ベクトル方程式(直線と円)

同義語:直線のベクトル方程式円のベクトル方程式vector equations of lines and circles

概要

ベクトル方程式(直線と円)(vector equations of lines and circles)とは、直線や円を、その上の点の位置ベクトル $\vec p$ の満たす式で表すものである。点 $\vec a$ を通る平面の直線は、方向ベクトル $\vec d\ne\vec 0$ による $\vec p=\vec a+t\vec d$ と、法線ベクトル $\vec n\ne\vec 0$ による $\vec n\cdot(\vec p-\vec a)=0$ の 2 通りに書け、$\vec n\cdot\vec d=0$ なら一致する。中心 $\vec c$、半径 $r>0$ の円は $\lvert\vec p-\vec c\rvert=r$ で、円の上の点 $\vec p_0$ での接線は $(\vec p_0-\vec c)\cdot(\vec p-\vec c)=r^2$ である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: ベクトルの内積(高校数学), 位置ベクトルと内分点

高校での出発点:同じ直線を 2 通りに書く

平面に基準の点 $O$ を決め、点 $P$ を位置ベクトル $\vec p=\overrightarrow{OP}$ で表す(位置ベクトルと内分点)。図形を「その図形の上の点 $P$ の位置ベクトル $\vec p$ が満たす式」で表したものを、その図形の ベクトル方程式 という。まず、同じ 1 本の直線を 2 通りのベクトル方程式で書いてみる。

点と向きで直線を書く

点 $A(1,2)$ を通り、ベクトル $\vec d=(2,1)$ の向きに伸びる直線を考える。$A$ から $\vec d$ の $t$ 倍だけ進んだ点は
$$ \vec p=\vec a+t\vec d=(1,2)+t(2,1)=(1+2t,\ 2+t) $$
である。$t=0$ で $A(1,2)$、$t=1$ で $(3,3)$、$t=2$ で $(5,4)$、$t=-1$ で $(-1,1)$ となる(図 1)。$x=1+2t$、$y=2+t$ から $t$ を消すと、$t=y-2$ を $x=1+2t$ に代入して $x=1+2(y-2)$、つまり
$$ x-2y+3=0 $$
を得る。4 つの点はどれもこの式を満たす(たとえば $(5,4)$ では $5-8+3=0$)。

点と垂直な向きで直線を書く

同じ点 $A(1,2)$ を通り、ベクトル $\vec n=(1,-2)$ に垂直な直線を考える。点 $P$ がこの直線の上にあることは、$\overrightarrow{AP}=\vec p-\vec a$ が $\vec 0$ であるか $\vec n$ に垂直であることで、どちらの場合も内積で
$$ \vec n\cdot(\vec p-\vec a)=0 $$
と書ける(ベクトルの内積(高校数学) の「垂直の条件」)。$\vec p=(x,y)$ として成分で計算すると
$$ 1\cdot(x-1)+(-2)\cdot(y-2)=0\quad\Longleftrightarrow\quad x-2y+3=0 $$
であり、ex-vel-start-param と同じ式になる(図 2)。

直線 x-2y+3=0 を、点 A(1,2) と方向ベクトル d=(2,1) で表す。t=-1、0、1、2 の点が直線に等間隔に並ぶ 直線 x-2y+3=0 を、点 A(1,2) と方向ベクトル d=(2,1) で表す。t=-1、0、1、2 の点が直線に等間隔に並ぶ
同じ直線を、点 A(1,2) と法線ベクトル n=(1,-2) で表す。直線の上の点 P では、A から P へのベクトルが n に垂直になる 同じ直線を、点 A(1,2) と法線ベクトル n=(1,-2) で表す。直線の上の点 P では、A から P へのベクトルが n に垂直になる

2 つの例で使ったベクトル $\vec d=(2,1)$ と $\vec n=(1,-2)$ は、$\vec n\cdot\vec d=2-2=0$ で垂直である。同じ直線が、「向き」で書いても「垂直な向き」で書いても表せた。円も同じように書ける。

中心からの距離で円を書く

中心 $C(1,2)$、半径 $5$ の円は、中心からの距離が $5$ の点の全体なので、$\lvert\vec p-\vec c\rvert=5$ と書ける。両辺を 2 乗して成分で書くと $(x-1)^2+(y-2)^2=25$ である。点 $(4,6)$ は $(4-1)^2+(6-2)^2=9+16=25$ を満たすので、この円の上にある。

この記事では、次の問いに答える。

  1. 「向き」で書いた直線と「垂直な向き」で書いた直線は、いつ同じ直線になるか。→ thm-vel-line
  2. 一方の形からもう一方の形へ、どう書き換えるか。→ lem-vel-perp、ex-vel-convert
  3. 円の上の点での接線は、ベクトル方程式でどう書けるか。→ thm-vel-tangent
  4. どの条件を外すと、式が直線や円を表さなくなるか。→ ex-vel-zero-d、ex-vel-zero-n、ex-vel-not-perp
    高校の式ベクトル方程式この記事のボックス
    $x=x_0+lt$、$y=y_0+mt$$\vec p=\vec a+t\vec d$(媒介変数の形)def-vel-line
    $a(x-x_0)+b(y-y_0)=0$$\vec n\cdot(\vec p-\vec a)=0$(法線の形)def-vel-line
    方向ベクトル $(l,m)$ と法線ベクトル $(m,-l)$2 つの形の書き換えlem-vel-perp、thm-vel-line
    $(x-a)^2+(y-b)^2=r^2$$\lvert\vec p-\vec c\rvert=r$def-vel-circle
    接線 $(x_0-a)(x-a)+(y_0-b)(y-b)=r^2$$(\vec p_0-\vec c)\cdot(\vec p-\vec c)=r^2$thm-vel-tangent

ベクトル方程式とは

図形のベクトル方程式

平面の図形 $F$(点の集まり)と、位置ベクトル $\vec p$ についての条件が与えられていて、
$$ P\text{ が }F\text{ の上にある}\quad\Longleftrightarrow\quad \vec p\text{ がその条件を満たす} $$
がすべての点 $P$ で成り立つとき、その条件を $F$ の ベクトル方程式 という。条件が「実数 $t$ を使って $\vec p=\dots$ と書ける」の形のとき、$t$ を 媒介変数(パラメータ)という。

ベクトル方程式は「$\Longleftrightarrow$」の両向きが大事である。$F$ の点がすべて条件を満たすだけでなく、条件を満たす点がすべて $F$ の上にあることまで確かめて、はじめて $F$ のベクトル方程式といえる。

直線のベクトル方程式

点 $A(\vec a)$ と、$\vec 0$ でないベクトル $\vec d$、$\vec n$ について、次のように定める。

  1. 媒介変数の形:$\vec p=\vec a+t\vec d$($t$ は実数)と書ける点 $P$ の全体を、$A$ を通り 方向ベクトル $\vec d$ の直線という。
  2. 法線の形:$\vec n\cdot(\vec p-\vec a)=0$ を満たす点 $P$ の全体を、$A$ を通り 法線ベクトル $\vec n$ の直線という。

媒介変数の形は「点の作り方」を与える式で、$t$ に値を入れるたびに直線の上の点が 1 つできる。法線の形は「点の判定法」を与える式で、点を代入して $0$ になるかどうかで直線の上にあるかが分かる。

2 点を通る直線

$A(\vec a)$、$B(\vec b)$ が異なる 2 点なら、$\vec d=\vec b-\vec a$ を方向ベクトルにとれて、直線 $AB$ は
$$ \vec p=\vec a+t(\vec b-\vec a)=(1-t)\vec a+t\vec b $$
と書ける。$A(1,2)$、$B(3,3)$ なら $\vec b-\vec a=(2,1)$ で、ex-vel-start-param の式になる。係数の和が $1$ の形 $s\vec a+t\vec b$($s+t=1$)で直線を表すことは 位置ベクトルと内分点 の主定理「直線上にある条件」で扱っている。

主定理 1:2 つの形は同じ直線を表す

2 つの形を行き来するには、「ある向きに垂直な向き」を具体的に書ければよい。平面では、それは成分を入れかえて片方の符号を変えたベクトルである。

垂直なベクトルを作る
  1. $\vec d=(2,1)$ に対して $\vec e=(-1,2)$ とすると、$\vec e\cdot\vec d=-2+2=0$ である。$\vec n=(1,-2)=-\vec e$ も $\vec d$ に垂直である。
  2. $\vec d=(3,-1)$ に対して $\vec e=(1,3)$ とすると、$\vec e\cdot\vec d=3-3=0$ である。$(2,6)$ や $(-1,-3)$ のような $\vec e$ の実数倍も $\vec d$ に垂直である。

例で挙げた垂直なベクトルは、どれも $\vec e$ の実数倍だった。これがいつも成り立つことを示す。

平面で垂直なベクトルはすべて実数倍

平面のベクトル $\vec d=(d_1,d_2)\ne\vec 0$ に対して $\vec e=(-d_2,d_1)$ とおく。このとき $\vec e\ne\vec 0$、$\vec e\cdot\vec d=0$ であり、ベクトル $\vec v$ について
$$ \vec v\cdot\vec d=0\quad\Longleftrightarrow\quad \vec v=k\vec e\ \text{となる実数}\ k\ \text{がある} $$
が成り立つ。このときの $k$ は $k=\dfrac{\vec v\cdot\vec e}{\lvert\vec d\rvert^2}$ である。

成分で差を計算する

要点:$\vec e\cdot\vec d=0$ と $\lvert\vec e\rvert=\lvert\vec d\rvert>0$ は成分で確かめられる。$\vec v\cdot\vec d=0$ のとき、ベクトル $\lvert\vec d\rvert^2\vec v-(\vec v\cdot\vec e)\vec e$ の 2 つの成分がどちらも $d_1v_1+d_2v_2$ の倍数になり、したがって $0$ になることから、$\vec v$ が $\vec e$ の実数倍だと分かる。

詳しい証明を開く

方針:$\vec v\cdot\vec d=0$ のとき、$\lvert\vec d\rvert^2\vec v-(\vec v\cdot\vec e)\vec e$ の成分を計算して $\vec 0$ になることを示す。

段 1($\vec e$ の性質)。$\lvert\vec e\rvert^2=d_2^2+d_1^2=\lvert\vec d\rvert^2>0$ なので $\vec e\ne\vec 0$ である。$\vec e\cdot\vec d=-d_2d_1+d_1d_2=0$ である。

段 2($\Longleftarrow$)。$\vec v=k\vec e$ なら、内積の計算規則から $\vec v\cdot\vec d=k(\vec e\cdot\vec d)=0$ である。

段 3($\Longrightarrow$)。$\vec v=(v_1,v_2)$ が $\vec v\cdot\vec d=v_1d_1+v_2d_2=0$ を満たすとする。$\vec v\cdot\vec e=-v_1d_2+v_2d_1$ なので、$\vec w=\lvert\vec d\rvert^2\vec v-(\vec v\cdot\vec e)\vec e$ の第 1 成分は$$(d_1^2+d_2^2)v_1-(-v_1d_2+v_2d_1)(-d_2)=d_1^2v_1+d_2^2v_1-v_1d_2^2+v_2d_1d_2=d_1(d_1v_1+d_2v_2)=0$$であり、第 2 成分は$$(d_1^2+d_2^2)v_2-(-v_1d_2+v_2d_1)d_1=d_1^2v_2+d_2^2v_2+v_1d_1d_2-v_2d_1^2=d_2(d_1v_1+d_2v_2)=0$$である。よって $\vec w=\vec 0$ で、$\lvert\vec d\rvert^2\ne0$ で割ると $\vec v=\dfrac{\vec v\cdot\vec e}{\lvert\vec d\rvert^2}\vec e$ となる。$\square$

この補題から、媒介変数の形と法線の形が同じ直線を表すことが出る。

媒介変数の形と法線の形

平面の点 $A(\vec a)$ と、$\vec 0$ でないベクトル $\vec d$、$\vec n$ が $\vec n\cdot\vec d=0$ を満たすとする。このとき
$$ \{\,P\mid \vec p=\vec a+t\vec d\ \text{となる実数}\ t\ \text{がある}\,\}=\{\,P\mid \vec n\cdot(\vec p-\vec a)=0\,\} $$
である。さらに、左辺の点 $P$ に対する $t$ はただ 1 つである。

両方の向きの包含を示す

方針:左辺の点が右辺の式を満たすこと(段 1)と、右辺の式を満たす点が左辺の形に書けること(段 2)を別々に示す。段 2 で lem-vel-perp を使う。
段 1(左辺 $\subset$ 右辺)。$\vec p=\vec a+t\vec d$ とすると $\vec p-\vec a=t\vec d$ なので、$\vec n\cdot(\vec p-\vec a)=t\,(\vec n\cdot\vec d)=t\cdot0=0$ である。
段 2(右辺 $\subset$ 左辺)。$\vec n\cdot(\vec p-\vec a)=0$ とし、$\vec w=\vec p-\vec a$ とおく。$\vec n=(n_1,n_2)\ne\vec 0$ に lem-vel-perp を使い、$\vec e=(-n_2,n_1)$ とする。$\vec w\cdot\vec n=0$ なので $\vec w=\alpha\vec e$ となる実数 $\alpha$ があり、$\vec d\cdot\vec n=0$ なので $\vec d=\beta\vec e$ となる実数 $\beta$ がある。$\vec d\ne\vec 0$ なので $\beta\ne0$ である。よって
$$ \vec w=\alpha\vec e=\frac{\alpha}{\beta}\,\beta\vec e=\frac{\alpha}{\beta}\,\vec d $$
で、$t=\dfrac\alpha\beta$ とおくと $\vec p=\vec a+t\vec d$ である。
段 3($t$ はただ 1 つ)。$\vec a+t\vec d=\vec a+t'\vec d$ なら $(t-t')\vec d=\vec 0$ で、$\vec d\ne\vec 0$ なので $t=t'$ である。$\square$

lem-vel-perp により、どちらの形からも他方の形へ書き換えられる。方向ベクトル $\vec d=(d_1,d_2)$ が分かっていれば法線ベクトルに $(-d_2,d_1)$ をとればよく、法線ベクトル $\vec n=(n_1,n_2)$ が分かっていれば方向ベクトルに $(-n_2,n_1)$ をとればよい。

形を書き換える
  1. 点 $(2,5)$ を通り方向ベクトル $(3,-1)$ の直線。法線ベクトルに $(1,3)$ をとると(ex-vel-perp の (2))、法線の形は $(1,3)\cdot\bigl((x,y)-(2,5)\bigr)=0$ で、成分で書くと
    $$ (x-2)+3(y-5)=0\quad\Longleftrightarrow\quad x+3y=17 $$
    である。
  2. 直線 $4x-3y+10=0$。係数から法線ベクトル $(4,-3)$ が読める。点 $(-1,2)$ は $-4-6+10=0$ なので直線の上にある。方向ベクトルに $(3,4)$ をとると($(4,-3)\cdot(3,4)=12-12=0$)、媒介変数の形は
    $$ \vec p=(-1,2)+t(3,4)=(-1+3t,\ 2+4t) $$
    である。$t=1$ の点 $(2,6)$ は $8-18+10=0$ を満たす。

成分で書いた法線の形 $n_1(x-x_0)+n_2(y-y_0)=0$ は、高校で習う直線の方程式 $ax+by+c=0$ そのものである。係数 $(a,b)$ が法線ベクトルになること(thm-vel-line を成分で書いた形とその証明を含む)、2 直線の平行・垂直の条件、点と直線の距離の公式は 直線の方程式と点と直線の距離 で扱う。媒介変数の形は、直線の上を動く点を $t$ 1 つで追えるので、次の例のように「直線の上でいちばん近い点」を探すのに向く。

垂線の足を媒介変数で求める

点 $Q(5,-1)$ から直線 $\vec p=(1,2)+t(2,1)$ に下ろした垂線の足 $H$ を求める。$H$ は直線の上の点で、$\overrightarrow{QH}$ が方向ベクトル $(2,1)$ に垂直である。$\vec h=(1+2t,\ 2+t)$ とおくと $\vec h-\vec q=(-4+2t,\ 3+t)$ なので
$$ (\vec h-\vec q)\cdot(2,1)=2(-4+2t)+(3+t)=5t-5=0 $$
から $t=1$、$H(3,3)$ である。$\overrightarrow{QH}=(-2,4)$ で、距離は $QH=\sqrt{4+16}=2\sqrt5$ である。点と直線の距離の公式で $x-2y+3=0$ との距離を計算しても $\dfrac{\lvert5+2+3\rvert}{\sqrt{1+4}}=\dfrac{10}{\sqrt5}=2\sqrt5$ で、一致する。

円のベクトル方程式

円のベクトル方程式

点 $C(\vec c)$ と正の数 $r$ について、$C$ からの距離が $r$ の点の全体を、中心 $C$、半径 $r$ の 円 という。点 $P$ が円の上にあることは
$$ \lvert\vec p-\vec c\rvert=r\qquad\text{あるいは同じことだが}\qquad (\vec p-\vec c)\cdot(\vec p-\vec c)=r^2 $$
と書ける。これを円のベクトル方程式という。

2 つの式が同じ条件であるのは、$\lvert\vec p-\vec c\rvert\ge0$、$r>0$ なので $\lvert\vec p-\vec c\rvert=r$ と $\lvert\vec p-\vec c\rvert^2=r^2$ が同値であり、$\lvert\vec v\rvert^2=\vec v\cdot\vec v$ だからである。

内積を展開して成分の式にする

ex-vel-start-circle の円($\vec c=(1,2)$、$r=5$)で、内積の計算規則を使って $(\vec p-\vec c)\cdot(\vec p-\vec c)=25$ を展開すると
$$ \lvert\vec p\rvert^2-2\,\vec c\cdot\vec p+\lvert\vec c\rvert^2=25 $$
である。$\vec p=(x,y)$ とすると $\lvert\vec p\rvert^2=x^2+y^2$、$\vec c\cdot\vec p=x+2y$、$\lvert\vec c\rvert^2=5$ なので
$$ x^2+y^2-2x-4y+5=25\quad\Longleftrightarrow\quad x^2+y^2-2x-4y-20=0 $$
である。$x^2+y^2$ の係数がそろい、1 次の項の係数が $-2\vec c$ の成分になっている。

円は媒介変数の形にも書ける。$\vec p-\vec c$ は長さ $r$ のベクトルなので、$x$ 軸の正の向きとなす角を $\theta$ とすると $\vec p-\vec c=r(\cos\theta,\sin\theta)$ である。

円の媒介変数の形

ex-vel-start-circle の円は $\vec p=(1,2)+5(\cos\theta,\sin\theta)$ と書ける。$\cos\theta=\dfrac35$、$\sin\theta=\dfrac45$ となる $\theta$ では $\vec p=(1+3,\ 2+4)=(4,6)$ で、ex-vel-start-circle で確かめた点になる。楕円・双曲線も含めた媒介変数の形は 2次曲線の媒介変数表示 で扱う。

直径の両端 $A$、$B$ から円を書く式 $(\vec p-\vec a)\cdot(\vec p-\vec b)=0$ もよく使う。この式が $AB$ を直径とする円を表すこと、つまり直径を直角に見込む点の全体が円になることは 直径に対する円周角 の定理「内積による表示」で扱う。

主定理 2:円の接線のベクトル方程式

円と直線が 1 点だけを共有するとき、直線は円に 接する といい、その直線を 接線、共有点を 接点 という。接線は、接点と中心を結ぶ半径に垂直な直線である。ベクトル方程式を使うと、このことと接線の式が一度に示せる。

円の接線

中心 $C(\vec c)$、半径 $r$ の円の上の点 $P_0(\vec p_0)$ をとる。

  1. $P_0$ を通り方向ベクトル $\vec d\ne\vec 0$ の直線が、円と $P_0$ だけを共有するのは、$\vec d\cdot(\vec p_0-\vec c)=0$ のとき、つまり直線が半径 $CP_0$ に垂直なときであり、そのときに限る。
  2. $P_0$ における接線のベクトル方程式は
    $$ (\vec p_0-\vec c)\cdot(\vec p-\vec c)=r^2 $$
    である。
直線の上の点の、中心からの距離を $t$ で書く

方針:直線の上の点 $\vec p=\vec p_0+t\vec d$ について $\lvert\vec p-\vec c\rvert^2$ を $t$ の 2 次式で書き、それが $r^2$ になる $t$ を調べる。
段 1(2 次式にする)。$\vec u=\vec p_0-\vec c$ とおくと、$P_0$ は円の上にあるので $\lvert\vec u\rvert^2=r^2$ である。$\vec p-\vec c=\vec u+t\vec d$ なので、内積の計算規則から
$$ \lvert\vec p-\vec c\rvert^2=\lvert\vec u\rvert^2+2t\,(\vec d\cdot\vec u)+t^2\lvert\vec d\rvert^2=r^2+t\bigl(2\,\vec d\cdot\vec u+t\lvert\vec d\rvert^2\bigr) $$
である。
段 2(共有点の $t$)。直線の点 $\vec p_0+t\vec d$ が円の上にあるのは、段 1 の式が $r^2$ に等しいとき、つまり
$$ t\bigl(2\,\vec d\cdot\vec u+t\lvert\vec d\rvert^2\bigr)=0 $$
のときである。解は $t=0$(点 $P_0$)と $t=-\dfrac{2\,\vec d\cdot\vec u}{\lvert\vec d\rvert^2}$ である。
段 3(1 を示す)。$\vec d\cdot\vec u=0$ なら、段 2 の 2 つの解はどちらも $0$ で、共有点は $P_0$ だけである。$\vec d\cdot\vec u\ne0$ なら、2 つ目の解は $0$ でなく、prf-vel-line の段 3 と同じ理由で $t$ が違えば点も違うので、$P_0$ と異なる共有点がもう 1 つある。これで 1 が示せた。
段 4(2 を示す)。1 から、接線は $P_0$ を通り $\vec u$ に垂直な直線、つまり $P_0$ を通り法線ベクトル $\vec u$ の直線である($\vec u\ne\vec 0$ は $\lvert\vec u\rvert=r>0$ から分かる)。thm-vel-line により、そのベクトル方程式は $\vec u\cdot(\vec p-\vec p_0)=0$ である。$\vec p-\vec p_0=(\vec p-\vec c)-\vec u$ なので
$$ \vec u\cdot(\vec p-\vec p_0)=\vec u\cdot(\vec p-\vec c)-\lvert\vec u\rvert^2=(\vec p_0-\vec c)\cdot(\vec p-\vec c)-r^2 $$
であり、これが $0$ であることは $(\vec p_0-\vec c)\cdot(\vec p-\vec c)=r^2$ と同じである。$\square$

接線の式は、円の式 $(\vec p-\vec c)\cdot(\vec p-\vec c)=r^2$ の 2 つの $\vec p$ の片方を $\vec p_0$ に替えた形をしている。成分で書くと、中心 $(a,b)$、接点 $(x_0,y_0)$ のとき $(x_0-a)(x-a)+(y_0-b)(y-b)=r^2$ である。
中心 C(1,2)、半径 5 の円と、点 P0(4,6) での接線 3x+4y=36(赤)。P0 を通っても半径に垂直でない方向 (1,1) の直線(点線)は、もう 1 点 (-3,-1) で円と交わる 中心 C(1,2)、半径 5 の円と、点 P0(4,6) での接線 3x+4y=36(赤)。P0 を通っても半径に垂直でない方向 (1,1) の直線(点線)は、もう 1 点 (-3,-1) で円と交わる

接線と、接線でない直線

ex-vel-start-circle の円($\vec c=(1,2)$、$r=5$)と点 $P_0(4,6)$ で考える(図 3)。$\vec p_0-\vec c=(3,4)$ である。
(1) 接線は $(3,4)\cdot(x-1,\ y-2)=25$、つまり $3(x-1)+4(y-2)=25$ で、整理すると
$$ 3x+4y=36 $$
である。$P_0$ では $12+24=36$ を満たす。接線の上の点 $(0,9)$ では、中心からの距離の 2 乗は $1+49=50$ で、$r^2=25$ より大きい。実際、prf-vel-tangent の段 1 で $\vec d\cdot\vec u=0$ とすると $\lvert\vec p-\vec c\rvert^2=r^2+t^2\lvert\vec d\rvert^2$ となり、接線の上の $P_0$ 以外の点は円の外にある。
(2) $P_0$ を通り方向ベクトル $\vec d=(1,1)$ の直線では、$\vec d\cdot(\vec p_0-\vec c)=3+4=7\ne0$ である。prf-vel-tangent の段 2 の 2 つ目の解は $t=-\dfrac{2\cdot7}{2}=-7$ で、点 $(4,6)-7(1,1)=(-3,-1)$ が得られる。$(-3-1)^2+(-1-2)^2=16+9=25$ なので、確かに円の上にある。

中心が原点の円 $x^2+y^2=r^2$ では、接線は $x_0x+y_0y=r^2$ になる。円の外の点 $(x_1,y_1)$ に対して同じ形の式 $x_1x+y_1y=r^2$ が表す直線(極線)は、その点から引いた 2 本の接線の接点を結ぶ直線であり、円の接線と極線 で扱う。直線と円の共有点の個数を、中心と直線の距離で判定する方法は 円と直線の位置関係 で扱う。

2 つの形を比べる

直線の 2 つの形は、同じ直線を表していても得意なことが違う。

観点媒介変数の形 $\vec p=\vec a+t\vec d$法線の形 $\vec n\cdot(\vec p-\vec a)=0$
決めるもの1 点と方向ベクトル1 点と法線ベクトル
得意なこと直線の上の点を作る・動かす(ex-vel-foot)点が直線の上にあるかを代入して判定する
成分で書くと$x=x_0+d_1t$、$y=y_0+d_2t$$n_1x+n_2y=c$
線分・半直線$t$ の範囲を制限すれば表せる(ex-vel-range)不等式を加えないと表せない
空間で同じ式を使うと直線を表す平面を表す(ex-vel-space)

最後の行が、空間で直線を扱うときの分かれ目になる。空間では法線の形の式 1 本では直線にならず、1 次方程式が 2 本要る。これは 空間の直線の方程式 で扱う。

例と反例

thm-vel-line と def-vel-line の仮定を 1 つずつ外すと、次のように崩れる。

外す条件反例成り立たなくなること
$\vec d\ne\vec 0$$\vec d=\vec 0$(ex-vel-zero-d)媒介変数の形が直線を表す(1 点になる)
$\vec n\ne\vec 0$$\vec n=\vec 0$(ex-vel-zero-n)法線の形が直線を表す(平面全体か、点が 1 つもない)
$\vec n\cdot\vec d=0$$\vec d=(2,1)$、$\vec n=(1,1)$(ex-vel-not-perp)2 つの形が同じ直線を表す($A$ で交わる別の直線になる)
$t$ がすべての実数を動く$0\le t\le1$、$t\ge0$(ex-vel-range)媒介変数の形が直線全体を表す(線分・半直線になる)
平面の中で考える空間の $\vec n\cdot(\vec p-\vec a)=0$(ex-vel-space)法線の形が直線を表す(平面になる)
反例:方向ベクトルが $\vec 0$

$\vec d=\vec 0$ とすると、$\vec p=\vec a+t\vec 0=\vec a$ で、どの $t$ でも同じ点 $A$ になる。媒介変数の形が表すのは 1 点 $A$ だけで、直線ではない。thm-vel-line の段 3 の「$t$ はただ 1 つ」も崩れる(どの $t$ でも同じ点を表す)。

反例:法線ベクトルが $\vec 0$

$\vec n=\vec 0$ とすると、$\vec 0\cdot(\vec p-\vec a)=0$ はすべての点 $P$ で成り立ち、式が表すのは平面全体である。成分で書いた $0x+0y=c$ の形では、$c=0$ なら平面全体、$c\ne0$ なら $0=c$ を満たす点がないので空集合(点が 1 つもない)になる。

反例:垂直でない 2 つのベクトル

$A(1,2)$、$\vec d=(2,1)$、$\vec n=(1,1)$ とすると、$\vec n\cdot\vec d=3\ne0$ である。媒介変数の形 $\vec p=(1,2)+t(2,1)$ は直線 $x-2y+3=0$(ex-vel-start-param)、法線の形 $(1,1)\cdot(x-1,\ y-2)=0$ は直線 $x+y=3$ で、別の直線である。連立して解くと $x=1$、$y=2$ で、2 本は $A$ だけで交わる。たとえば $t=1$ の点 $(3,3)$ は $3+3=6\ne3$ なので、法線の形の直線の上にない。prf-vel-line の段 1 で使った $\vec n\cdot\vec d=0$ が崩れている。

媒介変数 t の範囲を 0 以上 1 以下に制限すると線分 AB になる(左)。t を 0 以上に制限すると A から出る半直線になる(右) 媒介変数 t の範囲を 0 以上 1 以下に制限すると線分 AB になる(左)。t を 0 以上に制限すると A から出る半直線になる(右)

反例:$t$ の範囲を制限する

$A(1,2)$、$B(3,3)$ とし、$\vec p=\vec a+t(\vec b-\vec a)=(1+2t,\ 2+t)$ とする(図 4)。

  • $0\le t\le1$ に制限すると、表すのは線分 $AB$ である($t=\dfrac12$ で中点 $(2,\ \dfrac52)$)。
  • $t\ge0$ に制限すると、表すのは $A$ から $B$ の向きに出る半直線である($t=2$ の $(5,4)$ は入るが、$t=-1$ の $(-1,1)$ は入らない)。
    どちらも直線全体ではない。点の範囲を $t$ の範囲で指定できるのは媒介変数の形の利点で、点が線分や三角形の上を動くときの範囲は 点の存在範囲と凸結合 で扱う。
反例:空間では法線の形は平面になる

空間で、原点 $O$ を通り $\vec n=(0,0,1)$ に垂直な点の全体 $\vec n\cdot\vec p=0$ を考える。$\vec p=(x,y,z)$ とすると、式は $z=0$ で、これは $xy$ 平面全体である。$(1,0,0)$ の向きの直線も $(0,1,0)$ の向きの直線もこの中に入っている。空間では「ある向きに垂直な向き」が 1 つに決まらないので、lem-vel-perp が成り立たず、法線の形の式 1 本は直線でなく平面を表す(空間の平面と法線ベクトル)。

演習

法線の形から媒介変数の形へ

点 $(-1,3)$ を通り、法線ベクトルが $(2,5)$ の直線を、成分の式と媒介変数の形の 2 通りで書け。

解答を開く

法線の形は $2(x+1)+5(y-3)=0$、つまり $2x+5y=13$ である。lem-vel-perp により方向ベクトルに $(-5,2)$ をとれる($(2,5)\cdot(-5,2)=-10+10=0$)ので、媒介変数の形は $\vec p=(-1,3)+t(-5,2)$ である。$t=1$ の点 $(-6,5)$ は $-12+25=13$ を満たす。

原点が中心の円の接線

円 $x^2+y^2=25$ の上の点 $(-3,4)$ における接線の方程式を求めよ。

解答を開く

thm-vel-tangent で $\vec c=\vec 0$、$\vec p_0=(-3,4)$ とすると、接線は $(-3,4)\cdot(x,y)=25$、つまり $-3x+4y=25$ である。$(-3,4)$ では $9+16=25$ を満たす。

直線と円の共有点

直線 $\vec p=(0,-5)+t(1,1)$ と円 $x^2+y^2=25$ の共有点を求めよ。

解答を開く

$\vec p=(t,\ t-5)$ を $\lvert\vec p\rvert^2=25$ に代入すると $t^2+(t-5)^2=25$、つまり $2t^2-10t=0$ で、$t=0,\ 5$ である。共有点は $(0,-5)$ と $(5,0)$ である。$(0,-5)$ での円の接線は thm-vel-tangent により $-5y=25$、つまり $y=-5$ で、方向ベクトル $(1,1)$ はこれと平行でないので、2 つ目の共有点があることと合っている。

大学数学で見る:アフィン部分空間の 2 つの表し方

像による表示と方程式による表示

直線 $\{\vec a+t\vec d\}$ は、原点を通る直線 $\{t\vec d\}$(1 次元の部分空間)を $\vec a$ だけ平行移動したものである。大学では、部分空間を平行移動した集合を アフィン部分空間 という。この記事の 2 つの形は、アフィン部分空間の 2 つの表し方、つまり「写像 $t\mapsto\vec a+t\vec d$ の像」としての表し方(媒介変数の形)と、「1 次関数 $\vec p\mapsto\vec n\cdot\vec p$ の値が一定の点の集まり」としての表し方(法線の形)の、いちばん簡単な場合である。

次元の数え方と、一般の次元の場合を開く

$n$ 次元の空間 $\mathbb{R}^n$ の $k$ 次元のアフィン部分空間は、媒介変数 $k$ 個を使った形 $\vec p=\vec a+t_1\vec d_1+\dots+t_k\vec d_k$($\vec d_1,\dots,\vec d_k$ は 1 次独立)で書け、また $n-k$ 本の 1 次方程式の連立の解の全体としても書ける。「媒介変数の個数 $+$ 方程式の本数 $=n$」という数え方になる。

  • 平面($n=2$)の直線($k=1$):媒介変数 1 個、方程式 1 本。この記事の場合である。
  • 空間($n=3$)の直線($k=1$):媒介変数 1 個、方程式 2 本(空間の直線の方程式)。
  • 空間の平面($k=2$):媒介変数 2 個、方程式 1 本(空間の平面と法線ベクトル)。

方程式 1 本 $\vec a\cdot\vec x=b$($\vec a\ne\vec 0$)の解の全体を $\mathbb{R}^n$ の 超平面 といい、$\vec a$ をその法線ベクトルとみなせる。超平面は $\{\vec x\mid\vec a\cdot(\vec x-\vec x_0)=0\}$($\vec x_0$ は超平面の 1 点)とも書け、これはこの記事の法線の形そのものである(BV04 の §2.2.1)。また、2 点を通る直線を $\theta\vec x_1+(1-\theta)\vec x_2$ と書く見方と、連立 1 次方程式の解の全体がアフィン部分空間になること、逆にどのアフィン部分空間も連立 1 次方程式の解の全体として書けることが BV04 の §2.1.1・§2.1.2(例 2.1)にある(この記事では一般の場合を証明しない)。

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関連項目

参考文献

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