mathbb{Z}/p)=\ker(F_C^*-1)$ であり、その $\mathbb{F}_p$ 次元は $M$ の「安定階数」$\operatorname{rank}(MM^{(p)}\cdots M^{(p^{g-1})})$ に等しい(Ser58)。この安定階数は $C$ の Jacobi 多様体(Jacobi多様体)の $p$ 階数($J[p](\bar k)\cong(\mathbb{Z}/p)^\sigma$ の $\sigma$)でもある。$g=1$ では $M=(A)$ で、$\sigma=1$ が通常、$\sigma=0$ が超特異である。超楕円曲線(超楕円曲線)$y^2=f(x)$($\deg f=2g+1$、$p$ 奇素数)では、$f^{(p-1)/2}=\sum_kc_kx^k$ とおくと Hasse–Witt 行列は $(c_{ip-j})_{1\le i,j\le g}$ で与えられる(Manin Man61)。$g=1$ の成分 $c_{p-1}$ が Hasse 不変量である。アーベル多様体 $A$ に対しても $F_A^*$ の $H^1(A,\mathcal{O}_A)$ への作用が同様に $p$ 階数を測り、$k$ が完全体のとき、$A$ が通常であることと $F_A^*$ が全単射であることは同値である。
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