Minkowskiの凸体定理(Minkowski's convex body theorem)とは、$n$ 次元空間 $\mathbb{R}^n$ の原点について対称な凸集合 $K$ の体積が $2^n$ より大きければ、$K$ は原点以外の格子点(座標がすべて整数の点)を含む、という数の幾何の基本定理である。平面では面積が $4$ より大きい原点対称な凸図形の場合になる。$K$ が有界な閉集合なら体積がちょうど $2^n$ でも成り立つが、開いた立方体 $(-1,1)^n$ の例が示すように定数 $2^n$ は下げられず、対称性と凸性の仮定もどちらも外せない。面積の大きい図形は升目に重ねるとどこかで重なるという Blichfeldt の補題から短く証明でき、一般の格子への拡張を通じて Dirichlet の近似定理や Fermat の二平方定理の証明に使われる。
前提知識: 格子点, 凸集合, Lebesgue測度, 鳩の巣原理
座標平面で、原点を中心とし、直線 $y=\sqrt2\,x$ に沿って細長く伸びた平行四辺形
$$
K=\{(x,y)\mid |x|\le10,\ |y-\sqrt2\,x|\le0.1\}
$$
を考える。$K$ は横に $x=-10$ から $x=10$ まで幅 $20$、縦方向の厚みが $0.2$ なので、面積は $20\times0.2=4$ である。$K$ は原点について対称で、どの 2 点を結ぶ線分も $K$ に含まれる(凸である)。このとき $K$ は原点以外の格子点(座標がともに整数の点)を必ず含む、というのが本記事の定理の主張であり、実際 $(x,y)=(5,7)$ は $|7-5\sqrt2|=0.0710\cdots\le0.1$ を満たすので $K$ に入っている($K$ に入る原点以外の格子点は $(5,7)$ と $(-5,-7)$ の 2 つだけである)。これは $\frac75=1.4$ が $\sqrt2=1.41421\cdots$ のよい近似であることを言い換えたものになっている。一方、原点を中心とする一辺 $1.9$ の正方形 $\{|x|\le0.95,\ |y|\le0.95\}$ も原点について対称な凸集合だが、面積は $3.61<4$ で、原点以外の格子点を含まない。
一般に、$n$ 次元空間 $\mathbb{R}^n$ の原点について対称な凸集合の体積が $2^n$ より大きければ、その集合は原点以外の格子点を含む。これが Minkowski の凸体定理(Minkowski の格子点定理、数の幾何の基本定理)である。平面では「面積が $4$ より大きければ」という形になる。H. Minkowski の著書『Geometrie der Zahlen』は第1分冊が 1896 年、第2分冊が 1910 年に刊行された(Min96)。本記事では、定理を Blichfeldt の補題から証明し、定数 $2^n$ と各仮定が外せないことを反例で示し、一般の格子(数論)への拡張と、Dirichletの近似定理・Fermatの二平方定理への応用を述べる。
原点対称な閉円板と2次元整数格子。赤い非零格子点4点はすべて円板の内部にある
図の閉円板 $K=\{(x,y)\mid x^2+y^2\le(6/5)^2\}$ は原点対称で凸、面積は $36\pi/25\approx4.52>4$ である。赤い非零格子点 $(\pm1,0),(0,\pm1)$ はすべて内部にあり、境界上に格子点はない。この図は定理の厳密不等号を満たす例であり、等号の場合は後述の例で区別する。
$\mathbb{R}^n$ の部分集合 $K$ の体積は、$K$ の Lebesgue測度 $\operatorname{vol}(K)$ で測る($n=2$ なら面積、$n=1$ なら長さ)。本記事で使う Lebesgue 測度の性質は、次の 3 つである。(1) 互いに交わらない可算個の可測集合の和集合の測度は、各集合の測度の和である(可算加法性)。(2) 平行移動しても測度は変わらない。(3) 可逆な線形写像 $M\colon\mathbb{R}^n\to\mathbb{R}^n$ で写すと測度は $|\det M|$ 倍になる(とくに $t>0$ 倍の拡大 $tK:=\{tx\mid x\in K\}$ では $t^n$ 倍になる)。
$K\subset\mathbb{R}^n$ とする。
空でない原点対称な凸集合 $K$ は原点を含む。実際、$x\in K$ なら $-x\in K$ であり、その中点 $\frac12x+\frac12(-x)=0$ が $K$ に入る。したがって問題は、原点以外の格子点を含むかどうかである。
$n\ge1$ とし、$K\subset\mathbb{R}^n$ を原点について対称な凸集合で、Lebesgue 可測なものとする。
$$
\operatorname{vol}(K)>2^n
$$
ならば、$K$ は原点以外の格子点を含む。すなわち、$0$ でない $z\in\mathbb{Z}^n$ で $z\in K$ となるものがある。
有界な凸集合の境界は Lebesgue 測度 $0$ なので Jordan 可測であり、したがって Lebesgue 可測である(ConvexMeasure の Convex.addHaar_frontier)。有界でない凸集合 $K$ も、原点を中心とする半径 $j$ の閉球との共通部分(有界な凸集合)の $j=1,2,\dots$ にわたる和集合なので Lebesgue 可測である。したがって可測性の仮定は実際には不要であるが、本記事では証明に必要な範囲をはっきりさせるため仮定に含めた。$K$ は有界でなくてもよく、$\operatorname{vol}(K)=\infty$ の場合も含む。
$\operatorname{vol}(K)=2^n$ ちょうどの場合は、$K$ が閉じていなければ結論が成り立たないことがある(ex-mink-sharp)。$K$ が有界な閉集合なら等号の場合も成り立つ(cor-mink-compact)。
平面の場合($n=2$)に、Hajós による「升目に切って重ねる」証明の考え方を述べる(Mos11 第 8 章、印刷 p. 70/PDF p. 78)。平面を、$(2i-1,2j-1)$ と $(2i+1,2j+1)$($i,j$ は整数)を対角の頂点とする一辺 $2$ の正方形の升目に切り分ける。$K$ を升目の線に沿って切り、切れ端をすべて平行移動して中央の正方形 $[-1,1]\times[-1,1]$ に重ねる。$K$ の面積は $4$ より大きく、正方形の面積は $4$ なので、切れ端はどこかで重なる。重なった点に針を刺して $K$ をもとに戻すと、針は $K$ の相異なる 2 点 $x,y$ を貫いており、$x$ と $y$ は升目の平行移動でずれているだけだから、$x-y$ の座標はどちらも偶数である。すると $\frac12(x-y)$ は $0$ でない格子点であり、対称性($-y\in K$)と凸性($x$ と $-y$ の中点が $K$ に入る)から $K$ に属する。
この議論の前半は「面積の大きい図形は、升目の上に重ねるとどこかで重なる」という鳩の巣原理の面積版であり、次の Blichfeldt の補題として一般の形に述べられる。
$S\subset\mathbb{R}^n$ を Lebesgue 可測な集合で $\operatorname{vol}(S)>1$ とする($\operatorname{vol}(S)=\infty$ でもよい)。このとき、$S$ の相異なる 2 点 $x,y$ で、$x-y\in\mathbb{Z}^n$ となるものがある。
$Q:=[0,1)^n$ とおく。$z\in\mathbb{Z}^n$ について $Q+z:=\{q+z\mid q\in Q\}$ とおくと、これらは互いに交わらず、$\mathbb{R}^n$ を覆う(各座標 $t$ は $\lfloor t\rfloor\le t<\lfloor t\rfloor+1$ によってただ 1 つの半開区間に入る)。$S_z:=S\cap(Q+z)$ とおくと、$S$ は可算個の互いに交わらない可測集合 $S_z$($z\in\mathbb{Z}^n$)の和集合なので、可算加法性により
$$
\sum_{z\in\mathbb{Z}^n}\operatorname{vol}(S_z)=\operatorname{vol}(S)>1
$$
である。各 $S_z$ を $-z$ だけ平行移動した集合 $S_z-z$ は $Q$ に含まれ、平行移動で測度は変わらないので $\operatorname{vol}(S_z-z)=\operatorname{vol}(S_z)$ である。
もし集合 $S_z-z$($z\in\mathbb{Z}^n$)が互いに交わらないとすると、可算加法性により
$$
\sum_{z\in\mathbb{Z}^n}\operatorname{vol}(S_z-z)=\operatorname{vol}\Bigl(\bigcup_{z\in\mathbb{Z}^n}(S_z-z)\Bigr)\le\operatorname{vol}(Q)=1
$$
となり、上の式に反する。したがって相異なる $z,w\in\mathbb{Z}^n$ と点 $q\in(S_z-z)\cap(S_w-w)$ がある。$x:=q+z\in S_z\subset S$、$y:=q+w\in S_w\subset S$ とおくと、$z\ne w$ なので $x\ne y$ であり、$x-y=z-w\in\mathbb{Z}^n$ である。$\square$
$S:=\frac12K=\{\frac12x\mid x\in K\}$ とおく。$S$ は可測で、$\operatorname{vol}(S)=2^{-n}\operatorname{vol}(K)>1$ である。lem-mink-blichfeldt により、$S$ の相異なる 2 点 $\frac12x,\frac12y$($x,y\in K$)で $\frac12x-\frac12y\in\mathbb{Z}^n$ となるものがある。$z:=\frac12x-\frac12y$ とおくと、$x\ne y$ なので $z\ne0$ である。$K$ は原点について対称なので $-y\in K$ であり、$K$ は凸なので $x$ と $-y$ の中点
$$
\tfrac12x+\tfrac12(-y)=z
$$
も $K$ に属する。よって $z$ は $K$ に含まれる $0$ でない格子点である。$\square$
この証明で対称性と凸性を使ったのは、「$x,y\in K$ なら $\frac12(x-y)\in K$」という 1 点だけである。Moser はこの性質だけで対称性と凸性の仮定を置き換えられることを注意している(Mos11 第 8 章、印刷 p. 69/PDF p. 77)。
$K\subset\mathbb{R}^n$ を原点について対称な凸集合で、有界な閉集合(コンパクト集合)であるものとする。$\operatorname{vol}(K)\ge2^n$ ならば、$K$ は原点以外の格子点を含む。
$\operatorname{vol}(K)>2^n$ なら thm-mink-main そのものなので、$\operatorname{vol}(K)=2^n$ とする。正の整数 $j$ について $K_j:=(1+\frac1j)K$ とおく。$K_j$ は原点について対称な凸集合で、$\operatorname{vol}(K_j)=(1+\frac1j)^n2^n>2^n$ なので、thm-mink-main により $0$ でない格子点 $z_j\in K_j$ がある。$K$ は凸で原点を含むので、$x\in K$ と $0\le t\le1$ について $tx\in K$ であり、$(1+\frac1j)x=2\cdot\frac{j+1}{2j}x$ から $K_j\subset2K$ である。$2K$ は有界なので、$2K$ に含まれる格子点は有限個しかない。したがって、ある格子点 $z\ne0$ が無限個の $j$ について $z_j=z$ となる。そのような $j$ について $\frac{j}{j+1}z\in K$ であり、$j\to\infty$ とすると $\frac{j}{j+1}z\to z$ で、$K$ は閉集合なので $z\in K$ である。$\square$
冒頭の平行四辺形 $K=\{(x,y)\mid|x|\le10,\ |y-\sqrt2\,x|\le0.1\}$ を確かめる。写像 $(x,y)\mapsto(x,\,y-\sqrt2\,x)$ は行列式 $1$ の線形写像で、$K$ を長方形 $[-10,10]\times[-0.1,0.1]$ に写すので、$\operatorname{vol}(K)=20\times0.2=4$ である。$K$ は原点について対称な凸集合で、有界な閉集合なので、cor-mink-compact により原点以外の格子点を含む。$|x|\le10$ の整数 $x$ について $\sqrt2\,x$ に最も近い整数 $y$ との差を調べると、差が $0.1$ 以下になるのは $x=\pm5$($y=\pm7$、差 $0.0710\cdots$)だけである。同じ議論を $|x|\le N$、$|y-\sqrt2\,x|\le\frac1N$ に使うと、$N\ge2$ に対しては $|q\sqrt2-p|\le\frac1N$、$1\le q\le N$ を満たす整数 $p,q$ が見つかる(一般の $N$ に対しては prop-mink-dirichlet を参照)。$N=100$ では $(q,p)=(70,99)$ と $(99,140)$ がこれを満たす。
開いた立方体 $K=(-1,1)^n$ は原点について対称な凸集合で、$\operatorname{vol}(K)=2^n$ であるが、座標がすべて $-1$ より大きく $1$ より小さい整数の点は原点だけなので、原点以外の格子点を含まない。したがって thm-mink-main の不等式 $\operatorname{vol}(K)>2^n$ を $\operatorname{vol}(K)\ge2^n$ に弱めることはできず、cor-mink-compact の「閉集合」の仮定も外せない。また平面の場合は、$0<\varepsilon<2$ について、閉じた正方形 $[-(1-\frac\varepsilon2),1-\frac\varepsilon2]^2$(一辺 $2-\varepsilon$)が原点以外の格子点を含まず、面積 $(2-\varepsilon)^2$ はいくらでも $4$ に近い(Mos11 第 8 章、印刷 p. 69)。同じ議論は一般の $n$ 次元の立方体にも当てはまる。よって「体積が $c$ より大きければ原点以外の格子点を含む」という形の主張は、$c<2^n$ では成り立たない。
$N>0$ とし、平面の集合
$$
K=\{(0,0)\}\cup\{(x,y)\mid 0< x<1,\ |y|< Nx\}
$$
を考える。$K$ は原点を頂点とする三角形の内部に原点を付け加えた凸集合で、面積は $N$ である。$K$ の点は $x=0$ なら原点だけであり、それ以外は $0< x<1$ なので、原点以外の格子点を含まない。$N>4$ とすれば面積は $4$ より大きい。この $K$ は凸だが原点について対称でなく($(\frac12,0)\in K$ だが $(-\frac12,0)\notin K$)、thm-mink-main の結論が破れる。
$N>0$ とし、$R:=(0,1)\times(0,N)$ として $K:=R\cup(-R)\cup\{(0,0)\}$ とおく。$K$ は原点について対称で、面積は $2N$ である。$K$ の原点以外の点は $x$ 座標が $0< x<1$ または $-1< x<0$ を満たすので、$K$ は原点以外の格子点を含まない。$N>2$ なら面積は $4$ より大きい。$K$ は凸でない($(\frac12,1)\in R$ と $(-\frac12,-\frac12)\in-R$ の中点 $(0,\frac14)$ は $K$ に属さない)ので、thm-mink-main の凸性の仮定が破れている。
$M$ を $n$ 次の実正則行列とし、$\Lambda:=M\mathbb{Z}^n=\{Mz\mid z\in\mathbb{Z}^n\}$ とおく。このような $\Lambda$ を $\mathbb{R}^n$ の 格子(lattice)といい、$|\det M|$ をその 基本領域の体積(covolume)という。$|\det M|$ は、$M$ の列ベクトルが張る平行体 $M[0,1)^n$ の体積であり、$\Lambda$ の点を平行移動の起点としてこの平行体を並べると $\mathbb{R}^n$ が隙間なく覆われる。$\mathbb{Z}^n$ は $M$ が単位行列の場合で、基本領域の体積は $1$ である。
$\Lambda=M\mathbb{Z}^n$ を $\mathbb{R}^n$ の格子とし、$K\subset\mathbb{R}^n$ を原点について対称な凸集合で Lebesgue 可測なものとする。
$$
\operatorname{vol}(K)>2^n\,|\det M|
$$
ならば、$K$ は $\Lambda$ の $0$ でない点を含む。
$K':=M^{-1}K=\{M^{-1}x\mid x\in K\}$ とおく。線形写像は原点についての対称性と凸性を保つ($M^{-1}(-x)=-M^{-1}x$、$M^{-1}((1-t)x+ty)=(1-t)M^{-1}x+tM^{-1}y$)ので、$K'$ は原点について対称な凸集合である。また $K'$ は可測で、$\operatorname{vol}(K')=|\det M^{-1}|\operatorname{vol}(K)=\operatorname{vol}(K)/|\det M|>2^n$ である。thm-mink-main により、$0$ でない $z\in\mathbb{Z}^n$ で $z\in K'$ となるものがある。すると $Mz\in K$ であり、$M$ は正則なので $Mz\ne0$ で、$Mz\in\Lambda$ である。$\square$
$\alpha$ を実数、$N\ge1$ を整数とする。このとき
$$
1\le q\le N,\qquad|q\alpha-p|<\frac1N
$$
を満たす整数 $p,q$ が存在する。
$K:=\{(x,y)\mid|x|< N+1,\ |\alpha x-y|<\frac1N\}$ とおく。$K$ は原点について対称な凸集合(2 組の平行線にはさまれた帯の共通部分)であり、行列式 $1$ の線形写像 $(x,y)\mapsto(x,\,y-\alpha x)$ で長方形 $(-(N+1),N+1)\times(-\frac1N,\frac1N)$ に写るので、面積は
$$
2(N+1)\cdot\frac2N=\frac{4(N+1)}{N}>4
$$
である。thm-mink-main により、原点以外の格子点 $(q,p)\in K$ がある。$q$ は $|q|< N+1$ を満たす整数なので $|q|\le N$ であり、$|q\alpha-p|<\frac1N$ である。$q=0$ とすると $|p|<\frac1N\le1$ から $p=0$ となり、$(q,p)\ne(0,0)$ に反する。$q<0$ なら $(q,p)$ を $(-q,-p)$ に取り替えてよい($K$ は原点について対称)。よって $1\le q\le N$ である。$\square$
これは 鳩の巣原理 の記事の定理「Dirichlet の近似定理」と同じ主張であり、あちらでは $\{0\cdot\alpha\},\dots,\{N\alpha\}$ を $N$ 個の区間に分ける鳩の巣原理で証明している。凸体定理による証明は、冒頭の例のように「無理数の傾きの直線に沿った細長い平行四辺形は必ず格子点を含む」という図形の言葉で同じことを述べている(Mos11 第 8 章、印刷 p. 69–70/PDF p. 77–78 は、この図で近似との関係を説明している)。
$p$ を $p\equiv1\pmod4$ を満たす素数とする。このとき $p=a^2+b^2$ となる整数 $a,b$ がある。
Fermatの二平方定理 の記事の補題「法pでのマイナス1の平方根」により、$u^2\equiv-1\pmod p$ を満たす整数 $u$ がある。
$$
M:=\begin{pmatrix}1&0\\u&p\end{pmatrix},\qquad\Lambda:=M\mathbb{Z}^2
$$
とおく。$\Lambda$ は $b\equiv ua\pmod p$ を満たす整数の組 $(a,b)$ の全体である。実際、$M\binom st=\binom{s}{us+pt}$ はこの条件を満たし、逆にこの条件を満たす $(a,b)$ は $s=a$、$t=(b-ua)/p$ とおけば $M\binom st$ と書ける。$\det M=p$ である。
$K$ を開円板 $\{(x,y)\mid x^2+y^2<2p\}$ とする。$K$ は原点について対称な凸集合で、面積は $2\pi p>4p=2^2\det M$ である。cor-mink-lattice により、$0$ でない $(a,b)\in\Lambda$ で $a^2+b^2<2p$ となるものがある。$b\equiv ua\pmod p$ なので
$$
a^2+b^2\equiv a^2(1+u^2)\equiv0\pmod p
$$
である。$0< a^2+b^2<2p$ で $a^2+b^2$ は $p$ の倍数だから、$a^2+b^2=p$ である。$\square$
たとえば $p=13$ では $u=5$($5^2+1=26=2\cdot13$)とでき、$\Lambda$ の点 $(a,b)=(2,-3)$ は $-3\equiv10=5\cdot2\pmod{13}$ を満たし、$2^2+(-3)^2=13$ である。同じ格子と円板を使う証明は ST16 第7章 §7.2、印刷 p. 142 にある。Fermatの二平方定理 の記事には、Zagier の対合による証明と Thue の補題による証明がある。
合同条件で作る 4 次元の格子と球に cor-mink-lattice を適用すると、素数が 4 つの平方数の和であることが示せる。四平方恒等式で一般の正整数へ拡張すれば、Lagrangeの四平方定理になる(ST16 第7章 §7.3、定理 7.3、印刷 pp. 143–144)。凸体定理のより深い応用として、代数体の整数環のイデアル類群が有限群であること(類数の有限性)の Minkowski による証明がある(ST16 第9章 §9.2–9.3、定理 9.7、印刷 pp. 153–157)。また、格子点を頂点とする多角形の面積を格子点の個数で表す Pickの定理 を凸体定理から導く証明もある(Murty と Thain による MT07)。
Minkowski の『Geometrie der Zahlen』は第1分冊が 1896 年、第2分冊が 1910 年に刊行された(Min96)。lem-mink-blichfeldt は Blichfeldt の 1914 年の論文にあり、そこで Minkowski の定理との関係も述べられている(Bli14)。直感の節で述べた「升目に切って重ねる」証明は Hajós(1934)による(Mos11 第 8 章、印刷 p. 69–70/PDF p. 77–78)。
van der Corput による精密化として、有界な原点対称の凸体 $K$ が $\operatorname{vol}(K)>k\cdot2^n$($k$ は正の整数)を満たせば、$K$ は原点以外の格子点を $2k$ 個以上含む($\pm z$ の組で $k$ 組)ことが知られている(Cas97 第III章 §2、定理 II、印刷 p. 71)。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する