Prüfer群(Prüfer group)とは、素数 $p$ に対し、有理数の剰余群 $\mathbb{Q}/\mathbb{Z}$ の中で分母が $p$ の冪である元全体のなす部分群 $\mathbb{Z}(p^\infty)$ のことであり、準巡回群ともいう。複素数の $p$ 冪乗の 1 の冪根全体や、位数 $p^n$ の巡回群の帰納極限としても表される。無限群であるが、自身以外の部分群は位数 $p^n$($n\ge0$)の巡回群だけで、1 本の増加列をなす。逆に、自身以外の部分群がすべて有限な無限アーベル群は Prüfer 群に限る。可除群であり、すべての可除群は $\mathbb{Q}$ と Prüfer 群の直和に分解する。自己準同型環は $p$ 進整数環 $\mathbb{Z}_p$ と同型である。
前提知識: アーベル群, 巡回群, 部分群, 剰余群, 可除群, 素数
本記事ではアーベル群の演算を和で書き、$p$ はつねに素数を表す。有理数の加法群 $\mathbb{Q}$ の剰余群 $\mathbb{Q}/\mathbb{Z}$ の元 $t+\mathbb{Z}$ を、誤解のないときは単に $t$ と書くことがある。
素数 $p$ に対し、$\mathbb{Q}/\mathbb{Z}$ の部分群
$$
\mathbb{Z}(p^\infty):=\Bigl\{\frac{a}{p^k}+\mathbb{Z}\;\Bigm|\;a\in\mathbb{Z},\ k\ge0\Bigr\}
$$
を $p$ に対する Prüfer群(Prüfer group)、または Prüfer $p$ 群という。準巡回群(quasicyclic group)ともいう。
記号は 可除群・アーベル群・極大部分群 の記事と同じ $\mathbb{Z}(p^\infty)$ を使う。文献によっては $\mathbb{Z}/p^\infty$、$\mathbb{Z}_{p^\infty}$、$C_{p^\infty}$ とも書く(入射対象 の記事では $\mathbb{Z}/p^\infty$)。$\mathbb{Z}(p^\infty)$ が部分群であることは、$a/p^k-b/p^l=(ap^l-bp^k)/p^{k+l}$ から分かる。
整数 $n\ge0$ に対し
$$
C_n:=\Bigl\{\frac{a}{p^n}+\mathbb{Z}\;\Bigm|\;a\in\mathbb{Z}\Bigr\},\qquad c_n:=\frac1{p^n}+\mathbb{Z}
$$
とおく。$C_n$ は $c_n$ で生成される位数 $p^n$ の巡回群である。実際、$ac_n=0$ となるのは $a/p^n\in\mathbb{Z}$、すなわち $p^n\mid a$ のときに限るので、$c_n$ の位数(元の位数)は $p^n$ である。$pc_{n+1}=c_n$ なので $C_0\subset C_1\subset C_2\subset\cdots$ であり、
$$
\mathbb{Z}(p^\infty)=\bigcup_{n\ge0}C_n,\qquad C_0=\{0\}
$$
である。$C_n$ は $\mathbb{Z}(p^\infty)$ の元のうち $p^nx=0$ を満たすもの全体に等しい($x=a/p^k$ で $p^nx=0$ なら、$k>n$ のとき $p^{k-n}\mid a$ なので $x=a'/p^n$ と書き直せる)。
Prüfer 群は、位数 $p,p^2,p^3,\dots$ の巡回群を順に埋め込んでいった極限である。$\mathbb{Z}(p^\infty)$ の元はすべて有限の位数 $p^k$ をもつが、位数はいくらでも大きくなる。幾何学的には、複素数の単位円周上の $p$ 冪乗根全体、すなわち「$p$ 回、$p^2$ 回、… と円周を等分した点すべて」である(prop-prufer-group-descriptions)。
Prüfer 群は、無限なのに部分群は非常に少ない。部分群は $C_0\subsetneq C_1\subsetneq C_2\subsetneq\cdots$ と全体だけであり(prop-prufer-group-subgroups)、全体以外はすべて有限である。この性質で Prüfer 群は特徴づけられる(thm-prufer-group-characterization)。また $\mathbb{Z}(p^\infty)$ は可除群であり、可除群の構造定理により、すべての可除群は $\mathbb{Q}$ と Prüfer 群の直和に分かれる。捩れのある可除群の最小の部品が Prüfer 群である。
$p=2$ のとき、$\mathbb{Z}(2^\infty)$ は分母が $2$ の冪である有理数を $1$ を法として考えたものである。$[0,1)$ の代表元で書くと $\{0,\tfrac12,\tfrac14,\tfrac34,\tfrac18,\dots\}$ であり、和は $1$ を法として計算する。たとえば $\tfrac34+\tfrac38=\tfrac98\equiv\tfrac18$ である。$\tfrac38$ の位数は $8$ であり、$\tfrac38$ は $C_3=\{0,\tfrac18,\dots,\tfrac78\}$ を生成する。
$\mathbb{Q}/\mathbb{Z}$ はすべての素数についての Prüfer 群の直和 $\bigoplus_p\mathbb{Z}(p^\infty)$ と同型であり、各 $\mathbb{Z}(p^\infty)$ は $\mathbb{Q}/\mathbb{Z}$ の元で位数が $p$ の冪であるもの全体に一致する(可除群 の記事の例「構造定理による同型」の 1)。たとえば $\tfrac34+\tfrac13=\tfrac{13}{12}$ なので、位数 $12$ の元 $\tfrac1{12}+\mathbb{Z}$ は、$\mathbb{Z}(2^\infty)$ の位数 $4$ の元 $\tfrac34+\mathbb{Z}$ と $\mathbb{Z}(3^\infty)$ の位数 $3$ の元 $\tfrac13+\mathbb{Z}$ の和に分かれる。
p進数体 $\mathbb{Q}_p$ の加法群を p 進整数環 $\mathbb{Z}_p$(p進整数)で割った $\mathbb{Q}_p/\mathbb{Z}_p$ は $\mathbb{Z}(p^\infty)$ と同型である。実際、$\mathbb{Z}[1/p]:=\{a/p^k\mid a\in\mathbb{Z},\ k\ge0\}$ を $\mathbb{Q}_p$ の部分群とみた写像 $\mathbb{Z}[1/p]\to\mathbb{Q}_p/\mathbb{Z}_p$ を考える。$\mathbb{Q}_p$ の元は $p^{-k}u$($k\ge0$、$u\in\mathbb{Z}_p$)と書け、$\mathbb{Z}_p/p^k\mathbb{Z}_p\cong\mathbb{Z}/p^k\mathbb{Z}$ により $u\equiv m\pmod{p^k\mathbb{Z}_p}$ となる整数 $m$ があるので、$p^{-k}u-m/p^k\in\mathbb{Z}_p$ となり、この写像は全射である。核は $\mathbb{Z}[1/p]\cap\mathbb{Z}_p$ であり、$a/p^k$($p\nmid a$、$k\ge1$)は $p$ 進付値が $-k<0$ なので $\mathbb{Z}_p$ に属さず、核は $\mathbb{Z}$ である。よって $\mathbb{Q}_p/\mathbb{Z}_p\cong\mathbb{Z}[1/p]/\mathbb{Z}=\mathbb{Z}(p^\infty)$ である。
$B:=\bigoplus_{n\ge1}\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z}$ とする。$B$ は無限群で、どの元も $p$ の冪の位数をもち、位数 $p^n$ の元がすべての $n$ についてある。この点は $\mathbb{Z}(p^\infty)$ と同じである。しかし $B$ は $\mathbb{Z}(p^\infty)$ と同型でない。第 1 成分が $1$ で他が $0$ の元 $e$ は $pB$ に属さない($pB$ の元の第 1 成分は $p\cdot y_1=0$)ので $B$ は可除でないが、$\mathbb{Z}(p^\infty)$ は可除だからである。また $B$ の部分群 $\bigoplus_{n\ge2}\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z}$ は無限で $B$ と異なる。この例は「無限」「$p$ 群」「元の位数に上限がない」を満たすが「真部分群はすべて有限」を満たさず、thm-prufer-group-characterization の仮定をこれらの条件に弱めた含意を破る。
$E:=\bigoplus_{n\in\mathbb{N}}\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ は無限の $p$ 群であるが、$0$ 以外の元の位数はすべて $p$ であり、$\mathbb{Z}(p^\infty)$ と同型でない($\mathbb{Z}(p^\infty)$ は位数 $p^2$ の元 $c_2$ をもつ)。第 $0$ 成分が $0$ である元のなす部分群は無限で $E$ と異なる。$\mathbb{Z}$ も無限群であるが、真部分群 $2\mathbb{Z}$ が無限である。これらは「無限群」を満たすが「真部分群はすべて有限」を満たさない例である。
次の群はすべて $\mathbb{Z}(p^\infty)$ と同型である。
1:$\mathbb{Z}\subset\mathbb{Z}[1/p]\subset\mathbb{Q}$ であり、$\mathbb{Z}[1/p]/\mathbb{Z}$ は $\mathbb{Q}/\mathbb{Z}$ の中で $\mathbb{Z}(p^\infty)$ そのものである。
2:$a/p^k+\mathbb{Z}$ は $p^k(a/p^k)\in\mathbb{Z}$ なので位数が $p^k$ を割る。逆に $x=a/b+\mathbb{Z}$($b\ge1$、$a,b$ は互いに素)の位数が $p^n$ を割るとすると、$p^na/b\in\mathbb{Z}$ なので $b\mid p^na$、よって $b\mid p^n$ であり、$b$ は $p$ の冪なので $x\in\mathbb{Z}(p^\infty)$ である。
3:$e(t):=e^{2\pi it}$ とおくと、$t+\mathbb{Z}\mapsto e(t)$ は $\mathbb{Q}/\mathbb{Z}$ から $\mathbb{C}^\times$ への単射な群準同型である($e(t)=1$ となるのは $t\in\mathbb{Z}$ のときに限る)。$e(a/p^k)^{p^k}=1$ なので $\mathbb{Z}(p^\infty)$ の像は $\mu_{p^\infty}$ に含まれる。逆に $z^{p^n}=1$ とすると、$e(a/p^n)$($0\le a< p^n$)は $x^{p^n}-1$ の相異なる $p^n$ 個の根であり、この多項式の根は高々 $p^n$ 個なので、$z$ はそのどれかに等しい。よって像は $\mu_{p^\infty}$ である。
4:$G_n:=\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z}$、$\varphi_n\colon G_n\to G_{n+1}$ を与えられた写像とする($a\equiv a'\pmod{p^n}$ なら $pa\equiv pa'\pmod{p^{n+1}}$ なので矛盾なく定まる)。$\iota_n\colon G_n\to\mathbb{Z}(p^\infty)$、$a+p^n\mathbb{Z}\mapsto a/p^n+\mathbb{Z}$ は矛盾なく定まる単射準同型で、像は $C_n$、$\iota_{n+1}\circ\varphi_n=\iota_n$($pa/p^{n+1}=a/p^n$)を満たす。$\mathbb{Z}(p^\infty)$ と $(\iota_n)_n$ が帰納極限の普遍性をもつことを示す。アーベル群 $H$ と準同型 $f_n\colon G_n\to H$ で $f_{n+1}\circ\varphi_n=f_n$ を満たすものが与えられたとする。$x\in\mathbb{Z}(p^\infty)$ について $x\in C_n$ となる $n$ をとり、$f(x):=f_n(\iota_n^{-1}(x))$ と定める。$x\in C_n\subset C_{n+1}$ なら $\iota_{n+1}^{-1}(x)=\varphi_n(\iota_n^{-1}(x))$ なので $f_{n+1}(\iota_{n+1}^{-1}(x))=f_n(\iota_n^{-1}(x))$ であり、$f(x)$ は $n$ のとり方によらない。$x,y$ を同じ $C_n$ に入れて計算すれば $f$ は準同型であり、$f\circ\iota_n=f_n$ である。$\mathbb{Z}(p^\infty)=\bigcup_nC_n=\bigcup_n\iota_n(G_n)$ なので、この条件を満たす $f$ はただ 1 つである。
5:$e_n\mapsto c_n$ で定まる準同型 $\psi\colon F\to\mathbb{Z}(p^\infty)$ は、$pc_1=0$、$pc_{n+1}=c_n$ なので $K$ を $0$ に写し、準同型 $\bar\psi\colon F/K\to\mathbb{Z}(p^\infty)$ を誘導する。$\bar e_n$ を $e_n$ の像とすると、$F/K$ で $\bar e_n=p\bar e_{n+1}$ なので $\bar e_n$ の生成する部分群は増加列をなし、$F/K$ はその合併である。また $p^n\bar e_n=p^{n-1}\bar e_{n-1}=\cdots=p\bar e_1=0$ なので $\langle\bar e_n\rangle$ の位数は $p^n$ 以下である。$\bar\psi$ は $\langle\bar e_n\rangle$ を位数 $p^n$ の $C_n$ の上に写すので、$\langle\bar e_n\rangle$ の上で全単射である。$F/K$ の元はある $\langle\bar e_n\rangle$ に入るので、$\bar\psi$ は単射であり、$\mathbb{Z}(p^\infty)=\bigcup_nC_n$ なので全射である。$\square$
$\mathbb{Z}(p^\infty)$ 自身は巡回群でないが、どの有限部分集合も 1 つの巡回群 $C_n$ に含まれる(cor-prufer-group-consequences の 1 の証明)。
$\mathbb{Z}(p^\infty)$ の部分群 $H$ は、$\mathbb{Z}(p^\infty)$ 自身であるか、ある $n\ge0$ について $C_n$ に等しい。したがって $\mathbb{Z}(p^\infty)$ の部分群全体は包含について
$$
C_0\subsetneq C_1\subsetneq C_2\subsetneq\cdots\subsetneq\mathbb{Z}(p^\infty)
$$
という 1 本の列をなし、$\mathbb{Z}(p^\infty)$ 以外の部分群はすべて有限巡回群である。
$0$ でない $x\in\mathbb{Z}(p^\infty)$ は、$k\ge1$ と $p$ で割り切れない整数 $a$ によって $x=a/p^k+\mathbb{Z}$ とただ一通りに書ける($0< a< p^k$ とすれば一意)。このとき $\langle x\rangle=C_k$ である。実際 $x\in C_k$ であり、$a$ と $p^k$ は互いに素なので $ua\equiv1\pmod{p^k}$ となる整数 $u$ があり(Bézoutの等式)、$ux=c_k$ となるので $C_k=\langle c_k\rangle\subset\langle x\rangle$ である。この $k$ を $x$ の段と呼び、$0$ の段を $0$ とする。$x$ の段が $k$ なら $x\in C_k$ であり、$C_k$ の元の段は $k$ 以下である。
$H$ の元の段に上限がないとする。任意の $n$ について段が $n$ 以上の $h\in H$ があり、その段を $k\ge n$ とすると $C_n\subset C_k=\langle h\rangle\subset H$ である。よって $H\supset\bigcup_nC_n=\mathbb{Z}(p^\infty)$ である。段に上限があるとし、その最大値を $n$、段が $n$ の $H$ の元を $h$ とすると、$C_n=\langle h\rangle\subset H$ であり、$H$ の元はすべて段が $n$ 以下なので $H\subset C_n$ である。よって $H=C_n$ である。$C_n$ の位数は $p^n$ なので、列の包含はすべて真である。$\square$
同じ事実は、元の位数に着目した別の証明で Artin環 の記事の例「反例:Artin加群だが Noether加群でない加群」にも示されている。
1:$C_n$ は位数 $p^n$ なので $\mathbb{Z}(p^\infty)$ は無限である。有限個の元はそれぞれある $C_{n_i}$ に入り、$n:=\max_in_i$ として $C_n$ に入るので、それらが生成する部分群は有限群 $C_n$ に含まれ、全体にならない。
2:$0$ でない部分群は prop-prufer-group-subgroups により $C_n$($n\ge1$)か全体なので、どれも $C_1\neq0$ を含む。$0$ でない 2 つの部分群の共通部分は $C_1$ を含み $0$ でないので、直和にならない。
3:部分群の真の減少列は、全体から始まっても次は有限群 $C_n$ であり、その先は $C_{n-1},\dots,C_0$ のいくつかなので有限回で止まる。$C_0\subsetneq C_1\subsetneq\cdots$ は止まらない真の増加列である。
4:$x=a/p^k$ について $x=p^n\cdot a/p^{k+n}$ なので $p^n$ 倍写像は全射であり、その核は $p^nx=0$ となる $x$ 全体、すなわち $C_n$ である(def-prufer-group の後の段落)。群準同型 の記事の定理「群の第1同型定理」により $\mathbb{Z}(p^\infty)/C_n\cong\mathbb{Z}(p^\infty)$ である。$\square$
3 は、$\mathbb{Z}$ 加群として Artin加群だが Noether加群でないことを意味する。4 の全射性の議論は、$\mathbb{Z}(p^\infty)$ が $p$ 可除であることを示している。$p$ と異なる素数 $q$ で割れることも合わせて、$\mathbb{Z}(p^\infty)$ は可除群である(アーベル群 の記事の例「可除群の例と反例」の 3)。
アーベル群 $G$ について、次は同値である。
2 ⇒ 1 は prop-prufer-group-subgroups と cor-prufer-group-consequences の 1 である。$p$ の一意性は、$\mathbb{Z}(p^\infty)$ の $0$ でない元の位数が $p$ の冪であることによる。
1 ⇒ 2 を示す。$G$ は 1 を満たすとする。
段階 1(捩れ群であること)。無限の位数の元 $x$ があるとすると、$\langle 2x\rangle$ は無限群なので $G$ に等しく、$x=m\cdot2x$ となる整数 $m$ がある。$(2m-1)x=0$ で $2m-1\neq0$ となり、$x$ の位数が無限であることに反する。よって $G$ のすべての元は有限の位数をもつ。
段階 2($p$ 群であること)。素数 $p$ について、位数が $p$ の冪である元全体を $G_p$、位数が $p$ と互いに素である元全体を $G_{p'}$ とする。どちらも部分群である($G$ は可換なので、$p^kx=p^ly=0$ なら $p^{\max(k,l)}(x-y)=0$、$mx=ny=0$ なら $mn(x-y)=0$)。位数 $m=p^km'$($p\nmid m'$)の元 $x$ について、Bézoutの等式により $up^k+vm'=1$ となる整数 $u,v$ をとると、$x=vm'x+up^kx$ で、$p^k(vm'x)=0$、$m'(up^kx)=0$ なので $vm'x\in G_p$、$up^kx\in G_{p'}$ である。$G_p\cap G_{p'}$ の元の位数は $p$ の冪で $p$ と互いに素なので $1$ であり、$G=G_p\oplus G_{p'}$ である。$G_p$ と $G_{p'}$ がどちらも $0$ でなければ、どちらも $G$ と異なるので有限であり、$G$ も有限になって矛盾する。よって各素数 $p$ について $G_p=0$ か $G=G_p$ である。$G\neq0$ なので位数 $m>1$ の元 $x$ があり、$m$ の素因数 $p$ について $(m/p)x$ は位数 $p$ の元なので $G_p\neq0$、すなわち $G=G_p$ は $p$ 群である。
段階 3(可除であること)。$G[p]:=\{x\in G\mid px=0\}$ とおく。$G[p]=G$ なら、$G$ は $\mathbb{F}_p=\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ 上のベクトル空間であり、無限集合なので無限次元である。基底 $(v_i)_{i\in I}$ から 1 つの $v_{i_0}$ を除いたものが張る部分空間は、無限で $G$ と異なる部分群になり、矛盾する。よって $G[p]\neq G$ であり、$G[p]$ は有限である。$p$ 倍写像 $G\to G$ の核は $G[p]$、像は $pG$ である。$pG\neq G$ なら $pG$ は有限であり、$G/G[p]\cong pG$(群の第1同型定理)から $G$ は有限になって矛盾する。よって $pG=G$ である。$p$ と異なる素数 $q$ と $x\in G$ について、$x$ の位数 $p^k$ は $q$ と互いに素なので、$uq+vp^k=1$ となる整数 $u,v$ をとれば $x=q(ux)+v(p^kx)=q(ux)$ であり、$x\in qG$ である。可除群 の記事の命題「素数による判定」により、$G$ は可除群である。
段階 4(構造定理の適用)。可除群 の記事の定理「可除群の構造定理」により、$G\cong\mathbb{Q}^{(I)}\oplus\bigoplus_r\mathbb{Z}(r^\infty)^{(I_r)}$($r$ は素数を動く)と書ける。$G$ は $p$ 群なので、無限の位数の元をもつ $\mathbb{Q}$ と、位数 $r\neq p$ の元をもつ $\mathbb{Z}(r^\infty)$($r\neq p$)は現れず、$I=\emptyset$、$I_r=\emptyset$($r\neq p$)である。よって $G\cong\mathbb{Z}(p^\infty)^{(J)}$ であり、$G\neq0$ なので $J\neq\emptyset$ である。$J$ が 2 個以上の元をもてば、1 つの成分 $\mathbb{Z}(p^\infty)$ は $G$ と異なる無限部分群になり、矛盾する。よって $J$ は 1 点で、$G\cong\mathbb{Z}(p^\infty)$ である。$\square$
段階 3 で無限次元のベクトル空間の基底を使うところと、段階 4 で引いた構造定理の証明で、Zornの補題を使う。ex-prufer-group-unbounded と ex-prufer-group-elementary は、条件 1 の「真部分群はすべて有限」を外すと結論が成り立たないことを示す。準巡回群と可除群の一般論は Rob96 Chapter 4、Kap69 の可除群の節で扱われている。
$\mathbb{Z}_p:=\varprojlim_n\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z}$ を、$a_{n+1}\equiv a_n\pmod{p^n}$ を満たす列 $(a_n)_{n\ge1}$($a_n\in\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z}$)全体に成分ごとの和と積を入れた環とする(射影極限)。これは p 進整数環と同型である(p進数 の記事の同型 $\mathbb{Z}_p\cong\varprojlim_N\mathbb{Z}/p^N\mathbb{Z}$)。
$\mathbb{Z}(p^\infty)$ から自身への群準同型全体 $\operatorname{End}(\mathbb{Z}(p^\infty))$ は、和と合成により環をなし、$\mathbb{Z}_p$ と環として同型である。とくに $\mathbb{Z}(p^\infty)$ の自己同型群(自己同型)は $\mathbb{Z}_p$ の単元群 $\mathbb{Z}_p^\times$ と同型である。
$\varphi\in\operatorname{End}(\mathbb{Z}(p^\infty))$ とする。$C_n$ は $p^nx=0$ を満たす元全体なので、$\varphi(C_n)\subset C_n$ である。$C_n$ は位数 $p^n$ の巡回群で $c_n$ が生成するので、$\varphi(c_n)=a_nc_n$ となる $a_n\in\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z}$ がただ 1 つある(整数の代表元をとって $a_nc_n$ と書く)。$pc_{n+1}=c_n$ から
$$
a_nc_n=\varphi(c_n)=p\,\varphi(c_{n+1})=pa_{n+1}c_{n+1}=a_{n+1}c_n
$$
なので $a_{n+1}\equiv a_n\pmod{p^n}$ であり、$\Phi(\varphi):=(a_n)_n\in\mathbb{Z}_p$ が定まる。
逆に $(a_n)_n\in\mathbb{Z}_p$ が与えられたとき、各 $a_n$ の整数の代表元 $\tilde a_n$ をとり、$x\in C_n$ について $\varphi(x):=\tilde a_nx$ と定める。$p^nx=0$ なので代表元のとり方によらず、$x\in C_n\subset C_{n+1}$ なら $\tilde a_{n+1}-\tilde a_n$ が $p^n$ で割り切れるので $\tilde a_{n+1}x=\tilde a_nx$ であり、$n$ のとり方にもよらない。$x,y$ を同じ $C_n$ に入れれば $\varphi(x+y)=\varphi(x)+\varphi(y)$ であり、$\varphi$ は準同型で $\Phi(\varphi)=(a_n)_n$ である。準同型は各 $c_n$ の像で決まる($\mathbb{Z}(p^\infty)=\bigcup_nC_n$、$C_n=\langle c_n\rangle$)ので、$\Phi$ は全単射である。
$\Phi(\varphi)=(a_n)$、$\Phi(\psi)=(b_n)$ なら $(\varphi+\psi)(c_n)=(a_n+b_n)c_n$、$(\varphi\circ\psi)(c_n)=\varphi(b_nc_n)=b_na_nc_n$ であり、恒等写像は $(1)_n$ に対応するので、$\Phi$ は環の同型である。自己同型群は $\operatorname{End}$ の単元群なので $\mathbb{Z}_p^\times$ と同型である。$\square$
とくに $\operatorname{End}(\mathbb{Z}(p^\infty))$ は可換環で、整域である($\mathbb{Z}_p$ は整域)。$\mathbb{Z}$ の元 $m$ は $m$ 倍写像に対応し、$p$ と互いに素な整数 $m$ の $m$ 倍写像は自己同型である。
可除群 の記事の定理「可除群の構造定理」により、すべての可除群 $D$ は
$$
D\cong\mathbb{Q}^{(I)}\oplus\bigoplus_p\mathbb{Z}(p^\infty)^{(I_p)}
$$
と書け、$I$ と $I_p$ の濃度で同型類が決まる。$D$ が可算なら各濃度は $0,1,2,\dots$ または可算無限であり、可算な可除群は、$\mathbb{Q}$ の個数と、素数ごとの $\mathbb{Z}(p^\infty)$ の個数という可算個の不変量で完全に分類される。このように Prüfer 群は、$\mathbb{Q}$ とともに可除群の分解の部品である。$\mathbb{Z}(p^\infty)$ は、$C_1\cong\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ を含む最小の可除群、すなわち $\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ の $\mathbb{Z}$ 加群としての入射包でもあり(入射対象 の記事の例「入射包の例」の 2)、同様に $\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z}$ の入射包も $\mathbb{Z}(p^\infty)$ である(Lam99 §3)。可除群は $\mathbb{Z}$ 加群として入射的であることと同値である(可除群 の記事の定理「可除群と入射性」)。
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