Pappusの六角形定理(Pappus's hexagon theorem)とは、異なる 2 本の直線 $\ell$、$m$ の上にそれぞれ相異なる 3 点 $A,B,C$ と $A',B',C'$ を(2 直線の交点と異なるように)とるとき、直線 $AB'$ と $A'B$、$AC'$ と $A'C$、$BC'$ と $B'C$ の交点 $X,Y,Z$ が、どれも存在すれば一直線上にあるという定理である。回転体についての Pappus–Guldinus の定理とは別の定理である。高校数学では Menelaus の定理を 5 回使って示せる。大学数学では、3 本ずつの直線の式の積の組み合わせが 2 直線の式と 1 次式の積になることとして理解され、円を 2 本の直線に退化させた Pascal の定理にあたる。Hilbert は、この定理が座標の掛け算の可換性に対応することを示した。
前提知識: Menelausの定理(高校数学), 直線の方程式と点と直線の距離, 位置ベクトルと内分点, 剰余の定理と因数定理
この記事の Pappus の定理は、2 本の直線の上に 3 点ずつとって作る 3 つの交点についての射影幾何の定理である。回転体の体積と重心についての Pappus–Guldinusの定理 とは別の定理である(どちらも古代ギリシャの Pappus の名を冠する)。
直線 $\ell$ の上に 3 点 $A,B,C$ を、別の直線 $m$ の上に 3 点 $A',B',C'$ をとる。「たすきがけ」に結んだ 2 本ずつの直線、$AB'$ と $A'B$、$AC'$ と $A'C$、$BC'$ と $B'C$ の交点をそれぞれ $X,Y,Z$ とすると、交点があるとき、$X,Y,Z$ は一直線上に並ぶ。これが Pappusの六角形定理 である。Pappus は 4 世紀ごろのアレクサンドリアの数学者で、その定理の 1 つは近代の射影幾何の土台として引かれる(OR99)。まず座標で確かめる。
$\ell$ を $x$ 軸、$m$ を $y$ 軸とし、$A=(1,0)$、$B=(2,0)$、$C=(3,0)$、$A'=(0,4)$、$B'=(0,3)$、$C'=(0,1)$ をとる。$x$ 軸の点 $(a,0)$ と $y$ 軸の点 $(0,b)$ を通る直線は $\dfrac xa+\dfrac yb=1$ である($a,b\ne0$)。
(1) 直線 $AB'$ は $x+\dfrac y3=1$、つまり $3x+y=3$、直線 $A'B$ は $\dfrac x2+\dfrac y4=1$、つまり $2x+y=4$ である。引くと $x=-1$、$y=6$ で、$X=(-1,6)$ である。
(2) 直線 $AC'$ は $x+y=1$、直線 $A'C$ は $\dfrac x3+\dfrac y4=1$、つまり $4x+3y=12$ である。$y=1-x$ を代入すると $4x+3-3x=12$ で $x=9$、$y=-8$、$Y=(9,-8)$ である。
(3) 直線 $BC'$ は $\dfrac x2+y=1$、つまり $x+2y=2$、直線 $B'C$ は $x+y=3$ である。引くと $y=-1$、$x=4$ で、$Z=(4,-1)$ である。
(4) 直線 $XZ$ の傾きは $\dfrac{-1-6}{4-(-1)}=-\dfrac75$ で、方程式は $7x+5y=23$ である($X$ で $-7+30=23$、$Z$ で $28-5=23$)。$Y$ で $63-40=23$ となるので、$Y$ もこの直線の上にある。
x 軸(ℓ)の上の A, B, C と y 軸(m)の上の A′, B′, C′ をたすきがけに結ぶ。AB′ と A′B(青)の交点 X、AC′ と A′C(赤)の交点 Y、BC′ と B′C(紫)の交点 Z は、直線 7x + 5y = 23(緑)の上に並ぶ
2 本の直線が平行でもよい。
$\ell$ を $x$ 軸、$m$ を直線 $y=2$ とし、$A=(0,0)$、$B=(1,0)$、$C=(3,0)$、$A'=(3,2)$、$B'=(4,2)$、$C'=(1,2)$ をとる。
(1) 直線 $AB'$ は $y=\dfrac12x$、直線 $A'B$ は $(1,0)$ と $(3,2)$ を通るので $y=x-1$ である。$\dfrac12x=x-1$ より $x=2$ で、$X=(2,1)$ である。
(2) 直線 $AC'$ は $y=2x$、直線 $A'C$ は $x=3$ なので、$Y=(3,6)$ である。
(3) 直線 $BC'$ は $x=1$、直線 $B'C$ は $(3,0)$ と $(4,2)$ を通るので $y=2x-6$ で、$Z=(1,-4)$ である。
(4) 直線 $XY$ の傾きは $\dfrac{6-1}{3-2}=5$、直線 $XZ$ の傾きは $\dfrac{-4-1}{1-2}=5$ で等しいので、3 点は直線 $y=5x-9$ の上にある。
この記事で答える問いは次の 4 つである。
| 高校の計算・定理 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 切片の形の直線 $\dfrac xa+\dfrac yb=1$ | たすきがけの直線 | — |
| Menelaus の定理 | 5 回使って掛けたり割ったりする | — |
| 平行線と相似 $OA\cdot OA'=OB\cdot OB'$ | 平行な形の Pappus の定理 | 座標の掛け算の可換性(Hilbert) |
| 3 本の直線の方程式の積 | $L_1+\lambda L_2=(\text{2 直線})\times(\text{直線})$ | 退化した 2 次曲線の Pascal の定理 |
| 平行な 2 直線 | 交点がない場合 | 射影平面の無限遠点 |
異なる 2 本の直線 $\ell$、$m$ をとり、$\ell$ の上に相異なる 3 点 $A,B,C$ を、$m$ の上に相異なる 3 点 $A',B',C'$ をとる。どの点も $\ell$ と $m$ の交点(あれば)とは異なるとする。6 点を $A,B',C,A',B,C'$ の順に結んだ六角形 $AB'CA'BC'$ の辺は $AB'$、$B'C$、$CA'$、$A'B$、$BC'$、$C'A$ で、向かい合う辺(対辺)は $AB'$ と $A'B$、$B'C$ と $BC'$、$CA'$ と $C'A$ の 3 組である。
たすきがけの直線の組は、ちょうどこの六角形の対辺の組である。どの点も $\ell$ と $m$ の交点でないので、$A$ は $m$ の上になく、$A'$ は $\ell$ の上にない(他の点も同じ)。
def-pap-hexagon の六角形で、3 組の対辺の直線がそれぞれ交わるとし、交点を
$$
X=AB'\cap A'B,\qquad Y=AC'\cap A'C,\qquad Z=BC'\cap B'C
$$
とする。このとき $X,Y,Z$ は一直線上にある。
この直線を Pappus の直線 という。ex-pap-start では $7x+5y=23$、ex-pap-parallel-lines では $y=5x-9$ である。Pascalの定理 は、円に内接する六角形の対辺の交点が一直線上にあるという定理で、この記事の定理は、円の代わりに 2 本の直線 $\ell$、$m$ に頂点を置いたものにあたる(rem-pap-hilbert)。
異なる 2 点 $X,Y$ と直線 $XY$ の上の点 $Z\ne Y$ について、$\overrightarrow{XZ}=t\,\overrightarrow{ZY}$ となる実数 $t$ を $\dfrac{XZ}{ZY}$ と書き、符号つきの比 という。$Z$ が線分 $XY$ の内部にあれば正、外部にあれば負である。
三角形 $UVW$ について、点 $P,Q,R$ がそれぞれ直線 $UV$、$VW$、$WU$ の上にあり、どれも三角形の頂点ではないとする。$P,Q,R$ が一直線上にあることと
$$
\frac{UP}{PV}\cdot\frac{VQ}{QW}\cdot\frac{WR}{RU}=-1
$$
は同値である。
証明は Menelausの定理(高校数学) の定理「符号つきの比による Menelaus の定理」と「符号つきの比による Menelaus の定理の逆」にある(あちらでは上線を付けて $\dfrac{\overline{XZ}}{\overline{ZY}}$ と書く)。あちらの定理は横断線(どの頂点も通らず、どの辺にも平行でない直線)について述べているが、ここでの仮定のもとで $P,Q,R$ を通る直線は横断線である。実際、この直線が頂点 $U$ を通れば、$U$ と $P$ を通るので直線 $UV$ に一致し、$Q$ が直線 $UV$ と $VW$ の共有点 $V$ になって仮定に反する($V$、$W$ でも同じ)。また、この直線は直線 $UV$ と $P$ で交わり、$UV$ そのものではないので $UV$ に平行でない($VW$、$WU$ でも同じ)。
1 つおきの 3 辺 $AB'$、$CA'$、$BC'$ の直線で三角形を作り、その三角形に、残りの 3 辺の直線と、$\ell$、$m$ の合わせて 5 本の直線で Menelaus の定理を使う。
方針:直線 $AB'$、$CA'$、$BC'$ が作る三角形 $UVW$ に、直線 $A'B$、$B'C$、$C'A$ で Menelaus の定理を使った 3 つの式を掛け、直線 $\ell$、$m$ で使った 2 つの式で割る。6 つの頂点についての比がすべて消え、$X,Y,Z$ についての比だけが残る。ここでは、3 本の直線 $AB'$、$CA'$、$BC'$ がどの 2 本も交わり、1 点で交わらない場合(一般の場合)を示す。残りの場合も含む証明は prf-pap-cubic で与える。
段 1(三角形 $UVW$)。$U=AB'\cap CA'$、$V=CA'\cap BC'$、$W=BC'\cap AB'$ とする。直線 $UV$ は $CA'$、直線 $VW$ は $BC'$、直線 $WU$ は $AB'$ である。
段 2(頂点でないこと)。段 3・段 4 で使う 9 個の点 $A,B,C,A',B',C',X,Y,Z$ が三角形の頂点でないことを確かめる。例として $A'$ を見る。$A'$ は直線 $CA'$($UV$)の上にある。$A'=U$ なら $A'$ は直線 $AB'$ の上にあり、直線 $AB'$ と $m$ の共有点は $B'$ だけ($A$ は $m$ の上にない)なので $A'=B'$ となって矛盾する。$A'=V$ なら $A'$ は直線 $BC'$ の上にあり、同じ理由で $A'=C'$ となって矛盾する。$X$ を見る。$X$ は直線 $AB'$($WU$)の上にある。$X=U$ なら $X$ は直線 $CA'$ と $A'B$ の両方の上にあり、この 2 直線は $A'$ で交わる異なる直線($B\ne C$)なので $X=A'$ となり、$A'$ が直線 $AB'$ の上にあることになって上と同じ矛盾が起きる。$X=W$ なら $X$ は直線 $BC'$ と $A'B$ の両方の上にあり $X=B$ となって、$B$ が直線 $AB'$ の上、つまり $B=A$ となり矛盾する。残りの点も、同じく「$\ell$ と $m$ の上の点は 3 点ずつ相異なる」「$\ell$ の点は $m$ の上にない(逆も)」ことから確かめられる。
段 3(掛ける 3 つの式)。thm-pap-menelaus を 3 本の直線に使う。直線 $A'B$ は $UV$ の上の $A'$、$VW$ の上の $B$、$WU$ の上の $X$ を通り、直線 $B'C$ は $UV$ の上の $C$、$VW$ の上の $Z$、$WU$ の上の $B'$ を通り、直線 $C'A$ は $UV$ の上の $Y$、$VW$ の上の $C'$、$WU$ の上の $A$ を通る。よって
$$
\frac{UA'}{A'V}\cdot\frac{VB}{BW}\cdot\frac{WX}{XU}=-1,\qquad
\frac{UC}{CV}\cdot\frac{VZ}{ZW}\cdot\frac{WB'}{B'U}=-1,\qquad
\frac{UY}{YV}\cdot\frac{VC'}{C'W}\cdot\frac{WA}{AU}=-1
$$
である。
段 4(割る 2 つの式)。直線 $\ell$ は $UV$ の上の $C$、$VW$ の上の $B$、$WU$ の上の $A$ を通り、直線 $m$ は $UV$ の上の $A'$、$VW$ の上の $C'$、$WU$ の上の $B'$ を通る。よって
$$
\frac{UC}{CV}\cdot\frac{VB}{BW}\cdot\frac{WA}{AU}=-1,\qquad
\frac{UA'}{A'V}\cdot\frac{VC'}{C'W}\cdot\frac{WB'}{B'U}=-1
$$
である。
段 5(まとめる)。段 3 の 3 つの式の積を、段 4 の 2 つの式の積で割る。段 4 に現れる 6 つの比 $\dfrac{UC}{CV}$、$\dfrac{VB}{BW}$、$\dfrac{WA}{AU}$、$\dfrac{UA'}{A'V}$、$\dfrac{VC'}{C'W}$、$\dfrac{WB'}{B'U}$ は、段 3 にもちょうど 1 回ずつ現れるので約分される。残るのは
$$
\frac{UY}{YV}\cdot\frac{VZ}{ZW}\cdot\frac{WX}{XU}=\frac{(-1)^3}{(-1)^2}=-1
$$
である。$Y,Z,X$ はそれぞれ直線 $UV$、$VW$、$WU$ の上にあって頂点ではない(段 2)ので、thm-pap-menelaus の逆向きにより $X,Y,Z$ は一直線上にある。$\square$
ex-pap-start で、直線 $AB'$:$3x+y=3$、$CA'$:$4x+3y=12$、$BC'$:$x+2y=2$ から、$U=\left(-\dfrac35,\dfrac{24}5\right)$、$V=\left(\dfrac{18}5,-\dfrac45\right)$、$W=\left(\dfrac45,\dfrac35\right)$ である。
段 3 の比は、直線 $A'B$ で $\dfrac16$、$\dfrac43$、$-\dfrac92$(積 $-1$)、直線 $B'C$ で $6$、$-\dfrac18$、$\dfrac43$(積 $-1$)、直線 $C'A$ で $-\dfrac{16}9$、$-\dfrac92$、$-\dfrac18$(積 $-1$)である。段 4 の比は、$\ell$ で $6$、$\dfrac43$、$-\dfrac18$(積 $-1$)、$m$ で $\dfrac16$、$-\dfrac92$、$\dfrac43$(積 $-1$)である。残る比は $\dfrac{UY}{YV}=-\dfrac{16}9$、$\dfrac{VZ}{ZW}=-\dfrac18$、$\dfrac{WX}{XU}=-\dfrac92$ で、積は $-\dfrac{16\cdot1\cdot9}{9\cdot8\cdot2}=-1$ である。
たとえば $\dfrac{UA'}{A'V}$ は、$\overrightarrow{UA'}=\left(\dfrac35,-\dfrac45\right)$、$\overrightarrow{A'V}=\left(\dfrac{18}5,-\dfrac{24}5\right)=6\,\overrightarrow{UA'}$ から $\dfrac16$ と求まる。
thm-pap-main は交点 $X,Y,Z$ があることを仮定した。交点の代わりに平行になる場合には、次の形が成り立つ。
2 本の直線 $\ell$、$m$ が点 $O$ で交わるとし、$\ell$ の上に $A,B,C$、$m$ の上に $A',B',C'$ を、どれも $O$ と異なるようにとる。$AB'\parallel A'B$ かつ $AC'\parallel A'C$ ならば、$BC'\parallel B'C$ である。
方針:$O$ を原点にとり、$\ell$ と $m$ の向きのベクトルで 6 点を表す。「2 本の直線が平行」を符号付き面積 $D$ が $0$ になることで表すと、「$OA$ と $OA'$ の積が $OB$ と $OB'$ の積に等しい」という形になる。
段 1(表し方)。$\ell$、$m$ の向きのベクトルを $\boldsymbol u$、$\boldsymbol v$ とする。2 直線は平行でないので、$\boldsymbol u=(u_1,u_2)$、$\boldsymbol v=(v_1,v_2)$ について $D(\boldsymbol u,\boldsymbol v):=u_1v_2-u_2v_1\ne0$ である。位置ベクトルで $A=a\boldsymbol u$、$B=b\boldsymbol u$、$C=c\boldsymbol u$、$A'=a'\boldsymbol v$、$B'=b'\boldsymbol v$、$C'=c'\boldsymbol v$ と書ける(位置ベクトルと内分点)。どの点も $O$ でないので、6 つの数はどれも $0$ でない。
段 2(平行の条件)。2 つのベクトルが平行であることは、$D$ が $0$ であることと同じである(1次変換と行列式:面積の拡大率)。$D$ は成分の式なので、$D(\boldsymbol u,\boldsymbol u)=0$、$D(\boldsymbol v,\boldsymbol u)=-D(\boldsymbol u,\boldsymbol v)$、$D(s\boldsymbol p+t\boldsymbol q,\boldsymbol r)=sD(\boldsymbol p,\boldsymbol r)+tD(\boldsymbol q,\boldsymbol r)$(右側の変数でも同じ)が成り立つ。これを使うと
$$
D(\overrightarrow{AB'},\overrightarrow{A'B})=D(b'\boldsymbol v-a\boldsymbol u,\ b\boldsymbol u-a'\boldsymbol v)=b'b\,D(\boldsymbol v,\boldsymbol u)+aa'\,D(\boldsymbol u,\boldsymbol v)=(aa'-bb')\,D(\boldsymbol u,\boldsymbol v)
$$
である($D(\boldsymbol v,\boldsymbol v)=D(\boldsymbol u,\boldsymbol u)=0$ の項は消えた)。$D(\boldsymbol u,\boldsymbol v)\ne0$ なので、$AB'\parallel A'B$ は $aa'=bb'$ と同値である。
段 3(残りの 2 組)。段 2 の $b,b'$ を $c,c'$ に替えると、$AC'\parallel A'C$ は $aa'=cc'$ と同値である。$a,a'$ を $b,b'$ に、$b,b'$ を $c,c'$ に替えると、$BC'\parallel B'C$ は $bb'=cc'$ と同値である。
段 4(結論)。仮定から $aa'=bb'$ かつ $aa'=cc'$ なので $bb'=cc'$ であり、段 3 により $BC'\parallel B'C$ である。$\square$
$\boldsymbol u$、$\boldsymbol v$ を長さ $1$ にとり、6 点が $O$ から見て同じ向きにある場合には、$aa'=bb'$ は $OA\cdot OA'=OB\cdot OB'$、つまり $OA:OB=OB':OA'$ である。これは、$AB'\parallel A'B$ のとき三角形 $OAB'$ と $OBA'$ が相似になることを式にしたものである(平行線と線分の比)。
$\ell$ を $x$ 軸、$m$ を $y$ 軸とし、$A=(1,0)$、$B=(2,0)$、$C=(3,0)$、$A'=(0,6)$、$B'=(0,3)$、$C'=(0,2)$ をとる。$aa'=1\cdot6=6$、$bb'=2\cdot3=6$、$cc'=3\cdot2=6$ である。
(1) $\overrightarrow{AB'}=(-1,3)$、$\overrightarrow{A'B}=(2,-6)=-2\,\overrightarrow{AB'}$ なので $AB'\parallel A'B$ である。
(2) $\overrightarrow{AC'}=(-1,2)$、$\overrightarrow{A'C}=(3,-6)=-3\,\overrightarrow{AC'}$ なので $AC'\parallel A'C$ である。
(3) $\overrightarrow{BC'}=(-2,2)$、$\overrightarrow{B'C}=(3,-3)=-\dfrac32\,\overrightarrow{BC'}$ なので $BC'\parallel B'C$ である。3 組とも平行になった(図 2)。
x 軸の上の A(1, 0), B(2, 0), C(3, 0) と y 軸の上の A′(0, 6), B′(0, 3), C′(0, 2)。AB′ と A′B(青)、AC′ と A′C(赤)が平行なので、BC′ と B′C(紫の破線)も平行になる
平行な 2 直線は無限の遠くの 1 点(無限遠点)で交わると考えると、prop-pap-parallel は「$X$ と $Y$ が無限遠点のとき、$Z$ も無限遠点で、$X,Y,Z$ は無限遠直線の上に並ぶ」と読める。Desarguesの定理 の記事で見たとおり、点を 3 つの数の組 $(x,y,1)$ で表す射影平面では、この読み方が正確になる。
Pascalの定理 の記事と同じく、1 つおきの 3 辺の直線の式を掛けた 3 次式を使う。直線 $PQ$ を表す 1 次式を $\ell_{PQ}(x,y)$($\ell_{PQ}=0$ が直線 $PQ$)と書き、
$$
L_1:=\ell_{AB'}\,\ell_{CA'}\,\ell_{BC'},\qquad L_2:=\ell_{B'C}\,\ell_{A'B}\,\ell_{C'A}
$$
とおく。6 点はどれも $L_1$ の 1 本と $L_2$ の 1 本の上にある(たとえば $A$ は $AB'$ と $C'A$ の上)ので、$L_1$ と $L_2$ はどちらも 6 点で $0$ になる。$X=AB'\cap A'B$ では $\ell_{AB'}(X)=\ell_{A'B}(X)=0$ なので $L_1(X)=L_2(X)=0$ であり、$Y$($A'C$ と $C'A$ の上)、$Z$($BC'$ と $B'C$ の上)でも同じである。
ex-pap-start では
$$
L_1=(3x+y-3)(4x+3y-12)(x+2y-2),\qquad L_2=(x+y-3)(2x+y-4)(x+y-1)
$$
である。展開すると
$$
L_1=12x^3+37x^2y+29xy^2+6y^3-72x^2-143xy-48y^2+132x+114y-72,
$$
$$
L_2=2x^3+5x^2y+4xy^2+y^3-12x^2-20xy-8y^2+22x+19y-12
$$
で、$L_1-6L_2$ を計算すると、$x^3$、$y^3$、$x^2$、$y^2$、$x$、$y$ の項と定数項は打ち消し合い
$$
L_1-6L_2=7x^2y+5xy^2-23xy=xy\,(7x+5y-23)
$$
となる。$xy=0$ は 2 本の直線 $\ell$($x$ 軸)と $m$($y$ 軸)、$7x+5y-23=0$ は Pappus の直線である。$\lambda=-6$ は、$\ell$ の上($y=0$)で $L_1=12(x-1)(x-2)(x-3)$、$L_2=2(x-1)(x-2)(x-3)$ となることから決まる。$m$ の上($x=0$)でも $L_1=6(y-1)(y-3)(y-4)$、$L_2=(y-1)(y-3)(y-4)$ で、$L_1-6L_2$ は $0$ になる。
この恒等式がいつも作れることを示すと、一般の場合に限らない証明になる。
方針:$\ell$ の上で $0$ になるように $\lambda$ を選んで $G:=L_1+\lambda L_2$ を作る。$G$ は $\ell$ の式で割り切れ、商は $m$ の上でも $0$ になるので $m$ の式でも割り切れる。最後に残る 1 次式が Pappus の直線である。この証明は、$\ell$ と $m$ が平行な場合も含め、交点 $X,Y,Z$ があるときにいつも使える。
段 1(直線の上で $0$ になる多項式は割り切れる)。直線 $h(x,y):=\alpha x+\beta y+\gamma=0$($\beta\ne0$ とする。$\beta=0$ なら $x$ と $y$ の役割を入れ替える)の上のすべての点で $0$ になる多項式 $G(x,y)$ は、$G=h\,G_1$($G_1$ は次数が $G$ より 1 以上低い多項式)と書ける。実際、$y=\dfrac{h-\alpha x-\gamma}\beta$ を $G$ に代入して $x$ と $h$ の多項式として整理すると $G=g_0(x)+h\,G_1$ の形になる($h$ の 1 次以上の項をまとめて $h\,G_1$ とした)。直線の上では $h=0$ で、そこでは $x$ は任意の実数をとるので、$g_0(x)=0$ がすべての $x$ で成り立ち、多項式 $g_0$ は $0$ である。
段 2($\lambda$ を選ぶ)。$\ell$ の上の点を $P_0+t\boldsymbol w$ と表す。$L_1(P_0+t\boldsymbol w)$ と $L_2(P_0+t\boldsymbol w)$ は $t$ の 3 次以下の多項式 $g_1(t)$、$g_2(t)$ で、どちらも $A,B,C$ にあたる相異なる 3 つの値 $t_A,t_B,t_C$ で $0$ になる。因数定理により $g_k(t)=c_k(t-t_A)(t-t_B)(t-t_C)$($c_k$ は定数)である(剰余の定理と因数定理)。$L_2$ の 3 本の直線 $B'C$、$A'B$、$C'A$ はどれも $m$ の点を通るので $\ell$ と異なり、$\ell$ と 1 点以下でしか交わらない。よって $g_2$ が $0$ になる $t$ は 3 個以下で、$c_2\ne0$ である。$\lambda:=-\dfrac{c_1}{c_2}$ とおくと、$G:=L_1+\lambda L_2$ は $\ell$ の上のすべての点で $0$ になる。
段 3($\ell$ と $m$ で割る)。段 1 により $G=h_\ell\,G_1$ と書ける($h_\ell=0$ は $\ell$ の式、$G_1$ は 2 次以下)。$A'$ は $L_1$ の直線 $CA'$ と $L_2$ の直線 $A'B$ の上にあるので $G(A')=0$ で、$A'$ は $\ell$ の上にないので $h_\ell(A')\ne0$、したがって $G_1(A')=0$ である。同じく $G_1(B')=G_1(C')=0$ である。$m$ の上で $G_1$ は 2 次以下の多項式になり、相異なる 3 つの値で $0$ になるので、恒等的に $0$ である($0$ でない 2 次以下の多項式の根は 2 個以下)。段 1 により $G_1=h_m H$ と書ける($h_m=0$ は $m$ の式、$H$ は 1 次以下)。よって $G=h_\ell\,h_m\,H$ である。
段 4($H$ は $0$ でない)。$H=0$ とすると $G=0$、つまり $L_1=-\lambda L_2$ である。$\lambda=0$ なら $L_1=0$ となるが、$0$ でない 1 次式の積は $0$ でないので、$\lambda\ne0$ であり、$L_1=0$ の図形と $L_2=0$ の図形は一致する。すると直線 $AB'$ は 3 本の直線 $B'C$、$A'B$、$C'A$ の和に含まれる。直線 $AB'$ はこの 3 本のどれとも異なる($AB'=B'C$ なら $A,C$ を通るので $\ell$ に一致し $B'$ が $\ell$ の上に、$AB'=A'B$ なら $A,B$ を通るので $\ell$ に一致し、$AB'=C'A$ なら $B',C'$ を通るので $m$ に一致し $A$ が $m$ の上にあることになる)。異なる直線とは 1 点以下でしか交わらないので、$AB'$ の点のうち 3 個以下しか含まれず、矛盾する。よって $H\ne0$ である。
段 5($X,Y,Z$ は直線 $H=0$ の上)。$G(X)=0$ である。$X$ は $\ell$ の上にない($\ell$ の上にあれば、直線 $AB'$ と $\ell$ の共有点なので $X=A$、直線 $A'B$ と $\ell$ の共有点なので $X=B$ となり、$A\ne B$ に反する)。同じく $m$ の上にもない($X=B'$ かつ $X=A'$ になる)。よって $h_\ell(X)h_m(X)\ne0$ で、$H(X)=0$ である。$Y,Z$ も同じである。$H$ が $0$ でない定数なら $H(X)=0$ にならないので、$H$ はちょうど 1 次の式で、$H=0$ は直線である。$X,Y,Z$ はこの直線の上にある。$\square$
ex-pap-identity では $\lambda=-6$、$H=7x+5y-23$ である。$G=h_\ell h_mH$ の $h_\ell h_m=0$ は 2 本の直線を合わせた図形で、これも 2 次式で表される。円の式 $x^2+y^2-r^2$ を 2 次式 $h_\ell h_m$ に替えると、Pascalの定理 の記事の 3 次式による証明と同じ筋道の証明になる(円の式で割る段が、$\ell$ と $m$ の式で順に割る段に替わる)。Pappus の定理は、2 次曲線が 2 本の直線に退化した場合の Pascal の定理である。
ここから先は大学で学ぶ内容の紹介である。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 6 点が 2 本の直線の上に 3 点ずつある | $X,Y,Z$ が一直線上にある | ex-pap-off |
| 交点をとる組が六角形の対辺である | 3 つの交点が一直線上にある | ex-pap-pairing |
| 対辺の直線が平行でない | 交点 $X$ がある | ex-pap-one-parallel |
ex-pap-start の $C'=(0,1)$ を、$y$ 軸の上にない $C''=(-1,2)$ に替える。$C''$ は直線 $AC'$:$x+y=1$ の上にあるので、直線 $AC''$ は $AC'$ と同じで、$Y=(9,-8)$ は変わらない。$X=(-1,6)$ も変わらない。直線 $BC''$ は $(2,0)$ と $(-1,2)$ を通るので $2x+3y=4$ で、直線 $B'C$:$x+y=3$ との交点は、$2x+3(3-x)=4$ より $x=5$、$y=-2$ で $Z''=(5,-2)$ である。$7\cdot5+5\cdot(-2)=25\ne23$ なので、$Z''$ は直線 $XY$ の上にない。
ex-pap-start で、対辺ではなく 1 つおきの辺どうし、$AB'$ と $CA'$、$CA'$ と $BC'$、$BC'$ と $AB'$ の交点をとると、ex-pap-menelaus の $U=\left(-\dfrac35,\dfrac{24}5\right)$、$V=\left(\dfrac{18}5,-\dfrac45\right)$、$W=\left(\dfrac45,\dfrac35\right)$ である。$\overrightarrow{UV}=\left(\dfrac{21}5,-\dfrac{28}5\right)$、$\overrightarrow{UW}=\left(\dfrac75,-\dfrac{21}5\right)$ で、符号付き面積は $\dfrac{21}5\cdot\left(-\dfrac{21}5\right)-\left(-\dfrac{28}5\right)\cdot\dfrac75=\dfrac{-441+196}{25}=-\dfrac{49}5\ne0$ なので、3 点は一直線上にない。これらは証明で使った三角形の頂点である。
$\ell$ を $x$ 軸、$m$ を $y$ 軸とし、$A=(1,0)$、$B=(2,0)$、$C=(3,0)$、$A'=(0,6)$、$B'=(0,3)$、$C'=(0,1)$ をとる。$aa'=6=bb'$ なので、prf-pap-parallel の段 2 により $AB'\parallel A'B$ で、交点 $X$ はない。直線 $AC'$:$x+y=1$ と $A'C$:$2x+y=6$ の交点は $Y=(5,-4)$、直線 $BC'$:$x+2y=2$ と $B'C$:$x+y=3$ の交点は $Z=(4,-1)$ である。直線 $YZ$ の傾きは $\dfrac{-1+4}{4-5}=-3$ で、$AB'$($3x+y=3$)の傾き $-3$ と等しい。3 つ目の交点はないが、残りの 2 つの交点を結ぶ直線が、交わらなかった 2 辺と平行になっている。
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