Jungの定理(Jung's theorem)とは、平面の有限個の点(2 個以上)の集まりで、2 点の距離の最大値(直径)が $d$ のものは、半径 $\frac{d}{\sqrt{3}}$ のある円に収まる、という定理である。1 辺 $d$ の正三角形の 3 頂点を含む円の半径は $\frac{d}{\sqrt{3}}$ 以上なので、この値はこれより小さくできない。証明では、点を含む円を縮めて、2 点を直径の両端にもつ円か、鋭角三角形の 3 頂点を通る円にする。前者の半径は $\frac{d}{2}$ 以下であり、後者では最大の角が $60^\circ$ 以上 $90^\circ$ 未満であることと正弦定理から、半径が $\frac{d}{\sqrt{3}}$ 以下になる。空間では、1 辺 $d$ の正四面体の頂点は半径 $\frac{d}{\sqrt{3}}$ の球に収まらない。
前提知識: 正弦定理(高校数学), 三角形の外心, 三角形の内角の和, ベクトルの内積
平面にいくつかの点がある。2 点の距離のうち最も大きいものを、点の集まりの 直径 とよぶ(def-jung-diam で定義する)。直径が $d$ の点の集まりは、半径いくつの円があれば、必ずその中に収まるだろうか。
円の直径が $d$ なら、その円に収まる図形の 2 点の距離は $d$ 以下である。逆向きに、直径 $d$ の点の集まりが直径 $d$ の円(半径 $\dfrac d2$)に収まるかというと、そうとは限らない。まず小さな例で確かめる。
左は 1 辺 2 の正三角形で、3 頂点を含む最小の円の半径は 2 割る根号 3、右は 1 辺 2 の正方形で、4 頂点を含む最小の円の半径は直径の半分
正三角形では、直径の半分より大きい円が要った。では、半径を直径の何倍にしておけば、どんな点の集まりでも収まるだろうか。この記事で答える問いは次の 3 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 2 点の距離の最大 | 点の集まりの直径 | 集合の直径 $\sup\lvert PQ\rvert$ |
| 3 点を通る円(外接円) | 点をすべて含む円 | 最小包含円(最小包含球) |
| 正弦定理 $a=2R\sin A$ | 半径の上からの評価 | Jung の定理($n$ 次元版) |
| 三角形の内角の和 $180^\circ$ | 最大の角は $60^\circ$ 以上 | 単体の外接球の半径の評価 |
この記事では、平面の 有限個の点(2 個以上)の集まりを扱う。円板や多角形のような、無限個の点からなる図形は ex-jung-reuleaux と「大学数学で見る」で触れる。
平面の有限個の点の集まり $S$(2 個以上)について、$S$ の 2 点の距離の最大値を $S$ の 直径 といい、$d$ で表す。有限個の点の組の距離は有限個なので、最大値がある。
点 $O$ を中心とする半径 $r$ の円について、$S$ のどの点 $P$ も $OP\le r$ を満たす(円の内部か円周の上にある)とき、「$S$ はこの円に 収まる」、またはこの円は $S$ を 含む という。
「直径」は円の直径と同じ言葉だが、ここでは点の集まりについての量である。円周上の点をたくさんとった集まりの直径は、円の直径に近づく。
どんな点の集まりにも、すぐ分かる上下の見積もりがある。
直径 $d$ の有限個の点の集まり $S$ について、次が成り立つ。
(1) $S$ の 1 点 $P$ を中心とする半径 $d$ の円は、$S$ を含む。
(2) $S$ を含む円の半径 $r$ は、$r\ge\dfrac d2$ を満たす。
つまり、必要な半径は $\dfrac d2$ と $d$ の間にある。ex-jung-start の正方形では下の端 $\dfrac d2$ で足り、正三角形では $\dfrac d{\sqrt3}\approx0.577d$ が要った。Jung の定理は、上の端を $d$ から $\dfrac d{\sqrt3}$ まで下げられることを主張する。
平面の有限個の点(2 個以上)の集まり $S$ の直径を $d$ とする。このとき $S$ は、半径 $\dfrac d{\sqrt3}$ のある円に収まる。
1 辺 $d$ の正三角形の 3 頂点 $P_1$、$P_2$、$P_3$(直径 $d$)を含む円の半径 $r$ は、$r\ge\dfrac d{\sqrt3}$ を満たす。したがって thm-jung の $\dfrac d{\sqrt3}$ は、これより小さい値に取りかえられない。
証明の鍵は、「点をすべて含む円」を少しずつ縮めて、形の決まった円にたどり着くことである。
平面の有限個の点(2 個以上)の集まり $S$ について、$S$ を含む円で、次の (a)、(b) のどちらかを満たすものがある。
(a) $S$ の 2 点が、円の直径の両端である。
(b) $S$ の 3 点が円周の上にあり、その 3 点を頂点とする三角形は鋭角三角形である。
(a) の形:鈍角三角形の 3 頂点は、最長の辺を直径とする円に収まる
(b) の形:鋭角三角形の 3 頂点を通る外接円
要点:$S$ を含む円から出発し、「中心を円周上の点に近づける」「中心を円周上の 2 点の中点に近づける」の 2 種類の動かし方で、$S$ を含んだまま半径を小さくしていく。動かせなくなったときの円が (a) か (b) の形になる。どの動かし方でも、ある点との距離の 2 乗の差 $OP^2-OQ^2$ が中心 $O$ の座標の 1 次式であることを使う。
段 0(1 次式になること).点 $P(p_1,p_2)$、$Q(q_1,q_2)$ を固定し、動く点 $X(x,y)$ について $XP^2-XQ^2$ を展開すると、$x^2$、$y^2$ の項が打ち消し合って $XP^2-XQ^2=-2(p_1-q_1)x-2(p_2-q_2)y+(p_1^2+p_2^2-q_1^2-q_2^2)$ となり、$x$、$y$ の 1 次式である。$X$ が直線の上を $X(t)=X_0+t\vec v$ と動くとき、これは $t$ の 1 次式である。1 次式は、値が $0$ になる $t$ がたかだか 1 つで、その前後で符号が変わる。
段 1(出発点).$S$ を含む円を 1 つとる(例えば prop-jung-trivial (1) の円)。中心 $O$ を変えずに、半径を $S$ の点までの距離の最大値まで縮める。これで $S$ の少なくとも 1 点が円周の上にくる。$S$ に異なる 2 点があるので、半径は正である。円周上の点が 1 個だけなら段 2 へ、2 個以上なら段 3 へ進む。
段 2(円周上に 1 点しかないとき).円周上の点を $A$ とし、中心を $O(t)=O+t\,\overrightarrow{OA}$($0\le t\le1$)と $A$ に向かって動かし、半径を $O(t)A=(1-t)\,OA$ とする。半径は $t$ とともに減る。ほかの点 $P$ について $g_P(t)=O(t)P^2-O(t)A^2$ は段 0 により $t$ の 1 次式で、$g_P(0)<0$($P$ は円の内部)、$g_P(1)=AP^2>0$ なので、ただ 1 つの $t_P$($0< t_P<1$)で $0$ になり、$t< t_P$ では負である。$t_P$ の最小値を $t^*$ とすると、$0\le t\le t^*$ ではすべての点が円に収まり、$t=t^*$ で新しい点が円周の上にくる。円周上の点は 2 個以上になった。
段 3(判定).円周上にある $S$ の点の集まりを $T$(2 点以上)とし、$T$ の 2 点で距離が最大のものを $A$、$B$ とする。(i) 中心 $O$ が線分 $AB$ の中点なら、(a) の形で終わる。(ii) そうでなく、$T$ のほかの点 $C$ で $\angle ACB<90^\circ$ となるものがあれば、三角形 $ABC$ の最大の辺は $AB$($A$、$B$ の選び方)なので最大の角は $\angle ACB$ で、それが鋭角だから 3 つの角はすべて鋭角である。(b) の形で終わる。$\angle ACB=90^\circ$ なら、円周角の定理 により $AB$ は直径で、$O$ は $AB$ の中点なので (i) に当たる。(iii) 残りは、$T$ が $A$、$B$ だけか、$T$ のほかの点 $C$ がどれも $\angle ACB>90^\circ$ となる場合である。このとき段 4 に進む。
段 4(中心を中点に近づける).$AB$ の中点を $M$ とする。$OA=OB$ なので $O$ は線分 $AB$ の垂直二等分線の上にあり、$O\ne M$ である。中心を $O(t)=O+t\,\overrightarrow{OM}$($0\le t\le1$)と動かす。$O(t)$ も垂直二等分線の上にあるので、三平方の定理により $O(t)A^2=O(t)B^2=AM^2+(1-t)^2OM^2$ で、これは $t$ とともに減る。これを半径とする。$T$ のほかの点 $C$($\angle ACB>90^\circ$)は、三角形の外心 の定理(鈍角の頂点と外心は、向かいの辺について反対側にある)により、直線 $AB$ について $O$ と反対の側、つまり $\overrightarrow{OM}$ が向かう側にある。$\vec v=\overrightarrow{OM}$ とおくと $\overrightarrow{MA}\cdot\vec v=0$ なので $\overrightarrow{AC}\cdot\vec v=\overrightarrow{MC}\cdot\vec v>0$ であり、$h_C(t)=O(t)C^2-O(t)A^2$ は $h_C(0)=0$、$t$ についての傾きが $-2\,\overrightarrow{AC}\cdot\vec v<0$ なので、$t>0$ で負になる($C$ は円の内部に入る)。内部にあった点 $P$ の $h_P(t)$ は 1 次式で $h_P(0)<0$ である。$t=1$ までにどの $h_P$ も $0$ にならなければ、中心は $M$ に着き、(a) の形で終わる。$0$ になる点があれば、その最初の $t$ で止める。円周上の点は 3 個以上になり、段 3 にもどる。
段 5(手順は止まる).段 4 で途中で止めた円は、$S$ の 3 点を通るので、$S$ の 3 点の組の外接円のどれかである。3 点の組は有限個なので、そのような円も有限個である。段 2・段 4 のたびに半径は真に減るので、同じ円に 2 度来ることはない。したがって段 4 は有限回しか起こらず、手順は (a) か (b) の形で終わる。途中のどの段でも $S$ の点は円に収まっている。$\square$
lem-jung-shrink の手順を、ex-jung-diam (1) の 4 点で実際に行ってみる。
$S=\{A(0,0),\,B(6,0),\,C(2,4),\,D(3,2)\}$(直径 $d=6$)。
(1) 出発点。中心 $(3,0)$ から 4 点までの距離の 2 乗は $A:9$、$B:9$、$C:1+16=17$、$D:4$ で、最大は $C$ の $17$ である。半径 $\sqrt{17}$ の円が $S$ を含み、$C$ だけが円周の上にある。
(2) 中心を $C$ に向かって動かす。$O(t)=(3,0)+t(-1,4)=(3-t,\,4t)$ とすると、$O(t)C^2=(1-t)^2+(4-4t)^2=17(1-t)^2$ である。ほかの点との差は
$$
O(t)A^2-O(t)C^2=(3-t)^2+16t^2-17(1-t)^2=28t-8,
$$
$$
O(t)B^2-O(t)C^2=(t+3)^2+16t^2-17(1-t)^2=40t-8,
$$
$$
O(t)D^2-O(t)C^2=t^2+(4t-2)^2-17(1-t)^2=18t-13
$$
で、どれも $t$ の 1 次式である。最初に $0$ になるのは $B$ の $t=\dfrac15$ で、中心 $O_1\left(\dfrac{14}5,\dfrac45\right)$、半径の 2 乗 $17\cdot\left(\dfrac45\right)^2=\dfrac{272}{25}$ の円の上に $B$ と $C$ がくる。
(3) 判定。円周の上は $B$、$C$ の 2 点だけで、$O_1$ は $BC$ の中点 $M(4,2)$ ではないので、中心を $M$ に近づける。$O(t)=O_1+t\left(\dfrac65,\dfrac65\right)$ とおき、$x$ 座標を $x(t)=\dfrac{14}5+\dfrac65t$ と書く。$A$ と $B$ は $x$ 軸の上にあり、$O(t)$ の $y$ 座標は共通なので
$$
O(t)A^2-O(t)B^2=x(t)^2-(x(t)-6)^2=12x(t)-36=\frac{12(6t-1)}5
$$
である。同じように $O(t)D^2-O(t)B^2=\dfrac{12t-47}5$ は $0\le t\le1$ で負のままである。$t=\dfrac16$ で $A$ が円周にくる。中心は $O_2=O_1+\dfrac16\left(\dfrac65,\dfrac65\right)=(3,1)$ で、
$$
O_2A^2=9+1=10,\quad O_2B^2=9+1=10,\quad O_2C^2=1+9=10,\quad O_2D^2=0+1=1
$$
である。
(4) 判定。三角形 $ABC$ の辺の 2 乗は $AB^2=36$、$BC^2=32$、$CA^2=20$ で、最長の辺 $AB$ について $BC^2+CA^2=52>36$ なので、最大の角 $\angle ACB$ は鋭角である(余弦定理(高校数学))。(b) の形の円 $\boxed{\text{中心 }(3,1)\text{、半径 }\sqrt{10}\approx3.16}$ が得られた。$\dfrac{\sqrt{10}}6\approx0.527<\dfrac1{\sqrt3}\approx0.577$ である。
4 点 A, B, C, D を含む円を、中心を C に近づけ、次に BC の中点に近づけて縮めると、鋭角三角形 ABC の外接円にたどり着く
補題が手に入れば、主定理の証明は正弦定理の計算になる。
thm-jung を示す。lem-jung-shrink の円をとり、半径を $r$ とする。この円は $S$ を含むので、$r\le\dfrac d{\sqrt3}$ を示せばよい。
(a) の形のとき。$S$ の 2 点 $P$、$Q$ が直径の両端なので $2r=PQ$ である。$PQ$ は $S$ の 2 点の距離なので $PQ\le d$ であり、
$$
r=\frac{PQ}2\le\frac d2<\frac d{\sqrt3}
$$
である($2>\sqrt3$ による)。
(b) の形のとき。円は鋭角三角形 $PQR$ の外接円で、$r$ はその外接円の半径である。三角形の 3 つの角のうち最大のものを $\alpha$ とし、その向かいの辺の長さを $a$ とする。
段 1($\alpha$ の範囲).3 つの角の和は $180^\circ$ なので(三角形の内角の和)、最大の角は平均の $60^\circ$ 以上である:$3\alpha\ge180^\circ$ より $\alpha\ge60^\circ$。鋭角三角形なので $\alpha<90^\circ$ である。
段 2($\sin\alpha$ の範囲).$\sin$ は $0^\circ$ から $90^\circ$ まで増加するので、$60^\circ\le\alpha<90^\circ$ から $\sin\alpha\ge\sin60^\circ=\dfrac{\sqrt3}2$ である。
段 3(正弦定理).正弦定理 $\dfrac a{\sin\alpha}=2r$(正弦定理(高校数学))と、$a$ は $S$ の 2 点の距離なので $a\le d$ であることから
$$
r=\frac a{2\sin\alpha}\le\frac d{2\cdot\dfrac{\sqrt3}2}=\frac d{\sqrt3}
$$
である。どちらの形でも $r\le\dfrac d{\sqrt3}$ が示された。$\square$
(b) の形で等号 $r=\dfrac d{\sqrt3}$ になるのは、段 2 と段 3 の不等号がどちらも等号のとき、つまり $\alpha=60^\circ$ かつ $a=d$ のときである。最大の角が $60^\circ$ なら 3 つの角はすべて $60^\circ$ で、三角形は 1 辺 $d$ の正三角形である。これが prop-jung-sharp の場面である。
prop-jung-sharp を示す。正三角形の重心(外心と一致する)を $G$、外接円の半径を $R$ とする。1 辺 $d$ の正三角形では、正弦定理から $R=\dfrac d{2\sin60^\circ}=\dfrac d{\sqrt3}$ である。
段 1(恒等式).円の中心を $X$ とし、ベクトルを $\vec x=\overrightarrow{GX}$、$\vec p_i=\overrightarrow{GP_i}$($i=1,2,3$)とおく。$G$ は重心なので $\vec p_1+\vec p_2+\vec p_3=\vec 0$、また $\lvert\vec p_i\rvert=R$ である。
$$
\sum_{i=1}^3XP_i^2=\sum_{i=1}^3\lvert\vec p_i-\vec x\rvert^2=\sum_{i=1}^3\lvert\vec p_i\rvert^2-2\,\vec x\cdot\underbrace{(\vec p_1+\vec p_2+\vec p_3)}_{=\vec 0}+3\lvert\vec x\rvert^2=3R^2+3\,GX^2
$$
である(ベクトルの内積)。
段 2(評価).3 頂点が半径 $r$ の円に収まるなら $XP_i\le r$ なので、左辺は $3r^2$ 以下である。したがって $3r^2\ge3R^2+3\,GX^2\ge3R^2$ で、$r\ge R=\dfrac d{\sqrt3}$ である。$\square$
段 2 の等号は $GX=0$、つまり中心が重心のときだけである。1 辺 $d$ の正三角形の 3 頂点を含む半径 $\dfrac d{\sqrt3}$ の円は、外接円ただ 1 つである。
lem-jung-shrink で得た円は、実は $S$ を含む円のうちで半径が最も小さく、そのような円はただ 1 つである。この事実は thm-jung の証明には使わない。最小の円があること自体は、中心の座標 $(x,y)$ の関数「$S$ の点までの距離の最大値」の最小値として、最大値・最小値の定理(高校数学) の 2 変数版からも分かるが、この記事ではその道をとらず、縮める手順で (a)・(b) の円を直接作った。
(a) の形のとき:$S$ の 2 点 $P$、$Q$ を含む円の半径は、prop-jung-trivial (2) と同じ三角形の不等式で $\dfrac{PQ}2$ 以上である。(a) の円の半径はちょうど $\dfrac{PQ}2$ である。さらに、中心 $X$、半径 $\dfrac{PQ}2$ の円が $P$、$Q$ を含むなら、$PQ\le PX+XQ\le\dfrac{PQ}2+\dfrac{PQ}2=PQ$ の不等号がすべて等号になり、$PX=XQ=\dfrac{PQ}2$ で $X$ は線分 $PQ$ の上にある。つまり $X$ は $PQ$ の中点で、最小の円は (a) の円ただ 1 つである。
(b) の形のとき:鋭角三角形 $P_1P_2P_3$ の外心 $O$ は三角形の内部にある(三角形の外心)。内部の点は、$\lambda_1,\lambda_2,\lambda_3>0$、$\lambda_1+\lambda_2+\lambda_3=1$ を使って $\lambda_1\overrightarrow{OP_1}+\lambda_2\overrightarrow{OP_2}+\lambda_3\overrightarrow{OP_3}=\vec 0$ と書ける。別の中心 $X$ をとり $\vec x=\overrightarrow{OX}$、$\vec p_i=\overrightarrow{OP_i}$、外接円の半径を $R$ とすると
$$\sum_{i=1}^3\lambda_iXP_i^2=\sum_{i=1}^3\lambda_i\lvert\vec p_i-\vec x\rvert^2=R^2-2\,\vec x\cdot\Bigl(\sum_{i=1}^3\lambda_i\vec p_i\Bigr)+\lvert\vec x\rvert^2=R^2+OX^2$$
である。重み $\lambda_i$ の平均が $R^2+OX^2$ なので、どれかの $i$ で $XP_i^2\ge R^2+OX^2$ である。$X\ne O$ なら $X$ を中心とする円が 3 点を含むには半径が $R$ より大きくなければならない。したがって外接円が最小で、最小の円はそれだけである。
図形ごとに、「その図形を含む最小の円の半径」を直径で割った比を並べる。thm-jung は、有限個の点ならこの比が $\dfrac1{\sqrt3}\approx0.577$ を超えないことを主張している。
| 図形(直径 $d$) | 最小の円の半径 | 半径 $\mathbin{÷}$ 直径 | 最小の円の形 |
|---|---|---|---|
| 正三角形の 3 頂点 | $\dfrac d{\sqrt3}$ | $0.577$ | (b):外接円 |
| Reuleaux の三角形 | $\dfrac d{\sqrt3}$ | $0.577$ | もとの正三角形の外接円 |
| 13, 14, 15 の三角形の 3 頂点 | $\dfrac{65}8$($d=15$) | $0.542$ | (b):外接円 |
| ex-jung-shrink の 4 点 | $\sqrt{10}$($d=6$) | $0.527$ | (b):三角形 $ABC$ の外接円 |
| 正方形の 4 頂点 | $\dfrac d2$ | $0.5$ | (a):対角線が直径 |
| 正六角形の 6 頂点 | $\dfrac d2$ | $0.5$ | (a):最長の対角線が直径 |
| 鈍角三角形の 3 頂点 | $\dfrac d2$ | $0.5$ | (a):最長の辺が直径 |
| 円板 | $\dfrac d2$ | $0.5$ | 円板そのもの |
13, 14, 15 の三角形は、最大の角(辺 $15$ の向かい)の余弦が $\dfrac{13^2+14^2-15^2}{2\cdot13\cdot14}=\dfrac{140}{364}>0$ で鋭角三角形であり、外接円の半径は $\dfrac{abc}{4\cdot(\text{面積})}=\dfrac{13\cdot14\cdot15}{4\cdot84}=\dfrac{65}8$ である。Reuleaux の三角形と円板は無限個の点からなる図形なので thm-jung の範囲の外だが、比は次の例のように直接求められる。
1 辺 $w$ の正三角形 $ABC$ の各頂点を中心とする半径 $w$ の 3 つの円板の共通部分が、幅 $w$ の Reuleaux の三角形 $K$ である(定幅図形)。
(1) 直径は $w$ である。$K$ の 2 点 $X\ne Y$ をとり、$\vec u=\dfrac{\overrightarrow{XY}}{XY}$ とする。$K$ は向き $\vec u$ と $-\vec u$ の支持線の間の、間隔 $w$ の帯に入る($K$ は定幅図形)ので、$\vec u\cdot\overrightarrow{XY}=XY$ は $w$ 以下である。頂点どうしの距離は $w$ なので、直径はちょうど $w$ である。
(2) 重心 $G$ を中心とする半径 $\dfrac w{\sqrt3}$ の円に収まる。弧 $BC$(中心 $A$)の上の点 $X$ について、$AX=w$、$AG=\dfrac w{\sqrt3}$ で、$\overrightarrow{AX}$ と $\overrightarrow{AG}$ のなす角 $\varphi$ は $\lvert\varphi\rvert\le30^\circ$ なので $\cos\varphi\ge\dfrac{\sqrt3}2$ である。余弦定理から
$$
GX^2=w^2+\frac{w^2}3-2\cdot w\cdot\frac w{\sqrt3}\cos\varphi\le w^2+\frac{w^2}3-2\cdot\frac{w^2}{\sqrt3}\cdot\frac{\sqrt3}2=\frac{w^2}3
$$
である。ほかの 2 つの弧も同じなので、$K$ の周はすべてこの円の中にあり、周に囲まれた $K$ も円の中にある。$w=1$ のとき、弧の上の $GX$ は端で最大 $\dfrac1{\sqrt3}\approx0.577$、弧の中点で最小 $1-\dfrac1{\sqrt3}\approx0.423$ である。
(3) $K$ は 3 頂点 $A$、$B$、$C$ を含むので、prop-jung-sharp により $K$ を含む円の半径は $\dfrac w{\sqrt3}$ 以上である。(2) とあわせて、最小の円の半径は $\dfrac w{\sqrt3}$ で、比は $\dfrac1{\sqrt3}$ である。
幅 1 の Reuleaux の三角形は、重心 G を中心とする半径 0.577 の円に収まり、弧の中点は G から 0.423 の距離にある
次に、条件を外したり取り違えたりすると何が崩れるかを並べる。
| 外す条件・取り違え | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| (b) の「鋭角」を外す | 鈍角三角形 $(0,0)$、$(4,0)$、$(1,1)$ | 外接円(半径 $\sqrt5$)は最小の円でない(半径 $2$ で足りる)→ ex-jung-cx-obtuse |
| 半径を $\dfrac d2$ にする | 1 辺 $2$ の正三角形 | 半径 $1$ の円に収まらない → ex-jung-cx-half |
| 平面を空間にする | 1 辺 $d$ の正四面体の 4 頂点 | 半径 $\dfrac d{\sqrt3}$ の球に収まらない($\dfrac{\sqrt6}4d$ が要る)→ ex-jung-cx-space |
$A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(1,1)$。$\overrightarrow{CA}\cdot\overrightarrow{CB}=(-1)\cdot3+(-1)\cdot(-1)=-2<0$ なので $\angle C$ は鈍角である。
外接円の中心を $(x,y)$ とすると、$A$ と $B$ から等距離なので $x=2$、$A$ と $C$ から等距離なので $x^2+y^2=(x-1)^2+(y-1)^2$、つまり $x+y=1$ で $y=-1$ である。中心 $(2,-1)$、半径 $\sqrt{4+1}=\sqrt5\approx2.24$ である。
一方、$AB$ を直径とする円(中心 $(2,0)$、半径 $2$)は、$C$ までの距離が $\sqrt{1+1}=\sqrt2<2$ なので 3 点を含む。外接円より小さい円に収まる。lem-jung-shrink の (b) で「鋭角」を課すのは、このためである。直径は $d=AB=4$ で、比は $\dfrac24=\dfrac12$ である。
ex-jung-start (1) の 1 辺 $2$ の正三角形($d=2$)。prop-jung-sharp により、3 頂点を含む円の半径は $\dfrac2{\sqrt3}\approx1.155$ 以上で、半径 $\dfrac d2=1$ の円には収まらない。prop-jung-trivial (2) の下からの見積もり $\dfrac d2$ は、点の集まりによっては足りない。
空間の 4 点 $P_1(1,1,1)$、$P_2(1,-1,-1)$、$P_3(-1,1,-1)$、$P_4(-1,-1,1)$ は、どの 2 点の距離も $\sqrt{0+4+4}=2\sqrt2$ で、1 辺 $d=2\sqrt2$ の正四面体の頂点である。原点からの距離はどれも $\sqrt3$ で、$\overrightarrow{OP_1}+\overrightarrow{OP_2}+\overrightarrow{OP_3}+\overrightarrow{OP_4}=\vec 0$ である。
prf-jung-sharp と同じ計算で、中心 $X$ の球について $\displaystyle\sum_{i=1}^4XP_i^2=4\cdot3+4\,OX^2\ge12$ となる。4 点を含む球の半径 $r$ は $4r^2\ge12$、$r\ge\sqrt3$ を満たす。比は
$$
\frac{\sqrt3}{2\sqrt2}=\frac{\sqrt6}4\approx0.612>\frac1{\sqrt3}\approx0.577
$$
で、空間では $\dfrac d{\sqrt3}$ の半径の球に収まらない点の集まりがある。thm-jung の「平面」は外せない。
ex-jung-cx-space の値 $\dfrac{\sqrt6}4$ は、$n$ 次元の Jung の定理の $n=3$ の場合に当たる。$n$ 次元の空間のコンパクトな集合(有界な閉集合)の直径を $d$ とすると、その集合は半径
$$
d\sqrt{\frac n{2(n+1)}}
$$
の球に収まる(Wei26。この記事では証明しない)。$n=1$ では $\dfrac d2$(数直線の区間は、両端の中点を中心に半径 $\dfrac d2$ で覆える)、$n=2$ では $\sqrt{\dfrac26}=\dfrac1{\sqrt3}$ 倍で thm-jung と一致し、$n=3$ では $\sqrt{\dfrac38}=\dfrac{\sqrt6}4$ 倍で正四面体の値と一致する。
有限個でない図形、例えば多角形の周や閉じた曲線の上の全部の点へは、凸集合 の Helly の定理を使って移せる。
平面の Helly の定理(凸集合 の定理 thm-convex-helly)は、「平面の凸集合が有限個あり、どの 3 つにも共通の点があれば、全部に共通の点がある」ことを主張する。$S$ の各点 $P$ を中心とする半径 $\dfrac d{\sqrt3}$ の円板 $D_P$ を考える。$S$ の 3 点 $P,Q,R$ をとると、3 点の集まりの直径は $d$ 以下なので、thm-jung から 3 点を含む半径 $\dfrac d{\sqrt3}$ の円があり、その中心 $X$ は $D_P,D_Q,D_R$ の共通の点である。Helly の定理から、すべての $D_P$ に共通の点 $c$ があり、$c$ を中心とする半径 $\dfrac d{\sqrt3}$ の円が $S$ を含む。
$S$ が無限個の点からなる有界な閉じた図形のときは、同じ議論に、有界閉な凸集合の無限個の族についての Helly の定理(凸集合 の thm-convex-helly-infinite)を使う。この記事では Helly の定理を証明しない。
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