負のSobolev空間(negative Sobolev space)とは、開集合 $\Omega$ と $1\le p<\infty$ について $W^{1,p}_0(\Omega)$ の双対空間 $W^{-1,p'}(\Omega)$ のことで、$p=2$ なら $H^{-1}(\Omega)$ と書く。その元は $L^{p'}$ 関数による超関数 $f_0-\sum_i\partial_if_i$ として表され、ノルムは(成分の和の Sobolev ノルムについて)表示の $\max_i\|f_i\|_{p'}$ の最小値である。$H^1_0\subset L^2\subset H^{-1}$ の包含は連続で稠密であり、有界な領域では $-\Delta$ が $H^1_0$ から $H^{-1}$ への同型になる。2 次元以上では Dirac 測度は $H^{-1}$ に入らない。
前提知識: 零境界Sobolev空間, Hahn–Banachの定理, Lp空間, 超関数
楕円型の方程式 $-\Delta u=F$ を弱い意味で解くとき、右辺 $F$ には関数でないもの、たとえば $L^2$ 関数の微分 $\partial_1g$ も入れたい。そのような右辺は、試験関数 $v$ に $\int g\,\partial_1v$ を対応させる汎関数として扱える。この汎関数は $v$ の微分まで使わないと評価できないので、$L^2$ の双対ではなく、零境界Sobolev空間 $H^1_0(\Omega)$ の双対空間に入る。この双対空間を負のSobolev空間(negative Sobolev space)$H^{-1}(\Omega)$ という。より一般に $W^{1,p}_0(\Omega)$ の双対を $W^{-1,p'}(\Omega)$ と書く。
この記事では、$W^{-1,p'}(\Omega)$ のすべての元が $f_0-\sum_i\partial_if_i$($f_i\in L^{p'}$)の形の超関数として表されることを証明し、そのノルムが $\max_i\|f_i\|_{p'}$ で与えられることを示す。続いて $H^1_0\subset L^2\subset H^{-1}$ という包含とその稠密性、有界な領域で $-\Delta$ が $H^1_0$ から $H^{-1}$ への同型であることを示す。$p=1$ で稠密性が崩れる例、2 次元以上で Dirac 測度が $H^{-1}$ に入らない例も扱う。
$\Omega\subset\mathbb R^n$ を開集合、$1\le p< \infty$ とし、$p'$ を $\frac1p+\frac1{p'}=1$ で定める($p=1$ なら $p'=\infty$)。関数は実数値とする。$W^{1,p}_0(\Omega)$ は 零境界Sobolev空間 の定義のとおりとし、この記事ではそのノルムを
$$
\|v\|_{1,p}:=\|v\|_{L^p}+\sum_{i=1}^n\|\partial_iv\|_{L^p}
$$
とする。Sobolev空間の基本事項 のノルム $\bigl(\|v\|_p^p+\sum_i\|\partial_iv\|_p^p\bigr)^{1/p}$ とは $n+1$ 倍の範囲で同値なので、空間と位相は同じである。
$W^{1,p}_0(\Omega)$ 上の連続な線形汎関数全体を $W^{-1,p'}(\Omega)$ と書き、作用素ノルム
$$
\|F\|:=\sup\{|\langle F,v\rangle|\mid v\in W^{1,p}_0(\Omega),\ \|v\|_{1,p}\le1\}
$$
を入れる。$H^{-1}(\Omega):=W^{-1,2}(\Omega)$ は $H^1_0(\Omega)$ の双対である。
双対空間なので $W^{-1,p'}(\Omega)$ は Banach 空間である。記号の「$-1$」は、次の定理が示すとおり元が $L^{p'}$ 関数の 1 階の微分で書けることを、「$p'$」はその関数の可積分性を表す。
$n\ge2$ では 3 は成り立たない(ex-ns-dirac)。
$1\le p< \infty$、$F\in W^{-1,p'}(\Omega)$ とする。このとき $f_0,f_1,\dots,f_n\in L^{p'}(\Omega)$ で
$$
\langle F,v\rangle=\int_\Omega f_0v\,dx+\sum_{i=1}^n\int_\Omega f_i\,\partial_iv\,dx\qquad(v\in W^{1,p}_0(\Omega))
$$
かつ $\|F\|=\max_{0\le i\le n}\|f_i\|_{p'}$ となるものが存在する。逆に、任意の $f_0,\dots,f_n\in L^{p'}(\Omega)$ に対して右辺は $W^{-1,p'}(\Omega)$ の元を定め、そのノルムは $\max_i\|f_i\|_{p'}$ 以下である。
逆の主張から示す。Hölderの不等式 により
$$
\Bigl|\int f_0v+\sum_i\int f_i\,\partial_iv\Bigr|\le\|f_0\|_{p'}\|v\|_p+\sum_i\|f_i\|_{p'}\|\partial_iv\|_p\le\max_i\|f_i\|_{p'}\cdot\|v\|_{1,p}
$$
である。
本題を示す。$E:=L^p(\Omega)^{n+1}$ にノルム $\|(h_0,\dots,h_n)\|_E:=\sum_{i=0}^n\|h_i\|_p$ を入れ、
$$
T\colon W^{1,p}_0(\Omega)\to E,\qquad Tv:=(v,\partial_1v,\dots,\partial_nv)
$$
とおく。$\|Tv\|_E=\|v\|_{1,p}$ なので $T$ は等長な線形写像であり、像 $G:=T(W^{1,p}_0(\Omega))$ の上で $\lambda(Tv):=\langle F,v\rangle$ と定めた線形汎関数 $\lambda$ は $\|\lambda\|_{G^*}=\|F\|$ をみたす。Hahn–Banachの定理 の系「ノルムを保つ延長」により、$\Lambda\in E^*$ で $G$ 上で $\Lambda=\lambda$、$\|\Lambda\|_{E^*}=\|F\|$ となるものがある。
$i=0,\dots,n$ について、$h\in L^p(\Omega)$ を $i$ 番目の成分に置き他を $0$ とした元に $\Lambda$ を当てたものを $\Lambda_i(h)$ とおくと、$\Lambda_i\in L^p(\Omega)^*$ であり $\Lambda(h_0,\dots,h_n)=\sum_i\Lambda_i(h_i)$ である。Lebesgue 測度は $\Omega$ の上で σ-有限なので、$L^p$ の双対の表現(Lp空間 の注意「双対空間」。$p=1$ を含む)により、$f_i\in L^{p'}(\Omega)$ で $\Lambda_i(h)=\int f_ih$、$\|\Lambda_i\|=\|f_i\|_{p'}$ となるものがある。$v\in W^{1,p}_0(\Omega)$ について
$$
\langle F,v\rangle=\Lambda(Tv)=\int f_0v+\sum_{i=1}^n\int f_i\,\partial_iv
$$
である。
ノルムについて、$\|\Lambda\|_{E^*}=\max_i\|f_i\|_{p'}$ を示せば $\|F\|=\max_i\|f_i\|_{p'}$ となる。上界は最初の評価と同じ計算による。下界は、$i$ 番目の成分だけをもつ元に制限すると $\|\Lambda\|_{E^*}\ge\|\Lambda_i\|=\|f_i\|_{p'}$ となることから分かる。$\square$
$f_i$ は $F$ から一意には決まらない。たとえば $n=1$、$\Omega=(0,1)$ で $f_0=0$、$f_1=1$ とすると、$v\in C_c^\infty(0,1)$ について $\int_0^1v'=0$ なので、密度により $W^{1,p}_0(0,1)$ 全体で $F=0$ である。
$\Omega$ がある帯 $\{a< x_1< b\}$ に含まれる(たとえば有界)とする。このとき $F\in W^{-1,p'}(\Omega)$ は $f_0=0$ の形
$$
\langle F,v\rangle=\sum_{i=1}^n\int_\Omega f_i\,\partial_iv\,dx\qquad(f_i\in L^{p'}(\Omega))
$$
で表せる。
Poincaréの不等式 の定理「幅が有限な領域でのPoincaréの不等式」により $\|v\|_p\le(b-a)\|\partial_1v\|_p$ なので、$|||v|||:=\sum_{i=1}^n\|\partial_iv\|_p$ は $\|\cdot\|_{1,p}$ と同値なノルムである。$F$ はこのノルムについても連続である。prf-ns-representation で $E$ を $L^p(\Omega)^n$、$T$ を $v\mapsto(\partial_1v,\dots,\partial_nv)$ に替えると、$T$ は $|||\cdot|||$ について等長であり、同じ議論で $f_1,\dots,f_n$ が得られる。$\square$
この系で得られる $\max_i\|f_i\|_{p'}$ は、$|||\cdot|||$ に関する $F$ のノルムに等しい。元のノルム $\|\cdot\|_{1,p}$ に関する $\|F\|$ との等式は、$f_0=0$ の表示では一般に保てない(ex-ns-norm-f0)。
1.$\varphi\in C_c^\infty(\Omega)$ について $T_F(\varphi)=\int f_0\varphi+\sum_i\int f_i\partial_i\varphi$ であり、超関数の微分の定義 $(\partial_if_i)(\varphi)=-\int f_i\partial_i\varphi$ からこれは $f_0-\sum_i\partial_if_i$ である。$\varphi_k\to\varphi$ が 超関数 の意味で収束すれば台は 1 つのコンパクト集合に入り、$\varphi_k$ と $\partial_i\varphi_k$ は一様に収束するので $\|\varphi_k-\varphi\|_{1,p}\to0$ となり、$T_F$ は超関数である。$T_F=0$ なら $F$ は稠密な部分空間 $C_c^\infty(\Omega)$ の上で $0$ なので、連続性から $F=0$ である。
2.必要性は $F$ の連続性から明らかである。十分なら、$T$ は $W^{1,p}_0(\Omega)$ の稠密な部分空間 $C_c^\infty(\Omega)$ の上で有界なので、一様連続性から $W^{1,p}_0(\Omega)$ 上の連続な線形汎関数へ一意に延びる。$\square$
こうして $W^{-1,p'}(\Omega)$ は、超関数のうち $f_0-\sum_i\partial_if_i$($f_i\in L^{p'}(\Omega)$)の形に書けるもの全体と同一視できる。超関数 の言葉では、$L^{p'}$ 関数に 1 階の微分を高々 1 回施して足したものである。
$H^1_0(\Omega)\subset L^2(\Omega)$ は包含写像が連続である。$L^2(\Omega)$ の双対を Rieszの表現定理 で $L^2(\Omega)$ 自身と同一視すると、$f\in L^2(\Omega)$ に $v\mapsto\int fv$ を対応させる写像 $j\colon L^2(\Omega)\to H^{-1}(\Omega)$ が得られ、
$$
H^1_0(\Omega)\subset L^2(\Omega)\overset{j}{\hookrightarrow}H^{-1}(\Omega)
$$
という包含の列ができる。$j$ が単射であることは、$\int fv=0$ がすべての $v\in C_c^\infty(\Omega)$ で成り立てば $f=0$ となること(変分法の基本補題 の定理「変分法の基本補題」)による。このような三つ組は Gelfandの三つ組 の典型例である。
$1< p< \infty$ とし、$W^{1,p}_0(\Omega)\subset L^2(\Omega)$ で包含写像が連続であるとする($p=2$ なら常に成り立つ)。このとき $f\mapsto(v\mapsto\int fv)$ で定まる $j\colon L^2(\Omega)\to W^{-1,p'}(\Omega)$ は連続な単射で、像は稠密である。とくに $H^1_0(\Omega)\subset L^2(\Omega)\subset H^{-1}(\Omega)$ の各包含は連続で、像は稠密である。
連続性は $|\int fv|\le\|f\|_2\|v\|_2\le C\|f\|_2\|v\|_{1,p}$ から、単射性は上と同じである。
稠密性を示す。$1< p< \infty$ では $W^{1,p}(\Omega)$ は反射的で(Bre11 Proposition 9.1、p. 264)、その閉部分空間 $W^{1,p}_0(\Omega)$ も反射的である。Hahn–Banachの定理 の系「稠密性の判定」により、$W^{-1,p'}(\Omega)$ 上の連続な線形汎関数 $\Phi$ が $j(L^2)$ の上で $0$ なら $\Phi=0$ であることを示せばよい。反射性から、ある $u\in W^{1,p}_0(\Omega)$ があってすべての $F$ について $\Phi(F)=\langle F,u\rangle$ である。$\Phi$ が $j(L^2)$ の上で $0$ なので、すべての $f\in L^2(\Omega)$ について $\int fu=0$ である。仮定より $u\in L^2(\Omega)$ なので $f=u$ とおけば $\|u\|_2=0$、すなわち $u=0$ であり、$\Phi=0$ である。
$H^1_0(\Omega)$ が $L^2(\Omega)$ で稠密であることは、$C_c^\infty(\Omega)$ が $L^2(\Omega)$ で稠密であること(軟化子 の系「滑らかな関数の稠密性」)による。$\square$
包含 $W^{1,p}_0(\Omega)\subset L^2(\Omega)$ は、$\Omega$ が有界なら $\frac{2n}{n+2}\le p< \infty$ で、有界でなければ $\frac{2n}{n+2}\le p\le2$ で成り立つ(Bre11 p. 291。零延長と Sobolevの埋め込み定理 による)。証明の鍵は反射性であり、$p=1$ では結論が成り立たない(ex-ns-p1)。
$H^1_0(\Omega)$ は Hilbert 空間なので、Riesz の表現定理で $H^{-1}(\Omega)$ と同型でもある。しかしこの同型を恒等写像とみなすと、上の包含の列と両立しない。$L^2$ を自身の双対と同一視したら、$H^1_0$ をその双対と同一視しないのが標準的な約束である(Bre11 Remark 3、pp. 136–137)。$H^1_0$ と $H^{-1}$ を結ぶ同型の具体形が次の定理である。
$u\in H^1_0(\Omega)$ に対し $\langle-\Delta u,v\rangle:=\int_\Omega\nabla u\cdot\nabla v\,dx$($v\in H^1_0(\Omega)$)と定めると、$-\Delta u\in H^{-1}(\Omega)$ であり、$\|{-\Delta u}\|\le\|u\|_{1,2}$ である。$u$ が滑らかなら、部分積分によりこれは超関数の意味の $-\Delta u$ に一致する。
$\Omega$ が帯 $\{a< x_1< b\}$ に含まれる(たとえば有界)とする。このとき $-\Delta\colon H^1_0(\Omega)\to H^{-1}(\Omega)$ は線形な全単射で、逆写像も連続である。すなわち、任意の $F\in H^{-1}(\Omega)$ に対し、すべての $v\in H^1_0(\Omega)$ について $\int_\Omega\nabla u\cdot\nabla v=\langle F,v\rangle$ をみたす $u\in H^1_0(\Omega)$ がただ 1 つ存在し、$\|u\|_{1,2}\le C\|F\|$($C$ は $\Omega$ だけによる)である。
Poincaréの不等式 の系「勾配のノルムと Dirichlet 内積」により、$\langle u,v\rangle_\nabla:=\int\nabla u\cdot\nabla v$ は $H^1_0(\Omega)$ の内積で、その誘導するノルム $\|\nabla u\|_2$ は $\|u\|_{1,2}$ と同値である。とくに $H^1_0(\Omega)$ はこの内積について Hilbert 空間であり、$F$ はこのノルムについても連続である。Rieszの表現定理 により、$u\in H^1_0(\Omega)$ で $\langle u,v\rangle_\nabla=\langle F,v\rangle$(すべての $v$)となるものがただ 1 つあり、$\|\nabla u\|_2$ は $\langle\cdot,\cdot\rangle_\nabla$ に関する $F$ のノルムに等しい。ノルムの同値性から $\|u\|_{1,2}\le C\|F\|$ を得る。この $u$ は $-\Delta u=F$ をみたし、$-\Delta$ が全単射であることも示された。$\square$
たとえば $g\in L^2(\Omega)$ について $F=\partial_1g$($\langle F,v\rangle=-\int g\,\partial_1v$)とすれば、右辺が関数でなくても $-\Delta u=\partial_1g$ の弱解 $u\in H^1_0(\Omega)$ が得られる。帯に含まれない一般の開集合では、$H^1(\Omega)$ の内積に同じ議論を当てて $-\Delta+1\colon H^1_0(\Omega)\to H^{-1}(\Omega)$ が同型になる($n=1$ の区間については Bre11 Remark 22、p. 221)。
$n=1$、$\Omega=(0,1)$、$p=1$($p'=\infty$)、$\langle F,v\rangle:=\int_0^1v\,dx$ とする。このとき $\|F\|=\frac13$ だが、$\langle F,v\rangle=\int_0^1f_1v'$ と表す $f_1\in L^\infty(0,1)$ はすべて $\|f_1\|_\infty\ge\frac12$ をみたす。
要点:$\|\varphi\|_1\le\frac12\|\varphi'\|_1$ から $\|F\|\le\frac13$ が、台形の関数から逆向きが従う。表示 $\int f_1v'$ は $f_1$ の弱微分が $-1$ であることを意味し、$f_1=c-x$ となる。
$\varphi\in C_c^\infty(0,1)$ について $A:=\|\varphi\|_1$、$B:=\|\varphi'\|_1$ とおく。$|\varphi(t)|\le\min\bigl(\int_0^t|\varphi'|,\int_t^1|\varphi'|\bigr)\le B/2$ なので $A\le B/2$、したがって $|\langle F,\varphi\rangle|\le A=\frac{A+2A}3\le\frac{A+B}3$ であり、密度から $\|F\|\le\frac13$ である。逆向きは、$0< \varepsilon< \frac12$ について $v_\varepsilon(x):=\min(1,x/\varepsilon,(1-x)/\varepsilon)$ をとる。$v_\varepsilon$ は $[0,1]$ まで連続で両端で $0$、区分的に 1 次なので、零境界Sobolev空間 の定理「境界で $0$ になる連続関数」の 1 により $W^{1,1}_0(0,1)$ に属する。$\|v_\varepsilon\|_1=1-\varepsilon$、$\|v_\varepsilon'\|_1=2$ なので $\langle F,v_\varepsilon\rangle/\|v_\varepsilon\|_{1,1}=(1-\varepsilon)/(3-\varepsilon)\to\frac13$ であり、$\|F\|=\frac13$ である。
一方、$\int_0^1\varphi=\int_0^1f_1\varphi'$ がすべての $\varphi\in C_c^\infty(0,1)$ で成り立つなら、$f_1+x$ の弱微分は $0$ であり、弱微分 の定理「弱勾配が $0$ なら定数」から $f_1=c-x$(ほとんど至る所)となる定数 $c$ がある。$\|c-x\|_{L^\infty(0,1)}=\max(|c|,|c-1|)\ge\frac12$ である。$\square$
$n\ge2$、$0\in\Omega$ とする。超関数 $\delta_0(\varphi)=\varphi(0)$ は $H^{-1}(\Omega)$ のどの元の制限でもない。
$\psi\in C_c^\infty(\Omega)$ を $\psi(0)=1$ となるようにとる。零境界Sobolev空間 の例「反例:1 点を除いた空間」の証明($p=2\le n$)で作った $\eta_k\in C^\infty(\mathbb R^n)$ は原点の近くで $0$ であり、$\eta_k\psi\to\psi$ が $H^1$ で成り立つ。$w_k:=(1-\eta_k)\psi\in C_c^\infty(\Omega)$ は $w_k(0)=1$ かつ $\|w_k\|_{1,2}\to0$ をみたす。よって $|\delta_0(\varphi)|\le C\|\varphi\|_{1,2}$ となる定数 $C$ はなく、prop-ns-distribution の 2 から結論を得る。$\square$
$n=1$ または $n=2$ とし、$\Omega\supset(-1,1)^n$ とする(一般の開集合でも、中に入る小さな立方体で同じ議論ができる)。このとき $W^{1,1}_0(\Omega)\subset L^2(\Omega)$ は連続である(零延長と Sobolevの埋め込み定理 の定理「Sobolev の埋め込み定理($\mathbb R^n$、1 階)」による)。$\langle F,v\rangle:=\int_\Omega\operatorname{sign}(x_1)\,\partial_1v\,dx$ は $\|F\|\le1$ の $W^{-1,\infty}(\Omega)$ の元で、すべての $f\in L^2(\Omega)$ について $\|F-j(f)\|\ge1$ である。
要点:$x_1=0$ を横切る幅 $\varepsilon$ の三角形の山 $u_\varepsilon$ は、$\|u_\varepsilon\|_{1,1}\to2$、$\langle F,u_\varepsilon\rangle=-2$ をみたすが、$L^2$ 関数との積分は $0$ に近づく。
$0< \varepsilon<1$ について $h_\varepsilon(t):=\max(1-|t|/\varepsilon,0)$ とおく。$n=2$ では $\psi\in C_c^\infty(-1,1)$ を $\psi\ge0$、$\int\psi=1$ にとり $u_\varepsilon(x):=h_\varepsilon(x_1)\psi(x_2)$、$n=1$ では $u_\varepsilon:=h_\varepsilon$ とする。$u_\varepsilon$ は台が $\Omega$ の中でコンパクトな Lipschitz 関数で、$\partial_1u_\varepsilon$ は $-\varepsilon< x_1<0$ で $\psi(x_2)/\varepsilon$、$0< x_1< \varepsilon$ で $-\psi(x_2)/\varepsilon$、ほかで $0$ である(区間ごとの部分積分による)。零境界Sobolev空間 の補題「台が $\Omega$ の中でコンパクトな関数」により $u_\varepsilon\in W^{1,1}_0(\Omega)$ である。
計算すると $\|u_\varepsilon\|_1=\varepsilon$、$\|\partial_1u_\varepsilon\|_1=2$、$\|\partial_2u_\varepsilon\|_1=\varepsilon\|\psi'\|_1$($n=2$)なので $\|u_\varepsilon\|_{1,1}\to2$ であり、$\langle F,u_\varepsilon\rangle=\int\psi(x_2)\bigl(-1-1\bigr)dx_2=-2$ である。$f\in L^2(\Omega)$ については、$u_\varepsilon$ の台は測度 $4\varepsilon$ 以下の集合 $\{|x_1|< \varepsilon\}\cap(-1,1)^n$ に入り $|u_\varepsilon|\le\|\psi\|_\infty$ なので、積分の絶対連続性から $\int fu_\varepsilon\to0$ である。よって$$\|F-j(f)\|\ge\lim_{\varepsilon\to0}\frac{|\langle F,u_\varepsilon\rangle-\int fu_\varepsilon|}{\|u_\varepsilon\|_{1,1}}=\frac22=1$$である。$\square$
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $1< p$(thm-ns-pivot-dense) | $n\le2$、$p=1$、ex-ns-p1 の $F$ | $L^2$ の像が $W^{-1,\infty}$ で稠密でない |
| 幅が有限(cor-ns-no-f0) | $\Omega=\mathbb R$、$p=2$、$\langle F,v\rangle=\int_0^1v$ | $f_0=0$ の表示がない |
| $f_0$ を使うこと(thm-ns-representation のノルムの等式) | ex-ns-norm-f0 | $f_0=0$ にすると $\max_i\Vert f_i\Vert_{p'}=\Vert F\Vert$ にできない |
| $n=1$(ex-ns-basic の 3) | ex-ns-dirac | $\delta_0\notin H^{-1}$ |
2 行目の確かめ:$\int_0^1\varphi=\int_{\mathbb R}g\varphi'$ がすべての $\varphi\in C_c^\infty(\mathbb R)$ で成り立つなら、$m(x):=\min(\max(x,0),1)$ について $g+m$ の弱微分は $0$ なので $g=c-m$ となる定数 $c$ がある。$g\in L^2(\mathbb R)$ には $x\to-\infty$ で $c=0$、$x\to+\infty$ で $c-1=0$ が必要で、矛盾する。
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