正葉曲線(rose curve)とは、正の整数 $k$ に対して極方程式 $r=\cos k\theta$ で表される花びらの形の曲線で、$r<0$ のときは点を向き $\theta+\pi$ の側で原点から距離 $\lvert r\rvert$ の位置にとる。$k$ が奇数なら花びらは $k$ 枚で、$0\le\theta\le\pi$ で曲線全体をえがく。$k$ が偶数なら花びらは $2k$ 枚で、全体をえがくには $0\le\theta\le2\pi$ が要る。花びらはどれも合同で、1 枚が囲む面積は $\frac{\pi}{4k}$ である。曲線が囲む部分の面積は、$k$ が奇数なら $\frac{\pi}{4}$、偶数なら $\frac{\pi}{2}$ で、$k$ によらない。$r\ge0$ の点だけをとる約束では、偶数の $k$ の花びらは $k$ 枚になる。
前提知識: 極座標と極方程式, 極座標で表された図形の面積, 三角関数のグラフと周期, 加法定理から2倍角・半角・3倍角の公式を導く
極座標で表された図形の面積 の例「公式を使う面積の計算」では、極方程式 $r=\cos3\theta$ の曲線の 1 枚の花びらの面積 $\dfrac\pi{12}$ を求めた。このような花びらの形の曲線 $r=\cos k\theta$ を 正葉曲線(バラ曲線)という。$k$ を変えると花びらの枚数が変わる。何枚になるのかを、点をとって調べる。
そのために、$r$ が負になる $\theta$ も使うことにする。$r<0$ のときは、点 $(r\cos\theta,\ r\sin\theta)$ を、原点から向き $\theta+\pi$ の側に距離 $\lvert r\rvert$ だけ進んだ点と読む($\cos(\theta+\pi)=-\cos\theta$、$\sin(\theta+\pi)=-\sin\theta$ だから、この 2 つは同じ点である)。極座標と極方程式 では $r\ge0$ の点だけを使う約束にしていたので、この記事の約束はそれと違う。違いが図形にどう出るかは ex-rose-cx-nonneg で見る。
| $\theta$ | $0$ | $\dfrac\pi6$ | $\dfrac\pi4$ | $\dfrac\pi3$ | $\dfrac\pi2$ | $\dfrac{2\pi}3$ | $\dfrac{3\pi}4$ | $\dfrac{5\pi}6$ | $\pi$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $r$ | $1$ | $\dfrac12$ | $0$ | $-\dfrac12$ | $-1$ | $-\dfrac12$ | $0$ | $\dfrac12$ | $1$ |
| 点 | $(1,0)$ | $\left(\dfrac{\sqrt3}4,\dfrac14\right)$ | $(0,0)$ | $\left(-\dfrac14,-\dfrac{\sqrt3}4\right)$ | $(0,-1)$ | $\left(\dfrac14,-\dfrac{\sqrt3}4\right)$ | $(0,0)$ | $\left(-\dfrac{\sqrt3}4,\dfrac14\right)$ | $(-1,0)$ |
| $\theta$ | $0$ | $\dfrac\pi6$ | $\dfrac\pi3$ | $\dfrac\pi2$ | $\dfrac{2\pi}3$ | $\dfrac{5\pi}6$ | $\pi$ | $\dfrac{4\pi}3$ | $\dfrac{5\pi}3$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $r$ | $1$ | $0$ | $-1$ | $0$ | $1$ | $0$ | $-1$ | $1$ | $-1$ |
| 点 | $(1,0)$ | $(0,0)$ | $\left(-\dfrac12,-\dfrac{\sqrt3}2\right)$ | $(0,0)$ | $\left(-\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2\right)$ | $(0,0)$ | $(1,0)$ | $\left(-\dfrac12,-\dfrac{\sqrt3}2\right)$ | $\left(-\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2\right)$ |
正葉曲線 r=cos kθ を k=2,3,4,5 でえがいた図。k が偶数のとき花びらは 2k 枚、奇数のとき k 枚に見える
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| $\cos k(\theta+\pi)=(-1)^k\cos k\theta$ | $\theta$ を $\pi$ 進めたときの点の移り方 | 曲線の周期 |
| $r$ の符号が変わる $\theta$ | 花びらの境目($r=0$) | $\cos k\theta$ の零点 |
| 極座標の面積 $\dfrac12\displaystyle\int r^2\,d\theta$ | 1 枚の花びらの面積 $\dfrac\pi{4k}$ | 面積の加法性 |
| 複素数の積 | 2 つの回転の和 | 三角多項式で表した曲線 |
以下、向き $\varphi$ の単位ベクトルを $\vec e(\varphi)=(\cos\varphi,\ \sin\varphi)$ と書く。$\vec e(\varphi+\pi)=-\vec e(\varphi)$ であり、$\varphi$ を $2\pi$ 増やしても $\vec e(\varphi)$ は変わらない。
$k$ を正の整数とする。実数 $\theta$ に対して
$$
P(\theta)=\cos k\theta\;\vec e(\theta)=\bigl(\cos k\theta\cos\theta,\ \cos k\theta\sin\theta\bigr)
$$
とおき、$\theta$ がすべての実数を動くときの点 $P(\theta)$ の集まりを、極方程式 $r=\cos k\theta$ の 正葉曲線(rose curve、バラ曲線)という。$\cos k\theta<0$ のとき、$P(\theta)=\lvert\cos k\theta\rvert\,\vec e(\theta+\pi)$ は向き $\theta+\pi$ の側で原点から距離 $\lvert\cos k\theta\rvert$ の点である。
整数 $j$ に対して、$\theta$ の区間
$$
I_j:\ \frac{(2j-1)\pi}{2k}\le\theta\le\frac{(2j+1)\pi}{2k}
$$
(長さ $\dfrac\pi k$ で、中央は $\theta=\dfrac{j\pi}k$)で $\theta$ を動かしたときの $P(\theta)$ の集まりを、$j$ 番目の花びら という。区間の両端では $\cos k\theta=\cos\dfrac{(2j\pm1)\pi}2=0$ なので、花びらは原点から出て原点にもどる。
区間 $I_j$ の内側では $\cos k\theta$ は $0$ にならない。$\theta=\dfrac{j\pi}k$ で $\cos k\theta=\cos j\pi=(-1)^j$ なので、$I_j$ の内側での $\cos k\theta$ の符号は $(-1)^j$ である($j$ が偶数なら正、奇数なら負)。$I_j$ を $j=0,1,2,\ldots$ と並べると、$\theta\ge-\dfrac\pi{2k}$ の範囲をすき間なく覆う。
$k=1$ のとき $P(\theta)=\cos\theta\,\vec e(\theta)=(\cos^2\theta,\ \cos\theta\sin\theta)$ である。$x=\cos^2\theta$、$y=\cos\theta\sin\theta$ とおくと
$$
x^2+y^2=\cos^4\theta+\cos^2\theta\sin^2\theta=\cos^2\theta\left(\cos^2\theta+\sin^2\theta\right)=\cos^2\theta=x
$$
なので、点は円 $x^2+y^2=x$、つまり中心 $\left(\dfrac12,0\right)$、半径 $\dfrac12$ の円の上にある。
$0$ 番目の花びら($-\dfrac\pi2\le\theta\le\dfrac\pi2$)で $\cos\theta\ge0$ なので、点は向き $\theta$ の側にあり、$\theta=-\dfrac\pi2$ の原点から、$\theta=0$ の $(1,0)$ を通って $\theta=\dfrac\pi2$ の原点まで、円を 1 周する。$1$ 番目の花びら($\dfrac\pi2\le\theta\le\dfrac{3\pi}2$)では $\cos\theta\le0$ で、たとえば $\theta=\pi$ の点は $(\cos^2\pi,\ \cos\pi\sin\pi)=(1,0)$ である。$1$ 番目の花びらは同じ円をもう一度たどる。
$k=2$ のとき、区間 $I_j$ の長さは $\dfrac\pi2$ である。各区間の中央 $\theta=\dfrac{j\pi}2$ での $\cos2\theta$ の値と、そのときの点を並べる。
| $j$ | 区間 $I_j$ | 中央の $\theta$ | $\cos2\theta$ | 中央の点 | 花びらの向き |
|---|---|---|---|---|---|
| $0$ | $-\dfrac\pi4\le\theta\le\dfrac\pi4$ | $0$ | $1$ | $(1,0)$ | 右 |
| $1$ | $\dfrac\pi4\le\theta\le\dfrac{3\pi}4$ | $\dfrac\pi2$ | $-1$ | $(0,-1)$ | 下 |
| $2$ | $\dfrac{3\pi}4\le\theta\le\dfrac{5\pi}4$ | $\pi$ | $1$ | $(-1,0)$ | 左 |
| $3$ | $\dfrac{5\pi}4\le\theta\le\dfrac{7\pi}4$ | $\dfrac{3\pi}2$ | $-1$ | $(0,1)$ | 上 |
$j=1$ では $\cos\pi=-1<0$ なので、中央の点は向き $\dfrac\pi2+\pi=\dfrac{3\pi}2$ の側の $(0,-1)$ である(ex-rose-start (1))。$j=3$ でも $\cos3\pi=-1$ で、点は向き $\dfrac{5\pi}2$、つまり向き $\dfrac\pi2$ の側の $(0,1)$ である。4 枚の花びらの先端は右・下・左・上で、どれも違う。
ex-rose-k2-petals で見たように、花びらの先端の向きは、区間の中央 $\dfrac{j\pi}k$ に、$\cos k\theta$ が負なら $\pi$ を足したものである。次の補題は、花びらの形そのものが、この先端の向きだけで決まることを示す。
整数 $j$ に対して
$$
c_j=\begin{cases}\dfrac{j\pi}k & (j\text{ が偶数})\\[2mm] \dfrac{j\pi}k+\pi & (j\text{ が奇数})\end{cases}
$$
とおく。$j$ 番目の花びらは
$$
\left\{\cos kt\;\vec e(c_j+t)\ \middle|\ -\frac\pi{2k}\le t\le\frac\pi{2k}\right\}
$$
に等しい。つまり、$j$ 番目の花びらは、$0$ 番目の花びら($c_0=0$)を原点のまわりに $c_j$ だけ回転した図形で、向き $c_j-\dfrac\pi{2k}$ から $c_j+\dfrac\pi{2k}$ までの扇形(中心角 $\dfrac\pi k$)の中にある。この扇形の中で、向き $c_j+t$ の半直線は花びらと、原点からの距離 $\cos kt$ の点で交わる。
段 1(置き換え)。$I_j$ の $\theta$ を $\theta=\dfrac{j\pi}k+t$ と書く。$\theta$ が $I_j$ を動くことと、$t$ が $-\dfrac\pi{2k}\le t\le\dfrac\pi{2k}$ を動くことは同じである。加法定理から
$$
\cos k\theta=\cos(j\pi+kt)=\cos j\pi\cos kt-\sin j\pi\sin kt=(-1)^j\cos kt
$$
である($\cos j\pi=(-1)^j$、$\sin j\pi=0$)。$j$ が偶数ならこのまま $P(\theta)=\cos kt\;\vec e(c_j+t)$ で、$j$ が奇数なら符号 $-1$ を $-\vec e(\varphi)=\vec e(\varphi+\pi)$ で向きに移すと同じ式になる。
段 2($j$ が偶数のとき)。$\cos k\theta=\cos kt$ なので $P(\theta)=\cos kt\;\vec e\!\left(\dfrac{j\pi}k+t\right)=\cos kt\;\vec e(c_j+t)$ である。
段 3($j$ が奇数のとき)。$\cos k\theta=-\cos kt$ なので、$-\vec e(\varphi)=\vec e(\varphi+\pi)$ を使うと $$P(\theta)=-\cos kt\;\vec e\!\left(\frac{j\pi}k+t\right)=\cos kt\;\vec e\!\left(\frac{j\pi}k+\pi+t\right)=\cos kt\;\vec e(c_j+t)$$ である。
段 4(扇形)。$\lvert kt\rvert\le\dfrac\pi2$ なので $\cos kt\ge0$ である。よって $P(\theta)$ は向き $c_j+t$ の側の、原点から距離 $\cos kt$ の点である($t=\pm\dfrac\pi{2k}$ では原点)。$t$ が $-\dfrac\pi{2k}$ から $\dfrac\pi{2k}$ まで動くと、向き $c_j+t$ は扇形の向きをちょうど 1 回ずつとる。$0$ 番目の花びらは $\cos kt\;\vec e(t)$ の集まりで、各点の向きを $c_j$ だけ増やす(距離は変えない)と $j$ 番目の花びらになる。これは原点のまわりの $c_j$ の回転である。$\square$
図 2 は $k=4$ の場合で、破線は向き $\dfrac\pi8,\dfrac{3\pi}8,\ldots$ の半直線、つまり中心角 $\dfrac\pi4$ の扇形の境目である。$0$ 番目の花びら(赤)は向き $0$ の扇形に、$1$ 番目の花びら(青)は $c_1=\dfrac\pi4+\pi=\dfrac{5\pi}4$ の扇形にあり、青は赤を $\dfrac{5\pi}4$ だけ回転した形である。
r=cos4θ の曲線(灰色)と、中心角 π/4 の扇形の境目(破線)。0 番目の花びら(赤)は向き 0 の扇形に、1 番目の花びら(青)は向き 5π/4 の扇形にある
花びらの「枚数」は、点の集まりとして違う花びらの数で数える。lem-rose-petal により、$j$ 番目の花びらで原点からの距離が $1$ になる点は $t=0$ の点、つまり先端 $\vec e(c_j)$ だけである($\cos kt=1$ となるのは $t=0$ のときだけ)。したがって、2 つの花びらは、先端の向き $c_j$ が $2\pi$ の整数倍の違いを除いて等しければ同じ図形で(lem-rose-petal の式が同じになる)、そうでなければ先端が違うので違う図形である。花びらの枚数は、$c_j$ の値の種類の数($2\pi$ の整数倍の違いは同じとみなす)に等しい。
$k$ を正の整数とし、正葉曲線 $r=\cos k\theta$ を考える。
(1) すべての実数 $\theta$ について $P(\theta+\pi)=(-1)^{k+1}P(\theta)$ である。
(2) $k$ が奇数なら、花びらは $k$ 枚である。$0\le\theta\le\pi$ で曲線全体をえがき、$\pi\le\theta\le2\pi$ では同じ点をもう一度たどる。
(3) $k$ が偶数なら、花びらは $2k$ 枚である。$0\le\theta\le2\pi$ で曲線全体をえがく。$\pi\le\theta\le2\pi$ でえがく部分は、$0\le\theta\le\pi$ でえがく部分を原点に関して点対称に移した図形である。
段 1((1) の証明)。加法定理から $\cos k(\theta+\pi)=\cos(k\theta+k\pi)=\cos k\theta\cos k\pi-\sin k\theta\sin k\pi=(-1)^k\cos k\theta$ である。また $\vec e(\theta+\pi)=-\vec e(\theta)$ なので
$$
P(\theta+\pi)=(-1)^k\cos k\theta\cdot\bigl(-\vec e(\theta)\bigr)=(-1)^{k+1}\cos k\theta\;\vec e(\theta)=(-1)^{k+1}P(\theta)
$$
である。
段 2($k$ が奇数のときの枚数)。$k+1$ は偶数なので、(1) から $P(\theta+\pi)=P(\theta)$ である。よって $\theta$ を $\pi$ 進めると同じ点にもどり、長さ $\pi$ の区間 $-\dfrac\pi{2k}\le\theta\le\pi-\dfrac\pi{2k}$ で曲線全体がえがける。この区間は $I_0,I_1,\ldots,I_{k-1}$ をつないだものである($I_{k-1}$ の右端は $\dfrac{(2k-1)\pi}{2k}=\pi-\dfrac\pi{2k}$)。この $k$ 個の花びらの先端の向きは
thm-rose-count の範囲より短くはできない。そのことと、次の節の面積の計算で使う「花びらどうしが重ならないこと」をまとめておく。
$k$ を正の整数とする。
(1) 違う花びらは原点以外に共有点をもたない。さらに、$j$ 番目の花びらが入る扇形 $c_j-\dfrac\pi{2k}\le\varphi\le c_j+\dfrac\pi{2k}$(lem-rose-petal)どうしは、違う花びらのものなら境目の半直線以外では重ならない。
(2) 原点以外の曲線の点 $Q$ に対し、$Q=P(\theta)$ となる $\theta$ は、$k$ が奇数ならどの $\alpha$ についても $\alpha\le\theta<\alpha+\pi$ の中にただ 1 つ、$k$ が偶数なら $\alpha\le\theta<\alpha+2\pi$ の中にただ 1 つある。特に、長さが $\pi$($k$ が偶数なら $2\pi$)より短い $\theta$ の区間では、曲線全体はえがけない。
要点:先端の向き $c_j$ はどれも $\dfrac\pi k$ の整数倍で($\pi=k\cdot\dfrac\pi k$)、扇形の中心角も $\dfrac\pi k$ なので、違う花びらの扇形はすき間なく並んで内側では重ならない。原点以外の点は 1 枚の花びらに属し、その中で $t$ が向きから決まる。
段 1((1))。扇形の中心の向きが $\dfrac\pi k$ の整数倍だけ違う 2 つの扇形(中心角 $\dfrac\pi k$)は、中心の違いが $2\pi$ の整数倍でなければ、境目の半直線以外では重ならない。lem-rose-petal により、花びらは扇形の境目の半直線($t=\pm\dfrac\pi{2k}$)の上では原点しか通らないので、違う花びらの共有点は原点だけである。
段 2((2))。原点以外の点 $Q$ は、(1) によりただ 1 枚の花びらに属する。その花びらの先端の向きを $c$ とすると、$Q$ の向きは $c+t$($-\dfrac\pi{2k}< t<\dfrac\pi{2k}$)とただ 1 通りに書け、$t$ が決まる。prf-thm-rose-count の段 2・段 3 で見たように、$k$ が奇数なら長さ $\pi$ の $\theta$ の区間で、$k$ が偶数なら長さ $2\pi$ の区間で、各花びらはちょうど 1 回ずつ現れ、そのときの $\theta=\dfrac{j\pi}k+t$ が 1 つ決まる。区間の始まり $\alpha$ を変えても、$\theta$ を $\pi$(偶数なら $2\pi$)の整数倍だけずらせばよい。
段 3(短い区間)。$k$ が偶数のとき、長さ $2\pi$ より短い区間 $[\alpha,\beta]$ をとる。$\beta<\theta<\alpha+2\pi$ の範囲に $\cos k\theta\ne0$ となる $\theta$ がある($\cos k\theta=0$ となる $\theta$ はとびとびにしかない)。その点 $P(\theta)$ は原点でなく、段 2 により $\alpha$ 以上 $\alpha+2\pi$ 未満でこの点を表す $\theta$ はそれだけなので、$[\alpha,\beta]$ ではえがかれない。$k$ が奇数のときも同じである。$\square$
(2) $k=4$。$c_j$ を $0\le c_j<2\pi$ にそろえて $j=0,1,\ldots,7$ の順に並べると $$0,\ \frac{5\pi}4,\ \frac\pi2,\ \frac{7\pi}4,\ \pi,\ \frac\pi4,\ \frac{3\pi}2,\ \frac{3\pi}4$$ で、$\dfrac\pi4$ の整数倍 $8$ 個が 1 回ずつ現れる。$j$ が $1$ 増えるごとに先端は $\dfrac{5\pi}4$ ずつ回り、$8$ 回で $10\pi$、つまり $5$ 周してもとにもどる。
(3) $k=5$。$c_j$ は $j=0,\ldots,4$ で $0,\ \dfrac{6\pi}5,\ \dfrac{2\pi}5,\ \dfrac{8\pi}5,\ \dfrac{4\pi}5$ で、$\dfrac{2\pi}5$ の整数倍 $5$ 個が 1 回ずつ現れる。
図 3 と図 4 は、$0\le\theta\le\pi$ でえがく部分(赤)と $\pi\le\theta\le2\pi$ でえがく部分(青の破線)を重ねたものである。$k=3$ では赤と青が完全に重なり、$k=2$ では青が赤を原点に関して点対称に移した位置にあって、赤にない部分を補っている。
r=cos3θ で、0≤θ≤π の部分(赤)と π≤θ≤2π の部分(青の破線)が完全に重なる
r=cos2θ で、π≤θ≤2π の部分(青の破線)は 0≤θ≤π の部分(赤)の点対称な像で、赤にない部分をえがく
$\sin k\theta=\cos\left(k\theta-\dfrac\pi2\right)=\cos k\left(\theta-\dfrac\pi{2k}\right)$ である。$s=\theta-\dfrac\pi{2k}$ とおくと、$r=\sin k\theta$ の点は
$$
\sin k\theta\;\vec e(\theta)=\cos ks\;\vec e\!\left(s+\frac\pi{2k}\right)
$$
で、これは $r=\cos k\theta$ の $\theta=s$ の点 $\cos ks\;\vec e(s)$ の向きを $\dfrac\pi{2k}$ 増やした点、つまり原点のまわりに $\dfrac\pi{2k}$ 回転した点である。$\theta$ がすべての実数を動くと $s$ もすべての実数を動くので、$r=\sin k\theta$ の曲線は $r=\cos k\theta$ の曲線を $\dfrac\pi{2k}$ だけ回転した図形である。
たとえば $k=2$ では回転の角は $\dfrac\pi4$ で、$r=\sin2\theta$ の花びらの先端は右上・左上・左下・右下の $4$ 方向(向き $\dfrac\pi4,\dfrac{3\pi}4,\dfrac{5\pi}4,\dfrac{7\pi}4$)にある。$\theta=\dfrac\pi4$ で $r=\sin\dfrac\pi2=1$、点は $\left(\dfrac{\sqrt2}2,\dfrac{\sqrt2}2\right)$ である。$k=3$ では回転の角は $\dfrac\pi6$ で、先端の向きは $\dfrac\pi6$、$\dfrac{5\pi}6$、$\dfrac{3\pi}2$(真下)になる。
主定理 1 と、次の節の主定理 2 の結果を表にまとめる。
| $k$ | $1$ | $2$ | $3$ | $4$ | $5$ | $6$ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 花びらの枚数 | $1$(円) | $4$ | $3$ | $8$ | $5$ | $12$ |
| 全体をえがく $\theta$ の範囲 | $0\le\theta\le\pi$ | $0\le\theta\le2\pi$ | $0\le\theta\le\pi$ | $0\le\theta\le2\pi$ | $0\le\theta\le\pi$ | $0\le\theta\le2\pi$ |
| 1 枚の花びらの面積 | $\dfrac\pi4$ | $\dfrac\pi8$ | $\dfrac\pi{12}$ | $\dfrac\pi{16}$ | $\dfrac\pi{20}$ | $\dfrac\pi{24}$ |
| 囲む部分の面積 | $\dfrac\pi4$ | $\dfrac\pi2$ | $\dfrac\pi4$ | $\dfrac\pi2$ | $\dfrac\pi4$ | $\dfrac\pi2$ |
$j$ 番目の花びらと、原点から花びらの点までの線分が通る部分
$$
D_j=\left\{\rho\;\vec e(c_j+t)\ \middle|\ -\frac\pi{2k}\le t\le\frac\pi{2k},\ 0\le\rho\le\cos kt\right\}
$$
を、$j$ 番目の花びらが囲む部分という。違う花びら全部について $D_j$ を合わせた図形を、正葉曲線が囲む部分 という。面積について認める性質(線分の上でしか重ならない図形を合わせた図形の面積は面積の和であること)は、極座標で表された図形の面積 で認めたものである。
$k$ を正の整数とする。正葉曲線 $r=\cos k\theta$ の 1 枚の花びらが囲む部分の面積は $\dfrac\pi{4k}$ である。曲線が囲む部分の面積は、$k$ が奇数なら $\dfrac\pi4$、偶数なら $\dfrac\pi2$ で、$k$ によらない。
段 1(1 枚の面積)。$0$ 番目の花びらが囲む部分 $D_0$ は、極座標で表された図形の面積 の定理「極座標で表された図形の面積の公式」で、$f(t)=\cos kt$、$\alpha=-\dfrac\pi{2k}$、$\beta=\dfrac\pi{2k}$ とした図形である($f$ は連続で $f(t)\ge0$、$\beta-\alpha=\dfrac\pi k\le2\pi$ で、公式の仮定を満たす)。半角の公式 $\cos^2kt=\dfrac{1+\cos2kt}2$ を使うと
$$
\frac12\int_{-\pi/(2k)}^{\pi/(2k)}\cos^2kt\,dt=\frac14\int_{-\pi/(2k)}^{\pi/(2k)}(1+\cos2kt)\,dt=\frac14\left(\frac\pi k+\Bigl[\frac{\sin2kt}{2k}\Bigr]_{-\pi/(2k)}^{\pi/(2k)}\right)=\frac14\cdot\frac\pi k=\frac\pi{4k}
$$
である($\sin\pi=\sin(-\pi)=0$)。
段 2(どの花びらも同じ面積)。$D_j$ の点の向きを $\varphi=c_j+t$ と書くと、$D_j$ は同じ定理で $f(\varphi)=\cos k(\varphi-c_j)$、$\alpha=c_j-\dfrac\pi{2k}$、$\beta=c_j+\dfrac\pi{2k}$ とした図形である($f$ は連続で、$\lvert k(\varphi-c_j)\rvert\le\dfrac\pi2$ なので $f(\varphi)\ge0$、$\beta-\alpha=\dfrac\pi k\le2\pi$)。$t=\varphi-c_j$ と置き換えると、$\varphi$ が $\alpha$ から $\beta$ まで動くとき $t$ は $-\dfrac\pi{2k}$ から $\dfrac\pi{2k}$ まで動き、$d\varphi=dt$ なので
$$
\frac12\int_{c_j-\pi/(2k)}^{c_j+\pi/(2k)}\cos^2k(\varphi-c_j)\,d\varphi=\frac12\int_{-\pi/(2k)}^{\pi/(2k)}\cos^2kt\,dt=\frac\pi{4k}
$$
である(最後の等号は段 1 の計算)。
段 3(重なり)。prop-rose-once (1) により、違う花びらの扇形は境目の半直線以外では重ならない。$D_j$ は自分の扇形の中にあるので、違う $D_j$ どうしは境目の半直線の上(原点を端とする線分の上)でしか重ならない。よって囲む部分の面積は、違う花びらの枚数に $\dfrac\pi{4k}$ を掛けたものである。
段 4(まとめ)。thm-rose-count により、$k$ が奇数なら枚数は $k$ で、面積は $k\cdot\dfrac\pi{4k}=\dfrac\pi4$ である。$k$ が偶数なら枚数は $2k$ で、面積は $2k\cdot\dfrac\pi{4k}=\dfrac\pi2$ である。$\square$
$k$ を大きくすると花びらは細くなるが、枚数が増えるので、合計はちょうど打ち消し合って変わらない。
主定理の条件を外すと何が崩れるかを並べる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $r<0$ の点も向き $\theta+\pi$ の側にとる | $r=\cos2\theta$ で $r\ge0$ の点だけをとる | 偶数の $k$ で花びらが $2k$ 枚 |
| $k$ は正の整数 | $r=\cos\dfrac\theta2$ | 長さ $2\pi$ の区間で曲線が閉じる |
| 面積の積分を花びらごとに行う | $r=\cos3\theta$ で $0\le\theta\le2\pi$ の $\dfrac12\displaystyle\int r^2\,d\theta$ | 積分の値が囲む部分の面積 |
極座標と極方程式 の約束($r\ge0$ の点だけを使う)で $r=\cos2\theta$ をえがくと、$\cos2\theta\ge0$ となる $\theta$、すなわち $I_0$ と $I_2$(とそれを $2\pi$ ずつずらしたもの)の花びらだけが残る。先端は $c_0=0$ と $c_2=\pi$ で、右と左の $2$ 枚である(図 5 の緑)。$I_1$、$I_3$ の花びら(下と上)は $r<0$ から来るので捨てられる(図 5 の破線)。花びらは $2k=4$ 枚ではなく $2$ 枚で、囲む部分の面積も $\dfrac\pi2$ ではなく $2\cdot\dfrac\pi8=\dfrac\pi4$ になる。これは 極座標と極方程式 の反例「r<0 も許すと図形が変わる」で見た現象である。
一般に、$r\ge0$ の約束で残るのは $j$ が偶数の花びらである。$k$ が偶数なら枚数は半分の $k$ 枚になり、$k$ が奇数なら $k$ 枚すべてが残る。$r<0$ を許すかどうかで図形が変わるのは、$k$ が偶数のときだけである。
$r\ge0$ の点が集まるのは $\cos k\theta\ge0$ の区間、つまり $j$ が偶数の $I_j$ で、先端は $c_j=\dfrac{j\pi}k$ である。$k$ が偶数なら $j=0,2,\ldots,2k-2$ の $k$ 枚が残る。$k$ が奇数なら、prf-thm-rose-count の段 2 で数えた $k$ 枚のうち奇数の $j$ の花びらは、$j+k$(偶数)番目の花びらと同じ図形である($c_{j+k}=\dfrac{(j+k)\pi}k=\dfrac{j\pi}k+\pi=c_j$)。よって $r\ge0$ の点だけでも $k$ 枚すべてがえがかれる。
$r=\cos\dfrac\theta2$ を考え、点を $P(\theta)=\cos\dfrac\theta2\;\vec e(\theta)$ とする。$\theta=0$ では $P(0)=(1,0)$ だが、$\theta=2\pi$ では $\cos\pi=-1$ で $P(2\pi)=-\vec e(2\pi)=(-1,0)$ である。$\theta$ を $2\pi$ 進めても出発点にもどらない。一般に
$$
P(\theta+2\pi)=\cos\left(\frac\theta2+\pi\right)\vec e(\theta+2\pi)=-\cos\frac\theta2\;\vec e(\theta)=-P(\theta)
$$
なので、$2\pi\le\theta\le4\pi$ の部分は $0\le\theta\le2\pi$ の部分の点対称な像で、$\theta=4\pi$ で $P(4\pi)=(1,0)$ にもどる(図 6)。$k$ が整数なら $\cos k(\theta+2\pi)=\cos k\theta$ なので長さ $2\pi$ の区間で必ず閉じたが、$k=\dfrac12$ では $2k\pi=\pi$ が $2\pi$ の整数倍でないので閉じない。thm-rose-count の (1) で使った $\cos k(\theta+\pi)=(-1)^k\cos k\theta$ も、$k$ が整数でないと意味をもたない。
$r=\cos3\theta$ で、$\theta$ の範囲を気にせず $0\le\theta\le2\pi$ で $\dfrac12\displaystyle\int r^2\,d\theta$ を計算すると
$$
\frac12\int_0^{2\pi}\cos^23\theta\,d\theta=\frac14\int_0^{2\pi}(1+\cos6\theta)\,d\theta=\frac14\cdot2\pi=\frac\pi2
$$
になる($\cos6\theta$ は $0\le\theta\le2\pi$ で $6$ 周期分なので、積分は $0$)。囲む部分の本当の面積は $\dfrac\pi4$ である(thm-rose-area)。thm-rose-count (2) により、$\pi\le\theta\le2\pi$ では $0\le\theta\le\pi$ の点をもう一度たどるので、$3$ 枚の花びらを $2$ 回ずつ数えて $2$ 倍になった。$\dfrac12\displaystyle\int_0^\pi\cos^23\theta\,d\theta=\dfrac\pi4$ とすれば正しい。
破る主張:「$\dfrac12\displaystyle\int r^2\,d\theta$ の値が、囲む部分の面積」。極座標で表された図形の面積 の反例「螺旋を 2 周させる」と同じく、同じ部分を 2 回通ったことが原因である。$k$ が偶数なら、$2k$ 枚の扇形(中心角 $\dfrac\pi k$)が原点のまわりをすき間なく 1 周するので(prop-rose-once)、同じ計算の値 $\dfrac\pi2$ はそのまま面積になる。
r=cos2θ で r≥0 の点だけをとると、右と左の 2 枚(緑)だけが残り、上と下の花びら(破線)は r<0 から来る
r=cos(θ/2) は 0≤θ≤2π(赤)では閉じず、2π≤θ≤4π(青の破線)の点対称な部分を加えてはじめて閉じる
複素数平面で $P(\theta)$ を $z(\theta)=\cos k\theta\;e^{i\theta}$ と書く。$\cos k\theta=\dfrac{e^{ik\theta}+e^{-ik\theta}}2$($e^{i\varphi}=\cos\varphi+i\sin\varphi$ と $e^{-i\varphi}=\cos\varphi-i\sin\varphi$ を足して $2$ で割る)を使うと
$$
z(\theta)=\frac12e^{i(k+1)\theta}+\frac12e^{-i(k-1)\theta}
$$
である。半径 $\dfrac12$ で反時計回りに速さ $k+1$ で回る点と、半径 $\dfrac12$ で時計回りに速さ $k-1$ で回る点の和である。カージオイド が 2 つの回転の合成で表されたのと同じ形で、正葉曲線は円の内側を円が転がる曲線の仲間(内トロコイド)の特別な場合である(Wei26)。$k$ が奇数なら $k+1$ と $k-1$ はどちらも偶数で、$z(\theta+\pi)=z(\theta)$ となる。これが thm-rose-count (1) の複素数での見方である。
$k$ を分数にすると、曲線は長さ $2\pi$ の区間では閉じないことがある(ex-rose-cx-half)。どれだけ $\theta$ を動かせば閉じるかは $k$ の分母と分子で決まり、$k$ が有理数のときに限って曲線は多項式の方程式で表される(Wei26。この記事では証明しない)。
Wei26 によれば、$k=\dfrac pq$(既約分数)のとき、曲線は $\theta=\pi qm$ で閉じる。ここで $m$ は、$pq$ が奇数なら $1$、偶数なら $2$ である。$k$ が無理数なら花びらは無限にある。たとえば $k=\dfrac12$($p=1$、$q=2$、$pq=2$ は偶数)では $\theta=4\pi$ で閉じ、ex-rose-cx-half と一致する。$k=\dfrac13$ では $pq=3$ が奇数で、$\theta=3\pi$ で閉じる($P(\theta+3\pi)=\cos\left(\dfrac\theta3+\pi\right)\vec e(\theta+3\pi)=(-\cos\dfrac\theta3)(-\vec e(\theta))=P(\theta)$ で確かめられる)。この記事では一般の場合を証明しない。
$k=2$ のとき、$x=r\cos\theta$、$y=r\sin\theta$($r=\cos2\theta$、負でもよい)から $x^2+y^2=r^2$、$x^2-y^2=r^2\cos2\theta=r^3$ なので、$r^3=x^2-y^2$ の両辺を 2 乗して $$\left(x^2+y^2\right)^3=\left(x^2-y^2\right)^2 $$を得る。曲線の点はこの 6 次の多項式の方程式を満たす。Wei26 によれば、$k$ が有理数のとき(そのときに限り)、正葉曲線は多項式の方程式で表される曲線(代数曲線)である。同じ頁には $r=a\sin k\theta$($k=1,\ldots,5$)の直交座標の式の表がある。
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