基数

同義語:cardinal numbercardinal初期順序数濃度cardinality

概要

基数(cardinal number)とは、集合の「元の個数」を無限集合にまで拡張した概念であり、全単射で結ばれる集合の濃度は等しいと定め、各集合と対等な最小の順序数(初期順序数)をその集合の基数 $|X|$ とする。有限集合の基数は自然数、自然数全体の基数は最小の無限基数 $\aleph_0$ であり、実数全体の基数 $2^{\aleph_0}$ はそれより真に大きい。Cantor の定理 $|X|<|\mathcal{P}(X)|$ により最大の基数はなく、無限基数は $\aleph_0<\aleph_1<\cdots$ と数え上げられる。無限基数の和と積は $\max(\kappa,\lambda)$ に等しい一方、冪 $2^{\kappa}$ の値は ZFC では決まらず、ZFC が無矛盾なら連続体仮説 $2^{\aleph_0}=\aleph_1$ は ZFC から独立である。

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前提知識: 集合, 写像, 全単射, 順序数, 選択公理

定義

本記事は ZFC(ZFC公理系)の枠組みで議論する。選択公理を使う箇所はそのつど明示する。

濃度の相等と比較

集合 $A,B$ について、$A$ から $B$ への全単射が存在するとき、$A$ と $B$ は対等(equinumerous)である、または濃度が等しいといい、$|A|=|B|$ と書く。$A$ から $B$ への単射が存在するとき $|A|\leq|B|$ と書き、$|A|\leq|B|$ かつ $|A|\neq|B|$ のとき $|A|<|B|$ と書く。$|A|$ を $A$ の濃度(cardinality)という。

基数の定義

順序数 $\kappa$ が基数(cardinal number, cardinal)であるとは、$\beta<\kappa$ となるどの順序数 $\beta$ も $\kappa$ と対等でないことをいう。基数はしばしば初期順序数(initial ordinal)とも呼ばれる。
集合 $X$ がある順序数と対等であるとき、$X$ と対等な最小の順序数(順序数の性質により存在する)を $|X|$ と書く。これは基数であり、$|X|=|Y|$(この記法の意味での等式)が成り立つことと $X,Y$ が対等であることは同値である(prop-cardinal-well-defined)。選択公理の下では任意の集合が整列可能(整列可能定理)、したがってある順序数と対等なので、任意の集合 $X$ に対して基数 $|X|$ が定まる。

有限・可算・非可算と $\aleph$ 数

集合 $X$ について次の言葉を用いる。

  • $X$ が有限(finite)であるとは、ある自然数 $n\in\omega$ について $|X|=n$ となることをいい、そうでないとき無限(infinite)であるという(有限集合、無限集合)。
  • $X$ が可算無限(countably infinite)であるとは $|X|=\omega$ となることをいい、有限または可算無限であるとき高々可算または単に可算(countable)であるという(可算集合)。可算でないとき非可算(uncountable)であるという(非可算集合)。
    無限基数を小さい順に並べたものを $\aleph$ 数(アレフ数)といい、順序数 $\alpha$ に関する超限再帰で
    $$ \aleph_0:=\omega,\qquad \aleph_{\alpha+1}:=(\aleph_\alpha)^{+},\qquad \aleph_\lambda:=\sup\{\aleph_\beta\mid\beta<\lambda\}\ (\lambda\text{ は極限順序数}) $$
    と定める。ここで $\kappa^{+}$ は $\kappa$ より大きい最小の基数(後続基数、successor cardinal)であり、その存在と、極限段階の上限が基数であることは prop-cardinal-successor で示す。$\aleph_\alpha$ を順序数として見るときは $\omega_\alpha$ とも書く。$\kappa=\lambda^{+}$ の形でない無限基数を極限基数(limit cardinal)という。
基数の算術

基数 $\kappa,\lambda$ に対し、$|A|=\kappa$、$|B|=\lambda$、$A\cap B=\emptyset$ となる集合 $A,B$ をとり(たとえば $A=\kappa\times\{0\}$、$B=\lambda\times\{1\}$)、
$$ \kappa+\lambda:=|A\cup B|,\qquad \kappa\cdot\lambda:=|A\times B|,\qquad \kappa^{\lambda}:=|{}^{B}A| $$
と定める。ここで $A\times B$ は直積、${}^{B}A$ は $B$ から $A$ への写像全体の集合である。値は $A,B$ の取り方によらない(prop-cardinal-arithmetic-well-defined)。特に $2^{\kappa}=|{}^{\kappa}2|=|\mathcal{P}(\kappa)|$ である($\kappa$ の冪集合 $\mathcal{P}(\kappa)$ と ${}^{\kappa}2$ は、部分集合にその特性関数を対応させる写像で対等である)。$2^{\aleph_0}$ を連続体濃度といい $\mathfrak{c}$ とも書く。

直感

基数は「集合の元の個数」を無限集合にまで拡張したものである。二つの集合の大きさが等しいことを「元を一対一に対応させられる」ことで定め、大小を「一方を他方の中に一対一に写せる」ことで定めると、有限集合では自然数による個数と一致し、無限集合についても比較ができる。この比較の結果を代表する標準的な集合として、各集合と対等な最小の順序数をとったものが基数である。無限集合では、真部分集合と全体が同じ大きさになる(自然数全体と偶数全体)など有限の直感が通用しない一方、Cantor の定理により冪集合は必ず真に大きく、無限の大きさにも尽きることのない階層 $\aleph_0<\aleph_1<\aleph_2<\cdots$ がある。基数は「並べ方」を区別する順序数と異なり「大きさ」だけを見る。

例と反例

自然数・整数・有理数の可算性

自然数全体 $\mathbb{N}$、整数全体 $\mathbb{Z}$、有理数全体 $\mathbb{Q}$ はいずれも可算無限であり、$|\mathbb{N}|=|\mathbb{Z}|=|\mathbb{Q}|=\aleph_0$ である。
$\mathbb{N}=\omega$ なので $|\mathbb{N}|=\omega=\aleph_0$ である($\omega$ が基数であることは prop-cardinal-finite による)。$\mathbb{Z}$ については、$n\mapsto n/2$($n$ が偶数のとき)、$n\mapsto-(n+1)/2$($n$ が奇数のとき)が $\mathbb{N}$ から $\mathbb{Z}$ への全単射である。$\mathbb{Q}$ については、既約分数表示 $q=a/b$($b\geq1$、$a$ と $b$ は互いに素)により $q\mapsto(a,b)$ は $\mathbb{Q}$ から $\mathbb{Z}\times\mathbb{N}$ への単射であり、$|\mathbb{Z}\times\mathbb{N}|=\aleph_0\cdot\aleph_0=\aleph_0$(ex-cardinal-aleph-zero-arithmetic)なので $|\mathbb{Q}|\leq\aleph_0$、包含 $\mathbb{N}\subset\mathbb{Q}$ から $\aleph_0\leq|\mathbb{Q}|$ であり、thm-cardinal-cantor-bernstein により $|\mathbb{Q}|=\aleph_0$ である。

$\aleph_0$ の算術

$\aleph_0+\aleph_0=\aleph_0$ かつ $\aleph_0\cdot\aleph_0=\aleph_0$ である。前者は $\omega\times\{0,1\}\to\omega$、$(n,i)\mapsto2n+i$ が全単射であることによる。後者は $\omega\times\omega\to\omega$、$(n,m)\mapsto2^{n}(2m+1)-1$ が全単射であることによる。実際、正の整数はそれぞれちょうど一通りに「$2$ の冪と奇数の積」$2^{n}(2m+1)$ と書けるからである。したがって、可算集合の可算個の和集合は(選択公理の下で)可算であり、可算集合の有限個の直積は可算である。一方 $2^{\aleph_0}>\aleph_0$ である(thm-cardinal-cantor)。

連続体の濃度

実数全体 $\mathbb{R}$ について $|\mathbb{R}|=2^{\aleph_0}=|\mathcal{P}(\mathbb{N})|$ であり、特に $\mathbb{R}$ は非可算である。
$|\mathcal{P}(\mathbb{N})|\leq|\mathbb{R}|$:$A\subset\mathbb{N}$ に対し、小数第 $n+1$ 位が「$n\in A$ のとき $1$、そうでないとき $0$」である実数 $r_A:=\sum_{n\in A}10^{-(n+1)}$ を対応させる。$A\neq A'$ なら、$A$ と $A'$ で異なる最小の $n$ をとると $|r_A-r_{A'}|\geq10^{-(n+1)}-\sum_{k>n}10^{-(k+1)}=10^{-(n+1)}\cdot\frac{8}{9}>0$ なので、$A\mapsto r_A$ は単射である。
$|\mathbb{R}|\leq|\mathcal{P}(\mathbb{N})|$:$x\in\mathbb{R}$ に対し $\{q\in\mathbb{Q}\mid q< x\}\subset\mathbb{Q}$ を対応させると、$x< y$ なら $x\leq q< y$ となる有理数 $q$ が存在する(有理数の稠密性)ので、この対応は $\mathbb{R}$ から $\mathcal{P}(\mathbb{Q})$ への単射である。$|\mathbb{Q}|=|\mathbb{N}|$(ex-cardinal-countable)から $|\mathcal{P}(\mathbb{Q})|=|\mathcal{P}(\mathbb{N})|$ である(全単射 $\mathbb{Q}\to\mathbb{N}$ は像をとる操作で全単射 $\mathcal{P}(\mathbb{Q})\to\mathcal{P}(\mathbb{N})$ を誘導する)。
以上と thm-cardinal-cantor-bernstein から $|\mathbb{R}|=|\mathcal{P}(\mathbb{N})|=2^{\aleph_0}$ であり、thm-cardinal-cantor から $2^{\aleph_0}>\aleph_0$ なので $\mathbb{R}$ は非可算である。同様に $|\mathbb{R}^{n}|=2^{\aleph_0}$($n\geq1$)であり、複素数全体 $\mathbb{C}$ についても $|\mathbb{C}|=2^{\aleph_0}$ である($2^{\aleph_0}\cdot2^{\aleph_0}=2^{\aleph_0+\aleph_0}=2^{\aleph_0}$、prop-cardinal-arithmetic-rules)。無理数全体 $\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q}$ の濃度も $2^{\aleph_0}$ である($\mathbb{R}$ から可算集合を除いても濃度は変わらない)。

反例:有限の直感が破れる例
  1. 順序数だが基数でない:$\omega+1=\omega\cup\{\omega\}$ は順序数だが、$\omega\mapsto0$、$n\mapsto n+1$ が $\omega+1$ から $\omega$ への全単射なので $\omega<\omega+1$ と対等であり、基数ではない。含意「順序数 $\Rightarrow$ 基数」は成り立たず、$|\omega+1|=\aleph_0$ である。同様に $\omega+\omega$、$\omega\cdot\omega$ も基数でない。
  2. 真部分集合が全体と対等:偶数全体 $2\mathbb{N}$ は $\mathbb{N}$ の真部分集合だが、$n\mapsto2n$ が全単射なので $|2\mathbb{N}|=|\mathbb{N}|$ である。有限集合では「$A\subsetneq B$ ならば $|A|<|B|$」が成り立つ(prop-cardinal-finite)が、無限集合ではこの含意は成り立たない。無限集合とは、まさに自分の真部分集合と対等な集合のことである(Dedekind 無限、Dedekind無限。この特徴付けには可算選択公理が要る)。
  3. 消去律が成り立たない:$\aleph_0+1=\aleph_0+2=\aleph_0$(prop-cardinal-arithmetic-rules)なので、「$\kappa+\lambda=\kappa+\mu$ ならば $\lambda=\mu$」は無限基数では成り立たない。同様に $\aleph_0\cdot1=\aleph_0\cdot2=\aleph_0$ である。
  4. 大小の比較が全順序であることは選択公理に依存する:任意の二つの集合について $|A|\leq|B|$ または $|B|\leq|A|$ が成り立つ(濃度の比較可能性)という主張は選択公理と同値である(Jec03 Chapter 5)。選択公理を仮定しない体系では、比較不能な濃度の存在が無矛盾である。

性質

Cantor の定理:冪集合は真に大きい

任意の集合 $X$ について $|X|<|\mathcal{P}(X)|$ である。すなわち $X$ から冪集合 $\mathcal{P}(X)$ への単射は存在するが、全射は存在しない。特に、任意の基数 $\kappa$ について $\kappa<2^{\kappa}$ であり、最大の基数は存在しない。

$x\mapsto\{x\}$ は $X$ から $\mathcal{P}(X)$ への単射なので $|X|\leq|\mathcal{P}(X)|$ である。$f\colon X\to\mathcal{P}(X)$ を任意の写像とし、$D:=\{x\in X\mid x\notin f(x)\}\in\mathcal{P}(X)$ とおく。もし $D=f(d)$ となる $d\in X$ があれば、$d\in D$ と $d\notin f(d)=D$ が同値になって矛盾する。よって $D$ は $f$ の像に属さず、$f$ は全射でない。したがって $X$ から $\mathcal{P}(X)$ への全単射は存在せず、$|X|\neq|\mathcal{P}(X)|$ である。最後の主張は $2^{\kappa}=|\mathcal{P}(\kappa)|$ による。$\square$

この論法は Cantor の対角線論法と呼ばれ、Can91 に由来する。

Cantor–Bernstein の定理:単射の往復から全単射

集合 $A,B$ について、$|A|\leq|B|$ かつ $|B|\leq|A|$ ならば $|A|=|B|$ である。すなわち、$A$ から $B$ への単射と $B$ から $A$ への単射がともに存在すれば、$A$ から $B$ への全単射が存在する。証明に選択公理は使わない。

$f\colon A\to B$、$g\colon B\to A$ を単射とする。$A$ の部分集合の列を $A_0:=A\setminus g[B]$、$A_{n+1}:=(g\circ f)[A_n]$ で定め、$A^{*}:=\bigcup_{n\in\omega}A_n$ とおく。$a\in A\setminus A^{*}$ なら $a\notin A_0$ なので $a\in g[B]$ であり、$g$ が単射なので $g(b)=a$ となる $b\in B$ がただ一つ定まる。これを $g^{-1}(a)$ と書く。写像 $h\colon A\to B$ を
$$ h(a):=\begin{cases}f(a)&(a\in A^{*})\\ g^{-1}(a)&(a\in A\setminus A^{*})\end{cases} $$
で定める。
$h$ は単射である:$a,a'\in A^{*}$ なら $f$ の単射性から、$a,a'\in A\setminus A^{*}$ なら $g$ の単射性から従う。$a\in A^{*}$、$a'\in A\setminus A^{*}$ で $f(a)=g^{-1}(a')$ とすると、$a'=g(f(a))$ であり、$a\in A_n$ となる $n$ について $a'\in (g\circ f)[A_n]=A_{n+1}\subset A^{*}$ となって $a'\notin A^{*}$ に反する。
$h$ は全射である:$b\in B$ とする。$g(b)\notin A^{*}$ なら $h(g(b))=g^{-1}(g(b))=b$ である。$g(b)\in A^{*}$ なら $g(b)\in A_n$ となる $n$ があり、$g(b)\in g[B]$ なので $n\neq0$、よって $g(b)\in (g\circ f)[A_{n-1}]$ であり、$g$ の単射性から $b\in f[A_{n-1}]$、すなわち $b=f(a)$ となる $a\in A_{n-1}\subset A^{*}$ がある。このとき $h(a)=f(a)=b$ である。$\square$

基数の一意性と濃度の順序
  1. 集合 $X$ がある順序数と対等なら、$X$ と対等な最小の順序数 $|X|$ は基数である。$X,Y$ がともに順序数と対等なとき、$X$ と $Y$ が対等であることと $|X|=|Y|$(順序数としての等式)とは同値であり、$X$ から $Y$ への単射が存在することと $|X|\leq|Y|$(順序数としての大小)とは同値である。
  2. 集合の間の関係 $|A|\leq|B|$ は反射律と推移律を満たし、thm-cardinal-cantor-bernstein により「$|A|\leq|B|$ かつ $|B|\leq|A|$ ならば $|A|=|B|$」を満たす。
  3. (選択公理)任意の集合 $A,B$ について $|A|\leq|B|$ または $|B|\leq|A|$ が成り立つ。基数全体は順序数の大小 $<$ によって整列された真のクラスをなす。
  1. $\kappa:=|X|$ とし、$\beta<\kappa$ が $\kappa$ と対等なら、$\beta$ は $X$ とも対等になり $\kappa$ の最小性に反する。よって $\kappa$ は基数である。$X$ と $Y$ が対等なら、$X$ と対等な順序数全体と $Y$ と対等な順序数全体は一致するので、その最小元 $|X|$ と $|Y|$ は等しい。逆に $|X|=|Y|$ なら $X$ と $|X|=|Y|$ と $Y$ は互いに対等である。単射について:$\kappa:=|X|$、$\lambda:=|Y|$ とおく。$\kappa\leq\lambda$(順序数として)なら $\kappa\subset\lambda$ なので、$X\to\kappa\hookrightarrow\lambda\to Y$ と単射がつながる。逆に $X$ から $Y$ への単射があれば $\kappa$ から $\lambda$ への単射がある。もし $\lambda<\kappa$ なら $\lambda\subset\kappa$ なので $\lambda$ から $\kappa$ への単射(包含)もあり、thm-cardinal-cantor-bernstein から $\lambda$ と $\kappa$ は対等となって、$\kappa$ が基数であることに反する。よって $\kappa\leq\lambda$ である。
  2. 恒等写像は単射であり、単射の合成は単射である。三つ目は thm-cardinal-cantor-bernstein そのものである。
  3. 整列可能定理により $A,B$ はそれぞれ順序数と対等なので、(1) から $|A|,|B|$ は基数であり、順序数として比較可能(順序数)なので $|A|\leq|B|$ または $|B|\leq|A|$ が成り立つ。基数全体は順序数のクラスの部分クラスなので $<$ で整列されている。基数全体が集合 $K$ であると仮定すると、$\lambda:=\bigcup K$ はすべての基数以上の順序数である。一方 (1) により $|\mathcal{P}(\lambda)|$ は基数であり、もし $|\mathcal{P}(\lambda)|\leq\lambda$ なら $\mathcal{P}(\lambda)$ から $\lambda$ への単射があって thm-cardinal-cantor に反するので $|\mathcal{P}(\lambda)|>\lambda$ となり、矛盾する。$\square$
有限基数と $\omega$
  1. 任意の $n\in\omega$ について、$n+1$ から $n$ への単射は存在しない(鳩の巣原理、鳩の巣原理)。
  2. 各 $n\in\omega$ は基数であり、$\omega=\aleph_0$ は基数である。
  3. 有限集合 $B$ と $A\subsetneq B$ について $|A|<|B|$ である。
  4. (選択公理)集合 $X$ が無限であることと $\aleph_0\leq|X|$ とは同値である。
  1. $n$ に関する数学的帰納法。$n=0$ のとき $1=\{0\}$ から $0=\emptyset$ への写像はない。$n$ について成り立つとし、$f\colon n+2\to n+1$ が単射であると仮定する。$n\notin f[n+2]$ なら $f$ の $n+1$ への制限は $n+1$ から $n$ への単射となり帰納法の仮定に反する。$f(k)=n$ となる $k\in n+2$ があれば、$k$ と $n+1$ を入れ替える $n+2$ の全単射 $\sigma$ をとり $f':=f\circ\sigma$ とおくと、$f'$ は単射で $f'(n+1)=n$ なので、$f'$ の $n+1$ への制限は $n+1$ から $n$ への単射となり、やはり矛盾する。
  2. $m< n$ が $n$ と対等なら、$m+1\subset n$(順序数)なので全単射 $n\to m$ の $m+1$ への制限が $m+1$ から $m$ への単射となり (1) に反する。よって各 $n$ は基数である。$n<\omega$ が $\omega$ と対等なら、全単射 $\omega\to n$ の $n+1\subset\omega$ への制限が $n+1$ から $n$ への単射となり (1) に反する。よって $\omega$ は基数である。
  3. $|B|=n$ とし、全単射 $B\to n$ をとる。$A$ の像 $A'\subsetneq n$ について $|A'|< n$ を示せばよい。$k\in n\setminus A'$ をとり、$k$ と $n-1$ を入れ替える $n$ の全単射で $A'$ を $n-1$ の部分集合 $A''$ に写す。$A''\subset n-1$ なので $|A''|\leq n-1< n$ であり、$|A|=|A''|$ である。
  4. $X$ が無限なら $|X|$ は $\omega$ の元でない基数なので $\omega\leq|X|$ である(順序数の比較可能性)。逆に $\omega\leq|X|$ で $|X|=n\in\omega$ なら $\omega\leq n<\omega$ となって矛盾する。$\square$
後続基数と基数の上限
  1. (選択公理)任意の基数 $\kappa$ に対し、$\kappa$ より大きい基数が存在し、その中で最小のもの $\kappa^{+}$ が定まる。$\kappa$ が無限なら $\kappa^{+}$ も無限である。
  2. 基数からなる任意の集合 $K$ の上限 $\sup K=\bigcup K$ は基数である。
  3. 任意の順序数 $\alpha$ について $\aleph_\alpha$ は無限基数であり、$\alpha<\beta$ ならば $\aleph_\alpha<\aleph_\beta$、また $\alpha\leq\aleph_\alpha$ である。
  1. 選択公理の下で $|\mathcal{P}(\kappa)|$ は基数であり、もし $|\mathcal{P}(\kappa)|\leq\kappa$ なら $\mathcal{P}(\kappa)$ から $\kappa$ への単射があって thm-cardinal-cantor に反するので、$|\mathcal{P}(\kappa)|>\kappa$ である。$\kappa$ より大きい基数全体は順序数の空でないクラスなので最小元 $\kappa^{+}$ を持つ(順序数)。$\kappa\geq\omega$ なら $\kappa^{+}>\kappa\geq\omega$ である。
  2. $\lambda:=\bigcup K$ は順序数である(順序数)。$\beta<\lambda$ が $\lambda$ と対等であると仮定する。$\beta\in\lambda=\bigcup K$ なので $\beta<\kappa$ となる $\kappa\in K$ があり、$\kappa\leq\lambda$ である。すると $\kappa\hookrightarrow\lambda\to\beta$ と $\beta\hookrightarrow\kappa$ により、thm-cardinal-cantor-bernstein から $\kappa$ と $\beta$ は対等となり、$\kappa$ が基数であることに反する。
  3. $\alpha$ に関する超限帰納法(超限帰納法)。$\aleph_0=\omega$ は無限基数である(prop-cardinal-finite)。$\aleph_\alpha$ が無限基数なら (1) により $\aleph_{\alpha+1}=(\aleph_\alpha)^{+}$ は $\aleph_\alpha$ より大きい無限基数である。極限順序数 $\lambda$ について、$\{\aleph_\beta\mid\beta<\lambda\}$ は置換公理により集合であり、(2) からその上限 $\aleph_\lambda$ は基数で、$\beta<\lambda$ なら $\beta+1<\lambda$ より $\aleph_\beta<\aleph_{\beta+1}\leq\aleph_\lambda$ である。これで単調性と無限性が従う。$\alpha\leq\aleph_\alpha$ も同じ帰納法による:$0\leq\aleph_0$、$\alpha\leq\aleph_\alpha<\aleph_{\alpha+1}$ より $\alpha+1\leq\aleph_{\alpha+1}$、極限では $\lambda=\sup_{\beta<\lambda}(\beta+1)\leq\sup_{\beta<\lambda}\aleph_{\beta+1}\leq\aleph_\lambda$ である。$\square$
無限基数は $\aleph$ 数である

(選択公理)任意の無限基数 $\kappa$ に対し、$\kappa=\aleph_\alpha$ となる順序数 $\alpha$ がただ一つ存在する。したがって無限基数全体は $\aleph_0<\aleph_1<\aleph_2<\cdots<\aleph_\omega<\aleph_{\omega+1}<\cdots$ と順序数によって数え上げられる。

証明の所在

一意性は prop-cardinal-successor の 3 の単調性による。存在は、$\kappa\leq\aleph_\kappa$ から $\kappa\leq\aleph_\alpha$ となる最小の $\alpha$ をとり、$\alpha$ が $0$・後続・極限のいずれかに応じて $\kappa=\aleph_\alpha$ を確かめることで得られる。詳細は Jec03 Chapter 3(Theorem 3.5 の前後)、End77 Chapter 8 に譲る。選択公理なしでは「整列可能な無限集合の濃度」だけが $\aleph$ 数で表される。

基数の算術の基本規則
  1. def-cardinal-arithmetic の $\kappa+\lambda$、$\kappa\cdot\lambda$、$\kappa^{\lambda}$ は代表集合 $A,B$ の取り方によらない。
  2. 和と積は可換かつ結合的で、$\kappa\cdot(\lambda+\mu)=\kappa\cdot\lambda+\kappa\cdot\mu$ が成り立つ。
  3. $\kappa^{\lambda+\mu}=\kappa^{\lambda}\cdot\kappa^{\mu}$、$(\kappa^{\lambda})^{\mu}=\kappa^{\lambda\cdot\mu}$、$(\kappa\cdot\lambda)^{\mu}=\kappa^{\mu}\cdot\lambda^{\mu}$ が成り立つ。
  4. $\kappa\leq\kappa'$ かつ $\lambda\leq\lambda'$ ならば $\kappa+\lambda\leq\kappa'+\lambda'$、$\kappa\cdot\lambda\leq\kappa'\cdot\lambda'$ であり、さらに $\kappa'\neq0$ または $\lambda'=0$ のとき $\kappa^{\lambda}\leq\kappa'^{\lambda'}$ である。
  5. 有限基数 $m,n\in\omega$ の和・積・冪は自然数の和・積・冪に一致する。
  1. $\varphi\colon A\to A'$、$\psi\colon B\to B'$ を全単射とする($A\cap B=A'\cap B'=\emptyset$)。$\varphi\cup\psi\colon A\cup B\to A'\cup B'$、$(a,b)\mapsto(\varphi(a),\psi(b))$、$u\mapsto\varphi\circ u\circ\psi^{-1}$($u\colon B\to A$)はいずれも全単射である。
  2. $A\cup B=B\cup A$、$(a,b)\mapsto(b,a)$、$(A\cup B)\cup C=A\cup(B\cup C)$、$((a,b),c)\mapsto(a,(b,c))$、および $A\times(B\cup C)=(A\times B)\cup(A\times C)$($B\cap C=\emptyset$ なら右辺は非交和)から従う。
  3. $B\cap C=\emptyset$ のとき、$u\colon B\cup C\to A$ に $(u|_B,u|_C)$ を対応させる写像 ${}^{B\cup C}A\to{}^{B}A\times{}^{C}A$ は全単射である。$u\colon C\to{}^{B}A$ に $(b,c)\mapsto u(c)(b)$ を対応させる写像 ${}^{C}({}^{B}A)\to{}^{B\times C}A$ は全単射である。$u\colon C\to A\times B$ に成分ごとの写像の組を対応させる写像 ${}^{C}(A\times B)\to{}^{C}A\times{}^{C}B$ は全単射である。
  4. 単射 $A\to A'$、$B\to B'$ から、和・積・写像空間の間の単射が誘導される。写像空間については、$u\colon B\to A$ に対し $B'$ 上で「$B$ の像の上では $u$ を移送し、それ以外では $A'$ の固定した一点をとる」写像を対応させればよく、この構成には $A'\neq\emptyset$($\kappa'\neq0$)が要る。$\kappa'=0$ なら仮定から $\kappa=0$、$\lambda'=0$ なので $\lambda=0$ であり、$0^{0}=1=0^{0}$ である。
  5. 自然数の和・積・冪は $m+0=m$、$m+(n+1)=(m+n)+1$ などの再帰で定まり、対応する集合の構成 $A\cup(B\cup\{*\})=(A\cup B)\cup\{*\}$、$A\times(B\cup\{*\})=(A\times B)\cup(A\times\{*\})$、${}^{B\cup\{*\}}A\cong{}^{B}A\times A$ が同じ再帰を満たすので、$n$ に関する帰納法で一致する。$\square$
無限基数の平方

(選択公理)任意の無限基数 $\kappa$ について $\kappa\cdot\kappa=\kappa$ である。

証明の所在

証明は、$\kappa\times\kappa$ 上に「$\max(\alpha,\beta)$ の小さい順、同点なら辞書式」で整列順序を入れ、その順序型が $\kappa$ に等しいことを $\kappa$ に関する超限帰納法で示すものである(Hessenberg の定理)。Jec03 Chapter 3(Theorem 3.5)、End77 Chapter 6 に譲る。$\aleph_0\cdot\aleph_0=\aleph_0$ の場合の直接の証明は ex-cardinal-aleph-zero-arithmetic にある。

無限基数の和と積

(選択公理)$\kappa,\lambda$ を基数とし、少なくとも一方が無限で、ともに $0$ でないとする。このとき
$$ \kappa+\lambda=\kappa\cdot\lambda=\max(\kappa,\lambda) $$
である。特に、無限基数 $\kappa$ と自然数 $n\geq1$ について $\kappa+n=\kappa\cdot n=\kappa+\kappa=\kappa$ である。また $\kappa$ が無限なら $2^{\kappa}\cdot2^{\kappa}=2^{\kappa}$ である。

$\mu:=\max(\kappa,\lambda)$ とおくと $\mu$ は無限基数である。和について:$\mu$ の代表集合は和集合の部分集合なので $\mu\leq\kappa+\lambda$ であり、prop-cardinal-arithmetic-well-defined の 4 から $\kappa+\lambda\leq\mu+\mu$、また $\mu+\mu=\mu\cdot2$($A\times\{0,1\}=(A\times\{0\})\cup(A\times\{1\})$ は非交和)、$2\leq\mu$ から $\mu\cdot2\leq\mu\cdot\mu$、そして thm-cardinal-square から $\mu\cdot\mu=\mu$ である。あわせて $\mu\leq\kappa+\lambda\leq\mu$ を得る。積について:$\kappa,\lambda\neq0$ なので、$b_0\in B$ を固定すれば $a\mapsto(a,b_0)$ は $A$ から $A\times B$ への単射であり($\lambda$ 側も同様)、$\mu\leq\kappa\cdot\lambda\leq\mu\cdot\mu=\mu$ を得る。最後の主張は $2^{\kappa}\cdot2^{\kappa}=2^{\kappa+\kappa}=2^{\kappa}$ による。$\square$

上の命題で $\kappa\cdot\lambda=\max(\kappa,\lambda)$ には $\kappa,\lambda$ がともに $0$ でないことが必要である($\kappa\cdot0=0$)。和については $\lambda=0$ でも $\kappa+0=\kappa$ である。

連続体仮説と一般連続体仮説

連続体仮説(continuum hypothesis, CH)とは、主張 $2^{\aleph_0}=\aleph_1$、すなわち「$\aleph_0$ と $2^{\aleph_0}=|\mathbb{R}|$ の間に基数は存在しない」のことである(連続体仮説)。一般連続体仮説(generalized continuum hypothesis, GCH)とは、任意の順序数 $\alpha$ について $2^{\aleph_\alpha}=\aleph_{\alpha+1}$ という主張である(一般連続体仮説)。

連続体仮説の独立性

ZFC が無矛盾ならば、CH も GCH も ZFC から証明も反証もできない。

主張の所在

ZFC からの CH・GCH の証明不可能性は Cohen が強制法により示し(Cohen66)、反証不可能性は Gödel が構成可能集合のクラス $L$ により示した(Godel40)。両方をあわせて CH は ZFC から独立であるという。証明はそれぞれの原典と Jec03 Chapter 13・14 に譲る。$2^{\aleph_0}$ の値については、ZFC から言えるのは $\operatorname{cf}(2^{\aleph_0})>\aleph_0$(König の定理、共終数)などの制約だけであり、たとえば $2^{\aleph_0}=\aleph_2$ も ZFC と無矛盾である(Jec03 Chapter 14)。連続体仮説の詳細は 連続体仮説 が扱う。

補足

基数と順序数の違い

順序数は「並び方」を、基数は「大きさ」を測る。$\omega$ と $\omega+1$ は異なる順序数だが同じ濃度 $\aleph_0$ を持ち(rem-cardinal-counterexamples)、基数 $\aleph_0$ は順序数としては $\omega$ である。基数は順序数の特別なもの(各対等類の中で最小の順序数)なので、順序数としての大小・後続・極限の概念がそのまま使えるが、算術は別である。順序数の和 $\omega+1$ は $\omega$ と異なるが、基数の和 $\aleph_0+1$ は $\aleph_0$ に等しい。文脈を明示するため、基数の算術を順序数の算術と区別して $\aleph_0$ のような記法を用いる。順序数の側の詳細は 順序数 が扱う。

選択公理を仮定しない場合

def-cardinal は「集合と対等な最小の順序数」を基数と呼ぶので、順序数と対等な(すなわち整列可能な)集合にしか濃度 $|X|$ を割り当てない。選択公理を仮定しない体系では整列可能でない集合がありうるため、任意の集合に濃度を割り当てるには、$X$ と対等な集合のうち累積階層での階数が最小のものの全体をとる Scott の方法(Scott's trick)を用いる(Jec03 Chapter 6)。
濃度を一つの対象として選ばず、$|X|=|Y|$ を「$X$ と $Y$ の間に全単射が存在する」、$|X|\leq|Y|$ を「$X$ から $Y$ への単射が存在する」の略記として扱う方法もある。この関係的な定式化は選択公理を必要とせず、濃度の同値類が集合かどうかという型の問題を避ける。集合と真のクラスを扱う NBG や NBGC では、$X$ と対等な集合全体を同値類として一つのクラスにまとめる方法も採れる。ただし、その同値類は一般に集合ではなく真のクラスなので、集合を引数に取る演算へそのまま代入してはならない。
また、任意の集合 $X$ に対して $X$ に単射で写せない順序数(Hartogs数)が存在することは選択公理なしに示され、これにより $\aleph$ 数の列自体は選択公理なしに定義できる(Jec03 Chapter 3、End77 Chapter 7)。本記事で選択公理を使ったのは、prop-cardinal-well-defined の 3、prop-cardinal-finite の 4、prop-cardinal-successor の 1、thm-cardinal-aleph-enumeration、thm-cardinal-square、prop-cardinal-arithmetic-rules、および基数の冪 $\kappa^\lambda$(特に $2^\kappa$)が基数として定まること(${}^BA$ の整列可能性)である。

用語と記法

「濃度」は集合の大きさそのもの(対等による同値類、あるいはその代表)を指す語であり、「基数」はその代表として選ばれた順序数を指す語であるが、選択公理の下では両者を区別しないことが多い(Mat68 第2章、Jec03 Chapter 3)。記法は $|X|$ のほか $\operatorname{card}(X)$、$\overline{\overline{X}}$、$\#X$ が使われる。基数を無限集合にまで拡張したのは Cantor であり、対角線論法(Can91)と $\aleph$ の記法も Cantor による。Cantor–Bernstein の定理は Schröder–Bernstein の定理とも呼ばれ、Cantor が予想し Bernstein と Dedekind がそれぞれ証明を与えた(歴史の詳細は Jec03 Chapter 3 の注に譲る)。

使われ方

基数の理論は集合論の中心であり、共終数・正則基数と特異基数の区別、König の定理 $\kappa<\kappa^{\operatorname{cf}(\kappa)}$(Königの定理)、基数の冪 $2^{\kappa}$ の振る舞い(連続体関数)がその基本的な話題である。集合論の外でも、可算・非可算の区別は解析学($\mathbb{R}$ の非可算性、可算個の零集合の和は零集合)、代数(代数的数全体は可算で超越数は非可算個ある)、位相空間論(可算集合、第2可算公理、Lindelöf空間、基数関数)で日常的に用いられる。

関連項目

参考文献

[1]
Thomas Jech, Set Theory, Springer Monographs in Mathematics, Springer-Verlag, 2003, Chapter 3 Cardinal Numbers(基数・$\aleph$ 数・Cantor–Bernstein・Theorem 3.5 $\kappa\cdot\kappa=\kappa$)、Chapter 5(濃度の比較可能性と選択公理)、Chapter 6(Scott の方法)、Chapter 13・14(構成可能集合と強制法、連続体仮説の独立性)
[2]
Herbert B. Enderton, Elements of Set Theory, Academic Press, 1977, Chapter 6 Cardinal Numbers and the Axiom of Choice(対等・基数の算術・$\kappa\cdot\kappa=\kappa$)、Chapter 7(Hartogs 数)、Chapter 8($\aleph$ 数)
[3]
松坂和夫, 集合・位相入門, 岩波書店, 1968, 第2章 集合の濃度(対等・可算集合・非可算集合・濃度の演算)
[6]
Georg Cantor, Über eine elementare Frage der Mannigfaltigkeitslehre, Jahresbericht der Deutschen Mathematiker-Vereinigung, 1891, 75–78(対角線論法の原論文)

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