2つの2次方程式の共通解(common roots of quadratic equations)とは、2 つの 2 次方程式 $ax^2+bx+c=0$、$a'x^2+b'x+c'=0$($a\ne0$、$a'\ne0$)を両方満たす数である。$P=ab'-a'b$、$Q=ac'-a'c$、$S=bc'-b'c$ とおくと、$x^2$ の項を消す式 $a'f-ag=-(Px+Q)$ と定数項を消す式 $c'f-cg=x(Qx+S)$ から、複素数の範囲で共通解をもつ条件は $Q^2=PS$ である。このとき $P\ne0$ なら共通解は $-Q/P$ ただ 1 つで(係数が実数なら実数)、$P=0$ なら 2 つの式は比例する。高校の引き算は多項式の互除法の 1 段目であり、$Q^2-PS$ は 2 次式どうしの終結式で、Sylvester 行列の行列式に等しい。
2 つの方程式の両方を満たす数を、2 つの方程式の 共通解 という。高校では、2 つの 2 次方程式が共通解をもつ条件を、「共通解を $\alpha$ とおき、2 つの式を引いて $\alpha^2$ を消す」方法で求める。まず例で確かめる。
$x^2-3x+2=0$ と $x^2+x-6=0$ の共通解を求める。
$x^2-3x+2=(x-1)(x-2)$ なので、1 つ目の解は $x=1,2$ である。$x^2+x-6=(x-2)(x+3)$ なので、2 つ目の解は $x=2,-3$ である。両方に入っているのは $x=2$ で、これが共通解である。グラフで見ると、2 つの放物線 $y=x^2-3x+2$ と $y=x^2+x-6$ が $x$ 軸上の同じ点 $(2,0)$ を通っている(図1)。
2 つの式を引くと $(x^2+x-6)-(x^2-3x+2)=4x-8$ で、$4x-8=0$ の解も $x=2$ である。
$y=x^2-3x+2$(青)と $y=x^2+x-6$(赤)。2 つの放物線は $x$ 軸上の点 $(2,0)$ で交わり、$x=2$ が共通解であることを見る図。
2 つの方程式 $x^2+kx+1=0$ と $x^2+x+k=0$ が共通解をもつような定数 $k$ と、そのときの共通解を求める。
段 1(引いて 2 次の項を消す)。共通解を $\alpha$ とすると、$\alpha^2+k\alpha+1=0$ と $\alpha^2+\alpha+k=0$ が両方成り立つ。1 つ目から 2 つ目を引くと
$$
(k-1)\alpha+(1-k)=0,\qquad\text{つまり}\qquad(k-1)(\alpha-1)=0
$$
である。
段 2($k\ne1$ のとき)。$k-1\ne0$ で割って $\alpha=1$ である。$\alpha=1$ を 1 つ目の式に代入すると $1+k+1=0$、つまり $k=-2$ である。確かめると、$k=-2$ のとき $x^2-2x+1=(x-1)^2$、$x^2+x-2=(x-1)(x+2)$ で、確かに $x=1$ が共通解である。
段 3($k=1$ のとき)。2 つの方程式はどちらも $x^2+x+1=0$ になり、同じ方程式である。解 $x=\dfrac{-1\pm\sqrt3\,i}2$ はどちらも共通解だが、実数ではない。
答:実数の共通解をもつのは $k=-2$ のときで、共通解は $x=1$。複素数の範囲まで含めると、$k=1$ のときも共通解 $x=\dfrac{-1\pm\sqrt3\,i}2$ をもつ。
段 1 の引き算には、グラフでの意味もある。$(x^2+kx+1)-(x^2+x+k)=(k-1)(x-1)$ なので、$k\ne1$ なら 2 つの放物線 $y=x^2+kx+1$ と $y=x^2+x+k$ は $x=1$ の点 $(1,\ k+2)$ でだけ交わる。共通解があることは、この交点が $x$ 軸上にあること、つまり $k+2=0$ と同じである(図2)。
$y=x^2+kx+1$(青)と $y=x^2+x+k$(赤)を $k=-2,0,1$ で描いた図。$k\ne1$ では 2 つの放物線は点 $(1,k+2)$ でだけ交わり、交点が $x$ 軸上にある $k=-2$ のときだけ実数の共通解をもつことを見る。
$x^2+1=0$ と $x^2+x+1=0$ で同じことをする。2 つ目から 1 つ目を引くと $x=0$ が出る。しかし $x=0$ を 1 つ目に代入すると $0^2+1=1\ne0$ で、$0$ は解ではない。この 2 つの方程式に共通解はない(1 つ目の解は $\pm i$、2 つ目の解は $\dfrac{-1\pm\sqrt3\,i}2$ である)。
引き算で得られるのは「共通解があるなら、それはこの値である」という候補だけで、元の式に代入して確かめる必要がある。
3 つの例から、次の問いが出てくる。
| 高校の計算 | この記事での見方 | 大学の言葉 | ボックス |
|---|---|---|---|
| 2 つの式を引いて $x^2$ を消す | 係数を掛けて最高次を消す | 多項式の割り算の 1 段目 | lem-crq-eliminations |
| 出た $x$ を代入して確かめる | 1 次式で割った余りが $0$ | 互除法、最大公約数 | prop-crq-euclid-step、prop-crq-gcd |
| 共通解をもつ $k$ の条件 | $(ac'-a'c)^2=(ab'-a'b)(bc'-b'c)$ | 終結式 | thm-crq-main、prop-crq-resultant |
| 連立して解く | 係数を並べた行列 | Sylvester 行列の行列式 | prop-crq-sylvester |
この記事では、2 つの 2 次式を次のように書く。
$$
f(x)=ax^2+bx+c,\qquad g(x)=a'x^2+b'x+c'\qquad(a\ne0,\ a'\ne0)
$$
係数 $a,b,c,a',b',c'$ は実数とする。
複素数 $\alpha$ が $f(\alpha)=0$ と $g(\alpha)=0$ を両方満たすとき、$\alpha$ を 2 つの方程式 $f(x)=0$、$g(x)=0$ の 共通解 という。共通解が実数のとき、実数の共通解 という。
2 次方程式は、判別式が負でも複素数の範囲では解をもつ(判別式(高校数学))。共通解も、まず複素数の範囲で考え、実数かどうかはあとで調べる(cor-crq-real)。
$\alpha$ が $f(x)=0$ と $g(x)=0$ の共通解ならば、どんな多項式 $u(x)$、$v(x)$ についても、$\alpha$ は $u(x)f(x)+v(x)g(x)=0$ の解である。
方針:$h(x)=u(x)f(x)+v(x)g(x)$ に $x=\alpha$ を代入し、$f(\alpha)=g(\alpha)=0$ を使う。
$h(\alpha)=u(\alpha)f(\alpha)+v(\alpha)g(\alpha)$ である。$f(\alpha)=0$、$g(\alpha)=0$ なので $h(\alpha)=u(\alpha)\cdot0+v(\alpha)\cdot0=0$ である。$\square$
逆は成り立たない。ex-crq-candidate の $x=0$ は、$g(x)-f(x)=x$ の解だが共通解ではない。組み合わせた式の解は、共通解の 候補 である。
高校の「引き算」は、$u,v$ を定数にとって $x^2$ の項を消すことである。$x^2$ の係数が $1$ でないときは、係数を掛けてそろえてから引く。定数項をそろえて消すこともできる。そのときに現れる 3 つの数に名前をつける。
$$
P=ab'-a'b,\qquad Q=ac'-a'c,\qquad S=bc'-b'c
$$
次の 2 つの恒等式が成り立つ。
方針:左辺を展開し、$x^2$、$x$、定数項ごとにまとめる。
段 1(1)。
$$
a'f(x)-ag(x)=(a'a-aa')x^2+(a'b-ab')x+(a'c-ac')=-(ab'-a'b)x-(ac'-a'c)
$$
で、$x^2$ の係数は $0$ になり、右辺は $-(Px+Q)$ である。
段 2(2)。
$$
c'f(x)-cg(x)=(ac'-a'c)x^2+(bc'-b'c)x+(cc'-cc')=Qx^2+Sx
$$
で、定数項は $0$ になり、右辺は $x(Qx+S)$ である。$\square$
$aS-bQ+cP=0$ が成り立つ。
方針:定義どおりに展開する。
$$
aS-bQ+cP=a(bc'-b'c)-b(ac'-a'c)+c(ab'-a'b)
$$
右辺を展開すると $abc'-ab'c-abc'+a'bc+ab'c-a'bc$ となる。$abc'$ と $-abc'$、$-ab'c$ と $ab'c$、$a'bc$ と $-a'bc$ がそれぞれ打ち消し合うので、和は $0$ である。$\square$
$f(x)=x^2-3x+2$、$g(x)=x^2+x-6$(ex-crq-factor)では、$a=1,b=-3,c=2$、$a'=1,b'=1,c'=-6$ である。
$$
P=1\cdot1-1\cdot(-3)=4,\qquad Q=1\cdot(-6)-1\cdot2=-8,\qquad S=(-3)\cdot(-6)-1\cdot2=16
$$
$f(x)=ax^2+bx+c$、$g(x)=a'x^2+b'x+c'$($a\ne0$、$a'\ne0$)とし、$P=ab'-a'b$、$Q=ac'-a'c$、$S=bc'-b'c$ とする。
方針:共通解 $\alpha$ があれば、lem-crq-eliminations の 2 つの式に $\alpha$ を代入して $\alpha$ を消去し、$Q^2=PS$ を導く(段 1、2)。逆に $Q^2=PS$ なら、$P\ne0$ か $P=0$ かで分けて共通解を実際に作る(段 3〜5)。
段 1(必要性:$\alpha\ne0$ の場合)。$\alpha$ を共通解とする。lem-crq-combination により $\alpha$ は lem-crq-eliminations の 2 つの式の左辺の解なので、右辺も $0$ になり
$$
P\alpha+Q=0,\qquad\alpha(Q\alpha+S)=0
$$
である。$\alpha\ne0$ なら 2 つ目から $Q\alpha+S=0$ である。すると
$$
Q^2=Q\cdot Q=Q\cdot(-P\alpha)=-P\,(Q\alpha)=-P\cdot(-S)=PS
$$
となる。2 つ目の等号は $Q=-P\alpha$、4 つ目の等号は $Q\alpha=-S$ を使った。
段 2(必要性:$\alpha=0$ の場合)。$f(0)=c$、$g(0)=c'$ なので $c=c'=0$ である。すると $Q=a\cdot0-a'\cdot0=0$、$S=b\cdot0-b'\cdot0=0$ で、$Q^2=0=PS$ である。これで 1 の「必要」が示された。
段 3(十分性:$P\ne0$、候補を作る)。$Q^2=PS$、$P\ne0$ とし、$\alpha=-\dfrac QP$ とおく。$P\alpha+Q=0$ であり、
$$
Q\alpha+S=-\frac{Q^2}P+S=\frac{PS-Q^2}P=0
$$
である。lem-crq-eliminations に $x=\alpha$ を代入すると、$F=f(\alpha)$、$G=g(\alpha)$ について
$$
a'F-aG=-(P\alpha+Q)=0,\qquad c'F-cG=\alpha(Q\alpha+S)=0
$$
が成り立つ。
段 4(十分性:$P\ne0$、候補が共通解であること)。段 3 の 1 つ目の式から $G=\dfrac{a'}aF$ である($a\ne0$)。これを 2 つ目の式に代入すると $c'F-\dfrac{ca'}aF=\dfrac{ac'-a'c}aF=\dfrac QaF=0$ である。
2 次方程式の解が実数かどうかは判別式で決まる。共通解についても、thm-crq-main の 2 と 3 から次が分かる。
thm-crq-main の記号で、$f(x)=0$ と $g(x)=0$ が実数の共通解をもつための必要十分条件は、$Q^2=PS$ であって、さらに次のどちらかが成り立つことである。
方針:共通解があることは $Q^2=PS$ と同じなので(thm-crq-main の 1)、その条件のもとで、共通解が実数になるかを $P$ で場合を分けて調べる。
段 1($P\ne0$)。共通解は $\alpha=-\dfrac QP$ だけである(thm-crq-main の 2)。$P,Q$ は実数の係数から引き算と掛け算で作った数なので実数であり、$\alpha$ も実数である。
段 2($P=0$)。共通解は $f(x)=0$ の解全体である(thm-crq-main の 3)。$f(x)=0$ が実数解をもつのは判別式 $b^2-4ac\ge0$ のときである。
段 3(まとめ)。段 1、2 を合わせると、実数の共通解があることは「$Q^2=PS$ かつ($P\ne0$、または $P=0$ かつ $b^2-4ac\ge0$)」と同じである。$\square$
ex-crq-param-main の 1 の $k=1$ は、$P=0$ で $b^2-4ac=1-4=-3<0$ なので、共通解はあるが実数ではない場合である。
高校の引き算は、多項式の割り算の最初の 1 段である。$g(x)$ を $f(x)$ で割ると、商は定数 $\dfrac{a'}a$ で、余りは
$$
g(x)-\frac{a'}af(x)=\frac1a\bigl(ag(x)-a'f(x)\bigr)=\frac{Px+Q}a
$$
である(最後の等号は lem-crq-eliminations の 1 の両辺に $-1$ を掛けたもの)。共通解の問題は、「2 つの多項式に共通の因数があるか」という問題に言いかえられる。
$f(x)=0$ と $g(x)=0$ が共通解をもつための必要十分条件は、1 次以上の多項式 $h(x)$(係数は複素数でよい)で、$f(x)$ と $g(x)$ の両方を割り切るものがあることである。
方針:共通解 $\alpha$ から共通の因数 $x-\alpha$ を作り、逆に共通の因数から、その解として共通解を作る。
段 1(必要性)。$\alpha$ を共通解とする。$f(\alpha)=0$ なので、因数定理(剰余の定理と因数定理)により $f(x)$ は $x-\alpha$ で割り切れる。$g(\alpha)=0$ なので $g(x)$ も $x-\alpha$ で割り切れる。$h(x)=x-\alpha$ とすればよい。
段 2(十分性)。$h(x)$ が $f(x)$ と $g(x)$ を割り切るとし、$f(x)=h(x)q(x)$、$g(x)=h(x)r(x)$ と書く。$f(x)$ は $0$ でない 2 次式なので、$q(x)$ も $0$ ではなく、$h(x)$ の次数と $q(x)$ の次数の和は $f(x)$ の次数 $2$ に等しい。$h(x)$ は 1 次以上なので、次数は 1 か 2 である。
2 つの整数の最大公約数を割り算のくり返しで求める方法を 整数の割り算と互除法 という。多項式でも同じように、「割って余りをとる」ことをくり返すと、共通の因数のうち次数が最大のもの(最大公約数)が求まる。2 次式どうしでは、互除法は次の 2 段で終わる。
$P\ne0$ とする。$f(x)$ を 1 次式 $Px+Q$ で割った余りは
$$
f\Bigl(-\frac QP\Bigr)=\frac{a\,(Q^2-PS)}{P^2}
$$
である。特に、この余りが $0$ になることと $Q^2=PS$ は同値である。
方針:1 次式で割った余りは、その 1 次式が $0$ になる $x$ での値である(剰余の定理)。値を計算し、lem-crq-identity で整理する。
段 1。$Px+Q=P\Bigl(x+\dfrac QP\Bigr)$ なので、$f(x)$ を $Px+Q$ で割った余りは定数で、剰余の定理(剰余の定理と因数定理)により $f\Bigl(-\dfrac QP\Bigr)$ に等しい。
段 2。
$$
f\Bigl(-\frac QP\Bigr)=a\frac{Q^2}{P^2}-b\frac QP+c=\frac{aQ^2-bPQ+cP^2}{P^2}
$$
である。
段 3。lem-crq-identity より $cP=bQ-aS$ なので、$cP^2=bPQ-aPS$ である。これを段 2 の分子に入れると $aQ^2-bPQ+bPQ-aPS=a(Q^2-PS)$ となる。$a\ne0$、$P\ne0$ なので、余りが $0$ であることと $Q^2=PS$ は同値である。$\square$
同じ「割り算で次数を下げる」考え方は、多項式の割り算の筆算(多項式の筆算と組立除法)や、未知の係数を決める計算(恒等式と未定係数法)でも使う。
thm-crq-main と、高校の解き方の各段の仮定を外すと、結論が崩れる。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 候補を元の式に代入して確かめる | 引き算で出た値は共通解 | ex-crq-candidate |
| 割る数 $k-1$ が $0$ でない | 引き算で出た式を $k-1$ で割ってよい | ex-crq-counter-divide |
| 共通解を複素数の範囲で考える | $Q^2=PS$ なら実数の共通解がある | ex-crq-counter-real |
| $a,a'$ の少なくとも一方が $0$ でない | $Q^2=PS$ なら共通解がある | ex-crq-counter-degree |
ex-crq-param の段 1 で、$(k-1)(\alpha-1)=0$ を場合分けせずに $k-1$ で割ると、$\alpha=1$、$k=-2$ だけが答になる。しかし $k=1$ のときも、2 つの方程式は同じ $x^2+x+1=0$ になり、共通解(実数ではない)をもつ。
満たさない性質:割る数 $k-1$ が $0$ でないこと。破る主張:「$(k-1)(\alpha-1)=0$ なら $\alpha=1$」。積が $0$ なら、どちらかの因数が $0$ である、として 2 つの場合を両方調べる必要がある。
$f(x)=x^2+x+1$、$g(x)=2x^2+2x+2$ では、$P=1\cdot2-2\cdot1=0$、$Q=1\cdot2-2\cdot1=0$ なので $Q^2=PS=0$ で、共通解をもつ。しかし $g=2f$ で、共通解は $f(x)=0$ の解 $\dfrac{-1\pm\sqrt3\,i}2$ であり、実数ではない($b^2-4ac=-3<0$)。
満たさない性質:cor-crq-real の追加の条件($P\ne0$、または $b^2-4ac\ge0$)。破る主張:「$Q^2=PS$ なら実数の共通解がある」。$Q^2=PS$ が保証するのは、複素数の範囲の共通解である。
$x^2$ の係数が $0$ の場合、つまり $f(x)=x-1$、$g(x)=x-2$($a=a'=0$、$b=b'=1$、$c=-1$、$c'=-2$)で $P,Q,S$ を同じ式で計算すると、$P=0\cdot1-0\cdot1=0$、$Q=0\cdot(-2)-0\cdot(-1)=0$ で、$Q^2=0=PS$ となる。しかし $x-1=0$ と $x-2=0$ に共通解はない。
満たさない性質:$a,a'$ の少なくとも一方が $0$ でないこと。破る主張:「$Q^2=PS$ なら共通解がある」。prf-thm-crq-main の段 5 で $a$ で割った所が使えなくなる。
条件 $Q^2=PS$ が意味を失うのは、このように $a=a'=0$(両方が 1 次以下)のときだけである。一方だけが $0$ のとき、たとえば $a=0$、$a'\ne0$ のときは、展開すると
$$
Q^2-PS=a'\bigl(a'c^2-bb'c+b^2c'\bigr)
$$
となる。$b\ne0$ なら、括弧の中は $b^2g\Bigl(-\dfrac cb\Bigr)$ に等しく、1 次式 $bx+c$ と $g(x)$ の終結式である(終結式は次の節、一般の次数の定義は 3次方程式と多項式の判別式)。$bx+c=0$ の解は $-\dfrac cb$ だけなので、$Q^2=PS$ は「$-\dfrac cb$ が $g(x)=0$ の解である」こと、つまり共通解をもつことと同じ意味をもつ($b=0$ なら $Q^2-PS=a'^2c^2$ で、これが $0$ になるのは $f$ が $0$ になってどの数も解になるときだけなので、やはり同じ意味をもつ)。$a'=0$、$a\ne0$ のときも、$f$ と $g$ を入れ替えると $P,Q,S$ の符号がそろって変わるだけで $Q^2-PS$ は変わらないので、同じである。thm-crq-main で $a\ne0$、$a'\ne0$ を仮定したのは、証明を 2 次式どうしに絞るためである。
thm-crq-main の $Q^2-PS$ は、大学数学では 終結式(終結式)と呼ばれる量の、2 次式どうしの場合である。$f,g$ を複素数の範囲で因数分解して
$$
f(x)=a(x-\alpha_1)(x-\alpha_2),\qquad g(x)=a'(x-\beta_1)(x-\beta_2)
$$
とする(重解のときは $\alpha_1=\alpha_2$ などとする)。このとき
$$
R(f,g)=a^2a'^2(\alpha_1-\beta_1)(\alpha_1-\beta_2)(\alpha_2-\beta_1)(\alpha_2-\beta_2)
$$
を $f$ と $g$ の終結式という。一般の次数の多項式の終結式の定義と性質は 3次方程式と多項式の判別式 の節「終結式」で扱う(そこでの定義で次数を $2$ と $2$ にしたものが $R(f,g)$ である)。$a,a'\ne0$ なので、$R(f,g)=0$ であることは「どれかの $\alpha_i$ とどれかの $\beta_j$ が等しい」こと、つまり共通解をもつことと同じである。
$R(f,g)=Q^2-PS$ である。
方針:$R(f,g)$ を「$f$ の解での $g$ の値の積」に書き直す。その値を lem-crq-eliminations で 1 次式に落とし、最後に解と係数の関係で $\alpha_1,\alpha_2$ を消す。
段 1。$g(\alpha_i)=a'(\alpha_i-\beta_1)(\alpha_i-\beta_2)$ なので、$g(\alpha_1)g(\alpha_2)=a'^2(\alpha_1-\beta_1)(\alpha_1-\beta_2)(\alpha_2-\beta_1)(\alpha_2-\beta_2)$ である。両辺に $a^2$ を掛けて $R(f,g)=a^2g(\alpha_1)g(\alpha_2)$ である。
段 2。lem-crq-eliminations の 1 から $ag(x)=a'f(x)+Px+Q$ である。$f(\alpha_i)=0$ なので $ag(\alpha_i)=P\alpha_i+Q$ である。よって
$$
R(f,g)=\bigl(ag(\alpha_1)\bigr)\bigl(ag(\alpha_2)\bigr)=(P\alpha_1+Q)(P\alpha_2+Q)=P^2\alpha_1\alpha_2+PQ(\alpha_1+\alpha_2)+Q^2
$$
である。
段 3。解と係数の関係(根と係数の関係と対称式)$\alpha_1+\alpha_2=-\dfrac ba$、$\alpha_1\alpha_2=\dfrac ca$ を代入すると
$$
R(f,g)=\frac{cP^2-bPQ}a+Q^2=\frac{P\,(cP-bQ)}a+Q^2
$$
である。lem-crq-identity より $cP-bQ=-aS$ なので、$R(f,g)=\dfrac{P\cdot(-aS)}a+Q^2=Q^2-PS$ である。$\square$
この命題から、thm-crq-main の 1 の別証明が得られる。共通解をもつことは $R(f,g)=0$ と同じで、それは $Q^2=PS$ と同じだからである。
段 2 で使った「$f$ の解では、$g$ の値は $g$ を $f$ で割った余りの値に等しい」ことから、一般に、$g$ を $f$ で割った余りを $r$ とすると、終結式 $R(f,g)$ は $R(f,r)$ の定数倍になる(Mil22 Proposition 4.35 (c))。解を求めなくても、互除法で次数を下げながら終結式を計算できる。これが prop-crq-euclid-step の余りに $Q^2-PS$ が現れた理由である。
終結式は、係数を並べた行列の行列式としても表せる。
$f,g$ の係数を次のように並べた 4 次の正方行列を、$f$ と $g$ の Sylvester 行列 という。
$$
M=\begin{pmatrix}a&b&c&0\\ 0&a&b&c\\a'&b'&c'&0\\ 0&a'&b'&c'\end{pmatrix}
$$
このとき $\det M=Q^2-PS$ である。
方針:高校の引き算と同じ操作(3 行目から 1 行目の定数倍を引く)を行列の行に行い、1 列目を $a$ 以外 $0$ にしてから、1 列目で展開する。行列式の性質は証明しない(行を定数倍すると行列式も同じ数倍になること:Bee15 Theorem DRCM、ある行の定数倍を別の行に足しても行列式は変わらないこと:同 Theorem DRCMA、列による展開:同 Theorem DEC、1 行目による展開は行列式の定義:同 Definition DM)。
段 1(3 行目と 4 行目の変形)。3 行目を $a$ 倍してから 1 行目の $-a'$ 倍を足すと、3 行目は $(aa'-a'a,\ ab'-a'b,\ ac'-a'c,\ 0)=(0,\ P,\ Q,\ 0)$ になる。同じように、4 行目を $a$ 倍してから 2 行目の $-a'$ 倍を足すと $(0,\ 0,\ P,\ Q)$ になる。行を $a$ 倍する操作を 2 回したので、行列式は $a^2$ 倍になる。
$$
a^2\det M=\det\begin{pmatrix}a&b&c&0\\ 0&a&b&c\\ 0&P&Q&0\\ 0&0&P&Q\end{pmatrix}
$$
段 2(1 列目で展開)。1 列目の $0$ でない成分は左上の $a$ だけなので
$$
a^2\det M=a\det\begin{pmatrix}a&b&c\\P&Q&0\\ 0&P&Q\end{pmatrix}
$$
である。
段 3(3 次の行列式)。1 行目で展開すると(Bee15 Definition DM)
$$
\det\begin{pmatrix}a&b&c\\P&Q&0\\ 0&P&Q\end{pmatrix}=a(Q\cdot Q-0\cdot P)-b(P\cdot Q-0\cdot0)+c(P\cdot P-Q\cdot0)=aQ^2-bPQ+cP^2
$$
である。
段 4(まとめ)。prf-prop-crq-euclid-step の段 3 と同じく、lem-crq-identity から $aQ^2-bPQ+cP^2=a(Q^2-PS)$ である。よって $a^2\det M=a\cdot a(Q^2-PS)$ で、$a\ne0$ で割って $\det M=Q^2-PS$ である。$\square$
$\alpha$ を共通解とし、縦ベクトル $\boldsymbol w=(\alpha^3,\ \alpha^2,\ \alpha,\ 1)$ を考える。$M$ の各行と $\boldsymbol w$ の積は
$$
a\alpha^3+b\alpha^2+c\alpha=\alpha f(\alpha),\quad a\alpha^2+b\alpha+c=f(\alpha),\quad\alpha g(\alpha),\quad g(\alpha)
$$
で、どれも $0$ である。つまり $M\boldsymbol w=\boldsymbol 0$ で、$\boldsymbol w$ は最後の成分が $1$ なので $\boldsymbol 0$ ではない。$0$ でないベクトルを $0$ に移す正方行列(Bee15 Definition NM の意味で正則でない行列)の行列式は $0$ である(同 Theorem SMZD。本記事では証明しない)。ex-crq-factor では $\alpha=2$、$\boldsymbol w=(8,4,2,1)$ で、4 つの行との積は $8-12+4=0$、$4-6+2=0$、$8+4-12=0$、$4+2-6=0$ である。$M$ の 4 つの行は、$f,\ xf,\ g,\ xg$ の係数を並べたものであり、lem-crq-combination の $u f+v g$($u,v$ は 1 次以下)をまとめて扱う道具になっている。
同じ見方で、2 次方程式の判別式も終結式として読める。$f(x)=0$ が重解をもつことは、$f$ とその導関数 $f'(x)=2ax+b$ が共通解をもつことと同じだからである。
$f(x)=ax^2+bx+c$ と $f'(x)=2ax+b$ の係数を同じように並べると、3 次の行列式は
$$
\det\begin{pmatrix}a&b&c\\ 2a&b&0\\ 0&2a&b\end{pmatrix}=a(b^2-0)-b(2ab-0)+c(4a^2-0)=-a(b^2-4ac)
$$
となり、判別式 $D=b^2-4ac$ の $-a$ 倍である。
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