Pell方程式

同義語:ペル方程式Pellの方程式Pell equationPell's equation

概要

Pell方程式(Pell equation)とは、平方数でない正の整数 $d$ について整数 $x,y$ に関する方程式 $x^2-dy^2=1$ のことである。たとえば $x^2-2y^2=1$ は $(3,2),(17,12),(99,70),\dots$ を解にもち、$x/y$ は $\sqrt2$ のよい近似になる。自明な解 $(\pm1,0)$ のほかに正の解がつねに存在し(Lagrange)、$x+y\sqrt d$ が最小の正の解(基本解)を $\varepsilon$ とすると、すべての解は $\pm\varepsilon^n$($n$ は整数)で与えられる。正の解は $\sqrt d$ の連分数の収束子として現れ、基本解は連分数の周期から求められる。基本解は $d=61$ で $(1766319049,226153980)$ となるなど、$d$ により大きく変わる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 整数, 平方数, 無理数, 連分数, 鳩の巣原理

定義

$x^2-2y^2=1$ を満たす正の整数の組 $(x,y)$ を探してみる。$y=1,2,3,\dots$ と順に試すと、$y=2$ で $2\cdot2^2+1=9=3^2$ となり $(3,2)$ が見つかる。次は $y=12$ で $2\cdot12^2+1=289=17^2$、その次は $y=70$ で $2\cdot70^2+1=9801=99^2$ である。こうして得られる分数 $\frac32=1.5$、$\frac{17}{12}=1.4166\ldots$、$\frac{99}{70}=1.414285\ldots$ は $\sqrt2=1.414213\ldots$ にどんどん近づいていく。$x^2-2y^2=1$ を $\bigl(\frac xy\bigr)^2=2+\frac1{y^2}$ と書き直すと、その理由が分かる。
係数 $2$ を別の数に変えると、解の大きさは予想がつかないほど変わる。$x^2-13y^2=1$ の最小の正の解は $(649,180)$ であり、$x^2-61y^2=1$ の最小の正の解は
$$ (x,y)=(1766319049,\ 226153980) $$
と、$x$ が 10 桁の数になる。Fermat は 1657 年に、この $61$ の場合を当時の数学者への挑戦問題として出した。

Pell方程式

$d$ を平方数でない正の整数とする。整数 $x,y$ についての方程式
$$ x^2-dy^2=1 $$
を Pell 方程式(Pell equation)という。$(\pm1,0)$ はつねに解であり、これを自明な解という。$x\geq1$ かつ $y\geq1$ を満たす解を正の解という。また方程式 $x^2-dy^2=-1$ を負の Pell 方程式という。

$(x,y)$ が解なら $(\pm x,\pm y)$ も解なので、自明でない解を調べるには正の解を調べればよい($y\neq0$ の解では $x^2=1+dy^2>1$ なので $x\neq0$ でもある)。$d$ が平方数の場合や $d\leq0$ の場合を除く理由は prop-pell-equation-excluded で述べる。

名前の由来

この方程式を Pell の名で呼ぶのは、Euler が、Wallis の著作に載っている解法を J. Pell によるものと誤って考えたことに由来する。実際の解法は Brouncker が Fermat の挑戦に答えて与えたもので、Pell はこの方程式の研究にほとんど関わっていない(Dic20 Chapter XII, p. 341, p. 354、Len08 §1)。Dickson は「Fermat の方程式」と呼ぶべきだったと述べているが、Pell 方程式の名が定着している。

直感

$\sqrt d$ は無理数である(無理数 の記事の系「平方数でない整数の平方根」)。$x^2-dy^2=1$ は
$$ (x+y\sqrt d)(x-y\sqrt d)=1 $$
と因数分解でき、正の解では $x+y\sqrt d$ が大きいので $x-y\sqrt d=\dfrac{1}{x+y\sqrt d}$ は非常に小さい。すなわち Pell 方程式の正の解は、$\sqrt d$ の非常によい有理数近似 $\frac xy$ を与える。逆に、$\sqrt d$ のよい近似から Pell 方程式の解を作ることもでき、これが解の存在の証明(thm-pell-equation-existence)の筋である。
もう一つの見方として、$\mathbb{Z}[\sqrt d]=\{a+b\sqrt d\mid a,b\in\mathbb{Z}\}$ の元 $\alpha=a+b\sqrt d$ に対し、$\alpha':=a-b\sqrt d$、$N(\alpha):=\alpha\alpha'=a^2-db^2$ とおく。Pell 方程式の解は $N(\alpha)=1$ となる $\alpha$ にほかならず、このような $\alpha$ は $\alpha^{-1}=\alpha'\in\mathbb{Z}[\sqrt d]$ なので $\mathbb{Z}[\sqrt d]$ の単元である。解どうしを掛けるとまた解になる(lem-pell-equation-composition)ので、解全体は掛け算について群をなし、その構造は「最小の解の冪」で尽くされる(thm-pell-equation-structure)。$d=2$ の場合は 単元 の記事で $\mathbb{Z}[\sqrt2]$ の単元群として扱われている。

例と反例

d=2 の解

$x^2-2y^2=1$ の正の解を小さい順に並べると
$$ (3,2),\ (17,12),\ (99,70),\ (577,408),\ (3363,2378),\ (19601,13860),\ \dots $$
であり、これらは $(3+2\sqrt2)^n=x_n+y_n\sqrt2$($n=1,2,3,\dots$)で与えられる(thm-pell-equation-structure)。たとえば $(3+2\sqrt2)^2=17+12\sqrt2$ である。$\sqrt2$ の連分数の収束子 $\frac11,\frac32,\frac75,\frac{17}{12},\frac{41}{29},\frac{99}{70},\dots$ のうち $1$ つおきのものがこれらの解になり、残りの $(1,1)$、$(7,5)$、$(41,29)$ は負の Pell 方程式 $x^2-2y^2=-1$ の解である。

最小の正の解の表

いくつかの $d$ について、$x^2-dy^2=1$ の正の解のうち $x+y\sqrt d$ が最小のもの(基本解、def-pell-equation-fundamental)は次のとおりである。

$d$$2$$3$$5$$6$$7$$8$$10$$11$$12$$13$$14$$15$
$(x_1,y_1)$$(3,2)$$(2,1)$$(9,4)$$(5,2)$$(8,3)$$(3,1)$$(19,6)$$(10,3)$$(7,2)$$(649,180)$$(15,4)$$(4,1)$

さらに $d=46$ では $(24335,3588)$、$d=61$ では $(1766319049,226153980)$、$d=109$ では $(158070671986249,15140424455100)$ である(Cla Chapter 7, §6、Cri24 §15.6)。$d$ が $1$ 変わるだけで基本解の大きさは大きく変わる。

平方数でもある三角数

三角数 $1,3,6,10,15,21,28,36,\dots$($\frac{n(n+1)}{2}$)のうち平方数でもあるものを求める。$\frac{n(n+1)}{2}=m^2$ の両辺を $8$ 倍して $1$ を足すと $(2n+1)^2=8m^2+1$ となるので、これは $x=2n+1$、$y=m$ とした Pell 方程式 $x^2-8y^2=1$ にほかならない($x^2=8y^2+1$ は奇数なので $x$ は自動的に奇数である)。正の解 $(3,1),(17,6),(99,35),(577,204),\dots$ から、平方数である三角数
$$ 1=1^2,\quad 36=6^2,\quad 1225=35^2,\quad 41616=204^2,\quad\dots $$
が得られ、thm-pell-equation-structure によりこれで全部である($n=1,8,49,288,\dots$)。

除外した場合には自明な解しかない

整数 $d$ について、方程式 $x^2-dy^2=1$ を考える。

  1. $d$ が平方数($d=k^2$、$k\geq0$ は整数)なら、整数解は $(\pm1,0)$ と、$d=0$ のときの $(\pm1,y)$($y$ は任意)だけであり、$y\neq0$ かつ $d>0$ の解はない。
  2. $d<0$ なら、解は有限個である。$d=-1$ では $(\pm1,0),(0,\pm1)$ の 4 つ、$d\leq-2$ では $(\pm1,0)$ だけである。
因数分解と大きさ

1:$d=0$ なら方程式は $x^2=1$ である。$d=k^2$、$k\geq1$ とすると $(x-ky)(x+ky)=1$ であり、整数の積が $1$ なので $x-ky=x+ky=\pm1$ である。よって $2ky=0$、すなわち $y=0$、$x=\pm1$ である。
2:$d<0$ なら $x^2-dy^2=x^2+|d|y^2$ である。$d=-1$ では $x^2+y^2=1$ の整数解は 4 つである。$d\leq-2$ で $y\neq0$ なら左辺は $|d|\geq2$ 以上になるので $y=0$、$x=\pm1$ である。

反例:負の Pell 方程式は解けるとは限らない

$x^2-3y^2=-1$ には整数解がない。実際、両辺を $3$ で割った余りを比べると $x^2\equiv-1\equiv2\pmod 3$ となるが、平方数を $3$ で割った余りは $0$ か $1$ である($0^2,1^2,2^2\equiv0,1,1$)。したがって「$x^2-dy^2=1$ がつねに正の解をもつ」(thm-pell-equation-existence)ことは、右辺を $-1$ に変えると成り立たない。一方 $d=2,5,10,13$ などでは負の Pell 方程式が解ける($1^2-2\cdot1^2=-1$、$2^2-5\cdot1^2=-1$、$3^2-10\cdot1^2=-1$、$18^2-13\cdot5^2=-1$)。負の方程式の解 $(a,b)$ があれば、$(a+b\sqrt d)^2=(a^2+db^2)+2ab\sqrt d$ から Pell 方程式の解 $(a^2+db^2,2ab)$ が得られる。$d=13$ では $(18^2+13\cdot5^2,\ 2\cdot18\cdot5)=(649,180)$ で、これは基本解である。

性質

以下、$d$ は平方数でない正の整数とし、$\alpha=a+b\sqrt d$($a,b\in\mathbb{Z}$)に対して $\alpha'=a-b\sqrt d$、$N(\alpha)=\alpha\alpha'=a^2-db^2$ と書く。$\sqrt d$ は無理数なので、$a+b\sqrt d=c+e\sqrt d$($a,b,c,e\in\mathbb{Z}$)なら $a=c$、$b=e$ である($b\neq e$ なら $\sqrt d=(a-c)/(e-b)$ が有理数になる)。したがって $\alpha$ から $a,b$ は一意に決まり、$\alpha'$ と $N(\alpha)$ は矛盾なく定まる。

解の積

Brahmaguptaの恒等式

整数 $a,b,c,e$ について
$$ (a^2-db^2)(c^2-de^2)=(ac+dbe)^2-d(ae+bc)^2 $$
である。言い換えると、$\alpha=a+b\sqrt d$、$\beta=c+e\sqrt d$ について $(\alpha\beta)'=\alpha'\beta'$、$N(\alpha\beta)=N(\alpha)N(\beta)$ である。特に Pell 方程式の $2$ つの解 $(a,b),(c,e)$ から新しい解 $(ac+dbe,\ ae+bc)$ が得られる。

展開して比べる

$\alpha\beta=(ac+dbe)+(ae+bc)\sqrt d$ であり、$\alpha'\beta'=(a-b\sqrt d)(c-e\sqrt d)=(ac+dbe)-(ae+bc)\sqrt d=(\alpha\beta)'$ である。よって $N(\alpha\beta)=\alpha\beta\,(\alpha\beta)'=\alpha\alpha'\,\beta\beta'=N(\alpha)N(\beta)$ であり、これを $a,b,c,e$ で書いたものが恒等式である。

この恒等式は 7 世紀のインドの数学者 Brahmagupta が知っていた(Dic20 Chapter XII, p. 355。Brahmagupta については同 p. 346)。たとえば $(3,2)$ と $(3,2)$ から $(3\cdot3+2\cdot2\cdot2,\ 3\cdot2+2\cdot3)=(17,12)$ が得られる。

自明でない解の存在

小さい値をとる組が無限にある

$M:=1+2\sqrt d$ とおく。$|X^2-dY^2|< M$ を満たす正の整数の組 $(X,Y)$ は無限に存在する。

Dirichletの近似定理を使う

鳩の巣原理 の記事の定理「Dirichlet の近似定理」により、任意の整数 $N\geq1$ について $1\leq Y\leq N$、$|Y\sqrt d-X|<1/N$ を満たす整数 $X,Y$ がある。このとき $|X-Y\sqrt d|<1/N\leq1/Y$ である。
このような組が無限にあることを示す。組 $(X,Y)$ が得られたとすると、$\sqrt d$ は無理数なので $\delta:=|X-Y\sqrt d|>0$ である。$N>1/\delta$ として同じ定理を使うと $|X_1-Y_1\sqrt d|<1/N<\delta$ を満たす組 $(X_1,Y_1)$ が得られ、これは $(X,Y)$ と異なる。これを繰り返すと、$|X-Y\sqrt d|<1/Y$ を満たす相異なる組 $(X,Y)$($Y\geq1$)が無限に得られる。$X>Y\sqrt d-1/Y\geq\sqrt2-1>0$ なので $X$ も正である。
各組について、三角不等式から $|X+Y\sqrt d|\leq|X-Y\sqrt d|+2Y\sqrt d<\dfrac1Y+2Y\sqrt d$ なので
$$ |X^2-dY^2|=|X-Y\sqrt d|\,|X+Y\sqrt d|<\frac1Y\Bigl(\frac1Y+2Y\sqrt d\Bigr)=\frac{1}{Y^2}+2\sqrt d\leq1+2\sqrt d $$
である。

自明でない解の存在

$d$ が平方数でない正の整数ならば、Pell 方程式 $x^2-dy^2=1$ は正の解をもつ。

同じ値をとる 2 つの組を割る

lem-pell-equation-small-values の無限個の組 $(X,Y)$ について、$m:=X^2-dY^2$ は $|m|< M$ を満たす整数であり、$\sqrt d$ が無理数なので $m\neq0$ である。$m$ のとりうる値は有限個なので、ある $m\neq0$ について $X^2-dY^2=m$ を満たす正の整数の組が無限に存在する。これらの組の $(X\bmod|m|,\ Y\bmod|m|)$ は高々 $m^2$ 通りなので、相異なる 2 つの組 $(X_1,Y_1)$、$(X_2,Y_2)$ で $X_1\equiv X_2$、$Y_1\equiv Y_2\pmod{|m|}$ を満たすものがある。
$\alpha:=X_1+Y_1\sqrt d$、$\beta:=X_2+Y_2\sqrt d$ とおき、$\alpha\beta'=X+Y\sqrt d$ と書くと
$$ X=X_1X_2-dY_1Y_2,\qquad Y=X_2Y_1-X_1Y_2 $$
である。合同式で $X_2,Y_2$ を $X_1,Y_1$ に置き換えると
$$ X\equiv X_1^2-dY_1^2=m\equiv0,\qquad Y\equiv X_1Y_1-X_1Y_1=0\pmod{|m|} $$
となるので、$X=mx$、$Y=my$ となる整数 $x,y$ がある。lem-pell-equation-composition より $X^2-dY^2=N(\alpha)N(\beta')=m\cdot m=m^2$ であり($N(\beta')=\beta'\beta=N(\beta)$)、一方 $X^2-dY^2=m^2(x^2-dy^2)$ なので、$m^2\neq0$ で割って $x^2-dy^2=1$ を得る。
$y\neq0$ を示す。$y=0$ なら $X_2Y_1=X_1Y_2$ であり、$r:=X_1/X_2>0$ とおくと $Y_1=rY_2$ である。すると $m=X_1^2-dY_1^2=r^2(X_2^2-dY_2^2)=r^2m$ から $r^2=1$、$r=1$ となり、$(X_1,Y_1)=(X_2,Y_2)$ となって 2 つの組が相異なることに反する。よって $y\neq0$ であり、$(|x|,|y|)$ は正の解である。

この証明は Clark の講義ノート(Cla Chapter 7, Proposition 7.6・Theorem 7.7、PDF の pp. 102–103)の筋に従った。最初に公表された証明は Lagrange によるものである(Dic20 Chapter XII, p. 358、Len08 §1)。Fermat も 1657 年に、平方数でないどんな $d$ についても解が無限に存在すると述べていた(Dic20 Chapter XII, p. 351)。

すべての解

基本解

Pell 方程式 $x^2-dy^2=1$ の正の解 $(x,y)$ のうち、$x+y\sqrt d$ が最小のものを基本解(fundamental solution)といい、$(x_1,y_1)$、$\varepsilon:=x_1+y_1\sqrt d$ と書く。

基本解は存在する。正の解があり(thm-pell-equation-existence)、その 1 つを $(x_0,y_0)$ とすると、$x+y\sqrt d\leq x_0+y_0\sqrt d$ を満たす正の整数の組は $x,y\leq x_0+y_0\sqrt d$ を満たすので有限個しかなく、その中に最小のものがある。$\sqrt d$ が無理数なので $x+y\sqrt d$ の値から $(x,y)$ は一意に決まり、基本解はただ一つである。

解の符号と大きさ

$(x,y)$ を Pell 方程式の解とし、$\alpha=x+y\sqrt d$ とする。$\alpha>1$ であることと、$(x,y)$ が正の解であることは同値である。

共役との和と差

$(x,y)$ が正の解なら $\alpha\geq1+\sqrt d>1$ である。逆に $\alpha>1$ とすると、$\alpha\alpha'=1$ より $0<\alpha'=1/\alpha<1$ である。よって $x=(\alpha+\alpha')/2>1/2$、$y\sqrt d=(\alpha-\alpha')/2>0$ であり、$x,y$ は整数なので $x\geq1$、$y\geq1$ である。

解の構造

$\varepsilon=x_1+y_1\sqrt d$ を基本解とする。

  1. 各整数 $n$ について $\pm\varepsilon^n=x+y\sqrt d$ と書くと、$(x,y)$ は Pell 方程式の整数解である。
  2. Pell 方程式の整数解は 1 の形のものに限る。とくに正の解は $\varepsilon^n=x_n+y_n\sqrt d$($n=1,2,3,\dots$)で与えられる $(x_n,y_n)$ ですべてであり、これらは相異なる。
最小性による割り算

1:$\varepsilon^{-1}=\varepsilon'=x_1-y_1\sqrt d$ であり、$\varepsilon$ と $\varepsilon^{-1}$ はどちらも $\mathbb{Z}[\sqrt d]$ に属して $N=1$ を満たす。lem-pell-equation-composition により $N=1$ の元の積は $N=1$ の元なので、$\varepsilon^n$($n\in\mathbb{Z}$)と $-\varepsilon^n$ は $N=1$ の元であり、その係数は解を与える。
2:$(x,y)$ を解とし、$\alpha=x+y\sqrt d$ とおく。$\alpha\alpha'=1$ なので $\alpha\neq0$ であり、必要なら $-\alpha$(解 $(-x,-y)$ に対応)に取り替えて $\alpha>0$ としてよい。$\varepsilon>1$ なので、$\varepsilon^n\leq\alpha<\varepsilon^{n+1}$ を満たす整数 $n$ がある。$\gamma:=\alpha\varepsilon^{-n}$ は 1 と同じ理由で $\mathbb{Z}[\sqrt d]$ に属して $N(\gamma)=1$ を満たし、$1\leq\gamma<\varepsilon$ である。$\gamma>1$ なら lem-pell-equation-sign により $\gamma$ は正の解に対応し、$\gamma<\varepsilon$ は基本解の最小性に反する。よって $\gamma=1$、$\alpha=\varepsilon^n$ である。
正の解では lem-pell-equation-sign により $\alpha>1$ なので $n\geq1$ である。逆に $n\geq1$ なら $\varepsilon^n>1$ なので $(x_n,y_n)$ は正の解である。$\varepsilon>1$ より $\varepsilon^n$ は $n$ について狭義に増加するので、これらは相異なる。

解の漸化式と一般項

正の解 $(x_n,y_n)$ は
$$ x_{n+1}=x_1x_n+dy_1y_n,\qquad y_{n+1}=x_1y_n+y_1x_n $$
を満たし、
$$ x_n=\frac{\varepsilon^n+\varepsilon^{-n}}{2},\qquad y_n=\frac{\varepsilon^n-\varepsilon^{-n}}{2\sqrt d} $$
である。とくに Pell 方程式の正の解は無限に存在し、$x_n$ は $\varepsilon^n/2$ にもっとも近い整数である。

冪を展開する

$\varepsilon^{n+1}=\varepsilon\cdot\varepsilon^n=(x_1+y_1\sqrt d)(x_n+y_n\sqrt d)$ を展開して係数を比べると漸化式を得る。また $(\varepsilon^n)'=(\varepsilon')^n=\varepsilon^{-n}$(lem-pell-equation-composition)なので $x_n-y_n\sqrt d=\varepsilon^{-n}$ であり、$x_n+y_n\sqrt d=\varepsilon^n$ と足したり引いたりすると一般項を得る。$0<\varepsilon^{-n}/2<1/2$ なので $x_n$ は $\varepsilon^n/2$ にもっとも近い整数である。

たとえば $d=2$ では $x_{n+1}=3x_n+4y_n$、$y_{n+1}=2x_n+3y_n$ であり、$(3,2)$ から $(17,12)$、$(99,70)$ が得られる。解の構造の定理は、$\mathbb{Z}[\sqrt d]$ の $N=1$ の単元全体が $\{\pm1\}$ と無限巡回群 $\langle\varepsilon\rangle$ の直積に同型であることを述べている(Cla Chapter 7, Theorem 7.8 と §7)。

連分数による解法

基本解を実際に求めるには、$\sqrt d$ の連分数展開を使う。以下、連分数の記法は 連分数 の記事に従い、$\alpha=[a_0;a_1,a_2,\dots]$ の第 $n$ 収束子を $p_n/q_n$($p_{-2}=0$、$p_{-1}=1$、$q_{-2}=1$、$q_{-1}=0$、$p_n=a_np_{n-1}+p_{n-2}$、$q_n=a_nq_{n-1}+q_{n-2}$)と書く。

収束子であるための十分条件

$\alpha$ を無理数、$p,q$ を $q\geq1$、$\gcd(p,q)=1$ を満たす整数とする。
$$ \left|\alpha-\frac pq\right|<\frac{1}{2q^2} $$
ならば、$p/q$ は $\alpha$ の連分数展開のある収束子 $p_n/q_n$ に等しく、$p=p_n$、$q=q_n$ である。

残りの部分を 1 より大きい数で表す

$\alpha$ は無理数なので $\alpha-p/q\neq0$ である。連分数 の記事の定理「有理数の連分数展開」の 3 により、$p/q$ は長さが $1$ だけ異なる 2 通りの単純連分数で表せるので、そのうち $(-1)^n$ が $\alpha-p/q$ と同じ符号になる表示 $p/q=[b_0;b_1,\dots,b_n]$ を選ぶ。この表示の収束子を $P_k/Q_k$ とする。$P_n/Q_n=p/q$ で、単純連分数の収束子は既約分数であり $Q_n>0$ なので、$P_n=p$、$Q_n=q$ である。
$\alpha-p/q=(-1)^n\theta/q^2$、$0<\theta<\frac12$ と書き、$\omega:=\dfrac1\theta-\dfrac{Q_{n-1}}{q}$ とおく。$Q_{n-1}\leq Q_n=q$($n=0$ なら $Q_{-1}=0$)なので $\omega>2-1=1$ である。連分数 の記事の命題「隣り合う収束子の行列式」の $P_{n-1}Q_n-P_nQ_{n-1}=(-1)^n$ を使うと
$$ \frac{\omega P_n+P_{n-1}}{\omega Q_n+Q_{n-1}}-\frac{P_n}{Q_n}=\frac{(-1)^n}{q(\omega q+Q_{n-1})}=\frac{(-1)^n}{q\cdot q/\theta}=\frac{(-1)^n\theta}{q^2}=\alpha-\frac pq $$
であり、$\alpha=\dfrac{\omega P_n+P_{n-1}}{\omega Q_n+Q_{n-1}}$ である。$\omega$ が有理数なら $\alpha$ も有理数になるので、$\omega$ は無理数である。
$\omega$ の連分数展開を $\omega=[c_0;c_1,c_2,\dots]$ とすると、$\omega>1$ より $c_0\geq1$ である。$t_k:=[c_0;c_1,\dots,c_k]>0$ とおくと、連分数の定義から $[b_0;\dots,b_n,t_k]=[b_0;\dots,b_n,c_0,\dots,c_k]$ であり、連分数 の記事の命題「収束子の漸化式」により
$$ [b_0;\dots,b_n,c_0,\dots,c_k]=\frac{t_kP_n+P_{n-1}}{t_kQ_n+Q_{n-1}} $$
である。$k\to\infty$ で $t_k\to\omega$ であり、右辺は $t$ の関数として $t=\omega$ で連続(分母が正)なので、右辺は $\alpha$ に収束する。したがって $\alpha$ は無限単純連分数 $[b_0;b_1,\dots,b_n,c_0,c_1,\dots]$ の値である。連分数 の記事の定理「無理数の連分数展開」の 2 により、$\alpha$ の連分数展開の部分商はちょうど $b_0,\dots,b_n,c_0,c_1,\dots$ であり、その第 $n$ 収束子は $[b_0;\dots,b_n]=p/q$ である。収束子は既約分数で分母が正なので $p=p_n$、$q=q_n$ である。

係数 $\frac12$ は $1$ に置き換えられない。$\sqrt2$ と $\frac43$ は $|\sqrt2-\frac43|<\frac1{3^2}$ を満たすが、$\frac43$ は $\sqrt2$ の収束子ではない(連分数 の記事の反例「よい近似がすべて収束子とは限らない」)。

正の解は収束子である

$(x,y)$ を Pell 方程式 $x^2-dy^2=1$ の正の解とすると、$\sqrt d$ の連分数展開のある収束子 $p_n/q_n$ について $x=p_n$、$y=q_n$ である。したがって、収束子を $n=0,1,2,\dots$ の順に調べて初めて $p_n^2-dq_n^2=1$ となるものが基本解である。

誤差を評価して十分条件を使う

$x$ と $y$ の公約数は $x^2-dy^2=1$ を割り切るので $\gcd(x,y)=1$ である。$x-y\sqrt d=\dfrac{1}{x+y\sqrt d}>0$ なので $x>y\sqrt d$、したがって $x+y\sqrt d>2y\sqrt d$ であり、
$$ 0<\frac xy-\sqrt d=\frac{1}{y(x+y\sqrt d)}<\frac{1}{2y^2\sqrt d}<\frac{1}{2y^2} $$
である。lem-pell-equation-legendre により $x=p_n$、$y=q_n$ となる $n$ がある。
後半:正の解では $x=\sqrt{1+dy^2}$ なので、$x+y\sqrt d$ は $y$ について狭義に増加し、基本解は $y$ が最小の正の解である。基本解を $(p_j,q_j)$ とする。$k< j$ で $p_k^2-dq_k^2=1$ となるものがあったとすると、$\sqrt d>1$ より $a_0\geq1$ なので $p_k\geq1$、$q_k\geq1$ で、$(p_k,q_k)$ は正の解である。$q_k\leq q_j$(分母は $n$ について減少しない)と $y$ の最小性から $q_k=q_j$、したがって $p_k=p_j$ となり、$p_k/q_k=p_j/q_j$ となる。ところが無理数の相異なる収束子は相異なる値をもつので(連分数 の記事の定理「無理数の連分数展開」の直後の段落)$k=j$ となり、矛盾する。

実際には、どの収束子が解になるかが連分数展開の周期で決まる。

基本解と連分数の周期

$\sqrt d$ の連分数展開は $\sqrt d=[a_0;\overline{a_1,a_2,\dots,a_\ell}]$($a_\ell=2a_0$)の形の循環連分数である。周期の長さ $\ell$ が偶数なら $(p_{\ell-1},q_{\ell-1})$ が基本解であり、$\ell$ が奇数なら $(p_{2\ell-1},q_{2\ell-1})$ が基本解である。

周期の定理の出典と例

展開が循環すること自体は $\sqrt d$ が 2 次無理数であることから従う(連分数 の記事の定理「循環連分数と2次無理数」)。周期が $a_0$ の直後から始まり最後が $2a_0$ になることと基本解の位置は、Lenstra の解説の §1 に述べられており(Len08 §1)、Euler 以来の連分数による解法の現代的な形である(Dic20 Chapter XII, pp. 356–357)。本記事では証明しない。
例:$\sqrt7=[2;\overline{1,1,1,4}]$ は $\ell=4$ で、収束子 $\frac21,\frac31,\frac52,\frac83$ のうち第 $3$ 収束子 $p_3/q_3=\frac83$ から基本解 $(8,3)$ を得る。$\sqrt{14}=[3;\overline{1,2,1,6}]$ も $\ell=4$ で基本解 $(15,4)$ を得る。$\sqrt{13}=[3;\overline{1,1,1,1,6}]$ は $\ell=5$ で、第 $4$ 収束子 $\frac{18}{5}$ は負の Pell 方程式の解 $18^2-13\cdot5^2=-1$ を与え、第 $9$ 収束子 $\frac{649}{180}$ が基本解である。$\sqrt{61}=[7;\overline{1,4,3,1,2,2,1,3,4,1,14}]$ は $\ell=11$ で、第 $10$ 収束子 $\frac{29718}{3805}$ が $29718^2-61\cdot3805^2=-1$ を与え、第 $21$ 収束子が基本解 $(1766319049,226153980)$ である。$\sqrt2=[1;\overline2]$ は $\ell=1$ で、第 $1$ 収束子 $\frac32$ が基本解である。

Archimedesの牛の問題

Archimedes に帰せられる「牛の問題」は、太陽神の 8 種類の牛の頭数を求める問題で、線形の条件に加えて「ある 2 種の和が平方数」「別の 2 種の和が三角数」という条件を課す。後の条件は Pell 方程式
$$ x^2-410286423278424\,y^2=1 $$
に帰着する($410286423278424=2\cdot3\cdot7\cdot11\cdot29\cdot353\cdot(2\cdot4657)^2$)。$\sqrt{410286423278424}$ の連分数の周期は $203254$ と長く、1867 年に Meyer が 240 段まで計算して断念した。1880 年に Amthor が別の工夫で解き、最小の解での牛の総数が 206545 桁になることを示した(Len08 §2)(Dic20 Chapter XII, pp. 342–344、Cla Chapter 7, §6)。連分数の方法は周期が長いと実用的でなく、大きな $d$ にはより速い方法が研究されている(Len08)。

歴史

$x^2-2y^2=1$ の解に対応する $\sqrt2$ の近似 $\frac{17}{12}$、$\frac{577}{408}$ は、古代インドの Śulba-sūtra にすでに見られる(Dic20 Chapter XII, p. 341)。Brahmagupta(598 年生まれ)は lem-pell-equation-composition の合成法を使って解を作る方法を与え、$x^2-92y^2=1$ の解 $(1151,120)$ を求めた(同 p. 346。Cri24 §15.6 も参照)。巡回法と呼ばれる一般的な解法が Bhāskara の著作に見られる(同 pp. 348–350)。Fermat は 1657 年 2 月に、平方数でない $d$ について解が無限にあると述べて挑戦問題を出し、Brouncker と Wallis が解法を与えた(同 pp. 351–352)。Euler は $d=61$ の最小の解の $y$ が $226153980$ であることを記している(同 p. 355)。解の存在を最初に証明したのは Lagrange である(同 p. 358)。

関連項目

参考文献

[3]
Leonard Eugene Dickson, History of the Theory of Numbers, Vol. II: Diophantine Analysis, Carnegie Institution of Washington, 1920, Chapter XII(Pell equation), pp. 341–358
[4]
Hendrik W. Lenstra, Jr., Solving the Pell equation, Algorithmic Number Theory: Lattices, Number Fields, Curves and Cryptography (MSRI Publications 44), Cambridge University Press, 2008, pp. 1–23(初出は Notices of the AMS 49 (2002), pp. 182–192)

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