表示可能∞圏

同義語:presentable ∞-categorypresentable infinity-category

概要

表示可能∞圏(presentable ∞-category)とは、小さい余極限をすべてもち、ある正則基数 $\kappa$ について $\kappa$ コンパクトな対象の本質的に小さい集まりから $\kappa$ フィルター余極限で生成される(到達可能な)∞圏である。空間の∞圏、前層の∞圏、スペクトラムの∞圏、Grothendieck アーベル圏の導来∞圏、∞トポスが例であり、Simpson の定理により、表示可能∞圏は小さい∞圏上の前層の∞圏の到達可能な局所化にほかならない。表示可能∞圏では小さい極限を保つ前層が表現可能であり、そこから小さい極限の存在と、余極限を保つ関手が右随伴をもつという随伴関手定理が従う。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: ∞圏, 余極限(∞圏), 前層(∞圏), 随伴関手(∞圏)

集合・アーベル群・位相空間上の層など、よく使う圏の多くは、小さい余極限をすべてもち、しかも「小さい」対象の小さい集まりから余極限で組み立てられる。通常の圏ではこれを局所表示可能圏という(組合せ的モデル圏 の定義「λ 表示可能な対象と局所表示可能圏」)。表示可能∞圏はその ∞圏 版であり、小さい余極限をすべてもち、十分大きい正則基数 $\kappa$ について $\kappa$ コンパクトな対象の小さい集まりから $\kappa$ フィルター余極限で生成される∞圏をいう。空間の∞圏、前層(∞圏) の∞圏、スペクトラムの∞圏、導来∞圏、∞トポス はすべて表示可能である。
表示可能性の価値は、「余極限をもつ」という半分の仮定から、極限の存在と随伴の存在というもう半分が出てくることにある。表示可能∞圏は前層の∞圏の局所化にほかならず(Simpson の定理)、極限を保つ前層は表現可能であり(表現可能性定理)、そこから小さい極限の存在と随伴関手定理が従う。この記事では、局所化が余極限を受け継ぐこと、表示可能∞圏が小さい極限をもつこと、余極限を保つ関手が右随伴をもつことを証明し、半順序集合の場合と、条件を外したときの反例を確かめる。

規約と定義

∞圏は 準圏 を意味する。Grothendieck宇宙 $\mathbb U\in\mathbb V$ を固定し、$\mathbb U$ に属するものを小さいという。小さい Kan 複体のなす空間の∞圏を $\mathcal S$、$\mathbb V$ に属する Kan 複体のなす∞圏を $\widehat{\mathcal S}$ と書く。∞圏 $\mathcal C$ が局所小であるとは、写像空間 $\operatorname{Map}_{\mathcal C}(x,y)$(写像空間(∞圏))がすべて小さい Kan 複体と同値であることをいう。以下 $\kappa$ は正則基数を表し、単体的集合が $\kappa$ 小さい とは非退化な単体が $\kappa$ 個未満であることをいう。

κ フィルター∞圏

∞圏 $\mathcal I$ が $\kappa$ フィルター的 であるとは、$\kappa$ 小さいすべての単体的集合 $K$ について、すべての写像 $f\colon K\to\mathcal I$ が右錐 $K^{\triangleright}=K\star\Delta^0$ へ延びることをいう(HTT09 Definition 5.3.1.7、p. 382)。$\omega$ フィルター的なものを単にフィルター的という。$\kappa$ フィルター的な小さい∞圏を添字とする余極限を $\kappa$ フィルター余極限 という。

半順序集合 $A$ の脈体が $\kappa$ フィルター的であることは、$A$ の $\kappa$ 個未満の元からなる部分集合がいつも上界をもつことと同値である(HTT09 Example 5.3.1.8、p. 383)。とくに有向集合の脈体はフィルター的である。

κ コンパクト対象と到達可能∞圏

$\mathcal C$ を小さい $\kappa$ フィルター余極限をすべてもつ∞圏とする。

  1. 対象 $C$ が $\kappa$ コンパクト であるとは、$C$ が余表現する関手 $\operatorname{Map}_{\mathcal C}(C,-)\colon\mathcal C\to\widehat{\mathcal S}$ が小さい $\kappa$ フィルター余極限を保つことをいう(HTT09 Definition 5.3.4.5、p. 396)。$\omega$ コンパクトな対象を単にコンパクトという。$\kappa$ コンパクトな対象のなす充満部分∞圏を $\mathcal C^{\kappa}$ と書く。
  2. $\mathcal C$ が $\kappa$ 到達可能 であるとは、$\mathcal C$ が局所小であり、$\mathcal C^{\kappa}$ が本質的に小さく(小さい∞圏と圏同値で)、$\mathcal C^{\kappa}$ を含み小さい $\kappa$ フィルター余極限で閉じた $\mathcal C$ の充満部分∞圏が $\mathcal C$ 自身に限ることをいう。ある $\kappa$ について $\kappa$ 到達可能であるとき、$\mathcal C$ は到達可能(accessible)であるという。

2 は、HTT09 Definition 5.4.2.1(p. 423)の $\kappa$ 到達可能性を、それと同値な同 Proposition 5.4.2.2 の (2)(pp. 423–424)の形で述べたものである。到達可能な∞圏の間の関手が、ある $\kappa$ について小さい $\kappa$ フィルター余極限を保つとき、その関手は到達可能であるという(同 Definition 5.4.2.5、p. 425)。

表示可能∞圏

∞圏 $\mathcal C$ が 表示可能(presentable)であるとは、$\mathcal C$ が到達可能であり、小さい余極限をすべてもつことをいう(HTT09 Definition 5.5.0.1、p. 456)。

通常の圏で「局所表示可能」とよばれる条件にあたる(HTT09 Remark 5.5.0.2、p. 457)。$\kappa$ コンパクトな対象は「大きさが $\kappa$ 未満の対象」の抽象化である。集合の圏では、コンパクトな対象はちょうど有限集合であり、すべての集合は有限部分集合のフィルター余極限である(Ind対象 の補題「有限集合のコンパクト性」と定理「集合の圏は有限集合の圏のInd対象の圏である」)。表示可能性は、この「小さい部品から余極限で組み立てる」構造を、写像空間をもつ∞圏で要求するものである。

例

代表的な表示可能∞圏
  1. 空間の∞圏 $\mathcal S$ は表示可能である(HTT09 Example 5.5.1.8、p. 461)。
  2. 小さい∞圏 $\mathcal D$ について、前層の∞圏 $\mathcal P(\mathcal D)=\operatorname{Fun}(\mathcal D^{\mathrm{op}},\mathcal S)$ は表示可能である。到達可能であることは HTT09 Example 5.4.2.7(p. 425)、小さい余極限をもちそれが対象ごとに計算されることは同 Corollary 5.1.2.3(p. 319)による。
  3. 表示可能∞圏 $\mathcal C$ と小さい単体的集合 $K$ について、関手∞圏 $\operatorname{Fun}(K,\mathcal C)$ は表示可能であり(HTT09 Proposition 5.5.3.6、p. 467)、表示可能∞圏の小さい族の積も表示可能である(同 Proposition 5.5.3.5、p. 467)。
  4. 表示可能∞圏 $\mathcal C$ のスペクトラム対象の∞圏 $\mathrm{Sp}(\mathcal C)$ は表示可能である(Lur17 Proposition 1.4.4.4 の (1)、p. 156)。$\mathcal C=\mathcal S$ の場合が スペクトラム(ホモトピー論) の∞圏である。
  5. Grothendieck アーベル圏 $\mathcal A$(たとえば環 $R$ 上の加群の圏)の導来∞圏 $\mathcal D(\mathcal A)$ は表示可能である(Lur17 Proposition 1.3.5.21 の (1)、p. 129)。
  6. 組合せ的な単体的モデル圏 $\mathbf A$ について、両ファイブラントな対象のなす単体的圏 $\mathbf A^{\circ}$ のホモトピー整合的脈体 $N(\mathbf A^{\circ})$ は表示可能であり、逆にすべての表示可能∞圏はこの形の∞圏と圏同値である(HTT09 Proposition A.3.7.6、p. 911)。
    いずれもこの記事では証明しない。∞トポス は前層の∞圏の到達可能な局所化として定義されるので、下の thm-pres-simpson により表示可能である。

半順序集合の場合は、表示可能性が完備束であることに帰着する。

表示可能な半順序集合は完備束

小さい半順序集合 $A$ について、脈体 $N(A)$ が表示可能なら、$A$ のすべての部分集合は上限と下限をもつ。すなわち $A$ は完備束である。逆に $A$ が完備束なら $N(A)$ は表示可能である(HTT09 Remark 5.5.2.5、p. 464。逆はこの記事では証明しない)。

$B\subset A$ を部分集合とし、$B$ を離散的な(等号だけを順序とする)半順序集合とみて、包含が定める図式 $p\colon N(B)\to N(A)$ を考える。$A$ が小さいので $N(B)$ は小さい単体的集合であり、$N(A)$ は表示可能なので $p$ は余極限をもつ。余極限(∞圏) の命題「半順序集合の余極限は上限」により、頂点の像 $B$ は $A$ で上限をもつ。下限については、$B$ の下界全体の集合 $B^{\flat}$ の上限 $m=\sup B^{\flat}$ をとる。$B$ の各元 $b$ は $B^{\flat}$ の上界なので $m\le b$ であり、$m$ は $B$ の下界である。$B$ の下界 $\ell$ は $B^{\flat}$ に属するので $\ell\le m$ である。よって $m$ は $B$ の下限である。$\square$

局所化と Simpson の定理

局所化

∞圏の間の関手 $L\colon\mathcal C\to\mathcal D$ が 局所化 であるとは、$L$ が充満忠実関手(∞圏)である右随伴 $G\colon\mathcal D\to\mathcal C$ をもつことをいう(HTT09 Definition 5.2.7.2、p. 365)。このとき $\mathcal D$ を $\mathcal C$ の局所化ともいう。$\mathcal C$ が到達可能で、合成 $GL\colon\mathcal C\to\mathcal C$ が到達可能な関手であるとき、$L$ を到達可能な局所化という。$\mathcal C$ が到達可能なとき、これは $\mathcal D$ が到達可能であることと同値である(同 Proposition 5.5.1.2、p. 458)。

$G$ が充満忠実なので、$\mathcal D$ は $G$ によって $\mathcal C$ の充満部分∞圏とみなせ、$L$ は各対象 $c$ にその部分∞圏の中で「最もよく近似する」対象 $Lc$ を対応させる。通常の圏では反射部分圏にあたる。

局所化は余極限を受け継ぐ

$L\colon\mathcal C\to\mathcal D$ を局所化、$G$ をその充満忠実な右随伴とし、単体的集合 $K$ について、$\mathcal C$ は $K$ を添字とする余極限をすべてもつとする。このとき $\mathcal D$ も $K$ を添字とする余極限をすべてもち、図式 $q\colon K\to\mathcal D$ の余極限の頂点は $L\bigl(\operatorname{colim}_{\mathcal C}(G\circ q)\bigr)$ である(HTT09 Remark 5.2.7.5、p. 367)。

単位で余錐を送り、写像空間で判定する

段 1(置き換え)。 $G$ は充満忠実なので、その本質的像($G$ の値と同値な対象のなす充満部分∞圏)$\mathcal D'\subset\mathcal C$ への圏同値を与える。余極限の存在と頂点は圏同値で移るので、$\mathcal D=\mathcal D'$ で $G$ は包含としてよい。このとき随伴の定義(随伴関手(∞圏) の定義「∞圏の随伴」)により、単位 $\eta_c\colon c\to Lc$ との合成が、すべての $c\in\mathcal C$、$y\in\mathcal D$ について空間の同値
$$ \eta_c^*\colon\operatorname{Map}_{\mathcal C}(Lc,y)\xrightarrow{\ \simeq\ }\operatorname{Map}_{\mathcal C}(c,y) $$
を与える。
段 2(余錐を送る)。 $q\colon K\to\mathcal D\subset\mathcal C$ とし、$\mathcal C$ での余極限の余錐 $\lambda\colon K^{\triangleright}\to\mathcal C$ をとり、その頂点を $Q$ とする。頂点への射影 $\mathcal C_{q/}\to\mathcal C$ は左ファイブレーションである(左ファイブレーションと右ファイブレーション の定理「スライスの射影は右ファイブレーション」)。左ホーン $\Lambda^1_0\subset\Delta^1$ に対する持ち上げにより、辺 $\eta_Q\colon Q\to LQ$ は、$\lambda$ を始点とする $\mathcal C_{q/}$ の辺 $\lambda\to\mu$ に持ち上がる。$\mu$ は頂点 $LQ$ の余錐で、その頂点はすべて $\mathcal D$ に属するので、$\mu$ は $\mathcal D$ の余錐である(充満部分∞圏は、頂点がすべて属する単体をすべて含む)。
段 3(判定)。 $y\in\mathcal D$ について、$\mu$ が誘導する写像 $\operatorname{Map}(LQ,y)\to\lim_{k\in K^{\mathrm{op}}}\operatorname{Map}(q(k),y)$ は、$\mu$ が $\lambda$ に $\eta_Q$ を合成した余錐であることから、段 1 の同値 $\eta_Q^*$ と、$\lambda$ が誘導する写像 $\operatorname{Map}(Q,y)\to\lim_k\operatorname{Map}(q(k),y)$ との合成にホモトピックである。後者は $\lambda$ が余極限なので同値である(余極限(∞圏) の命題「写像空間による判定」)。$\mathcal D$ の写像空間は $\mathcal C$ の写像空間と同じなので、同じ命題を $\mathcal D$ で使うと $\mu$ は $\mathcal D$ での $q$ の余極限である。$\square$

逆向きの「前層の∞圏から始めて局所化で表示可能∞圏が尽きる」ことが Simpson の定理である。

Simpson の定理

∞圏 $\mathcal C$ について、次は同値である(HTT09 Theorem 5.5.1.1 の (1)・(5)・(6)、pp. 457–458)。

  1. $\mathcal C$ は表示可能である。
  2. 小さい∞圏 $\mathcal D$ と、到達可能な局所化 $\mathcal P(\mathcal D)\to\mathcal C$ がある。
  3. $\mathcal C$ は局所小で小さい余極限をすべてもち、ある $\kappa$ と $\kappa$ コンパクトな対象の小さい集合 $T$ があって、$\mathcal C$ のすべての対象は、$T$ の張る充満部分∞圏に値をとる小さい図式の余極限である。
    この記事では証明しない。

2 から「小さい余極限をすべてもつ」ことが従う部分は、ex-pres-basic の 2 と prop-pres-localization-colimits にほかならない。同じ定理から、表示可能∞圏の到達可能な局所化はまた表示可能である(HTT09 Remark 5.5.1.6、p. 460)。表示可能∞圏 $\mathcal C$ の射の小さい集合 $S$ について、$S$ 局所的な対象のなす充満部分∞圏はそのような局所化になる(同 Proposition 5.5.4.15、p. 482。Bousfield局所化)。

表現可能性と極限

表現可能性定理

$\mathcal C$ を表示可能∞圏とする。関手 $F\colon\mathcal C^{\mathrm{op}}\to\mathcal S$ が表現可能(表現可能関手(∞圏))であることと、$F$ が小さい極限を保つことは同値である(HTT09 Proposition 5.5.2.2、p. 463)。

表現可能な関手 $\operatorname{Map}_{\mathcal C}(-,x)$ が極限を保つ、つまり $\mathcal C$ の余極限を $\mathcal S$ の極限へ送ることは、余極限(∞圏) の命題「写像空間による判定」の言い換えであり、任意の∞圏で成り立つ。表示可能性が要るのは逆向きで、この向きはこの記事では証明しない。通常の圏では、集合値の前層について同じ形の主張が局所表示可能圏で成り立つ(HTT09 Proposition 5.0.0.1 の前後、p. 314)。

表示可能∞圏は小さい極限をもつ

表示可能∞圏 $\mathcal C$ は小さい極限をすべてもつ(HTT09 Corollary 5.5.2.4、p. 464)。とくに終対象をもつ。

前層の側で極限をとり、表現可能性定理で戻す

$\widehat{\mathcal P}(\mathcal C)=\operatorname{Fun}(\mathcal C^{\mathrm{op}},\widehat{\mathcal S})$ とし、米田埋め込み $j\colon\mathcal C\to\widehat{\mathcal P}(\mathcal C)$、$j(x)=\operatorname{Map}_{\mathcal C}(-,x)$ をとる。$j$ は充満忠実である(米田の補題(∞圏)。宇宙を $\mathbb V$ に上げて使う)。$\widehat{\mathcal P}(\mathcal C)$ は小さい極限をすべてもち、それは対象ごとに $\widehat{\mathcal S}$ で計算される(HTT09 Corollary 5.1.2.3 の双対、p. 319)。
$p\colon K\to\mathcal C$ を小さい図式とし、$F=\lim(j\circ p)$ とおく。$F(X)\simeq\lim_k\operatorname{Map}_{\mathcal C}(X,p(k))$ は小さい空間の小さい極限なので小さい空間と同値であり、$F$ は $\mathcal S$ に値をとるとみなせる。各 $j(p(k))$ は小さい極限を保ち、極限は極限と交換するので(同 Lemma 5.5.2.3 の双対、p. 463)、$F$ も小さい極限を保つ。thm-pres-representability により $F\simeq j(Y)$ となる $Y\in\mathcal C$ がある。
したがって、$j$ の本質的像 $\mathcal C'$ は、$\widehat{\mathcal P}(\mathcal C)$ の小さい極限で閉じている。

閉じていることから $\mathcal C$ が極限をもつことを開く

極限の錐は錐の∞圏 $\widehat{\mathcal P}(\mathcal C)_{/jp}$ の終対象であり、頂点への射影は右ファイブレーションである(左ファイブレーションと右ファイブレーション の定理「スライスの射影は右ファイブレーション」)。同値 $e\colon j(Y)\to F$ を、$F$ を頂点とする極限の錐を終点として $\Lambda^1_1$ の持ち上げで持ち上げると、頂点 $j(Y)$ の錐への辺が得られ、それは Joyalの定理(準圏がKan複体である条件) の補題「同値の反映」により同値である。終対象(∞圏) の命題「同値への不変性」により、頂点 $j(Y)$ のこの錐も極限である。その頂点はすべて $\mathcal C'$ に属するので、錐は充満部分∞圏 $\mathcal C'$ の錐であり、$\mathcal C'$ の写像空間は $\widehat{\mathcal P}(\mathcal C)$ の写像空間と同じなので、写像空間による判定(余極限(∞圏) の命題「写像空間による判定」の双対)により $\mathcal C'$ での極限でもある。$j$ は $\mathcal C$ から $\mathcal C'$ への圏同値なので、$\mathcal C$ は $p$ の極限をもつ。$K=\emptyset$ の極限が終対象である。$\square$

随伴関手定理

随伴関手定理 の Freyd の定理では、極限を保つ関手が左随伴をもつために解集合条件が要る。表示可能∞圏では、この大きさの条件が到達可能性に吸収される。

表示可能∞圏の随伴関手定理

$F\colon\mathcal C\to\mathcal D$ を表示可能∞圏の間の関手とする(HTT09 Corollary 5.5.2.9、p. 466)。

  1. $F$ が右随伴をもつことと、$F$ が小さい余極限を保つことは同値である。
  2. $F$ が左随伴をもつことと、$F$ が到達可能で小さい極限を保つことは同値である。
    1 の「余極限を保てば右随伴をもつ」向きは、$\mathcal D$ が局所小でありさえすれば成り立つ(同 Remark 5.5.2.10、p. 466)。2 はこの記事では証明しない。
1:各対象の上の前層を表現する

右随伴をもてば余極限を保つことは、随伴関手(∞圏) の命題「左随伴は余極限を保つ」である。
逆に $F$ が小さい余極限を保つとし、$\mathcal D$ は局所小とする。$d\in\mathcal D$ を固定し、$F_d=\operatorname{Map}_{\mathcal D}(F(-),d)\colon\mathcal C^{\mathrm{op}}\to\mathcal S$ とおく。$\mathcal C$ の余極限は $F$ で $\mathcal D$ の余極限に移り、$\operatorname{Map}_{\mathcal D}(-,d)$ は $\mathcal D$ の余極限を極限に送るので、$F_d$ は小さい極限を保つ。$\mathcal C$ は表示可能なので、thm-pres-representability により $F_d\simeq\operatorname{Map}_{\mathcal C}(-,c_d)$ となる $c_d\in\mathcal C$ がある。
最後に、すべての $d$ について $F_d$ が表現可能なら $F$ が右随伴 $d\mapsto c_d$ をもつことを確かめる。HTT09 Lemma 5.2.4.1 を $\mathcal D$ の各対象に当てた Proposition 5.2.4.2 の証明(pp. 350–351)により、$F$ が右随伴をもつことは、すべての $d$ について、右ファイブレーション $\mathcal D_{/d}\to\mathcal D$ の $F$ に沿った引き戻し $\mathcal C\times_{\mathcal D}\mathcal D_{/d}\to\mathcal C$ の全空間が終対象をもつことと同値である。

この条件が $F_d$ の表現可能性と同じであることを開く

$\mathcal D_{/d}$ は終対象 $\mathrm{id}_d$ をもつので、右ファイブレーション $\mathcal D_{/d}\to\mathcal D$ を分類する前層は $d$ で表現され、$\operatorname{Map}_{\mathcal D}(-,d)$ と同値である(HTT09 Proposition 4.4.4.5、p. 300)。右ファイブレーションの分類は普遍右ファイブレーションからの引き戻しで定まるので(同 Definition 3.3.2.2・Proposition 3.3.2.5、pp. 211–212)、$F$ に沿った引き戻しは、分類する前層を $F^{\mathrm{op}}$ と合成した $F_d$ で分類される。同じ Proposition 4.4.4.5 により、右ファイブレーションの全空間が終対象をもつことと、それを分類する前層が表現可能であることは同値である。前段で示したとおり $F_d$ は表現可能なので、条件が満たされる。$\square$

証明の最後の段で使った、右ファイブレーションと前層の対応は 直線化と非直線化 の主題である。

反例

表示可能性の 2 つの条件と、局所化の条件は、どれも外せない。

外す条件反例成り立たなくなること
prop-pres-limits の「到達可能」小さい順序数全体の半順序集合の脈体 $N(\mathrm{Ord}_{\mathbb U})$小さい極限をもつこと(終対象がない)
prop-pres-limits の「小さい余極限をもつ」2 点の離散的な∞圏 $N(\{a,b\})$小さい極限をもつこと($a$ と $b$ の積がない)
thm-pres-aft の 1 の「$\mathcal C$ が表示可能」$N(\mathrm{Ord}_{\mathbb U})\to\Delta^0$余極限を保つ関手が右随伴をもつこと
prop-pres-localization-colimits の「右随伴が充満忠実」最小元を選ぶ関手 $\Delta^0\to N(V)$、$V=\{0,a,b\}$($0< a$、$0< b$)行き先が小さい余極限をもつこと
反例:小さい順序数全体

$\mathrm{Ord}_{\mathbb U}$ を $\mathbb U$ に属する順序数全体の集合とし、通常の大小で半順序集合とみる。脈体 $N(\mathrm{Ord}_{\mathbb U})$ は局所小で小さい余極限をすべてもつが、終対象をもたない。したがって prop-pres-limits により表示可能でなく、余極限をもつので到達可能でない。さらに、ただ 1 つの関手 $N(\mathrm{Ord}_{\mathbb U})\to\Delta^0$ は小さい余極限を保つが、右随伴をもたない。

写像空間は空か一点なので局所小である。小さい図式 $p\colon K\to N(\mathrm{Ord}_{\mathbb U})$ の頂点の像は $\mathbb U$ に属する順序数の小さい集合であり、その和集合は $\mathbb U$ に属する順序数でその上限である(順序数 の命題「順序数の集まりの整列性と上限」の 3。宇宙は小さい族の和集合で閉じている)。よって 余極限(∞圏) の命題「半順序集合の余極限は上限」により $p$ は余極限をもつ。一方、終対象は最大元にあたるが(終対象(∞圏) の命題「通常の終対象との一致」)、各 $\alpha$ について $\alpha+1>\alpha$ も $\mathbb U$ に属する(順序数 の同じ命題の 4)ので最大元はない。$\Delta^0$ では写像空間がすべて一点なので、どの余錐も余極限であり、$\Delta^0$ への関手は余極限を保つ。右随伴 $G$ があれば、すべての $\alpha$ について $\operatorname{Map}(\alpha,G(*))\simeq\operatorname{Map}_{\Delta^0}(*,*)\simeq *$ となり、$G(*)$ が終対象になって矛盾する。$\Delta^0=\mathcal P(\emptyset)$ は表示可能なので、外れた条件は始域の到達可能性だけである。$\square$

残りの 2 行の確認を開く

2 行目:$N(\{a,b\})$ は小さい∞圏で、射は恒等射だけなので冪等射はすべて分解し(冪等完備)、HTT09 Corollary 5.4.3.6(p. 431)により到達可能である。$a$ と $b$ の積 $P$ があれば $P$ から $a$ と $b$ の両方への射が要るが、そのような対象はない。同じ理由で $a$ と $b$ の余積もなく、小さい余極限をもたない。4 行目:$0$ は $V$ の最小元なので $N(V)$ の始対象であり、随伴関手(∞圏) の例「初めの対象を選ぶ関手」により $\Delta^0\to N(V)$ は $N(V)\to\Delta^0$ の左随伴である。$\Delta^0$ は小さい余極限をすべてもつが、右随伴 $N(V)\to\Delta^0$ は $\operatorname{Map}(a,b)=\emptyset$ を一点に送るので充満忠実でない。$N(V)$ では $\{a,b\}$ に上界がないので、余極限(∞圏) の命題「半順序集合の余極限は上限」により $a$ と $b$ の余積がない。$\square$

関連項目

参考文献

[1]
Jacob Lurie, Higher Topos Theory, Annals of Mathematics Studies 170, Princeton University Press, 2009, Definition 3.3.2.2・Proposition 3.3.2.5(pp. 211–212)、Proposition 4.4.4.5(p. 300)、Proposition 5.0.0.1 の前後(p. 314)、Corollary 5.1.2.3(p. 319)、Lemma 5.2.4.1・Proposition 5.2.4.2(pp. 350–351)、Definition 5.2.7.2(p. 365)、Remark 5.2.7.5(p. 367)、Definition 5.3.1.7・Example 5.3.1.8(pp. 382–383)、Definition 5.3.4.5(p. 396)、Definition 5.4.2.1・Proposition 5.4.2.2(pp. 423–424)、Definition 5.4.2.5・Example 5.4.2.7(p. 425)、Corollary 5.4.3.6(p. 431)、Definition 5.5.0.1・Remark 5.5.0.2(pp. 456–457)、Theorem 5.5.1.1(pp. 457–458)、Proposition 5.5.1.2(p. 458)、Remark 5.5.1.6(p. 460)、Example 5.5.1.8(p. 461)、Proposition 5.5.2.2(p. 463)、Lemma 5.5.2.3・Corollary 5.5.2.4・Remark 5.5.2.5(pp. 463–464)、Corollary 5.5.2.9・Remark 5.5.2.10(p. 466)、Propositions 5.5.3.5・5.5.3.6(p. 467)、Proposition 5.5.4.15(p. 482)、Proposition A.3.7.6(p. 911)

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